説明

車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】車輪ブレーキから解放されてリザーバに貯溜されたブレーキ液を汲上げてマスタシリンダ側に戻すポンプの吐出側に、該ポンプの吐出脈動を吸収するためのダンパが接続される車両用ブレーキ液圧制御装置において、大型化を回避しつつダンパの容量を大きく設定することを可能とするとともに、ダンパの性能を自在に変化させ得るようにする。
【解決手段】ダンパ141 ,142 は、ハウジング20の一面20aに開口して該ハウジング20に設けられる有底のダンパ穴33に摺動可能に嵌合されるとともにダンパ穴33の閉塞端との間にポンプの吐出側に接続されるダンパ室34を形成するピストン35と、ダンパ室34の容積を縮少する方向にピストン35を付勢する弾発力を発揮する弾発手段38とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用車両や自動二輪車等の車両のブレーキ液圧制御装置に関し、特に、車輪ブレーキから解放されてリザーバに貯溜されたブレーキ液を汲上げてマスタシリンダ側に戻すポンプの吐出側に、該ポンプの吐出脈動を吸収するためのダンパが接続されるものの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、かかるブレーキ液圧制御装置は、たとえば特開平8−261201号公報等で既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のブレーキ液圧制御装置のダンパは、ハウジングに設けられた有底のダンパ穴の開口端が、ポンプの吐出側に接続されるダンパ室をダンパ穴の閉塞端との間に形成するプラグで閉じられて成るものであり、ダンパ室の容量が一定に定まってしまう。このため、ポンプの吐出脈動を効果的に吸収すべくダンパ容量を大きくするためにはダンパ室の容積を大きく設定せねばならず、ダンパすなわちハウジングの大型化を招いてしまう。また上記従来のダンパでは、脈動吸収性能が一定に定まってしまうので、ポンプの吐出性能変更に応じてダンパの性能を変化させるには、ダンパ室の容積を変化させる必要があり、ダンパの性能を自在に変化させることができない。
【0004】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、大型化を回避しつつダンパの容量を大きく設定することを可能とするとともに、ダンパの性能を自在に変化させ得るようにした車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、マスタシリンダに連なる出力液圧路および車輪ブレーキ間を連通するとともに車輪ブレーキおよびリザーバ間を遮断する状態、前記出力液圧路および車輪ブレーキ間を遮断するとともに車輪ブレーキおよびリザーバ間を連通する状態、ならびに車輪ブレーキを前記出力液圧路およびリザーバから遮断する状態を切換可能な制御弁手段と、前記リザーバから汲上げたブレーキ液を前記出力液圧路側に戻すポンプと、前記出力液圧路および前記ポンプ間に介設されるオリフィスと、該オリフィスおよび前記ポンプ間に接続されるダンパとを備え、前記制御弁手段、リザーバ、ポンプ、オリフィスおよびダンパがハウジングに設けられる車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記ダンパは、前記ハウジングの一面に開口して該ハウジングに設けられる有底のダンパ穴に摺動可能に嵌合されるとともに該ダンパ穴の閉塞端との間に前記ポンプの吐出側に接続されるダンパ室を形成するピストンと、前記ダンパ室の容積を縮少する方向に前記ピストンを付勢する弾発力を発揮する弾発手段とで構成されることを特徴とする。
【0006】このような請求項1記載の発明の構成によれば、ポンプからダンパ室に吐出されるブレーキ液の脈動が、ピストンをダンパ室側に付勢している弾発手段の緩衝作用によって吸収される。したがってダンパ室の容積を大きく設定しなくてもダンパ容量を大きくすることが可能であり、ダンパすなわちハウジングの大型化を招くことなくダンパ容量の大型化を図ることができる。しかも弾発手段の弾発力を変更することによりダンパ性能を自在に変化させることができる。
【0007】請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、前記ダンパ穴からの離脱が阻止される構成で受け部材がダンパ穴の開口端部に挿入され、前記弾発手段は、前記受け部材および前記ピストン間に介設される皿ばねであることを特徴とし、かかる構成によれば、弾発手段がダンパ穴内に挿入されることによりダンパをより一層小型化することができ、皿ばねの枚数や厚みを変化することにより、ダンパの性能を自在にかつ容易に変化させることができる。
【0008】請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、前記弾発手段が、前記ハウジングに一端が固定されるとともに他端が前記ピストンに当接される板ばねであることを特徴とし、かかる構成によれば、ダンパをより小型化することができる。すなわち板ばねは、剛性が比較的高く、変位量が比較的小さいものであるので、板ばねを配置するスペースが小さくてすみ、ダンパの小型化に寄与することができる。しかも板ばねの枚数や厚みを変えることにより、ダンパの性能を自在にかつ容易に変化させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】図1〜図8は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は乗用車両のブレーキ装置のブレーキ液圧回路図、図2はブレーキ液圧制御装置の側面図、図3は図2の3矢視図、図4は図2の4矢視図、図5は図4の5−5線断面図、図6は図4の6−6線断面図、図7は図6の7−7線断面図、図8はダンパの拡大断面図である。
【0011】先ず図1において、タンデム型のマスタシリンダMは、車両運転者がブレーキペダルPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する第1および第2出力ポート11 ,12 を備えており、左前輪用車輪ブレーキB1 、右後輪用車輪ブレーキB2 、右前輪用車輪ブレーキB3 および左後輪用車輪ブレーキB4 と、前記第1および第2出力ポート11 ,12 に個別に接続された第1および第2出力液圧路21 ,22 との間にブレーキ液圧制御装置3が設けられ、該ブレーキ液圧制御装置3および右、左後輪用車輪ブレーキB2 ,B4 間に、第1および第2比例減圧弁41 ,42 がそれぞれ介設される。
【0012】ブレーキ液圧制御装置3は、左前輪用車輪ブレーキB1 、右後輪用車輪ブレーキB2 、右前輪用車輪ブレーキB3 および左後輪用車輪ブレーキB4 に個別に対応した第1、第2、第3および第4常開型電磁弁51 〜54 と、各常開型電磁弁51 〜54 にそれぞれ並列に接続される第1、第2、第3および第4チェック弁71 〜74 と、前記各車輪ブレーキB1 〜B4 に個別に対応した第1、第2、第3および第4常閉型電磁弁61 〜64 と、第1および第2出力液圧路21 ,22にそれぞれ個別に対応した第1および第2リザーバ81 ,82 と、第1および第2リザーバ81 ,82 に吸入弁101 ,102 をそれぞれ介して接続されるプランジャ型の第1および第2ポンプ111 ,112 と、両ポンプ111 ,112 を駆動する共通1個の電動モータ12と、第1および第2ポンプ111 ,112 に吐出弁131 ,132 をそれぞれ介して接続される第1および第2ダンパ141,142 と、前記第1および第2出力液圧路21 ,22 と第1および第2ダンパ141 ,142 との間にそれぞれ介裝される第1および第2オリフィス151 ,152 と、各常開型電磁弁51 〜54 、各常閉型電磁弁61 〜64 および電動モータ12の作動を制御する電子制御ユニット16とを備える。
【0013】第1常開型電磁弁51 は、第1出力液圧路21 および左前輪用車輪ブレーキB1 間に設けられ、第2常開型電磁弁52 は、第1出力液圧路21 および第1比例減圧弁41 間に設けられ、第3常開型電磁弁53 は、第2出力液圧路22 および右前輪用車輪ブレーキB3 間に設けられ、第4常開型電磁弁54 は、第2出力液圧路22 および第2比例減圧弁42 間に設けられる。
【0014】また第1〜第4チェック弁71 〜74 は、対応する車輪ブレーキB1 〜B4 からマスタシリンダMへのブレーキ液の流れを許容するようにして、各常開型電磁弁51 〜54 に並列に接続される。
【0015】第1常閉型電磁弁61 は、左前輪用車輪ブレーキB1 および第1リザーバ81間に設けられ、第2常閉型電磁弁62 は、第1比例減圧弁41 および第1リザーバ81 間に設けられ、第3常閉型電磁弁63 は、右前輪用車輪ブレーキB3 および第2リザーバ82 間に設けられ、第4常閉型電磁弁64 は、第2比例減圧弁42 および第2リザーバ82 間に設けられる。
【0016】ところで、第1常開型電磁弁51 および第1常閉型電磁弁61 は共働して第1制御弁手段V1 を構成し、第2常開型電磁弁52 および第2常閉型電磁弁62 は共働して第2制御弁手段V2 を構成し、第3常開型電磁弁53 および第3常閉型電磁弁63 は共働して第3制御弁手段V3 を構成し、第4常開型電磁弁54 および第4常閉型電磁弁64 は共働して第4制御弁手段V4 を構成する。
【0017】このような制御弁手段V1 〜V4 は、各車輪がロックを生じる可能性のない通常ブレーキ時には、電子制御ユニット16により、マスタシリンダMおよび車輪ブレーキB1 〜B4 間を連通するとともに車輪ブレーキB1 〜B4 およびリザーバ81 ,82 間を遮断する状態に制御される。すなわち各常開型電磁弁51 〜54 が消磁、開弁状態とされるとともに各常閉型電磁弁61 〜64 が消磁、閉弁状態とされ、マスタシリンダMの第1出力ポート11 から出力されるブレーキ液圧は、第1常開型電磁弁51 を介して左前輪用車輪ブレーキB1 に作用するとともに、第2常開型電磁弁52 および第1比例減圧弁41 を介して右後輪用車輪ブレーキB2 に作用する。またマスタシリンダMの第2出力ポート12 から出力されるブレーキ液圧は、第3常開型電磁弁53 を介して右前輪用車輪ブレーキB3 に作用するとともに、第4常開型電磁弁54 および第2比例減圧弁42 を介して左後輪用車輪ブレーキB4 に作用する。
【0018】上記ブレーキ中に車輪がロック状態に入りそうになったときに、各制御弁手段V1 〜V4 のうちロック状態に入りそうになった車輪に対応する制御弁手段は、電子制御ユニット16により、マスタシリンダMおよび車輪ブレーキB1 〜B4間を遮断するとともに車輪ブレーキB1 〜B4 およびリザーバ81 ,82 間を連通する状態に制御される。すなわち第1〜第4常開型電磁弁51 〜54 のうちロック状態に入りそうになった車輪に対応する常開型電磁弁が励磁、閉弁されるとともに、第1〜第4常閉型電磁弁61 〜64 のうち上記車輪に対応する常閉型電磁弁が励磁、開弁される。これにより、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧の一部が第1リザーバ81 または第2リザーバ82 に吸収され、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧が減圧されることになる。
【0019】またブレーキ液圧を一定に保持する際には、各制御弁手段V1 〜V4 は、電子制御ユニット16により、車輪ブレーキB1 〜B4 をマスタシリンダMおよびリザーバ81 ,82 から遮断する状態に制御される。すなわち常開型電磁弁51 〜54 が励磁、閉弁されるとともに、常閉型電磁弁61 〜64 が消磁、閉弁されることになる。さらにブレーキ液圧を増圧する際には、常開型電磁弁51 〜54 が消磁、開弁状態とされるともに、常閉型電磁弁61 〜64 が消磁、閉弁状態とされればよい。
【0020】このように各制御弁手段V1 〜V4 を電子制御ユニット16で制御することにより、車輪をロックさせることなく、効率良く制動することができる。
【0021】ところで、上述のようなアンチロックブレーキ制御中に、電動モータ12は電子制御ユニット16により作動せしめられる。この電動モータ12の作動に伴って第1および第2ポンプ111 ,112 が駆動されるので、第1および第2リザーバ81 ,82 に吸収されたブレーキ液は、第1および第2ポンプ111 ,112 に吸入され、次いで第1および第2ダンパ141 ,142 側へ吐出され、第1および第2オリフィス151 ,152 を経て第1および第2出力液圧路21 ,22 に還流される。このようなブレーキ液の還流によって、第1および第2リザーバ81 ,82 のブレーキ液の吸収によるブレーキペダルPの踏み込み量の増加を防ぐことができる。しかも第1および第2ポンプ111 ,112 の吐出圧の脈動は第1および第2ダンパ141 ,142 、ならびに第1および第2オリフィス151 ,152 の協働作用により吸収されるため、上記還流によってブレーキペダルPの操作フィーリングが阻害されることはない。
【0022】図2〜図4において、ブレーキ液圧制御装置3は、たとえばアルミニウム合金等によりブロック状に形成されるハウジング20を備えるものであり、このハウジング20に、第1〜第4常開型電磁弁51 〜54 、それらの常開型電磁弁51〜54 と制御弁手段V1 〜V4 を構成する第1〜第4常閉型電磁弁61 〜64 、、第1〜第4チェック弁71 〜74 、第1および第2リザーバ81 ,82 、第1および第2ダンパ141 ,142 、第1および第2オリフィス151 ,152 、ならびに第1および第2ポンプ111 ,112 が設けられる。またハウジング20の一面20aには合成樹脂製のカバー21が取付けられ、該カバー21とは反対側でハウジング20の他面20bに電動モータ12のモータケース22が取付けられる。
【0023】図5〜図7を併せて参照して、第1〜第4常開型電磁弁51 〜54 は、弁部5aにソレノイド部5bがそれぞれ連設されて成るものであり、ハウジング20の一面20aに開口するようにして該ハウジング20の上部に設けられる4つの装着孔23…に各弁部5a…が収容され、各ソレノイド部5b…はハウジング20の一面20aから突出する。また第1〜第4常閉型電磁弁61 〜64 は、弁部6aにソレノイド部6bがそれぞれ連設されて成るものであり、ハウジング20の一面20aに開口するようにして該ハウジング20の上部に設けられる4つの装着孔24…に各弁部6a…が収容され、各ソレノイド部6b…はハウジング20の一面20aから突出する。しかも装着孔23…が横方向に並んでハウジング20に設けられるのに対し、装着孔24…は、それらの装着孔23…の下方で横方向に並んでハウジング20に設けられており、第1〜第4常開型電磁弁51 〜54 および第1〜第4常閉型電磁弁61 〜64 は上下に並列してハウジング20に装着されることになる。
【0024】第1リザーバ81 は、制御弁手段V1 ,V2 に対応する位置でハウジング20の下部に配設され、第2リザーバ82 は、制御弁手段V3 ,V4 に対応する位置でハウジング20の下部に配設される。而して両リザーバ81 ,82 は、図5で示すように、ハウジング20の一面20aに開口するようにして該ハウジング20に設けられる有底のリザーバ穴26と、該リザーバ穴26の閉塞端との間にリザーバ室27を形成してリザーバ穴26に摺動可能に嵌合される有底円筒状のピストン28と、リザーバ穴26の開口端部に嵌合される受け部材29と、該受け部材29のリザーバ穴26からの抜け出しを阻止するようにしてリザーバ穴26の開口端縁に装着される止め輪30と、受け部材29およびピストン28間に縮設されるリザーバばね31とでそれぞれ構成されるものであり、両リザーバ81,82 のリザーバ室27…が第1および第2ポンプ111 ,112 に接続される。
【0025】第1ダンパ141 は、制御弁手段V1 ,V2 および第1リザーバ81 間に対応する位置でハウジング20に配設され、第2ダンパ142 は、制御弁手段V3 ,V4 および第2リザーバ82 間に対応する位置でハウジング20に配設される。
【0026】図8において、両ダンパ141 ,142 は、ハウジング20の一面20aに開口するようにして該ハウジング20に設けられる有底のダンパ穴33に摺動可能に嵌合されてダンパ穴33の閉塞端との間にダンパ室34を形成するピストン35と、ダンパ穴33の開口端部に嵌合される受け部材36と、該受け部材36のダンパ穴33からの抜け出しを阻止するようにしてダンパ穴33の開口端縁に装着される止め輪37と、受け部材36およびピストン35間に設けられる弾発手段としての1もしくは複数枚の皿ばね38とでそれぞれ構成されるものであり、両ダンパ141 ,142 のダンパ室34…が第1および第2ポンプ111 ,112 に接続される。
【0027】第1および第2ポンプ111 ,112 は、第1〜第4常閉型電磁弁61 〜64と、第1および第2リザーバ81 ,82 との間で、第1〜第4常閉型電磁弁61〜64 の配列方向に沿う同軸の作動軸線を有してハウジング20に配設されるものであり、両ポンプ111 ,112 がそれぞれ備えるプランジャ40…は、相互間に間隔をあけた位置に配置される。また両ポンプ111 ,112 には、吸入弁101 ,102 および吐出弁131 ,132 がそれぞれ内蔵されている。
【0028】一方、電動モータ12のモータケース22は、有底円筒状のケース本体22aと、該ケース本体22aの開放端を閉じるように配置される蓋体22bとから成るものであり、ケース本体22aおよび蓋体22bがともに複数のねじ部材41…によりハウジング20の他面20bに締結される。該電動モータ12の出力軸42は、蓋体22bを回転自在に貫通し、ハウジング20に設けられた凹部43内まで延出されており、蓋体22bに保持されたボールベアリング44と、凹部43の内端部に保持されたボールベアリング45とによって支承される。しかも前記両ベアリング44,45間に位置する中間部で出力軸42には偏心軸部42aが設けられており、該偏心軸部42aの外周に装着されるボールベアリング46が、第1および第2ポンプ111 ,112 における各プランジャ40…の先端に当接される。したがって、電動モータ12の作動によって出力軸42が回転すれば、偏心軸部42aを介してボールベアリング46に偏心運動が与えられ、これにより各プランジャ40…にポンプ動作が与えられることになる。
【0029】カバー21は、前記第1〜第4常開型電磁弁51 〜54 におけるソレノイド部5a…、前記第1〜第4常閉型電磁弁61 〜64 におけるソレノイド部6b…を収納するとともに、第1および第2リザーバ81 ,82 における受け部材29…ならびに第1および第2ダンパ141 ,142 における受け部材36…を臨ませる収納室48をハウジング20との間に形成するようにして、複数のねじ部材49…によりハウジング20の一面20aに締結される。而してカバー21のハウジング20側端縁には、該ハウジング20の一面20aに弾発的に接触する無端状のシール部材71が装着される。
【0030】カバー21内の中間部には、第1〜第4常開型電磁弁51 〜54 の各ソレノイド部5b…および第1〜第4常閉型電磁弁61 〜64 の各ソレノイド部6b…を嵌合、支持する支持部50が設けられ、該支持部50には、該支持部50で収納室48を区画することがないように複数の開口部52…が形成される。
【0031】電子制御ユニット16は、電気回路がプリントされる基板53に半導体チップ54等が搭載されて成るものであり、カバー21内のハウジング20とは反対側で基板53が前記支持部50に締結される。しかも前記支持部50には複数の導電性金属製のバスバー51…が埋設されており、これらのバスバー51…により、第1〜第4常開型電磁弁51 〜54 の各ソレノイド部5b…および第1〜第4常閉型電磁弁61 〜64 の各ソレノイド部6b…が、電子制御ユニット16に接続される。
【0032】カバー21には、ハウジング20から側方にはみだす突出部21aが一体に形成されており、該突出部21aには、雄型であるカバー側コネクタ55が設けられる。
【0033】このカバー側コネクタ55は、カバー21の前記突出部21aと一体にして箱形に形成されるコネクタハウジング56と、コネクタハウジング56の内部に収容、支持される複数本のコネクタ端子57…とで構成されるものであり、コネクタ端子57…は電子制御ユニット16およびバスバー51…を介して各ソレノイド部5b…,6b…に接続され、また電子制御ユニット16および図示しない導電体を介して電動モータ12に接続される。
【0034】カバー21に連設されたカバー側コネクタ55には、複数の外部導線75,75…の端部に共通に設けられる外部導線側コネクタ76のコネクタハウジング77が着脱可能に接続され、外部導線75,75…に個別に連なってコネクタハウジング77内に設けられるコネクタ端子(図示せず)が前記カバー側コネクタ55のコネクタ端子57…に嵌合、接続される。
【0035】図2および図3に注目して、車体フレーム88には、ハウジング20の下面に対向する支持板部89aと、該支持板部89aの両端に直角に連設されてハウジング20の両側面に対向する一対の支持板部89b,89bとを備えるブラケット89が固定される。
【0036】一方、ハウジング20の上部両側には取付け突部102,102が一体に突設されており、両取付け突部102,102が、ブラケット89における支持板部89b,89bの上部にマウント手段91,91を介して取付けられる。
【0037】マウント手段91は、ほぼ水平に延びる軸線を有して支持板部89b上に支持されるマウントボルト103と、該マウントボルト103の一部を嵌入せしめる円筒状のマウントラバー104とを備えるものであり、取付け突部102には、前記マウントラバー104を嵌合せしめる有底の取付け穴105が設けられる。
【0038】マウントボルト103は、ねじ軸部103aと、該ねじ軸部103aに同軸にかつ一体に連設される嵌入軸部103bと、ねじ軸部103aおよび嵌入軸部103bの連設部から半径方向外方に張出す鍔部103cとを一体に備えるものである。一方、支持板部89bの上部には、上方に開口したスリット106が設けられており、ねじ軸部103aの鍔部103c寄りの部分が該スリット106に上方から差し込まれる。而してねじ軸部103aにはナット107が螺合され、このナット107と前記鍔部103cとの間に支持板部89bが挟まれることにより、マウントボルト103が支持板部89bに固定的に支持されることになる。
【0039】またハウジング20の下部は、ブラケット89における支持板部89aにマウント手段90を介して取付けられるものであり、このマウント手段90は、ハウジング20の下部に嵌合されるマウントラバー(図示せず)が、支持板部89aに固定されて成るものである。
【0040】次にこの第1実施例の作用について説明すると、第1および第2ポンプ111,112 の吐出圧の脈動を第1および第2オリフィス151 ,152 との共働作用により吸収してブレーキペダルPの操作フィーリングを向上する機能を果す第1および第2ダンパ141 ,142 は、ハウジング20の一面20aに開口してハウジング20に設けられる有底のダンパ穴33に摺動可能に嵌合されるとともに該ダンパ穴33の閉塞端との間にダンパ室34を形成するピストン35と、ダンパ室34の容積を縮少する方向にピストン35を付勢する皿ばね38とで構成されている。したがって第1および第2ポンプ111 ,112 からダンパ室34に吐出されるブレーキ液の脈動が、皿ばね38の緩衝作用によって吸収されることになり、ダンパ室34の容積を大きく設定しなくてもダンパ容量を大きくすることが可能であり、第1および第2ダンパ141 ,142 すなわちハウジング20の大型化を招くことなくダンパ容量の大型化を図ることができる。
【0041】しかも皿ばね38は、ダンパ穴33内に挿入されるものであり、第1および第2ダンパ141 ,142 をより一層小型化することができ、皿ばね38の枚数や厚みを変化することにより、第1および第2ダンパ141 ,142 の性能を自在にかつ容易に変化させることができる。
【0042】図9は本発明の第2実施例を示すものであり、ダンパ14′は、ハウジング20の一面20aに開口して該ハウジング20に設けられる有底のダンパ穴33に摺動可能に嵌合されるとともに該ダンパ穴33の閉塞端との間にダンパ室34を形成するピストン35と、ダンパ室34の容積を縮少する方向にピストン35を付勢する弾発力を発揮する弾発手段としての板ばね60とで構成されるものであり、板ばね60の一端はハウジング20に螺合されるボルト61でハウジング20の一面20aに固定され、該板ばね60の他端がピストン35の外端に当接される。
【0043】この第2実施例によれば、ダンパ14′をより小型化することができる。すなわち板ばね60は、剛性が比較的高く、変位量が比較的小さいものであるので、板ばね60を配置するスペースが小さくてすみ、ダンパ14′の小型化に寄与することができる。しかも板ばね60の枚数や厚みを変えることにより、ダンパ14′の性能を自在にかつ容易に変化させることができる。
【0044】以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0045】たとえば本発明を自動二輪車のブレーキ液圧制御装置に適用することも可能である。
【0046】
【発明の効果】以上のように請求項1記載の発明によれば、ダンパ室の容積を大きく設定しなくてもダンパ容量を大きくすることが可能であり、ダンパすなわちハウジングの大型化を招くことなくダンパ容量の大型化を図ることができ、弾発手段の弾発力を変更することによりダンパ性能を自在に変化させることができる。
【0047】また請求項2記載の発明によれば、弾発手段を皿ばねとすることにより、ダンパをより一層小型化することができ、皿ばねの枚数や厚みを変化することにより、ダンパの性能を自在にかつ容易に変化させることができる。
【0048】さらに請求項3記載の発明によれば、弾発手段を板ばねとすることにより、ダンパをより小型化することができ、板ばねの枚数や厚みを変えることにより、ダンパの性能を自在にかつ容易に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例における乗用車両のブレーキ装置のブレーキ液圧回路図である。
【図2】ブレーキ液圧制御装置の側面図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図2の4矢視図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】ダンパの拡大断面図である。
【図9】第2実施例のダンパの拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ,22 ・・・出力液圧路
1 ,82 ・・・リザーバ
111 ,112 ・・・ポンプ
141 ,142 ,14′・・・ダンパ
151 ,152 ・・・オリフィス
20・・・ハウジング
20a・・・ハウジングの一面
33・・・ダンパ穴
34・・・ダンパ室
35・・・ピストン
36・・・受け部材
38・・・弾発手段としての皿ばね
60・・・弾発手段としての板ばね
1 ,B2 ,B3 ,B4 ・・・車輪ブレーキ
M・・・マスタシリンダ
1 ,V2 ,V3 ,V4 ・・・制御弁手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 マスタシリンダ(M)に連なる出力液圧路(21 ,22 )および車輪ブレーキ(B1 ,B2 ,B3 ,B4 )間を連通するとともに車輪ブレーキ(B1 〜B4 )およびリザーバ(81 ,82 )間を遮断する状態、前記出力液圧路(21 ,22 )および車輪ブレーキ(B1 〜B4 )間を遮断するとともに車輪ブレーキ(B1 〜B4 )およびリザーバ(81 ,82 )間を連通する状態、ならびに車輪ブレーキ(B1 〜B4 )を前記出力液圧路(21 ,22 )およびリザーバ(81 ,82 )から遮断する状態を切換可能な制御弁手段(V1 ,V2 ,V3 ,V4 )と、前記リザーバ(81 ,82 )から汲上げたブレーキ液を前記出力液圧路(21 ,22 )側に戻すポンプ(111 ,112 )と、前記出力液圧路(21 ,22 )および前記ポンプ(111 ,112 )間に介設されるオリフィス(151 ,152 )と、該オリフィス(151 ,152 )および前記ポンプ(111 ,112 )間に接続されるダンパ(141 ,142 ;14′)とを備え、前記制御弁手段(V1 〜V4 )、リザーバ(81 ,82 )、ポンプ(111 ,112)、オリフィス(151 ,152 )およびダンパ(141 ,142 )がハウジング(20)に設けられる車両用ブレーキ液圧制御装置において、前記ダンパ(141 ,142 ;14′)は、前記ハウジング(20)の一面(20a)に開口して該ハウジング(20)に設けられる有底のダンパ穴(33)に摺動可能に嵌合されるとともに該ダンパ穴(33)の閉塞端との間に前記ポンプ(111 ,112 )の吐出側に接続されるダンパ室(34)を形成するピストン(35)と、前記ダンパ室(34)の容積を縮少する方向に前記ピストン(35)を付勢する弾発力を発揮する弾発手段(38,60)とで構成されることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】 前記ダンパ穴(33)からの離脱が阻止される構成で受け部材(36)がダンパ穴(33)の開口端部に挿入され、前記弾発手段(38)は、前記受け部材(36)および前記ピストン(35)間に介設される皿ばねであることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】 前記弾発手段(60)が、前記ハウジング(20)に一端が固定されるとともに他端が前記ピストン(35)に当接される板ばねであることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図6】
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【図7】
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