説明

車両接近警報装置

【課題】より簡素な構成によって音声データをアナログ波形に変換することができる車両接近警報装置を提供する。
【解決手段】マイクロコンピュータ31に汎用的に備えられているRAM31cとDMA部31dおよびPWM機能部31eとによってPWM波形が自動的に出力されるようにする。具体的には、PWM出力に用いるデータをRAM31cに保持すると共に、DMA部31dのDMA機能によってPWM生成機能部31eに対してRAM31cに保持されたデータを定期的に自動書込みされるようにすることで、マイクロコンピュータ31にてPWM波形が自動的に出力されるようにする。そして、マイクロコンピュータ31のPWM波形によって駆動回路部を制御し、スピーカへの電流供給量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両から音声を発生させることにより、車両が接近していることを周囲に警報する車両接近警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両において外部に音声を発音するための音声データの再生装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この従来の音声データの再生装置では、メモリ(ROM)内に記憶した音声データをD/A変換し、アナログ波形に変えて音声データに対応する音声の発音を行っている。
【0003】
近年、電気自動車(EV車)やハイブリッド車(HV車)など走行音の小さな車両が増え、歩行者など周囲に車両が近くにいるという認知度を上げるために擬似走行音を発生させる車両接近警報装置が車両に搭載されつつある。車両接近警報装置では、歩行者への認知度の向上のために、走行状態によって音声周波数や音圧を変化させるなどの加工を加えることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6489885号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に示す従来の音声データの再生装置J10のブロック図のように、従来構造では、マイコンJ1に内蔵したメモリJ1a内に記憶した音声データをアナログ波形に変換するために、マイコンJ1の外部に、ポートから出力されるnビットのデータをアナログ変換するためのD/A変換器J2と、ノイズ除去用のローパスフィルタJ3および出力増幅用の増幅器(オーディオアンプ)J4が必要となっていた。車両接近警報装置では、車両への取り付けスペースなどの関係から、より小型化が求められていると共に、小型化による更なるコスト削減が求められており、アナログ波形への変換にD/A変換器J2やローパスフィルタJ3および増幅器J4のすべてが必要となっている構成を簡素化することが必要である。
【0006】
また、発音に用いられるスピーカ(発音体)の電源は、一般的には車両バッテリ電源を降圧した定電圧源とされるが、より大きな音圧を得るために車両バッテリ電源をスピーカの電源として用いたい場合、電源電圧変動による影響を受け、スピーカから発せられる音声の音圧が変動するという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、より簡素な構成によって音声データをアナログ波形に変換することができる車両接近警報装置を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、より簡素な構成によって音声データをアナログ波形に変換することができるようにしつつ、さらに発音体の電源として車両バッテリ電源を用いても電源電圧変動による影響を抑制できる車両接近警報装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明では、車両に搭載された発音体(4)からの発音の音圧を制御することで、車両の接近を警報する車両接近警報装置において、音声データを記憶したメモリ(31a)と、メモリ(31a)に記憶された音声データを車両の走行状態に応じて加工することで、車両の走行状態に対応したPWM制御における周波数およびデューティ比を生成する加工器(31b)と、加工器(31b)で生成されたPWM制御における周波数およびデューティ比を記憶するRAM(31c)と、RAM(31c)に記憶されたPWM制御における周波数およびデューティ比の読み出しおよび自動書込みを行うダイレクトメモリアクセス部(31d)と、ダイレクトメモリアクセス部(31d)による自動書込みによってRAM(31c)から読み出されたPWM制御における周波数およびデューティ比が書き込まれると共に、書き込まれたPWM制御における周波数およびデューティ比に対応するPWM出力を発生させるPWM生成機能部(31e)と、を有するマイクロコンピュータ(31)と、所定の電圧が印加され、マイクロコンピュータ(31)からのPWM出力に基づいて発音体(4)への電流供給量を制御する駆動回路部(33)と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
このように、マイクロコンピュータ(31)に汎用的に備えられているRAM(31c)とDMA部(31d)およびPWM機能部(31e)とによってPWM波形が自動的に出力されるようにしている。具体的には、PWM出力に用いるデータをRAM(31c)に保持すると共に、DMA部(31d)のDMA機能によってPWM生成機能部(31e)に対してRAM(31c)に保持されたデータを定期的に自動書込みされるようにすることで、マイクロコンピュータ(31)にてPWM波形が自動的に出力されるようにしている。そして、マイクロコンピュータ(31)のPWM波形によって駆動回路部(33)を制御し、発音体(4)への電流供給量を調整するようにしている。
【0011】
このため、従来のように、D/A変換器やローパスフィルタおよび増幅器(オーディオアンプ)をすべて備えていなくても、それらを代替できる構成をマイクロコンピュータ(31)の汎用機能やアンプに相当する駆動回路部(33)を備えることによって作り出すことが可能となる。したがって、D/A変換器やローパスフィルタおよび増幅器をすべて備えていなくても良くなり、簡素な構成によって音声データをアナログ波形に変化することができる。これにより、車両接近警報装置の簡素化を図ることが可能となり、簡素化に伴う小型化が図れると共に、コスト削減を図ることが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、所定の電圧がバッテリ電圧である場合において、バッテリ電圧をモニタするバッテリ電圧モニタ部(35)を備え、マイクロコンピュータ(31)に備えられた加工器(31b)は、車両の走行状態に加えてバッテリ電圧モニタ部(35)でモニタされたバッテリ電圧も用いてメモリ(31a)に記憶された音声データを加工することで、車両の走行状態およびバッテリ電圧に対応したPWM制御における周波数およびデューティ比を生成することを特徴としている。
【0013】
このように、バッテリ電圧をモニタし、バッテリ電圧の変動に伴う発音体(4)での音圧変化がキャンセルされるようにしている。したがって、車両バッテリ(1)を電源として用いても、電源電圧変動に影響を抑制できる車両近接警報装置とすることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、メモリ(31a)からの音声データのサンプリング周期がPWM制御におけるPWM周期よりも遅い場合において、加工器(31b)は、サンプリング周期の間において、音声データを補完するPWM制御における周波数およびデューティ比に加工することを特徴としている。
【0015】
このようにすれば、PWM制御の各周期に求められるデューティ比は補完後の緩やかに変化する値となり、デューティ比の差が発音体(4)を通過する周波数成分を含んでしまって雑音となることを抑制することが可能となる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車両接近警報装置を含む車両接近警報システムのブロック図である。
【図2】マイコン31の内部構造の詳細を示したブロック図である。
【図3】マイコン31の動作イメージを示した説明図を参照して説明する。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる車両接近警報装置2を含む車両接近警報システムのブロック図である。
【図5】従来の音声データの再生装置J10のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる車両接近警報装置を含む車両接近警報システムのブロック図である。この図を参照して、本実施形態にかかる車両用接近警報装置を含む車両接近警報システムについて説明する。
【0020】
図1に示すように、車両接近警報システムは、車両バッテリ1を電源とする電力供給によって動作し、車両状態取得部2と車両接近警報装置3およびスピーカ4を備えた構成とされている。車両接近警報システムでは、車両接近警報装置3が車両状態取得部2から伝えられる走行状態に基づいて、発音体であるスピーカ4からの発音を行うことで、車両の接近を周囲の歩行者などに警報する。なお、ここでは、車両接近警報装置3をスピーカ4と別体としているが、スピーカ4を車両接近警報装置3と一体化した構成としても良い。
【0021】
車両バッテリ1は、車両接近警報装置3の電源端子3aに接続され、電源端子3aに対してバッテリ電圧を印加することで、車両接近警報装置3への電力供給を行っている。
【0022】
走行状態取得部2は、車両の走行状態を取得すると共に取得した走行状態を表す信号を車両接近警報装置3に対して伝えている。走行状態取得部2は、例えば車速センサやアクセル開度センサなどの各種センサによって構成される。車速センサは、車両の走行状態として車速を示す信号を出力し、アクセル開度センサは、車両の走行状態としてアクセル開度を示す信号を出力している。このため、車両接近警報装置3は、これら車速やアクセル開度を示す信号を走行状態を表す信号として入力し、車速やアクセル開度などの車両の走行状態に応じて発音の制御を行う。
【0023】
車両接近警報装置3は、マイコン31とレギュレータ32と駆動回路部33を有した構成とされ、車両バッテリ1からの電力供給に基づいて動作し、走行状態取得部2から伝えられる走行状態に応じた発音をスピーカ4より行う。
【0024】
マイコン31は、CPUなどを備えた周知のマイクロコンピュータであり、音声データを記憶していると共に、走行状態に応じて音声データを加工し、加工後の音声データに対応するPWM出力を発生させる。図2は、マイコン31の内部構造の詳細を示したブロック図である。この図に示すように、マイコン31には、メモリ31a、加工器31b、RAM31c、DMA(ダイレクトメモリアクセス)部31dおよびPWM生成機能部31eが備えられている。
【0025】
メモリ31aは、音声データ等を記憶している。図2では、メモリ31aへの記憶内容のうちの音声データについてのみ図示してあるが、その他、発音の制御プログラムなどが記憶されおり、この制御プログラムに従って、発音による車両接近警報が行われる。音声データは、PCM(パルス符号変調)などのデータ、つまり音声の大きさをデータコードに変換して符号化したデータ等によって記憶されている。
【0026】
加工器31bは、制御プログラムに記憶された走行状態に対応付けた演算式やマップなどに基づいて、メモリ31aに記憶された元の音声データを加工し、発音に適切な周波数と音圧を生成している。具体的には、発音に適切な周波数および音圧として、PWM制御の周波数およびデューティ比が生成されている。
【0027】
RAM31cは、加工器31bで生成された周波数やデューティ比を一旦記憶しておく場所であり、ここに記憶されている内容が、走行状態に対応した発音に用いられる周波数やデューティ比のデータとなる。
【0028】
DMA部31dは、DMA方式によるデータ転送、つまりCPUを介さずに各装置とRAM31cの間で直接データ転送を行うものであり、PWM生成機能部31eから終了信号が送られてくる毎にRAM31cに記憶されている内容を順次読出し、それをPWM生成機能部31eに自動書込みする。
【0029】
PWM生成機能部31eは、DMA部31dが自動書込みした内容、つまり発音に適切な周波数やPWM制御のデューティ比に基づいて、その周波数およびデューティ比に設定されたPWM出力を発生させる。PWM出力は、PWM制御における1周期毎に発生させられることでPWM波形とされる。PWM生成機能部31eは1周期毎にPWM出力を発生させると、それと同時に終了信号をDMA部31dに出力し、DMA部31dに次の周期のPWM出力とする周波数およびデューティ比を読み出させ、DMA部31dからPWM生成機能部31eへの自動書込みを行わせている。
【0030】
このようなブロック構成によってマイコン31の内部が構成されており、走行状態取得部2から伝えられる走行状態に応じてPWM出力を発生させ、その出力波形(PWM波形)に応じて駆動回路部33を駆動している。
【0031】
レギュレータ32は、車両バッテリ1から印加されるバッテリ電圧に基づいて、定電圧を発生させる定電圧源となるものであり、本実施形態では、例えば定電圧として5Vを発生させている。このレギュレータ32によって生成される定電圧がマイコン31の駆動電源となり、また、駆動回路部33を介してスピーカ4への電流供給のための電圧として用いられる。
【0032】
駆動回路部33は、マイコン31のPWM出力に基づいてスピーカ4への電流供給を制御するもの、つまりスピーカ4の駆動を制御するものである。本実施形態では、PchMOSFET33aとNchMOSFET33bを直列接続したCMOSによって構成されており、PchMOSFET33aのソースにレギュレータ5が発生させる定電圧が印加され、NchMOSFET33bのソースがGNDに接続されると共に、PchMOSFET33aとNchMOSFET33bのドレイン同士の間にスピーカ4が接続された構成とされている。そして、マイコン31のPWM出力が抵抗33c、33dを介してPchMOSFET33aとNchMOSFET33bのゲート電圧として入力されることで、スピーカ4への電流供給が制御されるようになっている。具体的には、PWM出力がローレベルになるとPchMOSFET33aがオン、NchMOSFET33bがオフとなり、PchMOSFET33aを通じてスピーカ4への電流供給量が増やされる。また、PWM出力がハイレベルになるとPchMOSFET33aがオフ、NchMOSFET33bがオンとなり、スピーカ4に流される電流供給量が減らされる。このようにして、駆動回路部33のCMOSが制御されることにより、スピーカ4への電流供給量の調整が行われる。
【0033】
スピーカ4は、発音体を構成するものであり、電流供給量に応じて発音する音圧を変化させ、電流供給量が大きいほど大きな音圧を発生させる。
【0034】
このような構造により、本実施形態にかかる車両接近警報装置3を備えた車両接近警報システムが構成されている。次に、このように構成された車両接近警報システムによる動作例について、図3に示す動作イメージを示した説明図を参照して説明する。
【0035】
上述したように、メモリ31aに記憶された音声データが走行状態取得部2から伝えられる走行状態に基づいて加工器31bで加工されると、それがRAM31cに一旦記憶される。
【0036】
例えば、図3に示したように、RAM31c内において周波数(周波数−1、2、3・・・)およびデューティ比(duty−1、2、3・・・)として記憶される。これがPWM制御の1周期毎にDMA部31dの動作により読み出され、PWM生成機能部31eで読み出した周波数およびデューティ比に応じたPWM出力が発生させられる。例えば、図3に示したように、周波数およびデューティ比が周波数−1およびduty−1がPWM出力として出力されると、PWM出力の発生と同時に終了信号が発生させられ、次の周期の周波数およびデューティ比が設定レジスタに保持される。図3では、デューティ設定レジスタに次の周期のデューティ比としてduty−2が保持された状態が示してある。
【0037】
そして、次の周期においてPWM出力を発生させる際に設定レジスタに保持されている周波数およびデューティ比がロードされ、ロードが完了するとそれに対応する周波数およびデューティ比のPWM出力が発生させられると共に終了信号が出力される。この後も、同様の動作が繰り返されることでPWM出力が発生させられ、スピーカ4への電流供給量がPWM制御されて、所望の周波数および所望の音圧の発音が為される。
【0038】
以上説明した本実施形態の車両接近警報装置3を備えた車両接近警報システムでは、マイクロコンピュータ31に汎用的に備えられているRAM31cとDMA部31dおよびPWM機能部31eとによってPWM波形が自動的に出力されるようにしている。具体的には、PWM出力に用いるデータをRAM31cに保持すると共に、DMA部31dのDMA機能によってPWM生成機能部31eに対してRAM31cに保持されたデータを定期的に自動書込みされるようにすることで、マイクロコンピュータ31にてPWM波形が自動的に出力されるようにしている。そして、マイクロコンピュータ31のPWM波形によって駆動回路部33を制御し、スピーカ4への電流供給量を調整するようにしている。
【0039】
このため、従来のように、D/A変換器やローパスフィルタおよび増幅器(オーディオアンプ)をすべて備えていなくても、それらを代替できる構成をマイコン31の汎用機能やアンプに相当する駆動回路部33を備えることによって作り出すことが可能となる。したがって、D/A変換器やローパスフィルタおよび増幅器をすべて備えていなくても良くなり、簡素な構成によって音声データをアナログ波形に変化することができる。これにより、車両接近警報装置3の簡素化を図ることが可能となり、簡素化に伴う小型化が図れると共に、コスト削減を図ることが可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してスピーカ4の駆動電源として車両バッテリ1を用いていることなどを変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図4は、本実施形態にかかる車両接近警報装置2を含む車両接近警報システムのブロック図である。この図に示されるように、本実施形態では、レギュレータ32が発生させる定電圧をマイコン31にしか印加しておらず、駆動回路部33には車両バッテリ1が発生させるバッテリ電圧が印加されるようにしてある。駆動回路部33へのバッテリ電圧の印加ラインにはコンデンサ34が備えられ、バッテリ電圧の急激な電圧変動が抑制されるようにしている。
【0042】
ただし、このようにバッテリ電圧が駆動回路部33へ印加される場合、スピーカ4への電流供給のための電圧としてバッテリ電圧が使用されることになるため、バッテリ電圧の変動に伴う影響が懸念される。このため、本実施形態では、マイコン31にてバッテリ電圧をモニタし、このバッテリ電圧に応じて加工器31bでの周波数および音圧に応じたデューティ比の加工が行われるようにすることで、バッテリ電圧の変動に伴うスピーカ4での音圧変化がキャンセルされるようにしている。すなわち、バッテリ電圧が標準電圧から上昇すると、それの増加分を見込んでデューティ比を低下させるなどにより、スピーカ4から所望の音圧で発音されるようにしている。したがって、車両バッテリ1を電源として用いても、電源電圧変動に影響を抑制できる車両近接警報装置3とすることが可能となる。
【0043】
具体的には、レギュレータ32の前段においてバッテリ電圧モニタ部35を備えており、このバッテリ電圧モニタ部35にてバッテリ電圧をモニタし、マイコン31にモニタ結果を入力している。ここではバッテリ電圧モニタ部35を分圧抵抗35a、35bおよびコンデンサ35cにて構成しており、分圧抵抗35a、35bでバッテリ電圧を分圧し、この分圧した電圧がマイコン31に入力されるようにしつつ、コンデンサ35cに分圧した電圧が充電されるようにすることで、マイコン31の入力電圧の急激な変動が抑制されるようにしている。
【0044】
一般的に、PWM方式での駆動方法では、電源電圧変動に起因する音圧変動が生じるため、安定化電源回路を備えることが必要となるが、上記のように、バッテリ電圧のモニタによってPWM出力を調整するという手法によれば、安定化電源回路を備えなくても済むようにできる。
【0045】
また、本実施形態では、駆動回路部33をBTL駆動方式とし、より大きな電流供給量が得られるようにすることで、音圧アップを図るようにしている。具体的には、本実施形態の駆動回路部33は、PcnMOSFET33aとNchMOSFET33bを有するCMOSが2つ備えられていると共に、それぞれのCMOSのPcnMOSFET33aとNchMOSFET33bの間がスピーカ4のハイサイド側とローサイド側にそれぞれ接続されている。
【0046】
また、CMOSの印加電圧がバッテリ電圧となっていることから、PcnMOSFET33aとNchMOSFET33bを駆動するためのゲート電圧もバッテリ電圧基準となるように、PchMOSFET33aのソースとGNDとの間に抵抗33eおよびNchMOSFET33fを接続している。そして、スピーカ4のハイサイド側のCMOS駆動用のNchMOSFET33fにはマイコン31のPWM出力が抵抗33gを介してNchMOSFET33fのゲート電圧として入力され、ローサイド側のCMOS駆動用のNchMOSFET33fにはマイコン31のPWM出力の反転出力が抵抗33gを介してNchMOSFET33fのゲート電圧として入力されるようにしている。
【0047】
このような構成によれば、レギュレータ32にて形成される定電圧基準のPWM出力もしくはその反転出力に基づいて、各NchMOSFET33fのオンオフが制御されると、それに伴ってバッテリ基準とされるCMOSのPchMOSFET33aおよびNchMOSFET33bのオンオフが制御される。例えば、スピーカ4のハイサイド側に備えられるCMOSでは、ゲート電圧がハイレベルとなってNchMOSFET33fがオンすると、PchMOSFET33aおよびNchMOSFET33bのゲート電圧がローレベルになるため、PchMOSFET33aがオン、NchMOSFET33bがオフになる。このため、スピーカ4への電流供給量を増加させる。逆に、ゲート電圧がローレベルとなってNchMOSFET33fがオフすると、PchMOSFET33aおよびNchMOSFET33bのゲート電圧がハイレベルになるため、PchMOSFET33aがオフ、NchMOSFET33bがオンになる。このため、スピーカ4への電流供給量が減少する。
【0048】
そして、スピーカ4のハイサイド側とローサイド側においてCMOSなどの各部をBTL接続しているため、スピーカ4への電流供給量を倍増することが可能となり、スピーカ4での音圧を倍増することが可能となる。
【0049】
以上説明した本実施形態の車両接近警報装置3を備えた車両接近警報システムでは、マイコン31にてバッテリ電圧をモニタし、バッテリ電圧の変動に伴うスピーカ4での音圧変化がキャンセルされるようにしている。したがって、車両バッテリ1を電源として用いても、電源電圧変動に影響を抑制できる車両近接警報装置3とすることが可能となる。
【0050】
また、BTL駆動方式とすることで、よりスピーカ4に対する電流供給量を大きくすることが可能となるため、スピーカ4での発音の音圧アップを図ることが可能となる。
【0051】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、駆動回路部33にCMOSを用いているが、NchMOSFET33bに代えて、カソードがPchMOSFET33a側に接続されると共にアノードがGND側に接続されるダイオードを備えるようにしても良い。
【0052】
ただし、NchMOSFET33bを用いる場合、PchMOSFET33aをオンさせているときにNchMOSFET33bもオンさせて抵抗として用いれば、PchMOSFET33aとNchMOSFET33bにより構成される負荷が等しくなるため、電流の増減の傾きを均一化してバランスさせられるという効果が得られる。
【0053】
また、上記各実施形態の車両接近警報装置3の構成によって周波数や音圧変化の加工を行う場合において、音声データのサンプリング周期がPWM周期よりも長い場合、サンプリング周期毎にPWM制御のデューティ比の変化が急激になるために、そのデューティ比の差が結果的にスピーカ4を通過する周波数成分を含んでしまって雑音となることがある。これを回避するためには、例えば、PWM周期の1/n(nは正数)の周期である遅いサンプリング周期で音声データを記憶しても、加工器31bにてそれを線形補完した値が求められるようにし、その補完した値がRAM31cに記憶されるようにすれば良い。このようにすれば、PWM制御の各周期に求められるデューティ比は補完後の緩やかに変化する値となり、デューティ比の差がスピーカ4を通過する周波数成分を含んでしまって雑音となることを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 車両バッテリ
2 走行状態取得部
3 車両接近警報装置
4 スピーカ
31 マイコン
31a メモリ
31b 加工器
31c RAM
31d DMA部
31e PWM生成機能部
32 レギュレータ
33 駆動回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された発音体(4)からの発音の音圧を制御することで、前記車両の接近を警報する車両接近警報装置において、
音声データを記憶したメモリ(31a)と、
前記メモリ(31a)に記憶された音声データを前記車両の走行状態に応じて加工することで、前記車両の走行状態に対応したPWM制御における周波数およびデューティ比を生成する加工器(31b)と、
前記加工器(31b)で生成された前記PWM制御における周波数およびデューティ比を記憶するRAM(31c)と、
前記RAM(31c)に記憶された前記PWM制御における周波数およびデューティ比の読み出しおよび自動書込みを行うダイレクトメモリアクセス部(31d)と、
前記ダイレクトメモリアクセス部(31d)による自動書込みによって前記RAM(31c)から読み出された前記PWM制御における周波数およびデューティ比が書き込まれると共に、書き込まれた前記PWM制御における周波数およびデューティ比に対応するPWM出力を発生させるPWM生成機能部(31e)と、を有するマイクロコンピュータ(31)と、
所定の電圧が印加され、前記マイクロコンピュータ(31)からの前記PWM出力に基づいて前記発音体(4)への電流供給量を制御する駆動回路部(33)と、を備えていることを特徴とする車両接近警報装置。
【請求項2】
前記所定の電圧はバッテリ電圧であり、
前記バッテリ電圧をモニタするバッテリ電圧モニタ部(35)を備え、
前記マイクロコンピュータ(31)に備えられた前記加工器(31b)は、前記車両の走行状態に加えて前記バッテリ電圧モニタ部(35)でモニタされた前記バッテリ電圧も用いて前記メモリ(31a)に記憶された音声データを加工することで、前記車両の走行状態および前記バッテリ電圧に対応したPWM制御における周波数およびデューティ比を生成することを特徴とする請求項1に記載の車両接近警報装置。
【請求項3】
前記メモリ(31a)からの前記音声データのサンプリング周期が前記PWM制御におけるPWM周期よりも遅く、
前記加工器(31b)は、前記サンプリング周期間において前記音声データを補完するPWM制御における周波数およびデューティ比に加工することを特徴とする請求項1または2に記載の車両接近警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171462(P2012−171462A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34722(P2011−34722)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(390001812)アンデン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】