説明

車両用シート

【課題】 シートクッションとコンソールとの隙間からシートスライダ等が露見しないようにし、シートクッション周りの見栄えを向上可能にする。
【解決手段】 シートクッション1Aのシートトリムカバー5のコンソール6に対向する面側に、前記シートクッション1A下部に設置された少なくともシートスライダ12付近を覆う目隠しカバー21を取り付けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションとコンソールとの間の隙間を覆い見栄えを良くする車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両用シートは、シートクッションとシートバックとからなる(例えば、特許文献1参照)。これらのうちシートクッションは、シートクッションフレームと、発泡ウレタンなどからなるパッド部と、このパッド部等の外側を被覆するシートトリムカバーと、を備えて構成される。
【0003】
図4はかかるシートクッションがフロントシートである場合を示す。このシートクッション1の基部には、背もたれとしてのシートバック2が傾動操作可能に連設されている。このシートバック2の上部にはヘッドレスト7が取り付けられている。シートクッション1は、図5に示すように、シートクッション1の骨組みであるシートクッションフレーム3と、発泡ウレタンなどからなるパッド部4と、パッド部4を被覆する表皮としてのシートトリムカバー5とを備えている。
シートクッション1の左側(図4では、紙面に向かって下方。図5では、右方)
には、コンソール6が配置されている。
【0004】
シートクッションフレーム3は一部がパッド部4内に埋設され、垂直下方に延びて下部3aがパッド部4の下端から外に突出している。このシートクッションフレーム3の下端部には、支持ワイヤ8を介してフック係止用ワイヤ9が水平方向に支持されている。このフック係止用ワイヤ9と支持ワイヤ8は、同一物が採用されている。
シートトリムカバー5は、シートクッション1の側部側においてパッド部4の下端より下方に長く延設されている。この延設端部5aの2箇所には、J字形フック部材10がその基部で縫い付けられている。符号10aはその縫合部である。これらのJ字形フック部材10はフック係止用ワイヤ9の2箇所にそれぞれ引っ掛けるようにして係止されている。このため、シートトリムカバー5はシートクッション1の幅方向に張力が付与されている。
【0005】
また、パッド部4には、略L字状鋼板からなる支持フレーム11の上端部が埋設され、この支持フレーム11の下端はパッド部4の下端より下方に突出して、シートスライダ12の可動部12aに固着され、前後移動自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−13699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の車両用シートにあっては、シートクッション1を前後方向に移動可能に支持するシートスライダ12およびその取り付け部品等が、シートクッション1とコンソール6との隙間(間隙)から露見し、図5に示すように上方から見えてしまい、従って車室空間の美観を損ね好ましくない。特に乗用車では高級感のイメージを害する。
本発明は、前記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シートクッションとコンソールとの隙間からシートスライダ等が露見しないようにし、以ってシートクッション周りの見栄えを向上することができる車両用シートを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的達成のために、本発明に係る車両用シートは、シートクッションのシートトリムカバーのコンソールに対向する面側に、前記シートクッションとコンソールとの隙間を覆う目隠しカバーが取り付けられていることを特徴とする。
この構成により、目隠しカバーはシートクッションおよびコンソール間の隙間を通してシートスライダおよびその周辺を乗車者や運転者等の視界から遮ることとなり、従ってシーとクッション周りの見栄えを良くし、車室空間の美観を向上することができる。
【0009】
また、本発明に係る車両用シートの前記目隠しカバーは、一端がシートクッションのシートトリムカバーのコンソールに対向する面側の中間部に取り付けられ、他端にフック部材が取り付けられ、このフック部材がシートクッションのフレームに取り付けられた被係止部材に着脱可能に装着され、シートクッションとコンソールとの隙間を覆うことを特徴とする。
この構成により、目隠しカバーに取り付けられたフック部材をフレームに取り付けられた被係止部材に装着するだけで、シートクッションとコンソールとの隙間を覆うことができる。また、目隠しカバーは、一端がシートクッションのシートトリムカバーに取り付けられ、他端にフック部材が取り付けられ、このフック部材をシートクッションのフレームに取り付けられた被係止部材に着脱可能に装着しているので、シートクッションと共に移動し、シートクッションを移動させても、いずれの移動位置でもシートクッションとコンソールとの間の隙間を目隠し可能となる。
【0010】
また、本発明に係る車両用シートは、目隠しカバーが、所定形状に湾曲可能であって、所定形状に湾曲形成すると該所定形状を保持可能な剛性を有するシート材からなることを特徴とする。
この構成により、目隠しカバーをシートクッションとコンソールとの間において、例えば、ドーム形に湾曲してシートクッションとコンソールの間を覆うと、このドーム形を保持して目隠しを持続させる。
なお、目隠しカバーは、シートトリムカバーと同様な色彩、模様等とすると、目隠しカバーとシートトリムカバーとが一体感をなし、シートクッション全体に高級感を付与することができるので好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートクッションとコンソールとの隙間からシートスライダ等が露見しないようにし、以ってシートクッション周りの見栄えを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用シートの実施形態を示す要部の縦断面図である。
【図2】図1における目隠しカバーによる目隠し状況を示す説明図である。
【図3】図1における目隠しカバーのフック係止用ワイヤに対する係止状況を示す説明図である。
【図4】従来の一般的な車両用シートの平面図である。
【図5】図4における車両用シートの一部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
なお、本実施形態では、車両用シートのシートクッションがコンソールに隣接する運転席側のフロントシートである場合を例にして説明する。本実施形態の車両用シートは、図4に示す従来のものと同様である。即ち、図1に示すように、シートクッション1Aと図4に示したシートバック2とからなる。
【0014】
これらのうちシートクッション1Aは、シートクッションフレーム3と、発泡ウレタンなどからなるパッド部4と、このパッド部4の外側を被覆するシートトリムカバー5とを備えて構成される。また、シートクッション1Aの側方(図2では、右方)には、コンソール6が配置されている。
【0015】
シートクッションフレーム3は一部がパッド部4内に埋設され、垂直下方に延びて下部3aがパッド部4の下端から外に突出している。このシートクッションフレーム3の下端部には、支持ワイヤ8を介してフック係止用ワイヤ9が水平方向に支持されている。このフック係止用ワイヤ9と支持ワイヤ8は、同じワイヤを採用するのが部品点数が少なくなるので好ましい。。
【0016】
また、シートトリムカバー5は、コンソール6に対向する側がパッド部4の下端より下方に長く延設されている。この延設端5aには、J字形フック部材10の基部が縫い付けられている。符号10aはその縫合部である。これらのJ字形フック部材10はフック係止用ワイヤ9にそれぞれ引っ掛けるようにして係止され、シートトリムカバー5に対しシートクッション1Aの幅方向に張力を付与している。
【0017】
パッド部4には、略L字状鋼板からなる支持フレーム11の上端部が装着されている。この支持フレーム11の下端はパッド部4の下端より下方に突出して、シートスライダ12の可動部12a上に固定されている。これにより支持フレーム11は車体の前後方向にスライド自在となっている。
【0018】
また、シートクッション1A側方の、シートトリムカバー5の下端から上方の所定高さ位置に、目隠しカバー21の一端が縫い付けられている。符号21aはその縫合部を示す。この目隠しカバー21は、所定形状に湾曲可能であって、所定形状に湾曲形成すると所定形状を保持する剛性を備えるのが好ましい。それは目隠しカバー21をシートクッション1Aとコンソール6との間において、例えば、ドーム形に湾曲してシートクッション1Aとコンソール6との間を覆うと、このドーム形を保持して目隠しを持続するからである。目隠しカバー21としては、例えば、カーペットのようにある程度の剛性(弾性および腰の強さ)を持つシート、フィルム、織布、不織布などを素材として構成される。従って、この目隠しカバー21は自重や気温などの周辺環境の影響を受けることなく、半永久的に前記剛性(弾性および腰の強さ)で所定形状を維持する。
【0019】
この目隠しカバー21は、シートクッション1Aの移動にも拘わらずフロントシート1とコンソール6との隙間を後述のように塞いで、シートスライダ12や部品等を覆う(隠す)ことができるサイズである。なお、このシートクッション1Aは、図2に示すように、湾曲させた目隠しカバー21が、コンソール6に僅か接触した状態で、または僅か離れた状態にて所定のシートポジションに移動可能となっている。これにより、コンソール6との接触による異音の発生や接触部の磨耗を回避できる。
【0020】
この目隠しカバー21は、前述のように弾性を有するため、この目隠しカバー21の下方に喫煙用ライタ、指輪などの小物、小銭などが落下した場合でも、その目隠しカバー21を手で除けることにより、容易に拾い上げることができる。
【0021】
目隠しカバー21の他端中央部には、J字形フック部材22の基部が縫い付けられている。符号21bはその縫合部を示す。このJ字形フック部材22は前述のJ字形フック部材10と同一形状、サイズであってもよい。このJ字形フック部材22のフック部分はフック係止用ワイヤ9に引っ掛けるようにして係止できるサイズ、形状をなす。
【0022】
従って、この目隠しカバー21を、縫合部21a付近を中心として、図1に示す状態から図2に示す状態に湾曲させ、J字形フック部材22のフック部をフック係止用ワイヤ9に係止させることができる。このとき、このJ字形フック部材22のフック部は、既にフック係止用ワイヤ9に係止されている2つのフック部材10間のフック係止用ワイヤ9に係止される。
【0023】
この場合において、目隠しカバー21は前述のように弾性を有し、円弧状に湾曲させた場合に、湾曲部分21cが下部のシートスライダ12付近を隠すようにシートクッション1Aとコンソール6との間隙Gを塞ぐことになる。従って、この目隠しカバー21は見栄えがよくないシートスライダ12付近を乗員や運転者等の視界から遮ることとなる。
【0024】
この場合において、目隠しカバー21自体の色彩、模様等のデザインをシートトリムカバー5と同一とすることにより、デザイン上の統一性が得られ、シートクッション1A全体の落ち着き、高級感を具現できる。
【0025】
以上のように、本実施形態の車両用シートは、シートトリムカバー5のコンソール6に対向する面側に、前記シートクッション1A下部に設置された少なくともシートスライド12付近を覆う目隠しカバー21を取り付けた構成とした。
これによって、この目隠しカバー21は上方からシートクッション1Aおよびコンソール6間の隙間Gを通してシートスライダ12およびその周辺を乗員や運転者等の視界から遮ることとなり、これによりシートクッション1A周りの見栄えを向上でき、結果として車室空間の美観を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、目隠しカバーによってシートクッションおよびコンソール間の隙間を通して運転者や乗員が見栄えの悪いシートスライダ等が看取できないようにし、車室空間の美観を損ねることを回避できるという効果を有し、シートクッションとコンソールとの間の見栄えを良くする車両用シート等に有用である。
【符号の説明】
【0027】
1A シートクッション
3 シートクッションフレーム
4 パッド部
5 シートトリムカバー
6 コンソール
8 支持ワイヤ
9 フック係止用ワイヤ
10 J字形フック部材
11 支持フレーム
12 シートスライダ
21 目隠しカバー
21c 湾曲部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションのシートトリムカバーのコンソールに対向する面側に、前記シートクッションとコンソールとの隙間を覆う目隠しカバーが取り付けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記目隠しカバーは、一端がシートクッションのシートトリムカバーのコンソールに対向する面側の中間部に取り付けられ、他端にフック部材が取り付けられ、このフック部材がシートクッションのフレームに取り付けられた被係止部材に着脱可能に装着され、シートクッションとコンソールとの隙間を覆うことを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記目隠しカバーが、所定形状に湾曲可能であって、所定形状とすると該所定形状を保持可能な剛性を有するシート材からなることを特徴とする請求項1または2記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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