説明

車両用マット

【課題】優れた意匠性を有し、且つ運転時に足が滑ることがない車両用マットを提供する。
【解決手段】本発明の車両用マット102は、表面層11、裏面層13、及び表面層と裏面層とを連結する連結糸121からなる連結層12を有する3層編物部1を備え、裏面層及び連結層のうちの少なくとも一方が加飾(色彩及び/又は図柄)され、且つ表面層はネット構造を有し、ネット構造が備える表面側網目の寸法が、車両用マットが用いられたときに車両の前後方向となる方向より、車両の幅方向となる方向において大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用マットに関する。更に詳しくは、本発明は、優れた意匠性を有し、且つ運転時等に足が滑ることがない車両用マットに関する。また、この車両用マットは、十分な通気性を有し、降雨時に乗車したとき、及び洗浄したときなどに容易に乾燥させることができ、更には優れた体分圧性をも併せて有する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用マットとしてタフテッドマットが用いられており、このタフテッドマットに色彩、図柄等により加飾を施した車両用マットも提供されている。また、表裏の地組織が連結糸で連結された三次元構造布が知られており(例えば、特許文献1参照。)、着色された連結糸を用いることにより、意匠性の高い三次元構造布とすることができると説明されている。更に、表裏二層の横編地がモノフィラメントにより連結され、編地表面が柄を有している立体横編物が知られており(例えば、特許文献2参照。)、この立体横編物は意匠性に優れ、弾力性のあるクッション性を有し、クッション性の耐久性に優れると説明されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−148736号公報
【特許文献2】特開2004−107800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、タフテッドマットでは、意匠は二次元的な表現のみであり、見る方向、見る高さによる見栄えは一律であり、変化に乏しいものである。また、タフトの目付が高いため必ずしも通気性が十分ではなく、毛細管現象等により水分が含浸し易く、降雨時に乗車したとき、洗浄したとき、飲料水等をこぼしたとき、などに乾燥させ難いことがある。更に、タフト自体は、構成上、一定の流れ方向を有しているが、その滑り抵抗(滑り難さ)を調整することはできず、構造上、体荷重等の分圧性も有していない。
【0005】
また、特許文献1に記載された三次元構造布では、連結糸が着色されているが、表側の地組織の構造等によっては意匠性を十分に向上させることができないこともある。更に、特許文献2に記載された立体横編物では、表裏二層の横編地の少なくとも一方が柄を有しているが、裏面側の横編地のみが柄を有しているときは、意匠性を十分に向上させることができないこともある。また、三次元構造布及び立体横編物のいずれにおいても、見る方向、見る高さという観点からの意匠性の検討はなされておらず、更には車両用マットでは必須とされる滑り抵抗(滑り難さ)についても何ら検討されていない。
【0006】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、優れた意匠性を有し、且つ運転時に足が滑ることがなく、十分な通気性を有し、降雨時に乗車したとき、及び洗浄したときなどに容易に乾燥させることができ、更には連結糸の本数及び/又は径により分圧性を調整することができ、優れた体分圧性をも併せて有する車両用マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.表面層、裏面層、及び該表面層と該裏面層とを連結する連結糸からなる連結層を有する3層編物部を備える車両用マットであって、上記裏面層及び上記連結層のうちの少なくとも一方が加飾され、且つ上記表面層はネット構造を有し、該ネット構造が備える表面側網目の寸法が、車両フロア上の所定位置に載置されたときに車両の前後方向となる方向より、車両の幅方向となる方向において大きいことを特徴とする車両用マット。
2.上記表面側網目の周辺部から上記裏面層に向かう上記連結糸は、該表面側網目を該裏面層の該表面側網目に対向する位置に投影させたときの投影図の内部となる位置で該裏面層に連結されている上記1.に記載の車両用マット。
3.上記表面層の上記裏面層の側の表面と、上記連結糸の該表面層及び該裏面層の各々との連結部を結ぶ仮想線とがなす角度が、該連結糸が上記投影図の上記内部に向かう方向において70〜85°である上記2.に記載の車両用マット。
4.上記裏面層がネット構造を有し、該ネット構造が有する裏面側網目が、上記表面側網目より小さい上記1.に記載の車両用マット。
5.上記連結層が加飾されている上記2.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の車両用マット。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用マットによれば、表面層が有するネット構造が備える表面側網目の寸法が、車両用マットが用いられたときに車両の前後方向となる方向より、車両の幅方向となる方向において大きいため、人が乗り込むときには、色彩及び/又は図柄からなる加飾を視認し、楽しむことができ、運転時には、特に踵が前後方向に滑るのが防止される。また、加飾が裏面層及び連結層のうちの少なくとも一方に施されているため、見る方向、見る高さにより、加飾の印象が、例えば、大人の目線と子供の目線とで異なり、より楽しいドライブとすることもできる。
また、表面側網目の周辺部から裏面層に向かう連結糸が、表面側網目を裏面層の表面側網目に対向する位置に投影させたときの投影図の内部となる位置で裏面層に連結されている場合は、連結糸により表面層側から裏面層側へと断面積が徐々に小さくなる仮想空間が形成される形態となり、特に加飾が連結層に施された場合、視認が容易であり、且つ連結層に入り込んだゴミ等を排出し易くなる。
更に、表面層の裏面層の側の表面と、連結糸の表面層及び裏面層の各々との連結部を結ぶ仮想線とがなす角度が、連結糸が投影図の内部に向かう方向において70〜85°である場合は、特に加飾が連結層に施された場合、視認がより容易になり、且つゴミ等の排出がよりし易くなる。
また、裏面層がネット構造を有し、ネット構造が有する裏面側網目が、表面側網目より小さい場合は、上下の網目間に、表面層側から裏面層側へと断面積が徐々に小さくなる仮想空間が連結糸により形成された形態となり、特に連結層に施された加飾の視認が容易になり、且つ連結層に入り込んだゴミ等を排出し易くなる。
更に、連結層が加飾されている場合は、上記のような特定の構成のときに、上記のように加飾の視認が特に容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面も参照し、本発明を詳しく説明する。
本発明の車両用マットは、表面層、裏面層、及び該表面層と該裏面層とを連結する連結糸からなる連結層を有する3層編物部を備え、裏面層及び連結層のうちの少なくとも一方が色彩及び/又は図柄により加飾され、且つ表面層はネット構造を有し、ネット構造が備える表面側網目の寸法が、車両用マットが用いられたときに車両の前後方向となる方向より、車両の幅方向となる方向において大きいことを特徴とする。
【0010】
[1]表面層及び裏面層
上記「表面層」及び上記「裏面層」の形成に用いる糸を構成する繊維は、合成繊維、再成繊維、天然繊維等のいずれでもよい。また、糸は1種の繊維のみからなる糸でもよく、複数の繊維を混合して製糸した糸でもよい。更に、繊維のままの色調で着色されていない糸でもよく、所定の色調に着色された糸でもよい。また、表面層と裏面層とは、同種の糸により形成されていてもよく、異種の糸により形成されていてもよく、交編されていてもよい。
【0011】
上記の繊維としては、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維などの合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リョセル等の再生繊維などが挙げられる。これらのうちでは、強度が大きく、優れた耐久性等を有するポリエステル系繊維が好ましい。特に、裏面層に加飾を施す場合は、この裏面層の形成には、着色が容易なポリエステル系繊維を用いることが好ましい。また、表面層及び裏面層の形成には、通常、繊度が50〜2000デシテックスのマルチフィラメント等を用いることができる。
【0012】
糸の形態も、原糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等の嵩高加工糸などのいずれであってもよい。更に、マルチフィラメントでもモノフィラメントでもよいが、連結糸として多用されるモノフィラメントが表面層及び裏面層の表面に露出しないようにするためには、表面層及び裏面層のうちの少なくとも一方、好ましくは両層をマルチフィラメントの仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いて形成することが好ましい。また、3層編物部に十分な耐圧縮性及び圧縮回復性等を付与するためには、表面層及び裏面層のうちの少なくとも一方、好ましくは両層をモノフィラメントにより形成することが好ましい。
【0013】
[2]連結糸
上記「連結糸」としては長繊維からなる糸が用いられる。この長繊維としては、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維などの合成繊維が好ましい。特に、圧縮と開放とが繰り返される車両用マットでは、圧縮歪みの回復性に優れ、残留歪みの少ない上記「連結層」とすることができるナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド系繊維からなる糸が好適である。この連結糸は、表面層及び裏面層の編地中にループ状の編目を形成して連結されていてもよく、編地にタック編で引っ掛けることで連結されていてもよい。
【0014】
連結糸は、モノフィラメントでもよく、マルチフィラメントでもよいが、モノフィラメントが好ましい。すべての連結糸がモノフィラメントであることが好ましいが、編成時に、必要に応じてモノフィラメントを除く他の繊維を交編させてもよい。例えば、マルチフィラメント仮撚糸等を交編することができる。また、モノフィラメントは、通常、1本のフィラメントからなる単糸であるが、フィラメントの径が0.04mm以上であれば、複数のフィラメントの集合糸であってもモノフィラメントに含めるものとする。
【0015】
連結糸に用いるモノフィラメントの繊度は特に限定されないが、繊度が20〜1500デシテックスのモノフィラメント用いることが好ましい。3層編物部に、弾力性のある優れたクッション性を付与するためには、モノフィラメントの繊度は100〜1000デシテックス、特に200〜900デシテックスであることがより好ましい。
尚、連結糸の径及び単位面積当たりの本数等を変えることにより、車両用マットの体分圧性を調整することもできる。
【0016】
[3]3層編物部
上記「3層編物部」を構成する表面層、裏面層及び連結層の各々の形成に用いる糸の種類等は上記のとおりであるが、表面層及び裏面層はポリエステル繊維からなる糸により形成し、連結層はポリアミド繊維からなる糸により形成することが好ましい。この場合、表面層及び裏面層がポリエステル系であるため、着色が容易であり好ましい。また、3層編物部は、表面層、裏面層及び連結層のすべてをポリエステル系繊維からなる糸により形成してもよく、この場合、廃棄の際に解重合させて単量体とし、リサイクルすることができ、焼却しても有害ガスの発生を抑えることができる。
【0017】
3層編物部の厚さは特に限定されないが、2〜10mmとすることができ、3〜8mm、特に3〜7mmであることが好ましい。厚さが2〜10mmであれば、圧縮抵抗が十分に高く、使用時に立体性が維持され、且つ優れたクッション性を有する車両用マットとすることができる。
【0018】
また、3層編物部は、50%圧縮時のヒステリシスロスが50%以下であることが好ましい。このヒステリシスロスは40%以下、特に30%以下であることがより好ましい。ヒステリシスロスが50%以下であれば、弾力性のあるクッション性が発現され、繰り返し及び/又は長時間圧縮後の残留歪も少なく、弾力性の低下が少ない車両用マットとすることができる。
【0019】
3層編物部の表面層と裏面層の編組織は同じであってもよく、編組織及び伸長特性等が異なっていてもよい。また、表面層の編組織はネット構造であるが、裏面層はネット構造であってもよく、ネット構造でなくてもよい。更に、裏面層は、平面方向の一部がネット構造を有していてもよい。
【0020】
[4]表面層のネット構造
表面層が有する上記「ネット構造」が備える上記「表面側網目」の形状は特に限定されないが、楕円形、菱形、長方形、及びこれらの形状が長径方向により長くなり扁平になった形状(図8〜11参照)等が挙げられる。このように、表面側網目の形状は一方向とその方向に直交する方向とで寸法が異なっているが、この表面側網目の寸法は、車両フロア上の所定位置に載置されたときに車両の前後方向となる方向より、車両の幅方向となる方向において大きいことを特徴とする。これにより、人が車両に乗り込むときには、色彩及び/又は図柄等からなる加飾を容易に視認することができ、運転時には足の滑りが抑えられる。
【0021】
[5]連結糸の方向
連結糸は、3層編物部の表面層側から裏面層側へと、どのような方向に連結されていてもよく、連結層の形態は特に限定されないが(例えば、図1〜3の車両用マット100、101及び102における連結糸121参照、尚、これらの異なる態様に係る図では、便宜上、同一の構成部材については同一の符号を用いる。)、連結糸は、この連結糸により表面層側から裏面層側へと断面積が徐々に小さくなる仮想空間が形成されるように、連結されていることが好ましい(図3、4参照)。即ち、表面側網目の周辺部から裏面層に向かう連結糸は、表面側網目を裏面層の表面側網目に対向する位置に投影させたときの投影図の内部となる位置で裏面層に連結されていることが好ましい。このような構成であれば、特に加飾が連結層に施された場合、その視認が容易であり、且つ連結層に入り込んだゴミ等の排出も容易である。
【0022】
連結糸を上記のように連結する場合、連結糸は表面層から裏面層へと斜めに連結されることになるが、傾斜の角度は特に限定されない。この傾斜の角度は、表面層の裏面層の側の表面と、連結糸の表面層及び裏面層の各々との連結部を結ぶ仮想線(図3において符号122の破線である。)とがなす角度(図3における角度αである。)が、連結糸が上記の投影図の内部に向かう方向において70〜85°、特に70〜80°であることが好ましい。この角度が70〜85°であれば、十分なクッション性を有し、且つ特に加飾が連結層に施された場合、その視認が容易になり、連結層に入り込んだゴミ等の排出も容易になる。
【0023】
裏面層がネット構造を有する場合、このネット構造が備える裏面側網目の形状は表面側網目と同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。また、裏面側網目の寸法は表面側網目の寸法と同じであってもよく、異なっていてもよいが、裏面側網目は表面側網目より小さいことが好ましい。更に、裏面側網目の形状は表面側網目と同じ形状であり、且つ裏面側網目は表面側網目より小さいことがより好ましい。このような形態であれば、連結糸により、表面層側から裏面層側へと断面積が徐々に小さくなる仮想空間(図4において符号123により表される空間である。)が形成され、特に加飾が連結層に施された場合に、その視認がより容易になり、且つ連結層に入り込んだゴミ等の排出もより容易になる。
【0024】
[6]加飾
本発明の車両用マットでは、裏面層及び連結層のうちの少なくとも一方が加飾されている。
上記「加飾」は色彩及び/又は図柄により構成され、これにより車両用マットの意匠性が向上する。この色彩とは、黒色、灰色等の無彩色であることが多い表面層に対して、有彩色であることを意味する。また、表面層が有彩色であるときは、裏面層及び連結層のうちの少なくとも一方が表面層と異なる色調の有彩色であることを意味する。この色調は特に限定されず、黄色、青色、橙色、緑色等のいずれであってもよい。
【0025】
図柄は、円形、楕円形、多角形、縞模様、格子模様等の単調な図柄でもよく、動物、植物、自然、漫画等のキャラクターなどの特定の図柄でもよく、抽象的な図柄でもよい。また、単調な図柄、特定の図柄及び抽象的な図柄が混在していてもよい。更に、図柄は、特定の色調の一色のみによって描かれていてもよいし、所定の多数の色調の組み合わせによって描かれていてもよい。
【0026】
裏面層及び/又は連結層の加飾は、裏面層及び連結層の形成に用いるモノフィラメント、マルチフィラメント等を染色してなる先染糸、又は合成繊維を用いるときは、原料樹脂に染料、顔料等を配合して製糸した着色糸を用いて施すことができる。また、この着色糸と、繊維が本来有する色調であり、特に着色されていない糸とを混用してもよい。
【0027】
加飾は選針により施すこともできる。例えば、編針の上下運動を一針ずつ制御して柄編成をすることにより、単調な繰り返し柄からなる図柄を施すことができ、より複雑な図柄を施し、より意匠性の高い車両用マットとすることもできる。また、加飾は色糸切り替えにより施すこともできる。例えば、編成コース毎又は編成編目毎に任意の色糸を用いて色柄を形成することができる。更に、この色糸切り替えでは、選針をしない単純な色柄から、色糸切り替えと選針による図柄とを組み合わせた複雑な色柄まで、各種の図柄を形成することができる。
【0028】
本発明の車両用マットでは、例えば、加飾が施された車両用マットを上方から見た場合、図5のように、図柄を明瞭に視認することができる。一方、この車両用マットを斜め上方、且つ斜め側方から見たときは、図6のように、図柄がやや不鮮明になる。更に、図6の場合に比べて僅かに下方から見たときは、図7のように、図柄をほとんど視認することができなくなる。このように、施された加飾は、これを見る方向、及び見る高さによって視認のし易さが変化する。
【0029】
[7]他の構成部材
車両用マットは、表層側となる3層編物部の他に、より強度の大きい支持層を備える。支持層は特に限定されないが、例えば、樹脂繊維製不織布からなる支持層とすることができる。この支持層を構成する樹脂繊維の材質は特に限定されないが、この樹脂繊維としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂及びポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂などからなる繊維が挙げられる。
【0030】
3層編物部と支持層とは接着剤層により接合して一体とすることができる。この接合に用いる接着剤も特に限定されず、3層編物部の裏面層及び支持層の各々の材質により選択して用いることが好ましい。接着剤としては、ポリウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤等の各種の接着剤を用いることができる。接着剤としてはポリウレタン系接着剤が好ましく、車両用マットを軽量化することができ、クッション性を向上させることができる等の理由で接着剤層は発泡層であることがより好ましい。
上記のような支持層及び接着剤層はいずれも耐水性が高く、本発明の車両用マットは、降雨時、洗浄時等においても、まったく問題なく使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を図を参照しながら具体的に説明する。尚、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
実施例1
ポリエステル繊維からなるマルチフィラメントを用いてなる表面層11及び裏面層13、並びにポリアミド繊維からなるモノフィラメントを用いてなる連結糸121からなる連結層12が一体に編成されて形成された厚さ5mmの3層編物部1と、ポリエステル繊維を用いてなる厚さ5mmの不織布層3(支持層になる。)とを、重ね合わせるようにして、ポリウレタン系接着剤を用いてなる発泡接着剤層2により接合して、図2のような、車両用マット101を製造した。表面層が有するネット構造が備える編目は、図7のように、楕円様の扁平な形状であり、車両の前後方向となる方向の寸法は2mm、幅方向となる方向の寸法は5mmであった。また、連結糸は、図2のように、裏面層から裏面層へとやや傾斜して並列に連結されている構成とした。更に、表面層は黒色とし、連結層を濃青色、裏面層を淡青色として連結層と裏面層とを色彩により加飾した。
この車両用マットを乗用車の運転席側のフロアカーペットの所定位置に敷いたところ、乗り込むときには連結層の濃青色を十分に視認することができ、乗り込んでから車両用マットに踵を置き、つま先側をアクセルペダルとブレーキペダルとにシフトさせてみたが、踵が滑ることはなかった。
【0032】
実施例2
表面層11が有するネット構造が備える表面側編目の形状を、実施例1の場合と比べて、車両の前後方向となる方向で大きく、車両の幅方向となる方向で小さくなるようにし、且つ車両の前後方向となる方向の寸法を2mm、幅方向となる方向の寸法を4mmとし、実施例1と比べて編目の面積が小さい表面層とした。また、表面側網目の周辺部から裏面層に向かう連結糸121が、図3のように、表面側網目を裏面層の表面側網目に対向する位置に投影させたときの投影図の内部となる位置で裏面層13に連結されている構成となるようにした。その他の構成は実施例1と同様の構造の車両用マット102を製造した。
この車両用マットを乗用車の運転席側のフロアカーペットに敷いたところ、乗り込むときの連結層の濃青色の視認性、及び滑り防止性ともに、実施例1の場合と同様に良好であった。
【0033】
尚、本発明の範囲には含まれないが、表面層が有するネット構造が備える表面側網目の寸法は、車両用マットをフロアカーペットに敷いて用いたときに、車両の前後方向となる方向と、車両の幅方向となる方向とで同寸法とすることができる。このような形状としては、円形、及び正方形、正六角形、正八角形等の正多角形などが挙げられる。また、本発明の範囲には含まれないが、表面層が有するネット構造が備える表面側網目は、車両用マットをフロアカーペットに敷いて用いたときに、車両の前後方向となる方向より、車両の幅方向となる方向において寸法が小さい形状とすることができる。このような形状としては、楕円形、菱形、長方形、及びこれらの形状が長径方向により長くなり扁平になった形状等が挙げられる。
【0034】
上記ように、表面側網目の寸法が車両の前後方向と幅方向とで同じである場合、及び表面側網目の寸法が車両の前後方向より幅方向において小さい場合、表面層の材質、裏面層のネット構造の有無及び材質、連結糸の連結の態様及び材質、裏面層及び/又は連結層の加飾、支持層及び接着剤層の各々の形態、材質などの、表面側網目の形状を除く他の構成については、前記の本発明の車両用マットに係るそれぞれの記載をそのまま適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】湾曲した連結糸が立設されてなる連結層を有する車両用マットの断面の模式的な説明図である。
【図2】直線状の連結糸がやや傾斜して並列に立設されてなる連結層を有する車両用マットの断面の模式的な説明図である。
【図3】連結糸は、この連結糸により表面層側から裏面層側へと断面積が徐々に小さくなる仮想空間が形成されるように、連結されている連結層を有する車両用マットの断面の模式的な説明図である。
【図4】図3の連結層における1個の表面側編目とその下方の連結層及び裏面層の形態の模式的な説明図である。
【図5】色彩及び図柄からなる加飾が施された車両用マットを上方から見たときの説明図である。
【図6】図5の加飾が施された車両用マットを斜め上方、且つ斜め側方から見たときの説明図である。
【図7】図5の加飾が施された車両用マットを、図6の場合に比べて僅かに下方から見たときの説明図である。
【図8】車両の幅方向における寸法が前後方向における寸法より大きい表面側網目の一例の説明図である。
【図9】図8と比べて車両の幅方向における寸法と前後方向における寸法との差が小さい場合の説明図である。
【図10】表面側網目の形状が図9の場合と同様であり、且つ網目の寸法が小さいときの説明図である。
【図11】表面側網目の形状及び寸法が図10の場合と同様であり、且つ表面層の全面に対する網目の面積割合が小さいときの説明図である。
【符号の説明】
【0036】
100、101、102;車両用マット、1;3層網物部、11;表面層、12;連結層、121;連結糸、122;仮想線、123;仮想空間、13;裏面層、2;発泡接着層、3;不織布層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層、裏面層、及び該表面層と該裏面層とを連結する連結糸からなる連結層を有する3層編物部を備える車両用マットであって、
上記裏面層及び上記連結層のうちの少なくとも一方が加飾され、且つ上記表面層はネット構造を有し、該ネット構造が備える表面側網目の寸法が、車両フロア上の所定位置に載置されたときに車両の前後方向となる方向より、車両の幅方向となる方向において大きいことを特徴とする車両用マット。
【請求項2】
上記表面側網目の周辺部から上記裏面層に向かう上記連結糸は、該表面側網目を該裏面層の該表面側網目に対向する位置に投影させたときの投影図の内部となる位置で該裏面層に連結されている請求項1に記載の車両用マット。
【請求項3】
上記表面層の上記裏面層の側の表面と、上記連結糸の該表面層及び該裏面層の各々との連結部を結ぶ仮想線とがなす角度が、該連結糸が上記投影図の上記内部に向かう方向において70〜85°である請求項2に記載の車両用マット。
【請求項4】
上記裏面層がネット構造を有し、該ネット構造が備える裏面側網目が、上記表面側網目より小さい請求項1に記載の車両用マット。
【請求項5】
上記連結層が加飾されている請求項2乃至4のうちのいずれか1項に記載の車両用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−23452(P2009−23452A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187521(P2007−187521)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】