説明

車両用シート

【課題】シートバック部を渦巻きばねによって前倒しするようにした車両用シートにおいて、その製造費を低減する。
【解決手段】シートフレームのシート側サイドフレーム部21の後端部には、回転軸線L上をシートバックフレームのバック側サイドフレーム部31に向かって突出する突出部21aを形成する。突出部21aの外周部には、その一部を内側に向かって凹ませることによって係止凹部21cを形成する。この係止凹部21cには、渦巻きばね4の内側の端部41の先端部を係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートバックフレームを渦巻きばねにより前倒し回転するように付勢した前倒しタイプの車両シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リクライニングシート等の前倒し可能な車両用シートは、下記特許文献1に記載されているように、シートフレーム、シートバックフレーム及び渦巻きばねを有している。シートフレーム及びシートバックフレームの各一側部には、シート側サイドフレーム部及びバック側サイドフレーム部がそれぞれ設けられている。シート側サイドフレームの後端部には、バック側サイドフレーム部の下端部が回転可能に支持されている。これにより、シートバックフレームがシートフレームに前倒し回転可能に支持されている。
【0003】
シート側サイドフレーム部の後端部とバック側サイドフレーム部の下端部との対向面間には、渦巻きばねが配置されている。この渦巻きばねによってバック側サイドフレームが前方へ回転するように回転付勢されている。すなわち、シート側サイドフレーム部の後端部には、保持部材が固定されている。この保持部材は、バック側サイドフレーム部側に突出する保持壁部を有している。保持壁部は、渦巻きばねに外挿されている。渦巻きばねの内側の端部は、保持壁部に係止されており、外側の端部は、バック側サイドフレーム部に係止されている。そして、渦巻きばねは、バック側サイドフレームを前方へ回転するように回転付勢し、ひいてはシートバックフレームを前倒し回転するように回転付勢している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−185521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の車両用シートにおいては、渦巻きばねの内側の端部をシート側サイドフレーム部に係止するために、シート側サイドフレーム部にこれと別体の保持部材が設けられている。このため、保持部材の分だけ部品点数が増えるとともに、保持部材をシート側サイドフレーム部に取り付けるための手間が増える。この結果、製造費が嵩むという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、この発明は、 左右方向の一側部に板状をなすシート側サイドフレーム部を有するシートフレームと、上記シート側サイドフレーム部と同一側に配置されたバック側サイドフレーム部を有し、このバック側サイドフレームの下端部が上記シート側サイドフレーム部の後端部に左右方向に延びる水平な回転軸線を中心として回転可能に支持されたシートバックフレームと、上記シート側サイドフレーム部の後端部と上記バック側サイドフレーム部の下端部との間に配置された渦巻きばねとを備え、上記渦巻きばねの内側の端部が上記シート側サイドフレーム部に係止され、上記渦巻きばねの外側の端部が上記バック側サイドフレーム部に係止され、上記渦巻きばねにより上記バック側サイドフレーム部が前倒し回転するように回転付勢された車両用シートにおいて、上記シート側サイドフレーム部の上記回転軸線を含む部分をプレス成形することにより、上記シート側サイドフレーム部に上記回転軸線上を上記バック側サイドフレーム部に向かって突出する突出部が形成され、この突出部が上記渦巻きばねの内周部に挿入され、上記渦巻きばねの内側の端部が上記突出部の周壁部に形成された係止凹部に上記回転軸線を中心とする周方向へ回転不能に係止させられていることを特徴としている。
この場合、上記渦巻きばねの内側の端部が外側から内側へ向かって延び、この内側の端部の先端部が上記係止凹部に係止されていることが望ましい。
上記突出部の周壁部の上記係止凹部が形成された部分と周方向において異なる部分に上記回転軸線を中心として円弧状に延びる円弧部が形成され、この円弧部に上記渦巻きばねの内周部が押圧接触させられるとともに、上記渦巻きばねの内側の端部の先端部が上記係止凹部の底面に押圧接触させられ、それによって上記渦巻きばねが位置決めされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記構成を有するこの発明によれば、渦巻きばねの内側の端部が係止される突出部がシート側サイドフレーム部に一体に形成されているので、従来の車両用シートに比して保持部材の分だけ部品点数を減らすことができるとともに、保持部材の取り付けに要する手間を省くことができる。したがって、製造費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態を示す一部省略側面図である。
【図2】図2は、この発明の要部を示す図であって、図3の一部省略Y矢視図である。
【図3】図3は、図2のX−X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る車両用シート1を示す。この車両用シート1は、シート部2及びシートバック部3を備えている。シート部2は、乗員が腰をかけるためのものであり、シートフレーム(後述するシート側サイドフレーム部21のみ図示)と、このシートフレームに支持されたシートクッション22とを有している。シートバック部3は、シート部2に腰掛けた乗員の背中を支えるためのものであり、シートバックフレーム(後述するバック側サイドフレーム部31のみ図示)と、このシートバックフレームに支持されたシートバッククッション32とを有している。シートバック部3の下端部は、後述するように、シート部2の後端部に左右方向へ水平に延びる回転軸線Lを中心として回転可能に支持されている。
【0010】
シートフレームの左右方向の両側部には、シート側サイドフレーム部21がそれぞれ設けられている。シート側サイドフレーム部21は、金属製の板材からなるものであり、この実施の形態ではプレス成形されている。シート側サイドフレーム部21は、その長手方向を前後方向に、幅方向を上下方向に、厚さ方向を左右方向に向けて配置されている。左右の両側部に配置された二つのシート側サイドフレーム部21,21どうしは、一体に挙動するよう、シートフレームを構成する他の部材(図示せず)によって互いに連結固定されている。
【0011】
シートバックフレームの左右の両側部には、バック側サイドフレーム部31がそれぞれ設けられている。バック側サイドフレーム部31は、金属製の板材からなるものであり、この実施の形態ではプレス成形されている。バック側サイドフレーム31は、その長手方向を上下方向に、幅方向を前後方向に、厚さ方向を左右方向に向けて配置されている。左右の両側部に配置された二つのバック側サイドフレーム部31,31どうしは、一体に挙動するよう、シートバックフレームを構成する他の部材(図示せず)によって互いに連結固定されている。特に、この実施の形態では、バック側サイドフレーム部31,31の下端部の対向面間にシートバックフレームの一部を構成する連結筒33がその軸線を回転軸線Lと一致させた状態で配置されており、連結筒33の両端部は、バック側サイドフレーム部31,31の下端部の内側の面(バック側サイドフレーム部31,31の対向面)に溶接等によってそれぞれ固定されている。
【0012】
左右方向において同一側に配置されたシート側サイドフレーム部21とバック側サイドフレーム部31とは、バック側サイドフレーム31部がシート側サイドフレーム21の内側に位置するように配置されている。そして、シート側サイドフレーム部21の後端部とバック側サイドフレーム部31の下端部とは、左右方向に所定距離だけ離間して対向配置されている。シート側サイドフレーム部21の後端部とバック側サイドフレーム部31の下端部との互いの対向面間には、渦巻きばね4が設けられている。この渦巻きばね4は、渦巻きの中心を回転軸線Lとほぼ一致させた状態で配置されている。
【0013】
シート側サイドフレーム部21の後端部には、回転軸線L上をバック側サイドフレーム部31に向かって突出する突出部21aが形成されている。この突出部21aは、シート側サイドフレーム部21の回転軸線Lを含む所定の範囲の部分をプレス成形することによって形成されている。突出部21aの先端面は、バック側サイドフレーム部31の外側を向く面(シート側サイドフレーム部21との対向面)の下端部に摺動可能に接触させられている。互いに接触するバック側サイドフレーム部31の下端部及び突出部21aの先端部は、軸線を回転軸線Lと一致させた枢軸5によって貫通されている。この結果、バック側サイドフレーム部31の下端部が、シート側サイドフレーム部21の後端部に回転軸線Lを中心として回転可能に支持されている。
【0014】
突出部21aの周壁部には、円弧部21b及び係止凹部21cが形成されている。円弧部21bは、回転軸線Lを中心として円弧状に延びており、略半円の長さを有している。係止凹部21cは、円弧部21bと周方向において異なる位置に配置されており、円弧部21bに向かって凹んでいる。
【0015】
突出部21aは、渦巻きばね4の内部に挿入されている。円弧部21bの周方向の一部が渦巻きばね4の内周面に押圧接触している。渦巻きばね4の内側の端部41は、内側に向かって屈曲され、外側から内側に向かって延びている。内側の端部41の先端部41は、係止凹部21cの底面に押圧接触させられている。これにより、内側の端部41が突出部21aに回転軸線Lを中心とする周方向へ移動不能に係止されている。しかも、内側の端部41は、係止凹部21cの底面に押圧接触し、渦巻きばね4の内周面のうちの円弧部21bとの接触箇所と協働して突出部21aを挟持している。これにより、渦巻きばね4が、その渦巻きの中心を回転軸線Lとほぼ一致させた状態で位置決めされている。
【0016】
渦巻きばね4の外側の端部42は、屈曲されており、バック側サイドフレーム部31の下端部に設けられた係止軸6に係止されている。渦巻きばね4は、シートバック部3が前倒し回転するように、つまり図2において反時計方向へ回転するように、バック側サイドフレーム部31を係止軸6を介して常時回転付勢している。なお、渦巻きばね4は、シートバック部3が前倒し回転すると、渦巻きばね4の半径が小さくなるように弾性変形し、シートバック部3が後方へ回転すると、渦巻きばね4の半径が大きくなるように、その渦巻き方向が定められている。渦巻きばね4の渦巻き方向は、この実施の形態と逆にしてもよい。
【0017】
上記構成の車両用シート1においては、シート側サイドフレーム部21に突出部21aを一体に設け、この突出部21aの係止凹部21cに渦巻きばね4の内側の端部41を係止しているから、シート側サイドフレーム部21には渦巻きばね4の内側の端部41を係止するための部材を別途設ける必要がない。したがって、その部材の分だけ部品点数を減らすことができるとともに、その部品をシート側サイドフレーム部21に取り付けるための手間を省くことができる。よって、車両用シート1の製造費を低減することができる。
【0018】
また、渦巻きばね4の内側の端部41については、仮にその屈曲部41aを突出部21aに引っ掛けて係止しようとする場合には、突出部21aの外周部に鋭角三角形形状をなす凸部を形成し、その凸部に屈曲部41aを係止することになるが、そのような凸部を突出部21aの外周部にプレス成形によって形成することは実際にはほとんど不可能である。そこで、突出部21aの外周部に切欠き部を形成し、この切欠き部に臨む突出部21aの周壁部に屈曲部41aを係止することになる。ところが、突出部21aに切欠き部を形成すると、突出部21aの強度が低下し、ひいてはシート側サイドフレーム部21の強度が低下してしまう。
【0019】
この点、この車両用シート1においては、突出部21aの外周部を径方向内側に凹ませて係止凹部21cを形成するだけであり、突出部21aの周壁部に切欠き部が形成されていない。したがって、突出部21aの強度が低下することがない。よって、シート側サイドフレーム21の強度が低下することもない。
【0020】
さらに、渦巻きばね4の内周面のうちの円弧部21bと接触する部分と、係止凹部21cの底面に接触する内側の端部41とによって突出部21aを挟持することによって渦巻きばね4が位置決めされている。したがって、車両の運転中の振動により、渦巻きばね4ががたついて騒音が発生することを防止することができる。
【0021】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、各種の変形例を採用可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、シート側サイドフレーム部21をシートフレーム2の左右両側部に設けるとともに、バック側サイドフレーム部31をシートバックフレーム3の左右両側部に設けているが、シート側サイドフレーム部21及びバック側サイドフレーム部31を左右いずれか一方の側部にのみ設けてもよい。勿論、その場合には、渦巻きばね4が一つだけ用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、リクライニングシートや前倒し式シート等のシートバックを渦巻きばねによって前倒しするように回転付勢した車両用シートに利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
L 回転軸線
1 車両用シート
2 シート部
3 シートバック部
4 渦巻きばね
21 シート側サイドフレーム部
21a 突出部
21b 円弧部
21c 係止凹部
31 バック側サイドフレーム部
41 (渦巻きばねの)内側の端部
42 (渦巻きばねの)外側の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向の一側部に板状をなすシート側サイドフレーム部を有するシートフレームと、上記シート側サイドフレーム部と同一側に配置されたバック側サイドフレーム部を有し、このバック側サイドフレームの下端部が上記シート側サイドフレーム部の後端部に左右方向に延びる水平な回転軸線を中心として回転可能に支持されたシートバックフレームと、上記シート側サイドフレーム部の後端部と上記バック側サイドフレーム部の下端部との間に配置された渦巻きばねとを備え、上記渦巻きばねの内側の端部が上記シート側サイドフレーム部に係止され、上記渦巻きばねの外側の端部が上記バック側サイドフレーム部に係止され、上記渦巻きばねにより上記バック側サイドフレーム部が前倒し回転するように回転付勢された車両用シートにおいて、
上記シート側サイドフレーム部の上記回転軸線を含む部分をプレス成形することにより、上記シート側サイドフレーム部に上記回転軸線上を上記バック側サイドフレーム部に向かって突出する突出部が形成され、この突出部が上記渦巻きばねの内周部に挿入され、上記渦巻きばねの内側の端部が上記突出部の周壁部に形成された係止凹部に上記回転軸線を中心とする周方向へ回転不能に係止させられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
上記渦巻きばねの内側の端部が外側から内側へ向かって延びており、この内側の端部の先端部が上記係止凹部に係止されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
上記突出部の周壁部の上記係止凹部が形成された部分と周方向において異なる部分に上記回転軸線を中心として円弧状に延びる円弧部が形成され、この円弧部に上記渦巻きばねの内周部が押圧接触させられるとともに、上記渦巻きばねの内側の端部の先端部が上記係止凹部の底面に押圧接触させられ、それによって上記渦巻きばねが位置決めされていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−20654(P2011−20654A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169864(P2009−169864)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】