説明

車両用ストップランプスイッチ

【課題】スイッチケース内に潤滑油や無機物、有機物が浸入しても、収納電気部品の導通不良等の問題を生じることなく、それら電気部品を動作させ得るようにする。
【解決手段】車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて移動子3と共に移動する可動磁石4がリードスイッチ7を動作させ、このリードスイッチ7によってトランジスタ9が、そして、そのトランジスタ9によってリレー10がそれぞれ動作されることにより、車両のストップランプが点灯される。かかる車両用ストップランプスイッチにおいて、スイッチケース1に収納したリードスイッチ7、トランジスタ9、及びリレー10は、いずれも密閉構造であり、スイッチケース1内に潤滑油や無機物、有機物が浸入しても、それらの電気部品の導通不良等の問題を生じることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトの操作構造を改良した車両用ストップランプスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用ストップランプスイッチとしては、一般に、固定コンタクトと可動コンタクト、並びにその可動コンタクトを常時は固定コンタクトに接触又は離間させるスプリングを収容したスイッチケースに、ロッド状の移動子を挿通して設け、その移動子が車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて移動することにより、上記可動コンタクトを固定コンタクトに対し動かして離間又は接触させるようにしたものが供されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−235632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両用ストップランプスイッチの近辺には、様々な機構部に塗布された潤滑油や、製品に含まれた無機物、有機物が存在する。これに対して、上記従来のものにおいては、その潤滑油や無機物、有機物が、スイッチケースの、移動子を挿通した部分からスイッチケース内に浸入し、可動コンタクトと固定コンタクトとの間に付着して、特にはシリコーン成分によりコンタクト間の導通不良の問題を惹起するおそれを有していた。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、スイッチケース内に潤滑油などが浸入しても、収納電気部品の導通不良等の問題を生じることなく、それら電気部品を動作させることのできる車両用ストップランプスイッチを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の車両用ストップランプスイッチは、車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて移動される移動子と、この移動子と共に移動する可動磁石と、この移動する可動磁石によって動作されるリードスイッチと、このリードスイッチによって動作されるトランジスタと、このトランジスタによって動作されるリレーとを具備し、スイッチケースに、前記移動子を磁石と共に移動可能に設けると共に、前記リードスイッチ、トランジスタ、及びリレーを収納配置して成ることを特徴とする(請求項1の発明)。
【発明の効果】
【0006】
上記手段によれば、車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて移動子と共に移動する可動磁石がリードスイッチを動作させ、このリードスイッチによってトランジスタが、そして、そのトランジスタによってリレーがそれぞれ動作されることにより、車両のストップランプが点灯される。
かかる車両用ストップランプスイッチにおいて、スイッチケースに収納したリードスイッチ、トランジスタ、及びリレーは、いずれも密閉構造であり、スイッチケース内に潤滑油や無機物、有機物が浸入しても、それらの電気部品の導通不良等の問題を生じることはない。
【0007】
但し、車両のストップランプを点灯させるには、数〔A〕〜数十〔A〕の電流を流す必要があり、それをリードスイッチを通じてストップランプに直接流すのは、リードスイッチの一般的な仕様上不可能である。そこで、リードスイッチにはトランジスタのベース電流レベルの電流を流し、そのトランジスタを介してリレーを動作させ、ストップランプを点灯させる。
かくして、ストップランプの点灯制御が所望にできるものであり、それでいて又、上記トランジスタ、リレーをリードスイッチと共にスイッチケースに収納配置することで、車両への取付けがまとめでできるようにもなる(個々の取付けを必要としない)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施例(第1の実施形態)につき、図1ないし図4を参照して説明する。
まず、図1には、車両用ストップランプスイッチの全体構成を示しており、スイッチケース1を主体としている。このスイッチケース1は、上側がケース主体部1a、下側がケース底板1bとなっており、そのうちのケース主体部1aは、有蓋で底部が開放した短筒状容器であり、その蓋部(天井部)には中央部から上方へ突出するガイド筒部2を形成している。
【0009】
上記ガイド筒部2には、ロッド状の移動子3を上下に移動可能に挿通している。移動子3は、下部がガイド筒部2よりケース主体部1a内に位置してつば部3aとなっており、このつば部3aの下面側に磁石4を一体化している。磁石4は、移動子3と共に移動する可動磁石であり、筒状、特には円筒状を成していて、この場合、下部がS極、上部がN極となっている。この円筒状を成す可動磁石4の内周面部に連ねて移動子3のつば部3aには、短円柱状の凹部5を形成しており、又、可動磁石4の外周面部に連ねて移動子3のつば部3aには、凹環状のばね座部6を形成している。
【0010】
一方、ケース底板1bには、上側の中央部にリードスイッチ7を取付けており、その周囲部にコイルスプリング8を配置し、更にその周囲の左側部にトランジスタ9を、右側部にリレー10をそれぞれ取付けている。このうち、特にリードスイッチ7は、2枚の磁性舌片7a,7bをガラスケース7c内に封入して成るもので、要するに密閉構造であり、トランジスタ9とリレー10も密閉構造である。
【0011】
加えて、ケース底板1bから下方へは、上記リードスイッチ7、トランジスタ9、及びリレー10に後述のごとく電気接続した接続端子11,12,13を突出させている。そして、その構成で、ケース底板1bは、ケース主体部1aに結合して該ケース主体部1aの底部の開放部を閉塞しており、かくして、スイッチケース1の内部に、前記可動磁石4、リードスイッチ7、コイルスプリング8、トランジスタ9、及びリレー10を収納する構造としている。
【0012】
又、それと同時に、コイルスプリング8をケース底板1bと前記移動子3のばね座部6との間に介在させるようにし、もって、移動子3をコイルスプリング8の押し上げ、可動磁石4をリードスイッチ7から半ば離間させるようにしている。更に、このとき、コイルスプリング8は、移動子3の上部をスイッチケース1のガイド筒部2より上方に突出させるようになっており、従って、コイルスプリング8は、可動磁石4と移動子3とを上述のように付勢する付勢手段として機能するようになっている。
【0013】
図2は上記車両用ストップランプスイッチから車両のストップランプにかけての電気回路構成を示している。そのうちスイッチケース1を外殻とした車両用ストップランプスイッチにおいては、トランジスタ9(npn形)のベースBを分圧用の抵抗14とリードスイッチ7とを介して接続端子11に接続している。
トランジスタ9のコレクタCは、リレー10のコイル10aを介して、同じく接続端子11に接続しており、コイル10aと並列にフライホイールダイオード15を接続している。そして、接続端子11側のそのコイル10aとフライホイールダイオード15との共通接続点を、リレー10の接点10bを介して接続端子12に接続している。
【0014】
トランジスタ9のエミッタEは、接続端子13に接続しており、トランジスタ9のベースBとエミッタEとの間に分圧用の抵抗16を並列に接続している。
しかして、接続端子11は、車両のバッテリー(12〔V〕)に接続しており、接続端子12は、例えば多数のLEDから成るストップランプ17と負荷抵抗18とを介して車体(アース)に接続し、接続端子13は直に車体に接続している。
【0015】
次に、上記構成のものの作用を述べる。
車両のブレーキペダル(図示省略)を踏み込み操作する前、車両用ストップランプスイッチの主要部分は図3に示す状態にあり、すなわち、可動磁石4がリードスイッチ7に半ば掛かった状態にある。この状態では、可動磁石4の下部のS極により、リードスイッチ7の2枚の磁性舌片7a,7bの先端部は、ともにN極に磁化され、反発し合うことにより、離間して開放(常開)している。
【0016】
これに対して、車両のブレーキペダルが踏み込み操作されると、それに応じて移動子3が第2のコイルスプリング13を圧縮して図4に矢印Aで示すように下方へ移動し、それに伴って、可動磁石4も同様に移動し、リードスイッチ7に対する可動磁石4の掛かりが大きくなる。かくして、可動磁石4がリードスイッチ7を動作させる領域に至ると、可動磁石4の下部のS極により、リードスイッチ7の下部の磁性舌片7aの基端部側がN極に磁化され、先端部はS極に磁化される。そして一方、可動磁石4の上部のN極により、リードスイッチ7の上部の磁性舌片7bの基端部側がS極に磁化され、先端部はN極に磁化される。これによって、リードスイッチ7の2枚の磁性舌片7a,7bの先端部は、異極で吸引し合い、接触して閉成動作する。
【0017】
リードスイッチ7が閉成動作すれば、図2に示した電気回路構成では、トランジスタ9のベースBからエミッタEに電流が流れ、トランジスタ9のコレクタCとエミッタEとの間が導通動作するので、リレー10のコイル10aが通電付勢されて接点10bを閉成動作させる。これにより、車両のストップランプ17が通電されて点灯するに至る。
なお、車両のブレーキペダルの踏み込み操作が解除されれば、すべては原状態に復帰し、車両のストップランプ17は消灯するに至る。
【0018】
このように本構成のものでは、車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて移動子3と共に移動する可動磁石4がリードスイッチ7を動作させ、このリードスイッチ7によってトランジスタ9が、そして、そのトランジスタ9によってリレー10がそれぞれ動作されることにより、車両のストップランプ17が点灯される。
かかる車両用ストップランプスイッチにおいて、スイッチケース1に収納したリードスイッチ7、トランジスタ9、及びリレー10は、いずれも密閉構造であり、スイッチケース1内に潤滑油や無機物、有機物が浸入しても、それらの電気部品の導通不良等の問題を生じることはない。
【0019】
但し、車両のストップランプ17を点灯させるには、数〔A〕〜数十〔A〕の電流を流す必要があり、それをリードスイッチ7を通じてストップランプ17に直接流すのは、リードスイッチ7の一般的な仕様上不可能である。そこで、リードスイッチ7にはトランジスタ9のベース電流レベルの電流を流し、そのトランジスタ9を介してリレー10を動作させ、ストップランプ17を点灯させる。
かくして、ストップランプ17の点灯制御が所望にできるものであり、それでいて又、上記トランジスタ9、リレー10をリードスイッチ7と共にスイッチケース1に収納配置することで、車両への取付けがまとめでできるようにもなる。
【0020】
以上に対して、図5ないし図10は本発明の第2実施例(第2の実施形態)を示すもので、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
【0021】
このものの場合、まず、図5に示すように、スイッチケース1のケース底板1b上に、前記リードスイッチ7、トランジスタ9、及びリレー10と共に、磁石21を収納配置している。この磁石21は、前記可動磁石4が車両のブレーキペダルが踏み込み操作に応じて移動するときの移動方向先に固定状態で同軸状に位置する固定磁石であり、リードスイッチ7のほゞ下半部を囲繞している。又、この固定磁石21は、可動磁石4とは逆に上部がS極、下部がN極となっていて、その磁力をリードスイッチ7に常時及ぼすようになっている。
【0022】
一方、可動磁石4はコイルスプリング8の弾発力によって、この場合、リードスイッチ7の上部の磁性舌片7bの基端部に下部(S極)が掛かる位置に保持されている。
そして、図6に示す電気回路構成中、スイッチケース1を外殻とした車両用ストップランプスイッチにおいては、トランジスタ9のベースBをバイアス用の抵抗22を介して接続端子11に接続しており、トランジスタ9のベースBとエミッタEとの間にリードスイッチ7を並列に接続している。そのほかは、第1実施例と同一である。
【0023】
以上の構成で、車両のブレーキペダルを踏み込み操作する前は、車両用ストップランプスイッチの主要部分は図7に示す状態にあり、すなわち、リードスイッチ7のほゞ下半部を囲繞した固定磁石21が、下部のN極でリードスイッチ7の下部の磁性舌片7aの基端部をS極に磁化し、上部のS極で該下部の磁性舌片7aの先端部をN極に磁化している。又、リードスイッチ7の上部の磁性舌片7bの基端部に下部(S極)が掛かる位置に保持された可動磁石4により、リードスイッチ7の上部の磁性舌片7bの基端部がN極に磁化され、先端部がS極に磁化されている。
これらにより、リードスイッチ7の2枚の磁性舌片7a,7bの先端部は、異極で吸引し合うことにより、接触して閉成(常閉)している。
【0024】
これに対して、車両のブレーキペダルが踏み込み操作されると、それに応じて移動子3が図8に矢印Aで示すようにリードスイッチ7及び固定磁石21の存する下方へ移動し、それに伴って、可動磁石4も同様に移動し、リードスイッチ7に対する可動磁石4の掛かりが大きくなる。かくして、可動磁石4がリードスイッチ7を動作させる領域に至ると、図9に示すように、可動磁石4の下部のS極がリードスイッチ7の上部の磁性舌片7bの先端部に磁性を及ぼす変化により、リードスイッチ7の上部の磁性舌片7bの先端部がN極に磁化される。このとき、リードスイッチ7の下部の磁性舌片7aの先端部は、N極に磁化されたままであり、これらによって、リードスイッチ7の2枚の磁性舌片7a,7bの先端部は、同極で反発し合い、離間して開放動作する。図10は、可動磁石4が車両のブレーキペダルが踏み込み操作による移動の最終位置に至った時の状態を示しており、リードスイッチ7は離間して開放している。
【0025】
リードスイッチ7が開放動作すれば、図6に示した電気回路構成では、トランジスタ9のベースBとエミッタEとの間の、リードスイッチ7によるこれまでの短絡が解かれ、ベースBからエミッタEに電流が流れるので、前述同様に、トランジスタ9のコレクタCとエミッタEとの間が導通動作し、リレー10のコイル10aが通電付勢されて接点10bを閉成動作させる。これにより、車両のストップランプ17が通電されて点灯するに至る。
なお、この場合も、車両のブレーキペダルの踏み込み操作が解除されれば、すべては原状態に復帰し、車両のストップランプ17は消灯するに至る。
【0026】
かくして、第1実施例同様の作用効果を得ることができ、加えて、この場合には、リードスイッチ7を、固定磁石21と、逆極性の可動磁石4との協働で動作させるもので、可動磁石4のみで動作させるものに比し、リードスイッチ7に対する磁性の変化を急峻にできるため、図7〜図10に示したように車両のブレーキペダルの踏み込み操作(ストローク)に対するリードスイッチの動作感度を高く得ることができ、すなわち、車両のブレーキペダルの少しの踏み込み操作でストップランプ17を点灯させ得るようにできて、更には、その動作のばらつきも少なくでき、動作精度を高く得ることができる。
【0027】
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、特に車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて移動子が移動したときに、リードスイッチが閉成動作するか、開放動作するかの点や、それらに応じてリレーの接点が閉成動作するか、開放動作するかの点、そのほかにつき、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例を示す車両用ストップランプスイッチ全体の縦断面図
【図2】車両用ストップランプスイッチから車両のストップランプにかけての電気回路構成図
【図3】主要部分のブレーキペダルの踏み込み操作前状態の縦断面図
【図4】主要部分のブレーキペダルの踏み込み操作後状態の縦断面図
【図5】本発明の第2実施例を示す図1相当図
【図6】図2相当図
【図7】図3相当図
【図8】主要部分のブレーキペダルの踏み込み操作直後状態の縦断面図
【図9】主要部分のブレーキペダルの踏み込み操作後直前状態の縦断面図
【図10】図4相当図
【符号の説明】
【0029】
図面中、1はスイッチケース、3は移動子、4は可動磁石、7はリードスイッチ、9はトランジスタ、10はリレー、17はストップランプ、21は固定磁石を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキペダルの踏み込み操作に応じて移動される移動子と、
この移動子と共に移動する可動磁石と、
この移動する可動磁石によって動作されるリードスイッチと、
このリードスイッチによって動作されるトランジスタと、
このトランジスタによって動作されるリレーとを具備し、
スイッチケースに、前記移動子を磁石と共に移動可能に設けると共に、前記リードスイッチ、トランジスタ、及びリレーを収納配置して成ることを特徴とする車両用ストップランプスイッチ。
【請求項2】
スイッチケースに、リードスイッチに常時磁力を及ぼす固定磁石を収納配置し、可動磁石がリードスイッチに対すると共に固定磁石に対しても移動してリードスイッチに及ぼす磁性を変化させることにより、該リードスイッチを動作させることを特徴とする請求項1記載の車両用ストップランプスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−84582(P2008−84582A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260582(P2006−260582)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】