説明

車両用オルタネータの伝達ベルト冷却構造

【課題】走行中のみならず停車中に空調装置を使用しても、オルタネータのベルトの温度上昇を防止でき、ベルト寿命の向上を図れる伝達ベルト冷却構造を提供する。
【解決手段】エンジン91の動力を利用して車両用空調装置の圧縮機93とオルタネータ92とを駆動させるシステムにおける車両用オルタネータのベルト冷却構造は、車両用空調装置のクーラユニット3からの冷風を、車室内に放出する冷風メインダクト4を分岐して、冷風の一部をパワーユニット9であるエンジン91及びオルタネータ92のVベルト94近傍にスポット的に当てる分岐ダクト5を設けている。分岐部分には第1ダンパ6が設けられ、冷風メインダクト4の端部には外気を導入するための第2ダンパ7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(エンジン)の動力を利用して、車両用空調装置の圧縮機を駆動させると共に、オルタネータを駆動させて車両の電気負荷への給電及びバッテリの充電を行うシステムにおいて、エンジンからオルタネータへと駆動力を伝達するベルトの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるオルタネータはエンジンの動力を利用して発電を行い、車両の電気負荷への給電及びバッテリの充電を行うものである。オルタネータは、発電時に発生する大量の熱による発電効率の低下等を防止するため、発電機構を冷却するオルタネータ冷却装置が設けられている。オルタネータ冷却装置として、従来、送風ファンによる空冷式によるものと、オルタネータを収納するハウジング内に冷却液又は冷媒を流して冷却する液冷式によるもの(例として、特許文献1及び2)とが知られている。しかしながら、これらの方式はいずれもオルタネータ自体を冷却する。
【特許文献1】特公平4−68851号公報
【特許文献2】特開平10−75550号公報
【0003】
ところで、オルタネータはエンジンから動力を得るため、エンジンとオルタネータ間がVベルトで掛け渡されている。このようなVベルトはその素材からして比較的耐熱性が低く、図3にベルト寿命と温度との関係を示すように、摩擦熱等によりあまり高温になると劣化し易く、オルタネータ用ベルトが1ヶ月程度で早期に緩み(摩耗)、バッテリが上がってしまうという問題がある。そのため、ベルトを冷却する必要がある。
【0004】
このようなベルトの冷却構造として、従来より、Vベルト式無段変速機構を備えたエンジンの駆動ベルト冷却構造が知られている(例えば、特許文献3及び4)。しかしながら、これらのベルト冷却構造は走行風を利用するものであり、車両の停止状態では基本的に冷却は行われないものである。
【特許文献3】特開2004−156657号公報
【特許文献4】特開2003−314671号公報
【0005】
しかしながら、本来バス車両用における空調装置は走行環境での使用を前提としているが、現在特装車両用(レントゲン車など)に転用され、停車状態で長時間、空調装置を作動させる使い方をされている。その場合、走行風が車両床下に搭載されたパワーユニット(エンジン及びVベルト他)に配風されなくなるため環境温度が高くなる。上記ベルトの不具合は、ベルト寿命の他の要因であるスリップ、アライメント、プーリ面粗度等の影響ではなく、温度が支配的に起因しているものである。
【0006】
従来技術としては、ベルト仕様変更等があるが、エンジン側プーリ形状の変更を伴うこと、またベルトを耐熱性を向上させたものに変えても効果が低く、特装車両の特異問題であることより標準仕様として変更するのはコスト面でも採用が難しいという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、空調装置を備えた車両が、走行中のみならず停車中に空調装置を使用しても、オルタネータのベルトの温度上昇を防止でき、ベルトの寿命アップを図ることができる車両用オルタネータの伝達ベルト冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された車両用オルタネータの伝達ベルト冷却構造を提供する。
請求項1に記載の車両用オルタネータの伝達ベルト冷却構造は、車両用空調装置のクーラユニットからの冷風を車室内に放出する冷風メインダクトを分岐して、冷風の一部を内燃機関及びオルタネータのベルト近傍にスポット的に当てる分岐ダクトを設けるようにしたものであり、これにより、車両の走行中又は停車中を問わず、車両用空調装置の作動中においては、オルタネータのベルトは冷風によって温度上昇が防止でき、ベルトの寿命を向上させることができる。
【0009】
請求項2の該伝達ベルト冷却構造は、冷風メインダクトから分岐ダクトが分岐される分岐部分に、分岐ダクトの開閉を行う第1ダンパが設けられ、かつこの分岐部分に近い冷風メインダクト端部には、外気を導入するために冷風メインダクト端部の開閉を行う第2ダンパが設けられていて、内燃機関及びオルタネータのベルトを冷却する風を、クーラユニットからの冷風と外気とに切り換え可能にしたものであり、これにより、オルタネータのベルトをクーラユニットからの冷風又は外気によって効率よく冷却することができる。
請求項3の該伝達ベルト冷却構造は、第1ダンパ及び第2ダンパの開閉動作を制御する制御手段を有していて、車両用空調装置がONのとき、第1ダンパを開き、第2ダンパを閉じて、分岐ダクトにクーラユニットからの冷風を流し、車両用空調装置がOFFのとき、第1ダンパを開き、第2ダンパを開いて、分岐ダクトに外気を導入するようにし、車室内に大きな冷房能力が必要なときは、第1及び第2ダンパ共、閉じるように制御するものであり、これにより、車室内の熱負荷が大きく冷房能力が必要な場合においては、クーラユニットからの冷風を全て車室内に放出することができ、冷房効果を早期に立ち上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に従って本発明の実施の形態の車両用オルタネータのベルト冷却構造について説明する。図1は、本発明の実施の形態の車両用オルタネータのベルト冷却構造の概略を説明する図であり、図2は、パワーユニットの概念図である。符号1は、車両、特にバス、特装車等の大型車両を示している。車両1の平坦な屋根上には、車両用空調装置の構成要素であるコンデンシングユニット2及びクーラユニット3とが前後して設置されている。
【0011】
コンデンシングユニット2は、凝縮器(コンデンサ)と送風機(ブロワ)とから構成されていて、外気を導入して凝縮器で熱交換し、熱交換後の外気をそのまま外部に放出している。なお、圧縮された高温高圧の冷媒は、外気によって冷却され凝縮される。
【0012】
クーラユニット3は、蒸発器(エバポレータ)と送風機(ブロワ)とから構成されていて、車室内から温かい空気を導入して、蒸発器で熱交換してこれを冷却し、冷風として車室内に放出している。なお、凝縮された液冷媒は、温かい空気によって加熱され蒸発して低温低圧の冷媒となる。
【0013】
車両1の屋根に隣接して、車室内にはクーラユニット3によって冷却された冷風を車室内に放出するための冷風メインダクト4が水平に設けられている。冷風メインダクト4には、冷風を車室内全体に渡って略均等に放出できるように、多数のノズルが穿設されている。冷風メインダクト4の一端部は閉鎖され、他端部には第2ダンパ7が取り付けられている。この第2ダンパ7は、閉動作によって他端部を閉鎖し、開動作によってこの他端部から外気を導入できるようになっている。
【0014】
冷風メインダクト4の他端部の近くに、冷風メインダクト4から分岐される分岐ダクト5が略垂直に取り付けられている。冷風メインダクト4から分岐ダクト5へと分岐される分岐部には、第1ダンパ6が取り付けられている。この第1ダンパ6は、閉動作によって分岐ダクト5を閉じ、開動作によって分岐ダクト5を開くようになっている。分岐ダクト5の先端は、冷風の吹出口51となっていて、その下方にパワーユニット9が配置されている。
【0015】
車両の運転席の近くには、制御手段としてのダンパスィッチ8が設けられており、このダンパスィッチ8の操作によって、第1ダンパ6及び第2ダンパ7とが電気式又は機械式に開閉動作するようになっている。
【0016】
パワーユニット9は、内燃機関(エンジン)91、オルタネータ92及び車両用空調装置の圧縮機(コンプレッサ)93等より構成されていて、オルタネータ92と圧縮機93とは、エンジン91の動力によって駆動されるようになっている。即ち、エンジン91とオルタネータ92とは、Vベルト94によって掛け渡されていて、動力が伝達される。同様にエンジン91と圧縮機93とは、Vベルト95によって掛け渡されていて、動力が伝達される。なお、圧縮機93とオルタネータ92とを同軸にして、Vベルト95を省略することも可能である。
【0017】
Vベルト94の略真上には、分岐ダクト5の吹出口51が配置されていて、クーラユニット3からの冷風がVベルト94に当たって、冷風によってVベルト94が冷却されるようになっている。なお、吹出口51からの冷風はエンジン91にも当たって、エンジン91をも冷却するようになっている。
【0018】
このように車両用空調装置は、圧縮機93、コンデンシングユニット2、クーラユニット3及び冷風メインダクト4等より構成されている。
車両用空調装置が作動している(ON)ときは、制御手段であるダンパスィッチ8の操作によって、第1ダンパ6が開動作され、また第2ダンパ7が閉動作される。したがって、クーラユニット3からの冷風は冷風メインダクト4を通って分岐ダクト5に入り、吹出口51から吹き出して、エンジン91及びオルタネータ92のベルト94を冷却して、その温度上昇を防止する。
【0019】
車両用空調装置が作動していない(OFF)ときは、ダンパスィッチ8の操作によって第1ダンパ6が開動作され、第2ダンパ7も開動作される。したがって、冷風メインダクト4の他端部から外気が導入され、分岐ダクト5を通って吹出口51から外気が吹き出し、エンジン91及びオルタネータ92のベルト94を冷却し、その温度上昇を防止する。
【0020】
車室内の熱負荷が大きく冷房能力が必要な場合又は一時的に急速冷房を行う場合には、ダンパスィッチ8の操作によって、第1ダンパ6及び第2ダンパ7が共に閉動作され、クーラユニット4からの冷風は、冷風メインダクト4のノズルから車室内に全て吹き出される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の車両用オルタネータの冷却構造の概略を説明する図である。
【図2】図1に示されるパワーユニットの概念図である。
【図3】雰囲気温度とベルト寿命との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 車両
2 コンデンシングユニット
3 クーラユニット
4 冷風メインダクト
5 分岐ダクト
6,7 第1及び第2ダンパ
8 ダンパスィッチ(制御手段)
9 パワーユニット
91 内燃機関(エンジン)
92 オルタネータ
93 圧縮機
94,95 Vベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力を利用して車両用空調装置の圧縮機とオルタネータとを駆動させるシステムにおける車両用オルタネータのベルト冷却構造において、
前記車両用空調装置のクーラユニットからの冷風を車室内に放出する冷風メインダクトを分岐して、冷風の一部を前記内燃機関及び前記オルタネータのベルト近傍にスポット的に当てる分岐ダクトが設けられていることを特徴とする車両用オルタネータの伝達ベルト冷却構造。
【請求項2】
前記冷風メインダクトから前記分岐ダクトが分岐される分岐部分に、前記分岐ダクトの開閉を行う第1ダンパが設けられ、かつ該分岐部分に近い前記冷風メインダクト端部には、外気を導入するために前記冷風メインダクト端部の開閉を行う第2ダンパが設けられていて、前記内燃機関及び前記オルタネータのベルトを冷却する風が、前記クーラユニットからの冷風又は外気に切り換え可能であることを特徴とする請求項1に記載の車両用オルタネータの伝達ベルト冷却構造。
【請求項3】
前記第1ダンパ及び前記第2ダンパの開閉動作を制御する制御手段を備えていて、前記制御手段は、前記車両用空調装置がONのときに、前記第1ダンパを開動作し、前記第2ダンパを閉動作して、前記分岐ダクトにクーラユニットからの冷風を流し、前記車両用空調装置がOFFのときには、前記第1ダンパを開動作し、前記第2ダンパを開動作して、前記分岐ダクトに外気を導入するようにし、車室内に大きな冷房能力が必要なときは、前記第1及び第2ダンパを閉動作するように制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用オルタネータの伝達ベルト冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−308121(P2008−308121A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160305(P2007−160305)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】