説明

車両用内装部品

【課題】 車両用内装部品本体の隣接箇所に設けられた開口を開閉可能に覆う蓋体が車両用内装部品本体側に接触して車両用内装部品本体側に傷を付けてしまうことを防止できる車両用内装部品を提供する。
【解決手段】 トリムバック50は、リッド60をトリムバック本体70に回転可能に連結するシャフト61と、リッドを開く方向に付勢するスプリング63と、シャフト61に設けられたL形状の折り曲げ部62と、トリムバック本体70に設けられ、リッドの端末64と当接することによってリッドの開き方向への動きを規制するフランジ71と、折り曲げ部62と嵌合する切り欠き部73と、を有し、切り欠き部73は、シャフトの折り曲げ部62を切り欠き部73に嵌合させた際に、シャフトの折り曲げ部62がリッドの端末64の動きを規制するよう当接する位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品本体の隣接箇所に設けられた開口を開閉可能に覆う蓋体を有する車両用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバーチブル車は乗員の背後に車両用内装部品であるトリムバックの両サイドに、幌を支持するフレームが通過するために開口が設けられており、その開口に蓋をするためのリッドが開閉可能にトリムバックと連結されている。従来技術に係るリッド20を有するトリムバック10の要部を図1に示す。
【0003】
図1に示すように、リッド20は、シャフト21を介してトリムバック本体30と連結されており、更にスプリング23により常に開く方向に付勢されている。トリムバック本体30は、リッド20の開き方向の動きを規制するためのフランジ31を有しており、リッド20が開いた際に、リッドの端末24がトリムバック本体のフランジ31に当接することで、リッド20がガードフレーム32にぶつからないように規制している。
【0004】
また、シャフト21に設けられたL字形状の折り曲げ部22をトリムバック本体の切欠き部33に嵌合させて、シャフト21が抜けるのを防止している。リッド20は開き方向に付勢されているので、幌を閉じる際にはリッド20が自動的に開いていき、反対に幌が開く際にはリッド20の裏面に取り付けていた不図示のワイヤによってリッド20を引っ張って閉じるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−164847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トリムバック本体30を車体に取り付けた後に、トリムバック本体30の後方に幌を格納する必要がある。この作業のときに開いた状態のリッド20に幌が引っ掛かってしまう場合があり、その引っ掛かりが途中で外れると、リッド20がスプリング23の力により勢い良く開いてしまう。従来技術に係るトリムバック10の問題点を図2に示す。同図(a)は図1のA−A断面図、(b)は図1のB−B断面図である。
【0007】
トリムバック本体30には、上述のようにリッド20の開き方向の動きを規制するフランジ31が設けられているが、スプリング23の力が強いため、勢い良く開いたリッドの端末24がフランジ31に当接した際にフランジ31が力を受けきれず、図2(b)に示すようにフランジ31が撓み変形してしまい、リッド20が開きすぎて鎖線の位置まで開いてしまってリッド20がガードフレーム32に接触し、ガードフレーム32に傷が付いてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、車両用内装部品本体の隣接箇所に設けられた開口を開閉可能に覆う蓋体が車両用内装部品本体側に接触して車両用内装部品本体側に傷を付けてしまうことを防止できる車両用内装部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の車両用内装部品は、車両用内装部品本体と、前記車両用内装部品本体の隣接箇所に設けられた開口を開閉可能に覆う蓋体と、前記蓋体を前記車両用内装部品本体に回転可能に連結するシャフトと、前記シャフトに装着され、前記蓋体を開く方向に付勢する弾性部材と、前記シャフトに設けられたL形状の折り曲げ部と、前記車両用内装部品本体に設けられ、前記折り曲げ部と嵌合する切り欠き部とを有し、前記切り欠き部は、前記シャフトの折り曲げ部を前記切り欠き部に嵌合させた際に、前記シャフトの折り曲げ部が前記蓋体の端末に当接する位置に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、シャフトの折り曲げ部を切り欠き部に嵌合させた際に、シャフトが蓋体を押し込むことができるため、蓋体が車両用内装部品本体側に行かないように規制することができ、蓋体が車両用内装部品本体に接触して車両用内装部品本体に傷を付けてしまうことを防止できる。
【0011】
上記発明において、前記蓋体は、前記シャフトの折り曲げ部と嵌合する嵌合部をさらに有する。本発明によれば、幌を取り付けた後に、シャフトの折り曲げ部をリッドに嵌合させることで、シャフトの折り曲げ部の先端が幌に引っ掛かることを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両用内装部品本体の隣接箇所に設けられた開口を開閉可能に覆う蓋体が車両用内装部品本体に接触して車両用内装部品本体に傷を付けてしまうことを防止できる車両用内装部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術に係る蓋体を有する車両用内装部品の要部を示す図である。
【図2】従来技術に係る蓋体を有する車両用内装部品の問題点を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用内装部品の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る蓋体の構造部分を拡大して示す図であって、シャフトの折り曲げ部を蓋体の嵌合部に嵌合している状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る蓋体の構造部分を拡大して示す図であって、シャフトの折り曲げ部を車両用内装部品本体の切り欠き部に嵌合させている状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用内装部品の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図3は、本発明の実施形態に係るトリムバックの斜視図である。図4は、本発明の実施形態に係るリッドの構造部分を拡大して示す図であって、シャフトの折り曲げ部をリッドの嵌合部に嵌合している状態を示す図である。
【0016】
コンバーチブル車では、乗員が座るシートの背後にトリムバック50が設けられている。このトリムバック50のトリムバック本体(車両用内装部品本体)70には、乗員の頭部を保護するためのガードフレーム72が設けられている。トリムバック本体70は、タルク等のフィラーを混入したポリプロピレン(PP)樹脂を素材として、図示しない成形金型を型締めして、トリムバック本体70を形成するためのキャビティ内に溶融樹脂を射出充填することにより、トリムバック70が所望の曲面形状に賦形される。
【0017】
トリムバック本体70の両サイド(隣接箇所)には、幌を支持するフレームが通過するために開口65が設けられている。その開口65に蓋をする蓋体としてのリッド60が開閉可能にトリムバック本体70と連結されている。
【0018】
リッド60は、シャフト61を介してトリムバック本体70と連結されている。シャフト61は、トリムバック本体70にリッド60を回転可能に連結する。リッド60は、シャフト61に装着された弾性部材としてのスプリング63により常に開く方向に付勢されている。スプリング63の取付部63aがリッドの爪部67に係合することでスプリング63がリッドを開く方向に付勢する。
【0019】
シャフト61には、L形状の折り曲げ部62が形成されている。リッド60には、通常使用時にシャフトの折り曲げ部62と嵌合する嵌合部66が設けられている。幌を取り付けた後に、シャフトの折り曲げ部62をリッドの嵌合部66に嵌合することで、シャフトの折り曲げ部62の先端が幌に引っ掛かることを防止することができる。
【0020】
幌の取り付け後は、リッド60は開き方向に付勢されているので、幌が閉じる際にはリッド60が自動的に開いていく。反対に幌が開く際にはリッド60の裏面に取り付けていた不図示のワイヤによりリッド60を引っ張って閉じるようになっている。
【0021】
図5は、トリムバック70の後方に幌を格納するときの使用状態を示す図であって、シャフトの折り曲げ部62をトリムバック本体の切り欠き部73に嵌合させている状態を示す図である。図6は、本発明の実施形態に係るトリムバックのリッドの動作を説明するための図である。図6で鎖線で示したリッド60の位置は図1及び図2に示した従来のトリムバックのリッドの位置を示している。
【0022】
トリムバック50を車体に取り付けた後に、トリムバック本体70の後方に幌を格納するときに、開いた状態のリッド60に幌が引っ掛かる場合があり、その引っ掛かりが途中で外れると、リッド60がスプリング63の力により勢い良く開いてしまう。このため、トリムバック本体70には、リッドの端末64と当接することによって、リッド60の開き方向の動きを規制するためのフランジ71が設けられている。リッド60が開いた際に、リッドの端末64がトリムバックのフランジ71に当接することで、リッド60がガードフレーム72にぶつからないように規制している。
【0023】
さらに、トリムバック本体70には、シャフトの折り曲げ部62と嵌合する切り欠き部73が形成されている(図4及び図5参照)。この切り欠き部73は、シャフトの折り曲げ部62を切り欠き部73に嵌合させた際に、シャフトの折り曲げ部62がリッドの端末64に当接してリッドの端末64を固定する位置に形成されている。すなわち、切り欠き部73は、リッドの端末64に対応する位置まで届くように形成されている。また、切り欠き部73は、スプリング63の方向(図4中、左斜め上方向)に向かって形成されている。このため、シャフトの折り曲げ部62を切り欠き部73に挿入することによって、スプリング63の力によってシャフト61が引っ張られ、切り欠き部73からシャフトの折り曲げ部62が外れないようにしっかりと固定することができる。
【0024】
この構成によれば、シャフトの折り曲げ部62をトリムバックの切り欠き部73に嵌合させることで、シャフト61がリッドの端末64を押し込むことができるため、従来のリッド60が開いた状態(図6の鎖線状態)よりもリッド60がガードフレーム72から離れる方向に回動された状態で保持され、リッド60がガードフレーム72側に行かないように規制することができ、リッド60がトリムバックのガードフレーム72に接触してトリムバック50に傷を付けてしまうことを防止できる。
【0025】
また、シャフトの折り曲げ部62をトリムバックの切り欠き部73に嵌合させるとシャフト61は簡単には外れないので、シャフトの折り曲げ部62がリッドの端末64を押し込んでいる状態が維持される。従って、トリムバック50を車体に取り付けた後に、トリムバック本体70の後方に幌を格納する際に、開いた状態のリッド60に幌が引っ掛かり、その引っ掛かりが途中で外れて、リッド60がガードフレーム72側に勢い良く開いても、リッドの端末64がシャフト61に当接して、リッド60が開きすぎることがなく(図6の実線状態よりもガードフレーム72側に開くことがなく)、リッド60がガードフレーム72に接触してガードフレーム72を傷つけることはない。
【0026】
上記本発明の実施形態によれば、スプリング63の力が強くても、勢い良く開いたリッドの端末64がフランジ73に当接した際にフランジ71とシャフトの折り曲げ部62によってリッドの端末64の力をしっかりと受け止めることができるため、フランジ71が撓み変形することもなく、リッド60が開き過ぎることもないため、リッド60がガードフレーム72に接触することを防止して、ガードフレーム60に傷を付けることがなくなる。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。上記実施形態では車両用内装部品の例としてトリムバックを例に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、トリムバック以外の他の車両用内装部品に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
50 トリムバック
60 リッド
61 シャフト
62 折り曲げ部
63 スプリング
64 端末
65 開口
70 トリムバック本体
73 フランジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装部品本体と、
前記車両用内装部品本体の隣接箇所に設けられた開口を開閉可能に覆う蓋体と、
前記蓋体を前記車両用内装部品本体に回転可能に連結するシャフトと、
前記シャフトに装着され、前記蓋体を開く方向に付勢する弾性部材と、
前記シャフトに設けられたL形状の折り曲げ部と、
前記車両用内装部品本体に設けられ、前記折り曲げ部と嵌合する切り欠き部と、を有し、
前記切り欠き部は、前記シャフトの折り曲げ部を前記切り欠き部に嵌合させた際に、前記シャフトの折り曲げ部が前記蓋体の端末に当接する位置に形成されていることを特徴とする車両用内装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−46246(P2011−46246A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195194(P2009−195194)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】