説明

車両用ドアミラー

【課題】連続的に曲率が変化する徐変曲率部を備えた車両用ドアミラーを採用するときに、両眼の結像にかかる時間を短くすることを可能にする。
【解決手段】車幅方向に延在するとともに、上方から下方に向かうに連れて曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変曲率部32を備えた車両用ドアミラー30において、徐変曲率部32の上下方向での曲率の変化率を、車幅方向における車外側よりも車内側の方を大きく設定し、徐変曲率部32の上下方向の変化率を、一定の割合で変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側部に設けられ、車体後方及び車体側方を映し出す車両用ドアミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアミラーとして、平面鏡あるいは曲率のある曲面鏡(凸面鏡)を装着したものが知られている。
この種の車両用ドアミラーは、例えば、法規で運転席側ドアミラーは平面鏡の採用が義務づけられている地域もあり、車両が運行される地域の法制や車種により、適宜設計がなされるものであった。
このような、車両用ドアミラーとして、車両の下方の視界を広げるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の車両用ドアミラーは、単一曲率曲面部の下方に向けて半径が徐々に小さくなる徐変曲率曲面部を設け、単一曲率曲面部と徐変曲率曲面部とが視覚的に識別できるように構成し、単一曲率曲面部は車両後方を映すとともに、徐変曲率曲面部が車両の後車輪近傍を映すように形成された複合曲面ミラーである。
【0004】
すなわち、上記の車両用ドアミラーは、幅方向(長手方向)において、上下方向における徐変曲率曲面部の曲率の変化率がドアミラーの車内側よりも車外側の方を大きいことが開示されている。
一般的な除変曲率曲面を有する車両用ドアミラーでは、ドアミラーの幅方向(長手方向)において除変曲率曲面の曲率の変化率を一定にすることも知られている。
【0005】
一般的に、人間の眼の結像のメカニズムとして次のことが知られる。例えば、車両用ドアミラーに平面鏡が用いられている場合を例として説明する。下方の物体を右眼と左眼で見る場合、その物体が車両用ドアミラーに映る位置が右眼と左眼では異なる。水平方向では、右眼の方が外側に映り、左眼のほうが内側に映る。上下方向では、右眼の方が上側に映り、左眼の方が下側に映る。そして、平面鏡に映った右眼と左眼の像を結合する場合は、首を傾けて左右の眼を通る直線の方向に像を並べてから、2つの像を結合する。すなわち、2つのアクションを行っている。
また、平面鏡ではなく曲面鏡では、曲率に応じて物体の像が圧縮され、像の写る位置が鏡面中心に近づく性質を備えている。
【0006】
しかし、一般的な除変曲率曲面を有する車両用ドアミラーでは、単一曲率曲面部の下方に向けて半径が徐々に小さくなる徐変曲率曲面部が設けられたので、平面鏡に比べ物体の像が異なり、結像が困難となる。すなわち、右眼の像と左眼の像の上下方向での位置が異なり、その位置での曲率も異なることから像の形も異なる。
【0007】
また、特許文献1の車両用ドアミラーのように、上下方向における徐変曲率曲面部の曲率の変化率がドアミラーの車内側よりも車外側の方を大きくすると、曲率の変化率が大きい車外側の方が像が上方に移動する。すなわち、右眼と左眼の上下方向のズレが大きくなり、首を傾ける量が増える。よって、両眼の結合にかかる時間がさらに長くなると推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−178921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、連続的に曲率が変化する徐変曲率部を備えた車両用ドアミラーを採用するときに、両眼の結像にかかる時間を短くすることができる車両用ドアミラーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車両幅方向に延在するとともに、上方から下方に向かうに連れて曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変曲率部を備えた車両用ドアミラーにおいて、徐変曲率部の上下方向での曲率の変化率を、車両幅方向における車外側よりも車内側の方を大きく設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、徐変曲率部の車幅方向での曲率の変化率を、一定の割合で変化させることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、徐変曲率部の車幅方向での曲率の変化率を、車幅方向において車内側の端部からの距離に対する対数関数に応じて変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車両用ドアミラーに、車両幅方向に延在するとともに、上方から下方に向かうに連れて曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変曲率部を備える。
徐変曲率部の上下方向での曲率の変化率を、車両幅方向における車外側よりも車内側の方を大きく設定したので、徐変曲率部に写った物体を見る場合に、右眼で見る像と左眼で見る像の上下方向の位置のずれを小さくすることができる。この結果、両眼の結像にかかる時間を短くすることができる。
通常、徐変曲率部の車内側は特に車両を駐車する時に車両後部と車外側の物体との位置関係を把握するために用い、車外側は走行時に道路の車線や隣接する車線を走行する車を認識するために用いる。
車幅方向における曲率が、車内側の方が大きく車外側が小さくなることから、徐変曲率部の車内側に写る像の方が、徐変曲率部の車外側に写る像よりもより車幅方向で圧縮されることになる。これにより、車内側では車両の近傍の物体を車両に近づけて映し出すことができ、視線を動かさなくともより広い範囲の物体を一度に認識できる。また、車外側では像の圧縮を少なくすることができるので、道路の車線の車幅方向への曲がりを抑制することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、徐変曲率部の車幅方向での曲率の変化率を、一定の割合で変化させた。これにより、車幅方向の成分を持った直線上の物体を徐変曲率部で映した場合に、直線形状を維持したまま映し出すことができるので、運転者による物体の認識が容易になる。
【0015】
請求項3に係る発明では、徐変曲率部の車幅方向での曲率の変化率を、車幅方向において車内側の端部からの距離に対する対数関数に応じて変化させた。これにより、車内側では、更に車両の近傍の物体を車両に近づけて映し出すことができ、視線を動かさなくともより広い範囲の物体を一度に認識できる。また、車外側では、更に像の圧縮を少なくすることができるので、道路の車線の車幅方向への曲がりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車両用ドアミラーが採用された車両の平面図である。
【図2】左眼と右眼とで左右方向に距離差があることを示す原理図である。
【図3】左眼と右眼とで上下方向に距離差があることを示す原理図である。
【図4】本発明に係る車両用ドアミラーの説明図である。
【図5】図4に示される車両用ドアミラーの作用説明図である。
【図6】図4に示される車両用ドアミラーの第1の曲率設定方法を示す説明図である。
【図7】本発明に係る車両用ドアミラーの比較検討図である。
【図8】本発明に係る実施例2の車両用ドアミラー説明図である。
【図9】本発明に係る実施例3の車両用ドアミラー説明図である。
【図10】図9に示される車両用ドアミラーの作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0018】
図1に示されたように、車両10は、左右にドアミラーユニット13,13を備える。 左のドアミラーユニット13は、車体11側に取付けられるミラーステー14と、このミラーステー14に可倒に取付けられるミラーハウジング15と、このミラーハウジング15に揺動可能に取付けられる車両用ドアミラー30(以下、「ドアミラー30」と略記する)とからなる。
なお、左(助手席側)のドアミラーユニット13は、車体中心に関して右(運転者側)のドアミラーユニット13と対称である。
【0019】
左右のドアミラー30,30(一方不図示)の後方に、運転者の左右のアイポイント18,19が位置している。例えば、平面視で、左のアイポイント(左眼)18から左のドアミラー30までの距離と、右のアイポイント(右眼)19から右のドアミラー30までの距離とは異なることが判る。
また、「前後」「左右」「上下」は車両10を基準とする。「車内側」「車外側」は車室12の内外である。
【0020】
先に、人間が物体を視認するときの原理を説明する。すなわち、人間が左眼18と右眼19とで物体25(図2参照)を視認するときには、左右方向と上下方向とにおいて、物体25までの距離差が生じている。ここでは、ドアミラーを平面鏡として説明する。
【0021】
図2(a)に平面鏡のドアミラー21の正面図が示される。図面左の一点鎖線が人間の左眼18の視線ライン23であり、図面右の一点鎖線が人間の右眼19の視線ライン24である。図2(b)に図1の紙面上方からドアミラー21を見た場合の原理図が示される。
【0022】
人間の左眼18と右眼19とで瞳孔距離Sがある。左眼18と右眼19とでドアミラー21を介して物体(実像)25が視認される。物体25の虚像26はドアミラー21の奥に位置する。
ここで、左眼18からドアミラー21までの距離をL1、ドアミラー21から実像(物体)25までの距離をL2、右眼19からドアミラー21までの距離をR1、ドアミラー21から実像(物体)25までの距離をR2とする。L1+L2とR1+R2とは異なる。すなわち、同じ実像を見る場合に、左眼18と右眼19とで左右方向(車幅方向)の視認する位置が異なる。
上記の左眼18と右眼19とで左右方向(車幅方向)でも視認する位置が異なることを、左右方向の視認差と呼ぶ。
【0023】
図3(a)に平面鏡のドアミラー21の正面図が示される。図面左の一点鎖線が人間の左眼18の視線ライン23であり、図面右の一点鎖線が人間の右眼19の視線ライン24である。図3(b)はドアミラー21の側面図が示される。
【0024】
人間の左眼18と右眼19とで図2(b)に示される瞳孔距離Sがある。左眼18と右眼19とでドアミラー21を介して物体(実像)25が視認される。物体25の虚像26はドアミラー21の奥に位置する。
ここで、左眼18からドアミラー21までの距離をLh1、ドアミラー21から実像(物体)25までの距離をLh2、右眼19からドアミラー21までの距離をRh1、ドアミラー21から実像(物体)25までの距離をRh2とする。Lh1+Lh2とRh1+Rh2とは異なる。すなわち、同じ実像を見る場合に、左眼18と右眼19とで上下方向(高さ方向)でも視認する位置が異なる。
上記の左眼18と右眼19とで上下方向(高さ方向)でも視認する位置が異なることを、上下方向の視認差と呼ぶ。
【0025】
以下、運転者側(右側)の本発明に係るドアミラー30を対称に説明する。
図4(a)にドアミラー30の平面が示される。図4(b)に図4(a)のb−b線断面図が示される。図4(c)に図4(a)のc−c線断面図が示される。
ドアミラー30は、所定の曲率に設定された固定曲率部31と、上方から下方に向かうに連れて曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変曲率部32とから構成される。
【0026】
固定曲率部31は、ドアミラー30の上部に形成される。徐変曲率部32は、車幅方向に延在するとともに、固定曲率部31の下方に形成される。上下方向での曲率の変化率が、車幅方向における車外側よりも車内側の方が大きく設定される。
【0027】
図5(a)に、ドアミラー30を左眼18だけで見た場合の、徐変曲率部32で視認される物体(実像)35及び虚像36の位置が示される。図5(b)に、ドアミラー30を右眼19だけで見た場合の、徐変曲率部32で視認される物体(実像)35及び虚像36の位置が示される。
【0028】
図5(c)に、左眼18だけで見た徐変曲率部32で視認される物体(実像)35の写像(視認位置)37、及び右眼19だけで見た徐変曲率部32で視認される物体(実像)35の写像(視認位置)38が示される。
徐変曲率部32の上下方向での曲率の変化率を、車幅方向における車外側よりも車内側の方を大きく設定したので、写像37,38を結ぶ直線A4はほぼ水平となる。図2及び図3で説明したように、徐変曲率部32が平面鏡である場合には、左眼18と右眼19とで(左右方向及び上下方向で)視認差があるので、視認位置を結ぶ直線A5は車幅方向外方が斜めに下がる。
【0029】
次に、徐変曲率部32の曲率の設定方法を説明する。
図6に示されたように、ドアミラー30の下端に地面と平行な水平線H1を設定する。この水平線H1に直行し、ドアミラー30の略中央を通る垂線V1を引く。これらの水平線H1と垂線V1の交点Q1から所定距離離れた位置に基準点P1を設ける。この基準点P1からドアミラー30の車内側に内線分E1を引く。基準点P1からドアミラー30の車外側に外線分F1を引く。内線分E1と外線分F1とのなす角度をθとする。基準点P1を中心として徐変曲率部32の開始ラインC1を描く。基準点P1を中心として徐変曲率部32の終了ラインS1を描く。
【0030】
開始ラインC1と内線分E1との交点をG1、終了ラインS1と内線分E1との交点をG2とするときに、交点G1から交点G2までの距離をbとする。開始ラインC1と外線分F1との交点をG3、終了ラインS1と外線分F1との交点をG4とするときに、交点G3から交点G4までの距離もbである。
【0031】
ここで、交点G1〜G4で囲まれる範囲が、徐変曲率部32の曲率設定範囲W1である。また、固定曲率部31の曲率をK、交点G2の曲率をα、交点G4の曲率をβとする(α>β)。なお、交点G1及び交点G3は、徐変曲率部32の開始ラインC1上の点であるので、曲率はKである。なお、曲率K、曲率α、曲率β及び内線分E1と外線分F1とのなす角度θは定数である。
【0032】
内線分E1から基準点P1を中心に角度γ回転させた線分J1と、徐変曲率部32の終了ラインS1との交点G5との曲率Mγは、
Mγ=α+(β−α)γ/θ……(1)
で表すことができる。なお、角度γは変数である。
すなわち、内線分E1から基準点P1を中心に角度に応じて、式(1)に示すように、車内側から車外側に曲率を一定の変化率で変化させて設定する。
【0033】
基準点P1を中心に徐変曲率部32の開始ラインC1から半径yだけ増加させた円弧A1と外線分F1との交点G6での曲率Maは
Ma=K+(β−K)y/b……(2)
で表すことができる。
すなわち、徐変曲率部32の開始ラインC1からの距離に応じて、式(2)に示すように、曲率を一定の変化率で変化させている。
【0034】
図7(a)〜(c)に、左眼18(図1参照)及び右眼19で認識される物体の結像手順が示される。比較例1のドアミラー21は、平面鏡である。
(a)において、左眼18で写像27が認識され、右眼19で写像28が認識される。先に述べたように、左眼18と右眼19とでは視認差があるので、写像27,28は、車幅方向に距離S4だけずれるとともに、上下方向に距離S5だけずれて認識されている。
【0035】
(b)おいて、人間の首を傾けるような無意識の動作を伴って、人間の脳の中で上下方向の誤差を吸収する。次に、(c)において、左右の写像27,28を結像させて一つの像29として認識する。
【0036】
図7(d)〜(f)に比較例2のドアミラー100が示される。ドアミラー100に、車幅方向に一定の曲率に設定し、上下方向に曲率を変えた徐変曲率部102が設けられる。
(d)において、左眼18で写像107が認識され、右眼19で写像108が認識される。平面鏡21と同様に、左眼18と右眼19とでは視認差があるので、車幅方向に距離S6だけずれるとともに、上下方向に距離S7だけずれて認識される。
【0037】
(e)おいて、人間の首を傾けるような無意識の動作を伴って、人間の脳の中で上下方向の誤差を吸収する。この場合に、徐変曲率部102に曲率が設定してあるので、(d)に示された平面鏡21よりも上下方向の誤差の吸収に時間を要する。次に、(f)において、左右の写像107,108を結像させて一つの像109として認識する。
【0038】
図7(g)〜(i)に実施例のドアミラー30が示される。(g)において、左眼18(図1参照)で写像37が認識され、右眼19で写像38が認識される。この場合に、徐変曲率部32の上下方向での曲率の変化率を、車幅方向における車外側よりも車内側の方を大きく設定したので、上下方向の視認差が抑制され左眼18と右眼19で認識される写像37,38は略水平に認識される。これにより、(h)おいて、人間の首を傾けるような無意識の動作を伴って、人間の脳の中で上下方向の誤差を吸収する時間が短くなる。次に、(i)において、左右の写像37,38を結像させて一つの像39として認識する。
【0039】
図4及び図5に示されたように、ドアミラー30は、車幅方向に延在するとともに、上方から下方に向かうに連れて曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変曲率部32を備える。
徐変曲率部32の上下方向での曲率の変化率を、車幅方向における車外側よりも車内側の方を大きく設定したので、徐変曲率部32に写った物体を見る場合に、右眼19で見る写像38と左眼18で見る写像37の上下方向の位置のずれを小さくすることができる。
この結果、両眼18,19の結像にかかる時間を短くすることができる。
【0040】
通常、徐変曲率部32の車内側は特に車両を駐車する時に車両後部と車外側の物体との位置関係を把握するために用い、車外側は走行時に道路の車線や隣接する車線を走行する車を認識するために用いる。
車幅方向における曲率が、車内側の方が大きく車外側が小さくなることから、徐変曲率部32の車内側に写る像の方が、徐変曲率部32の車外側に写る像よりもより車幅方向で圧縮されることになる。
【0041】
これにより、車内側では車両10(図1参照)の近傍の物体を車両10に近づけて映し出すことができ、視線を動かさなくともより広い範囲の物体を一度に認識できる。また、車外側では像の圧縮を少なくすることができるので、道路の車線の車幅方向への曲がりを抑制することができる。
【0042】
ドアミラー30では、徐変曲率部32の車幅方向での曲率の変化率を、一定の割合で変化させた。これにより、車幅方向の成分を持った直線上の物体を徐変曲率部32で映した場合に、直線形状を維持したまま映し出すことができるので、運転者による物体の認識が容易になる。
【実施例2】
【0043】
図8に示されたように、ドアミラー(車両用ドアミラー)40は、ドアミラー30(図4参照)と同様に、固定曲率部41と、徐変曲率部42とから構成される。固定曲率部41は、ドアミラー40の上部に形成される。徐変曲率部42は、車幅方向に延在するとともに、固定曲率部41の下方に形成される。
【0044】
徐変曲率部42の曲率の設定方法を説明する。
ドアミラー40の下端に地面と平行な水平線H2を設定する。ドアミラー40の車内側に水平線H2と直交させて内線分E2を引く。ドアミラー40の車外側に水平線H2と直交させて外線分F2を引く。水平線H2と平行に徐変曲率部42の開始ラインC2を描く。水平線H2と平行に徐変曲率部42の終了ラインS2を描く。
【0045】
開始ラインC2と内線分E2との交点をN1、終了ラインS2と内線分E2との交点をN2とするときに、交点N1から交点N2までの距離をbとする。開始ラインC2と外線分F2との交点をN3、終了ラインS2と外線分F2との交点をN4とするときに、交点N3から交点をN4までの距離もbである。交点N1から交点N3までの距離をaとする。交点N2から交点N4までの距離もaである。
ここで、交点N1〜N4で囲まれる範囲が、徐変曲率部42の曲率設定範囲W2である

【0046】
また、固定曲率部41の曲率をK、交点N2の曲率をα、交点N4の曲率をβとする(α>β)。なお、交点N1及び交点N3は、徐変曲率部42の開始ラインC2上の点であるので、曲率はKである。
【0047】
交点N2から交点N5までの距離をxとするときに、交点N2から距離xだけ交点N4によった点N5の曲率Mxは、
Mx=α+(β−α)x/a……(3)
で表すことができる。
すなわち、内線分E2からの距離に応じて、式(3)に示すように、車内側から車外側に曲率を一定の変化率で変化させて設定する。
なお、交点N2を、徐変曲率部42の幅方向の基点(車内側の端部)、aは徐変曲率部42の設定幅、xは基点からの距離(車内側の端部からの距離)に相当する。
【0048】
交点N3からyだけ増加させた交点N6での曲率Myは
My=K+(β−K)y/b……(4)
で表すことができる。
なお、交点N3は、徐変曲率部42の高さ方向の開始点、yは徐変曲率部42の開始点からの距離、bは徐変曲率部42の高さ方向の設定長に相当する。
すなわち、徐変曲率部42の開始ラインC2からの距離に応じて、式(4)に示すように、曲率を一定の変化率で変化させている。
【0049】
図8では、徐変曲率部42の開始ラインC2が直線状に形成される。固定曲率部41の曲率Kが小さいので、徐変曲率部42の開始ラインC2を直線に設定しても、徐変曲率部42の考え方は成立する。
【実施例3】
【0050】
図9に示されたように、ドアミラー(車両用ドアミラー)50は、ドアミラー40(図8参照)と同様に、固定曲率部51と、徐変曲率部52とから構成される。固定曲率部51は、ドアミラー50の上部に形成される。
【0051】
徐変曲率部52は、車幅方向に延在するとともに、固定曲率部51の下方に形成される。徐変曲率部52の曲率の設定方法もドアミラー40と同様である。
ただし、ドアミラー40の交点N5と同一点である交点U5の曲率をMuとすれば、
曲率Muは、
Mu=α+(β−α)Tlogx/a……(5)
と表される。
(5)式は、ドアミラー40(図8参照)で与えられる(3)式の基点からの距離/徐変曲率部の設定幅(x/a)を、x/aの対数関数に所定の定数Tを掛けたものに置き換えたものである。
すなわち、ドアミラー(車両用ドアミラー)50は、車幅方向において車内側の端部からの距離に対する対数関数に応じて曲率を変化させるものと言える。
【0052】
ドアミラー50では、徐変曲率部52の車幅方向での曲率の変化率を、車内側の端部からの距離に対する対数関数に応じて変化させた。従って、図10(a)に示されたように、駐車する際に、ドアミラー50の車内寄りに写る駐車場に引かれた白線61を認識することができる。なお、符号16は、車輪(後輪)を示す。言い換えれば、より広い範囲を認識することができる。また、図10(b)に示されたように、ドアミラー50の車外寄りに写る道路に引かれた白線62を見るときの曲がりが抑制される。
【0053】
すなわち、ドアミラー50では、徐変曲率部52の車幅方向での曲率の変化率を、車内側の端部からの距離に対する対数関数に応じて変化させた。詳細には、基点からの距離/徐変曲率部の設定幅(x/a)を、x/aの対数関数に応じて変化させた。これにより、車内側では、更に車両10(図1参照)の近傍の物体を車両10に近づけて映し出すことができ、視線を動かさなくともより広い範囲の物体を一度に認識できる。また、車外側では、更に像の圧縮を少なくすることができるので、道路の車線の車幅方向への曲がりを抑制することができる。
【0054】
尚、本発明に係る車両用ドアミラー30は、図4に示すように、連続的に曲率が変化する徐変曲率部32を備えたミラーであったが、これに限るものではなく、連続的に曲率が変化する徐変曲率部32を備えたミラーに平面鏡若しくは凸面鏡などの他のミラーを組合せるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る車両用ドアミラーは、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0056】
30,40,50…車両用ドアミラー(ドアミラー)、31,41,51…固定曲率部、32,42,52…徐変曲率部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在するとともに、上方から下方に向かうに連れて曲率が大きくなるように連続的に曲率が変化する徐変曲率部を備えた車両用ドアミラーにおいて、
前記徐変曲率部の上下方向での曲率の変化率を、車幅方向における車外側よりも車内側の方を大きく設定したことを特徴とする車両用ドアミラー。
【請求項2】
前記徐変曲率部の車幅方向での曲率の変化率を、一定の割合で変化させることを特徴とする請求項1記載の車両用ドアミラー。
【請求項3】
前記徐変曲率部の車幅方向での曲率の変化率を、車幅方向において車内側の端部からの距離に対する対数関数に応じて変化させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用ドアミラー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−79466(P2011−79466A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234545(P2009−234545)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】