説明

車両用リフト装置

【課題】受台の交換や専用プレート型の組み付けをすることなく、大型車両と小型車両の何れも一つの受台で支持しリフトで車両を昇降支持できるようにリフト装置を構成する。
【解決手段】上端に受台が取り付けられた昇降リフトをピット内に複数配し、大型車両の車軸やフレームを各リフトの受台で支持してピット上で大型車両を昇降する車両用リフト装置の前記受台を、上面にフレームアタッチメント取付部を有する主台の両側部にそれぞれ一対のアーム支持枠を一体に取り付けて構成し、各アーム支持枠でフレームアタッチメント取付部を有する回転アームとスライドアームからなるアームを支持し、受台から水平に引き出した4本のアームで小型車両のフレームを支持して小型車両を昇降支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の点検や整備などに使用されるリフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のリフト装置として、床面に昇降式シリンダなどの一対のリフトを埋設し、リフトの上端には受台を取り付け、普通車や小型トラック(以下、小型車と総称する)の車体底部のフレームの左右を受台で支持する構造のものが知られている。また、大型トラックやバスなどの大型車用のリフト装置として、図8に示されるように、床面に設けたピット100内に複数のリフト101を設置し、固定側リフト受台102と同調して昇降する移動側リフト受台103とで、1台の大型車両104の車軸や車体フレームの前後を支持する構造のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−159492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型車用と大型車用のリフト装置をともに設備する整備工場では、点検・整備対象車両の大きさに応じて両リフトを使い分けているが、大型車用のリフト装置が空いているときには、小型車を大型車用のリフト装置で持ち上げて車両を点検し整備することがある。この場合に、リフトに取り付けられた受台が大型車用のもののままでは、小型車を支持することができず、大型車用の受台を取り外して小型車用のフレームコンタクト型の受台に取り替えたり、点検・整備対象車両が乗用車や小型のバン車両のときには大型車用の受台に小型車用のプレート型を取り付けたりする必要がある。
然しながら、受台やフレームコンタクト型、プレート型は何れも重量物であるため、これらの交換や取り付けはフォークリフトで或いは数人の作業者が手で持ち上げて支持しながら行わなければならず、また、リフトに固定するための多数のボルトの着脱にも手間を要し、受台の交換やプレート型の取り付け作業は重労働で時間のかかる面倒なものであった。
【0005】
また、整備工場の敷地内の点検・整備機器の配置レイアウトは、例えば図9に示されるように、小型車用と大型車用のリフト装置からなる整備ラインを同方向に向け、隣接させて並べた配置とすることが多い。このような配置では、車両を整備ラインに入退出させる際、前進と後進を繰り返して車両を移動させる必要があり、とりわけ、車両を後進させるときには、周辺の整備用機材や他の車両に接触しないように十分な注意が必要となって、工場敷地内で車両の取り廻しが面倒なものとなり、作業性も低下する。
【0006】
そこで、本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、大型車用のリフト装置の受台を、受台の取り替えやプレート型の組み付けをしなくとも小型車を昇降支持することができるように構成し、また、整備工場内での整備工場内の機器配置レイアウトをより生産性を高めたものに構成して、点検・整備作業の省力化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、上端に受台が取り付けられた昇降リフトをピット内に複数配し、大型車両の車軸やフレームを各リフトの受台で支持してピット上で大型車両を昇降する車両用リフト装置において、前記受台は、上面にフレームアタッチメント取付部を有する主台の両側部にそれぞれ一対のアーム支持枠を一体に取り付けてなり、各アーム支持枠で先端にフレームアタッチメント取付部を有するアームを支持し、各リフト毎の受台にて水平に引き出した4本の前記アームにフレームアタッチメントを装着し、各々の小型車両のフレームを支持して小型車両を昇降し得るように構成されたことを特徴とする。
【0008】
前記各アームは、各アームは、アーム支持枠に沿ってスライド自在に支持されるスライドアームの端部に、フレームアタッチメントの装着が可能な回転アームを鉛直軸回りに回転自在に取り付けて構成することが好ましい。
また、本発明の車両用リフト装置は、前記構成のリフトと受台の接合部に、受台をリフトの軸廻りに適宜な角度だけ回転させた位置で固定する取り付け角度調節手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明のリフト装置の受台は、専用の受台に取り替えなくとも、大型車両と小型車両の何れも支持することができるように構成されている。
大型車両を点検・整備する場合、ピットに配された各リフトの受台に大型車用のフレームアタッチメントを各々取り付け、大型車両の車軸やフレームの前後を各リフトで支持して車両をピット上で昇降することができる。小型車両を点検・整備する場合には、主台の両側に一体に取り付けられた各アーム支持枠でアームを支持して受台の前後に4本のアームを張り出すとともに、各アームの先端に小型車用のフレームアタッチメントを各々取り付け、小型車両のフレームの前後又は左右を4本のアームで支持して、1台の小型車両を各リフト上で昇降することができる。
また、各アームが、スライドアームに回転アームを回転自在に取り付けて構成したものであれば、アーム支持枠に沿ってアームを進退させてアームの張り出し長さを適宜に調節するとともに、アームの先端部回りで回転アームと一体にフレームアタッチメントを回転させて、車両の車軸又はフレームを支持するのに最適な位置に各フレームアタッチメントを配することで、様々のタイプの車両の支持に対応が可能である。
本発明によれば、従来のリフト装置のように、支持する車両に応じて受台を取り替えたり、重量なプレート型を組み付けたりする必要がないので、点検・整備に先立って車両を昇降支持させるための準備時間を大幅に短縮して点検・整備作業の省力化と、車両の昇降支持に要する設備費のコスト削減を実現することができる。
【0010】
また、本発明のリフト装置によれば、取り付け角度調整手段により受台をリフトの上端で適宜な角度だけ回転し固定することで、支持する小型車両のリフト装置への進入経路を適宜な方向に設定することができる。従って、整備工場内の機器配置レイアウトを、車両の動線が最も短く、且つ車体の取り廻しが容易となるように、点検する車両の種別などに応じて、フレキシブルに設定したり変更したりすることができ、車両の点検や整備を効率的に行い、生産性を高めることができる。また、ピット内に配した各リフトで受台の角度をピットに対して斜めとなるように設定することで、同一ピット上で複数台の車両を支持して点検・整備を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好適な一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の車両用リフト装置の平面図(A)とピットも含めた装置断面図(B)、図2はピットから上昇させた状態(A)とピットに収納した状態(B)のリフトの外観図、図3はリフトに取り付けた受台の平面図(A)と断面図(B)、図4と図5は受台にスライドアームと回転アームを取り付けた状態の外観図と略側面図、図6はアームを取り付けた受台で小型車を支持する場合の装置の要部平面図、図7は本発明の車両用リフト装置を使用した場合の整備工場敷地内の機器配置レイアウトの一例を示した図である。
【0012】
本発明のリフト装置は、前記図8に示されたリフト装置と同様に、床面に施工されたピット内に、複数の昇降リフトを配し、各リフトで大型車両のフレームの前後を支持し、ピット上で車体を昇降する構造のものである。
【0013】
より詳しくは、図1に示されるように、ピットP内には、上端に受台3が一体に取り付けられた二つのリフト2、2が設置され、この内の一方はピットPの端部に固定され、他方は当該固定されたリフトの近傍からピットPの他端部までギヤモータによりスライド移動自在に設けてある。両リフト2、2は、操作スイッチSW1により両リフトを同時に昇降させ、また、個別に設けたスイッチSW2、SW2により独立して昇降させることができるようになっている。また、可動リフト2とピットPの一側の端部間及び両リフト2、2間には、リンク機構により折り重ね自在に連結した複数のカバー素子CをピットPの開口端面に架け渡してあり、ピットPに沿って可動リフト2が移動するのに連動して、カバー素子Cが繰り出してピットPの開口面を塞ぎ、又はピットP内に蛇腹状に折り重なるように設けてある。
【0014】
ピットP内に設置された両リフト2、2は、ピットP内に設置された鉛直方向に沿って昇降移動する油圧シリンダからなり、図2に示されるように、上端部に一体に取り付けられた受台3を床面から適宜な高さに亘って昇降させるように設けてあり、リフト2を最も低く降下させた状態では、リフト2がピットP内に収納され、受台3の上面と床面とが面一となるように設定してある。
【0015】
受台3は、図3に示されるように、リフト2の外径よりも若干幅広な主台31の両側に二組のアーム支持枠32、32を一体に取り付けた形状を呈し、取り付け位置調節手段6によりリフト2の上端に一体に取り付けてある。そして、図4に示されるように、各アーム支持枠32にアーム4を支持させて受台3の周囲に二対のアーム4、4を張り出し、各アーム4の先端にフレームアタッチメント5を装着し、各フレームアタッチメント5を小型車両のフレームに係合させて支持することができるように構成してある。
【0016】
より詳しくは、取り付け位置調節手段6は、リフト2の上端に載せた受台3の主台31を水平に支持し、且つリフト2の軸心の廻りで回転自在に支持する受け部61と、リフト2の中心から外れた位置で主台31とリフト2の上部間に固定ピン62aを挿通させることにより主台31をリフト2上に一体に固定する固定部62からなり、リフト2の上部と主台31の底部間に設けてある。固定ピン62aが挿通する通孔は、リフト2の上面には複数個が同心円上に所定間隔離して形成され、また、主台31には受台3をリフト2に互いの中心を合わせて載せたときに前記同心円と重なる位置に一つ形成されており、リフト2上で受台3を所定角度だけ回転させ、リフト2上の通孔と主台31の通孔が重なった位置で両通孔間に固定ピン62aを挿通させることにより、リフト2に載せた受台3が前記回転させた角度で固定されるようになっている。
主台31の上部には、上面に凹部33aを有していて適宜な幅だけ側方へスライドさせることのできるスライド板33、33が取り付けてあり(図3(A)参照)、側方へ張り出させたスライド板33の凹部33aにフレームアタッチメント5を装着し、大型車両のフレームに係合させて車両を支持することができるように設けてある。
各アーム支持枠32は、方形断面を呈する筒形に形成されており、主台31の両側に水平に連ねて固定され、その開口部内にアーム4を挿入して格納し、また、アーム4をスライドさせて支持枠側方へ適宜な長さ水平に張り出して支持することができるように設けてある。
【0017】
アーム4は、アーム支持枠32の開口部内に端部を挿入して着脱自在な方形断面を呈するスライドアーム41と、スライドアーム41の他端部に着脱自在な回転アーム42により構成されている。スライドアーム41は、その端部をアーム支持枠32の開口部内に挿入し、スライドさせて受台3側方への突出幅を調節できるようになっている。回転アーム42は、スライドアーム41に対して当該アーム41の他端部を支点として鉛直軸廻りに回転自在に取り付けられるようになっている。また、回転アーム42の先端上面部にはフレームアタッチメント5の取付部42aが設けてある。なお、各スライドアーム41は、不使用時、すなわちリフト2で大型車両を支持するとき及びリフト2をピットP内に収納するときは、アーム支持枠32内に格納される。
【0018】
フレームアタッチメント5は、昇降する車両の車軸やフレーム形態に合わせて適宜な形状のものが取り揃えられ、支持すべき車両に応じて適宜な形状のものが選択されて受台3に装着される。大型車両を昇降支持する場合、大型車両用のフレームアタッチメント5が各リフト2の受台3の凹部33aに各々装着され、小型車両を昇降支持する場合は、図5に示されるように、小型車両用のフレームアタッチメント5が昇降に用いるリフト2の受台3に支持させた各アーム4の先端に装着される。
【0019】
このように構成された本形態のリフト装置1によれば、大型車両を点検する場合、図1に示されるように、ピットP内でリフト2、2の位置を大型車のフレームに合わせた間隔に調節し、受台3、3の主台31上で側方へ張り出させたスライド板33、33にフレームアタッチメント5をそれぞれ装着し、ピットP上に引き入れた大型車両のフレームに各フレームアタッチメント5を係合させてリフト2、2を駆動することにより、大型車両を適宜な高さまで持ち上げて、車両の点検を行うことができる。
【0020】
また、小型車両を点検する場合には、図4に示されるように、受台3の各アーム支持枠32によりアーム4を引き出し、各回転アーム42にフレームアタッチメント5を組み付けし、リフト2上に引き入れた小型車両のフレームに各アタッチメントを係合させ、リフト2を個別に駆動させて小型車両を適宜な高さまで持ち上げて、車両の点検を行うことができる。この際、取り付け角度調節手段6により受台3をリフト2の軸廻りに適宜な角度だけ回転させた位置で固定することにより、図6に示されるように、両リフト2、2毎で車両を支持する方向を適宜な方向に設定することが可能である。
【0021】
このように本発明のリフト装置1は、リフト2に取り付けられた一つの受台3で大型車両と小型車両の何れも支持することができるように構成されているので、従来の如く、支持する車両に応じて受台を取り替えたり重量なプレート型などを組み付けたりする必要はなく、点検・整備作業の省力化を図ることができ、また、専用の受台やプレートが不要となって設備費用のコスト削減を実現することが可能である。
【0022】
また、本発明のリフト装置1は、リフト2により昇降する受台3をリフト2の上端で適宜な角度回転させて固定することにより、車両を支持する方向を調節して、リフト装置1への車両の進入経路を多方向に設定することが可能である。従って、例えば図7に示されるように、大型車と小型車で兼用可能な車両整備ラインを構成し、これを整備工場敷地内で適宜な間隔離して複数並置することで、整備工場内の車両の動線が短くなり、また、車体の取り廻しを容易となって、車両の点検や整備を効率的に行うことが可能な機器配置レイアウトを実現することが可能である。
【0023】
なお、図示したリフト装置の形態は一例であり、本発明は図示した形態に限定されず、他の適宜な形態に構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の車両用リフト装置の平面図(A)とピットも含めた装置断面図(B)である。
【図2】ピットから上昇させた状態(A)とピットに収納した状態(B)のリフトの外観図である。
【図3】リフトに取り付けた受台の平面図(A)と断面図(B)である。
【図4】受台にアームを取り付けた状態の外観図である。
【図5】図4の略側面図である。
【図6】アームを取り付けた受台で小型車を支持する場合の装置の要部平面図である。
【図7】本発明の車両用リフト装置を使用した場合の整備工場敷地内の機器配置レイアウトの一例を示した図である。
【図8】従来のリフト装置の構成図である。
【図9】従来の整備工場敷地内の機器配置レイアウトを示した図である。
【符号の説明】
【0025】
1 リフト装置、2 リフト、3 受台、31 主台、32 アーム支持枠、33 スライド板、4 アーム、41 スライドアーム、42 回転アーム、5 フレームアタッチメント、6 取り付け角度調節手段、P ピット、C カバー素子




【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に受台が取り付けられた昇降リフトをピット内に複数配し、大型車両の車軸やフレームを各リフトの受台で支持してピット上で大型車両を昇降する車両用リフト装置において、
前記受台は、上面にフレームアタッチメント取付部を有する主台の両側部にそれぞれ一対のアーム支持枠を一体に取り付けてなり、
各アーム支持枠で先端にフレームアタッチメント取付部を有するアームを支持し、
各リフト毎の受台にて水平に引き出した4本の前記アームにフレームアタッチメントを装着し、各々の小型車両のフレームを支持して小型車両を昇降し得るように構成されたことを特徴とする車両用リフト装置。
【請求項2】
各アームは、アーム支持枠に沿ってスライド自在に支持されるスライドアームの端部に、フレームアタッチメントの装着が可能な回転アームを鉛直軸回りに回転自在に取り付けて構成された請求項1に記載の車両用リフト装置。
【請求項3】
リフトと受台の接合部に、受台をリフトの軸廻りに適宜な角度だけ回転させた位置で固定する取り付け角度調節手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用リフト装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−84226(P2007−84226A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273859(P2005−273859)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000117467)安全自動車株式会社 (16)
【出願人】(390018326)株式会社スギヤス (35)
【出願人】(505117858)ヤマトオートワークス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】