説明

車両用冷却装置

【課題】冷媒回路を構成する蒸発器と凝縮器との断熱性能を向上させて収納庫の冷却効率の向上を図ることができる車両用冷却装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載された断熱構造の収納庫10の内部に連通する蒸発器収容庫33内に配設された蒸発器21と、圧縮機22と、蒸発器収容庫33の前方側外部に配設された凝縮器23と、膨張機構24とにより構成された冷媒回路20aを備え、この冷媒回路20aで冷媒を循環させることで蒸発器収容庫33から冷却空気を供給して収納庫10の内部を冷却するものであって、蒸発器収容庫33の前壁33aから離隔する態様で配設されてなり、凝縮器23で熱交換した高温空気を自身に当接させることで該前壁33aを該高温空気から遮蔽するとともに、該前壁33aとの間に凝縮器23を通過する高温空気の通過方向と異なる方向に沿って外気を通過させる通風路35を形成する遮蔽部材34を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却装置に関し、より詳細には、例えば冷凍車等の車両に搭載された断熱構造の収納庫を冷却するための車両用冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば冷凍車等の車両に適用される車両用冷却装置として、収納庫と冷媒回路とを備えたものが知られている。収納庫は、車両に搭載された断熱構造を有する箱体である。冷媒回路は、内部に冷媒が封入されており、蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張機構が冷媒配管にて順次接続されることにより構成されている。
【0003】
蒸発器は、収納庫の内部に連通する態様で前面パネルの前側上部に配設された蒸発器収容庫に配設され、かつ供給された冷媒を蒸発させるものである。圧縮機は、蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮するものである。凝縮器は、蒸発器収容庫の前方側外部に配設され、かつ圧縮機で圧縮した冷媒を凝縮させるものである。この凝縮器は、蒸発器と蒸発器収容庫の前面を構成する断熱構造の前壁で区画されている。膨張機構は、凝縮器で凝縮した冷媒を断熱膨張させるものである。
【0004】
このような車両用冷却装置においては、冷媒回路で冷媒を循環させることにより蒸発器収容庫から冷却空気を収納庫の内部に供給して所定温度に冷却するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−128540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に提案されている車両用冷却装置では、冷媒回路を構成する凝縮器と蒸発器とは、蒸発器収容庫の前面を構成する断熱構造の前壁で区画されているだけなので、かかる前壁で凝縮器の周囲を通過した高温空気と蒸発器の周囲を通過した冷却空気とを断熱することとなるが、これら高温空気と冷却空気との温度差が極めて大きいために十分な断熱作用を発揮することが困難であり、該前壁を通じての熱リークにより収納庫の冷却効率の低下を招来していた。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、冷媒回路を構成する蒸発器と凝縮器との断熱性能を向上させて収納庫の冷却効率の向上を図ることができる車両用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用冷却装置は、車両に搭載された断熱構造の収納庫の内部に連通する蒸発器収容庫内に配設され、かつ供給された冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記蒸発器収容庫の前方側外部に配設され、圧縮機で圧縮した冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器で凝縮した冷媒を断熱膨張させる膨張機構とを冷媒配管にて順次接続して構成された冷媒回路を備え、この冷媒回路で冷媒を循環させることにより前記蒸発器収容庫から冷却空気を供給して前記収納庫の内部を所定温度に冷却する車両用冷却装置において、前記蒸発器収容庫の前壁から離隔する態様で配設されてなり、前記凝縮器で熱交換した高温空気を自身に当接させることで該前壁を該高温空気から遮蔽するとともに、該前壁との間に前記凝縮器を通過する高温空気の通過方向と異なる方向に沿って外気を通過させる通風路を形成する遮蔽部材を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る車両用冷却装置は、上述した請求項1において、前記遮蔽部材は、上方に向かうに連れて後方に漸次傾斜する態様で配設されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る車両用冷却装置は、上述した請求項1又は請求項2において、前記遮蔽部材は、断熱材により構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蒸発器収容庫の前壁から離隔する態様で配設された遮蔽部材が、凝縮器で熱交換した高温空気を自身に当接させることで該前壁を該高温空気から遮蔽するとともに、該前壁との間に凝縮器を通過する高温空気の通過方向と異なる方向に沿って外気を通過させる通風路を形成するので、凝縮器と蒸発器との間の断熱性能を向上させることができ、これにより蒸発器収容庫の内部への熱リークを低減させることができ、収納庫の冷却効率の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である車両用冷却装置が適用される車両の模式図である。
【図2】図2は、冷却ユニットを構成する冷媒回路を示す模式図である。
【図3】図3は、図1に示した筐体の内部構造の要部を拡大して示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る車両用冷却装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である車両用冷却装置が適用される車両の模式図である。ここで例示する車両は、例えば冷凍車のようなものであり、収納庫10と、車両用冷却装置である冷却ユニット20とを搭載するものである。
【0015】
収納庫10は、平板状の断熱パネル11を適宜組み合わせることによって後面に開口部12が形成された直方状を成しており、断熱構造を有するものである。この収納庫10の開口部12は、扉体13により開閉されるものである。
【0016】
冷却ユニット20は、冷媒回路20aを備えて構成している。冷媒回路20aは、内部に冷媒が封入してあり、図2に示すように、蒸発器21と、圧縮機22と、凝縮器23と、膨張機構24とを冷媒配管25にて順次接続することにより構成されるものである。
【0017】
蒸発器21は、収納庫10を構成する前面側断熱パネル11の上部側前面に取り付けられた筐体30の内部に配設されており、より詳細には、収納庫10の内部と吹出口31及び吸込口32を通じて連通する断熱構造の蒸発器収容庫33の内部に配設されている。この蒸発器21は、供給された冷媒を蒸発させるものである。
【0018】
圧縮機22は、筐体30の外部であって車両の下部に配設されており、蒸発器21で蒸発した冷媒を吸引して圧縮するものである。
【0019】
凝縮器23は、筐体30の内部であって蒸発器収容庫33の前方側に配設されており、圧縮機22で圧縮された冷媒を凝縮させるものである。この凝縮器23の近傍には、凝縮器用送風ファン23Fが配設されている。この凝縮器用送風ファン23Fは、駆動することにより凝縮器23の周囲に外気を通過させるものである。
【0020】
膨張機構24は、例えばキャピラリーチューブのようなものであり、筐体30の内部に配設されている。この膨張機構24は、凝縮器23で凝縮した冷媒を断熱膨張させるもので、断熱膨張させた冷媒を蒸発器21に供給するものである。
【0021】
このような冷却ユニット20においては、冷媒回路20aで冷媒を循環させることにより、蒸発器21の周囲空気、すなわち蒸発器収容庫33の内部空気が冷却される。そして、蒸発器21の近傍に配設された蒸発器用送風ファン21Fが駆動することにより、吸込口32を通じて収納庫10の内部空気を蒸発器収容庫33に吸い込み、かつ吹出口31を通じて蒸発器収容庫33の内部空気を収納庫10の内部に吹き出すことで、収納庫10と蒸発器収容庫33との間で互いの内部空気を循環させる結果、収納庫10の内部を冷却することができる。
【0022】
図3は、図1に示した筐体30の内部構造の要部を拡大して示す断面側面図である。この図3に示すように、筐体30の内部には、遮蔽部材34が設けられている。この遮蔽部材34は、例えば真空断熱材のような断熱材により構成された平板状部材であり、上方に向かうに連れて後方に漸次傾斜する態様で蒸発器収容庫33の前壁33aから離隔して配設されている。
【0023】
遮蔽部材34は、蒸発器収容庫33の前壁33aを覆うのに十分な大きさを有しており、かかる前壁33aを覆う態様で配設されている。また遮蔽部材34は、前壁33aとの間に凝縮器23を通過する高温空気の通過方向(前後方向:図3中の矢印A方向)と異なる方向、すなわち前後方向に沿って外気を通過させる通風路35を形成している。
【0024】
以上のような構成を有する冷却ユニット(本実施の形態の車両用冷却装置)20においては、遮蔽部材34が蒸発器収容庫33の前壁33aを覆う態様で配設されているので、凝縮器23の周囲を通過した高温空気を自身に当接させることで該前壁33aを該高温空気から遮蔽することができ、自身に当接した高温空気を筐体30の上部開口30aより外部に送出することができる。また、遮蔽部材34は、前壁33aとの間に凝縮器23を通過する高温空気の通過方向と異なる方向に沿って外気を通過させる通風路35を形成しているので、かかる通風路35には、筐体30の下部開口30bから進入した外気を上方に向けて通過させて上部開口30aより外部に送出することができる。
【0025】
このように上記冷却ユニット20によれば、蒸発器収容庫33の前壁33aから離隔する態様で配設された遮蔽部材34が、凝縮器23の周囲を通過した高温空気を自身に当接させることで該前壁33aを該高温空気から遮蔽するとともに、該前壁33aとの間に凝縮器23を通過する高温空気の通過方向と異なる方向に沿って外気を通過させる通風路35を形成しているので、凝縮器23と蒸発器21との間の断熱性能を向上させることができ、これにより蒸発器収容庫33の内部への熱リークを低減させることができ、収納庫10の冷却効率の向上を図ることができる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されず種々の変更を行うことができる。
【0027】
上述した実施の形態においては、遮蔽部材34は、上方に向かうに連れて後方に傾斜する態様で配設されていたが、本発明においては遮蔽部材の配設姿勢については特に限定されるものではなく、種々の姿勢で配設されて良い。
【0028】
上述した実施の形態においては、遮蔽部材34により形成される通風路35は、外気を上下方向に沿って通過させるものであったが、本発明においては、外気の通過方向は、凝縮器を通過した高温空気の通過方向と異なるのであれば特に限定されず、例えば左右方向であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に車両用冷却装置は、例えば冷凍車等の車両に搭載された断熱構造の収納庫を冷却するのに有用である。
【符号の説明】
【0030】
10 収納庫
11 断熱パネル
12 開口部
13 扉体
20 冷却ユニット
20a 冷媒回路
21 蒸発器
21F 蒸発器用送風ファン
22 圧縮機
23 凝縮器
23F 凝縮器用送風ファン
24 膨張機構
25 冷媒配管
30 筐体
30a 上部開口
30b 下部開口
31 吹出口
32 吸込口
33 蒸発器収容庫
33a 前壁
34 遮蔽部材
35 通風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された断熱構造の収納庫の内部に連通する蒸発器収容庫内に配設され、かつ供給された冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器で蒸発した冷媒を吸引して圧縮する圧縮機と、前記蒸発器収容庫の前方側外部に配設され、圧縮機で圧縮した冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器で凝縮した冷媒を断熱膨張させる膨張機構とを冷媒配管にて順次接続して構成された冷媒回路を備え、この冷媒回路で冷媒を循環させることにより前記蒸発器収容庫から冷却空気を供給して前記収納庫の内部を所定温度に冷却する車両用冷却装置において、
前記蒸発器収容庫の前壁から離隔する態様で配設されてなり、前記凝縮器で熱交換した高温空気を自身に当接させることで該前壁を該高温空気から遮蔽するとともに、該前壁との間に前記凝縮器を通過する高温空気の通過方向と異なる方向に沿って外気を通過させる通風路を形成する遮蔽部材を備えたことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、上方に向かうに連れて後方に漸次傾斜する態様で配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、断熱材により構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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