説明

車両用シートの足元フロアの空調構造

【課題】見栄えを悪くすることなく足元スペースを暖めることができても、足元スペースの高さを十分に確保できる車両用シートの足元フロアの空調構造を提供すること。
【解決手段】足元フロアには、カーペット70が配置されている。カーペット70は、足元フロア側の層と反対側の層に通気性を有する二層のシート材72、74から構成されている。二層のシート材72、74は、互いの向かい合う面間に送風路80を形成可能に接合されている。送風路80は、空調送風機48に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの足元フロアの空調構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの足元フロアの空調構造として、車両フロア側から、例えば、温風を吹き出させる空調構造が既に知られている。ここで、下記特許文献1には、温風が送られるヒータダクトを車両フロアの内部に埋め込み、この埋め込んだヒータダクトからフロアカーペットに温風を漏れ出させる空調構造が開示されている。これにより、ヒータダクトの吹出口が車内に露出しないため、見栄えを悪くすることなく足元スペースを暖めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−291869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、車両フロアの内部にヒータダクトを埋め込むため、車両フロアが嵩高になってしまうことがあった。そのため、足元スペースの高さを十分に確保できないことがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、見栄えを悪くすることなく足元スペースを暖めることができても、足元スペースの高さを十分に確保できる車両用シートの足元フロアの空調構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、車両用シートの足元フロアの空調構造であって、足元フロアには、カーペットが配置されており、カーペットは、足元フロア側の層と反対側の層に通気性を有する二層のシート材から構成されており、二層のシート材は、互いの向かい合う面間に送風路を形成可能に接合されており、送風路は、空調送風機に連結されていることを特徴とする構造である。
この構造によれば、従来技術と同様に、足元スペースを暖めるダクトの出口が車内に露出しないため、見栄えを悪くすることなく足元スペースを暖めることができる。このとき、従来技術とは異なり、足元スペースを暖めるダクトを足元フロアの内部に埋め込む必要がないため、足元スペースの高さを十分に確保できる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートの足元フロアの空調構造であって、空調送風機は、車両用シートに設けられていることを特徴とする構造である。
この構造によれば、車両側に空調送風機を設ける必要がないため、足元フロアの空調構造を簡素化できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれか1項に記載の車両用シートの足元フロアの空調構造であって、空調送風機から吹き出されるエアは、シートクッションおよび/またはシートバックの表面から着座者に向けても吹き出されていることを特徴とする構造である。
この構造によれば、足元スペースを暖めると、着座者の尻部も暖めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る車両内の助手席あたりを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II線断面図である。
【図3】図3は、図2において、空調装置の動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜3を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、『車両用シート』の例として、『助手席1』を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、助手席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0011】
まず、図1〜2を参照して、本発明の実施例に係る助手席1とカーペット70との構成を個別に説明する。はじめに、助手席1の構成から説明していく。この助手席1は、シートクッション2と、公知のシートバック3とから構成されている。
【0012】
このシートクッション2について詳述すると、シートクッション2は、略矩形枠状に形成されたクッションフレーム(図示しない左右のサイドフレーム、フロントパネル16、リアロッド18)と、このクッションフレームに包着状に組み付けられたクッションパッド20と、このクッションパッド20の表面をカバーリングする表皮30とから構成されている。
【0013】
このフロントパネル16の下面には、ブラケット40a、40aを介してダクト40が組み付けられている。このダクト40の内部には、図示しないモータによって駆動されるファン48が設けられている。このファン48が、特許請求の範囲に記載の「空調送風機」に相当する。なお、このダクト40の入口(エアの取込口)は、図示されていない。また、このダクト40には、その下流側に3本のサブダクト42、44、46(第1のサブダクト42、第2のサブダクト、第3のサブダクト46)が連結されている。
【0014】
これら3本のサブダクト42、44、46のうち、第1のサブダクト42は、その出口42bが助手席1に着座した乗員の足元側に向けられるように形成されている。この第1のサブダクト42の内部には、その入口42a側から出口42b側の順で、公知の熱交換器50と公知の繊維パッド52とが設けられている。
【0015】
これにより、ファン48が駆動すると、この駆動によって第1のサブダクト42の内部を流れるエアの熱交換が行われるため、例えば、暖房時、暖かいエアを第1のサブダクト42の出口42bから吹き出させることができる。なお、このように第1のサブダクト42の内部に熱交換器50と繊維パッド52とが設けられていることは、後述する第2のサブダクト44と第3のサブダクト46においても同様である。
【0016】
また、第2のサブダクト44は、この第1のサブダクト42と同様に、その出口44bが後述するクッションパッド20の送風路22の入口22aに連結されるように形成されている。
【0017】
また、第3のサブダクト46も、この第1のサブダクト42と同様に、その出口46bが後述するカーペット70に接続されるホース60の入口60aに連結されるように形成されている。なお、この第3のサブダクト46は、後述するように、助手席1が前後にスライドしても、その出口46bとホース60の入口60aとの連結が外れることがないように、十分に長く形成されている。
【0018】
一方、クッションパッド20には、その厚み方向に貫通するように送風路22が形成されている。この送風路22は、その入口22aが上述したように第2のサブダクト44の出口44bと連通するように、且つ、その出口22bが助手席1に着座した乗員の尻部に相当する位置となるように形成されている。
【0019】
このように形成されているシートクッション2は、その左右のサイドフレーム(図示しない)が左右に対を成す公知のスライドレール4と、この両スライドレールの両端に組み付けられた各レッグ5、5を介して車両フロアFに組み付けられている。これにより、助手席1を前後にスライドさせることができる。助手席1は、このように構成されている。
【0020】
次に、カーペット70を説明する。カーペット70は、助手席1の足元フロア面と略一致するサイズを成すように略矩形状に形成されている。このカーペット70は、その厚み方向に下側から上側に向けて、通気性を有しない第1のシート材72、通気性を有する第2のシート材74、通気性を有するクッション材76の順にから成る三層構造となっている。第1のシート材72と第2のシート材74とは、互いの四縁(矩形の四辺の縁)と、その幅方向に沿って適宜の間隔で前後方向とが縫合されている。図1において、78が縫合の糸を示している。
【0021】
なお、この縫合によって形成される第1のシート材72と第2のシート材74との間には上述したホース60の出口60bが連結されている。これにより、第1のシート材72と第2のシート材74との間に上述した第3のサブダクト46からのエアを送り込むと送風路80が形成されることとなる。
【0022】
一方、第2のシート材74とクッション材76とは、互いの向かい合う面が溶着等の通気性を有する接着層(図示しない)を介して接合されている。なお、このカーペット70は、車両フロアFに形成されているフック(図示しない)に掛け留めされた状態で、助手席1の足元フロアに配置されている。これにより、カーペット70のズレ動きを防止できる。カーペット70は、このように構成されている。
【0023】
続いて、上述した助手席1およびカーペット70の空調動作を説明する。なお、この説明では、暖房時の場合を説明する。まず、ファン48を駆動させると、既に説明したように、第1のサブダクト42の内部を流れるエアの熱交換が行われるため、暖かいエアを第1のサブダクト42の出口42bから吹き出させることができる。これにより、助手席1に着座した乗員の脹脛部を暖めることができる。
【0024】
これと同時に、第2のサブダクト44の内部を流れるエアの熱交換が行われるため、暖かいエアをクッションパッド20の送風路22の出口22bから吹き出させることができる。これにより、助手席1に着座した乗員の尻部を暖めることができる。
【0025】
また、これと同時に、第3のサブダクト46の内部を流れるエアの熱交換が行われるため、暖かいエアをホース60の出口60bから吹き出させることができる。すると、この吹き出し力によって、第1のシート材72と第2のシート材74との間に送風路80が形成される。そのため、この吹き出された暖かいエアは、第2のシート材74とクッション材76(いずれも通気性を有する)とを介して、クッション材76の表面から吹き出される。図3において、矢印が暖かいエアの吹き出しを示している。これにより、助手席1に着座した乗員の足元スペースを暖めることができる。
【0026】
本発明の実施例に係る助手席1の足元フロアの空調構造は、上述したように成されている。この構造によれば、従来技術と同様に、第3のサブダクト46の出口46b(ヒータダクトの吹出口)が車内に露出しないため、見栄えを悪くすることなく足元スペースを暖めることができる。このとき、従来技術とは異なり、第3のサブダクト46を足元フロアの内部に埋め込む必要がないため、足元スペースの高さを十分に確保できる。このような構造であれば、助手席1に限ることなく、シートの近くであれば、何処にでも設定できる。また、このような構造であれば、足元全体を効率よく暖めることができる。
【0027】
また、この構造によれば、ファン48は助手席1に設けられている。そのため、車両側にファン48を設ける必要がないため、足元フロアの空調構造を簡素化できる。
【0028】
また、この構造によれば、ファン48から吹き出される暖かいエアをシートクッション2における着座者の尻部に相当する位置からも吹き出させることができる。そのため、足元スペースを暖めると、着座者の尻部も暖めることができる。
【0029】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、『車両用シート』の例として、『助手席1』を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、『運転席』および『後部座席』であっても構わない。
【0030】
また、実施例では、二層のシート材72、74が別体である例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、一層のシート材を折り曲げて二層のシート材72、74としても構わない。
【0031】
また、実施例では、第2のサブダクト44の暖かいエアをシートクッション2の表面から吹き出させる例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、シートバック3の表面から吹き出させても構わない。もちろん、シートクッション2の表面とシートバック3の表面の両方から吹き出させても構わない。
【0032】
また、実施例では、暖かいエアを吹き出させる例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、熱交換器50を、冷却するようにすれば、助手席1に着座した乗員の蒸れ防止として機能させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 助手席(車両用シート)
2 シートクッション
3 シートバック
48 ファン
70 カーペット
72 第1のシート材
74 第2のシート材
80 送風路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの足元フロアの空調構造であって、
足元フロアには、カーペットが配置されており、
カーペットは、足元フロア側の層と反対側の層に通気性を有する二層のシート材から構成されており、
二層のシート材は、互いの向かい合う面間に送風路を形成可能に接合されており、
送風路は、空調送風機に連結されていることを特徴とする車両用シートの足元フロアの空調構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートの足元フロアの空調構造であって、
空調送風機は、車両用シートに設けられていることを特徴とする車両用シートの足元フロアの空調構造。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の車両用シートの足元フロアの空調構造であって、
空調送風機から吹き出されるエアは、シートクッションおよび/またはシートバックの表面から着座者に向けても吹き出されていることを特徴とする車両用シートの足元フロアの空調構造。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106612(P2012−106612A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256789(P2010−256789)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】