説明

車両用シート

【課題】後部座席の乗員の足下を照らすことができるようにするとともに後部座席の乗員の足等が線状導光体に絡まないようにする。
【解決手段】車両用シート1は、座部2と、座部2の後部に立てられる背もたれ3と、を備える。背もたれ3は、金属製のフレーム31と、フレーム31の背面の両サイドから側面及び前面にかけて取り付けられたパッド32と、パッド32及びフレーム31の組み体の背面を覆ったシートバックカバー40と、を有する。シートバックカバー40の下縁に溝42が形成され、溝42に線状導光体70が嵌め込まれている。発光ユニット50の光が線状導光体70の端面72に入射すると、線状導光体70の周面が光る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に照明機能を有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用のシートのように、所定箇所を照明するために照明装置が設けられたシートがあり、照明装置の光源には電球が用いられている。照明範囲を広くするために、複数の電球を用いたものもある。また、電球の数を少なくしても、照明範囲を広くするために、光ファイバのような線状導光体を用いたものもある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術においては、線状導光体が後部座席の後ろから後部座席の側面、前部座席の側面を通って前部座席の下側まで配索されている。線状導光体が前部座席と後部座席との間において線状導光体の周面から光が出射すると、後部座席の乗員の足下を照らすことができる。
【特許文献1】実開平6−22082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、引用文献1に記載の技術では、線状導光体が前部座席と後部座席との間において床に敷設されているから、後部座席の乗員の足が線状導光体に絡んでしまう。一方、線状導光体に足などが絡まないようにするために、車室の天井等に線状導光体を設置すると、後部座席の乗員の足下を照らすことができない。
そこで、本発明の課題は、後部座席の乗員の足下を照らすことができるようにするとともに後部座席の乗員の足等が線状導光体に絡まないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、
座部と、
前記座部の後部に立てられる背もたれと、
前記背もたれに設けられた発光体と、
前記発光体に一端面が向き、当該一端面から入射した光を周面から出射する線状導光体と、を備え、
前記線状導光体が前記背もたれの背面下部において左右に配索されている、車両用シートが提供される。
【0005】
請求項2に係る発明によれば、
溝が前記背もたれの背面下部において左右に形成され、
前記線状導光体が前記溝に嵌め込まれている、請求項1に記載の車両用シートが提供される。
【0006】
請求項3に係る発明によれば、
前記溝が下方に開口している、請求項2に記載の車両用シートが提供される。
【0007】
請求項4に係る発明によれば、
前記背もたれが、着座者の背中を受けるパッドと、前記パッドの背面側を覆うシートバックカバーと、を備え、
前記溝が前記シートバックカバーの下縁に沿って左右に前記シートバックカバーに形成されている、請求項2又は3に記載の車両用シートが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、線状導光体が背もたれの背面下部において左右に配索されているので、発光体の光が線状導光体の端面に入射し、線状導光体の伝播する光が線状導光体の周面から出射すると、後部座席の乗員の足下を照らすことができる。線状導光体が左右に配索されているから、それによる照明範囲を左右に広くすることができるうえ、装飾的効果も向上する。
また、線状導光体が背もたれの背面下部に配索されているから、後部座席の乗員の足が線状導光体に絡むことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、車両用シート1を示した斜視図である。
図1に示すように、車両用シート1は、座部2と、座部2の後端部において起立した状態に設けられる背もたれ3と、背もたれ3の上端部に設けられたヘッドレスト4と、を備える。
【0011】
座部2は前後位置調整機構部及び高さ調整機構部を介して車両の車室のフロアに連結され、座部2の前後位置が位置調整機構によって調整され、更に座部2の高さが高さ調整機構部によって調整される。なお、このような位置調整機構部や高さ調整機構部としては、従来から公知のものを用いることができる。
【0012】
座部2の後端部には、リクライニング機構部を介して背もたれ3が連結されている。リクライニング機構は座部2に対して背もたれ3の角度を調整するものであり、リクライニング機構によって背もたれ3が後ろに倒れたり、前に立ち上がったりし、更にリクライニング機構が背もたれ3をロックする。
【0013】
図2は、図1に示されたII−IIに沿った横断面の矢視断面図であり、図3は、図1に示されたIII−IIIに沿った縦断面の矢視断面図であり、図4は、車両用シート1を示した概略側面図である。なお、図4は、車両用シート1を後部座席80とともに車室に設置した状態を示したものである。
【0014】
図1〜図4に示すように、この車両用シート1の背もたれ3においては、背もたれ3の骨格をなす金属製のフレーム31の背面の両サイドから側面及び前面にかけてパッド32が取り付けられ、このパッド32が表皮33によって被覆されている。また、フレーム31及びパッド32の組み体の背面にシートバックカバー40が取り付けられている。
【0015】
パッド32はウレタンフォーム材からなり、表皮33は布製、皮革製又は合成皮革製である。表皮33がパッド32と一体になるよう縫い付け等によって組み付けられている。着座者が車両用シート1に着座すると、着座者の背中が表皮33を介してパッド32に受けられる。
【0016】
シートバックカバー40は、樹脂成型品である。シートバックカバー40は、フレーム31及びパッド32の組み体の背面ほぼ全体にわたってこれらの組み体の後面を覆っている。シートバックカバー40の表面(後ろ側の面)には、ポケット41が設けられ、このポケット41が上を向いて開口している。
【0017】
シートバックカバー40の裏面(前側の面)であってその下部左側には、発光ユニット50がホルダ60を介して取り付けられている。発光ユニット50がホルダ60によって抱持されるようホルダ60に組み付けられ、ホルダ60がシートバックカバー40の裏面に組み付けられている。発光ユニット50は、その光の照射方向を左に向けてフロントカバー30に取り付けられている。発光ユニット50は、発光ダイオード、レーザーダイオード、冷陰極管、エレクトロルミネッセンス素子といった発光素子を有し、必要に応じて集光レンズ、反射鏡等の光学素子を有する。
【0018】
可撓性の線状導光体70の一端部71がホルダ60に組み付けられている。具体的には、ホルダ60に取付孔61が形成され、線状導光体70の一端部71がその取付孔61に差し込まれ、線状導光体70の端面72が発光ユニット50に向いている。これにより、発光ユニット50から発した光が線状導光体70の端面72に入射するよう、発光ユニット50と線状導光体70が配置されている。
【0019】
線状導光体70は、シートバックカバー40の裏側において下に曲げられ更に右に曲げられ、背もたれ3の背面下部においてシートバックカバー40の左端部から右端部にかけてシートバックカバー40の下縁に沿って配策されている。具体的には、図3に示すようにして、線状導光体70がシートバックカバー40に取り付けられている。即ち、シートバックカバー40の表面の下部には、シートバックカバー40の下縁に沿った溝42が形成されている。この溝42が左右に延設され、この溝42の開口が下斜め後ろに向いている。線状導光体70がこの溝42に嵌め込まれ、線状導光体70がこの溝42に沿って左右に敷設されている。なお、溝42の底の面が鏡面仕上げされていたり、その面に金属反射膜が成膜されていたりしてもよい。
【0020】
線状導光体70は、発光ユニット50から端面72に入射した光を他方の端面74に導く。線状導光体70の他方の端面74から光が出射してもよいし、その端面74が遮光材によって被覆されていてもよい。更に、線状導光体70内を伝播している光が線状導光体70の周面から出射する。例えば、線状導光体70は、線状のコアと、そのコアの周面を被覆した管状のクラッドとを有する光ファイバであり、コアを伝播している光が散乱して線状導光体70の周面(クラッドの周面)から出射するよう、クラッドとコアの境界面が凹凸に形成されていたり、コアに微粒子又は気泡が分散していたりする。なお、線状導光体70の周面全体から光が出射するのではなく、一部から出射するようになっていてもよい。線状導光体70の周面の一部から出射する場合には、その出射する部分が溝42の開口で露出するよう線状導光体70が溝42に嵌め込まれている。
【0021】
この車両用シート1においては、発光ユニット50が発光すると、光が線状導光体70の端面72に入射し、線状導光体70がその周面において光る。線状導光体70が溝42に嵌め込まれており、溝42が下斜め後ろに向かって開口しているので、車両用シート1の後方であって床に向かって照明される。その照明範囲は図4に示されたα領域となり、後部座席80に着座した乗員81の足下が照明される。
【0022】
この発光ユニット50の発光タイミングは、制御回路及び検知器によって決められる。具体的には、検知器が車両のドアに設けられ、ドアが開いたことが検知器によって検知されると、その旨の信号(例えば、ハイレベル)が検知器から制御回路に出力される。ドアが開放した旨の信号を受けた制御回路が発光ユニット50を発光させると、車両用シート1の周囲が照明される。そうすると、乗員が車両に乗り込む時に車両用シートの位置が明確になるので、乗員が車両用シート1に座りやすくなる。一方、ドアが閉じたことが検知器によって検知されると、その旨の信号(例えば、ローレベル)が検出器から制御回路に出力される。ドアが閉じた旨の信号を受けた制御回路が発光ユニット50を消灯させると、車両用シート1の周囲が暗くなる。なお、制御回路は、ドアが閉じた旨の信号を受けた後、所定期間経過後に発光ユニット50を消灯するものとしてもよい。また、制御回路及び検知器とは別に、手動スイッチによって発光ユニット50が発光・消灯するものとしてもよい。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、1つの発光ユニット50で車両用シート1の後方において左右に広い範囲を照明できるので、電力消費を低減することができる。
また、その照明範囲につき共通の1つの発光ユニット50を用いたので、その範囲内での位置によって照度がばらつくことを抑えることができる。
また、車両用シート1の背面下側において線状導光体70が線状に光るので、車両用シート1の審美性が向上する。
また、溝42が斜め下に開口しているので、車室の上の方が照らされるのではなく、床が照らされる。そのため、発光ユニット50及び線状導光体70等による照明が、間接照明として機能する。
また、線状導光体70が溝42に嵌め込まれているので、線状導光体70が撓まず、溝42に沿った線状の照明を確実に構成することができる。また、線状導光体70が撓まず、線状導光体70が溝42から外れにくいので、後部座席80の乗員81の足等が線状導光体70に絡まない。
また、溝42がシートバックカバー40の左右全体にわたって下斜め後ろに開口しているので、溝42の一部で光が遮られることがない。
また、この車両用シート1がリクライニング式であるので、背もたれ3の角度によって線状導光体70による照明範囲を調整することができる。
また、線状導光体70が背もたれ3の背面下部に設けられているから、線状導光体70が後部座席80の乗員81にとって邪魔にならない。特に、線状導光体70が乗員81の足などに絡まったり、乗員81が線状導光体70に足を引っかけたりしない。
また、線状導光体70が左右に配索されているから、後部座席80の乗員81の足等が左右の広い範囲で照らされる。
【0024】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上記実施形態では、車両用シート1が自動車の車室に取り付けられる車両用シートであるが、車両用シート1の用途は自動車用に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した実施形態における車両用シートを示した斜視図である。
【図2】図1に示されたII−II線に沿った面の矢視断面図である。
【図3】図1に示されたIII−III線に沿った面の矢視断面図である。
【図4】上記車両用シートを後部座席とともに示した側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用シート
2 座部
3 背もたれ
32 パッド
40 シートバックカバー
42 溝
50 発光ユニット
70 線状導光体
72、74 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、
前記座部の後部に立てられる背もたれと、
前記背もたれに設けられた発光体と、
前記発光体に一端面が向き、当該一端面から入射した光を周面から出射する線状導光体と、を備え、
前記線状導光体が前記背もたれの背面下部において左右に配索されている、車両用シート。
【請求項2】
溝が前記背もたれの背面下部において左右に形成され、
前記線状導光体が前記溝に嵌め込まれている、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記溝が下方に開口している、請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記背もたれが、着座者の背中を受けるパッドと、前記パッドの背面側を覆うシートバックカバーと、を備え、
前記溝が前記シートバックカバーの下縁に沿って左右に前記シートバックカバーに形成されている、請求項2又は3に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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