説明

車両用ダイナミックダンパの設定方法及び車両用ダイナミックダンパの取付構造

【課題】車両構成部材にダイナミックダンパを取り付ける場合に、前記車両構成部材の共振振動に起因する騒音を、乗員が感じ難いように効果的に低減する。
【解決手段】振動源からの振動に共振する車両構成部材6の振動を抑制するために該車両構成部材6に取り付けられる車両用ダイナミックダンパ20の設定方法であって、該ダイナミックダンパ20の設定周波数Fbが前記車両構成部材6の共振周波数Faよりも低周波数側に設定されるように、前記ダイナミックダンパ20の特性を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構成部材の振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられる車両用ダイナミックダンパの設定方法と、該車両用ダイナミックダンパの取付構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
フロントエンジンリアドライブ式(FR式)又は四輪駆動式の車両では、エンジン、トランスミッション又は電気モータ等の動力源から後輪へ動力を伝達するためのプロペラシャフトが車両前後方向に延設される。このプロペラシャフトは、前記動力源等から伝達される振動に共振することがあり、これにより、騒音が発生する問題がある。
【0003】
この問題を解消するため、例えば特許文献1に開示されているように、プロペラシャフトには、質量体と弾性体とを有するダイナミックダンパが取り付けられることがある。この場合、ダイナミックダンパの設定周波数(ダイナミックダンパを取り付けることによりプロペラシャフトの振動レベルの波形に下向きのピークを生じさせる周波数)がプロペラシャフトの共振周波数Faに一致するように、ダイナミックダンパの特性、具体的には、ダイナミックダンパを構成する質量体の質量、または弾性体のばね定数もしくは減衰係数等の特性が設定され、これにより、プロペラシャフトの共振振動のレベルが効果的に低減されることになる。
【0004】
図10を参照しながら具体的に説明する。ダイナミックダンパが取り付けられていないプロペラシャフトの振動レベルは、例えば図10の符号Aに示すように、共振周波数FaでピークP1が形成される波形となる。これに対して、プロペラシャフトの共振周波数Faに設定周波数が一致するように特性を設定したダイナミックダンパを取り付けた場合、例えば図10の符号Bに示すように、プロペラシャフトの振動レベルの波形には、共振周波数Faで下向きのピークP2が形成されるとともに該共振周波数Faを挟んで低周波数側と高周波数側とに略均等で比較的小さなピークを有する共振波形w1,w2が形成されるため、ダイナミックダンパが取り付けられない場合に比べて、振動レベルの最大値を効果的に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−72143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図10の符号Bに示すように、プロペラシャフトにダイナミックダンパを取り付けると、上述のように形成される2つの共振波形w1,w2のピーク付近の周波数域では、ダイナミックダンパが取り付けられていないときよりも振動レベルが増大する。これにより、プロペラシャフトの共振振動に起因する騒音は、前記2つの共振波形w1,w2のピーク付近の周波数域のうち特に低周波数側において耳障りに感じやすくなる。
【0007】
低周波数域の方が耳障りに感じやすい理由の一つとして、高周波数域では、高速走行時のエンジンやタイヤの音などといった種々の騒音が車両に発生するため、これらの騒音に、プロペラシャフトの共振に起因する騒音が紛れやすいことが挙げられる。また、別の理由の一つとして、一般に、人が騒音を感じる度合いは周波数によって異なり、低周波数であるほど聞こえやすいことが挙げられる。よって、プロペラシャフトの共振振動に起因する騒音は、乗員にとって耳障りに感じやすい低周波数のものほど重点的に抑制されることが求められる。
【0008】
また、ダイナミックダンパは、プロペラシャフト以外にも、ドライブシャフト等の種々の車両構成部材の振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられることがあり、これらの場合にも同様の課題が存在する。
【0009】
そこで、本発明は、車両構成部材にダイナミックダンパを取り付ける場合に、前記車両構成部材の共振振動に起因する騒音を、乗員が感じ難いように効果的に低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用ダイナミックダンパの設定方法及び車両用ダイナミックダンパの取付構造は、次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
振動源からの振動に共振する車両構成部材の振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられる車両用ダイナミックダンパの設定方法であって、
該ダイナミックダンパの設定周波数が前記車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側に設定されるように、前記ダイナミックダンパの特性を設定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、
振動源からの振動に共振する車両構成部材の振動を抑制するために該車両構成部材に第1及び第2のダイナミックダンパを取り付ける場合に、該第1及び第2のダイナミックダンパを設定する車両用ダイナミックダンパの設定方法であって、
第1のダイナミックダンパの設定周波数が前記車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側に設定されるように、第1のダイナミックダンパの特性を設定し、
第2のダイナミックダンパの設定周波数が、前記車両構成部材に第1のダイナミックダンパを取り付けることにより該第1のダイナミックダンパの設定周波数を挟んで低周波数側に形成される共振波形のピークの周波数に比べて等しいか又は低周波数側に設定されるように、第2のダイナミックダンパの特性を設定することを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、
振動源からの振動に共振する車両構成部材の振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられる車両用ダイナミックダンパの取付構造であって、
該ダイナミックダンパの特性は、該ダイナミックダンパの設定周波数が前記車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側となるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
なお、本明細書において、上記の各請求項に記載された「ダイナミックダンパの設定周波数」という用語は、車両構成部材の周波数に対する振動レベルの波形において、該車両構成部材にダイナミックダンパを取り付けることによって下向きのピークが生じる周波数を意味する。
【0015】
また、本明細書において、上記の各請求項に記載された「ダイナミックダンパの特性」という用語は、ダイナミックダンパを構成する質量体の質量、または弾性体のばね定数もしくは減衰係数などといった、ダイナミックダンパの設定周波数を調整し得る種々の特性を意味する。
【発明の効果】
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、車両構成部材の共振振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられるダイナミックダンパの設定周波数が車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側に設定されるため、車両構成部材の周波数に対する振動レベルの波形において、共振周波数を挟んで低周波数側に形成される共振波形のピークを、共振周波数を挟んで高周波数側に形成される共振波形のピークよりも低くすることができる。これにより、乗員にとって騒音を感じやすい低周波数域において重点的に振動レベルが低減されるため、車両構成部材の共振振動に起因する騒音を、乗員が感じ難いように効果的に低減することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、車両構成部材の共振振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられる第1のダイナミックダンパの設定周波数が車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側に設定されるため、車両構成部材の周波数に対する振動レベルの波形において、共振周波数を挟んで低周波数側に形成される共振波形のピークを、共振周波数を挟んで高周波数側に形成される共振波形のピークよりも低くすることができる。したがって、請求項1に記載の発明と同様、乗員にとって騒音を感じやすい低周波数域において重点的に振動レベルを低減することができる。さらに、同じく前記車両構成部材に取り付けられる第2のダイナミックダンパの設定周波数が、前記低周波数側の共振波形のピークの周波数に比べて等しいか又は低周波数側に設定されるため、第2のダイナミックダンパの設定周波数においても下向きのピークが形成されるとともに、該第2のダイナミックダンパの設定周波数を挟んで低周波数側と高周波数側とに形成される共振波形のピークは、仮に第1のダイナミックダンパのみが取り付けられた場合に形成される前記低周波数側の共振波形のピークよりも小さくなる。したがって、低周波数域において振動レベルの最大値が一層低減されるため、車両構成部材の共振振動に起因する騒音を一層効果的に低減することができる。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、車両構成部材の共振振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられるダイナミックダンパの設定周波数が、車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側に設定されるため、車両構成部材の周波数に対する振動レベルの波形において、共振周波数を挟んで低周波数側に形成される共振波形のピークを、共振周波数を挟んで高周波数側に形成される共振波形のピークよりも低くすることができる。これにより、乗員にとって騒音を感じやすい低周波数域において重点的に振動レベルが低減されるため、車両構成部材の共振振動に起因する騒音を、乗員が感じ難いように効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係る車両用ダイナミックダンパが取り付けられたプロペラシャフトを示す側面図である。
【図2】図1に示すプロペラシャフトに取り付けられたダイナミックダンパの機能を示す模式図である。
【図3】ダイナミックダンパの具体的な構造を示す図1のA−A線断面図である。
【図4】ドライブシャフトにダイナミックダンパを取り付ける場合におけるダイナミックダンパの構造の具体例を示す断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る車両用ダイナミックダンパが取り付けられたプロペラシャフトの周波数に対する振動レベルの波形の一例を示すグラフである。
【図6】第1のダイナミックダンパが取り付けられたプロペラシャフトの周波数に対する振動レベルの波形に関して、低周波数側の共振波形のピークが上限値を超える場合の一例を示すグラフである。
【図7】第2の実施形態に係る車両用ダイナミックダンパが取り付けられたプロペラシャフトを示す側面図である。
【図8】第2の実施形態に係る車両用ダイナミックダンパが取り付けられたプロペラシャフトの周波数に対する振動レベルの波形の一例を示すグラフである。
【図9】第3の実施形態に係る車両用ダイナミックダンパが取り付けられたプロペラシャフトの周波数に対する振動レベルの波形の一例を示すグラフである。
【図10】車両用ダイナミックダンパが取り付けられたプロペラシャフトの周波数に対する振動レベルの波形の従来例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の進行方向を「前」とした場合の方向を指すものとする。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る車両用ダイナミックダンパ20が取り付けられたプロペラシャフト6を示す側面図である。
【0022】
図1に示すように、プロペラシャフト6は、例えばFR式の車両1において車両前後方向に延設され、その前端においてジョイント部材4を介してエンジン、トランスミッション又は電気モータ等の動力源2に駆動連結され、後端においてジョイント部材8を介して駆動輪としての後輪10に駆動連結されている。
【0023】
ただし、プロペラシャフト6が搭載される車両1は、必ずしもFR式の車両である必要はなく、例えば四輪駆動式の車両であってもよい。
【0024】
プロペラシャフト6は、動力源2から伝達される例えば上下方向の振動等に共振することがあり、このプロペラシャフト6の共振振動が騒音の原因となり得る。この問題を解消するため、本実施形態では、プロペラシャフト6に、例えばその定常波の腹に対応する位置においてダイナミックダンパ20が取り付けられている。
【0025】
ただし、本発明において、ダイナミックダンパ20は、振動抑制効果を発揮し得る位置であれば、プロペラシャフト6の任意の位置に取り付けることができる。
【0026】
図2は、ダイナミックダンパ20の機能を示す模式図である。図2に示すように、ダイナミックダンパ20は、質量体22と、質量体22とプロペラシャフト6との間に介在するばね要素24と、同じく質量体22とプロペラシャフト6との間に介在する減衰要素26とを有する。ばね要素24は、プロペラシャフト6の振動を打ち消すように質量体22を振動させることでプロペラシャフト6に入力される衝撃を吸収する緩衝機能を有し、減衰要素26は、ばね要素24による質量体22の振動を減衰させる減衰機能を有する。
【0027】
ダイナミックダンパ20は、特定の設定周波数Fbを有し、該設定周波数Fbにおいてプロペラシャフト6の振動レベルを効果的に低減することができる。具体的には、例えば図5の符号Bで示されるように、ダイナミックダンパ20は、その設定周波数Fbにおいて、プロペラシャフト6の周波数に対する振動レベルの波形に下向きのピークP2を生じさせる。これにより、ダイナミックダンパ20の設定周波数Fbにおいて、プロペラシャフト6の共振振動が効果的に低減される。
【0028】
ダイナミックダンパ20の設定周波数Fbは、ダイナミックダンパ20の種々の特性、具体的には、例えばダイナミックダンパ20を構成する前記質量体22の質量M、前記ばね要素24のばね定数K、又は前記減衰要素26の減衰係数C等を調整することにより、所望の周波数に設定可能である。
【0029】
図3は、本実施形態において上記の質量体22、ばね要素24及び減衰要素26を構成するためのダイナミックダンパ20の具体的な構造を示す断面図である。
【0030】
図3に示すように、プロペラシャフト6は円筒状に形成されており、該プロペラシャフト6の内部にダイナミックダンパ20が取り付けられている。ダイナミックダンパ20は、例えば円柱状の重り30と、該重り30の外周面を覆う弾性部材32とを有する。弾性部材32は例えばゴムからなり、重り30の外周面に例えば焼き付けにより固着されている。また、ダイナミックダンパ20は、弾性部材32を径方向内側へ圧縮させながらプロペラシャフト6に圧入することで該プロペラシャフト6に取り付けられている。
【0031】
かかるダイナミックダンパ20の構造において、重り30は前記質量体22としての機能を有し、弾性部材32は前記ばね要素24としての機能と前記減衰要素26としての機能とを兼ね備えている。よって、弾性部材32の材質や硬度、又は重り30の質量等を調整することにより、ダイナミックダンパ20の設定周波数Fbを調整することができる。
【0032】
ただし、本発明において、ダイナミックダンパ20の具体的な構造は、図3に示す構造に限定されるものでなく、例えば、プロペラシャフト6に外嵌可能な構造であってもよい。また、本発明において、ダイナミックダンパにより振動が抑制される車両構成部材はプロペラシャフト6に限定されるものでなく、例えば、ドライブシャフトの共振振動を抑制するために該ドライブシャフトにダイナミックダンパを取り付けるようにしてもよい。
【0033】
より具体的には、例えば図4に示す例のように、ドライブシャフト100の外周面にダイナミックダンパ120を取り付けるようにし、該ダイナミックダンパ120が、ドライブシャフト100の径方向外側に取り付けられる環状の重り130と、該重り130とドライブシャフト100との間に介装される弾性部材132とを有するように構成してもよい。この場合、重り130は前記質量体22としての機能を有し、弾性部材132は前記ばね要素24としての機能と前記減衰要素26としての機能とを兼ね備えることとなる。
【0034】
図5を参照しながら、プロペラシャフト6に取り付けられるダイナミックダンパ20の設定方法について説明する。
【0035】
ただし、以下に説明する設定方法は、図3に示す構造とは異なる構造を有するダイナミックダンパ、及び、プロペラシャフト6以外の車両構成部材に取り付けられるダイナミックダンパを設定する場合にも同様に適用することができる。
【0036】
図5において、符号Aは、ダイナミックダンパ20が取り付けられていないプロペラシャフト6についての周波数に対する振動レベルの波形を示し、符号Bは、本実施形態に係る設定方法により設定されたダイナミックダンパ20が取り付けられたプロペラシャフト6についての同様の波形を示し、符号Tは、プロペラシャフト6の振動レベルの上限値を示す。
【0037】
振動レベルの上限値Tは、周波数が低くなるに連れて低くなるように設定されており、図5において右肩上がりに傾斜したラインを形成する。これは、プロペラシャフト6の共振振動に起因する騒音が、上述の理由により周波数が低いものほど乗員にとって耳障りに感じやすいためである。
【0038】
符号Aに示すように、ダイナミックダンパ20が取り付けられていないプロペラシャフト6の振動レベルは、該プロペラシャフト6の共振周波数FaでピークP1が形成される波形となり、該ピークP1が上限値Tを超えると、プロペラシャフト6の共振振動に起因して、乗員にとって耳障りな騒音が発生し得る。
【0039】
符号Bに示すように、上記の騒音を防止するためにダイナミックダンパ20が取り付けられたプロペラシャフト6の振動レベルは、設定周波数Fbにおいて下向きのピークP2が形成され、且つ、設定周波数Fbを挟んで低周波数側と高周波数側とにそれぞれ共振波形w1,w2が形成された波形となる。
【0040】
本実施形態では、ダイナミックダンパ20の設定周波数Fbがプロペラシャフト6の共振周波数Faよりも低周波数側に設定されるように、ダイナミックダンパ20の特性が設定される。これにより、下向きのピークP2が、プロペラシャフト6の共振周波数Faよりも低周波数側に形成されるため、図10に示す従来例に比べて、前記低周波数側の共振波形w1のピークP3は低減され、前記高周波数側の共振波形w2のピークP4は高くなる。すなわち、本実施形態によれば、低周波数側の共振波形w1のピークを、高周波数側の共振波形w2のピークよりも低くすることができ、これにより、乗員にとって騒音を感じやすい低周波数域において重点的に振動レベルを低減することができる。
【0041】
ダイナミックダンパ20の設定周波数Fbをプロペラシャフト6の共振周波数Faから低周波数側へずらす量は、低周波数側および高周波数側の共振波形w1,w2のピークP3,P4が上限値T以下となるような量に設定されることが好ましく、これにより、プロペラシャフト6の振動レベルを全周波数域において上限値T以下に抑制することができ、プロペラシャフト6の共振振動に起因する騒音を、乗員にとって耳障りに感じ難い程度に確実に防止することができる。よって、設定周波数Fbは、図5に示す上限値Tのラインの傾斜が大きいほど、共振周波数Faから低周波数側へ大きくずらして設定されることが好ましい。
【0042】
[第2の実施形態]
続いて、図6〜図8を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、図6〜図8において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成要素には同符号を付してある。
【0043】
先ず、図6を参照しながら、第1の実施形態に係るダイナミックダンパ20の設定方法の課題について説明する。図6に示すように、第1の実施形態によれば、低周波数側の共振波形w1のピークP3がある程度低減されるが、上限値T以下になるまで低減されるとは限らない。この点に鑑みて、第2の実施形態では、ダイナミックダンパ20を次のように設定することで、低周波数側の騒音について一層効果的な抑制が図られている。
【0044】
図7に示すように、第2の実施形態では、プロペラシャフト6の共振振動を一層効果的に抑制するために、該プロペラシャフト6に第1のダイナミックダンパ220と第2のダイナミックダンパ222とが取り付けられる。
【0045】
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様、ダイナミックダンパ220,222により振動抑制される車両構成部材は、例えばドライブシャフト100等、プロペラシャフト6以外の部材であってもよく、第1及び第2のダイナミックダンパ220,222の取付位置は、振動抑制効果を発揮し得る限り、特に限定されるものでない。また、第1の実施形態と同様、ダイナミックダンパ220,222の具体的な構造は特に限定されるものでなく、例えば、図3に示す構造又は図4に示す構造であってもよい。
【0046】
図8を参照しながら、プロペラシャフト6に取り付けられる第1及び第2のダイナミックダンパ220,222の設定方法について説明する。
【0047】
図5と同様、図8において、符号Aは、ダイナミックダンパ220,222が取り付けられていないプロペラシャフト6についての周波数に対する振動レベルの波形を示し、符号Bは、本実施形態に係る設定方法により設定された第1及び第2のダイナミックダンパ220,222が取り付けられたプロペラシャフト6についての同様の波形を示し、符号Tは、プロペラシャフト6の振動レベルの上限値を示す。
【0048】
本実施形態において、第1のダイナミックダンパ220には、第1の実施形態に係るダイナミックダンパ20と同様の設定周波数Fbが設定される。すなわち、第1のダイナミックダンパ220の設定周波数Fbがプロペラシャフト6の共振周波数Faよりも低周波数側に設定されるように、第1のダイナミックダンパ220の特性が設定される。これにより、第1の実施形態と同様、共振周波数Faよりも低周波数側に設定された設定周波数Fbにおいて下向きのピークP2が形成されるとともに、設定周波数Fbを挟んで高周波数側に共振波形w2が形成される。これに対して、第1のダイナミックダンパ220が取り付けられることにより設定周波数Fbを挟んで低周波数側に形成される共振波形w1(図6参照)の波形部分については、次のように第2のダイナミックダンパ220が設定されることにより、後述のように変形した波形となる。
【0049】
第2のダイナミックダンパ222の設定周波数は、前記低周波数側の共振波形w1の波形部分の最大値を低減するために、該共振波形w1のピークP3の周波数Fc(図6参照)に等しい値に設定される。
【0050】
これにより、図8に示すように、第2のダイナミックダンパ222の設定周波数Fcにおいて下向きのピークP5が形成されるとともに、該設定周波数Fcを挟んで低周波数側と高周波数側とに、第1のダイナミックダンパ220が取り付けられることにより形成される前記低周波数側の共振波形w1のピークP3(図6参照)よりも小さなピークP6を有する共振波形w3,w4が形成される。したがって、低周波数域において振動レベルの最大値が一層低減されるため、プロペラシャフト6の共振振動に起因する騒音を一層効果的に低減することができる。
【0051】
[第3の実施形態]
次に、図9を参照しながら、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態において、第1又は第2の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、図9において、第1又は第2の実施形態と同様の機能を有する構成要素には同符号を付してある。
【0052】
第3の実施形態では、第2の実施形態と同様、プロペラシャフト6に第1及び第2のダイナミックダンパ220,222が取り付けられる。また、第1のダイナミックダンパ220の設定周波数Fbは、第2の実施形態と同様に設定される。
【0053】
なお、第3の実施形態においても、第1及び第2の実施形態と同様、ダイナミックダンパ220,222により振動抑制される車両構成部材は、例えばドライブシャフト100等、プロペラシャフト6以外の部材であってもよく、第1及び第2のダイナミックダンパ220,222の取付位置は、振動抑制効果を発揮し得る限り、特に限定されるものでない。また、第1及び第2の実施形態と同様、ダイナミックダンパ220,222の具体的な構造は特に限定されるものでなく、例えば、図3に示す構造又は図4に示す構造であってもよい。
【0054】
一方、第2のダイナミックダンパ222の設定周波数Fdは、第2の実施形態と異なり、プロペラシャフト6に第1のダイナミックダンパ220を取り付けることにより該第1のダイナミックダンパ222の設定周波数Fbを挟んで低周波数側に形成される共振波形w1のピークP3の周波数Fc(図6参照)に比べて低周波数側に設定される。
【0055】
これにより、第2の実施形態と同様、第2のダイナミックダンパ222の設定周波数Fdにおいて下向きのピークP7が形成されるとともに、該設定周波数Fdを挟んで低周波数側と高周波数側とに、第1のダイナミックダンパ220が取り付けられることにより形成される前記低周波数側の共振波形w1のピークP3(図6参照)よりも小さなピークP8,P9を有する共振波形w5,w6が形成される。したがって、低周波数域において振動レベルの最大値が一層低減されるため、プロペラシャフト6の共振振動に起因する騒音を一層効果的に低減することができる。
【0056】
しかも、本実施形態では、第2の実施形態と異なり、第2のダイナミックダンパ222の設定周波数Fdが、前記低周波数側の共振波形w1のピークP3の周波数Fc(図6参照)よりも低周波数側にずらして設定されるため、設定周波数Fdを挟んで低周波数側の共振波形w5のピークP8が設定周波数Fdを挟んで高周波数側の共振波形w6のピークP9よりも低くなる。そのため、低周波数域の振動レベルを一層重点的に抑制することができ、騒音低減効果を一層高めることができる。
【0057】
第2のダイナミックダンパ222の設定周波数Fdを前記低周波数側の共振波形w1のピークP3の周波数Fc(図6参照)から低周波数側へずらす量は、設定周波数Fdを挟んで低周波数側および高周波数側の共振波形w5,w6のピークP8,P9が上限値T以下となるような量に設定されることが好ましく、これにより、プロペラシャフト6の振動レベルを全周波数域において上限値T以下に抑制することができ、プロペラシャフト6の共振振動に起因する騒音を、乗員にとって耳障りに感じ難い程度に確実に防止することができる。よって、設定周波数Fdは、図9に示す上限値Tのラインの傾斜が大きいほど、前記周波数Fcから低周波数側へ大きくずらして設定されることが好ましい。
【0058】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明によれば、車両構成部材にダイナミックダンパを取り付ける場合に、前記車両構成部材の共振振動に起因する騒音を、乗員が感じ難いように効果的に低減することが可能となるから、ダイナミックダンパにより共振振動を抑制可能な車両構成部材を備えた車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0060】
1:車両、2:動力源、6:プロペラシャフト(車両構成部材)、10:駆動輪、20,120,220,222:ダイナミックダンパ、100:ドライブシャフト(車両構成部材)、Fa:プロペラシャフトの共振周波数、Fb,Fd:ダイナミックダンパの設定周波数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源からの振動に共振する車両構成部材の振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられる車両用ダイナミックダンパの設定方法であって、
該ダイナミックダンパの設定周波数が前記車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側に設定されるように、前記ダイナミックダンパの特性を設定することを特徴とする車両用ダイナミックダンパの設定方法。
【請求項2】
振動源からの振動に共振する車両構成部材の振動を抑制するために該車両構成部材に第1及び第2のダイナミックダンパを取り付ける場合に、該第1及び第2のダイナミックダンパを設定する車両用ダイナミックダンパの設定方法であって、
第1のダイナミックダンパの設定周波数が前記車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側に設定されるように、第1のダイナミックダンパの特性を設定し、
第2のダイナミックダンパの設定周波数が、前記車両構成部材に第1のダイナミックダンパを取り付けることにより該第1のダイナミックダンパの設定周波数を挟んで低周波数側に形成される共振波形のピークの周波数に比べて等しいか又は低周波数側に設定されるように、第2のダイナミックダンパの特性を設定することを特徴とする車両用ダイナミックダンパの設定方法。
【請求項3】
振動源からの振動に共振する車両構成部材の振動を抑制するために該車両構成部材に取り付けられる車両用ダイナミックダンパの取付構造であって、
該ダイナミックダンパの特性は、該ダイナミックダンパの設定周波数が前記車両構成部材の共振周波数よりも低周波数側となるように設定されていることを特徴とする車両用ダイナミックダンパの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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