車両客室のエアフィルタ用の活性炭、ゼオライト及び鉄イオンを有する組成物
【課題】多数のガス状汚染物を濾過でき、かつこれを満足できる寿命で達成でき、かつ構成成分の固有の濾過性能を劣化させない、組成物を得る。
【解決手段】本発明は、活性炭4とゼオライト2を含有し、該ゼオライト2がFeイオンを含んでいる組成物1に関する。本発明は、更に換気、加熱及び空調システム用であり、前記組成物1を含有するエアフィルタ12に関する。
【解決手段】本発明は、活性炭4とゼオライト2を含有し、該ゼオライト2がFeイオンを含んでいる組成物1に関する。本発明は、更に換気、加熱及び空調システム用であり、前記組成物1を含有するエアフィルタ12に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の換気、加熱及び空調システム用のエアフィルタで使用される、活性炭、ゼオライト及び鉄イオンを有する組成物に関する。本発明は、更にこのような組成物を有するエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
客室のフィルタは、粒状及びガス状の汚染物の両者を濾過する。今日では、2種類のフィルタが市販されている。第1は、0.1から10μmあるいはそれ以上の空気中の粒子を濾過することのみを意図する粒子フィルタである。第2は、粒子を濾過するだけでなく、客室の外から、あるいは換気、加熱及び/又は空調システム用の空気導入用フラップが再循環用にセットされて、客室自体から生じるガスや臭いも濾過する2種類の機能を有する複合フィルタである。
【0003】
今日、複合フィルタは、空気中のガスや臭いを精製する活性炭(種々の組立て法で、この活性炭層を挟み込んだ不織布層)を使用する。使用する活性炭は、4種類のテストガスである、トルエン、t−ブタン、二酸化窒素及び二酸化硫黄を保持する親和性を考慮して一般に選択される。これらのテストは、主に、ISO―11 155 パート2に従って行われる。この標準は、高濃度の前記4種のガスを使用する方法を記述している。濾過性能は、1回に1種類のガスについて行い、混合物は使用しない。
【0004】
この標準法を使用して得られるテスト結果は、使用した活性炭と、フィルタの全性能を評価するために使用した汚染物との間の異なった親和性を示す。従って、標準テストガス又は他のガスである幾つかの汚染物は、従来使用されている炭素により、部分的に阻止されるのみである。更に、活性炭が劣化するにつれ、つまり汚染物を吸着するにつれ、活性炭のサイトが占有され、性能が落ちる。この劣化は、炭素やテストガスに依っても変化し、更に炭素が曝される湿度や温度条件に依っても変化する。
【0005】
エアフィルタの濾過性能改善のため、活性炭とゼオライトの両者を使用することが提案されている。確かに、幾つかのゼオライトは、アルデヒドのようなガス状汚染物に対して良好な濾過親和性を有している。このような使用例は、特許文献1に記載されている。Si/Al比が30から190、好ましくは55から90である、結晶構造ZSM−5を有するゼオライト(ペンタシルとしても知られる)を使用することが特許文献1に記載されている。使用されているゼオライトは、アルデヒドとの親和性改良のため、4級アンモニウム(NH4+)を有している。
【0006】
他の公知文献も、濾過問題の解決にゼオライトの使用を検討している。つまり特許文献2は、VOCs、一酸化炭素、二酸化炭素を一括濾過するため及び脱湿のために、炭素及びリチウムをゼオライトと混合して使用することを提案している。しかし、特許文献2では、ゼオライトの機能は脱湿のみで、VOCs(揮発性有機化合物、アルデヒドを含むグループ)を吸着する機能は有さず、炭素がこの機能を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1121978号公報
【特許文献2】米国特許公開第2005075238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人は、粒子状汚染物及びガス状汚染物の濾過を改良することを検討した。特に本出願人は、多数のガス状汚染物を濾過でき、かつこれを満足できる寿命で達成でき、かつ構成成分の固有の濾過性能を劣化させない、組成物を得ることを検討した。
【0009】
このために、テスト温度及び湿度を追跡しながら、前述のISO標準に従って、活性炭と新規吸着物質を評価し、かつ一連の低濃度の汚染物の混合物を使用する新規方法に従って評価する研究を行った。この研究は、汚染領域で使用される現実の条件のシミュレーションを可能にする。この研究により、新規炭素の性能が評価できたが、汚染物に対するゼオライトの特定の親和性の選択も可能にした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って本発明は、活性炭、及び鉄イオンを含むゼオライトを含有する組成物に関する。
【0011】
検討の結果、ゼオライト、イオン及び活性炭の特定の組み合わせが選択できた。この特定の組み合わせは、汚染ガスを濾過することに関して驚くべき効果を示した。前記組成物は、汚染ガスを濾過する際に相乗効果を生じさせる。実際、この組成物は、活性炭及びゼオライトの個別の結果の合計より良好な汚染ガスの濾過効果を生じさせる。
【0012】
ゼオライトは、0.1から1.2質量%の鉄イオンを含んで成ることが好ましい。
鉄イオンは、第一鉄又は第二鉄イオンであることが好ましい。
前記鉄イオンは、前記ゼオライトの内部に保持されていることが好ましい。
前記ゼオライトはが、ZSM−5結晶構造を有していることが好ましい。
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、60と20の間であることが好ましい。
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、50と30の間であることが好ましい。
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、40であることが好ましい。
前記ゼオライトは疎水性であることが好ましい。
前記ゼオライトの活性炭に対する質量比は5から35%であることが好ましい。
前記ゼオライトの活性炭に対する質量比は10から20%であることが好ましい。
前記ゼオライトの活性炭に対する質量比がは15%であることが好ましい。
活性炭は、B.E.T.表面積が1004m2/g、細孔容積が0.356cm3/g、全孔容積が0.422cm3/g、及び平均孔直径が4.6Åであることが好ましい。
活性炭は、B.E.T.表面積が960m2/g、細孔容積が0.344cm3/g、全孔容積が0.404cm3/g、及び平均孔直径が5.0Åであることが好ましい。
活性炭は、B.E.T.表面積が969m2/g、細孔容積が0.327cm3/g、全孔容積が0.346cm3/g、及び平均孔直径が6.8Åであることが好ましい。
活性炭は、異なった活性炭の混合物であることが好ましい。
【0013】
本発明は、更に前記特徴のいずれか有する組成物を備える、換気、加熱及び空調システム用エアフィルタに関する。
ゼオライト及び活性炭は、単一層中に含まれていることが好ましい。
【0014】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、添付図面を参照して行う非限定的な説明により、更に明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ペンタシルユニットの図。
【図2】ゼオライトの図。
【図3】温度22℃、湿度50%におけるトルエンの漏出曲線。
【図4】温度22℃、湿度50%におけるn−ブタンの漏出曲線。
【図5】温度22℃、湿度50%における二酸化窒素の漏出曲線。
【図6】温度22℃、湿度50%におけるアセトアルデヒドの漏出曲線。
【図7】温度22℃、湿度50%における硫化水素の漏出曲線。
【図8】温度22℃、湿度50%における硫化水素の他の漏出曲線。
【図9】本発明の種々の組成物の吸着能を示す。
【図10】0時間経過時における吸着性能のヒストグラムを示す。
【図11】30時間経過時における吸着性能のヒストグラムを示す。
【図12】60時間経過時における吸着性能のヒストグラムを示す。
【図13】組成物を有するフィルタの図。
【図14】第1変形例の断面図を示す。
【図15】第2変形例の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組成物1は、少なくとも2種類の吸着剤を含んで成る。前記組成物1は、第1の吸着剤であるゼオライト2と、第2の吸着剤である活性炭4を含んで成る。この組成物は、自動車車両の換気、加熱及び/又は空調システム内の汚染ガスを濾過するために使用される。より詳細には、この組成物は、自動車車両のエアフィルタ用に使用される。
【0017】
ゼオライト2は、ZMS−5結晶構造を有する。このZMS−5構造(この構造はペンタシルとも称される)は酸素架橋により互いに結合された数個のペンタシルユニット6から構成される。ペンタシルユニット6は、8個の五角形環8から成っている。これらの環8の頂部はアルミニウム(Al)又は珪素(Si)から構成される。酸素原子(O)が頂部同士を結合する。従って、ゼオライトZMS−5は、Al2O3分子とSiO2分子を有する。図1は、8個の環を有するペンタシルユニット6を示している。
【0018】
ゼオライト2用の全てのペンタシルユニット6は、その中にイオンが収容されるケージ10を形成する。本発明では、鉄イオン(以後、Feイオンと称する)がそこに収容される。Feイオンは、第一鉄イオン(Fe2+イオン)と第二鉄イオン(Fe3+イオン)の両者を意味する。図2は、ペンタシルユニットの結合による、ケージ10の形成を図示している。ケージのサイズは、5.4から5.6Å(オングストローム)である。
【0019】
本発明のゼオライト2は、疎水性ゼオライトである。更に、ゼオライト2のSiO2/Al2O3比は、20から60である。この比は、30から50であることが好ましい。本発明のゼオライト2は、SiO2/Al2O3比が40であるときに、最良の汚染ガス濾過テスト結果をもたらす。これらの結果は後述する。
【0020】
前記ゼオライト2は、Feイオンを含有する。Feイオンとゼオライトの質量比は、0.1から1.2%である。好ましい質量比は、0.5%である。以降の記載では、「ゼオライト」という用語は、Feイオンを含有する結晶構造ZSM−5のゼオライトについて使用する。
【0021】
前述の組成物1は、ゼオライト2粒子と活性炭4から形成される。組成物1の粒径は、300から600μmである。具体的には、活性炭の粒径の分散モードは300μmであり、ゼオライトの粒径の分散モードは600μmである。換言すると、活性炭は一般に300μmの粒径を有し、ゼオライトは600μmの粒径を有する。前記ゼオライト及び活性炭の粒径値は、製造工程で、均一な混合と良好な成形を可能にするよう選択された。従って、ゼオライトと活性炭の混合を行う際には、より以上の圧力低下や困難さは生じない。
【0022】
前記組成物1は、活性炭4を含有する。異なった2種類の活性炭をテストした。使用した第1の活性炭4aは次の物理的性質を有する。B.E.T.表面積が1004m2/g、細孔容積が0.356cm3/g、全孔容積が0.422cm3/g、及び平均孔直径が4.6Åである。使用した第2の活性炭4bは次の物理的性質を有する。B.E.T.表面積が960m2/g、細孔容積が0.344cm3/g、全孔容積が0.404cm3/g、及び平均孔直径が5.0Åである。
【0023】
図3から7は、活性炭4単独、ゼオライト2単独及びゼオライトと活性炭4を含有する組成物の汚染ガスに対する漏出曲線を例示する表である。該漏出曲線は、選択された1又は2以上の吸着剤による汚染ガスの濾過効率を例示する。y軸は、1又は2以上の吸着剤を含有するフィルタの下流側の汚染ガス濃度(Cs)とフィルタの上流側の汚染ガス濃度(Ce)間の比である。「下流」及び「上流」の用語は、フィルタを通りかつ汚染ガスを帯有する空気流の移動方向に応じて、拡大適用される。汚染ガスの濃度が増加するほど、1又は2以上の吸着剤による汚染ガスの吸着効率が低下する。これらの表に提示されたテスト結果は、低濃度混合物に対して行ったものである。
【0024】
図3の汚染ガスはトルエンである。その濃度が0.3を超えないため、活性炭4はトルエンを良好に濾過する。ゼオライト単独は、Cs/Ce比ピークが1.2を超えるため、トルエン濾過に関しては明らかに不十分である。本発明の組成物は、活性炭4単独より効果的に濾過を行う。
【0025】
図4の汚染ガスはn−ブタンである。この表は、ゼオライト2と活性炭4を組み合わせると、活性炭4単独又はゼオライト単独より、n−ブタン濾過に対して、より効果的であることを示している。より具体的には、本発明の組成物は、活性炭4とゼオライト2の濾過が累積的になり、より良好な濾過を行う。従って、活性炭4とゼオライト2を組み合わせた相乗効果がある。
【0026】
図5の汚染ガスは二酸化窒素(NO2)である。二酸化窒素濾過に対するゼオライト2単独の作用、又は活性炭4単独の作用は、本発明の組成物の作用より明らかに劣っている。二酸化窒素濾過の結果は、本発明の組成物には相乗効果があり、この組成物は、2種類の吸着剤を単に並置させたものでないことを示している。実際、組成物1は、二酸化窒素を含む空気流に吸着剤を露出後、60時間でも、0.2未満のCs/Ce比を有する。これに対し、ゼオライト2は0.8を超えるCs/Ce比を、活性炭4は0.3を超えるCs/Ce比を有している。
【0027】
図6の汚染ガスはアセトアルデヒドである。組成物1は、活性炭4単独又はゼオライト2単独より良好にアセトアルデヒドを濾過する。ここで、組成物1は、0.7未満のCs/Ce比を有する。これに対し、ゼオライト2は0.7のCs/Ce比を有する。従って、ゼオライトと活性炭の混合物は、アセトアルデヒドに対するゼオライト自身の作用を改良する。
【0028】
図7の汚染ガスは硫化硫黄(H2S)である。ゼオライト2と活性炭4の混合物は、ゼオライト単独又は活性炭4単独の濾過結果を単に並置させたものと比較して汚染ガス濾過に関する真の改良を示している。
【0029】
図3から図7を参照すると、ゼオライトと活性炭を混合すると、種々の汚染ガスに対する濾過能力が大きく改善されると理解できる。換言すると、本発明の組成物は、フィルタ内でゼオライト層と活性炭層が物理的に離れているフィルタと比較して、汚染ガスの濾過効率を改良する。活性炭のみを使用しても汚染ガス(トルエン、n−ブタン、NO2)を十分に除去する。ゼオライトは上記ガスに対する効果は活性炭よりかなり悪いが、アセトアルデヒド吸着に対して、更に具体的にはアセトアルデヒド及び硫化水素の吸着に対しては有利である。
【0030】
従って、2種の吸着剤を混合すると、他の汚染物に対する同じ性能を維持しながら、特定の汚染物に対する吸着物質の効率を上昇させる。
【0031】
従って、ゼオライトを添加しても、トルエン、n−ブタン及びNO2に対する同じ性能が維持される。アセトアルデヒドに対する性能は大きく改善される。前記混合物は、H2Sに対しても有効である。この解決法は、人間の健康を良好に保護し、快適さを維持し、更に不快な臭いを減少させる。
【0032】
活性炭の性能を減少させず、かつゼオライト添加から利益を得るために、ゼオライトの割合は、5から35質量%、好ましくは10から20質量%でなければならない。より好ましくは、ゼオライトの割合は15質量%である。
【0033】
図8は、ゼオライト2と第1の活性炭4aを含有する第1組成物1aと、ゼオライト2と第2の活性炭4bを含有する第2組成物1bに対する硫化水素(H2S)の漏出曲線を例示する。第1組成物1aは、30時間後にも硫化水素に対する良好な濾過結果を提供するが、第2組成物1bは更に効果的に濾過を行う。30時間後には、前記第1組成物1aは0.4未満のCs/Ce比を有し、第2組成物1bは0.2未満のCs/Ce比を有する。これらの結果から、前記組成物1用の各吸着剤の選択を、汚染ガスに対する説得力のある濾過結果は得られるように、意図的に行える。ZSM−5構造を有しかつFeイオンを含有するゼオライト2の選択以外にも、活性炭を選択すると、組成物1の吸着剤の更なる相乗効果を改良できる。実際に、図3から8を参照すると、ゼオライト2と第2の活性炭4bの混合物は、テストした全ての汚染ガスに対して、最良の濾過性能を有すると考えられる。にもかかわらず、ゼオライト2と第1活性炭4aを含有する組成物1aは、分離されたゼオライト2及び活性炭4より良好な性能を与える。従って、第1の組成物1aも、ゼオライト単独及び活性炭単独と比較して相乗効果を有する。
【0034】
図9から12は、本発明の異なった組成物間の比較結果を例示している。第1組成物1aは、第1の活性炭1a及びゼオライト2を含有し、ゼオライト2の第1の活性炭1aに対する質量比は33%である。第2組成物1bは、第2の活性炭1b及びゼオライト2を含有し、ゼオライトの第2の活性炭2aに対する質量比は33%である。第3組成物1cは、第2の活性炭1b及びゼオライト2を含有し、ゼオライトの第2の活性炭2aに対する質量比は15%である。
【0035】
図9は、種々の汚染ガス用にテストした各組成物の吸着能を示している。第3の組成物1cは、特にアセトアルデヒド、硫化水素、二酸化窒素、n−ブタン及びトルエンに対し、最良の吸着能を示している。
【0036】
図10から12の濾過性能結果を与えるテストは、低濃度(自動車で使用される数十μg/m3のオーダー)の成分を混合して行う。テストされる汚染ガスは、本発明の組成物を含有するフィルタを通過する。テストされた汚染ガスは、次の通りである。トルエン、n−ブタン、二酸化窒素、アセトアルデヒド及び硫化水素。
【0037】
図10は、第3組成物1cは、0時間経過時、つまり空気流がエアフィルタを通過する際に、ゼオライト単独又は活性炭単独より良好な濾過を行うことを示している。実際、トルエンについて、第3組成物1cの濾過性能は83で、ゼオライト2は60で、活性炭4は80である。n−ブタン及び硫化水素についても同様である。二酸化窒素については、第3組成物1cと活性炭4の性能は同じであり(値は92)、第3組成物1cの性能は明らかにゼオライト2より良好である。
【0038】
図11は、30時間経過時の濾過性能を示している。第3組成物1cの性能は、トルエン、二酸化窒素及び硫化水素について、他の組成物1a、1b及びゼオライト2単独及び活性炭4単独より良好である。アセトアルデヒドについて、第3組成物1cの濾過性能は、ゼオライト単独と等価である。
【0039】
図12は、60時間経過時の濾過性能の結果を示し、第3組成物1cは、トルエン、n−ブタン、二酸化窒素、アセトアルデヒド及び硫化水素について、他の組成物1a、1b、ゼオライト単独及び活性炭単独の中で最良の結果を与えている。
【0040】
本発明は、更に本発明の組成物を含有する換気、加熱及び/又は空調システム用エアフィルタに関する。図13に例示したエアフィルタ12は、組成物1が収容された濾過媒体14を備える。この濾過媒体14は、数回折り畳んだ不織布材料である。前述の通り、組成物1は、ゼオライト2と活性炭4の混合物で、この混合物は、ゼオライト2単独又は活性炭4単独で得られる濾過性能より良好な濾過性能を与える。ゼオライト2は、Feイオンを含有する。組成物1は、図13に示すように、単一層で形成される。「単一層」とは、ゼオライトと活性炭は混合され、それらの間に、物理的な障害物が存在しないことであると理解される。エアフィルタの内部で、前記組成物は、全濾過媒体に亘って分布していても(図14)、濾過媒体中にストライプ状に分布していても(図15)良い。変形例として、前記組成物は、濾過媒体上に位置していても良い。
【0041】
変形例として、前記組成物は、第3の吸着剤を含有できる。例えば、前記組成物は、ゼオライトと、異なった活性炭の混合物を含有する。従って、前記組成物は、3種類の吸着剤、つまりゼオライトと異なった2種類の活性炭を含有する。「異なった」とは、前記混合物を構成する活性炭が、違った物理的性質を有することを意味する。例えば、活性炭の混合物は、第1の活性炭4aと第2の活性炭4bから構成される。下記特性を有する第3の活性炭4cも使用できる。この第3の活性炭4cは、0.327cm3/gの細孔容積、0.346cm3/gの全孔容積、95%の細孔容積割合、6.8Åの平均孔直径、及び969m2/gのB.E.T.表面積の物理的性質を有する。この活性炭は、「活性炭NC60」と称せられる。活性炭の混合物は、第1及び第2の活性炭4a及び4b、又は第1及び第3の活性炭4a及び4c、又は第2及び第3の活性炭4b及び4cの構成物のいずれかである。
【符号の説明】
【0042】
1 組成物
2 ゼオライト
4、4a、4b、4c 活性炭
6 ペンタシルユニット
10 ケージ
12 エアフィルタ
14 濾過媒体
Cs フィルタの下流側の汚染ガス濃度
Ce フィルタの上流側の汚染ガス濃度
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の換気、加熱及び空調システム用のエアフィルタで使用される、活性炭、ゼオライト及び鉄イオンを有する組成物に関する。本発明は、更にこのような組成物を有するエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
客室のフィルタは、粒状及びガス状の汚染物の両者を濾過する。今日では、2種類のフィルタが市販されている。第1は、0.1から10μmあるいはそれ以上の空気中の粒子を濾過することのみを意図する粒子フィルタである。第2は、粒子を濾過するだけでなく、客室の外から、あるいは換気、加熱及び/又は空調システム用の空気導入用フラップが再循環用にセットされて、客室自体から生じるガスや臭いも濾過する2種類の機能を有する複合フィルタである。
【0003】
今日、複合フィルタは、空気中のガスや臭いを精製する活性炭(種々の組立て法で、この活性炭層を挟み込んだ不織布層)を使用する。使用する活性炭は、4種類のテストガスである、トルエン、t−ブタン、二酸化窒素及び二酸化硫黄を保持する親和性を考慮して一般に選択される。これらのテストは、主に、ISO―11 155 パート2に従って行われる。この標準は、高濃度の前記4種のガスを使用する方法を記述している。濾過性能は、1回に1種類のガスについて行い、混合物は使用しない。
【0004】
この標準法を使用して得られるテスト結果は、使用した活性炭と、フィルタの全性能を評価するために使用した汚染物との間の異なった親和性を示す。従って、標準テストガス又は他のガスである幾つかの汚染物は、従来使用されている炭素により、部分的に阻止されるのみである。更に、活性炭が劣化するにつれ、つまり汚染物を吸着するにつれ、活性炭のサイトが占有され、性能が落ちる。この劣化は、炭素やテストガスに依っても変化し、更に炭素が曝される湿度や温度条件に依っても変化する。
【0005】
エアフィルタの濾過性能改善のため、活性炭とゼオライトの両者を使用することが提案されている。確かに、幾つかのゼオライトは、アルデヒドのようなガス状汚染物に対して良好な濾過親和性を有している。このような使用例は、特許文献1に記載されている。Si/Al比が30から190、好ましくは55から90である、結晶構造ZSM−5を有するゼオライト(ペンタシルとしても知られる)を使用することが特許文献1に記載されている。使用されているゼオライトは、アルデヒドとの親和性改良のため、4級アンモニウム(NH4+)を有している。
【0006】
他の公知文献も、濾過問題の解決にゼオライトの使用を検討している。つまり特許文献2は、VOCs、一酸化炭素、二酸化炭素を一括濾過するため及び脱湿のために、炭素及びリチウムをゼオライトと混合して使用することを提案している。しかし、特許文献2では、ゼオライトの機能は脱湿のみで、VOCs(揮発性有機化合物、アルデヒドを含むグループ)を吸着する機能は有さず、炭素がこの機能を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1121978号公報
【特許文献2】米国特許公開第2005075238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人は、粒子状汚染物及びガス状汚染物の濾過を改良することを検討した。特に本出願人は、多数のガス状汚染物を濾過でき、かつこれを満足できる寿命で達成でき、かつ構成成分の固有の濾過性能を劣化させない、組成物を得ることを検討した。
【0009】
このために、テスト温度及び湿度を追跡しながら、前述のISO標準に従って、活性炭と新規吸着物質を評価し、かつ一連の低濃度の汚染物の混合物を使用する新規方法に従って評価する研究を行った。この研究は、汚染領域で使用される現実の条件のシミュレーションを可能にする。この研究により、新規炭素の性能が評価できたが、汚染物に対するゼオライトの特定の親和性の選択も可能にした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って本発明は、活性炭、及び鉄イオンを含むゼオライトを含有する組成物に関する。
【0011】
検討の結果、ゼオライト、イオン及び活性炭の特定の組み合わせが選択できた。この特定の組み合わせは、汚染ガスを濾過することに関して驚くべき効果を示した。前記組成物は、汚染ガスを濾過する際に相乗効果を生じさせる。実際、この組成物は、活性炭及びゼオライトの個別の結果の合計より良好な汚染ガスの濾過効果を生じさせる。
【0012】
ゼオライトは、0.1から1.2質量%の鉄イオンを含んで成ることが好ましい。
鉄イオンは、第一鉄又は第二鉄イオンであることが好ましい。
前記鉄イオンは、前記ゼオライトの内部に保持されていることが好ましい。
前記ゼオライトはが、ZSM−5結晶構造を有していることが好ましい。
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、60と20の間であることが好ましい。
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、50と30の間であることが好ましい。
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、40であることが好ましい。
前記ゼオライトは疎水性であることが好ましい。
前記ゼオライトの活性炭に対する質量比は5から35%であることが好ましい。
前記ゼオライトの活性炭に対する質量比は10から20%であることが好ましい。
前記ゼオライトの活性炭に対する質量比がは15%であることが好ましい。
活性炭は、B.E.T.表面積が1004m2/g、細孔容積が0.356cm3/g、全孔容積が0.422cm3/g、及び平均孔直径が4.6Åであることが好ましい。
活性炭は、B.E.T.表面積が960m2/g、細孔容積が0.344cm3/g、全孔容積が0.404cm3/g、及び平均孔直径が5.0Åであることが好ましい。
活性炭は、B.E.T.表面積が969m2/g、細孔容積が0.327cm3/g、全孔容積が0.346cm3/g、及び平均孔直径が6.8Åであることが好ましい。
活性炭は、異なった活性炭の混合物であることが好ましい。
【0013】
本発明は、更に前記特徴のいずれか有する組成物を備える、換気、加熱及び空調システム用エアフィルタに関する。
ゼオライト及び活性炭は、単一層中に含まれていることが好ましい。
【0014】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、添付図面を参照して行う非限定的な説明により、更に明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ペンタシルユニットの図。
【図2】ゼオライトの図。
【図3】温度22℃、湿度50%におけるトルエンの漏出曲線。
【図4】温度22℃、湿度50%におけるn−ブタンの漏出曲線。
【図5】温度22℃、湿度50%における二酸化窒素の漏出曲線。
【図6】温度22℃、湿度50%におけるアセトアルデヒドの漏出曲線。
【図7】温度22℃、湿度50%における硫化水素の漏出曲線。
【図8】温度22℃、湿度50%における硫化水素の他の漏出曲線。
【図9】本発明の種々の組成物の吸着能を示す。
【図10】0時間経過時における吸着性能のヒストグラムを示す。
【図11】30時間経過時における吸着性能のヒストグラムを示す。
【図12】60時間経過時における吸着性能のヒストグラムを示す。
【図13】組成物を有するフィルタの図。
【図14】第1変形例の断面図を示す。
【図15】第2変形例の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組成物1は、少なくとも2種類の吸着剤を含んで成る。前記組成物1は、第1の吸着剤であるゼオライト2と、第2の吸着剤である活性炭4を含んで成る。この組成物は、自動車車両の換気、加熱及び/又は空調システム内の汚染ガスを濾過するために使用される。より詳細には、この組成物は、自動車車両のエアフィルタ用に使用される。
【0017】
ゼオライト2は、ZMS−5結晶構造を有する。このZMS−5構造(この構造はペンタシルとも称される)は酸素架橋により互いに結合された数個のペンタシルユニット6から構成される。ペンタシルユニット6は、8個の五角形環8から成っている。これらの環8の頂部はアルミニウム(Al)又は珪素(Si)から構成される。酸素原子(O)が頂部同士を結合する。従って、ゼオライトZMS−5は、Al2O3分子とSiO2分子を有する。図1は、8個の環を有するペンタシルユニット6を示している。
【0018】
ゼオライト2用の全てのペンタシルユニット6は、その中にイオンが収容されるケージ10を形成する。本発明では、鉄イオン(以後、Feイオンと称する)がそこに収容される。Feイオンは、第一鉄イオン(Fe2+イオン)と第二鉄イオン(Fe3+イオン)の両者を意味する。図2は、ペンタシルユニットの結合による、ケージ10の形成を図示している。ケージのサイズは、5.4から5.6Å(オングストローム)である。
【0019】
本発明のゼオライト2は、疎水性ゼオライトである。更に、ゼオライト2のSiO2/Al2O3比は、20から60である。この比は、30から50であることが好ましい。本発明のゼオライト2は、SiO2/Al2O3比が40であるときに、最良の汚染ガス濾過テスト結果をもたらす。これらの結果は後述する。
【0020】
前記ゼオライト2は、Feイオンを含有する。Feイオンとゼオライトの質量比は、0.1から1.2%である。好ましい質量比は、0.5%である。以降の記載では、「ゼオライト」という用語は、Feイオンを含有する結晶構造ZSM−5のゼオライトについて使用する。
【0021】
前述の組成物1は、ゼオライト2粒子と活性炭4から形成される。組成物1の粒径は、300から600μmである。具体的には、活性炭の粒径の分散モードは300μmであり、ゼオライトの粒径の分散モードは600μmである。換言すると、活性炭は一般に300μmの粒径を有し、ゼオライトは600μmの粒径を有する。前記ゼオライト及び活性炭の粒径値は、製造工程で、均一な混合と良好な成形を可能にするよう選択された。従って、ゼオライトと活性炭の混合を行う際には、より以上の圧力低下や困難さは生じない。
【0022】
前記組成物1は、活性炭4を含有する。異なった2種類の活性炭をテストした。使用した第1の活性炭4aは次の物理的性質を有する。B.E.T.表面積が1004m2/g、細孔容積が0.356cm3/g、全孔容積が0.422cm3/g、及び平均孔直径が4.6Åである。使用した第2の活性炭4bは次の物理的性質を有する。B.E.T.表面積が960m2/g、細孔容積が0.344cm3/g、全孔容積が0.404cm3/g、及び平均孔直径が5.0Åである。
【0023】
図3から7は、活性炭4単独、ゼオライト2単独及びゼオライトと活性炭4を含有する組成物の汚染ガスに対する漏出曲線を例示する表である。該漏出曲線は、選択された1又は2以上の吸着剤による汚染ガスの濾過効率を例示する。y軸は、1又は2以上の吸着剤を含有するフィルタの下流側の汚染ガス濃度(Cs)とフィルタの上流側の汚染ガス濃度(Ce)間の比である。「下流」及び「上流」の用語は、フィルタを通りかつ汚染ガスを帯有する空気流の移動方向に応じて、拡大適用される。汚染ガスの濃度が増加するほど、1又は2以上の吸着剤による汚染ガスの吸着効率が低下する。これらの表に提示されたテスト結果は、低濃度混合物に対して行ったものである。
【0024】
図3の汚染ガスはトルエンである。その濃度が0.3を超えないため、活性炭4はトルエンを良好に濾過する。ゼオライト単独は、Cs/Ce比ピークが1.2を超えるため、トルエン濾過に関しては明らかに不十分である。本発明の組成物は、活性炭4単独より効果的に濾過を行う。
【0025】
図4の汚染ガスはn−ブタンである。この表は、ゼオライト2と活性炭4を組み合わせると、活性炭4単独又はゼオライト単独より、n−ブタン濾過に対して、より効果的であることを示している。より具体的には、本発明の組成物は、活性炭4とゼオライト2の濾過が累積的になり、より良好な濾過を行う。従って、活性炭4とゼオライト2を組み合わせた相乗効果がある。
【0026】
図5の汚染ガスは二酸化窒素(NO2)である。二酸化窒素濾過に対するゼオライト2単独の作用、又は活性炭4単独の作用は、本発明の組成物の作用より明らかに劣っている。二酸化窒素濾過の結果は、本発明の組成物には相乗効果があり、この組成物は、2種類の吸着剤を単に並置させたものでないことを示している。実際、組成物1は、二酸化窒素を含む空気流に吸着剤を露出後、60時間でも、0.2未満のCs/Ce比を有する。これに対し、ゼオライト2は0.8を超えるCs/Ce比を、活性炭4は0.3を超えるCs/Ce比を有している。
【0027】
図6の汚染ガスはアセトアルデヒドである。組成物1は、活性炭4単独又はゼオライト2単独より良好にアセトアルデヒドを濾過する。ここで、組成物1は、0.7未満のCs/Ce比を有する。これに対し、ゼオライト2は0.7のCs/Ce比を有する。従って、ゼオライトと活性炭の混合物は、アセトアルデヒドに対するゼオライト自身の作用を改良する。
【0028】
図7の汚染ガスは硫化硫黄(H2S)である。ゼオライト2と活性炭4の混合物は、ゼオライト単独又は活性炭4単独の濾過結果を単に並置させたものと比較して汚染ガス濾過に関する真の改良を示している。
【0029】
図3から図7を参照すると、ゼオライトと活性炭を混合すると、種々の汚染ガスに対する濾過能力が大きく改善されると理解できる。換言すると、本発明の組成物は、フィルタ内でゼオライト層と活性炭層が物理的に離れているフィルタと比較して、汚染ガスの濾過効率を改良する。活性炭のみを使用しても汚染ガス(トルエン、n−ブタン、NO2)を十分に除去する。ゼオライトは上記ガスに対する効果は活性炭よりかなり悪いが、アセトアルデヒド吸着に対して、更に具体的にはアセトアルデヒド及び硫化水素の吸着に対しては有利である。
【0030】
従って、2種の吸着剤を混合すると、他の汚染物に対する同じ性能を維持しながら、特定の汚染物に対する吸着物質の効率を上昇させる。
【0031】
従って、ゼオライトを添加しても、トルエン、n−ブタン及びNO2に対する同じ性能が維持される。アセトアルデヒドに対する性能は大きく改善される。前記混合物は、H2Sに対しても有効である。この解決法は、人間の健康を良好に保護し、快適さを維持し、更に不快な臭いを減少させる。
【0032】
活性炭の性能を減少させず、かつゼオライト添加から利益を得るために、ゼオライトの割合は、5から35質量%、好ましくは10から20質量%でなければならない。より好ましくは、ゼオライトの割合は15質量%である。
【0033】
図8は、ゼオライト2と第1の活性炭4aを含有する第1組成物1aと、ゼオライト2と第2の活性炭4bを含有する第2組成物1bに対する硫化水素(H2S)の漏出曲線を例示する。第1組成物1aは、30時間後にも硫化水素に対する良好な濾過結果を提供するが、第2組成物1bは更に効果的に濾過を行う。30時間後には、前記第1組成物1aは0.4未満のCs/Ce比を有し、第2組成物1bは0.2未満のCs/Ce比を有する。これらの結果から、前記組成物1用の各吸着剤の選択を、汚染ガスに対する説得力のある濾過結果は得られるように、意図的に行える。ZSM−5構造を有しかつFeイオンを含有するゼオライト2の選択以外にも、活性炭を選択すると、組成物1の吸着剤の更なる相乗効果を改良できる。実際に、図3から8を参照すると、ゼオライト2と第2の活性炭4bの混合物は、テストした全ての汚染ガスに対して、最良の濾過性能を有すると考えられる。にもかかわらず、ゼオライト2と第1活性炭4aを含有する組成物1aは、分離されたゼオライト2及び活性炭4より良好な性能を与える。従って、第1の組成物1aも、ゼオライト単独及び活性炭単独と比較して相乗効果を有する。
【0034】
図9から12は、本発明の異なった組成物間の比較結果を例示している。第1組成物1aは、第1の活性炭1a及びゼオライト2を含有し、ゼオライト2の第1の活性炭1aに対する質量比は33%である。第2組成物1bは、第2の活性炭1b及びゼオライト2を含有し、ゼオライトの第2の活性炭2aに対する質量比は33%である。第3組成物1cは、第2の活性炭1b及びゼオライト2を含有し、ゼオライトの第2の活性炭2aに対する質量比は15%である。
【0035】
図9は、種々の汚染ガス用にテストした各組成物の吸着能を示している。第3の組成物1cは、特にアセトアルデヒド、硫化水素、二酸化窒素、n−ブタン及びトルエンに対し、最良の吸着能を示している。
【0036】
図10から12の濾過性能結果を与えるテストは、低濃度(自動車で使用される数十μg/m3のオーダー)の成分を混合して行う。テストされる汚染ガスは、本発明の組成物を含有するフィルタを通過する。テストされた汚染ガスは、次の通りである。トルエン、n−ブタン、二酸化窒素、アセトアルデヒド及び硫化水素。
【0037】
図10は、第3組成物1cは、0時間経過時、つまり空気流がエアフィルタを通過する際に、ゼオライト単独又は活性炭単独より良好な濾過を行うことを示している。実際、トルエンについて、第3組成物1cの濾過性能は83で、ゼオライト2は60で、活性炭4は80である。n−ブタン及び硫化水素についても同様である。二酸化窒素については、第3組成物1cと活性炭4の性能は同じであり(値は92)、第3組成物1cの性能は明らかにゼオライト2より良好である。
【0038】
図11は、30時間経過時の濾過性能を示している。第3組成物1cの性能は、トルエン、二酸化窒素及び硫化水素について、他の組成物1a、1b及びゼオライト2単独及び活性炭4単独より良好である。アセトアルデヒドについて、第3組成物1cの濾過性能は、ゼオライト単独と等価である。
【0039】
図12は、60時間経過時の濾過性能の結果を示し、第3組成物1cは、トルエン、n−ブタン、二酸化窒素、アセトアルデヒド及び硫化水素について、他の組成物1a、1b、ゼオライト単独及び活性炭単独の中で最良の結果を与えている。
【0040】
本発明は、更に本発明の組成物を含有する換気、加熱及び/又は空調システム用エアフィルタに関する。図13に例示したエアフィルタ12は、組成物1が収容された濾過媒体14を備える。この濾過媒体14は、数回折り畳んだ不織布材料である。前述の通り、組成物1は、ゼオライト2と活性炭4の混合物で、この混合物は、ゼオライト2単独又は活性炭4単独で得られる濾過性能より良好な濾過性能を与える。ゼオライト2は、Feイオンを含有する。組成物1は、図13に示すように、単一層で形成される。「単一層」とは、ゼオライトと活性炭は混合され、それらの間に、物理的な障害物が存在しないことであると理解される。エアフィルタの内部で、前記組成物は、全濾過媒体に亘って分布していても(図14)、濾過媒体中にストライプ状に分布していても(図15)良い。変形例として、前記組成物は、濾過媒体上に位置していても良い。
【0041】
変形例として、前記組成物は、第3の吸着剤を含有できる。例えば、前記組成物は、ゼオライトと、異なった活性炭の混合物を含有する。従って、前記組成物は、3種類の吸着剤、つまりゼオライトと異なった2種類の活性炭を含有する。「異なった」とは、前記混合物を構成する活性炭が、違った物理的性質を有することを意味する。例えば、活性炭の混合物は、第1の活性炭4aと第2の活性炭4bから構成される。下記特性を有する第3の活性炭4cも使用できる。この第3の活性炭4cは、0.327cm3/gの細孔容積、0.346cm3/gの全孔容積、95%の細孔容積割合、6.8Åの平均孔直径、及び969m2/gのB.E.T.表面積の物理的性質を有する。この活性炭は、「活性炭NC60」と称せられる。活性炭の混合物は、第1及び第2の活性炭4a及び4b、又は第1及び第3の活性炭4a及び4c、又は第2及び第3の活性炭4b及び4cの構成物のいずれかである。
【符号の説明】
【0042】
1 組成物
2 ゼオライト
4、4a、4b、4c 活性炭
6 ペンタシルユニット
10 ケージ
12 エアフィルタ
14 濾過媒体
Cs フィルタの下流側の汚染ガス濃度
Ce フィルタの上流側の汚染ガス濃度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭(4)及びゼオライト(2)を含んで成る組成物(1)において、前記ゼオライト(2)が鉄イオンを含有することを特徴とする組成物(1)。
【請求項2】
前記ゼオライト(2)が、0.1から1.2質量%の鉄イオンを含有する請求項1記載の組成物(1)。
【請求項3】
鉄イオンが、第一鉄又は第二鉄イオンである請求項1又は2に記載の組成物(1)。
【請求項4】
鉄イオンが、前記ゼオライト(2)の内部に保持されている請求項2又は3に記載の組成物(1)。
【請求項5】
ゼオライト(2)が、ZSM−5結晶構造を有している請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項6】
ゼオライト(2)のSiO2/Al2O3モル比が、60から20である請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項7】
ゼオライト(2)のSiO2/Al2O3モル比が、50から30である請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項8】
ゼオライト(2)のSiO2/Al2O3モル比が、40である請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項9】
ゼオライト(2)が疎水性である請求項1から8までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項10】
ゼオライト(2)の活性炭(4)に対する質量比が5から35%である請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項11】
ゼオライト(2)の活性炭(4)に対する質量比が10から20%である請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項12】
ゼオライト(2)の活性炭(4)に対する質量比が15%である請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項13】
活性炭(4)は、B.E.T.表面積が1004m2/g、細孔容積が0.356cm3/g、全孔容積が0.422cm3/g、及び平均孔直径が4.6Åである請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項14】
活性炭(4)は、B.E.T.表面積が960m2/g、細孔容積が0.344cm3/g、全孔容積が0.404cm3/g、及び平均孔直径が5.0Åである請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項15】
活性炭は、969m2/gのB.E.T.表面積、0.327cm3/gの細孔容積、0.346cm3/gの全孔容積、及び6.8Åの平均孔直径を有する請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項16】
活性炭は、異なった活性炭の混合物である請求項1から15までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項に記載の組成物(1)を含んで成る、換気、加熱及び空調システム用エアフィルタ(12)。
【請求項18】
ゼオライト及び活性炭が、単一層中に含まれている請求項17に記載のエアフィルタ。
【請求項1】
活性炭(4)及びゼオライト(2)を含んで成る組成物(1)において、前記ゼオライト(2)が鉄イオンを含有することを特徴とする組成物(1)。
【請求項2】
前記ゼオライト(2)が、0.1から1.2質量%の鉄イオンを含有する請求項1記載の組成物(1)。
【請求項3】
鉄イオンが、第一鉄又は第二鉄イオンである請求項1又は2に記載の組成物(1)。
【請求項4】
鉄イオンが、前記ゼオライト(2)の内部に保持されている請求項2又は3に記載の組成物(1)。
【請求項5】
ゼオライト(2)が、ZSM−5結晶構造を有している請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項6】
ゼオライト(2)のSiO2/Al2O3モル比が、60から20である請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項7】
ゼオライト(2)のSiO2/Al2O3モル比が、50から30である請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項8】
ゼオライト(2)のSiO2/Al2O3モル比が、40である請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項9】
ゼオライト(2)が疎水性である請求項1から8までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項10】
ゼオライト(2)の活性炭(4)に対する質量比が5から35%である請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項11】
ゼオライト(2)の活性炭(4)に対する質量比が10から20%である請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項12】
ゼオライト(2)の活性炭(4)に対する質量比が15%である請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項13】
活性炭(4)は、B.E.T.表面積が1004m2/g、細孔容積が0.356cm3/g、全孔容積が0.422cm3/g、及び平均孔直径が4.6Åである請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項14】
活性炭(4)は、B.E.T.表面積が960m2/g、細孔容積が0.344cm3/g、全孔容積が0.404cm3/g、及び平均孔直径が5.0Åである請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項15】
活性炭は、969m2/gのB.E.T.表面積、0.327cm3/gの細孔容積、0.346cm3/gの全孔容積、及び6.8Åの平均孔直径を有する請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項16】
活性炭は、異なった活性炭の混合物である請求項1から15までのいずれか1項に記載の組成物(1)。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項に記載の組成物(1)を含んで成る、換気、加熱及び空調システム用エアフィルタ(12)。
【請求項18】
ゼオライト及び活性炭が、単一層中に含まれている請求項17に記載のエアフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−512083(P2013−512083A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540446(P2012−540446)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068339
【国際公開番号】WO2011/064346
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(505113632)ヴァレオ システム テルミク (81)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068339
【国際公開番号】WO2011/064346
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(505113632)ヴァレオ システム テルミク (81)
【Fターム(参考)】
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