説明

車両用ルーフトリム

【課題】 クリップシートの位置精度を向上させる。
【解決手段】トリム本体2の後端部に係止孔を形成し、この係止孔にトリムエンド3に形成された軸部を前後方向及び左右方向へ移動不能に嵌合させる。これにより、トリムエンド3をトリム本体2に対して前後方向及び左右方向へ移動不能に取り付ける。トリムエンド3の上面には、係止フック3dを形成する。この係止フック3dをクリップシート4の取付孔4dに嵌合させることにより、クリップシート4をトリムエンド3及びトリム本体2に対して位置固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボディのルーフパネル部に取り付けられる車両用ルーフトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ルーフトリムには、その周縁部に沿って多数のクリップシートが設けられており、各クリップシートは、ボディのルーフパネル部に設けられたクリップにそれぞれ係止される。これにより、ルーフトリムがシートパネル部に取り付けられている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、ルーフトリムには、トリム本体と、このトリム本体の後端部に設けられたトリムエンドとによって構成したものがある。トリムエンドは、トリム本体の後端部を下から(車内側から)覆い隠す。これにより、ルーフトリムの美観向上が図られている。
【0004】
このようなルーフトリムにおいては、トリム本体の後端部に略半円状の係合凹部を形成する一方、トリムエンドに係合軸部を形成する。この係合軸部を係合凹部に嵌め込むことにより、トリムエンドがトリム本体に対して位置決めされている。また、トリムエンドには、ボス部が設けられている。このボス部には、クリップシートの後端部が回動可能に嵌合されている。クリップシートの前端部は、トリム本体に接着固定されている。これにより、トリムエンドがトリム本体に位置決め固定されるとともに、クリップシートがトリム本体及びトリムエンドに固定されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−206158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の従来のルーフトリムにおいては、トリムエンドのトリム本体に対する位置決めが、係合軸部を半円状の係合凹部に嵌め込むことによって行われており、係合凹部は後方に向かって開放されている。このため、トリムエンドの前後方向に対する位置精度が低くなってしまい、トリムエンドに取り付けられたクリップシートも前後方向の位置精度が低くなってしまう。しかも、クリップシートをトリム本体に固定する場合には、トリム本体に設けられたケガキ線を頼りに作業者が目視で位置決めしている。このため、クリップシートの位置精度が悪く、ルーフトリムをルーフパネル部に取り付けることが困難になったり、取り付けられたルーフトリムが波打つようになったりするという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の問題を解決するために、車体のルーフパネル部に、少なくとも後端部がクリップシートを介して取り付けられるルーフトリムにおいて、トリム本体と、このトリム本体の後端部に当該後端部を下側から覆うようにして取り付けられたトリムエンドとを備え、上記トリム本体の後端部には、前後方向に延びる挿入溝、及びこの挿入溝の幅より大きい内径を有し、上記挿入溝の前端部に連通した係止孔が形成され、
上記トリムエンドには、その上面から上方に向かって起立し、上記挿入溝の両側部を弾性変形させることによって上記挿入溝を前方へ通り抜け可能で、上記係止溝に移動不能に嵌合する軸部が形成され、この軸部の上端部にこれより大径の頭部が形成され、
上記トリムエンドの上面には、上記クリップシートが所定の姿勢に位置固定して取り付けられる装着部が設けられていることを特徴としている。
上記トリム本体の後端部には、上記頭部が上下方向に挿通可能で、上記挿入溝の後端部に連通した挿通孔が形成されていることが望ましい。
上記トリムエンドより前方に位置する上記クリップシートの先端部が、上記トリム本体に後方へ移動不能に係合されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、軸部が係止孔に嵌合することによってトリムエンドがトリム本体に取り付けられ、装着部にクリップシートが位置固定して取り付けられている。ここで、軸部が係止孔にその径方向へ移動不能に嵌合しているから、トリムエンドのトリム本体に対する前後方向及び左右方向の位置精度を向上させることができる。したがって、トリムエンドに位置固定して取り付けられたクリップシートの位置精度も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、添付の図1〜図7を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、ルーフトリム1は、トリム本体2、トリムエンド3及びクリップシート4を備えている。
【0010】
トリム本体2は、例えば順次積層された芯材及び表皮、又は芯材、フォーム層及び表皮(いずれも図示せず)からなるものであり、車体のルーフパネル部(図示せず)に対応した形状を有している。図3及び図6に示すように、トリム本体2の後端部(図1において右端部)には、左右方向の一端から他端まで延びる段部2aが形成されている。この段部2aが形成されることにより、段部2aより後端側の部分(以下、連結部2bという。)が、段部2aより先端側の部分に対して上方に位置させられている。
【0011】
連結部2bには、これを上下に貫通する複数の位置決め孔2cが形成されている。各位置決め孔2cは、左右方向に所定の距離だけ互いに離間して配置されている。また、連結部2bには、複数の凹部2gが形成されている。各凹部2gは、左右方向に隣接する二つの位置決め孔2c,2c間に配置されている。
【0012】
トリムエンド3は、ポリプロピレン等の比較的硬質の樹脂を成形してなるものであり、左右方向の長さが、連結部2bの左右方向の長さとほぼ同等に設定され、前後方向の幅が、連結部2bの前後方向の幅より所定の大きさ広く設定されている。図3及び図5に示すように、トリムエンド3の前端部には、上方に向かって突出する突出部3aがトリムエンド3の左右方向の全長にわたって延びている。この突出部3aは、段部2aにほぼ突き当たっている。その結果、トリムエンド3の前側の部分が連結部2bの下に重なり、連結部2bを車室側から見えないように覆っている。
【0013】
図2及び図3に示すように、トリムエンド3の上面の連結部2bと対向する部分には、複数の軸部3bが形成されている。軸部3bは、位置決め孔2cと左右方向において同一位置に配置されている。軸部3bは、断面円形をなしており、その上端部には、軸部3bより大径の頭部3cが軸部3bと同芯に形成されている。そして、軸部3bが位置決め孔2cに挿入されることにより、トリムエンド3が連結部2bに取り付けられている。
【0014】
すなわち、図3及び図4に示すように、位置決め孔2cは、車両の後端側から先端側へ向かって順次形成された挿通孔部(挿通孔)2d、連通孔部(挿入溝)2e及び係止孔部(係止孔)2fを有している。挿通孔部2dの形状及び寸法は、軸部3bの頭部3cが挿通孔部2dを上方へ向かって通り抜け可能であるように定められている。この実施の形態では、挿通孔部2dが長方形状に形成されているが、円形状に形成してもよい。
【0015】
連通孔部2eは、一定の幅をもって車両の前後方向(図5において左右方向)の延びており、後端部が挿通孔部2dの左右方向の中央部に開口し、前端部が係止孔部2fの左右方向の中央部に開口している。この結果、挿通孔部2eと係止孔部2fとが連通孔部2eを介して連通している。連通孔部2eの幅は、軸部3bの外径より小径になっている。しかし、軸部3bを連通孔部2eの挿通孔部2e側の開口部に対向させた状態で所定の大きさ以上の力で連通孔部2eに押し込むと、連結部2bの連通孔部2eに臨む部分及びその近傍部分が弾性変形し、軸部3bが連通孔部2e内を挿通孔部2dから係止孔部2fまで通り抜け可能になっている。
【0016】
係止孔2fは、軸部3bとほぼ同一の内径を有している。したがって、軸部3bを係止孔部2fに挿入すると、軸部3bが係止孔2fの径方向へ移動不能に嵌合する。したがって、軸部3bが前後方向及び左右方向へ移動不能になり、その結果トリムエンド3がトリム本体2に対して前後方向及び左右方向に位置決めされる。しかも、トリムエンド3の突出部3aと頭部3cとが連結部2bを上下に挟持する。これにより、トリムエンド3がトリム本体2に対して上下方向に位置決めされる。この結果、トリムエンド3がトリム本体2にほぼ位置固定された状態で取り付けられる。
【0017】
上記クリップシート4は、ポリプロピレン等の比較的硬質の樹脂を成形してなるものであり、次のようにしてトリム本体2及びトリムエンド3に取り付けられている。すなわち、図2、図5及び図6に示すように、クリップシート4は、長方形の平板状をなす基板部4aを有している。基板部4aの下面の前後方向の中央部には、段部2aとほぼ同一の傾斜角度で斜め下前方へ突出する傾斜部4bが形成され、この傾斜部2bの下端部には、基板部4aと平行に前方へ向かって延びる当接板部4cが形成されている。基板部4aの後端部には、左右方向に延びる長孔状の取付孔4dが形成されている。
【0018】
トリムエンド3の上面には、係止フック(装着部)3dが形成されている。この係止フック3dは、取付孔4dとほぼ同一の断面形状を有しており、図5及び図6に示すように、凹部2hのほぼ中央に位置するように配置されている。そして、係止フック3dがクリップシート4の取付孔4dに下側から挿入して嵌合されることにより、クリップシート4がトリムエンド3に対し前後方向及び左右方向に位置決めされている。しかも、係止フック3dに形成された爪部3eが基板部4aの上面に押圧接触する一方、基板部4aの下面が連結部2bを介して突出部3aに押圧接触している。換言すれば、連結部2bと基板部4aとが、トリムエンド3の爪部3eと突出部3aとによって挟持されている。これにより、クリップシート4がトリムエンド3及びトリム本体2に対して上下方向に位置決めされている。このようにしてクリップシート4がトリム本体2及びトリムエンド3に固定状態で取り付けられている。
【0019】
また、クリップシート4が上記のようにしてトリム本体2及びトリムエンド3に取り付けられた状態では、傾斜部4bが段部2aに突き当たるとともに、当接板部4cがトリム本体2の段部2aより前側でその近傍部分に突き当たっている。これにより、クリップシート4が、トリム本体2及びトリムエンド3により一層強固に取り付けられている。さらに、傾斜部4bが段部2aに突き当たることにより、トリムエンド3のトリム本体2に対する後方への移動がクリップシート4によって阻止され、軸部3bが係止孔部2fから連通孔部2eを通って挿通孔部2dに抜け出ることが阻止されている。
【0020】
図5及び図6に示すように、基板部4aの先端部には、凹部4eが形成されている。この凹部4eには、ボディのルーフパネル部に設けられたキノコ形をした係止部の軸部Pが挿入される。基板部4aと当接板部4cとの間には空間Sが形成されており、この空間Sには、軸部Pの下端部に形成された頭部Hが挿入される。この結果、クリップシート4が係ルーフパネル部に係止部を介して係止され、トリム本体2の後端部及びトリムエンド3がルーフパネル部に取り付けられる。
【0021】
なお、トリム本体2の左右両側部及び前端部は、周知の取付構造を用いてルーフパネル部に取り付けることができる。その取付構造の説明は省略する。
【0022】
上記構成のルーフトリム1を組み立てる場合には、先ず、図3及び図4に示すように、トリムエンド3の頭部3cをトリム本体2の挿通孔部2dにその下方から挿入する。図3に示すように、突出部3aが連結部2bの下面に突き当たると、頭部3cが挿通孔部2dを通りぬけ、軸部3bが挿通孔部2dに挿入される。その後、トリムエンド3をトリム本体2に対して前方へ移動させ、軸部3bを連通孔部2eに押し込む。そして、軸部3bを連通孔部2eから係止孔部2fに挿入する。これにより、トリムエンド3がトリム本体2に前後方向及び左右方向へ移動不能に取り付けられる。しかも、突出部3a及び頭部3cが連結部2bを挟持するので、トリムエンド3は、トリム本体2に対し上下方向へも移動不能に取り付けられる。つまり、トリムエンド3は、トリム本体2に固定される。
【0023】
次に、クリップシート4をトリム本体2及びトリムエンド3に対して下方へ移動させ、図5及び図6に示すように、クリップシート4の取付孔4dにトリムエンド3の係止フック3dを下方から挿入する。なお、係止フック3dの爪部3eが形成された部分の厚さは、取付孔4dの幅より厚いが、基板部4aの取付孔4d近傍部分が弾性変形することにより、係止フック3dは取付孔4dに挿通可能である。係止フック3dの爪部3eが取付孔4dを通り抜けると、クリップシート3dがトリム本体2及びトリムエンド3に位置固定して取り付けられる。これによって、ルーフトリム1が組み立てられる。なお、組み立てられたルーフトリム1は、クリップシート4に係止部を係合させることにより、ボディのルーフパネル部に取り付けられる。
【0024】
上記構成のルーフトリム1においては、係止孔部2fに軸部3bを嵌合させることによってトリムエンド3のトリム本体2に対する前後及び左右方向の位置決めをしており、軸部3bは所定の大きさ以上の力を加えない限り係止孔部2fから抜け出ることがない。したがって、トリムエンド3の前後及び左右方向の位置精度を向上させることができる。特に、この実施の形態では、クリップシート4の傾斜部4bがトリム本体2の段部2aに突き当たることにより、トリムエンド3の後方への移動が阻止されるから、軸部3bが係止孔部2fから連通孔部2eを通って挿通孔部2dに抜け出ることをより一層確実に防止することができる。よって、トリムエンド3の前後及び左右方向の位置精度を高い状態に維持することができる。しかも、クリップシート4の取付孔4dにトリムエンド3の係止フック3dを挿入することにより、クリップシート4の前後及び左右方向への位置が特定されるから、クリップシート4の位置を目視で定める必要が無い。したがって、クリップシート4の位置精度を向上させることができる。よって、ルーフパネル部にルーフトリム1をクリップシート4によって取り付けるときに、ルーフトリム1のルーフパネル部への取付が困難になったり、ルーフトリム1が波打ったりするような不具合を防止することができる。
【0025】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、位置決め孔2cを前後及び左右方向に対して閉じられた孔として形成しているが、挿通孔部2dがトリム本体2の後端面から外部に開放し、連結孔部2eをトリム本体2の後端面に挿通孔部2dを介して開放してもよい。さらに、挿通孔部2dを形成することなく、連通孔部2eをトリム本体2の後端面に直接開放してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態の要部を示す分解斜視図である。
【図3】図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図4】図3のX矢視図である。
【図5】図1のY−Y線に沿う拡大断面図である。
【図6】図5のX矢視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ルーフトリム
2 トリム本体
2c 位置決め孔
2d 挿通孔部(挿通孔)
2e 連通孔部(挿入溝)
2f 係止孔部(係止孔)
3 トリムエンド
3b 軸部
3c 頭部
3d 係止フック(装着部)
4 クリップシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のルーフパネル部に、少なくとも後端部がクリップシートを介して取り付けられる車両用ルーフトリムにおいて、
トリム本体と、このトリム本体の後端部に当該後端部を下側から覆うようにして取り付けられたトリムエンドとを備え、
上記トリム本体の後端部には、前後方向に延びる挿入溝、及びこの挿入溝の幅より大きい内径を有し、上記挿入溝の前端部に連通した係止孔が形成され、
上記トリムエンドには、その上面から上方に向かって起立し、上記挿入溝の両側部を弾性変形させることによって上記挿入溝を前方へ通り抜け可能で、上記係止溝にその径方向へ移動不能に嵌合する軸部が形成され、この軸部の上端部にこれより大径の頭部が形成され、
上記トリムエンドの上面には、上記クリップシートが所定の姿勢に位置固定して取り付けられる装着部が設けられていることを特徴とする車両用ルーフトリム。
【請求項2】
上記トリム本体の後端部には、上記頭部が上下方向に挿通可能で、上記挿入溝の後端部に連通した挿通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ルーフトリム。
【請求項3】
上記トリムエンドより前方に位置する上記クリップシートの先端部が、上記トリム本体に後方へ移動不能に係合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ルーフトリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−137312(P2009−137312A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312225(P2007−312225)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】