説明

車両用ミラー装置

【課題】ミラーホルダの組付性を確保しながらミラーホルダの保持力を向上させることができる車両用ミラー装置を得る。
【解決手段】ミラーホルダ22の組付ガイド軸部30は、その先端側に被嵌合部34を備えており、被嵌合部34は、ハウジングケース42の嵌合受部56の内側に嵌合されて回転摺動可能に保持されている。被嵌合部34には、組付ガイド軸部30の軸線30L周りに先端側とは反対側から切り込まれたスリット38が形成されると共に、このスリット38よりも外周側に可撓性を備えた可撓部36が形成されている。被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した状態では嵌合受部56の内側で可撓部36が押し広げられて荷重Fに抗する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられてミラーホルダが回動可能な車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された車両用ミラーでは、ハウジングに形成されたピボット軸の球状部がミラーホルダに形成された嵌合部に嵌め込まれている。これにより、ミラーホルダは球状部を軸に回動でき、ミラーホルダを回動させることで鏡の反射面の向きを変えられるようになっている。
【特許文献1】特開2001−151021公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらこのような構成では、ミラーホルダの保持力を向上させるために嵌合部側の剛性を高くして掛かり代を大きくすると、ミラーホルダを組み付ける際の反力が大きくなり、ミラーホルダの組付性を低下させてしまう。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、ミラーホルダの組付性を確保しながらミラーホルダの保持力を向上させることができる車両用ミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車両用ミラー装置は、表側から入射した光を反射する反射面を備えたミラーと、前記ミラーの裏側に設けられて前記ミラーを保持するミラーホルダと、前記ミラーホルダの裏側に設けられて前記ミラーホルダを支持し、車両側に直接又は間接的に取り付けられる支持体と、前記ミラーホルダ及び前記支持体のいずれかの一方からいずれかの他方側へ突出形成されると共に、先端側を開口側として凹状に湾曲されかつ先端側が窄められた嵌合受部と、前記ミラーホルダ及び前記支持体のいずれかの他方からいずれかの一方側へ突出形成され、先端側において前記嵌合受部の内側に嵌合されて回転摺動可能に保持される被嵌合部を備え、前記被嵌合部には突出方向の軸線周りに先端側とは反対側から切り込まれたスリットが形成されると共に前記スリットよりも外周側に可撓性を備えた可撓部が形成され、前記被嵌合部を前記嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した状態では前記嵌合受部の内側で前記可撓部が押し広げられて前記荷重に抗する組付部と、を有する。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用ミラー装置によれば、ミラーの裏側にはミラーホルダが設けられており、このミラーホルダによってミラーは保持される。ミラーホルダの裏側には支持体が設けられて車両側に直接又は間接的に取り付けられており、この支持体によってミラーホルダは支持されている。
【0007】
また、ミラーホルダ及び支持体のいずれかの一方からいずれかの他方側へ突出形成された嵌合受部は、先端側を開口側として凹状に湾曲されかつ先端側が窄められている。これに対し、ミラーホルダ及び支持体のいずれかの他方からいずれかの一方側へ突出形成された組付部は、その先端側に被嵌合部を備えており、被嵌合部は、嵌合受部の内側に嵌合されて回転摺動可能に保持されている。このため、ミラーの反射面の角度調整時には、被嵌合部が嵌合受部の内側で相対移動することによって、支持体に対してミラーホルダが回動する。
【0008】
ここで、被嵌合部には突出方向の軸線周りに先端側とは反対側から切り込まれたスリットが形成されると共にこのスリットよりも外周側に可撓性を備えた可撓部が形成されており、被嵌合部を嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した状態では嵌合受部の内側で可撓部が押し広げられて前記荷重に抗する。このため、従来技術の構成と比べて嵌合受部の剛性を低く設定したり掛かり代を小さくしても、換言すれば、被嵌合部の嵌合受部への嵌合時の荷重を大きくしなくても、ミラーホルダが抜けにくくなる。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車両用ミラー装置は、請求項1記載の構成において、前記被嵌合部は、前記可撓部が前記軸線周りの周方向に分割されて形成された複数の爪部を備えている。
【0010】
請求項2に記載する本発明の車両用ミラー装置によれば、被嵌合部は、可撓部が軸線周りの周方向に分割されて形成された複数の爪部を含んで構成されている。このため、被嵌合部を嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した場合、嵌合受部の内側で複数の爪部が互いに離間しながら押し広げられて前記荷重に抗する。
【0011】
請求項3に記載する本発明の車両用ミラー装置は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記組付部には、前記スリットの内側を含む位置に設けられて前記可撓部の前記軸線側への変位を抑える凸部が形成されている。
【0012】
請求項3に記載する本発明の車両用ミラー装置によれば、組付部にはスリットの内側を含む位置に設けられた凸部が形成されており、この凸部によって可撓部の軸線側への変位が抑えられる。このため、被嵌合部を嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した場合、可撓部は、仮に嵌合受部の内側における開口側で軸線側へ一旦収縮する方向に変位しようとしても、凸部によって軸線側への変位が抑えられる。これにより、可撓部は、より安定的に押し広げられ、前記荷重に抗する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用ミラー装置によれば、ミラーホルダの組付性を確保しながらミラーホルダの保持力を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項2に記載の車両用ミラー装置によれば、被嵌合部を嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した場合に、可撓部(複数の爪部)が押し広げられて変形する変形量を一層確保することができ、前記荷重に効果的に抗することができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項3に記載の車両用ミラー装置によれば、被嵌合部を嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した場合に、可撓部の軸線側への収縮を抑えて被嵌合部の嵌合受部からの抜けを効果的に抑えることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両用ミラー装置としてのドアミラー装置10について図1〜図6を用いて説明する。図1にはドアミラー装置10の全体構成が斜視図にて示され、図2にはドアミラー装置10の全体構成が分解斜視図にて極めて概略的に示されている。
【0017】
これらの図に示されるように、ドアミラー装置10は、バイザーを構成する合成樹脂製のバイザーボデー12を備えている。図2に示されるように、バイザーボデー12は、一方側へ向けて開口した凹形状に形成されている。バイザーボデー12の開口側とは反対側にはバイザーカバー14が設けられている。バイザーカバー14は、嵌合手段によってバイザーボデー12に一体的に結合されるようになっている。
【0018】
また、バイザーボデー12の内側には、電動格納ユニット16が設けられている。電動格納ユニット16は、ねじ等の締結固定部材によりバイザーボデー12に一体的に結合されている。電動格納ユニット16には、略車両上下方向に貫通した挿通孔18が形成されており、この挿通孔18には、図示しないスタンドに形成されたシャフトが挿し込まれる。これにより、電動格納ユニット16がスタンドのシャフト周りに回動可能とされた状態でスタンドのシャフトに支持されると共に、電動格納ユニット16のモータが駆動すると、電動格納ユニット16がシャフト周りに往復回動するようになっている。また、電動格納ユニット16を支持するスタンドは、図示しないステーに設けられており、このステーが図示しないドアパネルのコーナ部に固定されることで、本ドアミラー装置10がドアパネルに取り付けられる。
【0019】
また、図1に示されるように、バイザーボデー12の開口端近傍ではバイザーボデー12の内側にミラー20が配置されている。ミラー20は、略板状に形成されており、その厚さ方向一方の側(図中では右側)となる表側から入射した光を反射する反射面20Aを備えている。
【0020】
図2に示されるように、ミラー20の裏側(反射面20A側とは反対側)には、合成樹脂製のミラーホルダ22が設けられている。ミラーホルダ22は、ミラー20の裏面に対向配置される底壁26(図3参照)を備えると共に、ミラー20の外周側に配置される枠体24を備えている。枠体24は、その内周形状がミラー20の外周形状に対応した形状とされており、ミラー20の嵌め込みが可能になっている。すなわち、ミラーホルダ22は、枠体24に嵌め込まれたミラー20を保持することが可能な構造になっている。
【0021】
また、バイザーボデー12の内側には、ミラーホルダ22の裏側に鏡面角度調整ユニット40が設けられている。鏡面角度調整ユニット40は、支持体としての合成樹脂製のハウジングケース42を備えている。ハウジングケース42は、電動格納ユニット16等を介して(間接的に)車両側に取り付けられており、詳細後述するように、ミラーホルダ22を支持するようになっている。
【0022】
図3には、図1の3−3線に沿った断面にてミラーホルダ22が鏡面角度調整ユニット40のハウジングケース42側に組み付けられる途中の状態の断面図が示されている。図3に示されるように、鏡面角度調整ユニット40は、ハウジングケース42を構成するケースアッパ44(「アッパハウジング」ともいう。)を備えている。ケースアッパ44は、バイザーボデー12の内側において全体としてミラーホルダ22の側へ向けて開口した浅底の箱形状に形成されている。
【0023】
また、ハウジングケース42は、ケースロア46(「ロアハウジング」ともいう。)を備えている。ケースロア46は、ケースアッパ44よりもミラーホルダ22に近い側に配設され、全体としてミラーホルダ22とは反対側へ向けて開口した浅底の箱形状に形成されており、底壁48がミラーホルダ22の底壁26と対向するように配置されている。ケースロア46とケースアッパ44とは、互いの開口端を閉止するように連結され、これによりハウジングケース42を形成している。
【0024】
ケースロア46にはピボット筒50が形成されている。図3及び図4に示されるように、ピボット筒50は、円筒状の筒部52を備えている。図3に示されるように、筒部52は、底壁48側からミラーホルダ22側に立設されている。筒部52の底壁48とは反対側の端部からは連続して軸部54が形成されている。軸部54は、筒部52と同軸の筒状に形成されているが、その外周形状は、概ねピボット筒50の中心軸線50L上の所定位置Xを曲率の中心とした球面状に湾曲しており、ミラーホルダ22側(筒部52とは反対側)ではミラーホルダ22側へ向けて漸次縮径されている。
【0025】
図4及び図5に示されるように、このピボット筒50の軸部54に対応して、ミラーホルダ22の底壁26の裏面側には、軸受部28が形成されている。軸受部28は、ピボット筒50の側へ向けて開口した浅底の皿形状に形成されている。また、軸受部28の内周形状は、ミラーホルダ22の裏側の所定位置を曲率の中心として概ねピボット筒50の軸部54の曲率と同じ曲率で球面状に湾曲している。図5に示されるように、ミラーホルダ22は、鏡面角度調整ユニット40に対し、軸受部28の内周面が軸部54の外周面に隣接してピボット筒50の先端側の開口端を閉止するように配設されている。このため、ミラーホルダ22は、鏡面角度調整ユニット40に対して軸部54を中心にして回転摺動可能となる。
【0026】
一方、図4及び図5に示されるように、ピボット筒50の内側底面50Aからは嵌合受部56がミラーホルダ22側へ突出形成されている。嵌合受部56は、複数(本実施形態では四個)の保持爪56Aを含んで構成され、先端側(突出先端側)を開口58側として凹状に湾曲されている。すなわち、嵌合受部56は、全体としてピボット筒50と同軸でピボット筒50の中心軸線50L周りの一定間隔毎に筒体が分割された構造となっている。
【0027】
保持爪56Aの突出方向先端側は、ピボット筒50の中心軸線50Lの側へ向けて湾曲している。このため、嵌合受部56は、全体として先端側が窄められている。嵌合受部56の内周面156の形状は、概ねピボット筒50の中心軸線50L上の所定位置X(図5参照)を曲率の中心とした球面状とされている。
【0028】
この嵌合受部56に対応して、ミラーホルダ22には、組付部としての組付ガイド軸部30が設けられている。組付ガイド軸部30は、底壁26と一体に形成され(図4参照)、ミラーホルダ22から鏡面角度調整ユニット40のハウジングケース42側へ突出形成されている。
【0029】
組付ガイド軸部30は、軸心を貫通する孔部30Aが形成されており、基端側に円筒状の基部32を備えると共に、先端側にキノコ状の被嵌合部34を備えている。被嵌合部34は、全体として基部32よりも大径とされており、嵌合受部56の内側に嵌合されて回転摺動可能に保持されている(ドアミラー鏡面ユニットのピボット構造)。
【0030】
被嵌合部34には、組付ガイド軸部30の突出方向の軸線30L周りに先端側(突出先端側)とは反対側から切り込まれたスリット38が形成されている。なお、図5では組付ガイド軸部30の軸線30Lがピボット筒50の中心軸線50Lと重ねられて図示されている。図4及び図5に示されるように、スリット38は、組付ガイド軸部30の突出方向視で環状、組付ガイド軸部30の突出方向に切断した断面視(図5参照)で略V字状の切れ込みとされている。このスリット38により、被嵌合部34には、スリット38よりも内周側の部位として筒軸部35が基部32に連続して形成されると共に、スリット38よりも外周側の部位として可撓部36が筒軸部35の先端に連続して形成されている。
【0031】
可撓部36は、可撓性を備えて傘状とされており、その外周面の自由端側には、嵌合受部56の内周面156を回転摺動する摺動面136が形成されている。摺動面136は、嵌合受部56の内周面156の曲率と概ね同じ曲率で球状面の一部をなすように設定されている。このため、被嵌合部34は、摺動面136が嵌合受部56の内周面156に対して回転摺動することによって回動可能とされている。
【0032】
また、図4に示されるように、可撓部36には自由端側から縦割り状に切り込まれたスリット状の切込部39が形成されている。すなわち、被嵌合部34は、可撓部36が切込部39により軸線30L周りの周方向に分割(本実施形態では等分割)されて形成された複数の(本実施形態では計四個の)爪部36Aを備えている。
【0033】
爪部36Aは、軸線30L周りの周方向に等間隔に配置され、弾性を有しており、所定値以上の荷重に対して撓み変形可能とされている。これらにより、図5に示される組付ガイド軸部30は、被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した状態では嵌合受部56の内側で可撓部36(爪部36A)が押し広げられて荷重Fに抗する(抵抗する)構造になっている(図6参照)。
【0034】
図2及び図3に示されるように、鏡面角度調整ユニット40には、ピボット筒50の近傍における所定位置に複数の(本実施形態では二個の)ドライブロッド60が貫通配置されている。ドライブロッド60は、ミラーホルダ22の回動用に供されている。図3に示されるドライブロッド60の略球状の先端部は、ミラーホルダ22の底壁26に形成された嵌合爪26Aに対して相対的な回動が可能な状態で嵌合している(図3には嵌合前の状態が示されている。)。ドライブロッド60にはモータ(図示省略)の出力軸が機械的に連結されている。前記モータの正転駆動及び逆転駆動に応じて、ドライブロッド60は、ミラーホルダ22側へ突出する向きやハウジングケース42の内側へ引き込まれる向きに移動するようになっている。
【0035】
一方、ピボット筒50を介してドライブロッド60の配置側とは反対側には、図示しない付勢手段が設けられている。この付勢手段は、ハウジングケース42からミラーホルダ22を離間させる向きにミラーホルダ22の底壁26の裏面を押圧付勢してミラーホルダ22を所定位置に止めている。これに対しドライブロッド60の移動状態では、ミラーホルダ22は、前記付勢手段の付勢力に抗してピボット筒50の軸部54周りに回動するようになっている。
【0036】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
図5に示されるように、鏡面角度調整ユニット40のハウジングケース42からミラーホルダ22側へ突出形成された嵌合受部56は、先端側を開口58側として凹状に湾曲されかつ先端側が窄められている。これに対し、ミラーホルダ22から鏡面角度調整ユニット40のハウジングケース42側へ突出形成された組付ガイド軸部30は、その先端側に被嵌合部34を備えており、被嵌合部34は、嵌合受部56の内側に嵌合されて回転摺動可能に保持されている。このため、ミラー20の反射面20Aの角度調整時には、被嵌合部34が嵌合受部56の内側で相対移動することによって、ハウジングケース42に対してミラーホルダ22が回動する。
【0038】
ここで、被嵌合部34には組付ガイド軸部30の軸線30L周りに先端側とは反対側から切り込まれたスリット38が形成されると共にこのスリット38よりも外周側に可撓性を備えた可撓部36が形成されており、図6に示されるように、被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した状態では嵌合受部56の内側で可撓部36(爪部36A)が押し広げられて荷重Fに抗する。このため、従来技術の構成と比べて嵌合受部56の剛性を低く設定したり掛かり代を小さくしても、換言すれば、被嵌合部34の嵌合受部56への嵌合時の荷重を大きくしなくても、ミラーホルダ22が抜けにくくなる。
【0039】
また、図4に示されるように、被嵌合部34は、可撓部36が軸線30L周りの周方向に分割されて形成された複数の爪部36Aを含んで構成されている。このため、図6に示されるように、被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した場合、嵌合受部56の内側で複数の爪部36Aが互いに離間しながら押し広げられるので、可撓部36が押し広げられて変形する変形量を十分に確保することができ、荷重Fに効果的に抗することができる。
【0040】
なお、荷重Fの作用方向は、図5及び図6では、ピボット筒50の中心軸線50L(図5参照)に沿った方向で図示されているが、荷重Fがピボット筒50の中心軸線50Lに対して斜め方向に作用しても(例えば、被嵌合部34の回転摺動時に被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用しても)、可撓部36(爪部36A)は、嵌合受部56の内側で押し広げられて荷重Fに抗する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係るドアミラー装置10によれば、ミラーホルダ22の組付性を確保しながらミラーホルダ22の保持力を向上させることができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用ミラー装置としてのドアミラー装置70について、図7及び図8を用いて説明する。図7には、本発明の第2の実施形態に係るドアミラー装置70の要部が断面図(第1の実施形態の図5に相当する断面図)にて示され、図8には、被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した状態が断面図(第1の実施形態の図6に相当する断面図)にて示されている。
【0043】
これらの図に示されるように、ドアミラー装置70は、嵌合受部56及び被嵌合部34の各形状の一部が第1の実施形態に係るドアミラー装置10とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図7に示されるように、嵌合受部56における保持爪56Aの突出先端側の部位には、嵌合受部56の内側へ向けて引掛爪72が形成されている。この引掛爪72に対応して、被嵌合部34における爪部36Aには鋭角状の係止部74が形成されている。図8に示されるように、被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した状態では、係止部74が引掛爪72に引っ掛かり(係止して)爪部36A(被嵌合部34)が押し広げられ、これにより荷重Fに抗する構造になっている。なお、図8における荷重Fは、ピボット筒50の中心軸線50L(図7参照)に対して若干斜め方向に作用する荷重となっている。このため、図8では左側の爪部36Aのみが大きく押し広げられた状態とされている。
【0045】
上記構成によっても、前述した第1実施形態と同様の作用及び効果が得られ、さらに、被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した場合に、係止部74が引掛爪72に引っ掛かることで、ミラーホルダ22がより抜けにくくなる。
【0046】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る車両用ミラー装置としてのドアミラー装置80について、図9及び図10を用いて説明する。図9には、本発明の第3の実施形態に係るドアミラー装置80の要部が断面図(第1の実施形態の図5に相当する断面図)にて示され、図10には、被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した状態が断面図(第1の実施形態の図6に相当する断面図)にて示されている。
【0047】
これらの図に示されるように、ドアミラー装置80は、組付ガイド軸部30に凸部82が形成されている点で、第1の実施形態に係るドアミラー装置10とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
図9に示されるように、組付ガイド軸部30には、スリット38の内側(スリット内)の一部を成す筒軸部35を含む位置に凸部82が形成されている。凸部82は、本実施形態では、スリット38の開口端側で筒軸部35と基部32とに跨がる部位の外面周りに連続する環状凸部とされており、可撓部36の軸線30L側への変位を可撓部36との当接によって抑えるようになっている。
【0049】
上記構成によれば、被嵌合部34を嵌合受部56の開口58側から引き抜く方向へ荷重Fが作用した場合、可撓部36は、仮に爪部36Aが嵌合受部56の内側における開口58側で軸線30L側へ一旦収縮する方向に変位しようとしても、凸部82によって軸線30L側への変位が抑えられる。これにより、図10に示されるように、爪部36Aは、より安定的に押し広げられ、荷重Fに抗する。このため、被嵌合部34の嵌合受部56からの抜けを一層効果的に抑えることができる。なお、図10では、凸部82の変位途中の位置を二点鎖線で示す。
【0050】
なお、被嵌合部34の嵌合受部56への嵌合時には、被嵌合部34による押込み荷重によって嵌合受部56の開口58側が押し広げられると共に、爪部36Aにて凸部82に当接しない部分が軸線30L側へ一旦収縮するので、前記押込み荷重をさほど大きくしなくても被嵌合部34を嵌合受部56へ嵌合させることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係るドアミラー装置80によれば、ミラーホルダ22の組付性を確保しながらミラーホルダ22の保持力を一層向上させることができる。
【0052】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、本発明の車両用ミラー装置が、車両のドアパネルの近傍に取り付けられるドアミラー装置10、70、80に適用される場合を例に挙げて説明したが、本発明の車両用ミラー装置は、例えば、車両の前端部近傍に設けられる所謂「フェンダーミラー装置」等のような他の車両用ミラー装置に適用されてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、図5等に示される嵌合受部56がハウジングケース42からミラーホルダ22側へ突出形成されると共に、被嵌合部34がミラーホルダ22からハウジングケース42側へ突出形成されているが、例えば、嵌合受部がミラーホルダ(22)から支持体としてのハウジングケース(42)側へ突出形成されると共に、被嵌合部が支持体としてのハウジングケース(42)からミラーホルダ(22)側へ突出形成されていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ハウジングケース42が電動格納ユニット16等を介して(間接的に)車両側に取り付けられているが、ミラーホルダを支持する支持体は、車両側に直接取り付けられていてもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、被嵌合部34は可撓部36が軸線30L周りの周方向に分割されて形成された複数の爪部36Aを備えているが、被嵌合部は可撓部が軸線周りの周方向に分割されていない構造であってもよく、さらに、このような構造を備えた組付部は、スリットの内側を含む位置に凸部が形成されて可撓部の軸線側への変位を抑えるような構造の組付部であってもよい。
【0056】
さらにまた、上記実施形態では、嵌合受部56の内側底部は湾曲面状とされているが、例えば、嵌合受部(56)の内側底部の中央から突出部を立設させ、前記突出部の先端部が球状部とされて組付ガイド軸(30)の孔部(30A)内面に当接すると共に、前記球状部の中心が被嵌合部(34)の回転摺動の中心に設定されたような構造としてもよい。
【0057】
なお、上記第3の実施形態では、図9に示される凸部82は、組付ガイド軸部30においてスリット38の内側位置及びスリット38の内側位置から外れた位置に跨って設けられているが、凸部は、その全体がスリットの内側位置(すなわち、筒軸部35や可撓部36のスリット38に臨む部位)に設けられてもよく、スリットの内側(スリット内)を含む位置に設けられていればよい。また、上記第3の実施形態においては、凸部82が環状凸部とされているが、スリットの内側を含む位置に設けられて可撓部の軸線側への変位を抑える凸部は、突起状の凸部やリブ状の凸部等のような他の凸部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るドアミラー装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るドアミラー装置の全体構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るドアミラー装置の構成を概略的に示す水平断面図である。図1の3−3線に沿った断面にてミラーホルダが鏡面角度調整ユニット側に組み付けられる途中の状態で示す。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るドアミラー装置の要部の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るドアミラー装置の要部の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るドアミラー装置の要部において、被嵌合部を嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るドアミラー装置の要部の構成を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るドアミラー装置の要部において、被嵌合部を嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るドアミラー装置の要部の構成を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るドアミラー装置の要部において、被嵌合部を嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
20 ミラー
20A 反射面
22 ミラーホルダ
30 組付ガイド軸部(組付部)
30L 軸線
34 被嵌合部
36 可撓部
36A 爪部
38 スリット
42 ハウジングケース(支持体)
56 嵌合受部
70 ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
80 ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
82 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側から入射した光を反射する反射面を備えたミラーと、
前記ミラーの裏側に設けられて前記ミラーを保持するミラーホルダと、
前記ミラーホルダの裏側に設けられて前記ミラーホルダを支持し、車両側に直接又は間接的に取り付けられる支持体と、
前記ミラーホルダ及び前記支持体のいずれかの一方からいずれかの他方側へ突出形成されると共に、先端側を開口側として凹状に湾曲されかつ先端側が窄められた嵌合受部と、
前記ミラーホルダ及び前記支持体のいずれかの他方からいずれかの一方側へ突出形成され、先端側において前記嵌合受部の内側に嵌合されて回転摺動可能に保持される被嵌合部を備え、前記被嵌合部には突出方向の軸線周りに先端側とは反対側から切り込まれたスリットが形成されると共に前記スリットよりも外周側に可撓性を備えた可撓部が形成され、前記被嵌合部を前記嵌合受部の開口側から引き抜く方向へ荷重が作用した状態では前記嵌合受部の内側で前記可撓部が押し広げられて前記荷重に抗する組付部と、
を有する車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記被嵌合部は、前記可撓部が前記軸線周りの周方向に分割されて形成された複数の爪部を備えている請求項1記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記組付部には、前記スリットの内側を含む位置に設けられて前記可撓部の前記軸線側への変位を抑える凸部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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