説明

車両用シート

【課題】シートバックを、車室とトランクルームとを仕切るパーテーションパネル上に作業性良く組み付けられるようにする。
【解決手段】シートバック10が、車室とトランクルームとを仕切るパーテーションパネル上に取り付けられたリンク機構50に取り付けられるリクライニング調整可能な車両用シート1である。シートバック10は、その骨格部に形成された当接面13Bが、リンク機構50の長板部52Cに形成された被当接面52C1にシート前方側から当てられることでシート前後方向の位置決めがされる構成とされている。当接面13Bは、被当接面52C1に対して、シート前方側の斜めの角度から上下一対で挟み込むように当てられる構成とされ、この当接により、シートバック10は、長板部52Cに対して、シート前後方向の位置決めがされると共に、シート前後方向を軸とした回転方向の移動が規制された状態として長板部52Cに位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートバックが、車室とトランクルームとを仕切るパーテーションパネル上に取り付けられたリンク機構に取り付けられるリクライニング調整可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後席として配設される車両用シートにおいて、シートバックが、車室とトランクルームとを仕切るパーテーションパネル上にリンク機構を介して取り付けられているものがある。ここで、下記特許文献1には、シートバックが、上記パーテーションパネル上に締結された電動式のリンク機構の可動部に締結されて、リクライニング調整可能とされたものが開示されている。
【0003】
この開示では、シートバックは、その骨格を成すシートバックフレームが、上記リンク機構の可動部に対して、その下方部がフックの引掛け構造により引掛けられ、上方部が上記可動部にあてがわれてボルト締結されることにより固定された構成となっている。このような構成を採ることにより、シートバックを可動部に組み付けて固定する作業は、先ず、下方部のフックの引掛け構造を引掛けてシートバックを可動部に仮掛けした状態にし、この状態で、仮掛け部を基点にシートバックを動かしながら上方部を可動部のボルト締結部に位置決めするように、簡便に行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4043911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記開示の従来技術では、上記フックの引掛け構造では、引掛け後のシートバックの移動を、可動部とボルト締結する位置に向けて案内するような高精度な係合状態を得ることができず、シートバックをシート前後方向への移動に加えてシート幅方向にも移動させて上方部を位置決めする必要があり、組み付け作業性が悪かった。本発明は、上記課題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートバックを、車室とトランクルームとを仕切るパーテーションパネル上に作業性良く組み付けられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
第1の発明は、シートバックが、車室とトランクルームとを仕切るパーテーションパネル上に取り付けられたリンク機構に取り付けられるリクライニング調整可能な車両用シートである。シートバックは、その骨格部に形成された当接面が、リンク機構の取付け部に形成された被当接面にシート前方側から当てられることでシート前後方向の位置決めがされる構成とされている。これら当接面と被当接面との当接構造は、一方の面が他方の面に対してシート前後方向に対して斜めに面を向けた斜めの角度から一対で挟み込むように当てられる関係とされている。この当接構造により、シートバックは、リンク機構の取付け部に対して、シート前後方向の位置決めがされると共に、シート前後方向を軸とした回転方向の移動が規制された状態として取付け部に位置決めされる。
【0007】
この第1の発明によれば、シートバックは、リンク機構の取付け部との間に形成された当接構造を当接させることにより、同取付け部に対して、シート前後方向の位置決めがされると共に、シート前後方向を軸とした回転方向の移動が規制された状態として位置決めされる。したがって、シートバックを、単に、リンク機構の取付け部にシート前方側から当接させるように押し付けるのみで、シートバックが上記当接構造によって取付け部に対して狙いとする取付け位置に案内されて位置決めされるため、シートバックをパーテーションパネル上に簡便に組み付けることができる。
【0008】
第2の発明は、上述した第1の発明において、更に、シートバックが、取付け部との間に、シート上方側から引掛けられることでシート前後方向及び重力方向に対して支えられた状態となる引掛け構造を備えるものである。この引掛け構造が引掛けられた状態で上記当接構造が当接された状態となることで、シートバックが取付け部に対してシート前後方向、シート幅方向、及びシート上下方向にそれぞれ位置決めされた状態となる。
【0009】
この第2の発明によれば、シートバックと取付け部との間に、更に引掛け構造を設けたことにより、この引掛け構造を引掛けた状態で当接構造を当接させることで、シートバックを取付け部に対してシート前後方向、シート幅方向、及びシート上下方向にそれぞれ位置決めした状態とすることができる。したがって、このような簡単な組み付け構造により、シートバックをパーテーションパネル上に組み付ける作業性を更に向上させることができる。
【0010】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、当接構造が、シートバック内の上部領域と取付け部との間に設定されている。
【0011】
この第3の発明によれば、当接構造が上記シートバック内の上部領域と取付け部との間に設定されることで、シートバックを当接構造の案内に従って狙いとする取付け位置へと移動させる位置調整を行いやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の車両用シートの概略構成を示した分解斜視図である。
【図2】シートバックをリンク機構に引掛けて係合させた状態を示した斜視図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】シートバックがリンク機構に取り付けられる際の傾いた状態を示した正面図である。
【図5】シートバックが当接構造により位置決めされた状態を示した正面図である。
【図6】リンク機構の動作構造を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1〜図6を用いて説明する。本実施例の車両用シート1は、図1に示すように、後部に独立したトランクルーム(荷室)を備えるセダンタイプの車両の後部座席として配設されている。この車両用シート1は、着座乗員の背凭れとなるシートバック10と、着座部となるシートクッション20と、頭部の支えとなるヘッドレスト30と、を備える。シートバック10は、車室(キャビン)とトランクルームとを仕切るパーテーションパネル40上に取り付けられ、シートクッション20は、車室内の床面を構成するフロアパネル41上に取り付けられ、ヘッドレスト30は、シートバック10の上部に取り付けられている。
【0015】
詳しくは、シートバック10は、その骨格を成すシートバックフレーム11が、上記パーテーションパネル40に対して、電動式のリンク機構50を間に介して取り付けられており、リンク機構50の動きを介してその背凭れ角度の調整が行える構成とされている。シートクッション20は、その骨格を成すシートクッションフレーム21が、上記フロアパネル41に対して、シート前後方向にスライド可能な状態に連結されており、その後端部に設けられた連結アーム22が、シートバックフレーム11の下端部に設けられた連結アーム15にヒンジ連結されて設けられている。これにより、シートクッション20は、上記シートバック10の背凭れ角度が調整される動きに合わせて、その着座位置がシート前後方向に押引させて調整されるようになっている。ヘッドレスト30は、その内部に挿通された逆U字状に折り曲げられた形状のステー31の両脚部を、それぞれ、シートバックフレーム11の枠部に固定された角筒状の各ホルダー14内に装着された各円筒状のサポート34内に差し込むことにより、シートバックフレーム11の上部に固定されている。
【0016】
ここで、上記シートバック10は、上述したシートバックフレーム11に対して、その前側からクッション体となるパッド16が組み付けられ、更に、この組み付けられた構造物全体を表面側から覆うように布製の表皮17が被せ付けられて構成されている。また、シートクッション20も同じように、上述したシートクッションフレーム21に対して、その上側からクッション体となるパッド23が組み付けられ、更に、この組み付けられた構造物全体を表面側から覆うように布製の表皮24が被せ付けられて構成されている。また、ヘッドレスト30は、上述したステー31に対してクッション体となるパッド32が一体的に発泡成形されて形成され、更に、このパッド32が形成された部分全体を表面側から覆うように布製の表皮33が被せ付けられて構成されている。
【0017】
以下、上記シートバック10のパーテーションパネル40に対する取り付け構造について説明する。ここで、シートバックフレーム11は、シートバック10の上下左右の各周縁部の骨格を成す四角枠状の形に組まれて構成されている。シートバックフレーム11の上記枠内には、その前面側に組み付けられるパッド16を後方側から支持するように複数本のワイヤー12がシート幅方向に張られて設けられている。このうち、上記シートバックフレーム11の枠内に張られた上側2本のワイヤー12間には、前述したヘッドレスト30を装着させるために機能する2個のホルダー14がそれぞれ架け渡されて一体的に溶着されて設けられている。また、シートバックフレーム11の高さ方向の中央部に張られたワイヤー12Aは、その両側の端部12A1がそれぞれ中央部よりも高い位置となるように高さ方向にクランク状に折り曲げられた形に形成されている。これら各端部12A1は、図2に示すように、それぞれ、シートバックフレーム11を後述するリンク機構50の可動リンク52に取り付ける際の、可動リンク52に形成された各フック52Aに引掛けられる引掛け部として機能するものとなっている。ここで、可動リンク52が本発明の「取付け部」に相当する。
【0018】
また、上記シートバックフレーム11の上側の枠部には、シートバックフレーム11の枠内に垂下する格好でU字板状のブラケット13が、両端が固定されて一体的とされた状態で設けられている。このブラケット13の左右両側の高さ方向へ延びるアーム部には、シートバックフレーム11を後述するリンク機構50の可動リンク52に取り付ける際に、可動リンク52に設けられた各ピン52Bがそれぞれ内部に差し込まれる縦長状の長孔13Aが形成されている。ここで、各長孔13Aは、図4〜図5に示すように、どちらも、ブラケット13に対してその板厚方向となるシート前後方向に貫通して形成されているが、紙面向かって左側の長孔13Aは、ピン52Bの直径よりも広い孔幅を有した形状とされており、紙面向かって右側の長孔13Aは、その内側の側面(図示左側の側面)が円弧状に湾曲した形とされて、その下端側領域では孔幅がピン52Bの直径よりも広く、上端側領域に向かってその孔幅がピン52Bの直径とほぼ同一となっていく先細状の形に形成されている。
【0019】
図2を参照して、上記ブラケット13の中央のシート幅方向に延びるアーム部13Cの後側面には、シートバックフレーム11を後述するリンク機構50の可動リンク52に取り付ける際に、各可動リンク52と一体的な長板部52Cのシート前方側に面を向けた被当接面52C1に前方側から押し当てられて係止される当接面13Bが形成されている。ここで、上記長板部52Cは、シート幅方向に長尺状の形に形成されており、かつ、そのシート幅方向の中央部に、シート前方側に面を向けた平面状の被当接面52C1が形成されている。一方、上記ブラケット13のアーム部13Cの後側面に形成された当接面13Bは、図3に示すように、上記長板部52Cの被当接面52C1と対向する対向面13B1と、対向面13B1の上縁部からシート後方側に屈曲して上方側へ延びる上側傾斜面13B2と、対向面13B1の下縁部からシート後方側に屈曲して下方側へ延びる下側傾斜面13B3と、を有する屈曲した形に形成されている。上記対向面13B1は、シート後方側に面を向けて形成され、上述した長板部52Cの被当接面52C1と互いに平行向きに面を向かい合わせた状態となって組み付けられるようになっている。上側傾斜面13B2は、シート後ろ下方側に斜めに面を向けて形成され、下側傾斜面13B3は、シート後ろ上方側に斜めに面を向けて形成されている。
【0020】
上記屈曲形状とされたアーム部13Cの当接面13Bは、シートバックフレーム11を後述するリンク機構50の可動リンク52に取り付ける際に、この可動リンク52の長板部52Cの被当接面52C1にシート前方側から押し付けられることにより、上述した上側傾斜面13B2と下側傾斜面13B3とが、それぞれ、被当接面52C1の上縁側の角部52C1aと下縁側の角部52C1bとに斜めの角度から上下一対で挟み込むように当てられる。したがって、この当接面13Bの上側傾斜面13B2と下側傾斜面13B3とが被当接面52C1の上縁側の角部52C1aと下縁側の角部52C1bとにそれぞれ斜めの角度から上下一対で当接する構造により、シートバックフレーム11は、可動リンク52の長板部52Cに対して、シート前後方向の位置決めがされると共に、シート前後方向を軸とした回転方向の移動が規制された状態となって長板部52Cに位置決めされた状態となる。この当接によりシートバックフレーム11が可動リンク52に位置決めされた状態に保持される構成の詳細については、後述することとする。ここで、上記ブラケット13のアーム部13Cが設定された領域部が、本発明の「シートバック内の上部領域」に相当する。
【0021】
次に、図1及び図6を参照して、リンク機構50の構成について説明する。リンク機構50は、図1に示すように、左右一対のリンク構造となっており、図6に示すように、パーテーションパネル40上に固定されて設けられる固定リンク51と、シートバックフレーム11が取り付けられて固定される可動リンク52と、これら固定リンク51と可動リンク52とを連結する上側連結リンク53と下側連結リンク54と、これら上側連結リンク53と下側連結リンク54とを連結する中間連結リンク55と、可動リンク52を駆動回転させる電気モータ56と、で構成されている。
【0022】
上側連結リンク53は、第1リンク53Aと第2リンク53Bと第3リンク53Cとで構成されている。第1リンク53Aは、その前端部が、ピン53A1によって可動リンク52の上部に回転可能に軸連結されている。第2リンク53Bは、その前端部が、ピン53B1によって第1リンク53Aの後端部に回転可能に軸連結されており、後端部が、ピン53B2によって固定リンク51の上部に回転可能に軸連結されている。第3リンク53Cは、その前端上部が、ピン53C1によって第1リンク53Aの後端部近傍に回転可能に軸連結されており、その後端部が、ピン53C2によって固定リンク51の上部近傍に回転可能に軸連結されている。
【0023】
下側連結リンク54は、第4リンク54Aと第5リンク54Bとで構成されている。第4リンク54Aは、その前端部が、ピン54A1によって可動リンク52の下部に回転可能に軸連結されている。第5リンク54Bは、その前端上部が、ピン54B1によって第4リンク54Aの後端部に回転可能に軸連結されており、その後端部がピン54B2によって固定リンク51の下部に回転可能に軸連結されている。中間連結リンク55は、その上端部が、ピン55Aによって上側連結リンク53の第3リンク53Cの前端下部に回転可能に軸連結されており、下端部が、ピン55Bによって下側連結リンク54の第5リンク54Bの前端下部に回転可能に軸連結されている。
【0024】
上記構成のリンク機構50は、車両用シート1に設けられた図示しない電動スイッチの操作によって電気モータ56を駆動回転させることにより、可動リンク52及びこれに連結された上記各リンクを動作させて可動リンク52の固定リンク51に対する角度を変化させ、可動リンク52に取り付けられたシートバック10の背凭れ角度を変化させるようになっている。なお、同図に示されたリンク機構50の仮想線で示された状態は、シートバック10に車両後突等に伴う所定値以上の大荷重が入力されて、V字状に形成された第4リンク54Aが屈曲変形してリンク機構50全体が可動リンク52を後方側に移動させるように動作した状態が示されている。このように、リンク機構50は、第4リンク54Aが上記大荷重作用時に屈曲変形可能な構成となっていることにより、車両後突の発生時に着座乗員の背部が頭部に先行して後方側へ移動する動きを逃がし、頭部をヘッドレスト30に接近させて頭部が後傾する動きを低減させられるようになっている。次に、上記可動リンク52にシートバックフレーム11を取り付けて固定する方法について説明する。
【0025】
図1、図2、及び図6に示すように、上述した左右一対で構成された各可動リンク52の下端部には、前述したシートバックフレーム11に固定されたワイヤー12Aの各端部12A1をシート上方側から引掛けて係合させることのできる鉤状のフック52Aが形成されている。これらフック52Aは、上記ワイヤー12Aの各端部12A1をシート上方側から掛け入れることにより、各端部12A1をシート前後方向及び重力方向に移動しないように支えた状態となる溝を備えた構成となっている。この溝の下端面は、円弧面となっており、掛け入れたワイヤー12Aの各端部12A1を円弧面に沿って滑らせるように軸回転させられるようになっている。また、ワイヤー12Aの各端部12A1自体も、断面正円状の形に形成されており、各端部12A1を各フック52Aの溝内に引掛けた状態で、各溝内で軸回転することができる構成となっている。これにより、シートバック10は、上記ワイヤー12Aの各端部12A1を各可動リンク52のフック52Aに引掛けた状態では、これらフック52Aの溝内に掛け入れられたワイヤー12Aの各端部12A1を中心にシート前後方向に回転することのできる状態として、各可動リンク52に引掛けられた状態とされるようになっている。
【0026】
上記両側の可動リンク52は、これらの間に架け渡された長板部52Cによって互いに一体的に結合された構成となっている。上記長板部52Cは、そのシート幅方向に長尺状に延びる中央部の前面が、シート前方側に面を向けた平面状の被当接面52C1として形成されており、そのシート幅方向の両端側の近傍部には、シート前方側に向かって突出する丸棒状のピン52Bが固定されて設けられている。これらピン52Bは、図2に示すように、上述したシートバックフレーム11に設けられたワイヤー12Aの各端部12A1を各可動リンク52のフック52Aに引掛け、この状態から、各引掛けられたワイヤー12Aの端部12A1を基点にシートバックフレーム11をシート後方側へ押し回すように操作することにより、シートバックフレーム11のブラケット13に形成された前述した各長孔13Aがこれらピン52Bに差し込まれるようになっている。
【0027】
詳しくは、上記ブラケット13の各長孔13Aを長板部52Cの各ピン52Bに差込む作業は、次のように行われる。すなわち、図4に示すように、各長孔13Aが各ピン52Bに差し込まれる間際の位置までシートバックフレーム11をシート後方側へ回し込んだ後に、シートバックフレーム11を、図示左方側のワイヤー12Aの端部12A1と可動リンク52のフック52Aとの引掛け部を基点に、シート前後方向を軸とした図示反時計回り方向に回転させて傾動させ、図示左方側の長孔13Aをその上端部近傍に同側のピン52Bを差込み可能な状態にし、図示右方側の長孔13Aをその下端部近傍の孔幅の広い領域部に同側のピン52Bを差込み可能な状態にする。そして、この状態で、シートバックフレーム11を図示左方側のワイヤー12Aの端部12A1と可動リンク52のフック52Aとの引掛け部を基点に後傾させて各長孔13Aを各ピン52Bに差込む。
【0028】
次に、シートバックフレーム11をその傾動姿勢を戻すように図示時計回り方向に回転させて、図示右方側の長孔13Aの下端部領域に差し込まれたピン52Bを、この長孔13Aの形状に沿って長孔13Aの孔幅の狭い上端部領域までスライドさせる。これにより、図5に示すように、シートバックフレーム11は、上記図示右方側の長孔13Aの孔幅の狭い箇所にピン52Bが差し込まれた構成によって、その長板部52Cに対するシート幅方向の移動が規制された状態となる。
【0029】
そして、上記シートバックフレーム11の回転操作の後、最終的にシートバックフレーム11をシート後方側へ押して、図3に示すように、前述したブラケット13の中央のアーム部13Cに形成された当接面13Bを、長板部52Cの中央部の被当接面52C1にシート前方側から当接させることにより、シートバックフレーム11が長板部52Cに対して取り付けられるべき位置に位置決めされた状態となって係止される。詳しくは、シートバックフレーム11は、これを図示時計回り方向や反時計回り方向に微小に揺り動かしながら長板部52Cに押し付けて、ブラケット13に形成された当接面13Bの上側傾斜面13B2と下側傾斜面13B3とをそれぞれ被当接面52C1の上縁部と下縁部とに当接させた状態とすることにより、その回転移動が規制された状態となる。これにより、シートバックフレーム11は、長板部52Cに対して、シート前後方向、シート幅方向、及びシート上下方向にそれぞれ位置決めされた状態となって組み付けられる。
【0030】
次に、上記当接状態となったブラケット13のアーム部13Cと長板部52Cとに対し、長板部52Cのシート後方側から締結用のボルトBを差し込んでナットNにより両者(ブラケット13と長板部52C)を挟み込むように締結する。詳しくは、上記締結用のボルトBは、上記当接により互いに平行向きにシート前後方向に対面した状態とされたブラケット13のアーム部13Cの対向面13B1と長板部52Cの被当接面52C1とにシート前方側から貫通して差し込まれて、ナットNにより締結されている。これにより、上記ブラケット13と長板部52Cとが互いの当接を更に強めるように上記ボルトBとナットNとにより締め付けられて、ブラケット13が長板部52Cに対して上記当接面13Bと被当接面52C1との当接構造による位置決め力を更に強めた状態となって一体に固定されている。これにより、シートバックフレーム11が、リンク機構50を介してパーテーションパネル40に取り付けられた状態となる。このように、互いに平行向きに対面した状態となって組み付けられる面を有したブラケット13のアーム部13Cの対向面13B1と長板部52Cの被当接面52C1との間に、両者の取付構造(ボルトBとナットNとによる締結構造)を設定したことにより、両者の取り付けをより簡便かつ適切に行えるようになっている。
【0031】
このように、本実施例の車両用シート1によれば、シートバック10は、リンク機構50の可動リンク52(長板部52C)との間に形成された当接構造を当接させることにより、長板部52Cに対して、シート前後方向の位置決めがされると共に、シート前後方向を軸とした回転方向の移動が規制された状態として位置決めされる。したがって、シートバック10を、単に、リンク機構50の長板部52Cにシート前方側から当接させるように押し付けるのみで、シートバック10が上記当接構造によって長板部52Cに対して狙いとする取付け位置に案内されて位置決めされるため、シートバック10をパーテーションパネル40上に簡便に組み付けることができる。
【0032】
また、シートバック10と可動リンク52との間に、更に引掛け構造を設けたことにより、この引掛け構造を引掛けた状態で当接構造を当接させることで、シートバック10を長板部52Cに対してシート前後方向、シート幅方向、及びシート上下方向にそれぞれ位置決めした状態とすることができる。したがって、このような簡単な組み付け構造により、シートバック10をパーテーションパネル40上に組み付ける作業性を更に向上させることができる。また、当接構造が上記シートバック10内の上部領域と長板部52Cとの間に設定されることで、シートバック10を当接構造の案内に従って狙いとする取付け位置へと移動させる位置調整を行いやすくすることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、上記実施例では、シートバックフレーム11に固定されたブラケット13の当接面13Bを屈曲形状とし、この当接面13Bが当たる長板部52Cの被当接面52C1を平面形状としたものを例示したが、被当接面を屈曲形状にし、当接面を平面形状にして、被当接面が当接面に対してシート前後方向に対して斜めに面を向けた斜めの角度から一対で挟み込むように当てられる構成としたものであってもよい。
【0034】
また、上記実施例では、当接面13Bが被当接面52C1に対してシート前後方向に対して斜めに面を向けた斜めの角度から上下一対で挟み込むように当てられる構成とされたものを例示したが、当接面と被当接面との当接構造は、一方の面が他方の面に対してシート前後方向に対して斜めに面を向けた斜めの角度から左右一対で挟み込むように当てられる構成であってもよい。また、上記斜めの角度から面当接する面は、平坦な傾斜面に限らず、湾曲した傾斜面であってもよい。
【0035】
また、上記実施例では、シートバックフレーム11に設けられたワイヤー12Aの両端部12A1を、リンク機構50の各可動リンク52に形成されたフック52Aに引掛けて仮掛けするように構成したものを例示したが、シートバックフレーム側にフックを設け、可動リンク側にこのフックに掛けられるストライカ等のワイヤー部材を設けて引掛け構造を構成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用シート
10 シートバック
11 シートバックフレーム
12 ワイヤー
12A ワイヤー
12A1 端部
13 ブラケット
13A 長孔
13B 当接面
13B1 対向面
13B2 上側傾斜面
13B3 下側傾斜面
13C アーム部(シートバック内の上部領域)
14 ホルダー
15 連結アーム
16 パッド
17 表皮
20 シートクッション
21 シートクッションフレーム
22 連結アーム
23 パッド
24 表皮
30 ヘッドレスト
31 ステー
32 パッド
33 表皮
34 サポート
40 パーテーションパネル
41 フロアパネル
50 リンク機構
51 固定リンク
52 可動リンク(取付け部)
52A フック
52B ピン
52C 長板部
52C1 被当接面
52C1a 上縁側の角部
52C1b 下縁側の角部
53 上側連結リンク
53A 第1リンク
53A1 ピン
53B 第2リンク
53B1 ピン
53B2 ピン
53C 第3リンク
53C1 ピン
53C2 ピン
54 下側連結リンク
54A 第4リンク
54A1 ピン
54B 第5リンク
54B1 ピン
54B2 ピン
55 中間連結リンク
55A ピン
55B ピン
56 電気モータ
B ボルト
N ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックが、車室とトランクルームとを仕切るパーテーションパネル上に取り付けられたリンク機構に取り付けられるリクライニング調整可能な車両用シートであって、
前記シートバックは、その骨格部に形成された当接面が、前記リンク機構の取付け部に形成された被当接面にシート前方側から当てられることでシート前後方向の位置決めがされる構成とされ、
前記当接面と前記被当接面との当接構造は、一方の面が他方の面に対してシート前後方向に対して斜めに面を向けた斜めの角度から一対で挟み込むように当てられる関係とされ、当該当接構造により、前記シートバックは、前記リンク機構の前記取付け部に対して、シート前後方向の位置決めがされると共に、シート前後方向を軸とした回転方向の移動が規制された状態として前記取付け部に位置決めされることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
更に、前記シートバックは、前記取付け部との間に、シート上方側から引掛けられることでシート前後方向及び重力方向に対して支えられた状態となる引掛け構造を備え、該引掛け構造が引掛けられた状態で前記当接構造が当接された状態となることで、前記シートバックが前記取付け部に対してシート前後方向、シート幅方向、及びシート上下方向にそれぞれ位置決めされた状態となることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記当接構造が、前記シートバック内の上部領域と前記取付け部との間に設定されていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−228971(P2012−228971A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98963(P2011−98963)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】