説明

車両接近報知用発音装置

【課題】静粛性を維持しつつ、必要に応じて、車両の存在を車外の通行人等に報知させること。もしくは、車両接近報知用発音装置の量産化および低コスト化を図ること。
【解決手段】車両に設置され、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置1であって、車両の一部を構成する部材20を振動板として採用し、制御部2の制御によって駆動させられる電動アクチュエータ22の駆動によって振動板20を振動させて音声を発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接近報知用発音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の自動車においては、駆動源としてピストンエンジン等の内燃機関が一般的に用いられており、当該内燃機関では、ピストン内における燃料の爆発音とそれに付随する機械音とが発生している。この爆発音と機械音とは重なり合って車両の外側に発せられる。したがって、車両の外側にいる人々は、これらの音に基づいて車両の存在を充分認知することが可能であった。
【0003】
しかしながら、昨今の車社会では、環境保護への取り組みが推進されていることから、ハイブリッド車、さらには、電気モータ車が普及し始めている。これらハイブリッド車および電気モータ車においては、車両自体から発される音は、従来のピストンエンジン車に比べて、遥かに小さい。このため、ハイブリッド車等は、静粛であるという利点を有する反面、通行人が車両の接近を判定するのを困難なものにしている。その結果、通行人が車両の接近を認識できず、自動車と衝突するといった危険性が高まっている。
【0004】
これらの対応策として、自動車車両の所望の位置に、発音体、たとえば、スピーカを装着し、走行状態に応じて、該発音体を適宜、作動させるという構成を有する車両接近告知装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−40317号公報(発明の詳細な説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている車両接近告知装置では、発音体は車両のボディの内部に装着されている。この場合、所望の方向に音を発生させて、通行人に車両の存在を認識させるためには、音圧が不足したり、音圧が過大になったりしやすく、音圧をコントロールするのが困難であるという欠点を有する。さらに、音の指向性が拡散し、車両の存在位置等を確認しづらくなってしまう。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、静粛性を維持しつつ、必要に応じて、車両の存在を車外の通行人等に報知させるための車両接近報知用発音装置を提供しようとするものである。あるいは、車両接近報知用発音装置の量産化および低コスト化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、車両に設置され、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置であって、車両の一部を構成する部材を振動板として採用し、制御部の制御によって駆動させられる電動アクチュエータの駆動によって振動板を振動させて音声を発生させるものである。
【0009】
また、電動アクチュエータは、磁気をあたえると形状が変化する磁歪現象を利用した磁歪素子と、磁歪素子を駆動させる駆動装置と、を有し、磁歪素子を介して振動部材を振動させ、該振動部材の振動により振動板を振動させることが好ましい。
【0010】
また、振動板に装着可能な装着具を用いることにより、電動アクチュエータを振動板と接触した状態で保持すると共に、振動板方向に向かって電動アクチュエータを与圧することが好ましい。
【0011】
また、装着具は略板形状を呈しており、装着具を振動板に固定することで、電動アクチュエータの振動板との接触部分を介して装着具に圧力を加えて該装着具を撓ませ、当該撓んだ装着具の復元力を利用して振動板方向に向かって電動アクチュエータを与圧することが好ましい。
【0012】
また、電動アクチュエータが装着された装着具の端部もしくは端部近傍をネジ止めすることにて該装着具を振動板に対して固定することが好ましい。
【0013】
また、電動アクチュエータが装着された装着具の一部を、車両の一部を構成する部材同士の隙間に差し込むことにより、電動アクチュエータを与圧することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、静粛性を維持しつつ、必要に応じて、車両の存在を車外の通行人等に報知させることができる。また、車両接近報知用発音装置の量産化および低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置およびその制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を表側から見た分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を表側から見た斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を裏側から見た斜視図である。
【図5】図4中の車両接近報知用発音装置をA−A線で切断した断面図である。
【図6】図5において一点鎖線Bで囲んだ部分の拡大図である。
【図7】図2中の磁歪駆動体の分解斜視図である。
【図8】図2中の磁歪駆動体の斜視図である。
【図9】図2中の磁歪駆動体の構成を示す図であり、上段は正面図であり、下段は側面図である。
【図10】図2中の磁歪駆動体の構成を示す図であり、上段は図9の下段におけるC−C線で切断した断面図であり、下段は底面図である。
【図11】図2中の板付駆動体の構成を示す図であり、取付板から磁歪駆動体を取り外した状態を示す斜視図である。
【図12】図2中の板付駆動体の構成を示す図であり、上段は板付駆動体を表側から見た斜視図であり、下段は板付駆動体を裏側から見た斜視図である。
【図13】図2中の板付駆動体の平面図である。
【図14】図2中の板付駆動体の底面図である。
【図15】図13における板付駆動体をD−D線で切断した断面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を示す図であり、板付駆動体をボンネットに装着する前の斜視図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を裏側から見た斜視図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置の平面図である。
【図19】図18中の車両接近報知用発音装置をE−E線で切断した断面図である。
【図20】図19において一点鎖線Fで囲んだ部分の拡大図である。
【図21】本発明の第3の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を示す図であり、板付駆動体をフェンダーに装着する前の斜視図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を裏側から見た斜視図である。
【図23】本発明の第3の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置の平面図である。
【図24】図23中の車両接近報知用発音装置をG−G線で切断した断面図である。
【図25】図24において一点鎖線Jで囲んだ部分の拡大図である。
【図26】本発明の第4の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を示す図であり、磁歪駆動体をドアに装着する前の斜視図である。
【図27】本発明の第4の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置を裏側から見た斜視図である。
【図28】本発明の第4の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置の平面図である。
【図29】図28中の車両接近報知用発音装置をK−K線で切断した断面図である。
【図30】図29において一点鎖線Lで囲んだ部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置1について、図面を参照しながら説明する。なお、車両接近報知用発音装置1を制御するための制御装置2の説明についても車両接近報知用発音装置1(以下、単に、発音装置1という。)の説明と併せて行う。また、以下の説明において、図2〜図30に示す矢示X方向を「表」、矢示X方向を「裏」、X方向とX方向の両方向に対し水平方向で直交する方向となる矢示Y方向を「左」、矢示Y方向を「右」、XY平面と直交する方向となる矢示Z方向を「上」および矢示Z方向を「下」とそれぞれ規定する。
【0017】
まず、発音装置1およびその制御部の一例となる制御装置2の概略構成について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る発音装置1およびその制御装置2の構成を示すブロック図である。
【0018】
発音装置1は、不図示の車両が車外の通行人等に接近した場合に、告知音を発生させて当該車両の存在を通行人等に報知させるための装置である。本実施の形態では、発音装置1は車両のナンバープレート20を振動させて音声を出力するような構成を有している。図1に示すように、発音装置1から出力される告知音となる発信音は、エンジンおよび/またはモータの回転検出装置に連動した制御装置2において送信される作動信号によって制御される。また、車両には車外の音声を検出するためのマイクロフォン4が備えられている。制御装置2における作動信号の出力は、マイクロフォン4で検出された音声信号に基づいて行われる。
【0019】
マイクロフォン4は、たとえば、車両の前方部分に取り付けることが可能である。このマイクロフォン4は制御装置2に電気的に接続されている。上述したように、発音装置1は車両の前方および/または後方のナンバープレート20を振動板とするような構成を有している。すなわち、ナンバープレート20を振動板とする発音装置となっている。なお、発音装置1の詳細な構成については後述する。
【0020】
制御装置2は、図1に示すように、告知音を発生させるための発音信号発生装置10と、増幅装置11と、発音装置1から出力される音圧レベルの調整を行うための音圧調整手段12とを備えている。
【0021】
発音信号発生装置10では、発音装置1から出力される音声信号が生成される。発音信号発生装置10は、たとえば、内蔵したメモリに記憶されたオーディオデータから矩形波信号を生成することが可能で、該発音信号発生装置10に不図示の矩形波発生装置が併設装着してある。当該生成された音声信号は増幅装置11に送信され、その音圧が調整される。
【0022】
増幅装置11は発音装置1に接続されており、該増幅装置11で増幅された音声信号が、発音装置1から告知音として車外へ発音される。
【0023】
音圧調整手段12は、基準電圧器13と、信号比較器14と、音圧制御器15を備えている。基準電圧器13には、予め所定の基準電圧(基準音圧)が記憶されている。信号比較器14は、たとえば、マイクロフォン4で検出された音声信号の音声信号電圧(音圧)と基準電圧器13の基準電圧(基準音圧)とを比較し、その差Vを算出する。なお、本実施の形態では、マイクロフォン4によって車のエンジン音が十分に大きな音であるということが検出された場合、発音装置1から告知音が出力されないように制御がなされる。すなわち、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)との差Vが大きな値を示した場合、発音装置1から告知音は出力されない。
【0024】
また、音圧制御器15は増幅装置11に接続されており、音声信号電圧と基準電圧との差Vに基づいて、増幅装置11の増幅率を変え、発音装置1から出力される告知音の音圧を制御する。すなわち、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)の差Vに基づいて、音圧制御器15が発音装置1から出力される音声の音圧レベルを制御する構成となっている。なお、本実施の形態では、発音信号発生装置10には、不図示の矩形波発生装置が併設されているが、発信音の選定や目的に応じ、たとえば、三角波の発音信号が出力できるような装置を併設する等して、発音信号発生装置10の形態を自由に設計もしくは選定することが可能である。
【0025】
次に、発音装置1の構成について図2から図6に基づいて詳述する。図2は、発音装置1を表側から見た分解斜視図である。図3は、発音装置1を表側から見た斜視図である。図4は、発音装置1を裏側から見た斜視図である。図5は、図4における発音装置1をA−A線で切断した断面図である。図6は、図5において一点鎖線Bで囲んだ部分の拡大図である。
【0026】
発音装置1は、図2から図4に示すように、不図示の車両のナンバープレート20(以下、単にプレート20と表記する。)を平面振動板として採用し、該プレート20から矩形波発信音を発生させる構成となっている。具体的には、発音装置1は、上述した平板状のプレート20と、プレート20の裏側に配置され、該プレート20を振動させるための板付駆動体21とを有する。板付駆動体21は、電動アクチュエータの一例となる超磁歪素子アクチュエータ22(以下、単に、磁歪駆動体22と表記する。)と、磁歪駆動体22が固定される略矩形状の取付板23とを有する。図2等に示すように、板付駆動体21は、ネジ25を、不図示のバンパーの内部に配置されるバンパー内取付金具24(以下、単に、取付金具24と表記する。)のネジ穴30に締結することによって、プレート20の裏側に装着される。なお、超磁歪素子は、磁気を与えた場合、磁歪素子よりも1000倍大な変化量を有する。
【0027】
具体的には、図5および図6に示すように、プレート20の裏側に磁歪駆動体22が取り付けられた板付駆動体21を配置し、ネジ25をプレート20のネジ穴26および取付板23の後述する装着用穴53に挿通させた状態で、該ネジ25を取付金具24のネジ穴30に螺入させることにより、磁歪駆動体22はプレート20に対して装着される。図5および図6に示すように、磁歪駆動体22がプレート20に対して装着された状態では、後述する磁歪駆動体22の振動ロッド37がプレート20に接触する。
【0028】
また、図2に示すように、プレート20には上方の2箇所の位置にネジ穴26が設けられているので、板付駆動体21が装着されない他方のネジ穴26にもネジ25が締結されることになる。本実施の形態では、図2に示すように、プレート20と取付金具24との間にたとえば厚さ1.2mmのワッシャー28を介在させている。該ワッシャー28は、プレート20の傾きを防ぐためのものであるが、発音に関しては差しさわりが無いので、不要な場合は省いても一向に構わない。そして、磁歪駆動体22が装着されたプレート20を車体(バンパー)に装着し、磁歪駆動体22および不図示の該駆動体発信装置との配線接続を行えば、発音装置1の組み立ては完了する。
【0029】
図2に示すように、プレート20は、発音装置1の表側に配置される。プレート20としては、たとえば、自動車において一般的に使用される中型番号標が採用されている。なお、プレート20として中型番号標以外のプレートを採用することも可能である。プレート20は、矩形状の形態を有するアルミニウムの板材から構成されている。プレート20の外形寸法は、たとえば、上下方向となる縦方向の寸法を165mm、左右方向となる横方向の寸法を330mmおよび厚さ寸法を1mmとするのが好ましい。
【0030】
次に、磁歪駆動体22の構成について説明する。図7は、磁歪駆動体22の分解斜視図である。図8は、磁歪駆動体22の斜視図である。図9は、磁歪駆動体22の構成を示す図であり、上段は正面図であり、下段は側面図である。図10は、磁歪駆動体22の構成を示す図であり、上段は図9における下段の磁歪駆動体22をC−C線で切断した断面図であり、下段は底面図である。
【0031】
図7に示すように、磁歪駆動体22は、ケース31と、該ケース31内に配置される駆動装置の一例となる駆動用コイル32と、駆動用コイル32の中央に挿入される超磁歪素子33と、該超磁歪素子33の表側の端部および裏側の端部にそれぞれ配置される合計2個のマグネット34A,34Bと、駆動用コイル32がケース31内に配置された状態で、駆動用コイル32の表側に配置される中央穴35aを有する裏ワッシャー35と、裏ワッシャー35の表側に配置される中央穴36aを有する薄型クッション材36と、振動部材の一例となる略棒状の振動ロッド37と、振動ロッド37の鍔部51を狭持するように薄型クッション材36の表側に配置される厚型クッション材40と、厚型クッション材40の表側に配置される表ワッシャー41と、を有する。
【0032】
ケース31は、表側が開口し、外形が円柱状の壷形状を呈している。すなわち、ケース31は、円筒状の側面部42と、底板となる底部43とを有する有底円筒状のケースである。このため、その中央には略円柱状の中空部44が設けられていることになる。ケース31の側面部42の外径寸法はたとえば14.8mmに形成されており、底部43の厚さはたとえば1mmに形成されている。また、中空部44の外径寸法(側面部42の内径寸法)は、たとえば12.2mmで、その深さはたとえば14mmに形成されている。ケース31は上述した駆動用コイル32が挿入できるような寸法に形成されている。なお、ケース31の材料として、ステンレスもしくはアルミニウム等の非磁性材を用いるのが好ましい。
【0033】
また、底部には、図10下段に示すように、コイルリード線32b,32bを配線可能とするための長穴45,45が2箇所に設けられている。
【0034】
上述したように、本実施の形態では、超磁歪素子33中に発生した磁界を変化せしめるための駆動装置として駆動用コイル32が用いられる。該駆動用コイル32は、本実施例の場合、それぞれの寸法例として、内径4mm、外径12mmおよび高さ(巻き幅)8mmからなるボビンレスコイルであり、直流抵抗はたとえば約3.4Ωである。このように、駆動用コイル32は、たとえば、絶縁技膜で覆われた銅線(巻線)を、中央に貫通孔32aが形成されるように巻回することにより形成される。なお、本実施例の場合、駆動用コイル32巻き始め部、および、巻き終わり部は、配線接続可能なコイルリード線32b,32bとなっており、図7および図9下段等に示すように、該コイルリード線32b,32bは駆動用コイル32の片側端部に配置されている。
【0035】
このため、コイルリード線(以下、リード線と表記する。)32b,32bは、駆動用コイル32の一方の端部に配置される仕様となっているが、該リード線32b,32bの配置は、駆動用コイル32の作製仕様により自由に設定可能である。また、本実施例の場合、駆動用コイル32としてボビンレスコイルが用いられているが、駆動用コイル32の形態は、目的に応じて、その選定は自由である。
【0036】
また、駆動用コイル32の外形寸法は、ケース31の中空部44に対して隙間を有した状態で挿入可能な寸法に形成されている。このため駆動用コイル32は、コイルリード線32b,32bを長穴45,45に挿入する形でケース31の中空部44に装着される。そして、駆動用コイル32の下端部を底部43に接触させた状態で、駆動用コイル32の上端部に裏ワッシャー35が配置される。
【0037】
裏ワッシャー35は、略リング状の形態を有しており、該裏ワッシャー35の中央には中央穴35aが形成されている。裏ワッシャー35は、それぞれの寸法例として、内径が4mm、外径が12.2mmおよび厚さが1mmの鉄製のワッシャーである。裏ワッシャー35の外形寸法は、ケース31の中空部44に対して圧入可能な公差に設定されており、該裏ワッシャー35は中空部44内に圧入装着される。この圧入装着は、たとえば、圧入冶具を用いて圧入深さを規制しながら行うことが可能である。このように、裏ワッシャー35を圧入することで、駆動用コイル32の表裏の両端の面が裏ワッシャー35の表面(裏面)とケース31の底部43の内側面とで挟持され所定の圧定状態になる。このような圧定状態になることにより、駆動用コイル32はケース31内において位置決めされた状態で装着される。なお、リード線32b,32bの端部と入力信号用ワイヤーとの配線の図示は省略するものとする。
【0038】
さらに、図7等に示すように、上述したマグネット34A,34Bが装着された超磁歪素子33が、駆動用コイル32の貫通孔32a内に挿入される。超磁歪素子33は、それぞれの寸法例としては、対角3.5mmであり、かつ長さ6mmから成る6角柱状の形態のものがある。また、超磁歪素子33に静磁界を与えるために、該超磁歪素子33の表側の端部および裏側の端部にそれぞれ1個ずつ、合計2個のマグネット34A,34Bが配置される。マグネット34A,34Bは、たとえば直径が3mmで、たとえば厚さ1mmの円板状を呈しており、厚さ(表裏)方向に着磁されるネオジムマグネットである。
【0039】
上述したように、マグネット34A,34Bは、厚さ方向に着磁されているので、円板の一方の円表面がN極、他方の円表面(裏面)がS極となる。該マグネット34A,34Bを装着する際に、2個のマグネット34A,34Bのうちのどちらか一方を超磁歪素子33の一方の端部表面にS極側面が対向するように密着装着させた場合、2個のマグネット34A,34Bのうちの他方は、N極側面が超磁歪素子33の他方の端部表面と対向するように密着装着させるようにする。超磁歪素子33へのマグネット34A,34Bの装着は、図2等に示すように、該マグネット34A,34Bと該超磁歪素子33の中心軸線が一致するように行う。
【0040】
上述したように、マグネット34A,34Bは着磁されているので磁気吸引力の作用により超磁歪素子33のそれぞれの端部に密着する。そして、該マグネット34A,34Bの磁気により、超磁歪素子33の内側および超磁歪素子33の外側において、マグネット34A,34BのN極側からS極側に向かって流れる磁界が発生する。このマグネット34A,34Bが装着された超磁歪素子33は、駆動用コイル32の貫通孔32a内に挿入される。この状態では、マグネット34Bはケース31の底部43と接触する。本実施の形態では、マグネット34BのS極がケース31の底部43側に位置するように該マグネット34A,34Bが装着された超磁歪素子33が貫通孔32a内に配置される。
【0041】
マグネット34A,34Bが装着された超磁歪素子33を、駆動用コイル32の貫通孔32a内に挿入した状態で、図10上段に示すように、該駆動用コイル32の表側には裏ワッシャー35を介して薄型クッション材36が配置される。薄型クッション材36は、略リング状の形態を有しており、該薄型クッション材36の中央には中央穴36aが形成されている。薄型クッション材36の外形は、寸法の一例として、内径が3mm、外径が12.1mmおよび厚さが1.5mmに形成されるものがある。
【0042】
図7および図10上段に示すように、薄型クッション材36の中央穴36aには、振動ロッド37の柱状部50が挿入される。振動ロッド37は、たとえば高さ寸法が約7.5mmで、たとえば直径の寸法が約3mmの円柱状の形態を有する柱状部50と、柱状部50の長手方向における中途部分から径方向外方に向かってたとえば半径約3mmの円板状に延出する鍔部51とを有する。この鍔部51の厚さ寸法はたとえば1.0mmに形成されている。柱状部50は、鍔部51を境にしてそれよりも表方向の部分が表柱状部50aとさおり、鍔部51よりも裏方向の部分が裏柱状部50bとさている。鍔部51は、柱状部50の裏側端から表側に向かってたとえば2mmの位置に設けられている。
【0043】
振動ロッド37は、裏柱状部50bが薄型クッション材36の中央穴36aの表側から挿入される。また、振動ロッド37は、鍔部51が薄型クッション材36に当接するまで挿入される。鍔部51が薄型クッション材36に当接した状態では、裏柱状部50bは中央穴35aを通過してマグネット34Aの表側の面に当接する。
【0044】
裏ワッシャー35の表側には、厚型クッション材40が配置される。厚型クッション材40は、薄型クッション材36の場合と同様、略リング状の形態を有しており、該厚型クッション材40の中央には中央穴40aが形成されている。厚型クッション材40の外形は、寸法の一例として、内径が3mm、外径が12.1mmおよび厚さが3.5mmに形成されるものがある。この厚型クッション材40は、貫通孔40aに振動ロッド37の上柱状部50aが挿入される形態で裏ワッシャー35の表側に配置される。すなわち、厚型クッション材40は自身の貫通孔40aに上柱状部50aを差し込みながら、該厚型クッション材40を鍔部37aに押し当てるようにケース31に挿入される。
【0045】
さらに、図7および図10上段に示すように、厚型クッション材40の上端にはケース31に対して表ワッシャー41が圧入装着される。表ワッシャー41は、たとえば内径が3.05mm、たとえば外径が12.1mmおよびたとえば厚さが1mmの鉄製のワッシャーである。該表ワッシャー41の外径は圧入可能な公差に設定されている。本実施の形態の場合、圧入に際しては、圧入冶具を用いて表ワッシャー41がケース31の表側の端部と面一になるように圧入される。このように、表ワッシャー41を圧入することにより、厚型クッション材40および薄型クッション材36が裏側に向かって押しつぶされ、振動ロッド37の裏柱状部50bの底部は、マグネット34Aに圧定される。
【0046】
さらに、マグネット34Aに接触する超磁歪素子33および超磁歪素子33の裏側端に接触するマグネット34Bがケース31の底部43に圧定される。その結果、振動ロッド37およびマグネット34A,34Bが装着された超磁歪素子33の双方によってケース31内の中心部が与圧された状態になる。このように、表ワッシャー41をケース31内に圧入すると、ケース31内の中心部が与圧された状態となり、磁歪駆動体22が完成する。この際、表柱状部50aの先端は表ワッシャー41の貫通孔41aから表側に向かって突出した状態となる。なお、本実施の形態では、クッション材としては独立発泡性のウレタンが採用されている。また、本実施例の場合、与圧を得るために、クッション材36,40を用いたが、目的に応じて、従来用いられているコイルスプリングや、皿バネ等を用いても、一向に構わない。
【0047】
ここで、超磁歪素子33の内側および超磁歪素子33の外側に発生した磁界中の磁束に変化を与えると、該磁束の変化に伴って超磁歪素子33が反応する。すると、超磁歪素子33の形状が変化し、その内の長さ方向への変化に伴ってマグネット34A,34Bおよび超磁歪素子33が表裏方向へ移動する。このため、マグネット34A,34Bおよび超磁歪素子33を介して振動ロッド37が表裏方向へ往復運動し、振動板の一例であるプレート20に振動が伝わる。
【0048】
次に、磁歪駆動体22が取付板23に固定された板付駆動体21の構成について説明する。図11は、板付駆動体21の構成を示す図であり、取付板23から磁歪駆動体22を取り外した状態を示す斜視図である。図12は、板付駆動体21の構成を示す図であり、上段は板付駆動体21を表側から見た斜視図であり、下段は板付駆動体21を裏側から見た斜視図である。図13は、板付駆動体21の平面図である。図14は、板付駆動体21の底面図である。図15は、図13中の板付駆動体21をD−D線で切断した断面図である。
【0049】
上述したように、磁歪駆動体22は取付板23に固定した状態でプレート20に装着される(図2から図6および図11から図14参照)。取付板23はたとえば厚さ1mmの鉄板からなり、その幅寸法はたとえば18mmであると共に、その長さ寸法はたとえば88mmである。取付板23は、平面視して略矩形状の形態を有している。取付板23の下端部近傍には、矩形の長手方向に沿った中心線上にたとえば直径14.8mmの圧入用穴52が設けられている。また、取付板23の上端部近傍には、矩形の長手方向に沿った中心線上にたとえば直径5.5mmの装着用穴53が設けられている。また、上端部より下端側にたとえば約20mmだけ向かった位置に、たとえば約2.5mmだけ高さが低くなるように折り曲られた段差部54が設けられている。圧入用穴52は圧入可能な公差で設定されているので、磁歪駆動体22のケース31の外周部を圧入用穴52に勘合させ圧入することが可能である。
【0050】
図15に示すように、ケース31の外周部の上端にはたとえば厚さが1mmで、出っ張り幅がたとえば0.5mmのフランジ部55が設けられている。このため、磁歪駆動体22を圧入用穴52に挿入させると、該フランジ部55が取付板23に引っかかる。したがって、フランジ部55がストッパー機能を発揮し、磁歪駆動体22が取付板23に対して所定の位置まで圧入され、磁歪駆動体22の取付板23への装着が完了する。このようにして、板付駆動体21が製作される。本実施の形態では、磁歪駆動体22の取付板23への装着方法に関しては、圧入方法を用いたが、装着方法はこの限りではなく、ネジ止め、溶接、あるいはケース31との一体作製等、目的に応じて自由に作成可能である。
【0051】
上述したように、板付駆動体21は、ネジ25および取付金具24を用いて、プレート20の裏側に装着される。図5および図6に示すように、磁歪駆動体22がプレート20に対して装着された状態では、磁歪駆動体22の振動ロッド37の表柱状部50aがプレート20に接触する。具体的には、ネジ25はプレート20の装着用に一般的に用いられるものである。板付駆動体21は、プレート20に設けられたネジ穴26および取付板23の装着用穴53にネジ25を挿入しつつ、取付金具24のネジ穴30に該ネジ25を締結することによって、プレート20に対して装着される。
【0052】
板付駆動体21をネジ25を用いてプレート20に装着すると、振動ロッド37がプレート20と接触していることから、取付板23が若干撓み、撓んだ取付板23の復元力によって磁歪駆動体22がプレート20の裏面に押し付けられる。すなわち、振動ロッド37の表柱状部50aの端部が、取付板23の復元力によって、プレート20の裏面に強力に圧定されることになる。
【0053】
そして、入力信号が磁歪駆動体22内の駆動用コイル32に引加されると、それに伴った磁気が発生し、超磁歪素子33に装着されたマグネット34A,34Bにて発生せしめた超磁歪素子33中の磁界に変化が生じる。そして、それに伴い超磁歪素子33が膨張あるいは収縮変化を起こし、その変化が振動ロッド37に伝達される。すなわち、超磁歪素子33の形状変化に伴って振動ロッドが移動することで、振動ロッド37がプレート20を加振させる。このため、振動ロッド37および超磁歪素子33(マグネット34A,34B含む)との圧定力に加え、振動ロッド37およびプレート20との圧定力のバランスが、音圧、再生周波数特性などに影響を及ぼす。その結果、取付板23の段差部54の寸法には配慮をはらう必要があり、図6等では振動ロッド37とプレート20の裏面とが接触した状態になっているが、実際は、取付板23は、わずかではあるが湾曲変形しており、段差寸法も公差をたとえば0.5mmほど低めに設定してある。この段差寸法が大きくなるほど、取付板23の変形が大きくなり、圧定力も大きくなる。しかし、圧定力が超磁歪素子33の発生する振動トルク以上に大きくなりすぎると、音圧が得にくくなる。このため、本実施の形態では、ネジ25の締結力にて調整してあるが、該調整は、車種や、音圧等の仕様が決定すれば、この限りでなく、先の段差部54の最適寸法を設定し、ネジ25を完全締結するようにしても良い。
【0054】
次に、発音装置1の動作の一例について説明する。
【0055】
本実施の形態では、不図示の車両内に設けられた不図示の電源をONにすると、車両に設けられたエンジンおよび/またはモータの不図示の回転数検出装置から、エンジンおよび/またはモータの回転数を検知し、該回転数検知信号を発音信号発生装置に送信し、該回転数検知信号に該当した周波数を発音信号発生装置10内に内蔵されるメモリに記憶された各周波数信号に変換する。そして、変換された各周波数信号は、発音信号発生装置10に併設される矩形波発生装置に送信され矩形波信号として再生された後、増幅装置11に出力される。さらに、増幅装置11で増幅された矩形波信号が、発音装置1から告知音として車外に発音される。本実施の形態の場合、矩形波発生装置を併設したが、メモリ内にオーディオデータとして記憶させておくことも可能である。
【0056】
この際、自車両のマイクロフォン4で検出された車両外部の告知音の信号から、たとえば、帯域通過フィルタを用いて音声信号が取り出される。また、信号比較器では、取り出された音声信号の音声信号電圧(音圧)と、基準電圧器に予め設定した基準電圧(基準音圧)とを比較し、その差Vを算出して、音圧制御器15へ出力する。そして、音圧制御器15は、音声信号電圧と基準電圧との差Vに基づいて増幅装置11の増幅率を制御し、自車両の告知音の音圧を制御する。このように、制御装置2によって制御された音声信号が発音装置1に送信され、発音装置1のプレート20、あるいは、車両を構成する外板等が振動し制御された告知音が出力される。
【0057】
以上のように構成された発音装置1では、自車両のマイクロフォン4で検出された車両外部の告知音の信号を考慮しつつ、発音装置1から音声を発生させることが可能である。すなわち、通行人等に告知音を報知させるために、車両外部の騒音よりも大きな音声が発音装置1から発生されるように制御装置2によって制御することができる。このため、歩行者等に対して自動車の存在を知らせることが可能な音声を確実に発音装置1から発生させることが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態では、発音装置1は、自動車のナンバープレート20に装着され、該ナンバープレート20から良好な音声を出力することができる。また、プレート20に磁歪駆動体22の振動ロッド37が圧定可能となるように、取付板23を用いて磁歪駆動体22をプレート20に装着するといった簡易な構成を有するため、発音装置1の量産が可能となると共にコストを削減することも可能となる。また、製造工程や組立工程を削減することも可能である。
【0059】
また、発音装置1は、自動車のプレート20を発音させることが可能であるため、車両の最外側部において発音させることが可能となる。このため、遮蔽物が無い状態で音声を外部に発生することが可能である。したがって、歩行者等に対して効率良く音声を伝達することが可能となる。
【0060】
また、発音装置1では、プレート20から矩形波を放射して発音させているため、正弦波の場合よりも音の明瞭度を向上させることが可能となる。
【0061】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る発音装置60について、図面を参照しながら説明する。なお、第2の実施の形態に係る発音装置60において、第1の実施の形態と共通する部分については、その説明を省略または簡略化する。
【0062】
図16は、本発明の第2の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置60を示す図であり、板付駆動体21をボンネット61に装着する前の斜視図である。図17は、本発明の第2の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置60を裏側から見た斜視図である。図18は、本発明の第2の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置60の平面図である。図19は、図18中の車両接近報知用発音装置60をE−E線で切断した断面図である。図20は、図19において一点鎖線Fで囲んだ部分の拡大図である。
【0063】
本発明の第2の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置60(以下、発音装置60と表記する。)は、図16から図20に示すように、車両のフロントボンネット61を(以下、ボンネット61と表記する。)を平面振動板として見立て、該ボンネット61から矩形波発信音が発生される構成となっている。具体的には、板付駆動体21を、補強フレーム62を用いてボンネット61に装着するような構成を有している。より具体的には、ボンネット61と、該ボンネット61の裏側に配置されるボンネット61用の補強フレーム62との間に、板付駆動体21を差し込むことにより発音装置60は完成する。この発音装置60から出力される告知音となる発信音は、第1の実施の形態の場合と同様、制御装置2において送信される作動信号によって制御される。なお、磁歪駆動体22と不図示の該駆動体発信装置との配線接続が行われることにより、ボンネットにおける発音システムが完了する。
【0064】
補強フレーム62は、図16および図17等に示すように、平板の左右両側を同方向に向かって斜めに山折りした形態を有している。具体的には、補強フレーム62は、頂部に位置しボンネット61と平行な面を有する平坦部63と、平坦部63の左右両側から表側に向かって斜めに折れ曲がる斜面部64,64を有している。また、斜面部64,64の外縁部からは左右両側に向かってさらに略平板状の平鍔部65,65が延出している。この平鍔部65の上下両端には、表側に向かって矩形状の形態で一段下がるような矩形段部66が合計4つ設けられている。補強フレーム62をボンネット61に装着する際、矩形段部66がボンネット61の裏面と接触するため、平鍔部65とボンネット61との間に隙間Hが形成される(図20参照)。このため、この隙間Hに板付駆動体21を差し込むことが可能となり、該板付駆動体21を隙間Hに差し込むことで発音装置60が完成する。なお、補強フレーム62を車両のリアボンネットに装着して、リアボンネットを発音させるようにしても良い。
【0065】
以上のように構成された発音装置60は、自動車のボンネット61に装着され、該ボンネット61から良好な音声を出力することができる。また、ボンネット61に取り付けられた補強フレーム62の隙間Hに板付駆動体21を差し込むといった簡易な構成を有するため、発音装置60の量産が可能となると共にコストを削減することも可能となる。また、製造工程や組立工程を削減することも可能である。
【0066】
また、発音装置60は、自動車のボンネット61を発音させることが可能であるため、車両の外部に配置される部材を用いて発音させることが可能となる。したがって、遮蔽物が無い状態で音声を外部に発生することが可能である。このため、歩行者等に対して効率良く音声を伝達することが可能となる。
【0067】
また、発音装置60では、ボンネット61から矩形波を放射して発音させているため、正弦波の場合よりも音の明瞭度を向上させることが可能となる。
【0068】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態に係る発音装置70について、図面を参照しながら説明する。なお、第3の実施の形態に係る発音装置70において、第1の実施の形態と共通する部分については、その説明を省略または簡略化する。
【0069】
図21は、本発明の第3の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置70を示す図であり、板付駆動体21をフェンダー71に装着する前の斜視図である。図22は、本発明の第3の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置70を裏側から見た斜視図である。図23は、本発明の第3の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置70の平面図である。図24は、図23中の車両接近報知用発音装置70をG−G線で切断した断面図である。図25は、図24において一点鎖線Jで囲んだ部分の拡大図である。
【0070】
本発明の第3の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置70(以下、発音装置70と表記する。)は、図21から図25に示すように、車両のフェンダー71を平面振動板として見立て、該フェンダー71から矩形波発信音が発生される構成となっている。具体的には、板付駆動体21を、差込金具72を用いてフェンダー71に装着するような構成を有している。より具体的には、予めフェンダー71の裏側に溶接により取り付けられた差込金具72の差込穴73に板付駆動体21を差し込むことにより発音装置60は完成する。この発音装置70から出力される告知音となる発信音は、第1の実施の形態の場合と同様、制御装置2において送信される作動信号によって制御される。なお、磁歪駆動体22と不図示の該駆動体発信装置との配線接続が行われることにより、フェンダー71における発音システムが完了する。
【0071】
差込金具72は、図21および図22等に示すように、平板の左右両側を山折りし、さらにその両端を谷折りした略ハット状の形態を有している。具体的には、差込金具72は、頂部に位置しフェンダー71と平行な面を有する平坦部74と、平坦部74の左右両側から表側に向かって略直角に折れ曲がる直角部75,75と、直角面75,75の両端から上下方向外側に折れ曲がる水平部を76,76とを有している。差込金具72は、このように略ハット状の形態を有しているため、2つの直角部75,75の間には左右方向に向かって貫通する差込穴73が形成される。なお、差込金具72は水平部76,76を溶接することによりフェンダー71に取り付けられる。このため、フェンダー71に溶接された差込金具72の差込穴73に板付駆動体21を差し込むことにより発音装置70が完成する。なお、差込金具73のフェンダー71への固定は、溶接に限らず、他の方法を採用しても良い。また、差込金具72をドア等の他の車両を構成する部材に装着し、該装着した部材を発音させるようにしても良い。
【0072】
以上のように構成された発音装置70は、自動車のフェンダー71に装着され、該フェンダー71から良好な音声を出力することができる。また、フェンダー71に取り付けられた差込金具72の差込穴73に板付駆動体21を差し込むといった簡易な構成を有するため、発音装置70の量産が可能となると共にコストを削減することが可能となる。また、製造工程や組立工程を削減することも可能である。
【0073】
また、発音装置70は、自動車のフェンダー71を発音させることが可能であるため、車両を構成する外板を用いて発音させることが可能となる。したがって、遮蔽物が無い状態で音声を外部に発生することが可能である。このため、歩行者等に対して効率良く音声を伝達することが可能となる。
【0074】
また、発音装置70では、フェンダー71から矩形波を放射して発音させているため、正弦波の場合よりも音の明瞭度を向上させることが可能となる。
【0075】
(第4の実施の形態)
以下、本発明の第4の実施の形態に係る発音装置80について、図面を参照しながら説明する。なお、第3の実施の形態に係る発音装置80において、第1の実施の形態と共通する部分については、その説明を省略または簡略化する。
【0076】
図26は、本発明の第4の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置80を示す図であり、磁歪駆動体22をドア81に装着する前の斜視図である。図27は、本発明の第4の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置80を裏側から見た斜視図である。図28は、本発明の第4の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置80の平面図である。図29は、図28中の車両接近報知用発音装置80をK−K線で切断した断面図である。図30は、図29において一点鎖線Lで囲んだ部分の拡大図である。
【0077】
本発明の第4の実施の形態に係る車両接近報知用発音装置80(以下、発音装置80と表記する。)は、図26から図30に示すように、車両のドア81(実際にはドアの外板)を平面振動板として見立て、該ドア81から矩形波発信音が発生される構成となっている。具体的には、板付駆動体21を、M字金具82を用いてドア81に装着するような構成を有している。より具体的には、予めドア81の裏側に溶接により取り付けられたM字金具82の嵌込部83に磁歪駆動体22を嵌め込むことにより発音装置80は完成する。この発音装置80から出力される告知音となる発信音は、第1の実施の形態の場合と同様、制御装置2において送信される作動信号によって制御される。なお、磁歪駆動体22と不図示の該駆動体発信装置との配線接続が行われることにより、ドア81における発音システムが完了する。
【0078】
M字金具82は、図26から図30に示すように、略M字状の形態を有している。具体的には、M字金具82は、略半円筒状の形態を有し、その横方向の開口端がさらに斜め外方に向かって折り曲げられている嵌込部83と、嵌込部83における下端部から上方に向かって嵌込部83の裏側を閉塞するように折り曲げられた矩形状の矩形板部84と、矩形板部84の左右の両端から略U字状に延出するU字部85,85と、U字部85,85の端部から左右方向外方に向かって折れ曲がる略矩形状の当接部86,86とを有している。なお、M字金具82は当接部86,86を溶接することによりドア81に取り付けられる。このため、ドア81に溶接されたM字金具82の嵌込部83の収納空間に磁歪駆動体22を嵌め込むことにより発音装置80が完成する。なお、M字金具82のドア81への固定は、溶接に限らず、他の方法を採用しても良い。また、M字金具82をフェンダー等の他の車両を構成する部材に装着し、該装着した部材を発音させるようにしても良い。
【0079】
以上のように構成された発音装置80は、自動車のドア81に装着され、該ドア81から良好な音声を出力することができる。また、ドア81に取り付けられたM字金具82の嵌込部83に磁歪駆動体22を嵌め込むといった簡易な構成を有するため、発音装置80の量産が可能となると共にコストを削減することが可能となる。また、製造工程や組立工程を削減することも可能である。
【0080】
また、発音装置80では、自動車のドア81を発音させることが可能であるため、車両を構成する外板を用いて発音させることが可能となる。したがって、遮蔽物が無い状態で音声を外部に発生することが可能である。このため、歩行者等に対して効率良く音声を伝達することが可能となる。
【0081】
また、発音装置80では、ドア81から矩形波を放射して発音させているため、正弦波の場合よりも音の明瞭度を向上させることが可能となる。
【0082】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0083】
上述の各実施の形態では、車両のプレート20、ボンネット61、フェンダー71およびドア81を振動板として発音させているが、発音させる車両の部材はこれらの部材に限定されるものではなく、たとえば、自動車の天井を構成する板、あるいは、バンパー等を発音させることも可能である。バンパーを発音させる場合、昨今の樹脂製バンパーでは再生帯域や音圧が低くなり、金属等の内部損失が少ない材質で形成されているバンパーの場合、良好な発音性能を得ることができる。このため、車両部品における発音は、発音を前提とした材質や形状等を検討すれば、容易に発音せしめることが可能である。
【0084】
上述の各実施の形態では、歩行者等に車両の接近を報知させるために、発音装置1、60,70,80から発生される音声のみを用いているが、歩行者等に車両の接近を報知させる手段として、発音装置1,60,70,80からの音声とクラクション等の音声を併用するようにしても良い。
【0085】
また、上述の各実施の形態では、発音装置1,60,70,80から発される音声には特定の方向に指向性を持たせていないが、制御装置2によって制御することで、たとえば、前方の所定の範囲や斜め前方にのみ音声が到達するように指向性を持たせるようにしても良い。特に、住宅街を走行する場合や、早朝や深夜等の静粛性を要求される場合、前方および/または後方の所定の範囲にのみ音声が到達するようにするのが好ましい。
【0086】
また、上述の実施の形態では、車外の騒音をマイクロフォン4によって検出しているが、検出方法はマイクロフォン4で行うことに限定されず、たとえば、振動センサ等の他の機器によって検出するようにしても良い。また、本実施の形態では、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)とを比較する方法を採用しているが、このような方法に限定されるものではない。
【0087】
また、上述の各実施の形態では、磁歪駆動体22としては超磁歪アクチュエータが用いられているが、一般的な磁歪アクチュエータを用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0088】
1,60,70,80…車両接近報知用発音装置 2…制御装置(制御部) 20…ナンバープレート(振動板) 22…超磁歪アクチュエータ、磁歪駆動体(電動アクチュエータ) 23…取付板(装着具) 25…ネジ 32…駆動用コイル(駆動装置) 33…超磁歪素子 61…ボンネット(振動板) 62…補強フレーム(装着具) 71…フェンダー(振動板) 72…差込金具(装着具) 81…ドア(振動板) 82…M字金具(装着具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置され、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置であって、
上記車両の一部を構成する部材を振動板として採用し、制御部の制御によって駆動させられる電動アクチュエータの駆動によって上記振動板を振動させて音声を発生させることを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両接近報知用発音装置において、
前記電動アクチュエータは、
磁気をあたえると形状が変化する磁歪現象を利用した磁歪素子と、
上記磁歪素子を駆動させる駆動装置と、
を有し、
上記磁歪素子を介して振動部材を振動させ、該振動部材の振動により上記振動板を振動させることを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両接近報知用発音装置において、
前記振動板に装着可能な装着具を用いることにより、前記電動アクチュエータを前記振動板と接触した状態で保持すると共に、前記振動板方向に向かって前記電動アクチュエータを与圧することを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両接近報知用発音装置において、
前記装着具は略板形状を呈しており、前記装着具を前記振動板に固定することで、前記電動アクチュエータの前記振動板との接触部分を介して前記装着具に圧力を加えて該装着具を撓ませ、当該撓んだ装着具の復元力を利用して前記振動板方向に向かって前記電動アクチュエータを与圧することを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両接近報知用発音装置において、
前記電動アクチュエータが装着された前記装着具の端部もしくは端部近傍をネジ止めすることにて該装着具を前記振動板に対して固定することを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項6】
請求項3記載の車両接近報知用発音装置において、
前記電動アクチュエータが装着された前記装着具の一部を、前記車両の一部を構成する部材同士の隙間に差し込むことにより、前記電動アクチュエータを与圧することを特徴とする車両接近報知用発音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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