説明

車両用インストルメントパネルに使用する半硬質ポリウレタンフォーム、およびその製造方法

【課題】植物に由来するポリオールを含み、得られるフォームの臭いも少なく、クローズ成形法で使用可能な良好な流動性を有する半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物、その組成物を用いて得られる半硬質ポリウレタンフォーム及びそのフォームを有する車両用インストルメントパネルを提供する。
【解決手段】ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、植物油由来のポリエステルポリオール、触媒及び水を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分を混合して得られる半硬質ウレタンフォーム製造用組成物は、植物に由来するポリオールを含み、得られるフォームの臭いも少なく、クローズ成形法で使用可能な良好な流動性を有する。この組成物を用いてクローズ成形法で半硬質ポリウレタンフォーム及びそのフォームを有する車両用インストルメントパネルを好適に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物油由来のポリエステルポリオールを含む半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物、それを用いて製造されるポリウレタンフォーム、そのポリウレタンフォームを有する自動車内装部品としてのインストルメントパネル、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
意匠面に使用される表皮材と形状保持用の基材との間に半硬質ポリウレタンフォームをパッド材として有する車両用インストルメントパネルが知られている。このような車両用インストルメントパネルは、表皮と基材の間に半硬質ポリウレタンフォームを注入し発泡成形して製造することができ、その表皮とパッドの触感を含めた質感の高さがこの技術採用の主因となっている。
【0003】
車両用インストルメントパネルは、意匠部品なので、表面に欠陥の無いことが要求される。更に、他の車両用内装部品と比較すると、その面積が大きく、表皮及び基材と、半硬質ポリウレタンフォームを一体成形するので、使用する成形型の構造は複雑になる。車両用インストルメントパネルに使用する半硬質ポリウレタンフォームの不良には、ボイド不良、セル荒れ、セル荒れがひどい場合の表皮表面の不良、成形型からのフォーム液の漏れによる不良等がある。不良は、成形型に起因して発生することが多く、成型型の構造は複雑なので、車両用インストルメントパネルを低い不良率で製造することは容易ではない。
【0004】
上述したように表皮材と基材との間に半硬質ポリウレタンフォームをパッド材として成形する車両用インストルメントパネルは、従来、オープン成形法を用いて製造されることが多かった。「オープン成形法」とは、開いた成形型にポリオール成分とポリイソシアネート化合物を含むポリウレタンフォーム製造用混合液を、プログラムされたロボットなどを使って、適量、適当なパターンで撒いた後、成形型を閉じてその混合液が反応して十分に発泡し樹脂化して、所定の性能を有する半硬質ポリウレタンフォームとなった後、成形型を開いて成型品を取り出す製造方法をいう。しかし、オープン成形法には、脱型時間(即ち、成形型にポリウレタンフォーム製造用混合液の注入を開始した時から成形型を開くまでの時間)が120秒〜180秒必要であるという問題がある。そこで、生産性向上のために、脱型時間の短縮が可能なクローズ成形法(以下「反応射出成型法」ともいう)を用いることが好ましい。
【0005】
「クローズ成形法」とは、当初から閉じた成形型にポリウレタンフォーム製造用混合液を一点から注入し、その混合液の発泡圧力によって、ポリウレタンフォーム製造用混合液で成形型内を満たし、その樹脂化反応によって所定の性能を有する半硬質ポリウレタンフォームとなった後、成形型を開き成型品を取り出す製造方法をいう。クローズ成形法では、一般的に脱型時間は60秒〜90秒であり、オープン成形法より短い。
しかし、クローズ成形法では、ポリウレタンフォーム製造用混合液は、成形型に一点から注入されるので、成形型内にポリウレタンフォーム製造用混合液を十分に充填するために、混合液はより良好な流動性を有することを要する。尚、オープン成形法では、混合液を成形型内の広範囲に撒くので、その必要はない。そこで、クローズ成形法では、ポリウレタンフォーム製造用混合液は、発泡剤として、水をより多く含む場合が多いが、その結果発泡圧力が高まり、成形型不良に起因するフォーム液の漏れによる成形不良がより多くなり不良率がより高くなる。
【0006】
従って、車両用インストルメントパネルにパッド材として使用される半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物(又は混合液)であって、クローズ成形法で使用可能な良好な流動性を有する製造用組成物が求められている。そのような組成物は、良好な流動性及び充填性を有するとともに、短時間で成形品が脱型できるようにキュア時間も短く、成形型に起因する不良(例えば、ボイド不良、セル荒れ、セル荒れがひどい場合の表皮表面の不良及び成形型からのフォーム液の漏れによる等)の少ない特質を有することが求められている。そして、そのような組成物は、従来の、ポリウレタンフォーム製造用組成物の問題を少なくとも緩和し、好ましくは解決することが求められている。
【0007】
尚、得られるパネルは、車両という閉じた空間で使用されるので、パネル自体の「におい」を減少させることも求められている。
【0008】
一方、近年、地球温暖化、循環型社会を構築するための検討が世界中で行われている。そして地球温暖化の一因とされる二酸化炭素の排出量の削減が求められている。その対策の一つとして、石油資源を原料とする石油由来樹脂の代替として、植物資源から得られる植物由来樹脂が検討されている。そのような植物由来樹脂は、空気中のCOを吸収しながら光合成により成長する植物から得られる原料から製造されるので、使用後に燃焼処理されCOが大気中に排出されたとしても、結果的に大気中のCOの量は増加しないと考えられ、いわゆるカーボンニュートラルに対応する材料と考えられる。
【0009】
しかし従来のポリウレタンフォームはポリイソシアネート化合物も、ポリオール成分も、そのほとんどは石油由来の原料から製造されるので、化石資源の枯渇抑制や排出されるCO低減等、環境に配慮した開発が求められている。各々の用途に使用されるポリウレタンフォームの使用量を減少させるとともに、ポリウレタンフォームの原料の一部を植物由来の原料に置き換えることができると、地球温暖化対策に貢献することができる。
【0010】
植物由来原料を使用してポリウレタン樹脂を製造するいくつかの検討が知られている。
例えば、ひまし油は工業的に使用される天然油脂であり、水酸基を有するので、ポリウレタン用ポリオールとして検討されている。
【0011】
例えば、特許文献1は、ひまし油を含むひまし油系ポリオールから製造されるポリウレタンエラストマー形成性組成物を開示する。更に、特許文献2は、ひまし油誘導体と、カルボキシル基を有する化合物とを、反応及び/又は混合して得られる水酸基価150〜500の活性水素含有化合物と、ポリイソシアネートから製造される、無溶剤二液型ウレタン樹脂組成物を主とする塗料を報告する。
【0012】
ひまし油は、骨格の中心にグリセリンを有し、基本的に約165mgKOH/gの水酸基価、約340の水酸基当量及び約2.7の官能価を有するポリエステルポリオールに相当するので、架橋剤又は比較的硬質性のウレタン樹脂用ポリオールに相当する性質を有する。従って、ひまし油は、架橋度が高いので、軟質エラストマー、軟質ウレタンフォーム、又は半硬質ウレタンフォーム製造用のポリオール成分として使用する場合、成形品の柔軟性を損なわず、破断時伸びを低下させないために、使用量が制限される。
【0013】
例えば、特許文献3は、ひまし油を軟質ポリウレタンフォームに使用する、軟質ポリウレタンフォームの製造方法を開示する。特許文献3は、ヒマシ油類及びまたはその誘導体として精製ヒマシ油、半精製ヒマシ油、未精製ヒマシ油、又は水素を付加した水添ヒマシ油等のヒマシ油誘導体を例示し、それらを添加剤としてポリエーテルポリオールに添加することを開示する。しかし、特許文献3の実施例では、その添加量は最大でポリエーテルポリオール90部に対して10部である。
【0014】
従来から、軟質エラストマー及び軟質ウレタンフォーム用途には、石油由来ポリオールの場合、約1000以上の水酸基当量を有するポリオールが使用される。植物由来のポリオールを使用する場合も同様と考えられるので、ひまし油単体に比べればその約3倍以上の水酸基当量を有する植物由来ポリオールが求められる。尚、半硬質ポリウレタンフォームについても同様と考えられる。
【0015】
特許文献4は、ひまし油又は水添ひまし油に、ひまし油脂肪酸又は12−ヒドロキシステアリン酸、又はそれら脂肪酸の縮合脂肪酸を結合させて得られる新規なひまし油変性ポリオール及びそれを配合したウレタン系硬化性組成物を報告する。特許文献4は、あわせて51.0mgKOH/gの水酸基価を有する変性ひまし油を報告する。
【0016】
特許文献5は、植物由来成分から誘導されるリシノレイン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシカルボン酸の縮合物と多価アルコールから50〜160mgKOH/gの水酸基価を有するポリエステルポリオールを製造し、場合により、それにエチレンオキシドを付加したポリエステルポリエーテルポリオールを製造し、それらを従来の石油由来のポリオールと混合後、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含むトルエンジイソシアネートと混合して反応させて得られる軟質ウレタンフォームを報告する。
【0017】
特許文献6及び7は、特許文献5と同様に、植物油から得られたヒドロキシカルボン酸の3〜17又は30モルの縮合物と多価アルコールから製造されるポリエステルポリオールに、エチレンオキサイド及びプロピレンレンオキサイドのみならずラクトン等の石油由来の化合物を付加したポリオールを使用して得られるポリウレタンフォームを報告する。
【0018】
更に、特許文献8は、大豆油、ベニバナ油、アマニ油、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、カノーラ油、ゴマ油、綿実油、パーム油、菜種油、きり油、魚油、ピーナッツ油、又はそれらの組み合わせが含まれる植物油を、エポキシ化又はヒドロフォルミル化を経由するヒドロキシル化変性を含む種々の方法で変性し、変性植物油をベースポリオールとして使用して得られる軟質ウレタンフォームを開示する。
【0019】
従って、植物に由来するポリオールを使用して製造される軟質ポリウレタンフォーム及びそのような軟質ポリウレタンフォームの製造方法は開示されているが、植物に由来するポリオールを使用して製造される半硬質ポリウレタンフォーム及びそのような半硬質ポリウレタンフォームの製造方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開昭62−135512号公報
【特許文献2】特開平07−165866号公報
【特許文献3】特開平5−59144号公報
【特許文献4】特開平11−050086号公報
【特許文献5】特開平5−59144号公報
【特許文献6】再公表WO2007/020904号公報
【特許文献7】再公表WO2007/020905号公報
【特許文献8】特表2007−507594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
以上から、本発明は、車両用インストルメントパネルにパッド材として使用される半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物であって、植物に由来するポリオールを含み、クローズ成形法で使用可能な良好な流動性を有する製造用組成物を提供することを目的とする。更に、そのような製造用組成物は、良好な流動性を有するとともに、短時間で効率的に成形品が脱型できるようにキュア時間が短く、成形型に起因する不良(例えば、ボイド不良、セル荒れ、セル荒れがひどい場合の表皮表面の不良及び成形型からのフォーム液の漏れによる等)が少なく、得られるフォームのにおいも少ない特質を有することを目的とする。そして、そのような組成物は、従来の、ポリウレタンフォーム製造用組成物の問題を少なくとも緩和し、好ましくは解決することを目的とする。
【0022】
更に、本発明は、そのようなポリウレタンフォーム製造用組成物を用いて得られる半硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、そのような半硬質ポリウレタンフォームを有する車両用インストルメントパネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
その結果、本発明は、従来の、半硬質ポリウレタンフォーム、その半硬質ポリウレタンフォームを有する車両用インストルメントパネル及びそれらの製造方法の問題を少なくとも緩和し、好ましくは解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、植物由来ポリオールを有効に活用して環境負荷低減に寄与することができ、得られるフォームの臭いも少ない半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物、その組成物から製造される半硬質ポリウレタンフォーム、その半硬質ポリウレタンフォームを有する車両用インストルメントパネル、及びそれらの製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0024】
本発明は、一の要旨において、ポリオール成分(A)、触媒及び発泡剤を含むポリオール混合物(B)と、ポリイソシアネート成分(C)を混合して得られる新規な半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を提供し、その半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物(又は混合物)において、
ポリオール成分(A)は、
(A1)ポリエーテルポリオール、
(A2)ポリエーテルポリオール中で、ビニル系モノマー(m)を重合させて得られるポリマーポリオール及び
(A3)植物油由来のポリエステルポリオールを含み、
(A1)ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイドを付加重合して得られ、2.0〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有するポリエーテルポリオールであり、
(A2)ポリマーポリオールは、アルキレンオキサイドを付加重合して得られ、2.0〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有するポリエーテルポリオール中で、ビニル系モノマー(m)を重合させて得られる10〜45重量%のビニル系ポリマー含有量を有するポリマーポリオールであり、
(A3)植物油由来のポリエステルポリオールは、植物油から得られる組成物を用いて製造され、1.5〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有する植物油由来ポリエステルポリオールであり、
発泡剤は水を含み、ポリオール混合物(B)の水の含有量は、1.4重量%〜1.8重量%である。
【0025】
本発明の一の態様において、(A3)植物油由来のポリエステルポリオールは、ポリオール混合物(B)に、10〜50重量%含まれる半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を提供する。
【0026】
ポリイソシアネート成分(C)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「モノメリックMDI」ともいう)及び/又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(「ポリメリックMDI」ともいう)を含み、モノメリックMDI及びポリメリックMDIは、各々その変性体を含んでよい、半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を提供する。
【0027】
本発明は他の要旨において、上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を用いて製造される、車両用インストルメントパネルに使用される新規な半硬質ポリウレタンフォームを提供し、その半硬質ポリウレタンフォームは、反応射出成型法を用いて、成形型内に上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡して得られ、170〜240kg/mの密度を有する。
【0028】
本発明は他の好ましい要旨において、上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を用いて、車両用インストルメントパネルに使用される新規な半硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供し、その製造方法は、反応射出成型法を用いて、成形型内に上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡する工程を有する。
【0029】
本発明は更なる要旨において、上述の半硬質ポリウレタンフォームを有する車両用インストルメントパネルを提供し、そのパネルは、意匠面表皮、上述の半硬質ウレタンフォーム及びインパネ芯材の積層体を有する。
【0030】
本発明は、更なる好ましい要旨において、上述の車両用インストルメントパネルの製造方法に関し、その製造方法は、
(1)発泡成形型のキャビティ型に意匠面表皮をセットする工程、
(2)発泡成形型のコア型にインパネ芯材を装着する工程、
(3)発泡成形型のコア型とキャビティ型を閉じた後、意匠面表皮とインパネ芯材の間に上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を、反応射出成型法を用いて、注入し発泡する工程及び
(4)意匠面表皮、半硬質ポリウレタンフォーム及び芯材が積層されて一体化した成形品(又は積層体)を取り出す工程
を有する車両用インストルメントパネルの製造方法であって、
脱型時間(具体的には、(3)工程の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物の注入開始から、(4)工程で成型品を取り出すために型を開き始めるまでの時間)が50〜65秒である。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物は、ポリオール成分(A)、触媒及び発泡剤を含むポリオール混合物(B)と、ポリイソシアネート成分(C)を混合して得られ、
ポリオール成分(A)は、
(A1)ポリエーテルポリオール、
(A2)ポリエーテルポリオール中で、ビニル系モノマー(m)を重合させて得られるポリマーポリオール及び
(A3)植物油由来のポリエステルポリオールを含み、
(A1)ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイドを付加重合して得られ、2.0〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有するポリエーテルポリオールであり、
(A2)ポリマーポリオールは、アルキレンオキサイドを付加重合して得られ、2.0〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有するポリエーテルポリオール中で、ビニル系モノマー(m)を重合させて得られる10〜45重量%のビニル系ポリマー含有量を有するポリマーポリオールであり、
(A3)植物油由来のポリエステルポリオールは、植物油から得られる原料を用いて製造され、1.5〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有する植物油由来ポリエステルポリオールであり、
発泡剤は水を含み、ポリオール混合物(B)の水の含有量は、1.4重量%〜1.8重量%であるので、
植物に由来するポリオールを含み環境負荷低減に寄与することができ、クローズ成形法で使用可能な良好な流動性及び充填性を有するとともに、短時間で成形品が脱型できるようにキュア時間が短く、成形型に起因する不良(例えば、ボイド不良、セル荒れ、セル荒れがひどい場合の表皮表面の不良及び成形型からのフォーム液の漏れによる等)が少なく、得られるフォームのにおいも少ない。
【0032】
本発明に係る半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物は、(A3)植物油由来のポリエステルポリオールが、ポリオール混合物(B)に、10〜50重量%含まれる場合、より環境負荷低減により寄与することができる。更に、キュア性を低下することなく、フォーム液がより漏れにくく、より充填性に優れ、より成形不良の少ない半硬質ウレタンフォーム製造用組成物を提供することができる。また、得られる車両用インストルメントパネルから発生するにおいもより低減される。
【0033】
本発明に係る半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物は、ポリイソシアネート成分(C)が、モノメリックMDI及び/又はポリメリックMDIを含み、モノメリックMDI及びポリメリックMDIは、各々その変性体を含んでよい場合、反応する際の流動性及び充填性により優れ、成形がより容易であり、得られるフォームの伸びにより優れる。
【0034】
本発明に係る、新規な半硬質ポリウレタンフォームは、反応射出成型法を用いて、成形型内に上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡して得られ、170〜240kg/mの密度を有するので、成形不良がより少なく、発生するにおいもより少なく、車両用インストルメントパネルに好適に使用することができる。
【0035】
本発明に係る半硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、反応射出成型法を用いて、成形型内に上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡する工程を有するので、170〜240kg/mの密度を有し、成形不良がより少なく、発生するにおいもより少ない車両用インストルメントパネルを製造するために好適に使用することができる、半硬質ポリウレタンフォームを、より効率的に製造することができる。
【0036】
本発明に係る車両用インストルメントパネルは、意匠面表皮、上述の半硬質ウレタンフォーム及びインパネ芯材の積層体を有するので、成形不良がより少なく、発生するにおいもより少ない。
【0037】
本発明に係る車両用インストルメントパネルの製造方法は、
(1)発泡成形型のキャビティ型に意匠面表皮をセットする工程、
(2)発泡成形型のコア型にインパネ芯材を装着する工程、
(3)発泡成形型のコア型とキャビティ型を閉じた後、意匠面表皮とインパネ芯材の間に上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を、反応射出成型法を用いて、注入し発泡する工程及び
(4)意匠面表皮、半硬質ポリウレタンフォーム及び芯材が積層されて一体化した成形品(又は積層体)を取り出す工程
を有し、
脱型時間が50〜65秒であるので、
成形不良がより少なく、発生するにおいもより少なく、より効率的に車両用インストルメントパネルを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る「車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物」は、ポリオール成分(A)、触媒、整泡剤及び発泡剤を含むポリオール混合物(B)と、ポリイソシアネート成分(C)を混合して得ることができる。
【0039】
本発明に係る(A)ポリオール成分は、(A1)ポリエーテルポリオール、(A2)ポリマーポリオール及び(A3)植物由来ポリエステルポリオールを含んで成る。本発明が目的とする半硬質ポリウレタンフォームを得られる限り、他のポリオールを含んでもよいが、他のポリオールを含まなくともよい。
【0040】
本発明に係る(A1)ポリエーテルポリオールとは、アルキレンオキサイド、好ましくはプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドから選択される少なくとも一種を付加重合(又は開環重合)して得られるポリエーテルポリオールであって、2.0〜4.0、より好ましくは2.0〜3.0の平均官能基数を有し、かつ好ましくは20〜50mgKOH/g、より好ましくは25〜40mgKOH/gの水酸基価を有するポリエーテルポリオールをいう。なお、本発明において、(A1)ポリエーテルポリオールの官能基数とは、アルキレンオキサイドを開環重合する際の出発物質の官能基数と同一とする。
【0041】
(A1)ポリエーテルポリオールの製造方法は、(A1)ポリエーテルポリオールを得ることができる限り、特に限定されるものではなく、当業者に既知の方法を適宜使用することができる。そのような製造方法に既知の出発物質、開環重合用触媒等を適宜使用することができる。
【0042】
(A1)ポリエーテルポリオールを製造する際に、アルキレンオキサイドを開環重合するために使用する出発物質として、(A1)ポリエーテルポリオールと同様に、2.0〜4.0、好ましくは2.0〜3.0の平均官能基数を有し、水酸基含有化合物、アミノ基と水酸基を含有する化合物、アミノ基含有化合物、及びこれらの混合物を例示することができる。
そのようなアミノ基含有化合物として、エチレンジアミン及びジアミノトルエンを例示することができ、アミノ基と水酸基を含有する化合物として、トリエタノールアミン及びジエタノールアミンを例示することができる。
更に、水酸基含有化合物として、例えば、プロピレングリコール及びジエチレングリコール等の鎖状ジオール;シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等の環状ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン及びヘキサントリオール等の鎖状トリオール等を例示することができる。
【0043】
(A1)ポリエーテルポリオールの平均官能基数が、2.0未満の場合、得られるポリウレタンフォームの引裂き強さが低下し、ポリウレタンフォーム製造用組成物の硬化時間が長くなり、ポリウレタンフォームの硬度も低下する。従って車両用インストルメントパネルに求められる最終の硬度が得られにくい。
平均官能基数が4.0を超える場合、又は水酸基価が50mgKOH/gを超える場合、ポリウレタン製造用組成物の成形時の流動性が低下する。また得られるポリウレタンフォームの伸びが低下する。
水酸基価が20mgKOH/g未満の場合、得られるポリウレタンフォームの硬さが低下する。
【0044】
また、(A1)ポリエーテルポリオールの末端が、オキシエチレン単位(以下、オキシエチレン単位をEO単位と記載する。)である割合は、8〜30重量%であることが好ましく、10〜20重量%であることがより好ましい。
【0045】
本発明に係る(A2)ポリマーポリオールとは、ポリエーテルポリオール中で、ビニル系モノマー(m)を重合(又はラジカル重合)させて得られるポリマーポリオールをいう。かかるポリエーテルポリオールは、上述の(A1)ポリエーテルポリオールと同様のポリエーテルポリオールであってよい。
【0046】
このポリエーテルポリオールは、(A1)ポリエーテルポリオールと同様の方法で製造することができるが、より具体的なポリエーテルポリオールは、(A1)ポリエーテルポリオールと、同一のポリエーテルポリオールであっても異なるポリエーテルポリオールであってもよい。出発物質、ポリエーテルポリオールの平均官能基数及び水酸基価等は、(A1)ポリエーテルポリオールの場合と同様であってよい。
【0047】
(A2)ポリマーポリオールとは、このようなポリエーテルポリオール中で、例えばアクリロニトリル及びスチレン等の不飽和結合を有するビニル系モノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を用いて、分散重合させて得られた一部グラフト体を含むビニルポリマー(以下、単に「ポリマー微粒子」ともいう)を有する分散体をいう。
【0048】
なお、「ビニル系モノマー」とは、分子中に不飽和結合を有しラジカル重合可能な化合物をいい、例えばアクリロニトリル及びメタアクリロニトリル等のシアノ基と不飽和結合を有するモノマー;スチレン、α−メチルスチレン及びヒドロキシスチレン等のスチレン及びスチレン誘導体;クロルスチレン及び塩化ビニリデン等のハロゲンと不飽和結合を有するモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びアルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを例示することができる。
【0049】
(A2)ポリマーポリオール中のビニル系ポリマーの含有量は、10〜45重量%であることが好ましい。尚、ビニル系ポリマーの含有率は、実質的に、ビニルモノマーを使用した割合と対応する。
ビニル系ポリマー含有量が10〜45重量%の場合、得られる半硬質ポリウレタンフォームの硬度がより適度の値となり好ましく、更に、(A2)ポリマーポリオールの粘度がより適度となり、得られる(B)ポリオール混合物の粘度もより適度となるので、得られる半硬質ポリウレタンフォームの成形不良がより生じにくく好ましい。
【0050】
ビニル系モノマーを重合させる際、例えば、分散安定剤及び連鎖移動剤等を使用することができる。重合方法は、既知の重合方法を使用することができ、目的とする(A2)ポリマーポリオールを得ることができる方法であれば、特に制限されることはない。そのような重合方法は、例えば、米国特許第3383351号明細書及び特公昭39−25737号公報等に例示されている。
【0051】
本発明に係る(A3)植物油由来ポリエステルポリオールとは、植物から得られる原料を用いて製造され、分子鎖中に複数のエステル結合と水酸基を含むポリエステルポリオールであって、1.5〜4.0の平均官能基数と20〜50mgKOH/gの水酸基価を有し、本発明が目的とする半硬質ポリウレタンフォームを得られる限り特に制限されるものではない。
【0052】
「植物から得られる原料」とは、植物油自体、植物油の重合体、植物油から得られる植物油脂肪酸及びそれらの重合物、植物油の分解から得られる多価アルコールを含み、更に、それらの化合物の部分的な酸化、還元、加水分解、エステル交換化合物及びそれらの重合物、また、それらの化合物のエポキシ化やヒドロフォルミル化を経由したヒドロキシル化変性化合物及びそれらの重合物を含む。また植物から得られる原料の変性又はその重合体に加えて、ポリエステルポリオール中の含有量が15%、より望ましくは10%を超えない範囲で、植物由来ヒドロキシル化合物を石油系多価アルコールでエステル化したり、そのヒドロキシル基に対して、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加して得られるポリオールを含む。
【0053】
そのような植物油として、一般的には、例えば、ひまし油及びその誘導体、大豆油及び大豆油誘導体が例示され、更に、例えばベニバナ油、アマニ油、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、カノーラ油、ゴマ油、綿実油、パーム油、菜種油、きり油、ピーナッツ油及びそれらの誘導体も例示されるが、本発明が目的とする半硬質ポリウレタンフォームを得ることができる限り、植物油は限定されるものではない。
【0054】
このような植物油由来ポリオールは単独で又は組み合わせて用いてよい。ひまし油及びその誘導体として、例えば、ひまし油、水添ひまし油及び/又はひまし油脂肪酸縮合物から得られるポリエステルポリオール、水添ひまし油脂肪酸縮合物から得られるポリエステルポリオール、及びそれらの混合物等を例示できる。大豆油誘導体として、例えば、ヒドロキシル化大豆油及び/又はヒドロキシル化大豆油脂肪酸縮合物から得られるポリエステルポリオール等を例示できる。
【0055】
(A3)植物油由来ポリエステルポリオールの平均官能基数及び水酸基価等の性質は、(A1)及び(A2)等の他のポリエステルポリオールと同様であり、例えば、1.5〜4.0の平均官能基数を有し、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有する。
(A3)植物由来ポリエステルポリオールの平均官能基数及び水酸基価がこの範囲内の場合、好ましい理由は、(A1)ポリエステルポリオールに関して行った説明と同様である。本発明者等は(A3)植物由来ポリエステルポリオールを用いると、後述する実施例に示すように、成形された半硬質ウレタンフォームの臭いの強さのみならず、臭い自体の不快度も低下することを見出した。
【0056】
本発明に係る(A)ポリオール混合物は、(A1)ポリエーテルポリオールを、10〜60重量%含むことが好ましく、25〜50重量%含むことがより好ましい。
本発明に係る(A)ポリオール混合物は、(A2)ポリマーポリオールを、5〜60重量%含むことが好ましく、10〜50重量%含むことがより好ましい。
本発明に係る(A)ポリオール混合物は、(A3)植物由来ポリエステルポリオールを、10〜50重量%含むことが好ましく、15〜40重量%含むことがより好ましい。
【0057】
本発明に係る(A)ポリオール混合物は、(A1)ポリエーテルポリオールを、10〜60重量%含むことが好ましく、(A2)ポリマーポリオールを、5〜60重量%含むことが好ましく、(A3)植物由来ポリエステルポリオールを、10〜50重量%含むことが好ましい。
本発明に係る(A)ポリオール混合物は、(A1)ポリエーテルポリオールを、25〜50重量%含むことがより好ましく、(A2)ポリマーポリオールを、10〜50重量%含むことがより好ましく、(A3)植物由来ポリエステルポリオールを、15〜40重量%含むことがより好ましい。
【0058】
ポリオール混合物(B)は、上述のポリオール成分(A)に加えて、更に触媒及び発泡剤を含む。
ここで「触媒」とは、一般的にポリウレタンフォームの製造に使用され、ウレタン化反応を促進する触媒をいい、本発明が目的とする車両用インストルメンパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォームを得られる限り、特に限定されるものではない。
そのような触媒として、アミン触媒、金属触媒及びそれらの組み合わせを例示することができる。
「アミン触媒」として、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7、ジメチルアミノエタノール、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N'−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N'−ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール等の3級アミン及びそのカルボン酸塩を例示できる。
【0059】
また「金属触媒」として、例えば、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、スタナスオクトエート及びオクタン酸錫等のカルボン酸金属塩、及び例えば、ジブチル錫ジアセテート及びジブチルチンジラウレート等の有機金属化合物を例示できる。
そのような触媒は、(A)ポリオール成分100重量部当たり、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.1〜2.0重量部使用することができる。
【0060】
本発明に係る「発泡剤」は、水を含む。発泡剤は、水単独又は他の発泡剤(例えば、フロン、炭化水素 等のポリウレタンフォームを製造するために通常使用され得る発泡剤)と組み合わせて使用することができるが、実質的に水単独であることが好ましい。
ここで「水」とは、蒸留水、イオン交換水等のいわゆる水をいい、本発明が目的とする車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォームを得られる限り、特に限定されるものではない。
【0061】
ポリオール混合物(B)は、その100重量部当たり、水を、1.4重量%〜1.8重量%含む。ポリオール混合物(B)の水分含有率が、1.4重量%未満の場合、ポリウレタンフォーム製造用組成物は、流動性が不十分となり、170〜190Kg/mの密度を有する半硬質ポリウレタンフォーム成形品を得ることができない。また、ポリオール混合物(B)の水分含有率が1.8重量%を超えると、ポリウレタンフォーム製造用組成物のフリー発泡密度が低くなり、流動性が向上するが、オーバーパックがかかりすぎる為、成形型の上下合わせ目からポリウレタンフォーム製造用組成物が漏れやすくなり、これに起因するセル荒れが生じる。また、発泡圧が高いと表皮とフォームの界面にガスが溜まりやすくなり、表皮表面からも見える扁平なボイドがポリウレタンフォームに発生し易くなる。
【0062】
尚、従来は、通常2.0%以上の水分含有率を有するポリオール混合物が使用されて、フリー発泡密度を低くして、オーバーパックをかける方法でクローズ型への良好なポリウレタンフォーム製造用組成物の充填を確保してきたが、成形型の上下合わせ目からポリウレタンフォーム製造用組成物が漏れやすく、これに起因するセル荒れがあった。又、ポリウレタンフォーム製造用組成物の発泡圧が高くなると、表皮とポリウレタンフォームの界面にガスが溜まりやすく、表皮表面からも見える扁平なボイドがポリウレタンフォームに発生しやすかった。
【0063】
ポリオール混合物(B)は、更に、架橋剤を含むことができる。「架橋剤」とは、一般的にポリウレタンフォームの製造に使用される架橋剤であり、本発明が目的とする車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォームを得られる限り、特に限定されるものではない。
【0064】
架橋剤として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の分子量が62〜300の多価アルコール;例えば、エチレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、t−ブチルトルエンジアミン、ジエチルジアミノベンゼン、トリエチルジアミノベンゼン、テトラエチルジアミノジフェニルメタン及びジエチレントリアミン等の多価アミン;例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、及びこれらにアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール等を例示することができる。架橋剤は、2〜4価で有ることが好ましく、2価であることが特に好ましい。架橋剤は、(A)ポリオール成分100重量部当たり、1〜10重量部であることが好ましい。
【0065】
本発明に係るポリオール混合物(B)は、更に、種々の添加剤及び/又は助剤を含むことができる。
「添加剤」及び「助剤」とは、一般的にポリウレタンフォームの製造に使用される添加剤及び助剤をいい、本発明が目的とする車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォームを得られる限り、特に限定されるものではない。
そのような添加剤及び助剤として、例えば、製泡剤、老化防止剤、抗酸化剤、着色剤、難燃剤、接着剤等を例示することができる。
【0066】
「整泡剤」として、例えば、ジメチルシロキサン系整泡剤、ジメチルシロキサンとポリエーテルのコポリマー等を例示することができる。
「老化防止剤」として、例えば、トリアゾール系老化防止剤及びベンゾフェノン系老化防止剤等を例示することができる。
「抗酸化剤」として、例えば、ヒンダードフェノール系抗酸化剤及びヒンダードアミン系抗酸化剤等を例示することができる。
「着色剤(染料又は顔料)」として、例えば、カーボンブラック等を例示することができる。
「難燃剤」として、例えば、リン酸エステル及びハロゲン化リン酸エステル等を例示することができる。
「接着剤」として、例えば、ポリカプロラクトン系接着剤等を例示することができる。
【0067】
ポリオール混合物(B)は、これらの添加剤及び/又は助剤を、ポリオール混合物(B)100部当たり、0〜10重量部含んでよく、好ましくは0〜5重量部含んでよい。
【0068】
ポリイソシアネート成分(C)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「モノメリックMDI」ともいう)及び/又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(「ポリメリックMDI」ともいう)を含むことが好ましく、モノメリックMDI及び/又はポリメリックMDIであってよい。モノメリックMDI及びポリメリックMDIは、各々その変性体を含んでよい。ここで、本明細書において、ポリメリックMDIとは、ジフェニルメタンジイソシアネートである2核体成分とそれ以上の多核体成分とからなる混合物をいう。
ここで、「ポリメリックMDI」は、モノメリックMDIを30〜60重量%含むことが好ましく、40〜50重量%含むことがより好ましい。モノメリックMDI含有率が30〜60重量%の場合、ポリイソシアネート化合物(C)の粘度が適度に低く、取扱いが容易であり、ポリウレタンフォーム製造用組成物の流動性も良好であり、成形が容易にでき、得られるポリウレタンフォームの伸びも高く好ましい。
【0069】
更に、ポリイソシアネート化合物(C)は、モノメリックMDIの変性体を適宜含むことができる。そのようなモノメリックMDIの変性体として、モノメリックMDIの部分化反応、例えば、尿素化、ビューレット化、アロファネート化、カルボジイミド化、イソシアヌレート化、及び/又はウレタン化等で得ることができる変性体を例示することができる。
ポリメリックMDIのNCO基含有率は、31.5%を基準として、28〜32%であることが好ましく、30〜32%であることがより好ましい。
【0070】
本発明において、イソシアネートインデックス[(ポリイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基の当量とポリオール混合物中の活性水素の当量との比)×100]は、70〜130であることが好ましく、90〜110であることが特に好ましい。
【0071】
本発明に係る車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォームは、反応射出成型法を用いて、上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡して得られ、170〜240kg/mの密度を有する。
更に、本発明に係るそのような半硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、反応射出成型法を用いて、成形型内に上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡する工程を有する。
【0072】
尚、半硬質ポリウレタンフォームの「半硬質」とは、硬さが、軟質ウレタンフォームと硬質ウレタンフォームの中間であり、なおかつオープンセル構造をもっていて、荷重がかかっている際は変形しているが荷重が無くなれば元の状態に復帰する性質を有することを意味する。
【0073】
また、「反応射出成形法」とは、ポリウレタンフォームを製造する際に通常用いられている反応射出成形法であって、本発明が目的とする半硬質ポリウレタンフォーム及び車両用インストルメントパネルを得ることができる限り特に制限されるものではない。通常、反射成形法では、形成型を閉じた後、成形型の一箇所から、半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を成形型内に注入する。
更に、半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を「注入し発泡する方法」とは、ポリウレタンフォームを製造する際に通常用いられている注入し発泡する方法であって、本発明が目的とする半硬質ポリウレタンフォーム及び車両用インストルメントパネルを得ることができる限り特に制限されるものではない。「成形型」についても同様である。
【0074】
本発明に係る車両用インストルメントパネルは、意匠面表皮、上述の半硬質ウレタンフォーム及びインパネ芯材が積層された積層体を有する。
そのような車両用インストルメントパネルは、
(1)意匠面表皮を発泡成形型のキャビティ型にセットする工程、
(2)発泡成形型のコア型にインパネ芯材を装着する工程、
(3)発泡成形型のコア型とキャビティ型を閉じた後、反応射出成型法によって、意匠面表皮とインパネ芯材の間に、上述の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡する工程及び
(4)意匠面表皮、上述の半硬質ウレタンフォーム及び芯材が一体化した成形品を取り出す工程
を有し、
車両用インストルメントパネル成型品の脱型時間は、50〜65秒であることが好ましい。
【0075】
本発明に係る半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を得るためのポリオール混合物(B)とポリイソシアネート化合物(C)の混合は、通常、ポリウレタンフォームを製造する際に使用される混合方法であって、本発明が目的とする半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物、その組成物を使用して半硬質ポリウレタンフォーム及び車両用インストルメントパネルを得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0076】
ポリオール混合物(B)とポリイソシアネート化合物(C)を混合する際の組成物の液温は、37〜43℃が好ましい。液温が37℃〜43℃である場合、液の粘度が適度となり、流動性も適度となり、成形型への充填もより良好となる。また、成形性もより良好となり、ボイド等の発生を抑制することができる。本発明に係る車両用インストルメントパネルの製造方法の成形型の温度も同様である。
【0077】
半硬質ポリウレタンフォームを成形する際の成形型内の発泡圧は、0.15MPa〜0.20MPaであることが好ましい。成形型内の発泡圧が、0.15〜0.20MPaの場合、発泡圧が適当であり、上下の型の合わせ目から製造用組成物が漏れ難く、漏れに起因するセル荒れが起こり難く好ましい。又、表皮表面からも見える扁平なボイドを発生し難く好ましい。更に、成形型の端末まで製造用組成物が充填し易く、未充填による成形不良が起き難く、170〜240Kg/mの密度を有する成形品をより得られ易く好ましい。
【0078】
成形されたポリウレタンフォームは、170〜240kg/mの密度を有することが好ましい。密度が170kg/m未満であると発泡圧は適切値より低くなり、セル荒れやボイドが発生しやすくなり得る。また密度が240kg/mを超える場合は上下の型の合わせ目から製造用組成物が漏れやすく、漏れに起因するセル荒れが起こりやすくなり得る。密度が170〜240kg/mの場合、成形型の上下合わせ目から製造用組成物が漏れ難く、セル荒れが起こり難く好ましい。又、発泡圧も適度であり、表皮表面から見える扁平なボイドが発生し難くなり好ましい。更に、得られるフォームの強度及び硬度が適度で好ましい。尚、ポリウレタンフォームの密度とは、空洞の部分も含む、いわゆるかさ密度をいう。
【0079】
本発明に係る車両用インストルメントパネルの製造方法では、脱型時間(半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物の注入開始から、車両用インストルメントパネル成形品の型開き開始までの時間)は、好ましくは50〜65秒、より好ましくは55〜60秒である。従って、オープン成形法を用いるより、短時間で成形することができ、生産効率を向上することができる。
【0080】
尚、「意匠面表皮」、「インパネ芯材」「キャビティ型」及び「コア型」等の反応射出成型法に使用されるものは、通常、車両用インストルメントパネルを製造する際に通常用いられているものであって、本発明が目的とする車両用インストルメントパネルを得ることができる限り特に制限されるものではない。
【0081】
本発明に係る車両用インストルメントパネルは、その形状、大きさ等を適宜変更して、種々の車両、例えば、軽自動車、小型車、中型車、大型車、バス、トラック、トレーラー等に使用することができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は単に例として示すものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例において、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0083】
使用したポリオール及び架橋剤の分子量、出発物質、プロピレンオキサイド(PO)とエチレンオキサイド(EO)の含有量(重量比)、水酸基価(mgKOH/g)、及びその他のポリオール、触媒、ポリイソシアネート化合物を表1に示す。
尚、植物由来ポリオールとして、住化バイエルウレタン社製のTrialポリオール09FE44を使用した。
【0084】
表1に示した原料を、表2に示した処方および条件で、高圧成形機(キャノン社製Aシステム60型(商品名))を使用して、吐出量180〜350g/秒、混合圧力15MPa、及び注入時間1.2〜2.5秒の条件でクローズ成形を行って、実施例1〜3及び比較例1〜4の成型品を得た。
高圧成形機で発泡した際の反応性(秒)はクリームタイム(混合直後から泡化するまでの時間)、ゲルタイム(混合直後からゲル化するまでの時間)、ライズタイム(混合直後から発泡するフォームが最高高さまで立ち上がるまでの時間)として測定した。
評価用金型は900mm×400mm×12mmのサイズであり、型表面温度は40℃に調整した。金型には予め厚みが約1mmのポリ塩化ビニル製表皮と、厚みが約3mmのポリプロピレン製基材をそれぞれ片面ずつに両面テープで固定した。また、400mm側の一辺に約10mm幅でテープを貼り、意図的にその部分の型密閉性を低下させ、フォーム液が漏れやすくした状態で成形性の評価を行った。
脱型時間は全て、注入開始から型開き開始までの時間として60秒で実施した。流動距離、成形品密度、フォーム液漏れ性、キュア性、成形性等の成形時評価を行い、その結果を、表2に示す。
【0085】
評価項目の評価方法とそれらの評価基準は下記のとおりである。
(1)未充填品の流動距離
上述の評価型を用いて、吐出量350g/秒で注入時間1.04秒注入した場合の、注入点から流動先端までの距離(mm)を測定した。
(2)混合物注入量
実施例1〜3及び比較例1〜3の成型品を得る際の混合物注入量は、表2に示した。
(3)フォーム密度
得られた実施例1〜3及び比較例1〜3の成型品の密度は、成型品から5cmx5cm角のサイズでサンプルを切り出し、水中置換法によって測定した。結果は、表2に示した。
【0086】
(4)フォーム液漏れ性
混合液を型に注入して、得られた成型品のセル荒れを目視で観察して、評価した。
〇:セル荒れを生じない程度より少ないフォーム液の液漏れ
×:セル荒れを生じた
(5)キュア性
キュア性は、脱型直後の成型品表面を指で強く圧迫し、解放後の表面変形の残存の有無によって、評価した。
○:変形無し
×:変形残りあり
(6)ボイド
ボイドは、直径5mm以上のサイズのボイド有無によって、評価した。
〇 : 無し
× : 有り
(7)セル荒れ
セル荒れは、セルがつぶれた状態の部分があるかどうかによって、評価した。
〇 : 無し
× : 有り
【0087】
(8)におい評価
官能試験により評価した。5リットルのバッグに30×30×10mmに裁断したポリウレタンフォームを入れ、蓋をして100℃で1時間加熱し室温で約10分間静置した。その後蓋を少し開いてにおいを嗅ぎ、表1に示す6段階で臭気の強度を評価した。後述の基準臭を臭気強度3、快不快度−1.5とし、それを基準とし、5人以上の評価者が行い、結果をその平均とした。
【0088】
臭気強度
臭気強度0:無臭
臭気強度1:やっと感知できるにおい
臭気強度2:何のにおいかわかる弱いにおい
臭気強度3:容易に感知できるにおい
臭気強度4:強いにおい
臭気強度5:強烈なにおい
【0089】
快不快度
快不快度3:非常に快
快不快度2:快
快不快度1:やや快
快不快度0:快でも不快でもない
快不快度−1:やや不快
快不快度−2:不快
快不快度−3:非常に不快
【0090】
基準臭
比較例1の臭気強度を3、快不快境界を−1.5とする。
におい
〇:強度3.0以下、かつ、快不快度−1.5以上
×:強度3.0を超える、又は快不快度−1.5未満
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
表2に示すように、実施例1〜3と比較すると、比較例1及び3は植物由来ポリエステルポリオール(A3)を使用していないことが、得られる半硬質ウレタンフォームの臭気強度と臭気快不快度に悪影響を示すこと、比較例2はポリオール混合物中の水分量がフォーム液漏れ性に悪影響を及ぼすことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を用いて、半硬質ポリウレタンフォームを好適に製造することができ、更にその半硬質ポリウレタンフォームを有する車両用インストルメントパネルに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)、触媒及び発泡剤を含むポリオール混合物(B)と、
ポリイソシアネート成分(C)を混合して得られる半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物であって、
ポリオール成分(A)は、
(A1)ポリエーテルポリオール、
(A2)ポリエーテルポリオール中で、ビニル系モノマー(m)を重合させて得られるポリマーポリオール及び
(A3)植物油由来のポリエステルポリオールを含み、
(A1)ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキサイドを付加重合して得られ、2.0〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有するポリエーテルポリオールであり、
(A2)ポリマーポリオールは、アルキレンオキサイドを付加重合して得られ、2.0〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有するポリエーテルポリオール中で、ビニル系モノマー(m)を重合させて得られる10〜45重量%のビニル系ポリマー含有量を有するポリマーポリオールであり、
(A3)植物油由来のポリエステルポリオールは、植物油から得られる原料を用いて製造され、1.5〜4.0の平均官能基数と、20〜50mgKOH/gの水酸基価を有する植物油由来ポリエステルポリオールであり、
発泡剤は水を含み、ポリオール混合物(B)の水の含有量は、1.4重量%〜1.8重量%である
車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物。
【請求項2】
(A3)植物油由来のポリエステルポリオールは、ポリオール混合物(B)に、10〜50重量%含まれる請求項1に記載の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート成分(C)は、ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートを含み、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートは、各々その変性体を含んでよい、請求項1又は2記載の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を用いて製造される、車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォームであって、
反応射出成型法を用いて、成形型内に請求項1〜3のいずれかに記載の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡して得られ、170〜240kg/mの密度を有する車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を用いて、車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、
反応射出成型法を用いて、成形型内に請求項1〜3のいずれかに記載の半硬質ポリウレタンフォーム製造用組成物を注入し発泡する工程において、インストルメントパネル成形品の脱型時間が50〜65秒であることを特徴とする請求項4に記載の車両用インストルメントパネルに使用される半硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2011−208059(P2011−208059A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78550(P2010−78550)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】