説明

車両用シート

【課題】シートクッションの両サイドフレーム間に設定されるロッドを、車両の側突発生時に狙いとする方向に適切に屈曲変形させること。
【解決手段】シートクッション10の両サイドフレーム11A間に架設されたロッド35には、シートクッション10に車両側突の発生に伴うシート側方からの衝撃力が入力された際に、ロッド35をシートクッション10下のバッテリユニット40から遠ざける方向に屈曲変形させるよう、ロッド35の座屈変形を特定方向に促進させる脆弱部35Aが形成されている。脆弱部35Aは、ロッド35の衝撃力が入力される側の端部箇所において、ロッド35をバッテリユニット40から遠ざける方向とその反対方向とにそれぞれ屈曲させるように各面部を脆弱化させる第1の切欠き35A1と第2の切欠き35A2とから成る。第1の切欠き35A1が、第2の切欠き35A2よりも上記衝撃力が入力される側に近い箇所に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートクッションの左右両サイドのフレーム間にロッドが架設された車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートクッションの左右両サイドのフレーム間に、スライド装置のロック解除の操作を左右で同期して行うためのロッドが架設された構成が知られている(特許文献1)。このロッドは、ストレートな中空丸棒により形成されており、その両端部に、各スライド装置のロック解除の操作を行うための操作アームが一体的に結合されて、シートクッションの各フレームに対して回転可能に軸支された連結状態とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−052455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術では、車両の側突発生により、シートクッションに車両側方からの衝撃力が入力された場合に、上記ロッドがシートクッションの下方に向けて座屈変形することがあり、シートクッションの下部にサービスプラグ等のバッテリユニットの一部が配設される場合に好ましくない。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートクッションの左右両サイドのフレーム間に設定されるロッドを、車両の側突発生時に狙いとする方向に適切に屈曲変形させられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
第1の発明は、シートクッションの左右両サイドのフレーム間にロッドが架設された車両用シートである。ロッドには、シートクッションに車両側突等の発生に伴うシート側方からの衝撃力が入力された際に、ロッドをシートクッションの下方部に設置されたバッテリユニットから遠ざける方向に屈曲変形させるよう、ロッドの座屈変形を特定方向に促進させる脆弱部が形成されている。脆弱部は、ロッドの上記衝撃力が入力される側の端部箇所において、ロッドをバッテリユニットから遠ざける方向とその反対方向とにそれぞれ屈曲させるようにそれぞれの方向を向く側の面部を脆弱化させる第1の脆弱部位と第2の脆弱部位とから成る。第1の脆弱部位が、第2の脆弱部位よりも上記衝撃力が入力される側に近い箇所に形成されている。
【0006】
この第1の発明によれば、ロッドは、シート側方からの衝撃力を受けることにより、この入力された側に近い第1の脆弱部位を起点にバッテリユニットから遠ざかる方向に座屈変形すると共に、この部位より中央側に近い第2の脆弱部位を起点に上記とは逆方向に座屈変形する態様で屈曲変形する。これにより、ロッドは、全体として、バッテリユニットから遠ざかる方向に形状を屈ませる態様でシート幅方向に押し縮められるように変形することとなる。このように、ロッドを、狙いとするバッテリユニットから遠ざける方向に適切に屈曲変形させることができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、第1の脆弱部位及び第2の脆弱部位が、それぞれ、ロッドの一部を切り欠いた切欠きとして形成されているものである。
【0008】
この第2の発明によれば、第1の脆弱部位及び第2の脆弱部位を、ロッドの一部に切欠きを入れることで簡便に形成することができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、脆弱部が、ロッドの両端部に左右対称の形で形成されているものである。
【0010】
この第3の発明によれば、ロッドは、シート側方からの衝撃力を受けることにより、その両端部において、それぞれバッテリユニットから遠ざかる方向に形状を屈ませる態様でシート幅方向に押し縮められるように変形する。これにより、ロッドを、狙いとするバッテリユニットから遠ざける方向により適切に屈曲変形させることができる。
【0011】
第4の発明は、上述した第1から第3のいずれかの発明において、次の構成となっているものである。すなわち、ロッドが、シートクッションの左右両サイドのフレームの下部に設定されるスライド装置のスライドロック状態を解除するための各解除部材に連結されており、これら解除部材によるスライドロックの解除操作を同期させるためのコネクティングロッドとして構成されているものである。
【0012】
この第4の発明によれば、通常時、各スライド装置のスライドロック状態を左右で同期させて解除させられるように機能するロッドを、車両の側突発生時に、シートクッション下のバッテリユニットに干渉させないように適切に屈曲変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の車両用シートの概略構成を示した要部分解斜視図である。
【図2】ロッドと解除アームの構成を示した分解斜視図である。
【図3】シートクッションの車両外側のサイドフレーム構造を示した斜視図である。
【図4】解除レバーの配設状態を拡大して示した平面図である。
【図5】ロッドの配設状態を示した平面図である。
【図6】ロッドの配設状態を示した正面図である。
【図7】側突発生によりロッドが屈曲変形した途中の状態を示した正面図である。
【図8】図7の状態からロッドの屈曲変形が更に進行した状態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1〜図8を用いて説明する。本実施例の車両用シート1は、図1に示すように、自動車の運転席シートとして構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック(図示省略)と、着座部となるシートクッション10と、を有する。上記シートクッション10は、その下面部とフロアとの間に、左右一対のスライド装置20が設けられており、これらスライド装置20によって、フロアに対する前後方向のスライド位置の調節が行える構成となっている。
【0016】
上述した各スライド装置20は、常時は、シートクッション10のスライド移動をロックした状態として、シートクッション10のスライド位置を固定した状態となって保持されている。これらスライド装置20のスライドロック状態は、シートクッション10の車両外側の側部に設けられた解除レバー31の引き上げ操作によって動作する解除機構30により解除操作されるようになっている。ここで、解除機構30は、図2〜図5に示すように、上記解除レバー31に対し、シートクッション10の両サイドフレーム11A間に架設されたロッド35が一体的に結合されており、このロッド35の両サイドフレーム11A間の両端部分に、各スライド装置20のロック機構23を解除操作するための解除部材33がそれぞれ一体的に結合された構成となっている。
【0017】
上記ロッド35は、ストレートな中空丸棒により形成されており、その両端部が、上述したシートクッション10の各サイドフレーム11Aに対して、それぞれ回動可能に軸支された状態として設けられている。詳しくは、上記ロッド35は、その車両外側(図1の左側)の端部が、同端部に嵌め込まれて一体的に溶着された支軸32を、同側のサイドフレーム11Aにシート内側から挿通して軸支させることにより、同側のサイドフレーム11Aに回動可能に軸支された状態とされている。また、上記ロッド35の車両内側(図1の右側)の端部は、同側のサイドフレーム11Aに貫通して挿通されることにより、それ自体がサイドフレーム11Aに対して回動可能に軸支された状態とされている。
【0018】
上記ロッド35は、図6に示すように、常時は、上記シートクッション10の両サイドフレーム11A間でシート幅方向に真っ直ぐに延びて配設された状態を維持する。しかし、上記ロッド35は、図7〜図8に示すように、シートクッション10に車両側突の発生によりシート側方からの衝撃力が入力されると、形状を屈曲させる態様で座屈変形する。このとき、上記ロッド35の座屈変形が、シートクッション10の下方部に向かって折れ曲がる態様で行われると、ロッド35が、シートクッション10の下方部に設置されたバッテリユニット40のサービスプラグ41に接触するおそれがあり、好ましくない。そこで、本実施例では、上記ロッド35に、上述したようなシート側方からの衝撃力が入力された際に、ロッド35が上記サービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠ざかる方向に屈曲変形するよう、その座屈変形を特定方向に促進させるように導く脆弱部35A(第1の切欠き35A1及び第2の切欠き35A2)が設定されている。ここで、第1の切欠き35A1が本発明の「第1の脆弱部位」に相当し、第2の切欠き35A2が本発明の「第2の脆弱部位」に相当する。
【0019】
以下、上述したシートクッション10、スライド装置20、及び解除機構30の各構成について、詳しく説明していく。先ず、図1を参照しながら、シートクッション10の構成について説明する。シートクッション10は、その内部の骨格を成すシートクッションフレーム11と、シートクッションフレーム11の上部に被せ付けられるようにセットされるクッションパッド(図示省略)と、クッションパッドの表面全体を覆うようにシートクッション10の上面側から前後左右の各側面を通って下方側へ被せ付けられて固定される表皮材(図示省略)と、によって構成されている。
【0020】
上記シートクッションフレーム11は、左右一対の立板状のサイドフレーム11Aと、これらサイドフレーム11Aの前端部間に跨って架け渡されて結合されたフロントフレーム11Bと、両サイドフレーム11Aの前部間と後部間とにそれぞれ架け渡されて結合された補強パイプ11C,11Dと、によって、平面視で見て四角枠状となる形に組まれた構成となっている。上記シートクッションフレーム11のフロントフレーム11Bと後側の補強パイプ11Dとの間には、薄い鉄板状のクッションパン11Eが架け渡されて結合された状態とされている。このクッションパン11Eは、その上面部にセットされる前述した図示しないクッションパッドを下方側から面で支える機能部位となっている。
【0021】
次に、スライド装置20の構成について説明する。スライド装置20は、シートクッション10とフロアとの間に左右一対で配設されており、それぞれ、フロア上に一体的に固定されたロアレール21と、各ロアレール21に対して前後スライド可能に組み付けられたアッパレール22と、各アッパレール22に設けられて各ロアレール21との係合によって各アッパレール22のスライドをロックするロック機構23と、から構成されている。各アッパレール22の上面部には、複数の結合ピン22Aが設定されており、各アッパレール22の上面部に前述したシートクッションフレーム11の各サイドフレーム11Aの底部を着地させて各結合ピン22Aを通して結合させることにより、各サイドフレーム11Aがそれぞれ一体的に結合された状態とされている。
【0022】
上記各スライド装置20は、常時は、それらの各ロック機構23が図示しないバネの附勢構造によって、各アッパレール22のスライドをロックした状態となって保持されている。これらスライド装置20のスライドロック状態は、各ロック機構23の解除アーム23Aが、後述する解除レバー31の操作によって、それぞれ押し下げ操作されることにより解除されるようになっている。なお、各スライド装置20は、上記解除レバー31の操作状態が解かれることにより、上述した各解除アーム23Aの押し下げ操作状態が解かれて、各ロック機構23が再びそれらのバネ附勢構造によってロック作動するため、スライドロックされた状態に戻されるようになっている。なお、上記各スライド装置20の基本構成は、特開2010−221935号公報等の文献に開示されたものと同じものとなっているため、その詳細な説明は省略することとする。
【0023】
次に、解除機構30の構成について説明する。解除機構30は、図2〜図5に示すように、前述した解除レバー31と、支軸32と、2つの解除部材33と、これらに繋がれる2本の操作棒34と、ロッド35と、捩りバネ36と、後方操作レバー37と、から構成されている。解除レバー31は、図4に示すように、シートクッション10の車両外側の側部に配設されており、同側のサイドフレーム11Aに挿通されて設けられる前述した支軸32に一体的に結合された状態として、支軸32を中心に回転による引き上げ操作が可能な状態とされて設けられている。支軸32は、図1〜図2に示すように、ロッド35の車両外側の端部に嵌め込まれて一体的に結合されており、シートクッション10の車両外側のサイドフレーム11Aにシート内側から挿通されて回動可能に軸支された状態とされている。上記のように支軸32が車両外側のサイドフレーム11Aにシート内側から挿通されて組み付けられていることにより、支軸32の頭部によって同側のサイドフレーム11Aからシート外側に外れ落ちないように係止された状態となっている。
【0024】
2つの解除部材33は、それぞれ、ロッド35の各端部に軸方向に挿通されて溶接により一体的に結合された状態とされている。このうち、ロッド35の車両外側の端部に結合された解除部材33は、3つの径方向に延出する操作アーム33Aと連結アーム33Bとストッパアーム33Cとを有する形状とされている。操作アーム33Aには、操作棒34の上端が連結されており、連結アーム33Bには、後方操作レバー37の前端部がピン37Aにより連結されており、ストッパアーム33Cは、その先端部が、シートクッション10のサイドフレーム11Aに形成された円弧状の長孔11A1内に挿通された状態とされている。上記操作棒34は、その下端部が、前述したスライド装置20のロック機構23の解除アーム23Aに連結されている。長孔11A1は、解除部材33の回転中心となる支軸32のまわりに描かれる円弧形状に湾曲した形状とされている。連結アーム33Bに連結された後方操作レバー37は、上記連結アーム33Bとの連結部からシート後方側へと延びる途中で、シートクッション10の車両外側のサイドフレーム11Aをシート内側から外側へと抜けて、その後端部が、シートクッション10の車両外側の側部においてシート後方側に延出した状態となって配設されている。
【0025】
上記構成の解除部材33は、ストッパアーム33Cがサイドフレーム11Aの長孔11A1内を移動可能とされる範囲内において回動可能な状態とされており、解除レバー31が引き上げられる回転操作によって、操作アーム33Aにより操作棒34を押し下げて、同側のスライド装置20のスライドロック状態を解除するようになっている。また、後方操作レバー37は、車両用シート1(運転席シート)の後席側のシートに着座した乗員が、これを後方側へ引張るように操作することにより、前述した解除レバー31を引き上げ操作したときと同じように、解除部材33を回転操作することができるようになっている。
【0026】
一方、ロッド35の車両内側の端部に結合された解除部材33は、1つの径方向に操作アーム33Aが延出する形状とされている。この操作アーム33Aには、操作棒34の上端が連結されており、操作棒34は、その下端部が、前述したスライド装置20のロック機構23の解除アーム23Aに連結されている。上記解除部材33は、ロッド35を介して前述した解除レバー31と車両内側の解除部材33とに一体的に結合されており、解除レバー31が引き上げられる操作(又は後方操作レバー37が引かれる操作)によって、操作アーム33Aにより操作棒34を押し下げて、同側(車両内側)のスライド装置20のスライドロック状態を解除するようになっている。
【0027】
上記車両内側の解除部材33と、同側のシートクッション10のサイドフレーム11Aとの間には、捩りバネ36が掛着されている。この捩りバネ36は、ロッド35に巻装されて設けられており、一端が解除部材33に掛着され、他端がサイドフレーム11Aに掛着されて設けられている。この捩りバネ36の設定により、解除レバー31(及び後方操作レバー37)には、常時、引き操作前の初期位置に向けて戻される方向の附勢力がかけられた状態とされている。この捩りバネ36の附勢による戻り方向の回転移動は、前述した車両外側の解除部材33のストッパアーム33Cの先端部が、同側のサイドフレーム11Aの長孔11A1の下端部に当接する位置(初期位置となる。)にて係止されるようになっている。
【0028】
ロッド35は、前述したように、その車両外側の端部が支軸32を介して同側のシートクッション10のサイドフレーム11Aに回動可能に軸支され、車両内側の端部が同側のサイドフレーム11Aに挿通されて回動可能に軸支された状態とされている。上記ロッド35は、そのシートクッション10の両サイドフレーム11A間における両端部に、それぞれ解除部材33が溶接されて一体的に結合された状態となっており、両サイドフレーム11Aに対して軸方向の移動が規制された状態となっている。
【0029】
したがって、上記ロッド35に対し、車両側突の発生に伴うシート側方からの衝撃力が入力されると、ロッド35は、そのシート幅方向に長尺な形状により座屈を伴う態様で変形する。しかし、このロッド35の座屈変形の態様は、図7〜図8に示すように、ロッド35の各側の端部箇所に形成された脆弱部35Aによって、前述したシートクッション10の下方部に設けられたサービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠ざかる方向にロッド35の屈曲変形が進行するようになっている。
【0030】
具体的には、図6に示すように、上記脆弱部35Aは、ロッド35の各サイドフレーム11Aとの連結部に近い各端部箇所において、それぞれ、ロッド35の周面部の一部が切り欠かれて成る第1の切欠き35A1と第2の切欠き35A2とから構成されている。第1の切欠き35A1は、ロッド35の上面部、すなわちサービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠い側を向く面部の一部を切り欠くことで形成されている。第2の切欠き35A2は、ロッド35の下面部、すなわちサービスプラグ41(バッテリユニット40)に近い側を向く面部の一部を切り欠くことで形成されている。上記第1の切欠き35A1と第2の切欠き35A2は、ロッド35に対して左右対称の形で形成されており、各第2の切欠き35A2は、各第1の切欠き35A1よりもロッド35の中央側に近い箇所に形成されている。また、上記第1の切欠き35A1と第2の切欠き35A2の各切欠き形状は、ロッド35が各切欠きを起点に折れ曲がるように変形しても、ロッド35が各起点を中心に90度以上折れ曲がらないと、各切り欠かれた側面同士が当接しない程度に軸方向に広い切欠き幅をもった形状に形成されている。
【0031】
上記構成のロッド35は、図7〜図8に示すように、車両側突の発生により、シートクッション10の車両外側のサイドフレーム11Aを介して、シート側方からの衝撃力を受けると、この入力された端部箇所側に近い第1の切欠き35A1を起点に、サービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠ざかる方向(上方向)に折れ曲がるように座屈変形すると共に、この部位より中央側に近い第2の切欠き35A2を起点に、上記とは逆方向(下方向)に折れ曲がるように座屈変形する態様で屈曲変形する。また、ロッド35は、上記衝撃力を受けることにより、シートクッション10の車両内側のサイドフレーム11Aに近い箇所においても、第1の切欠き35A1を起点にサービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠ざかる方向(上方向)に折れ曲がるように座屈変形すると共に、この部位より中央側に近い第2の切欠き35A2を起点に上記とは逆方向(下方向)に折れ曲がるように座屈変形する態様で屈曲変形する。上記ロッド35の各屈曲変形は、衝撃力が入力された側と反対側とで同じような変形態様となるが、その変形量の大きさは、衝撃力が入力された側において特に顕著となる。
【0032】
これにより、上記ロッド35は、全体として、サービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠ざかる方向に形状を屈ませる態様で、シート幅方向に押し縮められる形で座屈変形するようになっている。このように、ロッド35を、車両側突の発生時に、サービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠ざける方向に適切に屈曲変形させることができる。詳しくは、上記ロッド35に第1の切欠き35A1と第2の切欠き35A2とを互いに軸方向にずらした位置に形成したことにより、ロッド35に入力されたシート側方から衝撃力は、上記第1の切欠き35A1と第2の切欠き35A2とに集中的に作用して、これらを起点にロッド35をサービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠ざける方向にZ字状に屈曲させる曲げ応力として集中的に作用するようになっている。
【0033】
したがって、上記車両側突の発生に伴う衝撃力が、シートクッション10の車両外側のサイドフレーム11Aに対して、シート幅方向に真っ直ぐに入力されなくても、ロッド35は、常に上方側に向かって上述したZ字状の変形態様で安定して屈曲変形するように変形が導かれるようになっている。また、上記第1の切欠き35A1と第2の切欠き35A2とから成る脆弱部35Aを、ロッド35の両端部に形成したことにより、ロッド35の両端部をZ字状に屈曲変形させて、ロッド35全体をサービスプラグ41(バッテリユニット40)から遠ざける方向に大きく移動させるように変形させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、ロッドに形成する脆弱部の第1の脆弱部位や第2の脆弱部位は、切欠きではなく凹みであってもよい。また、脆弱部は、ロッドのシート側方からの衝撃力が入力される側の端部箇所に形成されていればよく、他端側の端部箇所には形成されていなくても構わない。また、上記脆弱部の設定箇所は、ロッドの上記衝撃力が入力される側の端部箇所もしくはその近傍箇所に形成されていればよく、端部寄りの箇所に形成されているか中央寄りの箇所に形成されているかどうかは特に限定されない。また、ロッドに対する脆弱部の第1の脆弱部位と第2の脆弱部位の各設定箇所は、バッテリユニットがロッドに対して前寄り或いは後寄りの箇所に設置されている場合には、ロッドを各設置箇所から遠ざける方向に屈曲変形させられるようにロッドのしかるべく面部に設定されていればよい。また、ロッドは、各スライド装置のロックの解除操作を同期させるためのコネクティングロッドとして構成されたものでなくてもよく、シートクッションの両サイドフレーム間に架設されるものであれば、本発明のロッドの構成に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 車両用シート
10 シートクッション
11 シートクッションフレーム
11A サイドフレーム
11A1 長孔
11B フロントフレーム
11C 補強パイプ
11D 補強パイプ
11E クッションパン
20 スライド装置
21 ロアレール
22 アッパレール
22A 結合ピン
23 ロック機構
23A 解除アーム
30 解除機構
31 解除レバー
32 支軸
33 解除部材
33A 操作アーム
33B 連結アーム
33C ストッパアーム
34 操作棒
35 ロッド
35A 脆弱部
35A1 第1の切欠き(第1の脆弱部位)
35A2 第2の切欠き(第2の脆弱部位)
36 捩りバネ
37 後方操作レバー
37A ピン
40 バッテリユニット
41 サービスプラグ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの左右両サイドのフレーム間にロッドが架設された車両用シートであって、
前記ロッドには、前記シートクッションに車両側突等の発生に伴うシート側方からの衝撃力が入力された際に、該ロッドを前記シートクッションの下方部に設置されたバッテリユニットから遠ざける方向に屈曲変形させるよう該ロッドの座屈変形を特定方向に促進させる脆弱部が形成されており、
前記脆弱部は、前記ロッドの前記衝撃力が入力される側の端部箇所において、前記ロッドを前記バッテリユニットから遠ざける方向とその反対方向とにそれぞれ屈曲させるようにそれぞれの方向を向く側の面部を脆弱化させる第1の脆弱部位と第2の脆弱部位とから成り、
前記第1の脆弱部位が前記第2の脆弱部位よりも前記衝撃力が入力される側に近い箇所に形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記第1の脆弱部位及び前記第2の脆弱部位が、それぞれ、前記ロッドの一部を切り欠いた切欠きとして形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記脆弱部が、前記ロッドの両端部に左右対称の形で形成されていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103637(P2013−103637A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249554(P2011−249554)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】