説明

車両用内装部品

【課題】 側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合でも、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供する。
【解決手段】 車室側に突出したアームレスト部3と、アームレスト部3に設けられたボックス本体6と、ボックス本体6に開閉自在に支持されたリッド5とを備える車両用内装部品において、ボックス本体6は、車幅方向の車室側の側面の大きさが対面側である車両外側の側面よりも小さい車室側側面7と、車両前後側となる側面と底面の少なくとも一方に段差状の面をもつ段差部10と、アームレスト部3に車室側から車両外側への車幅方向の荷重21が与えられたときに、段差部10が破断して車室側側面7がボックス本体6内に侵入した場合に、ボックス本体6に荷重21の影響を受けない保護領域12を有することを特徴とする車両用内装部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品に関する。特に、車両トリムに設けられたドアトリム、リアコーナートリム、及び、ラゲージサイドトリムに備えられた車両用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドアトリム、リアコーナートリム、及び、ラゲージサイドトリムは、車両の室内側の内装部品で車内の美観を良くするため、例えば、樹脂材又は該樹脂材に塗装やクロス貼り等を施したものが利用されている。ドアトリムには、車室側に突出して形成されるアームレスト部が設けられている。このアームレスト部には、車両に加わる側方からの衝撃(側面衝突)に対して搭乗者を保護する緩衝機能を備えている。
【0003】
また、アームレスト部に、小物等を収容する収納ボックス等が設けられている。この収納ボックスは、ボックス本体とリッドによって構成されていて、側面衝突に対してアームレスト部に荷重が加わった際に、ボックス本体やリッドの剛性によりアームレスト部の反力が高くなる原因となっている。そのため、アームレスト部に十分な緩衝機能を発揮させるために、このアームレスト部の反力を下げて搭乗者を保護する技術が提供されている。
【0004】
特許文献1では、側面衝突の時に、搭乗者によって収納ボックスに荷重が加わった際に、収納ボックス本体が圧縮変形してリッドが開放することで、搭乗者への反力をできるだけ抑える構造をもつ車両ドアトリム構造が提供されている。
【特許文献1】特開2006−315593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来例では、搭乗者によって収納ボックスに荷重が加わった際に、収納ボックス本体が圧縮変形中は反力が低減するが、圧縮許容幅を超えると車両トリムや車両外板に挟まれてそれ以上の変形はできないため、それ以降は反力が増加してしまう。また、収納ボックスの車幅方向の幅が、最大の圧縮許容幅であるため、この狭い範囲では、大きい荷重に対しての吸収分散する効果は、あまり期待できない。また、収納ボックス本体が圧縮変形すると、リッド部が開放して反力を低減させているが、収納ボックス本体がある程度変形すると、リッド部がドアトリム間に挟まって支持されてしまうので、それ以降は反力が増加してしまう。
【0006】
そこで本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合でも、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用内装部品において、車室側に突出したアームレスト部と、該アームレスト部に設けられたボックス本体部と、該ボックス本体部に開閉自在に支持されたリッド部とを備える車両用内装部品において、前記ボックス本体は、車幅方向の車室側の側面の大きさが対面側である車両外側の側面よりも小さい車室側面部と、車両前後側となる側面と底面の少なくとも一方に段差状の面をもつ段差部と、前記アームレスト部に前記車室側から前記車両外側への前記車幅方向の荷重が与えられたときに、前記段差部が破断して前記車室側面部が前記ボックス本体内に侵入した場合に、前記ボックス本体に前記荷重の影響を受けない保護領域を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられた場合に、ボックス本体の車両前後側となる側面、または底面に段差上の面を持つので、段差部の車室側面部と平行の面は荷重の力を受けやすくなり、段差部から破断することができる。このため、加えられた荷重は、ボックス本体の破断するエネルギーやボックス本体を変形するエネルギーとして消費されるため、ボックス本体の剛性は低減され、荷重に反して生じる反力を低減することができる。また、ボックス本体の側面である車室側面部が車両外側の側面よりも小さいので、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられて段差部で破断された場合に、車室側面部はボックス本体内部に収納するように入り込むことができる。つまり、アームレスト部からの荷重による侵入幅が大きくなっても車室側面部がボックス本体内部に収納するため、荷重に反して生じる反力を低減することができる。また、車室側面部がボックス本体内部に収納することで、ボックス本体は車幅方向の圧縮が可能となり、圧縮幅がボックス本体の衝撃吸収機能となるので、圧縮幅を大きくすることで大幅な反力の低減が可能となる。更に、ボックス本体の内部には、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられ、車室側面部はボックス本体内部に侵入した場合でも影響を受けない保護領域をもつことから、ボックス本体に収納していて保護領域にある物にダメージを与えることなく保持することができる。また、ボックス本体に収納していて安全領域にある物が、ボックス本体の側面に及ぼす剛性も生じないので、反力を高めることも無く、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することができる。
【0009】
また、上述の発明に加えて、前記段差部は、前記車室側面部と平行な面の厚みを薄く形成した脆弱部を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、段差部の車室側面部と平行な面は、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合に、力を受けやすい構造になるので、厚みを薄く形成した脆弱部を有することで、効率的に段差部の破断を促進することができる。これにより、破断させるまでに生じるボックス本体の剛性を大きく下げることができるので、反力を大幅に低減することができる。また、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合に、段差部が速く的確に破断するので、容易に車室側面部はボックス本体内部に収納するように入り込むことができて、大きな反力を生じることなく安全な車両用内装部品を提供することができる。
【0011】
また、上述の発明に加えて、前記ボックス本体は、該ボックス本体の側面が底面の広がる方向へ傾く側面傾斜部を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられた場合に、ボックス本体の上部における車室側面部が押し潰されながら車外側側面部に接触する。更にアームレスト部からの荷重による侵入幅が大きくなると、ボックス本体の中央部においても車室側面部が押し潰されながら車外側側面部に接触する。これにより、アームレスト部にかかる衝撃を段階的に吸収することが可能となる。このとき、ボックス本体が底面の広がる方向へ側面が傾斜を有しているため、ボックス本体の下部における空間を広げながら車室側面部が押し潰されながら車外側側面部に接触する。そのため、ボックス内部で荷重の影響を受けない保護領域を広く設けることが可能となる。また、比較的大きな物でもダメージを与えることなく保持することができる。また、ボックス本体に収納していて安全領域にある物が、ボックス本体の側面に及ぼす剛性も生じないので、反力を高めることも無く、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合でも、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の実施形態による車両の収納ボックス構造を車両用ドアトリムの収納ボックスに適用した例として説明する。
【0015】
そこで、図1から図5にて本発明による実施形態の実施例を2例挙げて、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1〜図3は、本発明による車両用ドアトリムの収納ボックスの実施例1を示す。以下、この実施例1における車両用ドアトリムの収納ボックスの構成について説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る実施例1における車両用ドアトリム2と収納ボックス4を車室内側から見て概略的に示す構成図である。
【0018】
図1に示すとおり、車両用ドア1には、車両の室内側の美観を良くするために樹脂材や樹脂材に塗装やクロス貼りされた車両用ドアトリム2と、車両用ドアトリム2の中段に車両の室内側に突出したアームレスト部3と、アームレスト部3に備えられた小物などを収納する収納ボックス4とで構成されている。また、収納ボックス4は、長方体の形状で、アームレスト部3に埋め込まれるように設置されているボックス本体6と、ボックス本体6の蓋となり開閉自在に支持されたリッド5から構成されている。
【0019】
リッド5は、アームレスト部3の表装部位となるため、車両用ドアトリム2に合わせた色彩や材質を用いて、車内の美観を良くする一つの要因となっている。また、ボックス本体6は、アームレスト部3に埋め込まれているため、アームレスト部3のボックス本体6周辺のトリムに、側面衝突により荷重がかかった場合に、他の部位に比べて比較的反力を生みやすい構造になっている。
【0020】
図2(a)は、本発明に係る実施例1における車両用ドアトリム2に備えられた収納ボックス4のボックス本体6を概略的に示す構成図である。
【0021】
図2(a)に示すとおり、ボックス本体6は、車幅方向の側面で車両外側の側面である車両外側側面8と、車幅方向の車室側の側面の大きさが車両外側側面8よりも小さい車室側側面7と、車両前後方向の側面と底面に設けた段差部10とを備えている。
【0022】
段差部10の段差は、ボックス本体6を形成している側面の厚みよりもやや大きめに設けられている。また、段差部は、車両前後方向の面のほぼ中央に1箇所と、底面のほぼ中央に1箇所設けている。
【0023】
図2(b)は、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21がかかる前の図2(a)のA―A断面とB―B断面を示している。また、図2(c)は、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21を受けた後の図2(a)のA―A断面とB―B断面を示している。A―A断面は、ボックス本体6を車両前後方向の断面を上方から見た断面図である。B―B断面は、ボックス本体6を車幅方向の断面を車両後方から見た断面図である。
【0024】
図2(b)に示すとおり、車室側側面7と車両外側側面8の大きさの差異が段差部10の段差の大きさとなっている。また、車両前後方向の段差部10の段差は均等になるように設けられている。
【0025】
図2(c)に示すとおり、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、面積の小さい車室側側面7で荷重を受ける。そのため、段差部10の車室側側面7に平行な面に大きな力がかかるので、この面が破断してボックス本体6は2分される。破断した車室側側面7をもつボックス本体であるボックス本体内側部13が荷重21の力を受けて破断した車両外側側面8をもつボックス本体であるボックス本体外側部14へ入り込む。
【0026】
ボックス本体内側部13は、ボックス本体外側部14の車両外側側面8に接触するまで、ボックス本体外側部14へ入り込むことが可能である。このボックス本体内側部13が車両外側側面8に接触した場合でも、収納ボックス内部に荷重21の影響を受けない保護領域12が設けられている。保護領域12は、ボックス本体の容積のほぼ半分を有しているので、保護領域12の容積に収まる範囲の物であれば、荷重21によるダメージをほとんど受けること無く保持することができる。さらに、保護領域12の容積に収まる範囲の物であれば、スムーズにボックス本体内側部13がボックス本体外側部14の車両外側側面8に接触するまで、ボックス本体外側部14へ入り込むことが可能であるので、収納物による剛性の増大を招くことない。そのため反力を発生することも無く、反力の少ない収納ボックスを提供できる。
【0027】
また、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、ボックス本体6はほぼ半分に圧縮される。つまり半分に圧縮するまでの荷重21の力を吸収することができる。そのため、反力が小さい衝撃吸収機能が高いボックス本体6を提供することができる。特に、荷重21のストロークがこのボックス半分までの距離であれば、大幅に反力を低減できる。
【0028】
更に、段差部10が破断することで破断のために荷重21の力が使われるため、その分の力をボックス本体6は衝撃吸収ことができるので、衝撃に対応する反力を低減することができる。
【0029】
図3は、本発明に係る実施例1における車両用ドアトリム2に備えられた収納ボックス4のボックス本体6を概略的に示す断面図である。図3(a)は、図2のA―A断面で、図2とは異なるボックス本体6を車両前後方向の断面を上方から見た断面図である。図3(b)は、図2のA―A断面で、荷重21を受けた後で図2とは異なるボックス本体6を車両前後方向の断面を上方から見た断面図である。
【0030】
図3(a)、(b)に示すように、ボックス本体内側部13を構成する側面7aの厚みをボックス本体外側部14の側面の厚みより厚くしている。そのため、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わって、ボックス本体内側部13がボックス本体外側部14の車両外側側面8に接触するまでボックス本体外側部14へ入り込む場合に、厚くして剛性を強めたことによって保護領域12への荷重21の影響を低減することができる。これによって、剛性が多少増すことになるが、荷重21に対して保護領域12を保持する効果が高まる。
【0031】
図3におけるボックス本体内側部13を構成する側面7aの厚みは、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21に伴う反力を増加することになるので、好適な厚みを選定して反力の影響を小さくした保護領域12の保持を設定する。また、保護領域12に収納されている物がボックス本体よりも剛性が高いものであれば、ボックス本体内側部13を構成する側面7aの厚みによって収納物と荷重21の影響を受けなければ、収納物における剛性による大きな反力を生じることが無いので、搭乗者に対して安全な収納ボックスを提供できる。
【0032】
本実施形態においては、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられた場合に、ボックス本体の車両前後側となる側面、または底面に段差上の面を持つので、段差部の車室側面部と平行の面は荷重の力を受けやすくなり、段差部から破断することができる。このため、加えられた荷重は、ボックス本体の破断するエネルギーやボックス本体を変形するエネルギーとして消費されるため、ボックス本体の剛性は低減され、荷重に反して生じる反力を低減することができる。また、ボックス本体の側面である車室側面部が車両外側の側面よりも小さいので、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられて段差部で破断された場合に、車室側面部はボックス本体内部に収納するように入り込むことができる。つまり、アームレスト部からの荷重による侵入幅の変位量が大きくなっても車室側面部がボックス本体内部に収納するため、荷重に反して生じる反力を低減することができる。また、車室側面部がボックス本体内部に収納することで、ボックス本体は車幅方向の圧縮が可能となり、圧縮幅がボックス本体の衝撃吸収機能となるので、圧縮幅を大きくすることで大幅な反力の低減が可能となる。更に、ボックス本体の内部には、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられ、車室側面部はボックス本体内部に侵入した場合でも影響を受けない保護領域をもつことから、ボックス本体に収納していて保護領域にある物にダメージを与えることなく保持することができる。また、ボックス本体に収納していて安全領域にある物が、ボックス本体の側面に及ぼす剛性も生じないので、反力を高めることも無く、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することができる。

【0033】
したがって、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合でも、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することができる。
【0034】
本実施形態においては、段差部10はボックス本体6の車両前後方向の側面と底面のほぼ中央に設けたが、これに限らない。例えば、車両前後方向の側面を1:2になるような箇所に段差部10を設けて、保護領域を狭くして、よりボックス本体の衝撃吸収機能を高めても良い。
【0035】
また、本実施形態においては、段差部10が破断しやすいように脆弱部を設けて、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、脆弱部によって積極的に破断して容易に本体ボックスを圧縮させて衝撃吸収機能を発揮できるようにしてもよい。この例を実施例2として説明する。
【0036】
また、本実施形態において、段差部10は、ボックス本体6の車両前後方向の面と底面に1箇所ずつ設けたがこれに限らない。例えば、複数の段差部10を車両前後方向の面、又は底面に設けてもよい。この例を実施例2として説明する。
【実施例2】
【0037】
図4及び図5は、本発明による車両用ドアトリムの収納ボックスの実施例2を示す。以下、この実施例2における車両用ドアトリムの収納ボックスの構成について説明する。
【0038】
図4(a)は、本発明に係る実施例2における車両用ドアトリム2に備えられた収納ボックス4のボックス本体6を概略的に示す構成図である。
【0039】
図4(a)に示すとおり、ボックス本体6は、車幅方向の側面で車両外側の側面である車両外側側面8と、車幅方向の車室側の側面の大きさが車両外側側面8よりも小さい車室側側面7と、車両前後方向の側面と底面に其々2箇所設けた段差部10とを備えている。
【0040】
すべての段差部10の段差は、ボックス本体6を形成している側面の厚みよりもやや大きめに設けられている。また、段差部10は、車両前後方向の面、及び側面のほぼ3等分するように2箇所設けられている。
【0041】
図4(b)は、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21がかかる前の図4(a)のC―C断面とD―D断面を示している。また、図4(c)は、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21を受けた後の図4(a)のC―C断面とD―D断面を示している。C―C断面は、ボックス本体6を車両前後方向の断面を上方から見た断面図である。D―D断面は、ボックス本体6を車幅方向の断面を車両後方から見た断面図である。
【0042】
図4(b)に示すとおり、車室側側面7と車両外側側面8の大きさの差異が段差部10の段差の大きさとなっている。また、車両前後方向の段差部の段差は均等になるように設けられている。この段差部によってボックス本体は仕切られた3つの小室のように構成されている。車室側側面7を有する小室を有するボックス本体6をボックス本体内側部13とする。また、車両外側側面8を有する小室を有するボックス本体6をボックス本体外側部14とする。また、中央の小室で2つの段差部に挟まれたボックス本体6をボックス本体中央部15とする。
【0043】
また、段差部10は、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、容易に破断できるようにノッチ10a、薄肉部10bを設けている。ノッチ10aと薄肉部10bは、車室側側面7と平行な面の段差の厚みを薄くして、荷重21が加わった場合にこの脆弱となった部位から破断するように誘導するものである。
【0044】
ここでは、ボックス本体6の車両前後方向の側面の段差部10にノッチ10a及び、底面の段差部に薄肉部10bを有しているが、これに特に限らない。すべての段差部にノッチ10a又は薄肉部10bを設けてもよい。
【0045】
図4(c)に示すとおり、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、面積の小さい車室側側面7で荷重を受ける。そのため、段差部10の車室側側面7に平行な面に大きな力がかかるので、この面が破断してボックス本体6は3分される。破断した車室側側面7をもつボックス本体であるボックス本体内側部13と2つの段差部に挟まれたボックス本体中央部15は、荷重21の力を受けて破断した車両外側側面8をもつボックス本体外側部14へ入り込む。
【0046】
ボックス本体内側部13は、ボックス本体外側部14の車両外側側面8に接触するまで、ボックス本体外側部14へ入り込むことが可能である。このボックス本体内側部13が車両外側側面8に接触した場合でも、収納ボックス内部に荷重21の影響を受けない保護領域12が設けられている。保護領域12は、ボックス本体の容積のほぼ3分の1を有しているので、保護領域12の容積に収まる範囲の物であれば、荷重21によるダメージをほとんど受けること無く保持することができる。さらに、保護領域12の容積に収まる範囲の物であれば、スムーズにボックス本体内側部13がボックス本体外側部14の車両外側側面8に接触するまで、ボックス本体外側部14へ入り込むことが可能であるので、収納物による剛性の増大を招くことない。そのため反力を発生することも無く、反力の少ない収納ボックスを提供できる。
【0047】
また、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、ボックス本体6はほぼ3分の1に圧縮される。つまり3分の1に圧縮するまでの荷重21の力を吸収することができる。そのため、実施例1よりも衝撃吸収機能が高いボックス本体6を提供することができる。特に、荷重21のストロークがこのボックス3分の2までの距離であれば、大幅に反力を低減できる。
【0048】
更に、段差部10が破断することで破断のために荷重21の力が使われるため、その分の力をボックス本体6は衝撃吸収ことができるので、衝撃に対応する反力を低減することができる。
【0049】
図5(a)は、本発明に係る実施例2における車両用ドアトリム2に備えられた収納ボックス4のボックス本体6の変形例を概略的に示す構成図である。
【0050】
図5(a)に示すとおり、ボックス本体6は、車幅方向の側面で車両外側の側面である車両外側側面8と、車幅方向の車室側の側面の大きさが車両外側側面8よりも小さい車室側側面7と、車両前後方向の側面と底面に其々2箇所設けた段差部10とを備えている。
【0051】
すべての段差部10の段差は、ボックス本体6を形成している側面の厚みよりもやや大きめに設けられている。また、段差部は、車両前後方向の面、及び側面のほぼ3等分するように2箇所設けられている。
【0052】
図5(b)は、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21がかかる前の図5(a)のE―E断面とG―G断面を示している。E―E断面は、ボックス本体6を車両前後方向の断面を車両外側から見た断面図である。G―G断面は、ボックス本体6を車幅方向の断面を車両後方から見た断面図である。
【0053】
図5(b)に示すとおり、車室側側面7と車両外側側面8の大きさの差異が段差部10の段差の大きさとなっている。また、車両前後方向の段差部10の段差は均等になるように設けられている。この段差部10によってボックス本体は仕切られた3つの小室のように構成されている。車室側側面7を有する小室を有するボックス本体6をボックス本体内側部13とする。また、車両外側側面8を有する小室を有するボックス本体6をボックス本体外側部14とする。また、中央の小室で2つの段差部10に挟まれたボックス本体6をボックス本体中央部15とする。ここでの段差部10の作用と効果は図4で示した内容と同じなので、省略する。
【0054】
ボックス本体6の車両前後方向の側面に底面が広がる方向に傾斜する車両前後側傾斜部11aを設けている。また、ボックス本体6の車室側側面7にも底面が広がる方向に傾斜する車幅側傾斜部11bを設けている。
【0055】
この傾斜部11は、ボックス本体6に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、荷重21は傾斜部11によって力が分散されて、ボックス本体6の上部に大きな力がかかり、ボックス本体6の下部にはあまり力がかからない。そのため、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部3に強い荷重21が加えられた場合に、ボックス本体6の上部における車室側側面7が押し潰されながら車両外側側面8に接触した場合でも、ボックス本体6の中央部及び下部には、広い保護領域12を有することができる。更にアームレスト部3からの荷重21による侵入幅が大きくなると、ボックス本体6の中央部においても車室側側面7が押し潰されながら車両外側側面8に接触する。これにより、アームレスト部3にかかる衝撃を段階的に吸収することが可能となる。
【0056】
また、ボックス本体6が底面の広がる方向へ側面が傾斜部11を有しているため、ボックス本体6の下部における保護領域12を広げながら車室側側面7が押し潰されながら車両外側側面8に接触する。これによって、破断して圧縮されたボックス本体6においても、十分な保護領域12を確保できて、荷重21によるダメージをほとんど受けること無く保持することができる。さらに、保護領域12の容積に収まる範囲の物であれば、収納物による剛性の増大を招くことない。そのため反力を発生することも無く、反力の少ない収納ボックスを提供できる。
【0057】
本実施形態によれば、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられた場合に、ボックス本体の車両前後側となる側面、または底面に段差上の面を持つので、段差部の車室側面部と平行の面は荷重の力を受けやすくなり、段差部から破断することができる。このため、加えられた荷重は、ボックス本体の破断するエネルギーやボックス本体を変形するエネルギーとして消費されるため、ボックス本体の剛性は低減され、荷重に反して生じる反力を低減することができる。また、ボックス本体の側面である車室側面部が車両外側の側面よりも小さいので、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられて段差部で破断された場合に、車室側面部はボックス本体内部に収納するように入り込むことができる。そのため、破断された部位がアームレスト部に引っ掛かることで生じる剛性を生じることがない。また、本体内部に入り混むことで、ボックス本体は車幅方向の圧縮が可能となり、圧縮幅がボックス本体の衝撃吸収機能となるので、圧縮率を大きくすることで、大幅な反力の低減が可能となる。更に、ボックス本体の内部には、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられ、車室側面部はボックス本体内部に侵入した場合でも影響を受けない保護領域をもつことから、ボックス本体に収納していて保護領域にある物にダメージを与えることなく保持することができる。また、ボックス本体に収納していて安全領域にある物が、ボックス本体の側面に及ぼす剛性も生じないので、反力を高めることも無く、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、段差部の車室側面部と平行な面は、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合に、力を受けやすい構造になるので、厚みを薄く形成した脆弱部を有することで、効率的に段差部の破断を促進することができる。これにより、破断させるまでに生じるボックス本体の剛性を大きく下げることができるので、反力を大幅に低減することができる。また、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合に、段差部が速く的確に破断するので、容易に車室側面部はボックス本体内部に収納するように入り込むことができて、大きな反力を生じることなく安全な車両用内装部品を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、側面衝突によって搭乗者からアームレスト部に強い荷重が加えられた場合に、ボックス本体の上部における車室側面部が押し潰されながら車外側側面部に接触する。更にアームレスト部からの荷重による侵入幅が大きくなると、ボックス本体の中央部においても車室側面部が押し潰されながら車外側側面部に接触する。これにより、アームレスト部にかかる衝撃を段階的に吸収することが可能となる。このとき、ボックス本体が底面の広がる方向へ側面が傾斜を有しているため、ボックス本体の下部における空間を広げながら車室側面部が押し潰されながら車外側側面部に接触する。そのため、ボックス内部で荷重の影響を受けない保護領域を広く設けることが可能となる。また、比較的大きな物でもダメージを与えることなく保持することができる。また、ボックス本体に収納していて安全領域にある物が、ボックス本体の側面に及ぼす剛性も生じないので、反力を高めることも無く、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することができる。
【0060】
本実施形態において、ボックス本体内側部13、ボックス本体外側部14、及びボックス本体中央部15を個別に成形して、段差部を設けた部位で溶接してもよい。この場合も、溶接点が脆弱部となるので、実施例2と同様な作用と効果が期待できる。
【0061】
また、本実施形態において、ボックス本体6の車両前後方向の側面と車室側側面7に傾斜部11を設けたが、これに限らない。ボックス本体6を構成する面の少なくとも1つに傾斜部11を設けても構わない。また、本実施形態において、傾斜部11の傾斜角度については限定していない。傾斜角度を大きくすることで、ボックス本体6の内部の保護領域12を広くすることができるが、一方でボックス本体6の車室側側面7から受ける荷重21の力が傾斜部によって分散するので、ボックス本体6の上部の剛性が低く、下部の剛性が高くなる。そのため、剛性によって生じる反力を好適に低減できる傾斜角度を設定してもよい。
【0062】
このように、上述の2つの実施形態によれば、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合でも、搭乗者にできるだけ反力を与えない車両用内装部品を提供することができる。
【0063】
また、上述の実施形態においては、ボックス本体6に開閉自在に軸支されているリッド5について、特に限定していない。リッド5はアームレスト部3の内装部品として美観を良くする機能を有しているので、ボックス本体6の形状に合わせる必要は特に無い。また、アームレスト部3に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、ボックス本体6の形状が変形することによって、リッド5は閉状態から開状態へ移行できるものとしてもよい。この場合、リッド5が閉状態によって生じるアームレスト部3の高い剛性を抑えることができる。更に、アームレスト部3に車幅方向の車室側から車両外側に向けて荷重21が加わった場合に、リッド5の軸支部を開放してリッド5を上方へ放出させても構わない。
【0064】
また、上述の実施形態において、ボックス本体6の車両前後方向の側面と底面の両方に段差部10を設けたが、これに限らない。ボックス本体6の車両前後方向の側面と底面の少なくとも一方に1箇所以上の段差部10を設けてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態において、直方体に近い収納ボックス4のボックス本体6について述べてきたが、これに限らない。例えば、楕円柱のボックス本体6においても、側面衝突によって搭乗者から車両トリムに強い荷重が加えられた場合に、車室側にある側面が車両外側の側面に侵入できるような段差構造を設けてもよい。またこの場合に、側面において底面が広がる方向に傾斜部11を有して保護領域12を設けてもよい。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、特許請求の範囲の概念を逸脱しない範囲で、上記実施の形態の構造に種々の変形や変更を施すことも可能である。
【0067】
上記実施の形態では、車両ドアトリムのアームレスト部に設けられている収納ボックスに適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、ドアウィンドウスイッチや灰皿など、車両トリム内の構成部品において同様にして適用することができるものである。
【0068】
上記実施の形態では、車両ドアトリムのアームレストに適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、リアコーナートリム、及び、ラゲージサイドトリムなど、車両トリム内の構成部品において同様にして適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る実施例1における車両用ドアトリムと収納ボックスを車室内側から見て概略的に示す構成図である。
【図2】本発明に係る実施例1における車両用ドアトリムの収納ボックスのボックス本体を概略的に示す構成図である。
【図3】本発明に係る実施例1における車両用ドアトリムの収納ボックスのボックス本体を概略的に示す構成図である。
【図4】本発明に係る実施例2における車両用ドアトリムの収納ボックスのボックス本体を概略的に示す構成図である。
【図5】本発明に係る実施例2における車両用ドアトリムの収納ボックスのボックス本体を概略的に示す構成図である。
【符号の説明】
【0070】
1 車両用ドア
2 車両用ドアトリム
3 アームレスト部
4 収納ボックス
5 リッド
6 ボックス本体
7、7a 車室側側面
8 車両外側側面
10 段差部
11a 車両前後側傾斜部
11b 車幅側傾斜部
12 保護領域
13 ボックス本体内側部
14 ボックス本体外側部
15 ボックス本体中央部
21 荷重


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側に突出したアームレスト部と、該アームレスト部に設けられたボックス本体部と、該ボックス本体部に開閉自在に支持されたリッド部とを備える車両用内装部品において、
前記ボックス本体は、車幅方向の車室側の側面の大きさが対面側である車両外側の側面よりも小さい車室側面部と、
車両前後側となる側面と底面の少なくとも一方に段差状の面をもつ段差部と、
前記アームレスト部に前記車室側から前記車両外側への前記車幅方向の荷重が与えられたときに、前記段差部が破断して前記車室側面部が前記ボックス本体内に侵入した場合に、前記ボックス本体に前記荷重の影響を受けない保護領域を有することを特徴とする車両用内装部品。
【請求項2】
前記段差部は、前記車室側面部と平行な面の厚みを薄く形成した脆弱部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品。
【請求項3】
前記ボックス本体は、該ボックス本体の側面が底面の広がる方向へ傾く側面傾斜部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用内装部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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