説明

車両用ドアロック装置

【課題】車両用ドアロック装置にて、電動アクチュエータ(電装部品)のための防水対策(シール部)をシンプルかつ安価に構成し、シール部でのシール性良否を容易に判定すること。
【解決手段】車両用ドアロック装置100は、ラッチ機構10と、レバー機構と、リンク機構と、電動アクチュエータを備え、これらがハウジング50に組付けられている。ハウジング50は、互いに接合されたハウジング本体51とハウジングカバー52を備え、接合面が上下方向に沿って延びるように配置されている。ハウジング本体51とハウジングカバー52の接合部に、前記リンク機構と前記電動アクチュエータを収容するハウジング内空間の上方部分を包囲するようにシール部Sが形成されている。シール部Sには、一端Paが開口する連通路Pと、連通路Pのハウジング内側とハウジング外側にて連通路Pに沿って連続的に形成された内側溶着部Wiと外側溶着部Woが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置の一つとして、車両のドアをボデーに対して閉じた状態で保持可能であり、ハウジングとともに前記ドアに組付けられるラッチ機構と、前記ハウジングに組付けられて前記ドアに設けたドアハンドルの操作により駆動されるレバー機構と、前記ハウジング内にて前記ラッチ機構と前記レバー機構間に介装されていて、前記レバー機構から前記ラッチ機構への操作力伝達を有効とするアンロック状態または前記操作力伝達を無効とするロック状態に切り替え可能なリンク機構と、前記ハウジング内に組付けられていて、前記リンク機構を前記アンロック状態または前記ロック状態に切り替える電動アクチュエータ(電装部品)を備えた車両用ドアロック装置があり、例えば、下記特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−233506号公報
【0004】
上記した特許文献1に記載されている車両用ドアロック装置においては、上記した電動アクチュエータ(電装部品)のための防水対策がハウジングに施されている。上記した特許文献1に記載されている防水対策は、ハウジングの上方に防水用のカバーを配設するとともに、電動アクチュエータ(電装部品)が収容されているハウジングの収容空間への水の浸入を阻止するための通水孔をハウジングの上部に設けるものである。
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、上記した特許文献1に記載されている車両用ドアロック装置では、防水用のカバーを必要とするため、部品点数が増加する。また、ハウジングの上部に設けた通水孔は、所期の機能を発揮して所期の防水効果は期待できるものの、ハウジングの上部に落下して付着した水の全ては通水孔に流入する保証がなくて、電動アクチュエータ(電装部品)が収容されているハウジングの収容空間に水が浸入するおそれがある。
【0006】
(課題を解決するための手段)
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、車両のドアをボデーに対して閉じた状態で保持可能であり、ハウジングとともに前記ドアに組付けられるラッチ機構と、前記ハウジングに組付けられて前記ドアに設けたドアハンドルの操作により駆動されるレバー機構と、前記ハウジング内にて前記ラッチ機構と前記レバー機構間に介装されていて、前記レバー機構から前記ラッチ機構への操作力伝達を有効とするアンロック状態または前記操作力伝達を無効とするロック状態に切り替え可能なリンク機構と、前記ハウジング内に組付けられていて、前記リンク機構を前記アンロック状態または前記ロック状態に切り替える電動アクチュエータを備えた車両用ドアロック装置であって、前記ハウジングは、互いに接合されたハウジング本体とハウジングカバーを備えていて、これらの接合面が上下方向に沿って延びるように配置され、前記ハウジング本体と前記ハウジングカバーとの接合部には、前記リンク機構と前記電動アクチュエータを収容するハウジング内空間の上方部分を包囲するようにシール部が形成され、このシール部には、前記接合部に形成されて少なくとも一端が開口する連通路と、この連通路のハウジング内側とハウジング外側にて前記連通路に沿って連続的に形成された内側溶着部および外側溶着部とが設けられていることに特徴がある。
【0007】
この場合において、前記連通路は、前記ハウジング本体および前記ハウジングカバーの一方に形成した連通溝と、前記ハウジング本体および前記ハウジングカバーの他方に形成されて前記連通溝を塞ぐ端壁によって構成されていることも可能である。また、前記内側溶着部と前記外側溶着部は、レーザー溶着によって形成されていることも可能である。また、前記連通路は一端が開口し他端が閉塞していて、閉塞端では前記内側溶着部と前記外側溶着部が接続されていることも可能である。また、前記連通路は両端が下方に向けて開口していることも可能である。
【0008】
(発明の作用効果)
本発明による車両用ドアロック装置においては、ハウジング本体とハウジングカバーとの接合部に形成されているシール部が、上記したように構成されているため、ハウジングの上部に落下して付着した上方からの水は、上記したシール部によって、リンク機構と電動アクチュエータを収容するハウジング内空間への浸入を阻止される。このため、本発明では、防水用のカバーを用いることなく、シンプルかつ安価な構成で、リンク機構と電動アクチュエータを水から保護することが可能である。
【0009】
また、本発明では、上記したシール部にて、内側溶着部と外側溶着部が連通路に沿って連続的に形成されているため、連通路は両端を除いて内側溶着部と外側溶着部によってシールされている。このため、連通路内に加圧ガス(例えば、圧縮空気)を封入して、そのガス圧を検査することによって、上記したシール部でのシール性(気密性・液密性)良否を容易に判定することが可能である。
【0010】
上記した本発明の実施に際して、前記連通路が、前記ハウジング本体および前記ハウジングカバーの一方に形成した連通溝と、前記ハウジング本体および前記ハウジングカバーの他方に形成されて前記連通溝を塞ぐ端壁によって構成されている場合には、前記連通路をシンプルかつ安価に形成することが可能である。また、前記内側溶着部と前記外側溶着部が、レーザー溶着によって形成されている場合には、振動溶着によって形成される場合に比して、ハウジング内の構成部品への影響を抑えることが可能である。
【0011】
また、上記した本発明の実施に際して、前記連通路は一端が開口し他端が閉塞していて、閉塞端では前記内側溶着部と前記外側溶着部が接続されている場合には、連通路の開口端部に、連通路内に加圧ガス(例えば、圧縮空気)を封入可能であり、かつ、そのガス圧を検査可能な接続具を接続することで、上記したシール部でのシール性(気密性・液密性)良否を容易に判定することが可能である。
【0012】
また、上記した本発明の実施に際して、前記連通路は両端が下方に向けて開口している場合には、仮に、外側溶着部を通してハウジング内に向けて水が浸入することがあっても、その水は連通路にて捕捉されてハウジング内空間の上方部分への浸入を阻止される。また、連通路に捕捉された水は連通路の端部から下方に滴下してハウジング内空間の上方部分へ浸入するはない。したがって、上方からの水がハウジング内空間の上方部分へ浸入することを的確に防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による車両用ドアロック装置の一実施形態を車両内側からみた側面図である。
【図2】図1に示した車両用ドアロック装置から操作ケーブルとハウジングカバーを取り外した図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図である。
【図5】図4のシール部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5は本発明による車両用ドアロック装置100を示していて、この車両用ドアロック装置100は、車両の前方右側に装備されるドア(図示省略)に装着されるものであり、ラッチ機構10と、レバー機構20と、リンク機構30と、電動アクチュエータ40を備えていて、これらがハウジング50に組付けられている。
【0015】
ラッチ機構10は、周知のように、車両のドアをボデー(図示省略の車体)に対して閉状態(ドアが閉じられた状態)で保持するためのもので、ボデーに固定されたストライカ(図示省略)と係脱可能なラッチ11を備えている。このラッチ機構10は、ハウジング50に組付けられた状態でドアに組付けられている。
【0016】
レバー機構20は、ドアの内側に設けたインサイドドアハンドル(図示省略)の操作に伴って駆動されるインサイドオープンレバー21と、ドアの外側に設けたアウトサイドドアハンドル(図示省略)の操作に伴って駆動されるアウトサイドオープンレバー22を備えている。インサイドオープンレバー21は、ハウジング50に組付けられていて、インサイドドアハンドルに、図1に示した操作ケーブル61(リンク等の操作力伝達部材でも実施可能)を介して連係されており、インサイドドアハンドルの操作により駆動される。アウトサイドオープンレバー22は、ハウジング50に組付けられていて、アウトサイドドアハンドルに、例えばリンク等の操作力伝達部材(図示省略)を介して連係されており、インサイドドアハンドルの操作により駆動される。
【0017】
リンク機構30は、ハウジング50内にてラッチ機構10とレバー機構20間に介装されていて、レバー機構20からラッチ機構10への操作力伝達を有効とするアンロック状態または前記操作力伝達を無効とするロック状態に切り替え可能なオープンリンク31を備えている。オープンリンク31は、レバー機構20が備えるインサイドオープンレバー21およびアウトサイドオープンレバー22とラッチ機構10が備えるリフトレバー(図示省略)との間に介装されていて、各ドアハンドルのドア開操作に伴う各オープンレバー21,22のドア開方向作動をリフトレバーに伝える(操作力伝達を有効とする)アンロック位置とリフトレバーに伝えない(操作力伝達を無効とする)ロック位置とに切り替え可能である。
【0018】
電動アクチュエータ40は、ハウジング50内に組付けられていて、リンク機構30をアンロック状態またはロック状態に切り替えることが可能である。この電動アクチュエータ40は、電気モータ41とウォーム42とウォームホイール43を備えるとともに、これらによって駆動されるアクティブレバー44を備えている。なお、アクティブレバー44は、図1に示した操作ケーブル62を介してドアの車両内側に設けたロックノブ(図示省略)に連結されていて、ロックノブ(図示省略)を手動で操作することによっても駆動可能に構成されている。また、アクティブレバー44は、ドアの外側に設けたキーシリンダ(図示省略)にも連結されていて、キーシリンダ(図示省略)を手動で操作することによっても駆動可能に構成されている。
【0019】
ところで、この実施形態においては、ハウジング50が、互いに接合されたハウジング本体51とハウジングカバー52を備えていて、これらの接合面が上下方向に沿って延びるように配置されている。ハウジング本体51とハウジングカバー52との接合部には、リンク機構30と電動アクチュエータ40を収容するハウジング内空間Rの上方部分を包囲するようにシール部Sが形成されている。
【0020】
シール部Sでは、前記接合部に形成されて一端Paが開口し他端Pbが閉塞する連通路P(図1の破線参照)が設けられている。また、この連通路Pのハウジング内側とハウジング外側には、図5にて誇張して示したように、内側溶着部Wiおよび外側溶着部Woが連通路Pに沿って連続的に形成されている。
【0021】
連通路Pは、図5に示したように、ハウジング本体51に形成した断面矩形の連通溝51aと、ハウジングカバー52に形成されて連通溝51aを塞ぐ端壁52aによって構成されている。なお、連通路(P)は、ハウジングカバー(52)に形成した連通溝と、ハウジング本体(51)に形成されて前記連通溝を塞ぐ端壁によって構成することも可能である。
【0022】
内側溶着部Wiと外側溶着部Woは、レーザー溶着によって形成されている。また、内側溶着部Wiと外側溶着部Woは、連通路Pの閉塞端Pbにて接続されていて、連通路Pの開口端Paを除いて連通路Pの周囲を気密かつ液密的にシールしている。なお、この実施形態では、ハウジング本体51がレーザー光非透過性樹脂材料で形成され、ハウジングカバー52がレーザー光透過性樹脂材料で形成されていて、ハウジングカバー52側から所望のレーザー溶着に必要な光密度のレーザー光が照射されている。
【0023】
上記のように構成したこの実施形態の車両用ドアロック装置100においては、ハウジング本体51とハウジングカバー52との接合部に形成されているシール部Sが、上記したように構成されているため、ハウジング50の上部に落下して付着した上方からの水は、上記したシール部Sによって、リンク機構30と電動アクチュエータ40を収容するハウジング内空間Rへの浸入を阻止される。このため、この実施形態では、防水用のカバーを用いることなく、シンプルかつ安価な構成で、リンク機構30と電動アクチュエータ40を水から保護することが可能である。
【0024】
また、この実施形態では、上記したシール部Sにて、内側溶着部Wiと外側溶着部Woが、連通路Pに沿って連続的に形成されるとともに、連通路Pの閉塞端Pbにて接続されているため、連通路Pは開口端Paを除いて内側溶着部Wiと外側溶着部Woによって気密かつ液密的にシールされている。このため、連通路Pの開口端部に、連通路P内に加圧ガス(例えば、圧縮空気)を封入可能であり、かつ、そのガス圧を検査可能な接続具(図示省略)を接続することで、上記したシール部Sでのシール性(気密性・液密性)良否を容易に判定することが可能である。
【0025】
また、この実施形態では、連通路Pが、ハウジング本体51に形成した連通溝51aと、ハウジングカバー52に形成されて連通溝51aを塞ぐ端壁52aによって構成されているため、連通路Sをシンプルかつ安価に形成することが可能である。また、内側溶着部Wiと外側溶着部Woが、レーザー溶着によって形成されているため、振動溶着によって形成される場合に比して、ハウジング50内の構成部品への影響を抑えることが可能である。
【0026】
上記実施形態においては、連通路Pの一端Paが開口し他端Pbが閉塞する形状として実施したが、連通路(P)の両端が下方に向けて開口している形状として実施することも可能である。この場合には、仮に、外側溶着部(Wo)を通してハウジング(50)内に向けて水が浸入することがあっても、その水は連通路(P)にて捕捉されてハウジング内空間(R)の上方部分への浸入を阻止される。また、連通路(P)に捕捉された水は連通路(P)の端部から下方に滴下してハウジング内空間(R)の上方部分へ浸入するはない。したがって、上方からの水がハウジング内空間(R)の上方部分へ浸入することを的確に防ぐことが可能である。
【符号の説明】
【0027】
100…車両用ドアロック装置、10…ラッチ機構、20…レバー機構、30…リンク機構、40…電動アクチュエータ、50…ハウジング、51…ハウジング本体、51a…連通溝、52…ハウジングカバー、52a…端壁、S…シール部、P…連通路、Pa…開口端、Pb…閉塞端、Wi…内側溶着部、Wo…外側溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアをボデーに対して閉じた状態で保持可能であり、ハウジングとともに前記ドアに組付けられるラッチ機構と、
前記ハウジングに組付けられて前記ドアに設けたドアハンドルの操作により駆動されるレバー機構と、
前記ハウジング内にて前記ラッチ機構と前記レバー機構間に介装されていて、前記レバー機構から前記ラッチ機構への操作力伝達を有効とするアンロック状態または前記操作力伝達を無効とするロック状態に切り替え可能なリンク機構と、
前記ハウジング内に組付けられていて、前記リンク機構を前記アンロック状態または前記ロック状態に切り替える電動アクチュエータ
を備えた車両用ドアロック装置であって、
前記ハウジングは、互いに接合されたハウジング本体とハウジングカバーを備えていて、これらの接合面が上下方向に沿って延びるように配置され、
前記ハウジング本体と前記ハウジングカバーとの接合部には、前記リンク機構と前記電動アクチュエータを収容するハウジング内空間の上方部分を包囲するようにシール部が形成され、
このシール部には、前記接合部に形成されて少なくとも一端が開口する連通路と、この連通路のハウジング内側とハウジング外側にて前記連通路に沿って連続的に形成された内側溶着部および外側溶着部とが設けられている車両用ドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアロック装置において、前記連通路は、前記ハウジング本体および前記ハウジングカバーの一方に形成した連通溝と、前記ハウジング本体および前記ハウジングカバーの他方に形成されて前記連通溝を塞ぐ端壁によって構成されていることを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置において、前記内側溶着部と前記外側溶着部は、レーザー溶着によって形成されていることを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置において、前記連通路は一端が開口し他端が閉塞していて、閉塞端では前記内側溶着部と前記外側溶着部が接続されていることを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置において、前記連通路は両端が下方に向けて開口していることを特徴とする車両用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226194(P2011−226194A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98734(P2010−98734)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】