説明

車両用シート

【課題】シートバックの背面に、シートバック背面の全体を形成するバックボードを備えた車両用シートにおいて、シートバックの後方側のより広い範囲を照射すること。
【解決手段】シートバック20の背面に、シートバック20背面の全体を形成するバックボード22を備えた車両用シート10であって、シートバック20の内部には、この内部からバックボード22全体を照射することのできるように配設された照明装置80が設けられており、バックボード22は少なくともバックボード22の外形輪郭部位が透過可能に形成されており照明装置80からの照射光がシート外部に透過される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートバックの背面に、該シートバック背面の全体を形成するバックボードを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1において、着座者の背凭れとなるシートバックに照明装置を備える車両用シートが知られている。この車両用シートは、ルーフライニングのルームライトでは車室内に十分な照明を当てることができないといった問題に鑑み、シートバックの後方を部分照射することができる照明装置を備えるものである。この車両用シートのシートバックは、シートバックの骨格となるシートフレームが、左右を縦通するサイドフレームと、このサイドフレームの上端を連結する連結フレームとが、一体的に形成されている。このシートフレームに対し、車両前方側がシートパッドで覆われ、車両後方側がバックボードで覆われている。ここで、このシートフレームの上端の連結フレームの下方側近傍は、シートパッドが設けられておらず前後方向に貫通する開口部が形成されている。この連結フレームの開口部形成位置には、下方に向けてライト(光源)が一体的に埋め込まれ、かかる車両用シートの後方側に乗員する乗員の手元を照射する照明装置として構成されている。また、バックボードの下端部近傍にはシートバックの下端部から後方側に掛けてライト(光源)が一体的に埋め込まれ、かかる車両用シートの後方側に乗員する乗員の足元を照射する照明装置が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−44452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の車両用シートは、かかる車両用シートの後方側の後部座席に着座する着座者の手元、足元を部分照射する照明装置としての光源を有しているにすぎない。また、一般にシートバックは後方に傾斜した姿勢とされているためシートバックの下方部は影となって暗く、夜間のような暗い状況下に着座者が乗り込む際、依然として車両用シート後方側の全体は把握しにくい。そのため、前席と後席の間の足を置く場所が確認し難くかったり、シート上に物がおかれた状態が確認しにくいため、そのまま乗り込んでしまうといった改善点を有していた。
【0005】
而して、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シートバックの背面に、該シートバック背面の全体を形成するバックボードを備えた車両用シートにおいて、シートバックの後方側のより広い範囲を照射することができる車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、シートバックの背面に、該シートバック背面の全体を形成するバックボードを備えた車両用シートであって、前記シートバックの内部には該内部から前記バックボード全体を照射することのできるように配設された光源が設けられており、前記バックボードは少なくとも該バックボードの外形輪郭部位が透過可能に形成されており前記光源からの照射光がシート外部に透過されることを特徴とする。
【0007】
この第1の発明によれば、バックボードは少なくともこのバックボードの外形輪郭部位が透過可能に形成されており、光源からの照射光がシート外部に透過される構成である。このバックボードは、シートバック背面の全体に形成されているため、このバックボードの外形輪郭部位から透過された照射光は、シートバックの後方側のより広い範囲を照射することができる。また、バックボードの外形輪郭部位が透過可能に形成することによって、意匠性の向上を図ることができる。
【0008】
次に、第2の発明は、第1の発明において、前記バックボードの全面が透過可能に形成されており前記光源からの照射光がバックボード全面からシート外部に透過されることを特徴とする。
【0009】
この第2の発明によれば、バックボードの全面が透過可能に形成されており、光源からの照射光がバックボード全面からシート外部に透過される構成であるため、より一層シートバックの後方側の広い範囲を照射することができる。
【0010】
次に、第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記バックボードの透過可能に形成された部位の表面には、光触媒が塗布されていることを特徴とする。
【0011】
この第3の発明によれば、バックボードの透過可能に形成された部位の表面には、光触媒が塗布されている。この光触媒にシートバックの照射光が照射されることにより、車両室内における空気の浄化、抗菌、脱臭、防汚を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記各発明の手段をとることにより次の効果を得ることができる。
先ず、上記第1の発明の車両用シートによれば、シートバックの後方側のより広い範囲を照射することができる。また、意匠性の向上を図ることができる。
次に、上記第2の発明の車両用シートによれば、より一層シートバックの後方側の広い範囲を照射することができる。
次に、上記第3の発明の車両用シートによれば、車両室内における空気の浄化、抗菌、脱臭、防汚を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例1に係る車両用シートを前方側から示した全体斜視図である。
【図2】本実施例1に係る車両用シートを後方側から示した全体斜視図である。
【図3】本実施例1に係る車両用シートの背面図である。
【図4】本実施例1に係る車両用シートの左側面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1の車両用シート10の構成について、図1から図6を用いて説明する。
なお、本実施例の車両用シートにおいては、車両用シートの背面側に設けられた照明装置について特徴を有している。その他の部分については特に変更を要しないのでその説明及び図示は省略することがある。また図1から図6の各図は、シートバック20を傾倒可能とするリクライニング装置の構成については、図示を省略している。なお、図1から図4の図示においては、バックボード22、ロアボード32、サイドボード34の表面の粗密構造を一部分のみの図示であり全体の図示を省略しているが、粗密構造の構成は、バックボード22、ロアボード32、サイドボード34の表面全体が同様に構成されているものである。また、図1、図2、図4においては、照明装置80の図示を省略している。また、各図において、矢印で示すFWD、UPRは車両用シートの前方、上方を示している。
【0016】
本実施例の車両用シートは、車両の1列目に配設される運転席又は助手席、2列目や3列目に配設される後部座席の何れにおいても採用されるものである。なお、本実施例の車両用シート10は、車両の前部座席の運転席における構成を示したものである。図1から図4に図示されるように、車両用シート10は、車両に設置されるものであって、着座者の背もたれとなるシートバック20が、その下端の両側部に介装されたリクライニング装置(図示省略)によって、着座者の座面となるシートクッション30と連結されている。また、着座者の頭もたれとなるヘッドレスト40は、シートバック20と一体に形成されている。
【0017】
この車両用シート10のシートバック20、シートクッション30及びヘッドレスト40の骨格として構成されるフレームFは、図示を省略するが従来のフレーム構造と同様に金属板部材及び金属パイプが適宜に折曲加工されて連結されて構成されている。また、図5及び図6に図示されるように、シートバック20(図6参照)とシートクッション30(図5参照)及びヘッドレスト40(図示省略)の各フレームFには、発泡ウレタン等の弾性材料によって構成されたシートパッド50が被せ付けられている。また、図1に図示されるように、本実施例におけるシートパッド50は、シートバック20からシートクッション30まで連続して一体に形成されており、ヘッドレスト40は、シートバック20の上方部において、前面側に配設された構成とされている。なお、シートバック20、シートクッション30、ヘッドレスト40が連続して一体に形成されたものではなく別体構成のものでもよい。また、シートパッド50の裏面は、シートバック20、シートクッション30のフレームFの構成である支持ばね部材Fsにより支持されている。また、シートパッド50の表面は、シートバック20の表面(背凭れ面)の外形形状として形成されて表皮60で被覆されている。この表皮60は、シートパッド50の外形形状に沿うことができるように立体的に縫製されている。
【0018】
次に車両用シート10のシートバック20の背面側に配置構成されるバックボード22と、シートクッション30の背面側に配置構成されるロアボード32と、側面側に配置構成されるサイドボード34と、について説明する。図1から図4に図示されるように、このバックボード22は、シートバック20の背面側全体を覆うように配設形成されており、シートバック20の背面側の意匠面を構成している。なお、バックボード22の剛性は、シートバック20の背面側からの多少の衝撃、例えば、後席者がシートバック20の背面側に膝をぶつけた程度の衝撃によっては変形しない剛性とされており、意匠形状を確保している。同様に、ロアボード32は、シートクッション30の背面側を覆うように配設形成されており、サイドボード34においても、シートクッション30の側面側を覆うように配設形成されて意匠面として構成されている。
なお、図2から図4に図示されるように、ロアボード32は、車両用シート10の後部に配置構成される後部座席に着座する着座者の足を置けるようにシートクッション30の背面側から前方に向かって窪んだ凹部が形成されている。
【0019】
図1から図4に図示されるように、このバックボード22、ロアボード32、サイドボード34は、後述するシートバック20とシートクッション30に内装される照明装置80の照射光が透過可能な透過性を有している。バックボード22は、全面がメッシュ状の合成樹脂素材によって形成されており、孔が全面に形成された粗密構造とされている。換言すれば、繭構造として形成されている。同様に、ロアボード32、サイドボード34においても同素材によって繭構造で構成されている。なお、バックボード22、ロアボード32、サイドボード34の透過性の構成は、繭構造に限られず、合成樹脂に含有する色素を調整して半透明又は乳白色にする構成であっても良い。形状が保持可能な軟質性の合成樹脂素材によって形成される構成のものでも良い。また、バックボード22、ロアボード32、サイドボード34の表面には、全面に光触媒として二酸化チタンが塗布されている。
この光触媒は、光が当たると、その表面で酸化力が発生し、接触してくる有機化合物や細菌などの有害物質を除去する働きをするものである。
また、図1及び図2に図示されるように、本実施例において上述したシートパッド50及び表皮60は、車両用シート10の幅方向における中央部が帯状に切りかかれて貫通したスリット部70が形成されている。このスリット部70においては、バックボード22と同様の合成樹脂素材の板が配置構成されて、シートバック20とシートクッション30に内装される照明装置80の照射光が透過可能な透過性を有している。
【0020】
次に、シートバック20とシートクッション30の内部に内装される照明装置80について説明する。
図3、図5及び図6に図示されるように、このシートバック20とシートクッション30の内部には、その内部からバックボード22、ロアボード32、サイドボード34の全体を照射することのできるように配設された光源が配置構成されている。本実施例において、光源として、発光ダイオード82が選択されている。図5及び図6に図示されるように、シートバック20とシートクッション30の各フレームF間には、板状部材からなる複数の支持ブラケット84が、フレームF間を架け渡すように取り付けられている。そして、この支持ブラケット84に所定間隔を隔てて複数の貫通孔(図示省略)が形成されており、発光ダイオード82(光源)が嵌め込まれている。
【0021】
これらの構成によれば、バックボード22は全面が透過可能に形成されており、光源としての照明装置80からの照射光がシート外部に透過される構成である。このバックボード22は、シートバック背面の全体に形成されているため、このバックボード22の全面から透過された照射光は、シートバックの後方側のより広い範囲を照射することができる。また、バックボード22の全面が透過可能に形成することによって、意匠性の向上を図ることができる。
また、同様にロアボード32、サイドボード34においても、全面が透過可能に形成されており、光源としての照明装置80からの照射光がシート外部に透過される構成であるため、透過された照射光が車両用シートの下部のより広い範囲を照射することができるとともに、意匠性の向上を図ることができる。
また、バックボード22、ロアボード32、サイドボード34は、全面がメッシュ状の合成樹脂素材によって形成されており、孔が全面に形成された粗密構造とされているため、車両用シートの軽量化を図ることができる。
【0022】
また、バックボード22の透過可能に形成された部位の表面には、光触媒として二酸化チタンが塗布されている。この光触媒にシートバックの照射光が照射されることにより、その表面で酸化力が発生し、接触してくる有機化合物や細菌などの有害物質を除去する働きをする。これにより、車両室内における空気の浄化を図ることができる。また抗菌作用により車両内をきれいに保つことができる。またアセトアルデヒド、アンモニア等の悪臭の分解作用により脱臭を図ることができる。また、窓ガラスや外壁等の汚れを防ぐ防汚作用がある。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の車両用シートは、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。
例えば、本実施例の車両用シート10にあっては、シートバック20と、シートクッション30、ヘッドレスト40と、とを備えて構成されるものについて示した。しかしながら、これに限定されることなく、これにアームレスト等が加えられて構成されるものであってもよい。
【0024】
また、本実施例における車両用シート10にあっては、バックボード22は全面が透過可能に形成された構成のものについて示した。しかしながら、これに限定されることなく、バックボード22は少なくともこのバックボード22の外形輪郭部位が透過可能に形成されている構成であれば、シートバックの後方側のより広い範囲を照射することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 車両用シート
20 シートバック
22 バックボード
30 シートクッション
32 ロアボード
34 サイドボード
40 ヘッドレスト
50 シートパッド
60 表皮
70 スリット部
80 照明装置
82 発光ダイオード
84 支持ブラケット
F フレーム
Fs 支持ばね部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの背面に、該シートバック背面の全体を形成するバックボードを備えた車両用シートであって、
前記シートバックの内部には該内部から前記バックボード全体を照射することのできるように配設された光源が設けられており、
前記バックボードは少なくとも該バックボードの外形輪郭部位が透過可能に形成されており前記光源からの照射光がシート外部に透過されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記バックボードの全面が透過可能に形成されており前記光源からの照射光がバックボード全面からシート外部に透過されることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用シートであって、
前記バックボードの透過可能に形成された部位の表面には、光触媒が塗布されていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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