説明

車両用フック構造

【課題】フックを使用している場合であっても、車室内のデザイン性の向上を図りながら、且つ、フックによる荷物の保持性を高めることができるようにする。
【解決手段】車室内に突出し荷物の持ち手部分が引っ掛られるフック12を有する車両用フック構造であって、車室内に固定されフック12を収納するケース11と、フック12がケース11内に収納された状態でケース11の内部と外部とを連通させる連通路19とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に設けられ荷物の持ち手部分が引っ掛けられるフックを有する車両用フック構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車室内にフックを設け、このフックによってハンドバッグや買い物袋といった荷物の持ち手部分を保持するようにした構造が知られている。
このような技術の一例として、以下の特許文献1の技術が挙げられる。この特許文献1の技術においては、その図3などに示されるように、フック本体(10)とは別に蓋(30)を設け、この蓋(30)によりフック本体(10)に保持された手荷物が、フック本体(10)から容易に外れないようにすることを狙っている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のフック本体(10)は車室内側に常時突出しており、車室内のデザイン上好ましくない。また、特許文献1の図4に示されるように、このフック本体(10)を前部座席の背面に装着した場合、後部座席を利用する乗員は、このフック本体(10)に衣服などが引っかからないように注意を払うことを強いられる。また、車両に乗降する際には、このフック本体(10)が邪魔になり、乗降性が悪化するという課題も生じる。
【0004】
他方、図10に示すフックの構造も一般的に知られている。
この構造においては、シート103のシートバック104に固定されたケース101内にフック102を収容できるようになっている。そして、フック102を使用する場合にのみ、このフック102をケース101から引き出して使用するようになっている。なお、図10中、フック102に支持されているのは、持ち手部分Hを有する紙袋Bである。
【特許文献1】特開平7−251678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図10に示す技術においては、フック102が手荷物の持ち手部分を支持している場合、即ち、フック102が使用されている場合において、このフック102はケース101から突出しており、デザインの観点からは好ましいとはいえない。
また、この図10に示す構造が適用された車両の乗員は、フック102をケース101に収納してある場合は、衣服などが引っかからないように注意を払う必要はないものの、フック102を使用している場合には、特許文献1の技術と同様に、このような注意を払う必要がある。
【0006】
また、この図10に示す技術においては、フック102によって持ち手部分Hを単に支持しているのみであり、確実に保持しているとはいえない。したがって、車両が振動した場合には、この持ち手部分がフックから容易に外れてしまうという課題もある。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、フックを使用している場合であっても、車室内のデザイン性の向上を図りながら、且つ、フックによる荷物の保持性を高めることができる、車両用フック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車両用フック構造(請求項1)は、車室内に突出し荷物の持ち手部分が引っ掛られるフックを有する車両用フック構造であって、該車室内に固定され該フックを収納するケースと、該フックが該ケース内に収納された状態で該ケースの内部と外部とを連通させる連通路とを備えることを特徴としている。
また、請求項2記載の本発明の車両用フック構造は、請求項1記載の内容において、該ケースに収納された状態および該ケースから突出した状態のうちいずれか一方の状態で該フックを保持するロック機構を備えることを特徴としている。
【0008】
また、請求項3記載の本発明の車両用フック構造は、請求項1記載の内容において、該フックの一端部側と該ケースとを回動可能に接続するヒンジ機構を備えることを特徴としている。
また、請求項4記載の本発明の車両用フック構造は、請求項3記載の内容において、該ヒンジ機構は、該ケースの下端部側に設けられ、該連通路は、該ヒンジ機構の上方で且つ該ヒンジ機構に近接して形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項5記載の本発明の車両用フック構造は、請求項3記載の内容において、該ヒンジ機構は、該ケースの上端部側に設けられ、該フックは、その他端部側に突出部を有し、該突出部は、該フックが該ケース内に収納された状態で略水平方向に延在し且つ該ヒンジ機構の略真下に位置するように形成されていることを特徴としている。
また、請求項6記載の本発明の車両用フック構造は、請求項4または5記載の内容において、該連通路は、該フックの両側に形成された切り欠きであるフック切り欠き部であることを特徴としている。
【0010】
また、請求項7記載の本発明の車両用フック構造は、請求項2〜6いずれか1項記載の内容において、該連通路は、該ケースの縁部に形成された切り欠きであるケース切り欠き部であることを特徴としている。
さらに、本発明の車両用フック構造は、請求項1記載の内容において、該フックが出し入れされる開口部を有し、該開口部は、その縁部が該壁面と略同じ高さで形成され、該フックは、該ケースに収納された状態で該開口部の該縁部と略同じ高さとなるように形成されていることを特徴としている。これにより、フックがケースに収納された状態で、車室の壁面に隆起した部分や陥没した部分が形成されることを防ぎ、車室内の美観をさらに向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明の車両用フック構造は、請求項1記載の内容において、該車室内に設けられた座席のシートバックの後面に埋め込まれ、該ケースの該開口部の該縁部は、該シートバック後面と略同じ高さで形成され、該フックは、該ケースに収納された状態で該開口部の該縁部と略同じ高さとなるように形成されていることを特徴としている。これにより、フックがケースに収納された状態で、車室の壁面に隆起した部分や陥没した部分が形成されることを防ぎ、車室内の美観をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用フック構造によれば、荷物の持ち手部分がフックから容易に外れることを防ぐとともに、車室内の美観を向上させることができる。(請求項1)
また、ケースから突出した状態のフックに荷物の持ち手部分を引っ掛け、その後、フックをケース内に収納することで、荷物がフックから容易に外れることを防ぐとともに、車室内の美観を向上させることができる。(請求項2)
また、ヒンジ機構を中心にフックを回動させるだけで、フックを容易にケースから突出させたり、フックを容易にケース内に収納させたりすることができる。(請求項3)
また、荷物に作用する重力により、フックには、連通路内に配設された持ち手部分を介して下向きの荷重が作用するが、このとき、連通路がヒンジ機構の上方で且つヒンジ機構に近接して形成されているのでフックに生じるモーメントを極力小さくすることが可能となる。(請求項4)
また、ケース内に収容フックに生じるモーメントを極力小さくすることが可能となる。(請求項5)
また、フックの両側に形成された切り欠きであるフック切り欠き部を連通路とすることで、容易に連通路を形成することができる。(請求項6)
また、ケースの縁部に形成された形成された切り欠きであるケース切り欠き部を連通路とすることで、容易に連通路を形成しながら、フックの剛性を高めることができる。(請求項7)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面により、本発明の第1実施形態に係る車両用フック構造について説明すると、図1はケースからフックが取り出されている場合を示す模式的な斜視図、図2はケースにフックが収納されている場合を示す模式的な斜視図、図3はケースからフックが取り出されている場合を示す模式的な側面図、図4はケースにフックが収納されている場合を示す模式的な側面図である。
【0014】
図1に示すように、フックアッセンブリ10は、ケース11とフック12とから主に構成されている。なお、この図1および図3に示すように、フック12がケース11から突出している状態を「突出状態」といい、また、図2および図4に示すように、フック12がケース11に収納されている状態を「収納状態」という。
これらのうち、ケース11は、フック12を収納する樹脂製の部品であって、図示しない車両の室内の壁面に固定されている。
【0015】
また、図3および図4に示すように、このケース11は、枠部13,窪み部14,第1突部15および第2突部16を有している。
これらのうち、枠部13は、ケース11の前面を形成する部分であって、窪み部14の開口部17(図1参照)における縁部を形成している。また、この枠部13は、車室の壁面の高さと略同じ高さとなるように形成されている。
【0016】
また、窪み部14は、枠部13から奥方へ窪んで形成されフック12が収納される部分である。なお、この窪み部14に対するフック12の出し入れは、窪み部14の開口部17を通じて行なわれるようになっている。
また、この窪み部14は、その上端がドーム形状のドーム面14Aとして形成され、その下端が右下方へ傾いた傾斜面14Bとして形成されている。
【0017】
また、この窪み部14の両側の側壁14Cには、それぞれ、ヒンジ穴部(図示略)が形成されている。また、このヒンジ穴部はケース11の下端側に位置している。
そして、これらのヒンジ穴部には、フック12のヒンジ突起部(図示略;後述する)が嵌まり込むようになっている。
さらに、この窪み部14の側壁14Cには、ロック穴部14Dが形成されている。なお、図3では左側の側壁14Cに形成されたロック穴部14Dのみを示すが、図示しない右側の側壁においても図示しないロック穴部が形成されている。そして、これらのロック穴部14Dには、フック12のロック突起部12C(後述する)が嵌まり込むようになっている。
【0018】
第1突部15は、窪み部14の奥側の面において、枠部13とは反対側(即ち、奥側)に突出した部分であって、車室の壁面に形成された係合穴(図示略)に嵌入し、ケース11を車室壁面に固定することができるようになっている。
また、第2突部16は、第1突部15よりも上方における窪み部14の奥側の面において奥側に突出した部分であって、車室の壁面に形成された位置決め穴(図示略)に嵌入し、車室壁面に対するケース11の位置決めを容易に行うことができるようになっている。
【0019】
他方、フック12は、略L字形状の樹脂製の部品であって、荷物の持ち手部分が引っ掛られることで、この荷物を保持するものである。なお、この図1および図2には、荷物の一例として、持ち手部分Hを有する紙袋Bを示す。
また、このフック12のうち、ケース11に対して回転可能に支持されている部分をフック本体部12Aといい、このフック本体部12に対して略直角に突出して形成された部分をかぎ部(突出部)12Bという。
【0020】
また、このフック本体部12Aの両側には、それぞれ、ヒンジ突起部(図示略)が形成されている。これらのヒンジ突起部は、ケース11の窪み部14の側壁14Cに形成されたヒンジ穴部に対して、それぞれ嵌入するものである。そして、これらのヒンジ突起部がヒンジ穴部に嵌入することでヒンジ機構18が構成され、フック12がケース11に対して回転可能に支持されるようになっている。
【0021】
さらに、このフック本体部12Aの両側には、それぞれ、ロック突起部12Cが形成されている。これらのロック突起部12Cは、ケース11の窪み部14の側壁14Cに形成されたロック穴部14Dに対して、それぞれ嵌脱可能に嵌入するものである。そして、これらのロック突起部12Cがロック穴部14Dに嵌入することでフック12は収納状態を確実に維持することができるようになっている。
【0022】
もっとも、ロック穴部14Dの深さは浅く(例えば、約1mm)、また、ロック突起部12Cの高さも低く(例えば、約1mm)形成されているため、図4中矢印F1で示すように、フック12に対して、所定の大きさの力が作用した場合には、ロック突起部12Cがロック穴部14Dから抜け出ることが許容され、フック12の使い勝手が妨げられないようになっている。
【0023】
また、フック本体部12Aの両側で且つヒンジ機構18に近接した位置には、それぞれ、フック切り欠き部(連通路)19が形成されている。これらのフック切り欠き部19は、フック12がケース11の窪み部14内に収納された状態で、この窪み部14の内部と外部とを連通させる通路である。
また、このフック切り欠き部19は、図4に示すように、フック12が窪み部14内に収納された状態で、斜め下方に傾斜するように形成されている。また、このフック切り欠き部19の傾斜角度は、窪み部14の傾斜面14Bの傾斜角度と概ね同じになるように設定されている。
【0024】
また、このフック本体12Aの背面12Dは、フック12が窪み部14に収納された状態で、ケース11の枠部13の表面13Aと略同じ高さになるように形成されている。
本発明の第1実施形態に係る車両用フック構造は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図示しないユーザによってフック12がケース11から引き出されると、図1に示すように、紙袋Bの持ち手部分Hがフック12のフックかぎ部12Bに引っ掛けられる状態になる。
【0025】
このとき、実際に紙袋Bの持ち手部分Hがフック12のフックかぎ部12Bに引っ掛けられ、その後、図1中矢印A1で示すように、フック12がヒンジ機構18を中心に回動されると、図2で示すように、フック12がケース11内に収容される。
このとき、紙袋Bの持ち手部分Hは、フック切り欠き部19に嵌まり込むため、持ち手部分Hがフック12を収納することの妨げにはならない。
【0026】
ここで、収納状態にあるフック12についてもう少し詳しく説明する。
図4に示すように、フック12がケース11の窪み部14の内部に収納されると、持ち手部分Hは、重力により下方へ移動し、そして、フック切り欠き部19に嵌入する。これにより、持ち手部分Hは、フック本体12Aに保持されたまま、ケース11の窪み部14の内部から外部に亘って延在することが可能となる。
【0027】
さらに、このフック切り欠き部19は、収納状態にあるフック12の裏側開口19Aよりも表側開口19Bの方が少し下に位置し、斜め下方に傾斜して形成されている。これにより、持ち手部分Hを介してフック12に加わる荷重の方向を、できるだけ鉛直方向に近似させることが可能となる。
また、このフック切り欠き部19の傾斜角度は、窪み部14の傾斜面14Bの傾斜角度と概ね同じになるように設定されているので、窪み部14の傾斜面14Bに持ち手部分Hが載置された場合であっても、この持ち手部分Hを無理に折れ曲げることなく、自然な形状で吹くきり欠き部19内に嵌入するよう案内することができる。
【0028】
また、フック切り欠き部19の下面部19Cは、ヒンジ機構18に対して近接して形成されている。これにより、持ち手部分Hを介してフック12に加わる荷重により生じるヒンジ機構18回りのモーメントの大きさをできるだけ小さくすることができる。
また、ケース11の枠部13が、車室の壁面の高さと略同じ高さとなるように形成されているので、フック12をケース11に収納することで、車室の壁面において隆起した部分や陥没した部分が形成されることを防ぐことができ、車室内の美観を向上させることができる。
【0029】
また、このフック本体12Aの背面12Dは、フック12が窪み部14に収納された状態で、ケース11の枠部13の表面13Aと略同じ高さになるように形成されているので、車室内の美観をさらに向上させることができる。
また、このフック本体部12Aの両側にそれぞれ形成されたロック突起部12Cが、ケース11の窪み部14の両側壁部14Cにそれぞれ形成されたロック穴部14Dに嵌入することで、フック12を収納状態のまま維持することができる。
【0030】
また、ロック穴部14Dに対してロック突起部12Cが係合する深さが比較的小さくなるように設定されているので、図4中矢印F2で示すように、フック12に対して、所定の大きさの力が作用した場合には、ロック突起部12Cがロック穴部14Dから抜け出ることが許容される。
次に、図面により、本発明の第2実施形態に係る車両用フック構造について説明すると、図5はケースからフックが取り出されている場合を示す模式的な側面図、図6はケースにフックが収納されている場合を示す模式的な側面図である。
【0031】
図5に示すように、フックアッセンブリ30は、ケース31とフック32とから主に構成されている。なお、この図5に示すように、フック32がケース31から突出している状態を「突出状態」といい、また、図6に示すように、フック32がケース31に収納されている状態を「収納状態」という。
なお、フック32は、第1実施形態で説明したフック12と概ね同様の形状であるものの、実際には同じではない。他方、このケース31は、上述の第1実施形態に係るケース11を上下逆にした形状となっている。
【0032】
このように、この第2実施形態に係るフックアッセンブリ30の説明は、多少、第1実施形態に係るフックアッセンブリ10の説明と重複する部分もあるが、以下のように改めて説明する。
ケース31は、フック32を収納する樹脂製の部品であって、図示しない車両の室内の壁面に固定されている。
【0033】
また、図5に示すように、このケース31は、枠部33,窪み部34,第1突部35および第2突部36を有している。
これらのうち、枠部33は、ケース31の前面を形成する部分であって、窪み部34の開口部(図示略)における縁部を形成している。また、この枠部33は、車室の壁面の高さと略同じ高さとなるように形成されている。
【0034】
また、窪み部34は、枠部33から奥方へ窪んで形成されフック32が収納される部分である。なお、この窪み部34に対するフック32の出し入れは、窪み部34の開口部を通じて行なわれるようになっている。
また、この窪み部34は、その下端がドーム形状のドーム面34Aとして形成され、その上端が右上方へ傾いた傾斜面34Bとして形成されている。
【0035】
また、この窪み部34の両側の側壁34Cには、それぞれ、ヒンジ穴部(図示略)が形成されている。また、このヒンジ穴部はケース31の上端側に位置している。
そして、これらのヒンジ穴部には、フック32のヒンジ突起部(図示略;後述する)が嵌まり込むようになっている。
さらに、この窪み部34の側壁34Cには、ロック穴部34Dが形成されている。なお、図5では左側の側壁34Cに形成されたロック穴部34Dのみを示すが、図示しない右側の側壁においても図示しないロック穴部が形成されている。そして、これらのロック穴部34Dには、フック32のロック突起部32C(後述する)が嵌まり込むようになっている。
【0036】
第1突部35は、窪み部34の奥側の面において、枠部33とは反対側(即ち、奥側)に突出した部分であって、車室の壁面に形成された係合穴(図示略)に嵌入し、ケース31を車室壁面に固定することができるようになっている。
また、第2突部36は、第1突部35よりも下方における窪み部34の奥面において奥側に突出した部分であって、車室の壁面に形成された位置決め穴(図示略)に嵌入し、車室壁面に対するケース31の位置決めを容易に行うことができるようになっている。
【0037】
他方、フック32は、略L字形状の樹脂性の部品であって、荷物の持ち手部分が引っ掛られることで、この荷物を保持するものである。なお、図6には、荷物の一例として、持ち手部分Hを有する紙袋Bを示す。
また、このフック32のうち、ケース31に対して回転可能に支持されている部分をフック本体部32Aといい、このフック本体部32に対して略直角に突出して形成された部分をかぎ底部(突出部)32Bといい、また、このかぎ底部32Bに対して略直角に突出して形成された部分をかぎ壁部32Dといい、また、このかぎ壁部32Dに対して略直角に突出して形成された部分をかぎ返し部32Eという。
【0038】
このうち、かぎ底部32Bは、図6に示すように、フック32がケース31内に収納された状態で、略水平方向に延在し且つヒンジ機構38(後述する)の略真下に位置するように形成されている
また、フック本体部32Aの両側には、それぞれ、ヒンジ突起部(図示略)が形成されている。これらのヒンジ突起部は、ケース31の窪み部34の側壁34Cに形成されたヒンジ穴部に対して、それぞれ嵌入するものである。そして、これらのヒンジ突起部がヒンジ穴部に嵌入することでヒンジ機構38が構成され、フック32がケース31に対して回転可能に支持されるようになっている。
【0039】
さらに、このフック本体部32Aの両側には、それぞれ、ロック突起部32Cが形成されている。これらのロック突起部32Cは、ケース31の窪み部34の側壁34Cに形成されたロック穴部34Dに対して、それぞれ嵌脱可能に嵌入するものである。そして、これらのロック突起部32Cがロック穴部34Dに嵌入することでフック32は収納状態を維持することができるようになっている。
【0040】
もっとも、ロック穴部34Dの深さは浅く(例えば、約1mm)、また、ロック突起部32Cの高さも低く(例えば、約1mm)形成されているため、図4中矢印F2で示すように、フック12に対して、所定の大きさの力が作用した場合には、ロック突起部32Cがロック穴部34Dから抜け出ることが許容されるようになっている。
また、フック本体部32Aの両側で且つヒンジ機構38に近接した位置には、それぞれ、フック切り欠き部(連通路)39が形成されている。これらのフック切り欠き部39は、フック32がケース31の窪み部34内に収納された状態で、この窪み部34の内部と外部とを連通させる通路である。
【0041】
また、このフック切り欠き部39は、図4に示すように、フック32が窪み部34内に収納された状態で、斜め下方に傾斜するように形成されている。また、このフック切り欠き部39の傾斜角度は、窪み部34の傾斜面34Bの傾斜角度と概ね同じになるように設定されている。
また、このフック本体32Aの背面32Fは、フック32が窪み部34に収納された状態で、ケース31の枠部33の表面33Aと略同じ高さになるように形成されている。
【0042】
そして、このフック32のかぎ底部32Bの両側には、それぞれ、フック切り欠き部(連通路)39が形成されている。
これらのフック切り欠き部39は、フック32がケース31の窪み部34内に収納された状態で、窪み部34の内部と外部とを連通させる通路である。
また、このフック切り欠き部39は、図6に示すように、フック32が窪み部34内に収納された状態で、上下方向に延在するように形成されている。
【0043】
本発明の第2実施形態に係る車両用フック構造は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図示しないユーザにより、図5に示すように、フック32がケース31から引き出されると、持ち手部分H(図5では図示略)をフック32のかぎ底部32Dおよびかぎ返し部32Eに引っ掛けられる状態になる(図5中矢印A2参照)。
【0044】
その後、図5中矢印A3で示すように、フック32がヒンジ機構38を中心に回動されると、図6で示すように、フック32がケース31内に収容される。
このとき、紙袋Bの持ち手部分Hは、フック切り欠き部39に嵌まり込むため、この持ち手部分Hがフック32を収納することの妨げにはならない。
ここで、収納状態にあるフック12についてもう少し詳しく説明する。図4に示すように、フック32がケース31の窪み部34の内部に収納されると、持ち手部分Hは、重力により下方へ引っ張られた状態でフック切り欠き部39に嵌入する。これにより、持ち手部分Hは、フック32のかぎ底部32Bに保持されたまま、ケース31の窪み部34の内部から外部に亘って延在することができるのである。
【0045】
さらに、フック32のかぎ底部32Bは、フック32が収納状態にある場合において、ヒンジ機構38の略真下に位置するように形成され、さらに、このかぎ底部32Bに形成されたフック切り欠き部39も、同様に、ヒンジ機構38の略真下に位置するように形成されている。これにより、収納状態にあるフック32に作用するヒンジ機構38回りのモーメントを極力小さくすることが可能となり、収納状態にあるフック32が収納部31から抜け出ることを防ぐことができる。
【0046】
また、このフック32が収容されるケース31の窪み部34は、その下端がドーム形状のドーム面34Aとして形成されているので、この窪み部34のドーム面34Aに持ち手部分Hが載置された場合であっても、この持ち手部分Hを無理に折れ曲げることなく、自然な形状でケース31の内部から外部へ案内することができる。
また、ケース31の枠部33が、車室の壁面の高さと略同じ高さとなるように形成されているので、フック32をケースに収納することで、車室の壁面において隆起した部分や陥没した部分が形成されることを防ぐことができ、車室内の美観を向上させることができる。
【0047】
また、このフック本体32Aの背面32Fは、フック32が窪み部34に収納された状態で、ケース31の枠部33の表面33Aと略同じ高さになるように形成されているので、車室内の美観をさらに向上させることができる。
また、このフック本体部32Aの両側にそれぞれ形成されたロック突起部32Cが、ケース31の窪み部34の両側壁部34Cにそれぞれ形成されたロック穴部34Dに嵌入することで、フック32を収納状態のまま維持することができる。
【0048】
また、ロック穴部34Dに対してロック突起部32Cが係合する深さが比較的小さくなるように設定されているので、図6中矢印F2で示すように、フック32に対して、所定の大きさの力が作用した場合には、ロック突起部32Cがロック穴部34Dから抜け出ることが許容され、フック32の使い勝手が低下することを防ぐことができる。
次に、図面により、本発明の第3実施形態に係る車両用フック構造について説明すると、図7はケースからフックが取り出されている場合を示す模式的な斜視図、図8はケースにフックが収納されている場合を示す模式的な斜視図、図9は図8の模式的なIX−IX断面図である。
【0049】
この図7および図8に示すフックアッセンブリ40について説明すると、このフックアッセンブリ40は、ケース41とフック42とから主に構成されている。なお、この図7に示すように、フック42がケース41から突出している状態を「突出状態」といい、また、図8に示すように、フック42がケース41に収納されている状態を「収納状態」という。
【0050】
これらのうち、ケース41は、フック42を収納する樹脂製の部品であって、図示しない車両の室内の壁面に固定されている。
また、このケース41は、枠部43,第1突部(図示略)および第2突部(図示略)を有している。
これらのうち、枠部43は、ケース41の前面を形成する部分であって、ケース41の開口部47における縁部を形成している。また、この枠部43は、車室の壁面の高さと略同じ高さとなるように形成されている。
【0051】
また、このケース41は、フック42が収納される部分であって、枠部43から奥側へ窪んで形成された円弧部44を有している。なお、このケース41に対するフック42の出し入れは、開口部47を通じて行なわれるようになっている。
図示しない第1突部は、円弧部44の奥側の面において、枠部43とは反対側(即ち、奥側)に突出した部分であって、車室の壁面に形成された係合穴(図示略)に嵌入し、ケース41を車室壁面に固定することができるようになっている。
【0052】
図示しない第2突部も、円弧部44の奥側の面において奥側に突出した部分であって、車室の壁面に形成された位置決め穴(図示略)に嵌入し、車室壁面に対するケース41の位置決めを容易に行うことができるようになっている。
また、このケース41の円弧部44には、最も奥側に図示しない穴部が形成され、この穴部を通じて、フック42のシャフト部42A(後述する)が出入りすることができるようになっている。
【0053】
さらに、この円弧部44の曲率は、上記の穴部よりも上方では大きく設定され、また、上記の穴部よりも下方では小さく設定されている。
他方、フック42は、荷物の持ち手部分が引っ掛られることで、この荷物を保持する樹脂製の部品であって、円筒形状のシャフト部42Aと、円盤形状のエンド部材42Bとから形成されている。なお、図7および図8においても、荷物の一例として、持ち手部分Hを有する紙袋Bを示す。
【0054】
また、図9に示すように、シャフト部42Aは、その一端部にはエンド部材42Bが固定され、その他端部はロック機構44に支持されている。なお、この図9において、破線で示すフック42は、このフック42が突出状態にある場合を示し、実線で示すフック42は、このフック42が収納状態にある場合を示している。
ロック機構48は、ケース41の円弧部44の裏面に備えられ、フック42を、ケース41に収納された状態(即ち、収納状態)、および、ケース41から突出した状態(突出状態)のうちいずれか一方の状態で保持するものである。つまり、図7中矢印A4で示すように、突出状態のフック42が奥側へ押し込まれると、フック42は、シャフト部42Aの軸線Cに沿って矢印A4の方向へ変位し、その後、図8に示すように、ロック機構48により、収納状態で保持されるようになっている。
【0055】
他方、図8中矢印A5で示すように、収納状態のフック42が奥側へ押し込まれ、フック42はシャフト部42Aの軸線Cに沿って僅かに変位すると、図7に示すように、このフック42は、ロック機構48により、軸線Cに沿って押し戻され、突出状態で保持されるようになっている。
なお、このロック機構48の具体的な構造については、公知技術であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0056】
また、図9に示すように、収納状態のフック42とケース41の円弧部44との間には連通路49が形成されるようになっている。この連通路49は、フック42がケース41の窪み部44内に収納された状態で、フック42のエンド部材42の裏側におけるケース41の内部と外部とを連通させる通路である。
本発明の第3実施形態に係る車両用フック構造は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
【0057】
図示しないユーザにより、図8中矢印A5で示すように、収納状態にあるフック42が押し込まれると、ケース41からフック42が引き出される。これにより、紙袋Bの持ち手部分Hが容易にフック42のシャフト部42Aに引っ掛けることができる。
その後、図7中矢印A4で示すように、フック42がユーザにより押し込まれると、図8で示すように、フック42がケース41内に収容される。
【0058】
このとき、紙袋Bの持ち手部分Hは、図9に示す連通路49に嵌まり込むため、この持ち手部分Hがフック42を収納することの妨げにはならない。
また、連通路49は、円弧部44と、フック42のエンド部材42Bとの間に形成され、且つ、この円弧部44の曲率は、フック42のシャフト部42Aが出し入れされる穴部よりも上方では大きく設定され、また、上記の穴部よりも下方では小さく設定されている。
【0059】
したがって、フック43が収納状態にある場合、連通路49は、ケース41の内部から下方に向けて形成される連通路49は所定の大きさが確保されるが、ケース41の内部から上方に向けて形成される連通路49は、エンド部材42Bと円弧部44との距離が狭まるようになっている。
これにより、持ち手部分Hは、ケース41の内部から連通路49を通じて、ケース41の下方へ延在することを許容しながら、ケース41の内部から連通路49を通じて、ケース41の上方へ変位し、この持ち手部分Hがフック42から外れる事態を防ぐことができる。
【0060】
また、このフック42をケース41から突出させたり、ケース41内に収納したりする場合には、図7中矢印A4および図8中矢印A5で示すように、持ち手部分Hを介してフック42に対して加えられる荷重の方向(即ち、鉛直方向)とは、略直交する方向の力を加えるようになっている。
したがって、このフック42に荷物を引っ掛けたことにより、収納状態にあるフック42が、ユーザの意図に反して、自然に突出状態になってしまうような事態を防ぐことができる。
【0061】
また、ケース42の枠部43が、車室の壁面の高さと略同じ高さとなるように形成されているので、フック41をケース42に収納することで、車室の壁面において隆起した部分や陥没した部分が形成されることを防ぐことができ、車室内の美観を向上させることができる。
以上、本発明の第1〜第3実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0062】
上述の第1および第2実施形態においては、フック12,32が、フック切り欠き部19,39を有する場合について説明したが、このような構成に限定するものではない。例えば、ケースに切り欠き部(ケース切り欠き部)を形成し、ケース内にフックが収納された状態でケースの内部と外部とを連通させる連通路としてもよい。このような構成とすることにより、フックの剛性を向上させることができるという利点がある。
【0063】
上述の第1および第2実施形態においては、このロック突起部12C,32Cおよびロック穴14D,34Dを形成し、フック12,32がケース11,31から抜け出ることを防ぐ構成としたが、このような構成に限定するものではない。例えば、ヒンジ機構18,38の回動摩擦を大きくすることで、フック12,32がケース11,31から容易に引き出されることを防ぐ構成としてもよい。
【0064】
特に、上述の第2実施形態に係るフックアッセンブリ30のように、ヒンジ機構38をケース31の上端側に設けた場合は、持ち手部分Hを介してフック32に入力される荷重により生じるフック32のモーメントの大きさは非常に小さく、したがって、このロック突起部32Cおよびロック穴34Dを形成しなくても、フック32がケース31から自然に引き出される事態を防ぐことは容易に可能である。
【0065】
また、上述の第1〜第3実施形態においては、車室の壁面にケース11,31,41が固定されている場合について説明したがこのような場合に限定するものではない。例えば、車室に設けられた座席のシートバックの後面に、ケースを埋め込む構成としてもよい。また、このとき、ケースの開口部の縁部を、シートバック後面と概ね同じ高さとなるように形成することで、車室の壁面において隆起した部分や陥没した部分が形成されることを防ぐことができ、車室内の美観をさらに向上させることができる。
【0066】
また、車室とは、客室だけでなく荷物室などを含むものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な斜視図であって、フックが突出状態である場合を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な斜視図であって、フックが収納状態である場合を示す。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な側面図であって、フックが突出状態である場合を示す。
【図4】本発明の第1実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な側面図であって、フックが収納状態である場合を示す。
【図5】本発明の第2実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な側面図であって、フックが突出状態である場合を示す。
【図6】本発明の第2実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な側面図であって、フックが収納状態である場合を示す。
【図7】本発明の第3実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な斜視図であって、フックが突出状態である場合を示す。
【図8】本発明の第3実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な斜視図であって、フックが収納状態である場合を示す。
【図9】本発明の第3実施形態に係る車両用フック構造の全体構成を示す模式的な断面図であって、フックが収納状態である場合を示す。
【図10】従来の車両用フック構造の全体構成を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
11,31,41 ケース
12,32,42 フック
12B, かぎ部(突出部)
18,38 ヒンジ機構
19,39フック切り欠き部(連通路)
32B かぎ底部(突出部)
49 連通路
48 ロック機構
B 紙袋(荷物)
H 持ち手部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に突出し荷物の持ち手部分が引っ掛られるフックを有する車両用フック構造であって、
該車室内に固定され該フックを収納するケースと、
該フックが該ケース内に収納された状態で該ケースの内部と外部とを連通させる連通路とを備える
ことを特徴とする、車両用フック構造。
【請求項2】
該ケースに収納された状態および該ケースから突出した状態のうちいずれか一方の状態で該フックを保持するロック機構を備える
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用フック構造。
【請求項3】
該フックの一端部側と該ケースとを回動可能に接続するヒンジ機構を備える
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用フック構造。
【請求項4】
該ヒンジ機構は、該ケースの下端部側に設けられ、
該連通路は、該ヒンジ機構の上方で且つ該ヒンジ機構に近接して形成されている
ことを特徴とする、請求項3記載の車両用フック構造。
【請求項5】
該ヒンジ機構は、該ケースの上端部側に設けられ、
該フックは、その他端部側に突出部を有し、
該突出部は、該フックが該ケース内に収納された状態で略水平方向に延在し且つ該ヒンジ機構の略真下に位置するように形成されている
ことを特徴とする、請求項3記載の車両用フック構造。
【請求項6】
該連通路は、該フックの両側に形成された切り欠きであるフック切り欠き部である
ことを特徴とする、請求項4または5記載の車両用フック構造。
【請求項7】
該連通路は、該ケースの縁部に形成された切り欠きであるケース切り欠き部である
ことを特徴とする、請求項2〜6のうちいずれか1項記載の車両用フック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−261311(P2007−261311A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85853(P2006−85853)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】