説明

車両排水構造

【課題】従来のドレインプラグにおいては、座金部30(washer)に排水穴25(outlet)を設け、座金部より離間して排水穴を覆うように排水穴と同一形状の円盤(disk)を設けているため、騒音を十分に消音することができなかった。
【解決手段】このドレインプラグは、車体パネルの穴部を塞ぐように形成される座面部と、座面部に車体パネルの穴部に対応した位置に車室内と車室外とが連通するように設けられた排水穴と、座面部に排水穴と連通して排水穴に車室内側から排水を導くように車室内側に突出して形成される通路部と、排水穴を囲いつつ、排出穴から下方に離間した位置で開放するように、座面部から車室外側へ立設する外縁部と、車室外側から見て排水穴を覆いつつ、外縁部が開放した位置で下方に向けて主開口部を形成するように外縁部の車室外側を塞ぐ前面部とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に溜まった水を車室外に排水するための車両排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドレインプラグとしては、特許文献1に記載の通り、座金部(washer)に排水穴(outlet)を設け、座金部より離間して排水穴を覆うように排水穴と同一形状の円盤(disk)を設け、排水穴への騒音の侵入を防止するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7240700
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のドレインプラグにおいては、上記構成となっているため、騒音が消音されないまま、排水穴に浸入しやすいものであり、十分な消音効果を得ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、本発明の車両排水構造は、車室内と車室外とを仕切る車体パネルにあけられた穴部に取り付けたドレインプラグを介して車室内から車室外へ排水するものである。このドレインプラグは、車体パネルの穴部を塞ぐように形成される座面部と、座面部の車体パネルの穴部に対応した位置に車室内と車室外とが連通するように設けられた排水穴と、座面部に排水穴と連通して排水穴に車室内側から排水を導くように車室内側に突出して形成される通路部と、排水穴を囲いつつ、排出穴から下方に離間した位置で開放するように、座面部から車室外側へ立設する外縁部と、車室外側から見て排水穴を覆いつつ、外縁部が開放した位置で下方に向けて主開口部を形成するように外縁部の車室外側を塞ぐ前面部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のドレインプラグによれば、上記構成となっているため、主開口より進入した騒音が反射することにより消音されるため、車室内への騒音に対する消音効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態におけるドレインプラグの車体パネル取り付け状態を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態におけるドレインプラグを示す斜視図。
【図3】図1のI−Iでの部分断面を含み、第1の実施形態における車両排水構造を示す車両側面図。
【図4】図3のII−IIでの部分断面を含み、第1の実施形態における車両排水構造を示す車両前面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施例1)
以下、本発明の第1の実施例を図面と共に説明する。
第1の実施例における車両排水構造100の構成を説明する。
【0009】
第1の実施例における車両排水構造100は、図1〜4に示す通り、車幅方向に延在するカウルボックス155とカウルボックス155に取り付けられるドレインプラグ105とで構成される。ドレインプラグ105は、通路部としての筒部110と座面部としての円盤部111と外縁部としての立て壁部112と前面部としての主前壁部113と排水穴としての排水用穴115と主開口部としての中央開口部140と第1外壁部としての第1側方壁部116および第1前壁部137と、第2外壁部としての第2側方壁部118および第2前壁部138とを有し、カウルボックス155の車体パネルとしてのカウル後面部156に取り付けられる。排水は、このドレインプラグ105を介して車室内から車室外へ排水される。
【0010】
カウルボックス155は、車両前後方向に離間して設けられるカウル前面部157およびカウル後面部156と、これらの下端をつなぐカウルボックス155の底面としてのカウル底面部158とで構成されている。尚、カウル後面部156は、車室内と車室外とを仕切り、車室内側かつ車両上方に向けて傾斜し、ドレインプラグ105を取り付ける為に、穴部としての取付穴159を設けている。また、カウルボックス155には、図示しない周知の車外への排水構造が設けられている。
【0011】
円盤部111は、排水が流出可能なように、カウル後面部156の取付穴159に対応した位置に車室内側の一方の面としての一方面123と車室外側の他方の面としての他方面124を貫通させて車室内と車室外とを連通させる排水用穴115を有し、カウル後面部156に車室内側から取り付けられた状態で、取付穴159を車室内側から塞ぐような大きさとなっている。
【0012】
筒部110は、筒状となっており、排水用穴115と内部で連通し、一端131をサンルーフ130に取り付けて排水を流入させるドレインホース150の他端132に取り付けられている。また、筒部110は、カウル後面部156に取り付けられた状態で、排水用穴115に排水を導くように、円盤部111の一方面123より一方面123から離れる方向つまり車両内側かつ上方に傾斜させて突出しているため、排水を重力の作用により排水用穴115までスムーズに導くことができる。
【0013】
立て壁部112は、円盤部111の他方面124に排水用穴115を囲いつつ、カウル後面部156に取り付けられた状態で、排水用穴115から車両下方に離間した位置で開放するように、他方面124から離れる方向つまり車室外側に向けて略垂直に立設している。また、立て壁部112の車両前方側で中央開口部140には、立て壁スリット148が設けられ、排水用穴115からの排水を車幅方向に拡散できるようにしている。
【0014】
主前壁部113は、他方面124に対して略垂直方向つまり車室外側から見て排水用穴115を覆って、騒音が排水用穴115に直接進入することを防止しつつ、立て壁部112の車両前方側の開放した位置となる立て壁開放部135で、車両下方に向けて主開口部としての中央開口部140を形成するように、立て壁部112の車両前方端すなわち車室外側端である先端部136に車室外側を塞ぐように設けられている。尚、中央開口部140がカウルボックス155のカウル底面部158の上方に近接するように、ドレインプラグ105がカウル後面部156の下部に設けられている。
【0015】
第1前壁部137は、端部が他方面124に対して略垂直方向つまり車室外側から見て取付穴159に対応した略円弧形状となるように、主前壁部113の車両側方から延長して設けられている。
【0016】
第1側方壁部116は、第1前壁部137と共に立て壁部112を挟んで中央開口部140の車幅方向側方に第1前壁部137の端部に沿って車両下方側に向けて斜めに開口する中央開口部140よりも開口面積が大きい第1開口部としての第1側方壁開口部117を形成しつつ、第1前壁部137の端部から円盤部111までつなぎ、略垂直方向つまり車室外側から見て取付穴159に対応した略円弧形状の立て壁となるように設けられている。また、第1側方壁部116と第1前壁部137と円盤部111と立て壁部112によって車両上方と車両両側方と車両前後方向を囲まれ、第1側方壁開口部117によって開放された第1側方空間145が形成され、第1側方壁開口部117より進入した騒音をこの第1側方空間145内で消音する。また、第1側方壁開口部117が斜めとなって中央開口部140よりも開口面積を大きくしているため、車幅方向両側からの騒音を入りやすくして消音することができる。さらに、第1側方壁部116には、カウル後面部156の取付穴159に係合する係合爪としての係止爪125が設けられている。尚、この係止爪125の両側にはスリットとしての係止爪スリット126が設けられているため、係止爪125が内方側に撓みやすくなり、ドレインプラグ105を取り付けやすくなっている。
【0017】
第2前壁部138は、端部が他方面124に対して略垂直方向つまり車室外側から見て取付穴159に対応した略円弧形状となるように、主前壁部113の車両側方から延長して設けられている。
【0018】
第2側方壁部118は、第2前壁部138と共に中央開口部140を挟んで第1側方壁開口部117の反対側の側方に第2前壁部138の端部に沿って車両下方側に向けて斜めに開口する中央開口部140よりも開口面積が大きい第2側方壁開口部119を形成しつつ、第2前壁部138の端部から円盤部111までつなぎ、略垂直方向つまり車室外側から見て取付穴159に対応した略円弧形状の立て壁となるように設けられている。また、第2開口部の上方に第1側方壁部116と第2前壁部138と円盤部111と立て壁部112によって車両上方と車両両側方と車両前後方向を囲まれ、第2側方壁開口部119によって開放された第2側方空間146が形成され、第2側方壁開口部119より進入した騒音をこの第2側方空間146内で消音する。また、第2側方壁開口部119が斜めとなって中央開口部140よりも開口面積を大きくしているため、第1側方壁開口部117と同様に、車幅方向両側からの騒音を入りやすくして消音することができる。さらに、第2側方壁部118には、第1側方壁部116と同様に、係止爪125と係止爪スリット126が設けられている。尚、中央開口部140は、第1側方壁開口部117と第2側方壁開口部119との間に設けられている。
【0019】
次に本発明における作用効果について説明する。
【0020】
円盤部111と立て壁部112と主前壁部113と筒部110と排水用穴115と中央開口部140を有するドレインプラグ105をカウル後面部156に取り付け、主前壁部113が、車両外側から見て、排水用穴115を覆って車両下方に向けて中央開口部140を排水用穴115から離間した位置に形成するように設けられているため、車両前方からの騒音を入りにくくするとともに、たとえ騒音が車両下方の中央開口部140から進入しても中央開口部140と排水用穴115との間で消音させることができる。
【0021】
立て壁部112を挟んで中央開口部140の側方に車両下方側に向けて開口する主開口部より大きな第1側方壁開口部117を形成するように第1側方壁部116を設けているため、騒音を第1側方壁開口部117に入りやすくして消音させることができる。
【0022】
立て壁部112を挟んで中央開口部140の第1側方壁開口部117と反対側に車両下方側に向けて開口する主開口部より大きな第2側方壁開口部119を形成するように第2側方壁部118を設けているため、中央開口部140の車幅方向両側より侵入する騒音を第1側方壁開口部117および第2側方壁開口部119に入りやすくして消音させることができる。
【0023】
第1側方壁部116および第2側方壁部118にカウル後面部156の取付穴159に係合する係止爪125およびその両側に係止爪スリット126をそれぞれ設けているため、立て壁部112に余分な穴をあけることなく、騒音を低減させることができる。
【0024】
筒部110は、筒状であり、車両上方に向けて傾斜して形成しているため、排水用穴115より進入した騒音を筒部110内で消音するとともに、排水を重力の作用で排水用穴115に導きやすくすることができる。
【0025】
ドレインプラグ105が車幅方向に延設するカウルボックス155のカウル後面部156に設けられているため、カウルボックス155により騒音が遮断されるとともにカウルボックス155の排水構造を利用して排水することができる。
【0026】
中央開口部140がカウルボックス155のカウル底面部158の上方に近接して設けられているため、中央開口部140より進入する騒音をカウル底面部158により進入させにくくすることができる。
【0027】
尚、本発明の実施形態はサンルーフからの排水に限らず、他の種々の態様を採用できるものである。例えば、エアコンのドレインに対して適用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
車両排水構造 100
ドレインプラグ 105
筒部 110
円盤部 111
立て壁部 112
主前壁部113
排水用穴 115
係止爪 125
係止爪スリット 126
第1側方壁部 116
第1側方壁開口部 117
第2側方壁部 118
第2側方壁開口部 119
中央開口部 140
カウルボックス 155
カウル後面部 156
カウル底面部 158

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内と車室外とを仕切る車体パネルにあけられた穴部に取り付けたドレインプラグを介して、車室内から車室外へ排水する車両排水構造において、
前記ドレインプラグは、
前記車体パネルの穴部を塞ぐように形成される座面部と、
前記座面部の前記穴部に対応した位置に車室内と車室外とが連通するように設けられた排水穴と、
前記座面部に前記排水穴と連通して前記排水穴に車室内側から排水を導くように車室内側に突出して形成される通路部と、
前記排水穴を囲いつつ、前記排出穴から下方に離間した位置で開放するように、前記座面部から車室外側へ立設する外縁部と、
車室外側から見て前記排水穴を覆いつつ、前記外縁部が開放した位置で下方に向けて主開口部を形成するように前記外縁部の車室外側を塞ぐ前面部とを有することを特徴とする車両排水構造。
【請求項2】
前記外縁部を挟んで前記主開口部の側方に車両下方側に向けて開口する主開口部より大きな第1開口部を形成するように第1外壁部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両排水構造。
【請求項3】
前記主開口部を挟んで前記第1開口部の反対側の側方に車両下方側に向けて開口する主開口部より大きな第2開口部を形成するように第2外壁部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の車両排水構造。
【請求項4】
前記第1外壁部および前記第2外壁部に前記車体パネルの穴部に係合する係合爪および該係合爪の両側部にスリットをそれぞれ設けたことを特徴とする請求項3に記載の車両排水構造。
【請求項5】
前記通路部は筒状であり、車両上方に向けて傾斜して形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両排水構造。
【請求項6】
前記ドレインプラグは、車幅方向に延設するカウルボックスの車両後面に取り付けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両排水構造。
【請求項7】
前記主開口部は、前記カウルボックスの底面の上方に近接して設けられることを特徴とする請求項6に記載の車両排水構造。
【請求項8】
車体パネルにあけられた穴部に取り付けるドレインプラグであって、
前記車体パネルに取り付けられる状態で、前記穴部を塞ぎ、前記穴部に対応する位置に排水が流出可能な排水穴を設けた座面部と、
前記座面部の一方の面に、前記車体パネルに取り付けられる状態で、前記排水穴と連通して前記排水穴に排水を導くように前記一方の面から離れる方向に延びる通路部と、
前記座面部の他方の面に前記排水穴を囲いつつ、前記車体パネルに取り付けられる状態で、前記排出穴から下方に離間した位置で開放するように、前記他方の面から離れる方向に立設する外縁部と、
前記座面部の他方の面に対して略垂直方向から見て前記排水穴を覆いつつ、前記外縁部が開放した位置で下方に向けて主開口部を形成するように前記外縁部の先端側を塞ぐ前面部とを有することを特徴とするドレインプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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