説明

車両用前照灯及びリフレクタユニット

【課題】車両用前照灯を小型化しつつ、必要な配光特性を得ることができるようにする。
【解決手段】車両用前照灯1は、光軸31を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、水平方向において光軸31の右側に形成された第一反射面32を有する第一リフレクタ30と、光軸31の左側に配置され、光軸41を中心軸とした回転放物面を基調とする第二反射面42を有する第二リフレクタ40と、第一反射面32の焦点近傍に配置された第一発光体10と、第二反射面42の焦点近傍に配置された第二発光体20と、を備え、第二反射面42の焦点距離が第一反射面32の焦点距離よりも短くされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯及びリフレクタユニットに関し、特に複数の発光体を利用する車両用前照灯及びリフレクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用前照灯においては、2つの発光ダイオードと、2つのリフレクタとをユニット化したものがある(例えば、特許文献1参照)。一方のリフレクタの反射面は、一方の発光ダイオードの光を前方に反射させ、前方の仮想スクリーン上において水平方向に配列された発光ダイオードの反転像の集合体としての配光パターンを形成する。これにより、水平カットオフラインが形成される。他方のリフレクタの反射面は、もう一方の発光ダイオードの光を前方に反射させ、前方の仮想スクリーン上において水平方向に対して斜めに配列された発光ダイオードの反転像の集合体としての配光パターンを形成する。これにより、斜めカットオフラインが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−303639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の車両用前照灯はそのサイズが大きくなってしまう。つまり、2つの発光ダイオードの出射特性と必要な配光を得ることとを考慮して反射面を構成すると、車両用前照灯が左右方向(車両幅方向)に長くなってしまう。また、発光ダイオードから発した熱を放熱するために、リフレクタの後部にヒートシンクを設置するので、車両用前照灯が前後方向にも長くなってしまう。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、車両用前照灯を小型化しつつ、必要な配光特性を得ることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用前照灯が、前後方向に延びる第一軸を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、水平方向において前記第一軸の片側に形成された第一反射面を有する第一リフレクタと、前後方向に延びる第二軸を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、前記第一軸に関して前記第一反射面の水平方向反対側に、且つ、前記第二軸の鉛直方向下側に形成された第二反射面を有し、前記第一リフレクタと水平方向に並列された第二リフレクタと、前記第一反射面の焦点近傍に配置された第一発光体と、前記第二反射面の焦点近傍に配置された第二発光体と、を備え、前記第二反射面の焦点距離が前記第一反射面の焦点距離よりも短くされていることとした。
【0006】
好ましくは、前記第二反射面が前記第二発光体から発した光を前方に向けて水平方向に拡散するよう反射させ、前記第二反射面の頂点が前記第一反射面の頂点よりも前側に配置されていることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記第一発光体が水平方向に対して下向きに傾斜する向きに設置され、前記第一発光体の一辺が前後方向に対して平行に設けられ、前記第一反射面が、前記第一発光体の一辺を水平カットオフラインとして投影するよう前記第一発光体の光を前方に反射させる第一反射領域と、前記第一発光体の一辺を前記水平カットオフラインから所定角度で立ち上がる斜めカットオフラインとして投影するよう前記第一発光体の光を前方に反射させる第二反射領域と、を有し、前記第二発光体が下向きに設置され、前記第二発光体の一辺が水平方向に対して平行に設けられ、前記第二反射面が、前記第一発光体の一辺を水平カットオフラインとして投影するよう前記第一発光体の光を前方に反射させることとした。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るリフレクタユニットが、前後方向に延びる第一軸を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、水平方向において前記第一軸の片側に形成された第一反射面を有する第一リフレクタと、前後方向に延びる第二軸を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、前記第一軸に関して前記第一反射面の水平方向反対側に、且つ、前記第二軸の鉛直方向下側に形成された第二反射面を有し、前記第一リフレクタと水平方向に並列された第二リフレクタと、を備え、前記第二反射面の焦点距離が前記第一反射面の焦点距離よりも短くされていることとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、第二反射面の焦点距離が第一反射面の焦点距離よりも短いので、第二反射面による反射光を広がりのあるものとすることができ、第一反射面による反射光を広がりが小さくすることができるとともに、第一反射面による反射光を高照度にすることができる。このような第一反射面を有した第一リフレクタと、第二反射面を有した第二リフレクタが水平方向に並列されているから、第一反射面による反射光の配光パターンと第二反射面による反射光の配光パターンとの組合せによって、所望の配光パターンを得ることができる。
また、第二反射面の焦点距離が短いから、第二発光体を第二反射面に近く設置することができ、第二反射面の開口サイズが小さくとも、第二反射面による反射光の配光パターンの照度を充分に確保することができる。そのため、第二反射面の開口サイズを小さくすることができる。それゆえ、車両用前照灯を小型化することができる。特に、第一リフレクタと第二リフレクタが水平方向に並列され、第二リフレクタの反射面が第二軸の鉛直方向下側に形成されているから、第二リフレクタ・第二反射面を小さくして、車両用前照灯を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一実施形態における車両用前照灯の斜視図である。
【図2】同実施形態における車両用前照灯の上面図である。
【図3】同実施形態における車両用前照灯に用いる発光体の平面図である。
【図4】同実施形態における車両用前照灯に用いる発光体の側面図である。
【図5】同実施形態における車両用前照灯に用いる発光体の側面図である。
【図6】同実施形態における車両用前照灯の正面図である。
【図7】同実施形態における車両用前照灯の横断面図である。
【図8】図7の一部を拡大して示した図面である。
【図9】同実施形態における車両用前照灯の第一リフレクタによる配光パターンを示した図である。
【図10】同実施形態における車両用前照灯の第二リフレクタによる配光パターンを示した図である。
【図11】同実施形態における車両用前照灯の第一リフレクタによる配光パターンと、第二リフレクタによる配光パターンの合成を示した図である。
【図12】本発明の第二実施形態における車両用前照灯の斜視図である。
【図13】同実施形態における車両用前照灯の上面図である。
【図14】同実施形態における車両用前照灯の正面図である。
【図15】同実施形態における車両用前照灯の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
〔第1の実施の形態〕
図1は、車両用前照灯1の斜視図である。図2は、車両用前照灯1の上面図である。
【0013】
図1〜図2に示すように、この車両用前照灯1は、ロービーム用(すれ違い用)の配光パターンを形成するように構成された灯具である。この車両用前照灯1は、リフレクタユニット2、第一発光体10及び第二発光体20等を備える。
【0014】
図3は、第一発光体10の平面図である。図4は、第一発光体10の側面図である。図5は、第一発光体10の側面図である。図3〜図5に示すように、第一発光体10が基板15上に実装され、半球状のモールドレンズ16が第一発光体10を覆うようにして基板15上に形成されている。第一発光体10は、平面視して、長辺11,12及び短辺13,14を有する矩形状に設けられている。第一発光体10は、発光ダイオードチップである。
第二発光体20は第一発光体10と同様に設けられており、第二発光体20に係る構成と第一発光体10に係る構成とに同一の符号を付す。
【0015】
図6は、車両用前照灯1の正面図である。図7は、車両用前照灯1の横断面図である。
図6、図7に示すように、リフレクタユニット2は、右側(対向車線側)の第一リフレクタ30、左下側の第二リフレクタ40及び左上側の装飾部50を備える。第一リフレクタ30、第二リフレクタ40及び装飾部50が一体に成形され、第一リフレクタ30と第二リフレクタ40が水平方向に並列されている。
【0016】
第一リフレクタ30は、前後方向に延びる光軸31を中心軸とした回転放物面を基調とした第一反射面32を有する。具体的には、第一リフレクタ30の第一反射面32は、光軸31よりも右側に形成され、且つ、光軸31よりも右側の半回転放物面を基調としている。
第二リフレクタ40は、前後方向に延びる光軸41を中心軸とした回転放物面を基調とした第二反射面42を有する。具体的には、第二リフレクタ40の第二反射面42は、光軸41よりも下方に形成され、且つ、光軸41よりも下側の半回転放物面を基調としている。また、第二反射面42による光軸41が、第一反射面32による光軸31よりも左側(自車線側)にあり、第二反射面42が光軸31の左側(自車線側)に形成されている。図6では、反射面32,42を模様で塗りつぶしている。なお、反射面32,42及び装飾部50の前方には素通しの透明カバーが設けられるが、図面を見やすくするため、透明カバーの図示を省略する。
【0017】
第一反射面32の頂点36から焦点F1までの距離(回転放物面の頂点から焦点までの距離を焦点距離という。)は、第二反射面42の焦点距離よりも長い。具体的には、第一反射面32の焦点距離が20〜23mmであり、第二反射面42の焦点距離が8〜10mmである。
図6に示すように、第一反射面32の焦点F1が、第二反射面42の焦点F2よりも右側且つ上側に配置されている。
図7に示すように、第二反射面42の焦点F2が第一反射面32の焦点F1よりも前側に配置されている。
第二反射面42の頂点46が第一反射面32の頂点36よりも前側に位置している。
第二リフレクタ40の後端が第一リフレクタ30の後端よりも前側に配置され、第二リフレクタ40の右端部49と第一リフレクタ30の左端部とが左右方向にオーバーラップしている。
【0018】
図6に示すように、ホルダ60が装飾部50の後部に設けられ、第二発光体20に係る基板15がホルダ60の下面に取り付けられ、第一発光体10に係る基板15がホルダ60の側面に取り付けられている。
【0019】
第一発光体10が第一反射面32の焦点F1の近傍に配置されている。具体的には、第一発光体10が水平右向きに対して下に所定角度(例えば、15°)傾斜する向きに設置され、第一発光体10の長辺11,12が水平且つ前後方向に設置され、第一発光体10の長辺11が長辺12よりも下側に配置されている。
【0020】
図8は、図7の一部を拡大して示した図面である。図6、図7、図8に示すように、装飾部50の右端部51が第一発光体10及びモールドレンズ16の前方に配置され、装飾部50の右端部51と第一発光体10が左右方向にオーバーラップしているとともに、装飾部50の右端部51とモールドレンズ16が左右方向にオーバーラップしている。具体的には、装飾部50の右端面52がモールドレンズ16の頂点よりも右側に配置されている。そのため、装飾部50の右端部51が第一発光体10の前側を遮光する遮光部として機能し、図6に示すように正面から見て、第一発光体10及びそのモールドレンズ16が装飾部50の右端部51の後ろに隠れている。それゆえ、第一発光体10から発した直接光が装飾部50の右端部51によって遮光され、眩惑光の発生を抑えることができる。
【0021】
図6、図7に示すように、第二発光体20が第二反射面42の焦点F2の近傍に配置されている。具体的には、第二発光体20が下向きに設置され、第二発光体20の長辺11,12が水平且つ左右方向に設置され、第二発光体20の長辺11が長辺12よりも前側に配置され、前側の長辺11の中点の左右位置と第二反射面42の焦点F2の左右位置が揃っているとともに、前側の長辺11の中点の前後位置が第二反射面42の焦点F2の前後位置よりも僅かに後ろ側である。
第二発光体20も第一発光体10と同様に装飾部50の下端部の後方に配置され、正面から見て、第二発光体20及びそのモールドレンズ16が装飾部50の下端部の後ろに隠れている。そのため、装飾部50の下端部が遮光部として機能する。それゆえ、第二発光体20から発した直接光が装飾部50の下端部によって遮光され、眩惑光の発生を抑えることができる。
【0022】
第一反射面32は、水平カットオフライン配光形成用の第一反射領域33と、斜めカットオフライン配光形成用の第二反射領域34と、オーバーヘッドサイン配光形成用の第三反射領域35と、からなる。そして、第一反射面32は、第一発光体10から発した光を前方に向けて反射させ、第一反射面32よりも前方に所定距離離れた仮想スクリーンに配光パターンを形成する。図9は、第一反射面32によって形成される配光パターンを示した図である。図9において、横軸は光軸31から左右方向への角度を表し、縦軸は光軸31から横方向への角度を表す。
【0023】
図9に示すように、第一反射面32によって形成される配光パターンは、第一反射領域33及び第二反射領域34によって形成される遠方視認用配光パターン91と、第三反射領域35によって形成されるオーバーヘッドサイン配光パターン92と、からなる。
遠方視認用配光パターン91は、左側通行用の配光パターンであって、左右方向ゼロ°よりも右側の上縁に水平カットオフライン91aを有するとともに、左右方向ゼロ°よりも左側の上縁に水平カットオフライン91aから15°で立ち上がる斜めカットオフライン91bを有する。水平カットオフライン91aは、水平線に平行であるとともに、上下方向ゼロ°の僅か下に形成される。
オーバーヘッドサイン配光パターン92は、左右方向に略長尺な略矩形状に形成される。オーバーヘッドサイン配光パターン92は、光軸31を通る水平線(鉛直方向の角度がゼロ)よりも上側に形成される。
【0024】
第一反射領域33は、第一発光体10の反転像を水平方向に配列させて仮想スクリーンに投影するよう光学設計されている。ここで、第一反射領域33は、第一反射面32に係る回転放物面を基準面とするとともにその基準面とは曲率の異なる面である複数の反射素子33aからなる。これら反射素子33aは、第一発光体10から発した光を前方に向けて反射させるとともに、鉛直方向(上下方向)の反射については第一発光体10から発した光を、水平線よりも下側に偏向させる。
【0025】
これら反射素子33aは、第一発光体10の像を反転して仮想スクリーンに投影する。具体的には、これら反射素子33aは、第一発光体10の下側の長辺11を水平線に対して平行に且つ、光軸31を通る水平線よりも僅かに下側になるよう、第一発光体10の反転像を仮想スクリーンに投影する。従って、水平カットオフライン91aは、第一発光体10の下側の長辺11によって形成される。
【0026】
第二反射領域34は、第一発光体10の反転像を所定角度(例えば、斜め15°)に傾けて、第一発光体10の反転像をその斜めの方向に配列させて仮想スクリーンに投影するよう光学設計されている。ここで、第二反射領域34は、第一反射面32に係る回転放物面を基準面とし、左右方向を軸とする円錐面でその基準面を近似した面である複数の反射素子34aからなる。第二反射領域34の上境界線34bは水平となっているとともに、正面から見て上境界線34bの延長上に第一発光体10が配置されている。また、正面から見て第二反射領域34の下境界線34cが上境界線34bに対して所定角度(例えば、15°)傾斜し、正面から見て下境界線34cの延長上に第一発光体10が配置されている。
【0027】
第二反射領域34内の複数の反射素子34aは、第一発光体10から発した光を前方に向けて反射させて、第一発光体10の像を反転させて更に15°傾斜させて仮想スクリーンに投影する。具体的には、これら反射素子34aは、第一発光体10の下側の長辺11を水平線に対して15°傾斜させるよう、第一発光体10の像を投影する。従って、斜めカットオフライン91bは、第一発光体10の下側の長辺11によって形成される。
【0028】
第一発光体10の長手方向が前後方向になるように第一発光体10が配置されているから、遠方視認用配光パターン91が水平方向(左右方向)に長尺に形成される。
【0029】
第三反射領域35は、第一反射面32に係る回転放物面を基準面とし、左右方向を軸とする円柱面でその基準面を近似した面である単一の反射素子35aからなる。反射素子35aは、第一発光体10から発した光を前方に向けて反射させるとともに、垂直方向の反射については第一発光体10から発した光を、水平線よりも上側に偏向させる。ここで、反射素子35aは、第一発光体10の像を反転させて、光軸31を通る水平線よりも上側の仮想スクリーンに投影する。具体的には、反射素子35aは、第一発光体10の長辺11及び長辺12を水平線に対して平行に且つ、光軸31を通る水平線よりも僅かに上側になるよう、第一発光体10の像を投影する。これにより、オーバーヘッドサイン配光パターン92が形成される。
【0030】
第二反射面42は、第二発光体20から発した光を前方に向けて反射させ、第二反射面42よりも前方に所定距離離れた仮想スクリーンに手前側視認配光パターンを形成する。図10は、第二反射面42によって形成される手前側視認用配光パターン93を示した図である。図10において、横軸は前方水平軸から左右方向への角度を表し、縦軸は前方水平軸から横方向への角度を表す。
【0031】
図10に示すように、手前側視認用配光パターン93は、第二反射面42によって左右方向に略長尺な略矩形状に形成され、上縁に水平カットオフライン93aを有する。
【0032】
第二反射面42は、第二発光体20の像を水平方向に配列させて仮想スクリーンに投影するよう光学設計されている。ここで、第二反射面42は、第二反射面42に係る回転放物面を基準面とするとともにその基準面とは曲率の異なる面である複数の反射素子42aからなる。これら反射素子42aは、第二発光体20から発した光を前方に向けて反射させるとともに、鉛直方向の反射については第二発光体20から発した光を、水平線よりも下側に偏向させ、水平方向の反射については第二発光体20から発した光を前方へ向けて左右方向に拡散させる。
【0033】
これら反射素子42aは、第二発光体20の像を反転させて仮想スクリーンに投影する。具体的には、これら反射素子42aは、第二発光体20の前側の長辺11を水平線に対して平行に、且つ光軸41を通る水平線よりも僅かに下側になるよう、第二発光体20の像を投影する。従って、水平カットオフライン93aは、第二発光体20の前側の長辺11によって形成される。
【0034】
図11は、第一反射面32によって形成される配光パターンと、第二反射面42によって形成される配光パターンとを合成したものを示す。
第二反射面42の焦点距離が第一反射面32の焦点距離よりも短いから、第二発光体20の像の仮想スクリーンへの投影倍率は、第一発光体10の像の仮想スクリーンへの投影倍率よりも大きい。そのため、図11に示すように、手前側視認用配光パターン93が、遠方視認用配光パターン91よりも左右方向に広がった形状となる。
【0035】
第二反射面42が第二発光体20から発した光を前方へ向けて左右方向に拡散させるが、第二反射面42による水平方向の拡散範囲が第一反射面32の反射領域33,34による水平方向の拡散範囲よりも大きい。そのため、図11に示すように、手前側視認用配光パターン93が、遠方視認用配光パターン91よりも左右方向に広がった形状となる。
【0036】
第二発光体20から発した光を水平方向に広く拡散反射させる第二反射面42が、第一発光体10から発した光を水平方向に狭く拡散反射させる第一反射面32の前側に配置されているから、第二反射面42による反射光が第一リフレクタ30によって遮光されない。そのため、手前側視認用配光パターン93が暗くなるようなことを防止することができる。
【0037】
一方、第一反射面32が第二反射面42よりも後ろに配置されていても、第一反射面32が第一発光体10から発した光を水平方向に狭く拡散反射させるので、第一反射面32による反射光が第二リフレクタ40によって遮光されにくい。そのため、遠方視認用配光パターン91が暗くなるようなことを防止することができる。
【0038】
そして、第二反射面42が第一反射面32よりも前に配置され、第二反射面42の頂点46が第一反射面32の頂点36よりも前側に配置されているから、第二リフレクタ40の後端を第一リフレクタ30の後端よりも前側に設置することができる。そのため、第二リフレクタ40の後方に有効スペースを設けることができ、このような有効スペースに各種部材や機構を設置することができる。例えば、発光体10,20を冷却するためのヒートシンクや発光体10,20を駆動する駆動回路等を有効スペースに設置することができる。
【0039】
また、第二反射面42が手前側を視認するための配光パターン93を形成するものであるから、第二反射面42の開口サイズが小さくても、配光パターン93の照度を充分に確保することができる。そのため、正面から見て第一リフレクタ30の右方であって第二リフレクタ40の上方に有効スペースを設けることができる。つまり、装飾部50の設置スペースやホルダ60の設置スペースをとることができる。更には、発光体10,20を冷却するためのヒートシンクや発光体10,20を駆動する駆動回路等をホルダ60に取り付けても、そのようなヒートシンクや駆動回路等が第一リフレクタ30の右方であって第二リフレクタ40の上方に設置することができるから、車両用前照灯1の大型化を抑えることができる。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、第二反射面42の焦点距離が第一反射面32の焦点距離よりも短いので、第二反射面42による反射光を広がりのもったものとすることができ、第一反射面32による反射光を広がりが小さくすることができるとともに、第一反射面32による反射光を高照度にすることができる。このような第一反射面32を有した第一リフレクタ30と、第二反射面42を有した第二リフレクタ40が水平方向に並列されているから、第一反射面32による配光パターン91と第二反射面42による配光パターン93との組合せによって、所望の配光パターンを得ることができる(図11参照)。
また、第二反射面42の焦点距離が短いから、第二発光体20を第二反射面42に近く設置することができ、第二反射面42の開口サイズが小さくとも、第二反射面42による配光パターン93の照度を充分に確保することができる。そのため、第二反射面42の開口サイズを小さくすることができる。それゆえ、車両用前照灯1を小型化することができる。特に、第一リフレクタ30と第二リフレクタ40が水平方向に並列され、第二リフレクタ40の第二反射面42が光軸41の鉛直方向下側に形成されているから、第二リフレクタ40・第二反射面42を小さくして、車両用前照灯1を小型化することができる。
また、第二反射面42の頂点46が第一反射面31の頂点36よりも前側に配置されているから、第二反射面42の焦点距離が第一反射面32の焦点距離よりも短く、第二発光体20の光が第二反射面42によって水平方向に拡散するよう反射しても、その反射光を第一リフレクタ30によって遮光しないようにすることができる。
また、第一発光体10の光は第一反射面32によって反射されるが、第一反射面32の焦点距離が第二反射面42の焦点距離よりも長いから、第一反射面32による反射光の拡散範囲が第二反射面42による反射光の拡散範囲よりも狭いので、第一反射面32による反射光を第二リフレクタ40によって遮光しないようにすることができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、車両用前照灯1が左側通行用のものであったが、右側通行用のものであってもよい。この場合、正面から見て車両用前照灯1全体を左右反転させる。
また、上記実施形態では、発光体10,20が半導体を用いた矩形状の発光ダイオードチップであるが、矩形状を呈している発光体であれば、発光ダイオードに限るものではない。
【0042】
〔第2の実施の形態〕
図12は、第2実施形態における車両用前照灯1Aの斜視図である。図13は、車両用前照灯1Aの上面図である。図14は、車両用前照灯1Aの正面図である。図15は、車両用前照灯1Aの側面図である。第2実施形態における車両用前照灯1Aと、第1実施形態における車両用前照灯1との間で互いに対応する部分には同一の符号を付す。
【0043】
以下、第2実施形態における車両用前照灯1Aと、第1実施形態における車両用前照灯1との間で互いに対応する部分が同一に設けられている場合には、その説明を省略し、互いに対応する部分の相違点について説明する。
【0044】
第1実施形態においては、装飾部50が第二リフレクタ40の上に配設されているが、第2実施形態においては、装飾部50の代わりに第三リフレクタ70が第二リフレクタ40の上に配設されている。第三リフレクタ70、第一リフレクタ30及び第二リフレクタ40は一体形成され、これらが一体化されることによってリフレクタユニット2が構成されている。
【0045】
第三リフレクタ70は、ハイビーム用のリフレクタである。この第三リフレクタ70は、前後方向に延びる光軸を中心軸とした回転放物面を基調とした第三反射面72を有する。第三反射面72は、その光軸よりも上側に形成され、且つ、その光軸よりも上側の半回転放物面を基調とする。
【0046】
第三反射面72の焦点距離は、第一反射面32の焦点距離よりも短い。具体的には、第三反射面72の焦点距離が8〜12mmである。
【0047】
第三反射面72の焦点F3が第二反射面42の焦点F2よりも上に配置されている。第三反射面72の焦点F3の左右方向の位置が第二反射面42の焦点F2の左右方向の位置に揃っている。第三反射面72の焦点F3の前後方向の位置も第二反射面42の焦点F2の左右方向の位置に揃っている。
【0048】
第三反射面72の焦点F3が第一反射面32の焦点F1よりも左側に配置されている。第三反射面72の焦点F3が第一反射面32の焦点F1よりも前側に配置されている。
第三反射面72の頂点が第一反射面32の頂点よりも前側に位置している。
第三リフレクタ70の後端が第一リフレクタ30の後端よりも前側に配置されている。
【0049】
第三発光体80が第三反射面72の焦点F3近傍に配置されている。この第三発光体80は、矩形状に設けられた発光ダイオードチップである。この第三発光体80は、発光体10,20と同様に、基板に搭載されているとともに、半球状のモールドレンズによって覆われている。
【0050】
第三発光体80は、第二反射面42及び第三反射面72の前側において水平方向に配置された板状のホルダ60の上面に搭載されている。第三発光体80が上向きに設置され、第三発光体80の長辺が水平且つ左右方向に設置されている。
【0051】
第三反射面72は、第三発光体80から発した光を前方に向けて反射させるとともに、第三反射面72よりも前方に所定距離離れた仮想スクリーンにスポット状の配光パターンを形成する。具体的には、第三反射面72は、仮想スクリーン上の鉛直方向ゼロ°及び水平方向のゼロ°の位置に、第三発光体80の反転像を投影する。
【0052】
第二リフレクタ40及び第三リフレクタ70の後方にはヒートシンク85が設けられている。ホルダ60が第二反射面42と第三反射面72との間の部分を後ろに貫通し、そのホルダ60とヒートシンク85が連結されている。ヒートシンク85がホルダ60に連結されているので、発光体10,20,80の熱がヒートシンク85によって放熱される。
【0053】
以上に説明したことを除いて、第2実施形態における車両用前照灯1Aと、第1実施形態における車両用前照灯1との間で互いに対応する部分が同一に設けられている。
【0054】
本実施形態においても、第二反射面42による反射光が第一リフレクタ30によって遮光されず、手前側視認用配光パターンが暗くなるようなことを防止することができる。
また、第一反射面32による反射光が第二リフレクタ40によって遮光されにくく、遠方視認用配光パターンが暗くなるようなことを防止することができる。
また、リフレクタ40,80の後方に有効スペースを設けて、ヒートシンク85をその有効スペースに設置しても、車両用前照灯1Aの大型化を防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
1、1A 車両用前照灯
1A 車両用前照灯
2 リフレクタユニット
10 第一発光体
11 長辺
20 第二発光体
30 第一リフレクタ
31 光軸
32 第一反射面
33 第一反射領域
34 第二反射領域
36 頂点
40 第二リフレクタ
41 光軸
42 第二反射面
46 頂点
91 遠方視認用配光パターン
91a 水平カットオフライン
91b 斜めカットオフライン
93 手前側視認用配光パターン
93a 水平カットオフライン
F1、F2、F3 焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる第一軸を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、水平方向において前記第一軸の片側に形成された第一反射面を有する第一リフレクタと、
前後方向に延びる第二軸を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、前記第一軸に関して前記第一反射面の水平方向反対側に、且つ、前記第二軸の鉛直方向下側に形成された第二反射面を有し、前記第一リフレクタと水平方向に並列された第二リフレクタと、
前記第一反射面の焦点近傍に配置された第一発光体と、
前記第二反射面の焦点近傍に配置された第二発光体と、を備え、
前記第二反射面の焦点距離が前記第一反射面の焦点距離よりも短くされていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記第二反射面が前記第二発光体から発した光を前方に向けて水平方向に拡散するよう反射させ、
前記第二反射面の頂点が前記第一反射面の頂点よりも前側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記第一発光体が水平方向に対して下向きに傾斜する向きに設置され、
前記第一発光体の一辺が前後方向に対して平行に設けられ、
前記第一反射面が、前記第一発光体の一辺を水平カットオフラインとして投影するよう前記第一発光体の光を前方に反射させる第一反射領域と、前記第一発光体の一辺を前記水平カットオフラインから所定角度で立ち上がる斜めカットオフラインとして投影するよう前記第一発光体の光を前方に反射させる第二反射領域と、を有し、
前記第二発光体が下向きに設置され、
前記第二発光体の一辺が水平方向に対して平行に設けられ、
前記第二反射面が、前記第一発光体の一辺を水平カットオフラインとして投影するよう前記第一発光体の光を前方に反射させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前後方向に延びる第一軸を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、水平方向において前記第一軸の片側に形成された第一反射面を有する第一リフレクタと、
前後方向に延びる第二軸を中心軸とした回転放物面を基調とするとともに、前記第一軸に関して前記第一反射面の水平方向反対側に、且つ、前記第二軸の鉛直方向下側に形成された第二反射面を有し、前記第一リフレクタと水平方向に並列された第二リフレクタと、を備え、
前記第二反射面の焦点距離が前記第一反射面の焦点距離よりも短くされていることを特徴とするリフレクタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−81975(P2011−81975A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232075(P2009−232075)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】