説明

車両屋根の熱線遮蔽工法

【課題】熱線遮蔽層を夏季にのみ必要とされる一般車両の屋根に、走行中に受ける風圧に吹き飛ばされないように確り積層することが出来にようにすると共に、それが不要となる冬季には専門業者によらず素人でも簡単に取り払えるようにし、以て、熱線遮蔽層の車両屋根への適用に伴うリスクを低減し、熱線遮蔽層を車両屋根に汎用し得るようにする。
【解決手段】マグネットシート11の表面に熱線遮蔽層12を積層して成る遮熱マグネットシート17を車両屋根13に、遮熱マグネットシートの磁力によって貼り合わせる。好ましくは、遮熱マグネットシートの車両の前進側の端縁14の木口15を、車両屋根に固定した縁取材16で被覆する。更に好ましくは、遮熱マグネットシートの車両の前進側の端縁において、遮熱マグネットシートと車両屋根の間に両面粘着テープ18を介在させ、その両面粘着テープを介して遮熱マグネットシート17を車両屋根13に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両屋根において直射日光の熱線を遮蔽し、直射日光による車内の昇温を抑える車両屋根の熱線遮蔽工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物や車両内部の直射日光による昇温を抑えるために、酸化ジルコニウムや酸化イツトリウム、酸化インジウム、チタン酸ナトリウム、6ホウ化物、ホウ化ランタン等の太陽熱遮蔽顔料の配合された塗料塗膜やフイルム(以下、熱線遮蔽層と言う。)を建物や車両の屋根に積層することは知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2−185572号公報
【特許文献2】特開2005−47179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、車両では人体頭部は屋根に極接近し、車両屋根からの強い輻射熱を受けるので、仮にエアコンによって車内が保冷されていても、人体頭部の車両屋根を介して直射日光から受ける影響が極めて大きく、熱線遮蔽層の車両屋根への適用が望まれる。とは言え、熱線遮蔽層を必要とするのは夏季だけであり、冬季には熱線遮蔽層は直射日光による車内の保温の妨げとなる。
そこで、タンクローリーや冷凍車両等の常時熱線遮蔽層を必要とする業務用車両は別として、一般車両においては、夏季積層された熱線遮蔽層は、冬季には取り払われるべきことになる。しかし、車両屋根に積層された熱線遮蔽層を取り払うことは容易ではなく、素人には殆ど不可能であり、専門業者に頼らざるを得ない。
特に、車両の外装材には極めて高度な耐久性が要求され、その品質は車両自体の商品価値を左右するので、一般市販の熱線遮蔽層を車両屋根に固定的に積層するときは大きなリスクを負うことになる。
【0005】
そこで本発明は、熱線遮蔽層を夏季にのみ必要とされる一般車両の屋根に、走行中に受ける風圧に吹き飛ばされないように確り積層することが出来にようにすると共に、それが不要となる冬季には専門業者によらず素人でも簡単に取り払えるようにし、もって、熱線遮蔽層の車両屋根への適用に伴うリスクを低減し、熱線遮蔽層を車両屋根に汎用し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両屋根の熱線遮蔽工法は、マグネットシート11の表面に熱線遮蔽層12を積層して成る遮熱マグネットシート17を車両屋根13に、遮熱マグネットシート17の磁力によって貼り合わせることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る車両屋根の熱線遮蔽工法の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、遮熱マグネットシート17の車両の前進側の端縁14の木口15を、車両屋根13に固定した縁取材16で被覆する点にある。
【0008】
本発明に係る車両屋根の熱線遮蔽工法の第3の特徴は、上記第2の特徴に加えて、縁取材16を車両の前進方向に向けて尖った尖端形断面形状にする点にある。
【0009】
本発明に係る車両屋根の熱線遮蔽工法の第4の特徴は、上記第2と第3の何れかの特徴に加えて、縁取材16の車両の後退方向の側縁25に、縁取材16の上面から車両の後退方向に向けて突出した廂23を突設する点にある。
【0010】
本発明に係る車両屋根の熱線遮蔽工法の第5の特徴は、上記第1と第2と第3と第4の何れかの特徴に加えて、遮熱マグネットシート17の車両の前進側の端縁14において、遮熱マグネットシート17と車両屋根13の間に両面粘着テープ18を介在させ、その両面粘着テープ18を介して遮熱マグネットシート17を車両屋根13に接着する点にある。
【0011】
本発明に係る車両屋根の熱線遮蔽工法の第6の特徴は、上記第5の特徴に加えて、両面粘着テープ18が、マグネットシート11に対し磁着性を示す点にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、熱線遮蔽層12を直接車両屋根13に接着積層するのではなく、それをマグネットシート11に接着積層し、マグネットシート11の磁力によって車両屋根13に磁着(圧着)させるので、時季に応じて随時取り外すことが出来る。
そのマグネットシート11は、磁性粉末をゴム組成物や熱可塑性樹脂組成物(熱可塑性ポリマー)に配合して成形されていて可撓性に富み、その全面において磁性粉末が磁化されているので、車両屋根13の僅かな起伏にもよく馴染んで全面が密着し、時速100kmを超える高速走行において吹き飛ばされることがない程度に車両屋根に強固に密着して保持される。
【0013】
特に、遮熱マグネットシート17の車両の前進側の端縁14の木口15を、車両屋根13に固定した縁取材16で被覆するときは、遮熱マグネットシート17の車両の前進側の端縁14の木口15が強い風圧を受ける強風下での高速走行においても、遮熱マグネットシート17がズレ移動せず、木口15の一部に風圧が集中して遮熱マグネットシート17が吹き飛ばされる危険が回避される。
【0014】
そして、遮熱マグネットシート17の車両の前進側の端縁14において、遮熱マグネットシート17と車両屋根13の間に両面粘着テープ18を介在させ、その両面粘着テープ18を介して遮熱マグネットシート17を車両屋根13に接着するときは、雨水等が遮熱マグネットシート17と車両屋根13の間に滲み込むことがなく、従って、雨水等と共に微細な塵埃が遮熱マグネットシート17と車両屋根13の間に入り込むことがなく、雨水や微細塵埃によって遮熱マグネットシート17の磁着力が弱まり、車両屋根13から剥離する危険も回避される。そのためには、非水溶性粘着剤に成る両面粘着テープ18、好ましくは溶媒としての水分を含有せず、更に好ましくは乳化剤や界面活性剤等の親水性成分を含有しない両面粘着テープ18を使用する。
【0015】
本発明において、遮熱マグネットシート17は、その有する磁力によって車両屋根13に接着しており、両面粘着テープ18は、遮熱マグネットシートと車両屋根との接着のためではなく、遮熱マグネットシートと車両屋根の間への水分の滲み込みを防ぐ防水材ないし止水材として使用されるものであるから、その遮熱マグネットシート17と車両屋根13の間に介在する両面粘着テープ18の有効幅Wは、それが防水材ないし止水材としての効用を発揮する2cm前後で十分であり、その程度の幅の両面粘着テープ18によっては、不使用時の車両屋根13からの遮熱マグネットシート17の取り外しが妨げられることはない。
【0016】
このように取外し自在になるので、仮に、遮熱マグネットシート17に使用した一般市販の熱線遮蔽層12が耐久性を欠くことが明らかになったとしても、遮熱マグネットシート17を取り替えるだけで済み、車両がリコールの対象になることはない。
そして、冬季に取り外される遮熱マグネットシート17の使用期間は6カ月程度の短期間であり、その程度の短期間であれば、熱線遮蔽層12の耐久性試験は容易に出来、その品質を保証することが出来る。
このため、一般市販の熱線遮蔽層12を使用した遮熱マグネットシート17の品質保証期間をワンシーズン(6カ月間程度)とすれば、格別耐久性の点でクレームが生じる虞はなく、又、使用期間がワンシーズン(6カ月間程度)なので、遮熱マグネットシート17の品質保証期間が短いと言うことが問題になることはない。
このように、本発明では、熱線遮蔽層12を車両屋根に固定的に積層するのではなく、マグネットシート11と一体化して係脱自在に車両屋根に積層することとしたので、その商品化にリスクを伴わず、一般市販の熱線遮蔽層の車両屋根への適用が可能となり、その実用価値を高めることが出来、本発明の産業上利とするところ多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
両面粘着テープ18は、防水材や止水材として使用されるので、前進側の端縁14だけではなく、遮熱マグネットシートの左右側縁19・20と車両の後退側の端縁21にも適用することが望ましい。同様に、縁取材16も、遮熱マグネットシートの左右側縁19・20と後退側の端縁21の木口をも被覆するように適用することが望ましい。そのように、遮熱マグネットシートの周囲を縁取るように両面粘着テープと縁取材を適用するとよい。
両面粘着テープ18は、鋼鉄その他の磁性金属が練り込まれていて車両屋根13と同様にマグネットシート11に対し磁着(圧着)性を示すものが望ましい。
【0018】
車両屋根に縁取材16に代用し得る畝状に突き出た部材が予め取り付けられているときは、その部材に木口15を突き合わせて遮熱マグネットシートを車両屋根に敷き込むとよい。
縁取材16は、木口15への風圧を避けるために使用される部材であるから、遮熱マグネットシート17の断面形状を風圧の作用方向に向けて尖った尖端形にするとよい。その尖端形断面における尖った角度は25〜35度にするとよい。そうすると、縁取材16を越えて通過した気流が、分厚い縁取材16の側縁25において渦流となり、風圧によって遮熱マグネットシート17の端縁14が車両屋根13へと押し付けるように作用することになるので、遮熱マグネットシートが風圧を受けて剥離する危険が更に少なくなる。そのためには、遮熱マグネットシートの端縁14の表面を被覆する程度の廂23を、縁取材16の分厚くなった側縁20に突設し、縁取材16の表面と遮熱マグネットシート17の表面との間に段差26が出来るようにする。
【0019】
縁取材16は、防水材ないし止水材としての両面粘着テープ18を遮熱マグネットシート17の周縁14・19・20・21から食み出させて使用し、その両面粘着テープの食み出し代24を介して車両屋根に固定することも出来るし、又、車両屋根に固定するために別途粘着剤22を縁取材16に適用することも出来る。
市販の片面粘着テープは、縁取材として、その一部分が遮熱マグネットシートの周縁14・19・20・21を被覆するように車両屋根13に接着使用することが出来る。
【0020】
マグネットシート11については、特公昭40−10116、特公昭40−2733、特公昭38−1187、特公昭37−16773、特公昭36−18281等に開示されており、磁性粒子を熱可塑性ポリマーに配合してシート状に成形し、磁場において磁化させた種々のマグネットシートが市販されている。本発明には、その市販のマグネットシート11を使用することが出来る。
熱線遮蔽層12についても、前記特許文献1と2に示す通り市販されている。本発明には、その市販の熱線遮蔽層を適用することが出来る。
市販の種々の熱線遮蔽塗料(12)の性能について試してみたが、日本薬品研究所株式会社製品「アドグリーンコート」が最もよい熱線遮蔽効果を発揮した。
【0021】
そのマグネットシート11への積層方法は、熱線遮蔽層12が塗料塗膜であれば、その塗料をマグネットシート11に塗布し、又、熱線遮蔽層12がTダイ押出機によって押出成形されたフイルムやカレンダー加工によって成形されたフイルムであれば、接着剤によってマグネットシート11に貼り合わせる。
当然のことながら、本発明の適用の対象となる車両屋根13は、マグネットシート11が磁着する鋼鉄その他の磁性金属製とするが、アルミニウムやFRP(繊維強化プラスチック)等の非磁性材料に成る車両屋根では、鋼鉄その他の磁性金属をベースとする磁性粘着テープを車両屋根に粘着し、その磁性粘着テープを介して遮熱マグネットシート17を車両屋根13に積層する。
【実施例】
【0022】
塩化ビニル樹脂組成物に磁性粉末を配合して成る厚み2mmの市販のマグネットシートに、日本薬品研究所株式会社製の熱線遮蔽塗料(品名;アドグリーンコート)を塗布した遮熱マグネットシートを乗用車の屋根に磁着させ、時速100kmで走行してみたが、車両屋根上での遮熱マグネットシートのズレ移動は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る遮熱マグネットシートの装着された車両屋根の斜視図であり、一部を円で囲んで拡大して図示している。
【符号の説明】
【0024】
11:マグネットシート
12:熱線遮蔽層
13:車両屋根
14:端縁
15:木口
16:縁取材
17:遮熱マグネットシート
18:両面粘着テープ
19:側縁
20:側縁
21:端縁
22:粘着剤
23:廂
24:食み出し代
25:側縁
26:段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットシート(11)の表面に熱線遮蔽層(12)を積層して成る遮熱マグネットシート(17)を車両屋根(13)に、遮熱マグネットシート(17)の磁力によって貼り合わせる車両屋根の熱線遮蔽工法。
【請求項2】
遮熱マグネットシート(17)の車両の前進側の端縁(14)の木口(15)を、車両屋根(13)に固定した縁取材(16)で被覆する前掲請求項1に記載の車両屋根の熱線遮蔽工法。
【請求項3】
縁取材(16)を車両の前進方向に向けて尖った尖端形断面形状にする前掲請求項2に記載の車両屋根の熱線遮蔽工法。
【請求項4】
縁取材(16)の車両の後退方向の側縁(25)に、縁取材(16)の上面から車両の後退方向に向けて突出した廂(23)を突設する前掲請求項2と3の何れかに記載の車両屋根の熱線遮蔽工法。
【請求項5】
遮熱マグネットシート(17)の車両の前進側の端縁(14)において、遮熱マグネットシート(17)と車両屋根(13)の間に両面粘着テープ(18)を介在させ、その両面粘着テープ(18)を介して遮熱マグネットシート(17)を車両屋根(13)に接着する前掲請求項1と2と3と4の何れかに記載の車両屋根の熱線遮蔽工法。
【請求項6】
両面粘着テープ(18)が、マグネットシート(11)に対し磁着性を示す前掲請求項5に記載の車両屋根の熱線遮蔽工法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−182152(P2007−182152A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1862(P2006−1862)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(506008434)株式会社クラフト (5)
【Fターム(参考)】