説明

車両用シートロック装置

【課題】車両用シートロック装置における操作ノブの位置を容易に視認可能にする。
【解決手段】 ロック手段4は、フック8に加え、さらにストライカ5がフック8から離脱しているとき、アンロック状態に変位し、また、フック8が係合位置にあるとき、ストライカ5に当接することにより、アンロック状態と異なる状態のロック状態に変位可能な検知手段10、11を有する。操作ノブ21は、検知手段10、11の変位に応じて、検知手段10、11のロック状態に対応する第1位置と、検知手段10、11のアンロック状態に対応する第2位置との間を移動し得るように、検知手段10、11に連係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックを起立位置に保持可能な車両用シートロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートロック装置においては、リヤシートのシートバックに装着されるとともに、車体側のストライカに係脱可能なロックレバーと、ロックレバーに係脱可能なレリーズレバーとを有するロック機構と、レリーズレバーに連結される操作ノブとを備え、操作ノブのアンラッチ操作をもって、レリーズレバーをロック位置からアンロック位置に移動させて、ストライカとロックレバーとの係合を解除することにより、起立位置に保持されているシートバックを倒伏位置に移動させることができるようになっている。
【0003】
また、ロックレバーがストライカに係合しているときには、操作ノブを第1位置に変位させ、また、ロックレバーがストライカから離脱しているときには、操作ノブを第1位置より下方へ移動した第2位置に変位させるとともに、操作ノブの近傍に設けた表示部を露呈させることによって、シートバックの使用に際し、乗員は操作ノブの位置及び表示部を視認することで、ロックレバーとストライカとの係合状態を容易に確認できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第2604685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような従来の車両用シートロック装置においては、操作ノブにおける第1位置と第2位置との間の移動を、レリーズレバーの移動に対して直接連動させているため、操作ノブのアンラッチ操作により、レリーズレバーをロック位置からアンロック位置に作動させ、ロックレバーがストライカから離脱した後も、レリーズレバーをアンロック位置に保持する複雑な構成を必要とする。
【0005】
また、操作ノブの第1位置と第2位置との間の移動距離は、レリーズレバーのラッチ位置とアンラッチ位置との間のアンラッチ移動距離により決定され、必然的に操作ノブにおける第1位置と第2位置との間の移動量とアンラッチ操作量とが同じになるため、操作ノブの第1位置と第2位置との間の変位量を任意に設定することができない。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、操作ノブの第1位置と第2位置との間の移動量を任意に設定可能にして、操作ノブの位置を容易に視認可能にした車両用シートロック装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)車体側に設けられるストライカに係合し、シートバックを起立位置に拘束可能なフックを有するロック手段と、前記フックに連係され、その操作により前記フックを前記ストライカに係合した係合位置から離脱するアンロック操作位置に移動可能な操作ノブを有する操作手段とを備え、前記フックは、前記係合位置と前記ストライカに係合していない待機位置とをほぼ同一とした車両用シートロック装置において、前記ロック手段は、前記フックに加え、さらに前記フックが待機位置にあるとき、アンロック状態に変位し、また、前記フックが係合位置にあるとき、前記ストライカに当接することにより、アンロック状態と異なる状態のロック状態に変位可能な検知手段を有し、前記操作ノブは、前記検知手段の変位に応じて、前記検知手段のロック状態に対応する第1位置と、前記検知手段のアンロック状態に対応する第2位置との間を移動し得るように、前記検知手段に連係する。
【0008】
(2)上記(1)項において、操作ノブは、第1位置から第2位置を通過した第3位置に押し込み操作可能であるとともに、前記第1位置と前記第2位置との間の移動距離に相当する遊びを介してフックに連係され、前記第3位置に移動することにより、前記フックをアンロック操作位置に移動させる。
【0009】
(3)上記(1)または(2)項において、操作ノブと検知手段とを、該操作ノブにおける第1位置と第3位置との間の移動が前記検知手段に伝達されないように互いに連係する。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、検知手段は、ストライカがフックから離脱しているとき、第1のばねの付勢力によりアンロック位置に保持され、また、前記フックが係合位置にあるとき、前記ストライカに当接することにより、前記第1のばねの付勢力に抗してロック位置に変位可能な拘束レバーと、操作ノブに連係され、かつ該拘束レバーが前記アンロック位置にあるとき、前記拘束レバーに当接することにより、前記操作ノブの第2位置に対応するアンロック位置に保持され、また、前記拘束レバーが前記アンロック位置から前記ロック位置へ変位することにより、第2のばねの付勢力をもって、前記操作ノブの第1位置に対応するロック位置に変位可能なウォーニングレバーとを有する。
【0011】
(5)上記(4)において、ウォーニングレバーは、フックが係合位置とアンロック操作位置との間の不完全噛合位置にあるとき、アンロック位置に保持されるように、前記フックに対して当接関係にある。
【0012】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、操作手段は、操作ノブに加え、さらにシートバックに固定されるとともに、前記操作ノブを摺動可能に収容する案内部材を有し、前記操作ノブが第1位置にあるとき、前記操作ノブの上面が前記案内部材に対してほぼ平坦になるようにする。
【0013】
(7)上記(6)項において、案内部材は、操作ノブが第1位置にあるとき前記操作ノブにより隠蔽され、また、前記操作ノブが第2位置にあるとき露呈する表示部を有する。
【0014】
(8)上記(1)〜(7)項のいずれかにおいて、操作ノブを、ロック手段の上部に枢支されるベルクランクを介して、フック及び検知手段に連係する。
【0015】
(9)上記(1)〜(8)項のいずれかにおいて、フックは、ストライカの進入方向に沿って、前記ストライカに係合可能な複数の係合溝を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次のような効果が奏せられる。
(a)請求項1記載の発明によると、ロック手段は、フックに加え、さらにフックが待機位置にあるとき、アンロック状態に変位し、また、フックが係合位置にあるとき、ストライカに当接することにより、アンロック状態と異なる状態のロック状態に変位可能な検知手段を有することにより、フックの待機位置と係合位置とをほぼ同一としたロック装置においても、フックとストライカとの係合状態の確認が可能となる。また、操作ノブは、検知手段の変位に応じて、検知手段のロック状態に対応する第1位置と、検知手段のアンロック状態に対応する第2位置との間を移動し得るように、検知手段に連係したことにより、検知手段の変位に基づいて、操作ノブの第1位置と第2位置との間の移動量を任意に設定可能であるとともに、操作ノブを確実に第1位置と第2位置との間を移動させることができ、操作ノブの位置に基づいて、フックとストライカとの係合状態を容易に確認することができる。
【0017】
(b)請求項2記載の発明によると、操作ノブを第1位置と第2位置との間の移動距離に相当する遊びを介してフックに連係し、検知手段の変位に基づいて、操作ノブが第1位置と第2位置との間を移動する際、その移動がフックに伝達されることがないので、操作ノブが第1または第2位置に変位しても、フックを常に係合位置(待機位置を含む)に保持することができ、また、操作ノブの第2位置を超えた第3位置への操作に基づいて、フックをアンロック操作位置に移動させることができる。
【0018】
(c)請求項3記載の発明によると、操作ノブを第1位置から第3位置に操作した際、その操作に伴う移動が検知手段に伝達されないので、検知手段の不要な動きが無くなり、検知手段に基づいて、フックとストライカとの係合状態を確実に検出することができる。
【0019】
(d)請求項4記載の発明によると、検知手段を拘束レバーとウォーニングレバーとにより形成したことにより、拘束レバーにより、フックに係合しているストライカのがた付きを抑止することができ、また、ウォーニングレバーの変位に基づいて、操作ノブを第1位置及び第2位置に確実に移動させることができる。
【0020】
(e)請求項5記載の発明によると、フックが不完全噛合位置にあるとき、ウォーニングレバーをアンロック位置に保持して、操作ノブを第2位置に変位させることができるため、フックにおけるストライカに対する不完全噛合状態を確実に検出することができる。
【0021】
(f)請求項6記載の発明によると、操作ノブが第1位置にあるとき、操作ノブの上面が案内部材に対してほぼ平坦になるようにしたことにより、操作ノブの突出感が無くなり、シートバックの見栄え向上を図ることができる。また、シートバックを倒伏位置に倒した際、操作ノブがフロントシート等に衝突することがない。
【0022】
(g)請求項7記載の発明によると、案内部材に、操作ノブが第2位置にあるとき露呈する表示部を設けたことにより、表示部を視認することにより、フックとストライカとの係合状態を確実に確認することができる。
【0023】
(h)請求項8記載の発明によると、操作ノブを、ベルクランクを介してフック及び検知手段に連係することにより、簡単な構成により、操作ノブをフック及び検知手段にそれぞれ連係することができる。
【0024】
(i)請求項9記載の発明によると、フックに、ストライカの進入方向に沿って、ストライカに係合可能な複数の係合溝を設けたことにより、シートバックを複数段階の起立位置に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係わる一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明を適用した車両用リヤシートの斜視図、図2〜図6は、各状態におけるロック装置の側面図である。なお、以下の説明では、各図における右方を車両の「前方」とし、左方を「後方」とする。
【0026】
リヤシート(1)は、図1に示すように、車両のフロアに据え付けられるシートクッション(2)と、シートクッション(2)の後端部にヒンジ軸(図示略)により枢着され、同図に実線で示す起立位置と想像線で示す倒伏位置との間で回動可能な可倒式のシートバック(3)とにより構成される。
【0027】
ロック手段をなすロック装置(4)は、シートバック(3)における肩部近傍の側面内部に装着され、車体側に固着されたストライカ(5)に後述のフック(8)が係合することによって、シートバック(3)を起立位置における第1起立位置と第1起立位置より僅かに後傾の第2起立位置との2段階に保持可能であり、また、シートバック(3)の肩部上部に設けられた操作手段をなす操作装置(6)のアンロック操作に基づいて、フック(8)がストライカ(5)から離脱することによって、シートバック(3)の各起立位置から倒伏位置への移動を可能にする。
【0028】
なお、ストライカ(5)は、前側の第1係合部(51)と後側の第2係合部(52)とを有する平面視ほぼコ字型をなし、第1係合部(51)が後述のようにロック装置(4)のフック(8)に係合することによって、シートバック(3)を第1起立位置に保持し、また、第1係合部(51)及び第2係合部(52)が共にフック(8)に係合することによって、シートバック(3)を第2起立位置に保持するようになっている。
【0029】
操作装置(6)は、シートバック(3)の肩部上部に固定され、上下方向を向く筒状のガイド部材(20)と、ガイド部材(20)内に上下方向へ移動可能に収容される操作ノブ(21)とを有する。
【0030】
操作ノブ(21)は、上下方向の第1連結部材(24)を介して、ロック装置(4)の上部に設けられる取付ブラケット(図示略)に枢支されるベルクランク(23)の後端部に連係され、図2、3に示すように、上面がガイド部材(20)とほぼ平坦になる第1位置と、図4、5に示すように、ガイド部材(20)内に所定量没入した第2位置と、図6に示すように、第2位置よりさらに深く没入した第3位置とに移動可能に構成されている。
【0031】
第1位置は、ロック装置(4)のフック(8)がストライカ(5)に確実に係合していることを示し、第2位置は、ロック装置(4)のフック(8)がストライカ(5)から離脱または不完全噛合位置であることを示し、また、第3位置は、ロック装置(4)のフック(8)をストライカ(5)から離脱する位置に作動させるためのアンロック操作位置である。
【0032】
ガイド部材(20)における内周面の後面上部には、ガイド部材(20)と異なる彩色、または「UNLOCK」等の文字が施された表示部(201)が設けられている。この表示部(201)は、操作ノブ(21)が第1位置にあるとき操作ノブ(21)により隠蔽され、また、操作ノブ(21)が第2、3位置にあるとき露呈して、乗員に対してロック装置(4)のフック(8)がストライカ(5)に係合していないことの注意を促すものである。
【0033】
ベルクランク(23)は、前述の取付ブラケットに枢軸(22)により枢着されるとともに、第3のばね(27)により時計方向へ付勢され、図2、3に示すように、取付ブラケットに設けられたストッパー(72)に当接することによって、操作ノブ(21)の第1位置に対応する第1位置に保持され、また、図4、5に示すように、第3のばね(27)の付勢力に抗して、第1位置より反時計方向へ所定量回動した操作ノブ(21)の第2位置に対応する第2位置と、図6に示すように、第2位置よりさらに反時計方向へ回動した操作ノブ(21)の第3位置に対応する第3位置に回動し得るように、第1連結部材(24)を介して、操作ノブ(21)に連係される。なお、操作ノブ(21)の第1位置への保持については、ガイド部材(20)の内周面の上端部に凸部(図示略)を設け、この操作ノブ(21)と凸部とを当接させることによって、操作ノブ(21)を所定の弾性保持力により第1位置に保持するようにしても良い。
【0034】
ベルクランク(23)の前端部には、枢軸(22)を中心とする円弧状の第1長孔(231)及び第2長孔(232)が設けられている。
【0035】
第1長孔(231)には、上下方向の第2連結部材(25)の上端部が、操作ノブ(21)の第1位置と第2位置との間の移動距離に相当する遊びが形成されるように、上下方向に摺動可能に係合される。このように、操作ノブ(21)と第2連結部材(25)との間の操作力伝達経路に、操作ノブ(21)の第1位置と第2位置との間の移動距離に相当する遊びを設けたことにより、操作ノブ(21)の第1位置と第2位置との間を移動は、第2連結部材(25)に伝達されることはない。
【0036】
第2長孔(232)には、上下方向の第3連結部材(26)の上端部が、操作ノブ(21)の第1位置と第3位置との間の移動距離に相当する遊びが形成されるように、上下方向に摺動可能に係合される。このように、操作ノブ(21)と第3連結部材(26)との間の操作力伝達経路に、操作ノブ(21)の第1位置と第3位置との間の移動距離に相当する遊びを設けたことにより、操作ノブ(21)の第1位置と第3位置との間を移動は、第3連結部材(26)に伝達されることはない。
【0037】
なお、第2連結部材(25)の下端部は、後述の検知手段を構成するウォーニングレバー(11)に連結され、また、第3連結部材(26)の下端部は、後述のオープンレバー(9)に連結される。この結果、操作ノブ(21)は、ベルクランク(23)を介して、ウォーニングレバー(11)及びオープンレバー(9)にそれぞれ連係されることとなる。
【0038】
次にロック装置(4)について図2〜図6に基づいて説明する。ロック装置(4)は、シートバック(3)内に取付けネジ(図示略)により固定されるベースプレート(7)と、ストライカ(5)と係脱可能なフック(8)と、第2連結部材(25)の下端部に連結されるオープンレバー(9)と、ストライカ(5)のフック(8)に対する係脱に応じて位置を変位可能な拘束レバー(10)及びウォーニングレバー(11)を含む検知手段とを有している。なお、図2〜図6は、ベースプレート(7)の側面に固着されたカバープレート(7a)の一部を破断した形態を示す。
【0039】
ベースプレート(7)には、カバープレート(7a)が固着されるとともに、シートバック(3)を起立位置に移動させた際、ストライカ(5)の第1、2係合部(51)(52)が後方から進入可能なほぼ水平方向のストライカ進入溝(71)が設けられている。
【0040】
フック(8)は、前端部がカバープレート(7a)に枢軸(12)により枢着されるとともに、枢軸(12)に巻装された第4のばね(13)により反時計方向へ付勢され、ストライカ(5)が離脱した図4に示す待機位置と、ストライカ(5)に係合し、かつ待機位置とほぼ同一位置の図2、3に示す係合位置と、係合位置から第4のばね(13)の付勢力に抗して時計方向へ所定量回動した図6に示すアンロック操作位置とに回動可能である。すなわち、本発明は、フック(8)が係合位置と待機位置とをほぼ同一としたロック装置(4)により構成される。
【0041】
フック(8)におけるストライカ進入溝(71)に重合する部分には、ストライカ(5)の進入方向に沿って、ストライカ(5)の第1、2係合部(51)(52)が選択的に係合可能な後側の第1係合溝(81)及びストライカ(5)の第1係合部(51)が係合可能な前側の第2係合溝(82)が設けられている。
【0042】
シートバック(3)を倒伏位置から起立させると、先ずストライカ(5)の第1係合部(51)がストライカ進入溝(71)に進入して、フック(8)の傾斜縁(83)に当接することにより、フック(8)は、第4のばね(13)の付勢力に抗して、待機位置から強制的にアンロック操作位置付近まで回動させられる。続いて、ストライカ(5)の第1係合部(51)が第1係合溝(81)まで進入すると、図2に示すように、フック(8)が、第4のばね(13)の付勢力により係合位置に回動して、ストライカ(5)の第1係合部(51)に第1係合溝(81)が係合する。これにより、シートバック(3)は第1起立位置に保持される。
【0043】
また、ストライカ(5)の第1係合部(51)がさらにストライカ進入溝(71)に進入した場合には、図3に示すように、第1係合部(51)がフック(8)の第2係合溝(82)に、また第2係合部(52)が第1係合溝(81)にそれぞれ係合することにより、シートバック(3)は第2起立位置に保持される。
【0044】
オープンレバー(9)は、ベースプレート(7)に枢軸(14)により枢着されるとともに、第2連結部材(25)の下端部が連結され、操作ノブ(21)の第3位置へのアンロック操作に基づいて、図2及び図3に示す停止位置から、第5のばね(15)の付勢力に抗して、図6に示すアンロック操作位置に回動する。オープンレバー(9)がアンロック操作位置に回動すると、図6に示すように、下部に設けられたアーム部(91)の前縁が、フック(8)に設けられた第1突部(84)に当接することによって、フック(8)は、係合位置からアンロック操作位置に回動する。なお、オープンレバー(9)のアーム部(91)は、オープンレバー(9)が反時計方向へ回動したときのみ、フック(8)の第1突部(84)に当接するようになっている。
【0045】
拘束レバー(10)は、カバープレート(7a)に枢軸(16)により枢着されるとともに、第1のばね(17)により反時計方向へ付勢され、ストライカ(5)の第1、2係合部(51)(52)がフック(8)の第1係合溝(81)に係合していない場合、すなわちシートバック(3)が倒伏位置にある場合には、図4に示すアンロック位置に停止しており、また、ストライカ(5)の第1、2係合部(51)(52)がフック(8)の第2係合溝(82)に完全に係合した場合、すなわちシートバック(3)が第1または第2起立位置に保持されている場合には、図2、3に示すように、第1係合部(51)または第2係合部(52)に当接することにより、第1のばね(17)の付勢力に抗して、アンロック位置から時計方向へ所定量回動したロック位置に変位可能となっている。
【0046】
拘束レバー(10)がロック位置にある場合には、拘束レバー(10)の下向き山形状の検出部(101)が、フック(8)の第1係合溝(81)に係合しているストライカ(5)の第1係合部(51)または第2係合部(52)に上方から当接することにより、第1のばね(17)の付勢力をもって、ストライカ(5)のがた付きを抑止するようになっている。
【0047】
ウォーニングレバー(11)は、ベースプレート(7)に枢軸(18)により枢着されるとともに、前端部が第3連結部材(26)の下端部が連結され、図4〜図6に示すアンロック位置と、図2、3に示すロック位置との間を回動し得るように構成されている。
【0048】
拘束レバー(10)がアンロック位置にある場合には、図4に示すように、拘束レバー(10)の前部に設けられた突部(102)が、ウォーニングレバー(11)の下縁に当接することによって、ウォーニングレバー(11)は、ウォーニングレバー(11)を時計方向へ付勢している第2のばね(19)の付勢力に抗してアンロック位置に保持される。また、拘束レバー(10)がロック位置にある場合には、図2、3に示すように、拘束レバー(10)の突部(102)が、ウォーニングレバー(11)の下縁から離れるように下方へ移動する。これにより、ウォーニングレバー(11)は、第2のばね(19)の付勢力をもって、アンロック位置から時計方向へ回動して、ベースプレート(7)に当接したロック位置に保持される。
【0049】
ウォーニングレバー(11)がロック位置に変位した場合には、第3連結部材(26)が下方へ移動するため、ベルクランク(23)は、第3のばね(27)の付勢力により、第1位置に移動し、これに応じて、操作ノブ(21)は第1位置に移動する。また、ウォーニングレバー(11)がアンロック位置に変位した場合には、第3連結部材(26)が上方へ移動するため、ベルクランク(23)は第3のばね(27)の付勢力に抗して第2位置に移動し、これに応じて、操作ノブ(21)は第2位置に移動する。
【0050】
また、図5に示すように、不完全噛合状態が発生した場合、すなわちフック(8)が係合位置とアンロック操作位置との間の不完全噛合位置に停止した状態で、第1係合溝(81)がストライカ(5)の第1係合部(51)に僅かに係合している場合には、フック(8)の不完全噛合位置への移動に伴って、フック(8)の側面に設けられた第2突部(85)が、ウォーニングレバー(11)の移動軌跡内に進入して、フック(8)の下縁に当接することによって、ウォーニングレバー(11)は、アンロック位置に保持されるようになっている。したがって、不完全噛合状態が発生した場合には、拘束レバー(10)が、ロック位置にあっても、ウォーニングレバー(11)をアンロック位置に保持して、操作ノブ(21)を第2位置に変位させることができる。
【0051】
なお、以下に使用する検知手段(10)(11)のアンロック状態は、拘束レバー(10)及びウォーニングレバー(11)が共にアンロック位置にあるとき、また、検知手段(10)(11)のロック状態は、拘束レバー(10)及びウォーニングレバー(11)が共にロック位置にあるときと定義する。また、図5に示す不完全噛合状態のように、拘束レバー(10)がロック位置に、また、ウォーニングレバー(11)がアンロック位置にあるときは、検知手段(10)(11)は、アンロック状態となる。したがって、検知手段(10)(11)がロック状態にあるときには、操作ノブ(21)は第1位置に変位し、また、同じくアンロック状態にあるときには、操作ノブ(21)は第2位置に変位する。
【0052】
上述のように、ロック装置(4)は、フック(8)に加え、さらにストライカ(5)の第1または第2係合部(51)(52)がフック(8)の第1係合溝(81)から離脱しているとき、アンロック状態に変位し、また、フック(8)が係合位置にあるとき、ストライカ(5)の第1係合部(51)に当接することにより、アンロック状態と異なる状態のロック状態に変位可能な検知手段(10)(11)を有し、また、操作ノブ(21)は、検知手段(10)(11)の変位に応じて、検知手段(10)(11)のロック状態に対応する第1位置と、検知手段(10)(11)のアンロック状態に対応する第2位置との間を移動し得るように、検知手段(10)(11)に連係したことにより、検知手段(10)(11)の変位に基づいて、操作ノブ(21)の第1位置と第2位置との間の移動量を任意に設定可能であるとともに、操作ノブ(21)を確実に第1位置と第2位置との間を移動させることができ、操作ノブ(21)の位置及び表示部(201)を視認することにより、フック(8)とストライカ(5)との係合状態を容易に確認することができる。
【0053】
次に、車両用シートバック装置の作用について説明する。シートバック(3)が第1起立位置に保持されている場合には、図2に示すように、ストライカ(5)の第1係合部(51)が、フック(8)の第1係合溝(81)に係合している。また、同じく第2起立位置に保持されている場合には、図3に示すように、ストライカ(5)の第1係合部(51)がフック(8)の第2係合溝(82)、また第2係合部(52)が第1係合溝(81)にそれぞれ係合している。この状態においては、検知手段(10)(11)はロック状態に変位していることにより、操作ノブ(21)は第1位置に変位している。したがって、乗員は、操作ノブ(21)の上面がガイド部材(20)と平坦になっている第1位置にあることを視認することにより、ストライカ(5)の各係合部(51)(52)がフック(8)の各係合溝(81)(82)に確実に係合していることを容易に確認することができる。また、拘束レバー(10)の検出部(101)が、第1のばねの(17)の付勢力により、ストライカ(5)の第1または第2係合部(51)(52)に当接しているので、ストライカ(5)のがた付きを抑止している。
【0054】
また、シートバック(3)が第1または第2起立位置にあるにも係わらず、ストライカ(5)の第1または第2係合部(51)(52)がフック(8)の第1係合溝(81)に完全に係合していない状態、すなわち図5に示す不完全噛合状態が発生している場合には、拘束レバー(10)がロック位置にあっても、フック(8)の第2突部(85)がウォーニングレバー(11)の下縁に当接して、ウォーニングレバー(11)がアンロック位置に保持されている。したがって、検知手段(10)(11)はアンロック状態にあって、操作ノブ(21)は第2位置に変位している。この結果、乗員は、操作ノブ(21)がガイド部材(20)より没入した第2位置にあること、及び露呈している表示部(201)を視認することにより、不完全噛合状態であることを容易に確認することができる。
【0055】
第1または第2起立位置に保持されているシートバック(3)を倒伏位置に移動させる場合には、操作ノブ(21)をアンロック操作して、図2、3に示す第1位置から第2位置を通過した図6に示す第3位置まで押し込む。これにより、ベルクランク(23)は、第3のばね(27)の付勢力に抗して、第1位置から第2位置を通過して第3位置に回動し、第1長孔(231)、第2連結部材(25)を介して、オープンレバー(9)を待機位置からアンロック操作位置に回動させる。フック(8)は、オープンレバー(9)のアンロック操作位置への回動に伴って、係合位置からアンロック操作位置に回動して、各係合溝(81)(82)がストライカ(5)の各係合部(51)(52)から離脱する。この状態で、シートバック(3)を前方へ回動させることにより、倒伏位置へ移動させることができる。
【0056】
操作ノブ(21)を第1位置から第3位置まで押し込む際、操作ノブ(21)とウォーニングレバー(11)とは、操作ノブ(21)の第1位置と第3位置との間の移動がウォーニングレバー(11)に伝達されないように、操作ノブ(21)の第1位置と第3位置との間の移動距離に相当する遊びを介して互いに連結されているため、操作ノブ(21)の第1位置から第3位置への移動が、ウォーニングレバー(11)及び拘束レバー(10)に伝達されることはない。この結果、ウォーニングレバー(11)及び拘束レバー(10)の不要な動きが無くなり、フック(8)とストライカ(5)との係合状態を確実に検出することができる。
【0057】
また、シートバック(3)が倒伏位置に移動させる際、ストライカ(5)の各係合部(51)(52)がフック(8)の各係合溝(81)(82)から離脱して、検知手段(10)(11)がアンロック状態に変位して、操作ノブ(21)が第2位置に変位してガイド部材(20)内に没入しているため、操作ノブ(21)がフロントシート(図示略)等に当接して、フロントシートの表皮等を傷付けることはない。
【0058】
シートバック(3)を倒伏位置から起立させると、ストライカ(5)の第1係合部(51)がストライカ進入溝(71)に進入することにより、拘束レバー(10)は、第1のばね(17)の付勢力に抗して、アンロック位置からロック位置に変位し、また、フック(8)は、第4のばね(13)の付勢力に抗して、待機位置から強制的にアンロック操作位置付近まで回動した後、図2に示すように、第4のばね(13)の付勢力により、係合位置に回動してストライカ(5)の第1係合部(51)に第1係合溝(81)が係合する。これにより、シートバック(3)は、第1起立位置に保持されるとともに、操作ノブ(21)は、第2位置から第1位置に変位する。
【0059】
このとき、操作ノブ(21)とオープンレバー(9)とは、操作ノブ(21)の第2位置から第1位置への移動がオープンレバー(9)に伝達されないように、操作ノブ(21)の第1位置と第2位置との間の移動距離に相当する遊びを介して、互いに連係されているため、操作ノブ(21)が第2位置から第1位置に変位するときの移動が、オープンレバー(9)及びフック(8)に伝達されない。この結果、操作ノブ(21)が第1または第2位置に変位しても、フック(8)を常に係合位置(待機位置を含む)に保持することができる。
【0060】
また、シートバック(3)を第2起立位置に移動させる場合には、操作ノブ(21)をアンロック解除操作した状態で、ストライカ(5)の第1係合部(51)をさらにストライカ進入溝(71)に進入させ、図3に示すように、第1係合部(51)をフック(8)の第2係合溝(82)に、また第2係合部(52)を第1係合溝(81)にそれぞれ係合させる。
【0061】
なお、本発明は、上述の実施形態に特定されるものではなく、下記のような種々の変更は可能である。
(i)オープンレバー(9)及び/またはベルクランク(23)を廃止して、操作ノブ(21)とフック(8)とを、連結部材を介して互いに連結する。この場合には、操作ノブ(21)が第1位置から第2位置へ移動する間は、その移動がフック(8)へ伝達されないようにするとともに、操作ノブ(21)が第2位置から第3位置へ移動するときにその移動がフック(8)に伝達されるようにする。
【0062】
(ii)ウォーニングレバー(11)及び/またはベルクランク(23)を廃止して、操作ノブ(21)と拘束レバー(10)とを、連結部材を介して互いに連結する。この場合には、操作ノブ(21)の第1位置と第3位置との間の移動が拘束レバー(10)に伝達されないようにするとともに、拘束レバー(21)のロック位置とアンロック位置との間の移動が、操作ノブ(21)に伝達されるようにする。
【0063】
(iii)フック(8)と拘束レバー(10)との回動軸を同軸とする。この場合には、拘束レバー(10)の突部(102)をウォーニングレバー(11)の下縁に当接可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の適用した車両用リヤシートの斜視図である。
【図2】シートバックを第1起立位置に保持しているときのロック装置の側面図である。
【図3】シートバックを第2起立位置に保持しているときのロック装置の側面図である。
【図4】ストライカが離脱しているときのロック装置の側面図である。
【図5】不完全噛合状態にあるときのロック装置の側面図である。
【図6】アンロック操作時のロック装置の側面図である。
【符号の説明】
【0065】
(1)リヤシート
(2)シートクッション
(3)シートバック
(4)ロック装置(ロック手段)
(5)ストライカ
(6)操作装置(操作手段)
(7)ベースプレート
(7a)カバープレート
(8)フック
(9)オープンレバー
(10)拘束レバー(検知手段)
(11)ウォーニングレバー(検知手段)
(12)枢軸
(13)第4のばね
(14)枢軸
(15)第5のばね
(16)枢軸
(17)第1のばね
(18)枢軸
(19)第2のばね
(20)ガイド部材
(21)操作ノブ
(22)枢軸
(23)ベルクランク
(24)第1連結部材
(25)第2連結部材
(26)第3連結部材
(27)第3のばね
(51)第1係合部
(52)第2係合部
(71)ストライカ進入溝
(72)ストッパー
(81)第1係合溝
(82)第2係合溝
(83)傾斜縁
(84)第1突部
(85)第2突部
(91)アーム部
(101)検出部
(102)突部
(201)表示部
(231)第1長孔
(232)第2長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に設けられるストライカに係合し、シートバックを起立位置に拘束可能なフックを有するロック手段と、前記フックに連係され、その操作により前記フックを前記ストライカに係合した係合位置から離脱するアンロック操作位置に移動可能な操作ノブを有する操作手段とを備え、前記フックは、前記係合位置と前記ストライカに係合していない待機位置とをほぼ同一とした車両用シートロック装置において、
前記ロック手段は、前記フックに加え、さらに前記フックが待機位置にあるとき、アンロック状態に変位し、また、前記フックが係合位置にあるとき、前記ストライカに当接することにより、アンロック状態と異なる状態のロック状態に変位可能な検知手段を有し、
前記操作ノブは、前記検知手段の変位に応じて、前記検知手段のロック状態に対応する第1位置と、前記検知手段のアンロック状態に対応する第2位置との間を移動し得るように、前記検知手段に連係したことを特徴とする車両用シートロック装置。
【請求項2】
操作ノブは、第1位置から第2位置を通過した第3位置に押し込み操作可能であるとともに、前記第1位置と前記第2位置との間の移動距離に相当する遊びを介してフックに連係され、前記第3位置に移動することにより、前記フックをアンロック操作位置に移動させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両用シートロック装置。
【請求項3】
操作ノブと検知手段とを、該操作ノブにおける第1位置と第3位置との間の移動が前記検知手段に伝達されないように互いに連係したことを特徴とする請求項1または2記載の車両用シートロック装置。
【請求項4】
検知手段は、ストライカがフックから離脱しているとき、第1のばねの付勢力によりアンロック位置に保持され、また、前記フックが係合位置にあるとき、前記ストライカに当接することにより、前記第1のばねの付勢力に抗してロック位置に変位可能な拘束レバーと、操作ノブに連係され、かつ該拘束レバーが前記アンロック位置にあるとき、前記拘束レバーに当接することにより、前記操作ノブの第2位置に対応するアンロック位置に保持され、また、前記拘束レバーが前記アンロック位置から前記ロック位置へ変位することにより、第2のばねの付勢力をもって、前記操作ノブの第1位置に対応するロック位置に変位可能なウォーニングレバーとを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用シートロック装置。
【請求項5】
ウォーニングレバーは、フックが係合位置とアンロック操作位置との間の不完全噛合位置にあるとき、アンロック位置に保持されるように、前記フックに対して当接関係にあることを特徴とする請求項4記載の車両用シートロック装置。
【請求項6】
操作手段は、操作ノブに加え、さらにシートバックに固定されるとともに、前記操作ノブを摺動可能に収容する案内部材を有し、前記操作ノブが第1位置にあるとき、前記操作ノブの上面が前記案内部材に対してほぼ平坦になるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用シートロック装置。
【請求項7】
案内部材は、操作ノブが第1位置にあるとき前記操作ノブにより隠蔽され、また、前記操作ノブが第2位置にあるとき露呈する表示部を有することを特徴とする請求項6記載の車両用シートロック装置。
【請求項8】
操作ノブを、ロック手段の上部に枢支されるベルクランクを介して、フック及び検知手段に連係したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の車両用シートロック装置。
【請求項9】
フックは、ストライカの進入方向に沿って、前記ストライカに係合可能な複数の係合溝を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の車両用シートロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−199131(P2006−199131A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12699(P2005−12699)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】