説明

車両検知装置

【課題】感知エリアが設定されている車線の隣接車線を温度が高い車両が通過した場合であっても、当該感知エリアにおける車両の有無を正しく判定することができる車両検知装置を提供する。
【解決手段】親装置1bは、入力レベル値b(n)の単位時間当たりの変化量dif(n)を算出する(ステップS05)。次に、親装置1bは第2閾値c2(n)を設定する(ステップS06)。次に、親装置1bはステップS05で算出した変化量dif(n)とステップS06で設定した第2閾値c2(n)とを比較する(ステップS07)。変化量dif(n)が第2閾値c2(n)以上であれば、ステップS08以降の処理に進み、変化量dif(n)が第2閾値c2(n)未満であれば、感知エリアRXにおいて車両なしと判定する(ステップS21)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上を走行する車両を検知する車両検知装置に関し、特に、赤外線を用いて車両を検知するのに最適な車両検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交通量や占有率などの交通流を調べるために車両を検知する装置として、赤外線感知センサを利用した車両検知装置が提案されている(特許文献1)。この車両検知装置は、各車線に設定された感知エリアにおいて、車両が発する赤外線、道路などの車両以外の物体が発する赤外線を感知し、これらに基づいて車両の有無を判定する。より具体的には、感知エリアに車両が存在しないと推定されるときの赤外線のレベル値(背景レベル)を求めておき、この背景レベルよりも所定の閾値以上離れたレベル値の赤外線を感知した場合に、当該感知エリアに車両が存在すると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−317186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、感知エリアが設定されている車線に隣接する車線を温度が高い車両が通過したときに、この車両が発する赤外線を感知する場合があり、このときの赤外線のレベル値が背景レベルよりも所定の閾値以上高ければ、感知エリアに車両が存在していないにもかかわらず、誤って車両が存在すると判定するおそれがあった。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、感知エリアが設定されている車線の隣接車線を温度が高い車両が通過した場合であっても、当該感知エリアにおける車両の有無を正しく判定することができる車両検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る車両検知装置は、道路上に設定された感知エリアにおける車両を検知する車両検知装置であって、前記感知エリアに対応づけられ、該感知エリアにおいて検知対象が発する赤外線を感知するセンサと、センサから得られた入力レベル値を用いて、前記感知エリアにおける車両の有無を判定する判定手段とを備え、車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、この背景レベルと前記入力レベル値との差に基づく値を比較値とし、前記判定手段は、比較値が第1閾値以上であり、かつ、前記入力レベル値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上である場合に、車両が存在すると判定するように構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
従来の車両検知装置では、比較値が第1閾値以上のときに、車両が存在すると判定していた。発明者は、感知エリアが設定されている車線の隣接車線を走行する車両から発せられる赤外線の入力レベル値の単位時間当たりの変化量は、感知エリアに存在する車両から発せられる赤外線の入力レベル値の単位時間当たりの変化量よりも小さいことに着目し、第1発明に係る車両検知装置では、さらに入力レベル値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上である場合に、車両が存在すると判定することとした。これにより、感知エリアにおける車両の有無を正しく判定することができる。
【0008】
第1発明に係る車両検知装置は、所定期間内における前記比較値の最大値に基づいて第3閾値を算出する閾値演算手段を備え、前記判定手段は、さらに比較値が第3閾値以上である場合に、車両が存在すると判定するように構成されていても良い(請求項2)。
【0009】
時間帯によって車両の温度は異なっているため、比較値も時間帯によって大きさが異なる。例えば、昼の車両の温度は朝の車両の温度よりも高いため、昼の比較値は朝の比較値よりも値が大きくなる。従って、昼に隣接車線を温度の高い車両が走行すると、この車両からの赤外線に基づく比較値も大きくなるため、従来の車両検知装置では誤感知をするおそれがあった。そこで、本発明では、比較値を時間帯によって可変の第3閾値と比較することにより、誤感知を防止する。すなわち、所定期間(例えば、感知エリアにおいて車両を感知していた直近の期間)内における比較値の最大値を求めて、この最大値に係数(例えば、0.1)を掛けて第3閾値を求め、比較値がこの第3閾値以上である場合に、車両が存在すると判定する。これにより、感知エリアにおける車両の有無をより正しく判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感知エリアが設定されている車線の隣接車線を温度が高い車両が通過した場合であっても、当該感知エリアにおける車両の有無を正しく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る車両検知装置の概要を示す模式図である。
【図2】車両検知装置の子装置の構成を示すブロック図である。
【図3】赤外線感知センサの構成を示すブロック図である。
【図4】車両検知装置の親装置の構成を示すブロック図である。
【図5】車両の有無の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る車両検知装置の概要を示す模式図である。車両検知装置1は、子装置1a、親装置1bを含むものである。子装置1aは、道路の車線R11と車線R12のそれぞれに設定された2つの感知エリアRXにおいて車両や道路などの検知対象が発する赤外線を感知し、感知結果を親装置1bに無線で送信する装置であり、道路脇の設置ポール2の上部に取り付けられている。親装置1bは、子装置1aから送信された感知結果を受信し、この感知結果に基づいてそれぞれの感知エリアRXにおける車両の有無を判定し、この判定結果を集計して交通信号制御機3に無線で送信する装置であり、設置ポール2の側部に取り付けられている。なお、子装置1aと親装置1bとの通信手段、親装置1bと交通信号制御機3との通信手段は、無線に限らず、通信回線などの有線であっても良い。また、設置ポール2の代わりに、信号機柱、歩道橋等に取り付けられていても良い。
【0013】
交通信号制御機3は、交差点Iに設置され、親装置1bから送信された車両の有無の集計結果を受信し、この集計結果を交通管制センターに送信するとともに、交通管制センターに設置された中央装置(図示せず)から受信した信号制御指令に基づいて、信号灯器4の各信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。
【0014】
図2は、車両検知装置の子装置の構成を示すブロック図である。図において、子装置1aは、感知エリアRXの数に対応した赤外線感知センサ101及びインタフェース(I/F)部102、記憶部103、無線部104、RAM105、CPU106等を含む。図1の例では感知エリアRXは2つであったため、赤外線感知センサ101及びインタフェース部102は2つずつとなる。2つの赤外線感知センサ101のうちの1つは、2つの感知エリアRXのうちの一方(例えば、車線R11に設定された感知エリアRX)において検知対象が発する赤外線を感知するセンサであり、残りの1つは、2つの感知エリアRXのうちの他方(例えば、車線R12に設定された感知エリアRX)において検知対象が発する赤外線を感知するセンサである。赤外線感知センサ101は、所定の周期(例えば、20msec)毎に同期して赤外線を感知し、入力レベル値を測定して、それぞれインタフェース部102に出力する。記憶部103は、それぞれのインタフェース部102が取得した入力レベル値を感知結果として記録する。無線部104は、記憶部103に記録された感知結果を所定の周期(例えば、20msec)毎に親装置1bに無線で送信する。
【0015】
CPU106は、RAM105に記録されたコンピュータプログラムPG105を実行することにより、以下の処理を行う。すなわち、CPU106は、赤外線感知センサ101からインタフェース部102を介して得られた所定の周期毎の入力レベル値を感知結果として記憶部103に記録する。また、CPU106は、記憶部103に記録された感知結果を所定の周期毎に無線部104により親装置1bに無線で送信する。
【0016】
図3は、赤外線感知センサの構成を示すブロック図である。図において、赤外線感知センサ101は、レンズ1011、感知素子1012、アンプ1013、A/D変換部1014、RAM1015及びCPU1016を含む。レンズ1011は、ZnSから形成される球面状の赤外線透過レンズであり、感知素子1012の検知方向(図1の感知エリアRXに向かう方向)前方に配置されている。なお、レンズ1011は、ZnSの赤外線透過レンズに限らず、他の素材の赤外線透過レンズであっても良い。感知素子1012は、サーモパイル素子であり、対応付けられた感知エリアRXにおいて検知対象が発する赤外線を感知し、起電力を生ずる。なお、感知素子1012は、サーモパイル素子に限らず、焦電素子であっても良い。アンプ1013は、感知素子1012に生じた起電力を増幅し、A/D変換部1014に感知信号(アナログ信号)として出力する。A/D変換部1014は、入力された感知信号をデジタル信号に変換し、入力レベル値として出力する。CPU1016は、RAM1015に記録されたコンピュータプログラムPG1015を実行することにより、A/D変換部1014から出力された入力レベル値をインタフェース部102に出力する。
【0017】
図4は、車両検知装置の親装置の構成を示すブロック図である。図において、親装置1bは、無線部121、記憶部122、通信部123、RAM124及びCPU125を含む。無線部121は、子装置1aの無線部104から送信された子装置1aの2つの赤外線感知センサ101それぞれの感知結果(入力レベル値)を受信する。
【0018】
CPU125は、RAM124に記録されたコンピュータプログラムPG124を実行することにより、以下の処理を行う。すなわち、CPU125は、無線部121が受信した感知結果を記憶部122に記録する。また、CPU125は、記憶部122に記録された感知結果を用いて、後述する車両の有無の判定処理を行い、それぞれの感知エリアRXにおける車両の有無を判定するとともに、その判定結果を記憶部122に記録する。また、CPU125は、所定の周期(例えば、1秒)毎に記憶部122に記録された車両の有無の判定結果を集計し、この集計結果を通信部123により交通信号制御機3に出力する。
【0019】
記憶部122は、無線部121が受信した感知結果を記録する。また、記憶部122は、CPU125がコンピュータプログラムPG124を実行することにより得られた車両の有無の判定結果を記録する。
【0020】
通信部123は、通信回線(図示せず)に接続され、CPU125がコンピュータプログラムPG124を実行することにより得られた車両の有無の集計結果を通信回線を介して交通信号制御機3に出力する。
【0021】
次に、親装置1bの車両の有無の判定処理の手順について説明する。図5は、親装置の車両の有無の判定処理の手順を示すフローチャートである。車両の有無の判定処理は、所定の周期Δt(例えば、子装置1aの赤外線感知センサ101の感知周期と同じ20msec)毎に、それぞれの感知エリアRXについて行われる。まず、親装置1bは、対象とする感知エリアRXに対応付けられた赤外線感知センサ101から得られ、記憶部122に記録された入力レベル値b(n)を読み出す(ステップS01)。ここで、nは上記の周期Δt毎にカウンタ(図示せず)によってカウントされた数字である。
【0022】
次に、親装置1bは入力レベル値b(n)を用いて比較値I(n)を算出する(ステップS02)。この比較値I(n)の算出方法は、例えば、特許文献1に開示されている方法を採用すればよい。具体的には、入力レベル値b(n)と1周期前(20msec前)の背景レベルa(n−1)の差の絶対値S(n)(背景差分と呼ぶ)を求め、この背景差分S(n)の過去の一定時間における積算値(例えば、過去320msec分の積算値、すなわち、過去16回分の積算値)を比較値I(n)とする。ここで、背景レベルa(n)とは、車両以外の物体が発する赤外線を感知して得られる入力レベル値に基づく値であり、1周期前の背景レベルa(n−1)と取得した入力レベル値b(n)とを用いて、a(n)=a(n−1)+α×(b(n)−a(n−1))により算出する。αは平滑係数であり、1周期前の車両の有無の判定結果が車両有りのときは小さい所定値(例えば、0)をとり、1周期前の車両の有無の判定結果が車両無しのときは大きな所定値(例えば、0.025)をとる。
【0023】
次に、親装置1bは第1閾値c1(n)を算出する(ステップS03)。この第1閾値c1(n)の算出方法は、例えば、特許文献1に開示されている方法を採用すれば良い。具体的には、第1閾値c1(n)は、固定値である設定値ss(例えば、1000)と1周期前の車両の有無の判定結果に応じて変化する値である補正値h(n)とを用いて、c1(n)=γ×(ss+h(n))により算出する。γはヒステリシス係数であり、1周期前の車両の有無の判定結果が車両有りのときは小さな所定値(例えば、0.7)をとり、1周期前の車両の有無の判定結果が車両無しのときは大きな所定値(例えば、1)をとる。補正値h(n)は、1周期前の補正値h(n−1)と背景差分S(n)の過去の一定時間における積算値の平均値(例えば、過去320msec分、すなわち、過去16回分の積算値を16で割った値)J(n)とを用いて、h(n)=h(n−1)+(J(n)×β−h(n−1))×θにより算出する。βは補正係数であり、1周期前の車両の有無の判定結果が車両有りのときは小さい所定値(例えば、12)をとり、1周期前の車両の有無の判定結果が車両無しのときは大きい所定値(例えば、36)をとる。θは定数であり、例えば、0.01をとる。
【0024】
次に、親装置1bはステップS02で算出した比較値I(n)とステップS03で算出した第1閾値c1(n)とを比較する(ステップS04)。比較値I(n)が第1閾値c1(n)以上であれば、ステップS05以降の処理に進み、比較値I(n)が第1閾値c1(n)未満であれば、感知エリアRXにおいて車両なしと判定する(ステップS21)。親装置1bは、車両なしという検知結果を記憶部122に記録し(ステップS22)、そのときの入力レベル値b(n)を記憶部122に記録する(ステップS23)。
【0025】
親装置1bは、ステップS04において、比較値I(n)が第1閾値c1(n)以上であった場合には、入力レベル値b(n)の単位時間当たりの変化量dif(n)を算出する(ステップS05)。具体的には、変化量dif(n)は、入力レベル値b(n)と1周期前(20msec前)の入力レベル値b(n−1)と周期Δtとを用いて、dif(n)=ABS(b(n)−b(n−1))/Δtにより算出する。ここで、ABS()は、括弧内の値の絶対値である。
【0026】
次に、親装置1bは第2閾値c2(n)を設定する(ステップS06)。この第2閾値c2(n)には、固定値を設定しても良いし、一周期前の車両の有無の判定結果に応じて異なる値を設定しても良い。固定値としては、例えば、0.5度/secに相当する値をとることができ、入力レベル値b(n)の1(単位)が0.01度に相当する場合、第2閾値c2(n)は50(単位)とすることができる。
【0027】
次に、親装置1bはステップS05で算出した変化量dif(n)とステップS06で設定した第2閾値c2(n)とを比較する(ステップS07)。変化量dif(n)が第2閾値c2(n)以上であれば、ステップS08以降の処理に進み、変化量dif(n)が第2閾値c2(n)未満であれば、感知エリアRXにおいて車両なしと判定する(ステップS21)。
【0028】
単位時間当たりの変化量dif(n)が第2閾値c2(n)未満であれば、感知エリアRXにおいて車両なしと判定するのは次の理由による。すなわち、感知エリアRXが設定されている車線(例えば、車線R12)の隣接車線(例えば、車線R11、車線R22)を走行する車両から発せられる赤外線の入力レベル値の単位時間当たりの変化量は、当該感知エリアRXに存在する車両から発せられる赤外線の入力レベル値の単位時間当たりの変化量よりも小さい。そこで、第2閾値c2(n)を、感知エリアRXに存在する車両から発せられる赤外線の入力レベル値の単位時間当たりの変化量よりも小さく、かつ、隣接車線を走行する車両から発せられる赤外線の入力レベル値の単位時間当たりの変化量よりも大きくなるように適切に設定すれば、感知エリアRXが設定されている車線(例えば、車線R12)の隣接車線(例えば、車線R11、車線R22)を温度の高い車両が走行した場合であっても、当該感知エリアRXにおいて車両なしと正しく判定することができる。
【0029】
親装置1bは、ステップS07において、変化量dif(n)が第2閾値c2(n)以上であった場合には、感知エリアRXにおいて車両を感知していた直近の期間における比較値の最大値に基づいて第3閾値c3(n)を算出する(ステップS09)。例えば、直近の2秒〜1秒前に1台の車両が感知エリアRXを通過しており、この車両が通過している期間(周期Δtが20msecの場合は100周期前〜50周期前)において親装置1bが当該感知エリアRXにおいて車両ありと判定していた場合は、100周期前〜50周期前の期間における比較値I(100)〜I(50)のうちの最大値(例えば、I(70))に基づいて第3閾値c3(n)を算出する。後述するように、ステップS13では、複数周期にわたって感知エリアRXにおいて車両ありと判定している場合、その複数周期をひとかたまりの期間として、期間ごとに比較値の最大値を記憶部122に記録するので、ステップS07では、1周期前の車両の有無の判定結果が車両有りの場合は、最新の期間よりも1つ前の期間の比較値の最大値を用い、1周期前の車両の有無の判定結果が車両なしの場合は、最新の期間の比較値の最大値を用いる。感知エリアRXにおいて車両を感知していた直近の期間がT1周期前〜T2周期前であるとすると、第3閾値c3(n)は、記憶部122に記録されているMAX(I(n−T1),I(n−T1+1),・・・I(n−T2−1),I(n−T2))を用いて、c3(n)=η×MAX(I(n−T1),I(n−T1+1),・・・I(n−T2−1),I(n−T2))により算出する。ここで、ηは補正係数であり、例えば、0.1をとる。MAX()は、括弧内に列挙された値のうちの最大値である。
【0030】
次に、親装置1bはステップS02で算出した比較値I(n)とステップS08で算出した第3閾値c3(n)とを比較する(ステップS09)。比較値I(n)が第3閾値c3(n)以上であれば、感知エリアRXにおいて車両ありと判定し(ステップS10)、比較値I(n)が第3閾値c3(n)未満であれば、感知エリアRXにおいて車両なしと判定する(ステップS21)。
【0031】
比較値I(n)が第3閾値c3(n)未満であれば、感知エリアRXにおいて車両なしと判定するのは次の理由による。すなわち、時間帯によって車両の温度は異なっているため、比較値も時間帯によって大きさが異なっている。例えば、昼の車両の温度は朝の車両の温度よりも高いため、昼の比較値は朝の比較値よりも値が大きくなる。従って、昼に感知エリアRXが設定されている車線(例えば、車線R12)の隣接車線(例えば、車線R11、車線R22)を温度の高い車両が走行すると、この車両からの赤外線に基づく比較値も大きくなるため、比較値I(n)と第1閾値c1(n)の比較だけで車両の有無を判定すると、感知エリアRXを上記車両が走行してないにもかかわらず、誤って車両ありと判定するおそれがあった。そこで、所定期間、例えば、上記のように感知エリアRXにおいて車両を感知していた直近の期間における比較値の最大値を求めて、この最大値に係数ηを掛けて第3閾値c3(n)を求め、比較値I(n)がこの第3閾値c3(n)未満である場合には、車両なしと判定する。これにより、時間帯によって第3閾値c3(n)が可変となり、例えば、朝から昼にかけて第3閾値が徐々に上昇することで昼の第3閾値は朝の第3閾値よりも大きくなるので、昼に感知エリアRXが設定されている車線(例えば、車線R12)の隣接車線(例えば、車線R11、車線R22)を温度の高い車両が走行した場合であっても、当該感知エリアRXにおける車両の有無を正しく判定することができる。
【0032】
親装置1bは、ステップS10で車両ありと判定した後、車両ありという検知結果を記憶部122に記録し(ステップS11)、そのときの入力レベル値b(n)を記憶部122に記録する(ステップS12)。
【0033】
親装置1bは、上述のように、複数周期にわたって感知エリアRXにおいて車両ありと判定している期間ごとに比較値の最大値を記憶部122に記録する。すなわち、1周期前あるいはそれ以上前の周期も含めて連続してステップS13において車両ありと判定している場合には、その連続して車両ありと判定している期間における比較値Iの最大値を更新して、記憶部122に記録し、1周期前にステップS13において車両なしと判定している場合には、比較値Iの最大値として今回の周期の比較値I(n)を記憶部122に記録する(ステップS13)。
【0034】
以上のように、本発明によれば、感知エリアRXが設定されている車線の隣接車線を温度が高い車両が通過した場合であっても、入力レベル値の単位時間当たりの変化量dif(n)を考慮することにより、当該感知エリアRXにおける車両の有無を正しく判定することができる。
【0035】
また、本発明によれば、感知エリアRXが設定されている車線の隣接車線を温度が高い車両が通過した場合であっても、所定期間内における比較値の最大値に基づく第3閾値c3(n)を考慮することにより、当該感知エリアRXにおける車両の有無を正しく判定することができる。
【0036】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0037】
1 車両検知装置
1a 子装置
101 赤外線感知センサ
102 インタフェース部
103 記憶部
104 無線部
105 RAM
106 CPU
1011 レンズ
1012 感知素子
1013 アンプ
1014 A/D変換部
1015 RAM
1016 CPU
1b 親装置
121 無線部
122 記憶部
123 通信部
124 RAM
125 CPU
2 設置ポール
3 交通信号制御機
4 信号灯器
I 交差点
RX 感知エリア
R11、R12、R21、R22 車線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に設定された感知エリアにおける車両を検知する車両検知装置であって、
前記感知エリアに対応づけられ、該感知エリアにおいて検知対象が発する赤外線を感知するセンサと、
センサから得られた入力レベル値を用いて、前記感知エリアにおける車両の有無を判定する判定手段とを備え、
車両以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を背景レベルとし、
この背景レベルと前記入力レベル値との差に基づく値を比較値とし、
前記判定手段は、比較値が第1閾値以上であり、かつ、前記入力レベル値の単位時間当たりの変化量が第2閾値以上である場合に、車両が存在すると判定するように構成されている
ことを特徴とする車両検知装置。
【請求項2】
所定期間内における前記比較値の最大値に基づいて第3閾値を算出する閾値演算手段を備え、
前記判定手段は、さらに比較値が第3閾値以上である場合に、車両が存在すると判定するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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