説明

車両搭載型電圧補償装置

【課題】車両のバッテリ電圧が長期間低下した場合でも、車両に搭載された電気機器Lに適正な電圧の電力を供給でき、かつ軽量かつコンパクトな構成で実現できる車両搭載型電圧補償装置100を提供する。
【解決手段】車両に搭載された電気機器LとバッテリBとの間に介在して、前記電気機器Lに電力を供給するものであって、バッテリ電圧を監視する電圧監視部1と、充放電可能に構成された蓄電部4と、前記電圧監視部1で監視されているバッテリ電圧が規定電圧範囲にある通常状態の場合には、バッテリBによって前記蓄電部4を充電するとともにバッテリBの電圧を略そのまま出力する一方、前記バッテリ電圧が前記規定電圧範囲から下降して下限閾値を下回った電圧低下状態の場合には、前記蓄電部4の電圧を前記バッテリ電圧に加算して出力する電圧補償部5とを具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関を有した車両のバッテリと当該車両に搭載されるオプション電気機器などとの間に介在して、該電気機器への入力電圧の電位低下を補償する車両搭載型電圧補償装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば落雷時や停電時などのようにメイン電源の電圧が不安定になったとき、これに接続されている電気機器の動作に支障が起こらないように、例えば無停電電源装置などを介在させる場合がある。この無停電電源装置は、メイン電源の電圧が不安定になると、メイン電源と電気機器とを切り離し、メイン電源に代えて自身が有する電池やコンデンサ等を前記電気機器に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−161844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関を有する車両の場合は、メイン電源が車両に搭載された電池となるが、例えばセルモータの駆動時などにおいて、電圧低下期間がかなり長期間(数秒)続くときがあり、車両に種々の電気機器を持ち込んでこれを動かそうとした場合、この電圧低下によって電気機器の動作が中断したり停止したりするという問題がある。
【0005】
これを回避すべく、単純に前記無停電電源装置のような機器を適用すると、電圧低下期間において、電気機器が消費する電力をすべて無停電電源装置から供給しなければならず、車両のように電圧低下期間が長く続くものに対しては、それ相応に当該無停電電源装置に備える電池やコンデンサの容量をかなり大きくしなければならない。そうすると、無停電電源装置が重厚長大なものとなり、軽量コンパクト化が特に求められる車両においては、ユーザの要求に応えることができない恐れが生じる。
【0006】
本発明は、車両に搭載される電気機器が一般の電気機器に比べて使用可能電圧の上限が高く、かつ、車両ではバッテリ電圧が低下するとはいえその値は0にはほとんどならないことに着目して初めてなされたものであって、その主たる目的は、車両のバッテリ電圧が長期間低下した場合でも、車両に搭載された電気機器に適正な電圧の電力を供給でき、かつ軽量かつコンパクトな構成を実現できる車両搭載型電圧補償装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る車両搭載型電圧補償装置は、車両に搭載された電気機器と当該車両のバッテリとの間に介在して、前記電気機器に電力を供給するものであって、前記バッテリに接続されて該バッテリから電力を供給される入力端子と、前記電気機器に接続されて該電気機器に電力を供給する出力端子と、バッテリ電圧を監視する電圧監視部と、充放電可能に構成された蓄電部と、前記電圧監視部で監視されているバッテリ電圧が規定電圧範囲にある通常状態の場合には、バッテリによって前記蓄電部を充電するとともにバッテリの電圧を略そのまま前記出力端子から出力する一方、前記バッテリ電圧が前記規定電圧範囲から下降して下限閾値を下回った電圧低下状態の場合には、前記蓄電部の電圧を前記バッテリ電圧に加算して前記出力端子から出力する電圧補償部とを具備することを特徴とする。
【0008】
具体的な実施態様としては、前記電圧補償部が、前記通常状態の場合には前記電気機器からみて前記バッテリと前記蓄電部とが並列接続となり、前記電圧低下状態の場合には前記電気機器からみて前記バッテリと前記蓄電部とが直列接続となるように、内部回路を切り替えるものを挙げることができる。
より長期間の電圧低下状態に耐えられるようにするには、前記蓄電部への充電電圧を、バッテリ電圧と略等しく設定しておくことが好ましい。
【0009】
耐電圧が低い蓄電部であっても使用できるようにし、部品選定の自由度を上げてコストダウンや性能向上を図るには、前記蓄電部への充電電圧を、バッテリ電圧よりも小さな値に設定しておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
このような構成の本発明によれば、蓄電部をバッテリと切り替えるのではなく、バッテリ電圧に蓄電部電圧を加算して出力するので、バッテリを効果的に利用することができ、小さい容量の蓄電部でも長時間の電圧低下状態に対応することが可能になる。
【0011】
なお、通常の一般電気機器であれば、蓄電部の電圧をバッテリ電圧に加算すると、耐電圧を超える場合があるため、このような発想はありえないところ、車両用の電気機器は、通常使用電圧が12Vであるがトラック等の大型車両にも対応できるように耐電圧を高区設定してあるものが多いことから、これに発明者は着目して本発明を成立させたものである。また、車両用バッテリは電圧が0になることはほとんどないため、このように蓄電部の電圧を加算して有効な効果が得られることも本発明の大きな成立要因である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における車両搭載型電圧補償装置の内部回路図。
【図2】同実施形態における充電抵抗部の詳細回路図。
【図3】同実施形態における通常状態での電流の流れる経路を示した説明図。
【図4】同実施形態における電圧低下状態での電流の流れる経路を示した説明図。
【図5】同実施形態において電圧補償したときの出力電圧およびバッテリ電圧の時間変化を示す電圧グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る車両搭載型電圧補償装置100(以下、単に電圧補償装置とも言う。)は、図1に示すように、内燃機関を走行動力源とする自動車や鉄道機関車等の車両に搭載されているバッテリBと、当該車両に搭載されている電気機器である例えば運行管理計やドライブレコーダのデータ処理装置(以下、総称して運行管理計とも言う)Lとの間に介在して、この運行管理計Lに電圧を補償した電力を供給するものである。なお、運行管理計とは、走行速度や走行距離、時間といった走行データの他、例えば、「積込」、「荷卸」、「手待」、「休憩」などといった一日に発生する作業内容を表す運行管理データなどを時系列的に記録するものであり、その性質上、電源電圧の変動による動作異常や、収集データファイルの破壊が生じることを可及的に避けなければならない。
【0015】
図1に電圧補償装置100の回路図を示す。
この電圧補償装置100は、前記バッテリBに接続される入力端子In、Inと、前記運行管理計Lに接続される出力端子Out、Outと、バッテリ電圧を監視する電圧監視部1と、充放電可能な蓄電部であるコンデンサ4と、前記電圧監視部1で監視されているバッテリ電圧が規定電圧範囲にある通常状態の場合には、バッテリBによって前記コンデンサ4を充電するとともにバッテリBの電圧を略そのまま前記出力端子Outから出力する一方、前記バッテリ電圧が前記規定電圧範囲から下降して下限閾値を下回った電圧低下状態の場合には、前記コンデンサ4の電圧を前記バッテリ電圧に加算して前記出力端子Outから出力する電圧補償部5とを具備するものである。
各部を説明する。
【0016】
電圧監視部1は、入力端子In、In間に接続されてバッテリ電圧を監視するものであり、後述するスイッチを切り替えるためのスイッチ駆動信号を出力する。より具体的に、この電圧監視部は、ヒステリシスを設けたコンパレータ回路で構成してあり、バッテリ電圧が、規定電圧範囲にある場合には、通常状態であると判断して前記スイッチ3を一方に切り替える一方、この規定電圧範囲から下降して所定の下限閾値を下回った場合には、電圧低下状態であると判断してスイッチ3を他方に切り替えるものである。また、そこからバッテリ電圧が上昇して、前記下限閾値よりも所定電圧だけ高い第2閾値を上回った場合には、通常状態に復帰したとして、スイッチ3を一方に戻すものである。
【0017】
コンデンサ4は電池でもよく、特にその種類にこだわるものではないが、容量として予想される電圧低下時の期間に対応できるものが選定されている。
【0018】
電圧補償部5は、スイッチ3、抵抗部2、ダイオードD1、D2等から構成されるものである。
【0019】
スイッチ3は、前記通常状態の場合には前記運行管理計Lからみて前記バッテリBと前記コンデンサ4とが並列接続となり、前記電圧低下状態の場合には前記運行管理計Lからみて前記バッテリBと前記コンデンサ4とが直列接続となるように、内部回路を2択切り替えするものであり、FETなどの半導体スイッチング素子で構成してよい。
【0020】
抵抗部2は、例えば図2に示すように、トランジスタ21と、このトランジスタ21のベース−コレクタ間に接続した抵抗23と、トランジスタ21のベースに接続した電圧制限素子(ツェナーダイオード)22と、トランジスタ21のエミッタに接続した抵抗24とからなるものであり、コンデンサ4への充電電圧を、この電圧制限素子22の電圧までに抑制する働きをする。
【0021】
このように構成した電圧補償装置100の電流の流れについて、図3、図4を参照して説明する。
【0022】
通常状態、すなわち、バッテリ電圧が規定範囲にある場合には、スイッチ3は一方に切り替わり、電流は図3に示すような経路で流れる。すなわち、バッテリBからの電流は2分して一方はコンデンサ4を充電するのに使われ、他方は、出力端子Outからそのまま出力されて運行管理計Lに供給される。
【0023】
一方、電圧低下状態の場合には、スイッチ3は、他方に切り替わり、電流は図4に示すような経路で流れる。すなわち、バッテリBとコンデンサ4とが直列接続になってこれらが加算された電圧の電力が出力端子Outから出力されて運行管理計Lに供給される。
【0024】
次に、具体的な電流波形の一例について、図5を参照して説明する。例えば、セルモータ始動時のように、車両の一部に電力が多く供給されて一時的にバッテリ電圧が下がったとする。
【0025】
そしてバッテリ電圧が下限閾値を下回ると、そこにコンデンサ4の電圧が加算され、運行管理計Lに出力される。その後、その電力が消費されてこの電圧補償装置100の出力電圧は徐々に下がってくるが、バッテリ電圧も徐々に回復し、その電圧が第2閾値を上回ると通常状態に切り替わって、バッテリ電圧が略そのまま出力される。
【0026】
しかして、この下限閾値を運行管理計Lの下限動作電圧近傍に設定しておくことで、セルモータ駆動時などのバッテリ電圧低下時でも運行管理計L確実な動作を期待できる。
【0027】
またコンデンサ4の電圧が加算されても、運行管理計Lは、車載バッテリが12V、24Vの双方に対応できるように、特に耐電圧が高いものが多く(ちなみにこの実施形態での運行管理計は動作電源範囲が10V〜30Vに設定してある)支障の生じることはほとんどない。
【0028】
なお、コンデンサへの充電電圧は、バッテリ電圧でもかまわない。出力端子に電圧のAC的なふらつきを防止する電圧安定化回路を設けてもよい。第2閾値は下限閾値と同じ値でもよい。その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電気機器と当該車両のバッテリとの間に介在して、前記電気機器に電力を供給するものであって、
前記バッテリに接続されて該バッテリから電力を供給される入力端子と、
前記電気機器に接続されて該電気機器に電力を供給する出力端子と、
バッテリ電圧を監視する電圧監視部と、
充放電可能に構成された蓄電部と、
前記電圧監視部で監視されているバッテリ電圧が規定電圧範囲にある通常状態の場合には、バッテリによって前記蓄電部を充電するとともにバッテリの電圧を略そのまま前記出力端子から出力する一方、前記バッテリ電圧が前記規定電圧範囲から下降して下限閾値を下回った電圧低下状態の場合には、前記蓄電部の電圧を前記バッテリ電圧に加算して前記出力端子から出力する電圧補償部とを具備することを特徴とする車両搭載型電圧補償装置。
【請求項2】
前記電圧補償部は、前記通常状態の場合には前記電気機器からみて前記バッテリと前記蓄電部とが並列接続となり、前記電圧低下状態の場合には前記電気機器からみて前記バッテリと前記蓄電部とが直列接続となるように、内部回路を切り替えるものである請求項1記載の車両搭載型電圧補償装置。
【請求項3】
前記蓄電部への充電電圧を、バッテリ電圧と略等しく設定している請求項1又は2記載の車両搭載型電圧補償装置。
【請求項4】
前記蓄電部への充電電圧を、バッテリ電圧よりも小さな値に設定している請求項1又は2記載の車両搭載型電圧補償装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165518(P2012−165518A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22703(P2011−22703)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】