説明

車両情報モニタ装置および車両情報モニタ装置の伝送方法

【課題】併結される編成間で伝送方式が異なる場合でもハードウェアを追加することなく編成間における情報の伝送を可能とする車両情報モニタ装置を得る。
【解決手段】2次局21〜23と、2次局21〜23にて収集された車両情報を管理する1次局20と、を有して第1の編成列車Aに搭載され、第1の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置であって、第2の編成列車Bには、第2の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載され、第1の編成列車Aの併結車両に搭載される1次局20は、第1の伝送方式にて伝送された自編成内の2次局21〜23からの情報を第2の伝送方式の情報に変換して他編成の1次局10または2次局11〜13に送信すると共に、第2の伝送方式にて伝送された他編成の1次局10または2次局11〜13からの情報を第1の伝送方式の伝送方式の情報に変換して自編成の2次局21〜23に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報を収集する2次局と、2次局にて収集された車両情報を管理する1次局とを有し、編成列車(以下単に「編成」と記載する場合有り)に搭載されて情報伝送を行う車両情報モニタ装置および車両情報モニタ装置の伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両情報モニタ装置(列車モニタ装置あるいは列車情報管理装置と称することもある)は、列車の各車両に搭載された空調装置やブレーキなどの各種機器を監視する装置であり、編成端の車両には、各種機器の状態に関する車両情報を一括管理する中央局(以下「1次局」と称する)が設置され、中間車両には、各種機器の車両情報を収集する端末局(以下「2次局」と称する)が設置される。車両情報モニタ装置は、1次局と2次局との間、および2次局と2次局との間で情報の伝送を行うことにより情報を共有して車両搭載機器の監視を行う。
【0003】
このような車両情報モニタ装置を搭載した編成においては、編成内におけるデータ伝送方式が必ずしも同一の伝送方式であるとは限らず、例えば、新たに導入される第1の編成列車の伝送方式と既に導入されている第2の編成列車の伝送方式とが異なる場合がある。従って、このような編成を併結する場合には、自編成の伝送方式を他編成の伝送方式に変換するなどの措置が必要となる。ただし、各種の車両搭載機器が搭載されて列車においては、新たなハードウェアを追加することによるスペース上の制約が大きいため、車両内のスペースを犠牲にすることなく、伝送方式が異なる編成を併結した場合でもデータ伝送を可能とする車両情報モニタ装置の開発が望まれていた。
【0004】
下記特許文献1に示される従来技術は、併結される双方の列車に搭載され、制御情報を所定フォームの情報となるよう処理する情報処理部と、この情報処理部からの情報を共通の伝送信号に変換する伝送信号変換部とを備え、自列車からの制御情報を処理して共通の伝送信号に変換した上で他車両に送信すると共に、他列車からの制御情報を処理して共通の伝送信号に変換して自車両に取り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−109705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に代表される従来技術は、伝送方式が異なる編成間の併結に対応していないほか、双方の車両に新たなハードウェアを搭載する必要があるためスペース上の制約を受けるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、併結される編成間で伝送方式が異なる場合でもハードウェアを追加することなく編成間における情報の伝送を可能とする車両情報モニタ装置および車両情報モニタ装置の伝送方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、少なくとも自車両からの車両情報を収集する2次局と、前記2次局にて収集された車両情報を管理する1次局と、を有して第1の編成列車に搭載され、前記1次局と2次局との間で第1の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置であって、前記第1の編成列車に併結される前記第2の編成列車には、前記第1の伝送方式とは異なる第2の伝送方式により第2の編成列車に搭載された1次局と2次局との間の情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載され、前記第1の編成列車と前記第2の編成列車とが併結されたとき、前記第1の編成列車の併結車両に搭載される1次局または2次局は、前記第1の伝送方式にて伝送された自編成内の1次局または2次局からの情報を前記第2の伝送方式の情報に変換して他編成の1次局または2次局に送信すると共に、前記第2の伝送方式にて伝送された他編成の1次局または2次局からの情報を前記第1の伝送方式の情報に変換して自編成の1次局または2次局に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、第1の編成列車の併結車両に搭載された1次局または2次局が第1の伝送方式と第2の伝送方式とを相互に変換する機能を有するようにしたので、併結される編成間で伝送方式が異なる場合でもハードウェアを追加することなく編成間における情報の伝送が可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる車両情報モニタ装置を搭載した第1の編成列車と、当該第1の編成列車の上り側に併結され第1の編成列車の伝送方式とは異なる伝送方式を採用する車両情報モニタ装置を搭載した第2の編成列車との併結状態を示す図である。
【図2】図2は、図1に示される第1の編成列車と第2の編成列車とが併結したときの通信手順を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかる車両情報モニタ装置を搭載した第1の編成列車と、当該第1の編成列車の下り側に併結され第1の編成列車の伝送方式とは異なる伝送方式を採用する車両情報モニタ装置を搭載した第2の編成列車との併結状態を示す図である。
【図4】図4は、図3に示される第1の編成列車と第2の編成列車とが併結したときの通信手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる車両情報モニタ装置および車両情報モニタ装置の伝送方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかる車両情報モニタ装置(第1の車両情報モニタ装置)を搭載した第1の編成列車A(以下単に「列車A」と称する)と、当該列車Aの上り側に併結され列車Aの伝送方式(第1の伝送方式)とは異なる伝送方式(第2の伝送方式)を採用する車両情報モニタ装置(第2の車両情報モニタ装置)を搭載した第2の編成列車B(以下単に「列車B」と称する)との併結状態を示す図である。図2は、図1に示される列車Aと列車Bとが併結したときの通信手順を示す図である。
【0013】
本実施の形態では、下り方向に列車Aが併結され、上り方向に列車Bが併結された場面に関して説明する。説明の順としては、まず、列車Aおよび列車Bのそれぞれの構成に関して説明し、その次に列車Aおよび列車Bの併結後の編成全体の動作を説明する。
【0014】
まず、列車Aの構成を説明する。図1に示される列車Aは、複数台の車両からなり、一例として、複数台の車両2a〜2dから成る列車Bの車両2dに併結される併結車両1aと、この併結車両1a以外の車両である車両1b〜1dとで構成されている。
【0015】
車両1aには、車両情報モニタ装置の中央局である1次局20の他に、図示しない運転台およびモニタ表示器が搭載されている。1次局20には図示しない車両内伝送路が接続され、1次局20は、この車両内伝送路を介して、自車両内の機器やモニタ表示器等と接続されている。
【0016】
1次局20は、車両情報装置の一種であり、列車Aの各車両1a〜1dに搭載された各種機器の状態に関する車両情報を収集して一括管理すると共に、モニタ表示器を介して各機器の状態を乗務員などに通知する機能を有する。1次局20で一括管理される車両情報としては、例えば、各車両にて検出および収集された速度情報やドア開指令などである。編成全体で一括管理されるべきこれらの車両情報が、仮に2次局21〜23によって個々に管理された場合、各車両における動作が揃わない可能性がある。そこで、編成全体で一括管理されるべきこれらの車両情報に関しては、1次局20において管理することとしている。
【0017】
列車Aの車両1bには、車両情報モニタ装置の端末局である2次局21が搭載され、同様に、車両1cには2次局22、車両1dには2次局23が搭載されている。2次局21〜23には、図示しない車両内伝送路がそれぞれ接続され、2次局21〜23は、この車両内伝送路を介して、自車両内の機器と接続されている。
【0018】
1次局20および2次局21は車両間伝送線3aにて接続され、同様に、2次局21および2次局22は車両間伝送線3aにて接続され、2次局22および2次局23は車両間伝送線3aにて接続されている。
【0019】
1次局20と2次局21〜23との間では、各局に設けた受信部および送信部(図示せず)を介してバケツリレー方式で車両情報の送受信が行われる。例えば、1次局20から2次局23に対して車両情報を送信する場合、1次局20からの車両情報は、宛先情報に基づいて2次局21、2次局22、および2次局23の順で伝送される。
【0020】
一方、2次局23から1次局20に対して車両情報を送信する場合、2次局23からの車両情報は、宛先情報に基づいて2次局22、2次局21、および1次局20の順で伝送される。
【0021】
ここで、1次局20には、1次局20の前後に接続される局との接続口となるモデムが設置されており、図1においては一例として、上り側の列車Bからの伝送線を接続する一のモデム(モデム2)が示されている。このモデム2には、列車Bに搭載された1次局10および2次局11〜13がマルチドロップ式に接続されている。
【0022】
そして、1次局20は、列車Bの伝送方式が列車Aの伝送方式と異なる場合においても、併結時に列車Bの伝送方式を判別して1次局10と2次局11〜13との間で車両情報の授受を可能とする中継局としての機能を備えている(詳細は後段で説明する)。なお、1次局20は、列車Aと列車Bとの間に介在する連結器3が接続されたとき、1次局10、2次局11、2次局12、および2次局13と電気的に接続される。
【0023】
次に、列車Bの構成を説明する。図1に示される列車Bは、複数台の車両からなり、一例として、下り側の列車Aの併結車両1aに併結される被併結車両2dと、この被併結車両以外の車両である車両2a〜2cとで構成されている。
【0024】
車両2aには、中央局である1次局10の他に、図示しない運転台およびモニタ表示器が搭載されている。1次局10は、図示しない車両内伝送路が接続され、この車両内伝送路を介して、自車両内の機器やモニタ表示器等と接続されている。
【0025】
1次局10は、車両情報装置の一種であり、列車Bの各車両2a〜2dに搭載された各種機器の状態に関する車両情報を収集して一括管理すると共に、モニタ表示器を介して各機器の状態を乗務員などに通知する機能を有する。1次局10で一括管理される車両情報としては、1次局20と同様に、例えば、各車両にて検出および収集された速度情報やドア開指令などである。
【0026】
列車Bの車両2bには、端末局である2次局11が搭載され、同様に、車両2cには2次局12、車両2dには2次局13が搭載されている。2次局11〜13には、図示しない車両内伝送路がそれぞれ接続され、2次局11〜13は、この車両内伝送路を介して、自車両内の機器と接続されている。
【0027】
1次局10および2次局11は車両間伝送線3bにて接続され、同様に、2次局11および2次局12は車両間伝送線3bにて接続され、2次局12および2次局13は車両間伝送線3bにて接続されている。そして、1次局10と2次局11〜13との間では、ブロードキャスト方式で車両情報の送受信が行われる。
【0028】
次に、図2を参照して、列車Aと列車Bの併結時の動作を説明する。
【0029】
まず、連結検知線4が接続される前において、列車Aに搭載される1次局20は、列車Bの2次局としてスタンバイしている。連結検知線4が接続されたとき、1次局10は、列車Aとの連結を検知する(ステップS101)と共に、1次局20は、列車Bとの連結を検知する(ステップS102)。
【0030】
1次局10は、1次局20に対してポーリング信号を送信し(シーケンスSQ101)、1次局20は、連結が検知されてからの所定期間内に、1次局10からのポーリング信号を受信したか否かを判断する。
【0031】
1次局20は、所定期間内にポーリング信号を受信した場合、連結相手が列車Bであると判断する(ステップS103)。そして、1次局20は、連結相手が列車Bであると判定したことを示す応答信号を返す(シーケンスSQ102)。この応答信号には、列車Aの両数に関する情報が含まれているものとする。
【0032】
なお、1次局10からのポーリング信号が所定期間内に1次局20に到達しなかった場合(シーケンスSQ103)、1次局20は、連結相手が列車Aと同じ伝送方式を採用する編成であると判断する。
【0033】
SQ101およびSQ102の動作と平行して、1次局20は、1次局10に対してポーリング信号を送信し(シーケンスSQ101’)、1次局10は、連結が検知されてからの所定期間内に、1次局20からのポーリング信号を受信したか否かを判断する。
【0034】
1次局10は、所定期間内にポーリング信号を受信した場合、連結相手が列車Aであると判断する(ステップS103’)。そして、1次局10は、連結相手が列車Aであると判定したことを示す応答信号を返す(シーケンスSQ102’)。この応答信号には、列車Bの両数に関する情報が含まれているものとする。
【0035】
なお、1次局20からのポーリング信号が所定期間内に1次局10に到達しなかった場合(シーケンスSQ103’)、1次局10は、連結相手が列車Bと同じ伝送方式を採用する編成であると判断する。
【0036】
ここで、併結後の編成(列車A+列車B)では、上り側編成の先頭車両2aに搭載される中央局が編成全体の1次局として機能し、第2の車両(2b〜2d、1a〜1d)に搭載される端末局が2次局として機能するのが一般的である。従って、図1に示される1次局10は、編成全体での1次局として機能する。
【0037】
次に、図1を参照して、列車Aから列車Bへ車両情報を送信する場合と、列車Bから列車Aに車両情報を送信する場合の動作を具体例で説明する。
【0038】
まず、列車Aの2次局23から列車Bの1次局10に車両情報を送信する場合について説明する。2次局23からの車両情報は、バケツリレー方式で順次伝送されて1次局20に到達する。1次局20に到達した車両情報は、送信元情報である局番04と共にブロードキャスト方式にて1次局10と2次局11〜13に送信される。
【0039】
このように、1次局20は、バケツリレー方式で伝達された車両情報をブロードキャスト方式にて送信する。そして、1次局10は、送信元情報を参照することで2次局23からの車両情報であることを把握する。
【0040】
次に、列車Bの1次局10から列車Aの2次局23に車両情報を送信する場合について説明する。1次局10は、1次局20、2次局21、2次局22、および2次局23の局番を把握している。例えば、1次局10は、1次局20を局番号11の2次局、2次局21を局番号12の2次局、2次局22を局番号13の2次局、2次局23を局番号14の2次局として把握している。従って、1次局10は、宛先情報である局番14と共に車両情報をブロードキャスト方式で送信する。列車Bの2次局11、2次局12、または2次局13から列車Aの2次局23に車両情報を送信する場合も同様である。このように、列車Bに搭載される1次局または2次局は、列車Aの併結車両1aに搭載される1次局を自編成の2次局と見なして情報伝送を行う。
【0041】
宛先情報および車両情報を受信した1次局20では、局番14を局番04に読み替えて、隣接する2次局21へ当該車両情報を送信する。そして、この車両情報は、2次局21〜2次局23へバケツリレー方式にて順次伝送される。
【0042】
本実施の形態にかかる車両情報モニタ装置によれば、列車B内の2次局の一部が、あたかも列車Aの併結車両1aに搭載されているかのように見える。すなわち、1次局20は、列車Bからの車両情報をブロードキャスト方式で送信可能な局番号11の2次局に見える。以下同様に、2次局21は局番号12の2次局、2次局22は局番号13の2次局、そして2次局23は局番号14の2次局に見える。
【0043】
ただし、この場合でも、1次局20は、列車A内の2次局21、2次局22、および2次局23との間では1次局として機能する。
【0044】
このように、列車Aの上り側に列車Bが併結された場合、列車Aの併結車両1aに搭載される1次局20は、第1の伝送方式であるバケツリレー方式にて伝送された自編成A内の2次局21〜23からの情報を第2の伝送方式であるブロードキャスト方式の情報に変換して他編成Bの1次局10または2次局11〜13に送信すると共に、第2の伝送方式にて伝送された他編成Bの1次局10または2次局11〜13からの情報を第1の伝送方式の伝送方式の情報に変換して自編成Aの2次局21〜23に送信する。
【0045】
次に、上り方向に列車Aが併結され、下り方向に列車Bが併結された場面に関して説明する。説明の順としては、まず、列車Aおよび列車Bのそれぞれの構成に関して説明し、その次に列車Aおよび列車Bの併結後の編成全体の動作を説明する。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態にかかる車両情報モニタ装置(第1の車両情報モニタ装置)を搭載した列車Aと、当該列車Aの下り側に併結され列車Aの伝送方式とは異なる伝送方式を採用する車両情報モニタ装置(第2の車両情報モニタ装置)を搭載した列車Bとの併結状態を示す図であり、図4は、図3に示される列車Aと列車Bとが併結したときの通信手順を示す図である。
【0047】
まず、列車Aの構成を説明する。図3に示される列車Aは、図1に示される列車Aと基本構成が同じであり、列車Bに併結される被併結車両5dと、この被併結車両以外の車両である車両5a〜5cとで構成されている。
【0048】
車両5aには、車両情報モニタ装置の中央局である1次局30の他に、図示しない運転台およびモニタ表示器が搭載されている。1次局30には図示しない車両内伝送路が接続され、1次局30は、この車両内伝送路を介して、自車両内の機器やモニタ表示器等と接続されている。
【0049】
1次局30は、図1に示される1次局20と同様に、車両情報装置の一種であり、列車Aの各車両5a〜5dに搭載された各種機器の状態に関する車両情報を収集して一括管理すると共に、モニタ表示器を介して各機器の状態を乗務員などに通知する機能を有する。1次局30で一括管理される車両情報としては、例えば、各車両にて検出および収集された速度情報やドア開指令などである。1次局30で車両情報が一括管理される理由に関しては、図1に示される1次局20と同様であるので、その説明を割愛する。
【0050】
列車Aの車両5bには、車両情報モニタ装置の端末局である2次局31が搭載され、同様に、車両5cには2次局32、車両5dには2次局33が搭載されている。2次局31〜33には、図示しない車両内伝送路がそれぞれ接続され、2次局31〜33は、この車両内伝送路を介して、自車両内の機器と接続されている。
【0051】
1次局30および2次局31は車両間伝送線3cにて接続され、同様に、2次局31および2次局32は車両間伝送線3cにて接続され、2次局32および2次局33は車両間伝送線3cにて接続されている。
【0052】
1次局30と2次局31〜33との間では、バケツリレー方式で車両情報の送受信が行われる。例えば、1次局30から2次局33に対して車両情報を送信する場合、1次局30からの車両情報は、宛先情報に基づいて2次局31、2次局32、および2次局33の順で伝送される。
【0053】
一方、2次局33から1次局30に対して車両情報を送信する場合、2次局33からの車両情報は、宛先情報に基づいて2次局32、2次局31、および1次局30の順で伝送される。
【0054】
ここで、2次局33には、下り側の列車Bからの伝送線を接続するモデム1が設置されている。このモデム1には、列車Bに搭載された1次局40および2次局41〜43がマルチドロップ式に接続されている。
【0055】
そして、2次局33は、列車Bの伝送方式が列車Aの伝送方式と異なる場合においても、併結時に列車Bの伝送方式を判別して1次局40と2次局41〜43との間で車両情報の授受を可能とする機能を備えている。なお、2次局33は、列車Aと列車Bとの間に介在する連結器3が接続されたときに、列車Bに搭載される1次局40、2次局41、2次局42、および2次局43と電気的に接続される。
【0056】
次に、列車Bの構成を説明する。図3に示される列車Bは、図1に示される列車Bと基本構成が同じであり、一例として、上り側の列車Aの被併結車両5dに併結される併結車両6aと、この併結車両以外の車両である車両6b〜6dとで構成されている。
【0057】
車両6aには、中央局である1次局40の他に、図示しない運転台およびモニタ表示器が搭載されている。1次局40は、図示しない車両内伝送路が接続され、この車両内伝送路を介して、自車両内の機器やモニタ表示器等と接続されている。
【0058】
1次局40は、車両情報装置の一種であり、列車Bの各車両6a〜6dに搭載された各種機器の状態に関する車両情報を収集して一括管理すると共に、モニタ表示器を介して各機器の状態を乗務員などに通知する機能を有する。1次局40で一括管理される車両情報としては、1次局30と同様に、例えば、各車両にて検出および収集された速度情報やドア開指令などである。
【0059】
列車Bの車両6bには、端末局である2次局41が搭載され、同様に、車両6cには2次局42、車両6dには2次局43が搭載されている。2次局41〜43には、図示しない車両内伝送路がそれぞれ接続され、2次局41〜43は、この車両内伝送路を介して、自車両内の機器と接続されている。
【0060】
1次局40および2次局41は車両間伝送線3dにて接続され、同様に、2次局41および2次局42は車両間伝送線3dにて接続され、2次局42および2次局43は車両間伝送線3dにて接続されている。そして、1次局40と2次局41〜43との間では、ブロードキャスト方式で車両情報の送受信が行われる。
【0061】
次に、図4を参照して、列車Aと列車Bの併結時の動作を説明する。
【0062】
まず、連結検知線4が接続される前において、列車Aに搭載される2次局33は、列車Bの2次局としてスタンバイしている。連結検知線4が接続されたとき、列車Bに搭載される1次局40は、列車Aとの連結を検知する(ステップS201)と共に、2次局33は、列車Bとの連結を検知する(ステップS202)。
【0063】
1次局40は、2次局33に対してポーリング信号を送信し(シーケンスSQ201)、2次局33は、連結が検知されてからの所定期間内に、1次局40からのポーリング信号を受信したか否かを判断する。
【0064】
2次局33は、所定期間内にポーリング信号を受信した場合、連結相手が列車Bであると判断する(ステップS203)。そして、2次局33は、連結相手が列車Bであると判定したことを示す応答信号を返す(シーケンスSQ202)。この応答信号には、列車Aの両数に関する情報が含まれているものとする。
【0065】
なお、1次局40からのポーリング信号が所定期間内に2次局33に到達しなかった場合(シーケンスSQ203)、2次局33は、連結相手が列車Aと同じ伝送方式を採用する編成であると判断する。
【0066】
SQ201およびSQ202の動作と平行して、2次局33は、1次局40に対してポーリング信号を送信し(シーケンスSQ201’)、1次局40は、連結が検知されてからの所定期間内に、2次局33からのポーリング信号を受信したか否かを判断する。
【0067】
1次局40は、所定期間内にポーリング信号を受信した場合、連結相手が列車Aであると判断する(ステップS203’)。そして、1次局40は、連結相手が列車Aであると判定したことを示す応答信号を返す(シーケンスSQ202’)。この応答信号には、列車Bの両数に関する情報が含まれているものとする。
【0068】
なお、2次局33からのポーリング信号が所定期間内に1次局40に到達しなかった場合(シーケンスSQ203’)、1次局40は、連結相手が列車Bと同じ伝送方式を採用する編成であると判断する。
【0069】
ここで、併結後の編成(列車A+列車B)では、上り側編成の先頭車両5aに搭載される中央局が編成全体の1次局として機能し、第2の車両(5b〜5d、6a〜6d)に搭載される端末局が2次局として機能するのが一般的である。従って、図3に示される1次局30は、編成全体での1次局として機能する。
【0070】
次に、図3を参照して、列車Aから列車Bへ車両情報を送信する場合と、列車Bから列車Aに車両情報を送信する場合の動作を具体例で説明する。
【0071】
まず、列車Aの1次局30から列車Bの2次局43に車両情報を送信する場合について説明する。1次局30からの車両情報は、バケツリレー方式で順次伝送されて2次局33に到達する。2次局33に到達した車両情報は、送信元情報である局番01と共にブロードキャスト方式にて1次局40と2次局41〜43に送信される。
【0072】
このように、2次局33は、バケツリレー方式で伝達された車両情報をブロードキャスト方式にて送信する。そして、2次局43は、送信元情報を参照することで1次局30からの車両情報であることを把握する。
【0073】
次に、列車Bの2次局43から列車Aの1次局30に車両情報を送信する場合について説明する。2次局43は、1次局30、2次局31、2次局32、および2次局33の局番を把握している。例えば、2次局43は、1次局30を局番号11の1次局、2次局31を局番号12の2次局、2次局32を局番号13の2次局、2次局33を局番号14の2次局と把握している。従って、2次局43は、宛先情報である局番11と共に車両情報をブロードキャスト方式で送信する。列車Bの2次局41、2次局42、または1次局40から列車Aの2次局33に車両情報を送信する場合も同様である。このように、列車Bに搭載される1次局または2次局は、列車Aの併結車両5aに搭載される2次局を自編成の2次局と見なして情報伝送を行う。
【0074】
宛先情報および車両情報を受信した2次局33では、局番11を局番01に読み替えて、隣接する2次局32へ当該車両情報を送信する。そして、この車両情報は、2次局32〜2次局30へバケツリレー方式にて順次伝送される。
【0075】
本実施の形態にかかる車両情報モニタ装置によれば、列車B内の2次局の一部が、あたかも列車Aの被併結車両5dに搭載されているかのように見える。すなわち、1次局30は、列車Bからの車両情報をブロードキャスト方式で送信可能な局番号11の2次局に見える。以下同様に、2次局31は局番号12の2次局、2次局32は局番号13の2次局、そして2次局33は局番号14の2次局に見えることとなる。
【0076】
ただし、この場合でも、2次局33は、列車A内の1次局30、2次局31、および2次局32との間では、列車A内の2次局として機能する。
【0077】
このように、列車Aの下り側に列車Bが併結された場合、列車Aの併結車両5dに搭載される2次局33は、第1の伝送方式であるバケツリレー方式にて伝送された自編成A内の2次局32からの情報を第2の伝送方式であるブロードキャスト方式の情報に変換して他編成Bの1次局40または2次局41〜43に送信すると共に、第2の伝送方式にて伝送された他編成Bの1次局40または2次局41〜43からの情報を第1の伝送方式の伝送方式の情報に変換して自編成Aの2次局32に送信する。
【0078】
なお、上述した所定期間は、バケツリレー方式における伝送時間と、ブロードキャスト方式における伝送時間との差に着目して設定される時間である。具体例で説明すると、例えば、上り側に併結される編成が列車Bである場合、列車Bからのポーリング(例えば、1次局10からのポーリング)は、ブロードキャスト方式にて列車Aの1次局20に到達する。一方、上り側に併結される編成が列車Aと同じ伝送方式の他編成である場合、この他編成からのポーリングは、バケツリレー方式にて、列車Aの1次局20に到達することとなる。従って、上り側の他編成からのポーリングが列車Aの1次局20に到達するまでの時間は、上り側に併結される他編成の種別によって異なることとなる。本実施の形態にかかる車両情報モニタ装置は、このようなことを考慮して、連結検知線4による連結検知をトリガーとして所定期間内にポーリングが到着したか否かを判断することによって、被併結側の編成が同じ伝送方式を採用している編成であるか否かを判別可能に構成されている。
【0079】
なお、本実施の形態では、列車Aまたは列車Bの両数をそれぞれ4台として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、列車Aの両数を8両、列車Bの両数を4両としても同様である。
【0080】
なお、本実施の形態では、簡単のため、車両1台に対して1つの2次局を設置する態様として説明したが、これに限定されるわけではなく、例えば、複数の車両に対して1つの2次局を設置してもよい。この場合、2次局は、自車両に搭載された機器からの車両情報のみならず、自車両に近設する車両に搭載された機器からの車両情報も収集することができる。このように構成すれば2次局の設置コストを低減可能である。
【0081】
なお、本実施の形態にかかる各1次局の機能は、2次局からの車両情報を収集して一括管理する機能のみに限定されるものではなく、例えば、自車両からの車両情報を収集する2次局の機能も有するものとする。
【0082】
なお、力行またはブレーキ指令などの主に保安上の制御に関連した制御指令情報に関しては、各編成内に配設されている図示しない引き通し線によって伝送されるものとし、本実施の形態ではその説明を割愛している。
【0083】
なお、本実施の形態では一例として2つの列車を併結した場合に関して説明しているが、本実施の形態にかかる車両情報モニタ装置および伝送方法は、3つ以上の列車を併結した編成にも適用可能である。例えば、列車Aの上り側に列車Bを併結した場合において、この列車Aの下り側に列車Bを併結した場合、併結後の編成全体の組み合わせはBABとなる。また、列車Aの上り側に列車Bを併結した場合において、更にこの列車Bの上り側に列車Aを併結した場合、併結後の編成全体の組み合わせはABAとなる。一方、列車Aの下り側に列車Bを併結した場合において、更にこの列車Bの下り側に列車Aを併結した場合、併結後の編成全体の組み合わせはABAとなる。また、列車Aの下り側に列車Bを併結した場合において、この列車Aの上り側に列車Bを併結した場合、併結後の編成全体の組み合わせは、BABとなる。このように列車Aと列車Bを組み合わせた編成にも、本実施の形態にかかる車両情報モニタ装置および伝送方法を適用可能である。
【0084】
以上に説明したように、本実施の形態にかかる車両情報モニタ装置は、第1の編成列車Aに併結される第2の編成列車Bには、第1の伝送方式とは異なる第2の伝送方式により第2の編成列車に搭載された1次局と2次局との間の情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載され、第1の編成列車Aの併結車両に搭載される1次局または2次局は、第1の伝送方式にて伝送された自編成A内の1次局または2次局からの情報を第2の伝送方式の情報に変換して他編成Bの1次局または2次局に送信すると共に、第2の伝送方式にて伝送された他編成Bの1次局または2次局からの情報を第1の伝送方式の伝送方式の情報に変換して自編成Aの1次局または2次局に送信するようにしたので、列車Aにかかる1次局および2次局のソフトウェア改修のみで、伝送方式が同じ編成との併結時のみならず、伝送方式が異なる編成Bとの併結時においても車両情報の授受が可能となる。従って、新たなハードウェアの追加が不要であると共に、車両の空きスペースを他の用途に有効利用することが可能である。
【0085】
なお、本実施の形態に示した車両情報モニタ装置は、本発明の内容の一例を示すものであり、更なる別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは無論である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明は車両情報モニタ装置および車両情報モニタ装置の伝送方法に適用可能であり、特に、併結される編成間で伝送方式が異なる場合でもハードウェアを追加することなく編成間における情報の伝送を可能とする発明として有用である。
【符号の説明】
【0087】
1a、1b、1c、1d、2a、2b、2c、2d、5a、5b、5c、5d、6a、6b、6c 車両
3 連結器
3a、3b、3c、3d 車両間伝送線
4 連結検知線
10、20、30、40 1次局
11、12、13、21、22、23、31、32、33、41、42、43 2次局
A 第1の編成列車
B 第2の編成列車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも自車両からの車両情報を収集する2次局と、前記2次局にて収集された車両情報を管理する1次局と、を有して第1の編成列車に搭載され、前記1次局と2次局との間で第1の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置であって、
前記第1の編成列車に併結される第2の編成列車には、前記第1の伝送方式とは異なる第2の伝送方式により前記第2の編成列車に搭載された1次局と2次局との間の情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載され、
前記第1の編成列車と前記第2の編成列車とが併結されたとき、
前記第1の編成列車の併結車両に搭載される1次局または2次局は、
前記第1の編成列車と前記第2の編成列車との連結状態を検知する連結検知線が接続されてからの所定期間内に、前記第2の編成列車に搭載された1次局からのポーリングの受信の有無により、前記第2の編成列車には前記第2の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載されているか否かを判断し、
前記第1の伝送方式にて伝送された自編成内の1次局または2次局からの情報を前記第2の伝送方式の情報に変換して他編成の1次局または2次局に送信すると共に、前記第2の伝送方式にて伝送された他編成の1次局または2次局からの情報を前記第1の伝送方式の情報に変換して自編成の1次局または2次局に送信することを特徴とする車両情報モニタ装置。
【請求項2】
前記第1の編成列車の併結車両に搭載される1次局または2次局は、
前記第1の編成列車と前記第2の編成列車との連結状態を検知する連結検知線が接続されてからの所定期間内に、前記第2の編成列車に搭載された1次局からのポーリングを受信した場合、前記第2の編成列車には前記第2の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載されていると判断することを特徴とする請求項1に記載の車両情報モニタ装置。
【請求項3】
前記第1の編成列車の併結車両に搭載される1次局または2次局は、
前記第1の編成列車と前記第2の編成列車との連結状態を検知する連結検知線が接続されてからの所定期間内に、前記第2の編成列車に搭載された1次局からのポーリングを受信しなかった場合、前記第2の編成列車には前記第1の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載されていると判断することを特徴とする請求項1に記載の車両情報モニタ装置。
【請求項4】
前記第1の伝送方式は、ブロードキャスト方式であり、
前記第2の伝送方式は、2次局から1次局に対して車両情報を順次伝送し、1次局から2次局に対して車両情報を順次伝送する伝送方式であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の車両情報モニタ装置。
【請求項5】
少なくとも自車両からの車両情報を収集する2次局と前記2次局にて収集された車両情報を管理する1次局とを有して第1の編成列車に搭載され前記1次局と2次局との間で第1の伝送方式による情報伝送を行う第1の車両情報モニタ装置と、前記第1の編成列車に併結される第2の編成列車に搭載され前記第1の伝送方式とは異なる第2の伝送方式により前記第2の編成列車に搭載された1次局と2次局との間の情報伝送を行う第2の車両情報モニタ装置と、の間の伝送方法であって、
前記第1の編成列車と前記第2の編成列車とが併結されたとき、
前記第2の編成列車に搭載される1次局または2次局は、
前記第1の編成列車の併結車両に搭載される1次局または2次局を自編成の2次局と見なして情報伝送を行い、
前記第1の編成列車の併結車両に搭載される1次局または2次局は、
前記第1の編成列車と前記第2の編成列車との連結状態を検知する連結検知線が接続されてからの所定期間内に、前記第2の編成列車に搭載された1次局からのポーリングの受信の有無により、前記第2の編成列車には前記第2の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載されているか否かを判断する判断ステップと、
前記第1の伝送方式にて伝送された自編成内の1次局または2次局からの情報を前記第2の伝送方式の情報に変換して他編成の1次局または2次局に送信すると共に、前記第2の伝送方式にて伝送された他編成の1次局または2次局からの情報を前記第1の伝送方式の情報に変換して自編成の1次局または2次局に送信する送信ステップとを含むことを特徴とする車両情報モニタ装置の伝送方法。
【請求項6】
前記判断ステップには、
前記第1の編成列車と前記第2の編成列車との連結状態を検知する連結検知線が接続されてからの所定期間内に、前記第2の編成列車に搭載された1次局からのポーリングを受信した場合、前記第2の編成列車には前記第2の車両情報モニタ装置が搭載されていると判断するステップが含まれることを特徴とする請求項5に記載の車両情報モニタ装置の伝送方法。
【請求項7】
前記判断ステップには、
前記第1の編成列車と前記第2の編成列車との連結状態を検知する連結検知線が接続されてからの所定期間内に、前記第2の編成列車に搭載された1次局からのポーリングを受信しなかった場合、前記第2の編成列車には前記第1の伝送方式による情報伝送を行う車両情報モニタ装置が搭載されていると判断するステップが含まれることを特徴とする請求項5に記載の車両情報モニタ装置の伝送方法。
【請求項8】
前記第1の伝送方式は、ブロードキャスト方式であり、
前記第2の伝送方式は、2次局から1次局に対して車両情報を順次伝送し、1次局から2次局に対して車両情報を順次伝送する伝送方式であることを特徴とする請求項5〜7の何れか1つに記載の車両情報モニタ装置の伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−90369(P2012−90369A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232573(P2010−232573)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】