説明

車両用ドアロック装置

【課題】製造コストを従来より抑えつつ樹脂ストッパの破損を防止することが可能な車両用ドアロック装置の提供。
【解決手段】支持ベースを構成する樹脂ベース部材11に樹脂ストッパ60が一体形成され、その樹脂ストッパ60のラッチ20との当接面61T,62Tに対する反対面61S,62Sには、カバープレート50に一体形成された金属製のストッパ補強突部52が宛てがわれて補強されている。ストッパ補強突部52は、カバープレート50の一部を切り起こして形成されている。
【効果】樹脂ストッパの破損を防止することができ、ストッパ補強突部を設けたことによる重量増加を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアに固定可能な支持ベースに回動可能に備えられてドア枠に備えたストライカと係合可能なラッチを備えた車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の車両用ドアロック装置には、支持ベースにラッチの回動範囲を規制する樹脂ストッパが備えられていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−105809号公報(段落[0007]−[0008]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが上述した従来の車両用ドアロック装置では、ラッチの衝突による樹脂ストッパの破損を防止するために、樹脂ストッパを、支持ベースより衝撃吸収性や強度(耐衝撃性)に優れた別部品で構成していた。この為、材料費のアップにより製造コストがかかるといった問題が生じていた。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、製造コストを従来より抑えつつ樹脂ストッパの破損を防止することが可能な車両用ドアロック装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る車両用ドアロック装置は、ドアに固定可能な金属ベース部材とラッチ収容空間を有した樹脂ベース部材とを組み付けてなる支持ベースと、ラッチ収容空間に収容されて金属ベース部材に回動可能に軸支され、ドア枠に備えたストライカに係合可能なラッチと、樹脂ベースに一体形成されて、ラッチの回動範囲を規制する樹脂ストッパとを備えた車両用ドアロック装置において、金属ベース部材に一体形成されて、樹脂ストッパのうちラッチとの当接面に対する反対面に宛てがわれたストッパ補強突部を備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用ドアロック装置において、樹脂ストッパの芯部に芯孔を形成して、その芯孔の内部にストッパ補強突部を嵌合したところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の車両用ドアロック装置において、樹脂ストッパは、ストッパ補強突部を挟んだ対向位置に設けられた1対のストッパ構成壁により構成されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の車両用ドアロック装置において、ラッチには、ドアが閉められてストライカと係合したラッチ位置で、樹脂ストッパに当接する第1ストッパ当接部と、樹脂ストッパに対し、ドアが開いてストライカとの係合が解除されたアンラッチ位置で樹脂ストッパに当接する第2ストッパ当接部とが備えられたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の車両用ドアロック装置において、樹脂ベース部材のうちラッチ収容空間の側面開口を塞ぐ略板状の金属製のカバープレートを金属ベース部材として備え、ストッパ補強突部は、カバープレートの一部を切り起こして形成されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の車両用ドアロック装置において、金属ベース部材は、樹脂ベース部材のうちラッチ収容空間の側面開口を塞ぐ略板状の金属製のカバープレートと、カバープレートとの間に樹脂ベース部材を挟みかつ樹脂ベース部材を貫通した連結部材によりカバープレートに連結された金属製の背面プレートとからなり、ストッパ補強突部は、背面プレートの一部を切り起こして形成されたところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の車両用ドアロック装置において、ラッチのうち樹脂ストッパとの当接部分には、樹脂ストッパに押しつけられて撓むラッチ緩衝部が備えられたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1,2,3の発明]
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、支持ベースを構成する樹脂ベース部材に樹脂ストッパが一体形成され、その樹脂ストッパのラッチとの当接面に対する反対面には、支持ベースを構成する金属ベース部材に一体形成されたストッパ補強突部が宛てがわれて補強されたので、製造コストを従来より抑えつつ、樹脂ストッパの破損を防止することができる。
【0013】
具体的には、請求項2の発明のように、樹脂製ストッパの芯部に芯孔を形成してその芯孔の内部にストッパ補強突部を嵌合してもよい。また、請求項3の発明のように、樹脂ストッパを互いに対向した1対のストッパ構成壁により構成して、それらストッパ構成壁の間にストッパ補強突部を挟んだ構成としてもよい。
【0014】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、樹脂ストッパにより、ラッチをラッチ位置とアンラッチ位置とに位置決めすることができる。即ち、ラッチがラッチ位置及びアンラッチ位置を大きく越えて回動すること(オーバーストローク)を防止できる。
【0015】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、ストッパ補強突部はカバープレートの一部を切り起こして形成されたので、ストッパ補強突部を設けたことによる重量増加を防ぐことができる。
【0016】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、ストッパ補強突部は背面プレートの一部を切り起こして形成されたので、ストッパ補強突部を設けたことによる重量増加を防ぐことができる。また、樹脂ベース部材が金属製のカバープレートと背面プレートとの間に挟まれるので剛性を高めることができる。
【0017】
[請求項7の発明]
請求項7の発明によれば、ラッチと樹脂ストッパとの衝撃を緩和すると共に衝突音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態の車両用ドアロック装置10(以下、単に「ドアロック装置10」という)は、車両のドアに取り付けられ、車両本体のドア枠に備えたストライカ40と係合する。
【0019】
ストライカ40は、例えば断面円形の線材を門形に屈曲させてなり、ドア枠の内面から略水平方向に突出している。また、ストライカ40のうち門形の両脚部はドアの開閉方向に並べられ、それらのうち一方の脚部に相当する部分がドアロック装置10と係合する。なお、図1〜図3には、ストライカ40のうちドアロック装置10と係合する部分のみの断面図が示されている。
【0020】
ドアロック装置10は、支持ベース15に後述するラッチ20やポール30等の各種部品を組み付けてなる。図4に示すように、支持ベース15は、扁平な樹脂ベース部材11を備え、その樹脂ベース部材11の扁平方向における両側面に金属製のカバープレート50及び背面プレート55が宛てがわれている。そして、樹脂ベース部材11のうち、例えば、ドア枠側(図2における紙面手前側)を向いた側面に重ねてラッチ20及びポール30が往復回動可能に組み付けられて、それらがカバープレート50で覆われている(図1を参照)。
【0021】
樹脂ベース部材11、カバープレート50及び背面プレート55は、それぞれボルト固定部13を上下2カ所に備えている(図4には、一方のボルト固定部13のみが示されている)。そして、樹脂ベース部材11をカバープレート50と背面プレート55とで挟んだ状態でドアの一端壁に内側から宛てがって、ドアの一端壁を貫通したボルト14(本発明の「連結部材」に相当する)をボルト固定部13に通す(又は、螺合する)ことで、それら各部品11,50,55が一体化されると共にドアに固定される。なお、カバープレート50の各部には補強用のビード53が形成されている。
【0022】
樹脂ベース部材11のうち車内側を向いた前縁部(図2の左側の縁部)と上縁部とからは、ドア枠側(図2における紙面手前側)に向けて突壁11Tが起立している。また、樹脂ベース部材11のうち、ボルト固定部13の周縁部と前縁側の下端角部とには、ドア枠側に向けて段付き状に隆起しかつ突壁11Tよりも低い隆起部11Rが形成されている。そして、これら3つの隆起部11Rの端面にカバープレート50が敷設されて樹脂ベース部材11の側面開口が塞がれ、カバープレート50との間にラッチ20及びポール30が収容されたラッチ収容空間64が形成されている。
【0023】
図2に示すように樹脂ベース部材11には、水平方向に延びた溝部12が備えられている。この溝部12は、ドアのうち車内面側に開放口12Kを有し、その開放口12Kと反対側は閉じている。また、図1に示すように樹脂ベース部材11に宛てがわれたカバープレート50にも溝部12に対応して水平方向に延びると共に車内面側に開放しかつ反対側が閉じた切り欠き51が形成されている。
【0024】
なお、ドアロック装置10が取り付けられたドアの一端壁にも溝部12及び切り欠き51に対応した切り欠き(図示せず)が備えられている。そして、ドアを閉じると開放口12Kから溝部12内にストライカ40が進入する。
【0025】
樹脂ベース部材11のうち溝部12より下方には、カバープレート50と背面プレート55との間に差し渡されたポール支軸30Jが貫通しており、ここにポール30が回動可能に軸支されている。ポール30は、ポール支軸30Jから相反する方向に当接片31とストッパ片32とを突出して備えている。また、例えば、ポール30と樹脂ベース部材11との間には図示しないトーションバネが備えられ、このトーションバネによってポール30が図2における反時計回り方向に付勢されている。そして、ストッパ片32が、樹脂ベース部材11に備えたポールストッパ16に当接して位置決めされている。なお、ドアに備えたインサイドドアハンドルやアウトサイドドアハンドル(図示せず)を操作すると、ポール30が前記トーションバネの弾発力に抗して図2における時計回り方向に回動する。また、ポール30は、例えば、金属板で構成されており、ストッパ片32のみが樹脂層で覆われ、それ以外の部分は金属板が露出した構造になっている。
【0026】
樹脂ベース部材11のうち溝部12より上方には、カバープレート50と背面プレート55との間に差し渡されたラッチ支軸20Jが貫通しており、ここにラッチ20が回動可能に軸支されている。ラッチ20は、金属板を樹脂層で覆って防音を図った構造になっている。ラッチ20には、互いに平行になった1対の係止爪21,22が備えられ、それら係止爪21,22の間がストライカ受容部23になっている。なお、以下、係止爪21,22のうち開放口12K側に配置された一方の係止爪21を「前側係止爪21」といい、他方の係止爪22を「後側係止爪22」という。
【0027】
前側係止爪21と後側係止爪22のそれぞれの基端側にはラッチ緩衝部24,24が形成されている。ラッチ緩衝部24は、ラッチ20を覆った樹脂層の一部を帯板にして、その帯板の両端がラッチ20を構成する金属板の側面から立ち上がって内側に閉じた空間を有した構造(具体的には、門形構造)になっている。そして、ラッチ20を図2における時計回り方向に回転させたときに、前側係止爪21の基端側に備えたラッチ緩衝部24(本発明の「第2ストッパ当接部」に相当する)が樹脂ベース部材11に備えた樹脂ストッパ60に当接し、これによりラッチ20がアンラッチ位置に位置決めされる。また、ラッチ20を図2における反時計回り方向に回転させたときに、後側係止爪22の基端側に備えたラッチ緩衝部24(本発明の「第1ストッパ当接部」に相当する)が樹脂ストッパ60に当接し、これによりラッチ20がラッチ位置に位置決めされる(図3を参照)。そして、ラッチ緩衝部24,24は樹脂ストッパ60に押し付けられて撓み、衝撃を緩和すると共に衝突音の発生を防止する。
【0028】
ラッチ20は、樹脂ベース部材11との間に設けた図示しないトーションバネによりアンラッチ位置側(図2の状態)に付勢され、ドアを開けた状態では、上述の如く、ラッチ緩衝部24と樹脂ストッパ60との当接によりアンラッチ位置に位置決めされる。このアンラッチ位置では、図2に示すように、前側係止爪21が溝部12の上方に退避しかつ、後側係止爪22が溝部12を横切った状態になり、ストライカ受容部23の開口端が溝部12の開放口12K側を向く。これにより、ドアを閉めることで溝部12に進入したストライカ40がストライカ受容部23内に受容されると共に、ストライカ40が後側係止爪22を押してラッチ20が図2における反時計回り方向に回動する。すると、図3に示すように、溝部12のうちストライカ40より開放口12K側が前側係止爪21によって塞がれてラッチ20とストライカ40とが係合する。ここで、後側係止爪22のうちストライカ40が当接する部分には、ストライカ緩衝部25が形成されている。ストライカ緩衝部25は、ラッチ緩衝部24と同様に、ラッチ20を覆う樹脂層の一部で形成され、内側に閉じた空間を有する構造(具体的には、アーチ構造)をなしている。これにより、ストライカ緩衝部25は、ストライカ40が衝突したときの衝撃を緩和すると共に衝突音の発生を防止する。
【0029】
ドアに勢いを付与して閉じると、ドアがドア枠との間の防音部材(図示せず)を最大限に押し潰した位置まで閉じられ、このとき、ラッチ20は、ポール30を通過すると共に、ラッチ緩衝部24が樹脂ストッパ60に押しつけられて撓み、ポール30から僅かに離間した位置に至る。そして、防音部材の弾発力によりドアが戻され、これに伴ってラッチ20がアンラッチ位置側に僅かに戻されて、図3に示すようにラッチ20における前側係止爪21がポール30と当接可能なラッチ位置に至る。
【0030】
また、ラッチ20における前側係止爪21の先端部には、ポール当接部26が形成されている。ポール当接部26は、ラッチ20を構成する金属板の一部を樹脂層から露出してなり、例えば、ポール30の当接片31における先端面と面当接可能な当接面を備えている。そして、ラッチ20がラッチ位置になったときに、ポール30(詳細には、当接片31の先端面)とポール当接部26との当接により、ラッチ20のアンラッチ側(図2における時計回り方向)への回転が規制され、ドアが閉塞状態に係止される。ここで、ドアが勢いよく閉じられてもラッチ20はポール30から大きく離れることはないので、ラッチ位置に戻ったときのラッチ20とポール30との衝突音を抑えることができる。
【0031】
ところで、樹脂ベース部材11のうち、ラッチ20より上方には樹脂ストッパ60が一体形成されている。樹脂ストッパ60は、樹脂ベース部材11の上縁部の突壁11Tからラッチ20に向かって突出したブロック状突部の芯部に芯孔60Hを形成した構造をなし、この芯孔60Hの内部にカバープレート50に一体形成されたストッパ補強突部52が嵌合している(図4を参照)。
【0032】
より詳細には、樹脂ストッパ60は、樹脂ベース部材11からドア枠に向かって起立しかつ突壁11Tの下面から下方に延びたラッチ当接壁61及びアンラッチ当接壁62(本発明の「1対のストッパ構成壁」に相当する)を備え、それら各当接壁61,62の下端部同士が連絡壁63で繋がれた門形構造をなしている。各当接壁61,62のうち、ラッチ20が当接する当接面61T,62Tは、ラッチ20の回動中心を通過する線と平行な平坦面となっており、その反対面61S,62Sは、突壁11Tに対してほぼ直角な平坦面となっている。そして、これら各当接壁61,62、連絡壁63及び突壁11Tで囲まれた扁平直方体空間が、カバープレート50側に開口した芯孔60Hとなっている。
【0033】
ストッパ補強突部52は、カバープレート50の一部を、例えば、切り起こして形成されている。詳細には、カバープレート50の上縁中央部を鉤状に剪断して形成された矩形状の板金片を、その基端部で直角に折り曲げて、カバープレート50の板厚方向に起立させた構造をなす。そして、樹脂ベース部材11にカバープレート50を宛てがうと、このストッパ補強突部52が樹脂ストッパ60の芯孔60Hの開口から突入して嵌合し、ラッチ当接壁61とアンラッチ当接壁62との間に挟まれた状態になる。換言すれば、ストッパ補強突部52が、樹脂ストッパ60のラッチ20との当接面61T,62Tに対する反対面61S,62Sに宛てがわれて面当接した状態になる。これにより、樹脂ストッパ60(詳細には、ラッチ当接壁61とアンラッチ当接壁62)が補強され、ラッチ20から受ける衝撃に対して強くなっている。なお、ラッチ当接壁61の反対面61S側の縁部は、ストッパ補強突部52の折り曲げ角部に対応させて面取り加工が施されている。
【0034】
本実施形態の構成は以上である。次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。ドアを開けた状態では、図2に示すようにラッチ20が図示しないトーションバネに付勢され、樹脂ストッパ60との当接によりアンラッチ位置に配置されている。即ち、ラッチ20のうち、前側係止爪21の基端側に備えたラッチ緩衝部24が、樹脂ストッパ60のアンラッチ当接壁62に当接している。
【0035】
ドアに勢いを付与して閉じると、ラッチ20が図2に示したアンラッチ位置からラッチ位置に向かって回動する。この過程で、ラッチ20は、後側係止爪22、前側係止爪21が順番にポール30に当接して移動する。
【0036】
ポール30は、後側係止爪22及び前側係止爪21が当接したときにラッチ20の移動領域の外側に一時的に退避する。そして、後側係止爪22の基端側に備えたラッチ緩衝部24が樹脂ストッパ60のラッチ当接壁61に衝突して撓み、ラッチ20がラッチ位置を僅かに越えた位置に至ったときに、前側係止爪21がポール30を通過して、ポール30がトーションバネの弾発力によりラッチ20の移動領域内に戻る。そして、ドアとドア枠との間の防音部材の弾発力によってドアが押し戻され、ラッチ20がラッチ位置に戻ると、図3に示すようにポール30の当接片31とラッチ20の前側係止爪21におけるポール当接部26とが当接してラッチ20がラッチ位置に位置決めされ、ドアが閉塞状態に係止(ラッチ)される。
【0037】
ドアを開くために、ドアに備えた図示しないインサイドドアレバー又はアウトサイドドアレバーを引くと、ポール30(詳細には、ポール30の当接片31)がポール当接部26に摺動しながら図3における時計回り方向に回動し、ポール30がラッチ20の移動領域から退避する。すると、ラッチ20がアンラッチ位置側に回動可能となりドアが開放可能となる。そして、ドアを開く操作を行うとストライカ40が溝部12の開放口12K側へ後退すると共にラッチ20がトーションバネの弾発力によりアンラッチ位置側へ回動し、図2に示すように前側係止爪21の基端側に備えたラッチ緩衝部24が樹脂ストッパ60のアンラッチ当接壁62に衝突して、ラッチ20がアンラッチ位置に位置決めされる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、支持ベース15を構成する樹脂ベース部材11に樹脂ストッパ60が一体形成され、その樹脂ストッパ60のラッチ20との当接面61T,62Tに対する反対面61S,62Sには、カバープレート50に一体形成された金属製のストッパ補強突部52が宛てがわれて補強されているので、製造コストを従来より抑えつつ、樹脂ストッパ60の破損を防止することができる。また、ストッパ補強突部52は、カバープレート50の一部を切り起こして形成されたので、ストッパ補強突部52を設けたことによる重量増加を防ぐことができる。しかも、ラッチ20のうち、樹脂ストッパ60との当接部分には、ラッチ緩衝部24,24が形成されたので、衝撃を緩和すると共に衝突音の発生を防止することができる。
【0039】
また、樹脂ストッパを支持ベースと別部品で構成した従来の車両用ドアロック装置では、樹脂ストッパを支持ベースに組み付けるという作業を強いられるが、本実施形態によれば、そのような作業は不要となる。しかも樹脂ベース部材11にカバープレート50を取り付ける過程で樹脂ストッパ60の芯孔60Hにストッパ補強突部52が嵌合して、当接面61T,62Tの反対面61S,62Sに宛てがわれるので、樹脂ストッパ60の補強を容易に行うことができる。
【0040】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0041】
(1)上記実施形態では、カバープレート50の一部を切り起こしてストッパ補強突部52を形成していたが、図6に示すように、カバープレート50のうち樹脂ベース部材11側の面から壁状のストッパ補強突部52を起立させてもよい。
【0042】
(2)樹脂ストッパ60は、ラッチ当接壁61とアンラッチ当接壁62の間を連絡壁63で繋いだ門形構造をなしていたが、図7に示すように各当接壁61,62の間が連絡壁63で繋がっていない構造でもよい。また、ラッチ当接壁61とアンラッチ当接壁62の何れか一方だけを備えて、その当接面61T(62T)の反対面61S(62S)にストッパ補強突部52を宛てがった構成としてもよい。
【0043】
(3)図8に示すように、背面プレート55の一部を切り起こしてストッパ補強突部56を形成し、そのストッパ補強突部56を樹脂ベース部材11に貫通させて樹脂ストッパ60に備えた各当接壁61,62の当接面61T,62Tに対する反対面61S,62Sに宛てがった(芯孔60Hに嵌合させた)構成としてもよい。
【0044】
(4)ラッチ20は、ストッパ緩衝部24,24を必ずしも備えていなくてもよい。また、ラッチ20を構成する金属板を樹脂層で覆わずに全体を露出させてもよい。ここで、ラッチ20を構成する金属板が露出していても、樹脂ストッパ60との衝突で金属音が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ドアロック装置の平面図
【図2】ラッチがアンラッチ位置に配置された状態の平断面図
【図3】ラッチがラッチ位置に配置された状態の平断面図
【図4】支持ベースの分解斜視図
【図5】樹脂ストッパ及びストッパ補強突部の嵌合状態を示す断面図
【図6】他の実施形態(1)に係る支持ベースの分解斜視図
【図7】他の実施形態(2)に係る樹脂ストッパとストッパ補強突部の嵌合状態を示す断面図
【図8】他の実施形態(3)に係る樹脂ストッパ及びストッパ補強突部の嵌合状態を示す断面図
【符号の説明】
【0046】
10 車両用ドアロック装置
11 樹脂ベース部材
15 支持ベース
20 ラッチ
24 ラッチ緩衝部
40 ストライカ
50 カバープレート
52,56 ストッパ補強突部
55 背面プレート
60 樹脂ストッパ
60H 芯孔
61 ラッチ当接壁(ストッパ構成壁)
62 アンラッチ当接壁(ストッパ構成壁)
61T,62T 当接面
64 ラッチ収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアに固定可能な金属ベース部材とラッチ収容空間を有した樹脂ベース部材とを組み付けてなる支持ベースと、
前記ラッチ収容空間に収容されて前記金属ベース部材に回動可能に軸支され、ドア枠に備えたストライカに係合可能なラッチと、
前記樹脂ベースに一体形成されて、前記ラッチの回動範囲を規制する樹脂ストッパとを備えた車両用ドアロック装置において、
前記金属ベース部材に一体形成されて、前記樹脂ストッパのうち前記ラッチとの当接面に対する反対面に宛てがわれたストッパ補強突部を備えたことを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記樹脂ストッパの芯部に芯孔を形成して、その芯孔の内部に前記ストッパ補強突部を嵌合したことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記樹脂ストッパは、前記ストッパ補強突部を挟んだ対向位置に設けられた1対のストッパ構成壁により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記ラッチには、前記ドアが閉められて前記ストライカと係合したラッチ位置で、前記樹脂ストッパに当接する第1ストッパ当接部と、前記樹脂ストッパに対し、前記ドアが開いて前記ストライカとの係合が解除されたアンラッチ位置で前記樹脂ストッパに当接する第2ストッパ当接部とが備えられたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記樹脂ベース部材のうち前記ラッチ収容空間の側面開口を塞ぐ略板状の金属製のカバープレートを前記金属ベース部材として備え、前記ストッパ補強突部は、前記カバープレートの一部を切り起こして形成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
前記金属ベース部材は、前記樹脂ベース部材のうち前記ラッチ収容空間の側面開口を塞ぐ略板状の金属製のカバープレートと、前記カバープレートとの間に前記樹脂ベース部材を挟みかつ前記樹脂ベース部材を貫通した連結部材により前記カバープレートに連結された金属製の背面プレートとからなり、前記ストッパ補強突部は、前記背面プレートの一部を切り起こして形成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の車両用ドアロック装置。
【請求項7】
前記ラッチのうち前記樹脂ストッパとの当接部分には、前記樹脂ストッパに押しつけられて撓むラッチ緩衝部が備えられたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の車両用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−270573(P2007−270573A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100018(P2006−100018)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】