説明

車両用主電動機の軸受部交換構造および方法

【課題】車両用主電動機に使用している軸受は、主電動機の運転を続けるにつれ摩耗が進行し交換する必要が生じる。このため、軸受部を固定子及び回転子から取外す必要があった。さらに、軸受部のみ取り外しても、ギャップ11、14が保持されるように分解用支え板、分解用支え板の取付座等の構造を提供することである。
【解決手段】軸受箱と固定子枠との嵌合部の構成を変更し、軸受箱の取外しまたは組込み時には、回転子に設けられた座と専用の工具を使用することである。玉軸受を交換するために軸受部を主電動機本体から取外す際に、固定子から回転子を分離すること無く、軸受箱と玉軸受を取外し、玉軸受の交換を可能とすることで、分解保守を簡略化することができる。分解用支え板、分解用支え板の取付座等の構造によりギャップ11、14が保持され軸受部のみ取り外しが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反伝動側の軸受を交換する際に、固定子から回転子を引き抜く必要が無い、反伝動側の軸受部の構成及び、軸受部の分解組立方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用主電動機に使用している軸受は、主電動機の運転を続けるにつれ摩耗が進行し寿命に至るため交換する必要が生じる。このため、軸受部を固定子及び回転子から取外す必要がある。
【0003】
この状態は図2に示される。
図2はその従来の一例を示す説明図であり、1は固定子、2は回転子、3は玉軸受、4は軸受箱、5は軸受カバ、6は軸受押え、7は3と4を組立てした軸受部、8は軸受箱の嵌合部、9は固定子の嵌合部、10は回転子軸、11はギャップである。
図2において、軸受部7は回転子2に取付けられたまま、固定子1から引き抜かれている。
【0004】
しかしながら、このような手段では次のような課題があった。
玉軸受3を交換するために軸受部7を主電動機本体から取り外す際には、軸受箱の嵌合部8が固定子の嵌合部9よりも機内側にあるため、軸受部7のみを主電動機本体から取り外すことができない。このため、軸受部7は回転子2に取付けしたまま、固定子1から取外す必要があり、固定子1から回転子2を引き抜くことになる。
【0005】
これを解消するためには、軸受部7を反伝動側方向へ取り外せる構造にすれば良い。軸受箱の嵌合部8が機外側、固定子の嵌合部9が機内側となるように位置関係を変更しただけでは軸受部7を引抜く際に回転子2がギャップ11の隙間だけさがり、軸受部のラビリンス部のギャップ14の隙間がギャップ11の隙間よりも狭いため干渉し、軸受部7の組込み時の障害となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−225532公報
【特許文献2】特開2010−213380公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した点に鑑みて創案されたもので、その目的としたところは、これらの課題を解消し、固定子から回転子を引抜くこと無く、軸受部を取外し、玉軸受の交換を可能とすることで、分解保守を簡略化することができる車両用主電動機を提供することにある。さらに、軸受部のみ取り外しても、ギャップ11、14が保持されるように分解用支え板、分解用支え板の取付座等の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明よれば、固定子、回転子、玉軸受、軸受カバー、軸受箱等を有する車両用主電動機において、該玉軸受の軸受カバー(5)には分解用支え板(13)の第1の取付穴を有し、固定子の嵌合部(9)には該分解用支え板の第2の取付穴を有し、該回転子の分解用支え板の取付座(12)には前記分解用支え板の第3の取付穴を有し、前記分解用支え板が該第1の取付穴、該第2の取付穴、該第3の取付穴を貫通嵌合し固定されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明よれば、請求項1記載の前記分解用支え板、前記固定子の嵌合部、前記分解用支え板の取付座において、前記分解用支え板は前記固定子の嵌合部の前記第2の取付穴と貫通嵌合し、かつ前記固定子の嵌合部と係合固定され、前記分解用支え板には複数の突起が形成され、前記分解用支え板の取付座に該複数の突起と同数の前記第3の取付穴を有すること特徴とする。
【0010】
請求項3の発明よれば、車両用主電動機の前記玉軸受を交換するに際して、前記車両用主電動機の反伝動側の前記軸受箱に前記玉軸受を組込んでいる組立品(以下:軸受部)を前記車両用主電動機の固定子の横筒状の空洞に回転自在に備わる前記回転子を前記固定子に対して回転子軸の前後方向に相対移動させて前記固定子から前記回転子を引き抜くことなく該軸受部を前記車両用主電動機の本体から取り外すことを特徴とする。
【0011】
すなわち、その目的を達成するための手段は、軸受箱と固定子枠との嵌合部の構成を変更し、回転子と軸受箱にギャップ確保用の分解用支え板の取付座を設け、軸受箱の取外しまたは組込み時には、専用の工具を使用することである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、玉軸受を交換するために軸受部を主電動機本体から取外す際に、固定子から回転子を分離すること無く、軸受箱と玉軸受を取外し、玉軸受の交換を可能とすることで、分解保守を簡略化することができ実用上極めて有用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例を示す説明図である。
【図2】従来の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例を示す説明図である。12は分解用支え板の取付座、13は分解用支え板である。なお、図2と同符号のものは、同じ構成、機能を有する部分である。
【実施例1】
【0015】
図1において軸受部7を取外す場合の手順を以下に示す。
分解用支え板13を軸受カバ−5および固定子の嵌合部9に設けられた複数の取付穴から機内側に挿入し、回転子2に設けられた分解用支え板の取付座12の取付穴に挿入する。このことにより、回転子2は固定子1に対して位置が固定されるため、ギャップ11の間隔が保たれたまま、軸受部7を図1において右方向に移動させることができる。
【0016】
分解用支え板13には複数の突起が設けられており、分解用支え板の取付座12に設けられた固定用穴の数と一致している。
【0017】
固定子の嵌合部9には、分解用支え板13が固定できるようになっている。
【符号の説明】
【0018】
1 固定子
2 回転子
3 玉軸受
4 軸受箱
5 軸受カバ−
6 軸受押え
7 軸受部(3と4を組立てたもの)
8 軸受箱の嵌合部
9 固定子の嵌合部
10 回転子軸
11 ギャップ
12 分解用支え板の取付座
13 分解用支え板
14 ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子、回転子、玉軸受、軸受カバー、軸受箱を有する車両用主電動機において、該玉軸受の軸受カバー(5)には分解用支え板(13)の第1の取付穴を有し、固定子の嵌合部(9)には該分解用支え板の第2の取付穴を有し、該回転子の分解用支え板の取付座(12)には前記分解用支え板の第3の取付穴を有し、前記分解用支え板が該第1の取付穴、該第2の取付穴、該第3の取付穴を貫通嵌合し固定されることを特徴とする車両用主電動機の軸受部交換構造。

【請求項2】
請求項1記載の前記分解用支え板、前記固定子の嵌合部、前記分解用支え板の取付座において、前記分解用支え板は前記固定子の嵌合部の前記第2の取付穴と貫通嵌合し、かつ前記固定子の嵌合部と係合固定され、前記分解用支え板には複数の突起が形成され、前記分解用支え板の取付座に該複数の突起と同数の前記第3の取付穴を有すること特徴とする車両用主電動機の軸受交換構造。

【請求項3】
車両用主電動機の前記玉軸受を交換するに際して、前記車両用主電動機の反伝動側の前記軸受箱に前記玉軸受を組込んでいる組立品(以下:軸受部)を前記車両用主電動機の固定子の横筒状の空洞に回転自在に備わる前記回転子を前記固定子に対して回転子軸の前後方向に相対移動させて前記固定子から前記回転子を引き抜くことなく該軸受部を前記車両用主電動機の本体から取り外すことを特徴とする車両用主電動機の軸受部交換方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−46425(P2013−46425A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180116(P2011−180116)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】