説明

車両用前照灯

【課題】複数の配光パターンを集合させて一つの配光パターンを形成するときに、その外縁を滑らかに形成する。
【解決手段】第2灯具ユニットにおいて、光源ユニットは、第1分割配光パターンPA11〜第3分割配光パターンPA13を形成するための被投影像を投影レンズの後方焦点面に形成する。第2分割配光パターンPA12の右下コーナー部PA12dは、下縁部PA12cと、第1分割配光パターンPA11と境界を形成する左縁部PA11aとに近接する。12の左下コーナー部PA12eは、下縁部PA12cと、第3分割配光パターンPA13と境界を形成する下縁部PA11bとに近接する。第2分割配光パターンPA12は、水平線よりも下方において右下コーナー部PA12dおよび左下コーナー部PA12eが水平方向に膨らむよう形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間に車で走行するときは、通常はロービームを照射して路面を照らして走行し、必要に応じてハイビームを照射して前方を確認しながら走行する。しかしながら、いわゆるカットオフラインより上方に光を照射すると、前走車の運転者や車両前方にいる歩行者にグレアを与えるおそれがある。このため、例えば、人物の位置を決定し、人物に対応する寸法および位置を有するマスクを像形成器上に形成して人物のまわりに投影された影を形成する車両用ヘッドライトが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば、前走車の存在有無を検出し、検出結果に応じて一方向を減光するよう調光し、これによって減光した光を他の方向へ照射する車両用前照灯装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、例えば、物体を検出し、その検出結果に応じて光減衰マトリックス内の複数の画素のうち少なくとも1つの画素の光を減衰させる車両用暗視システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−231178号公報
【特許文献2】特開平4−81337号公報
【特許文献3】特開2006−188224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献に記載されるように、透光と遮光とを切替可能な複数の区画に分割された中間部材を光源と投影レンズとの間に配置し、前方への光の照射をマスクするなどして前方に存在する人に与えるグレアを抑制する技術が提案されている。しかしながら、上述の特許文献に記載されるように複数の矩形の区画に分割された中間部材を使った場合、各区画に対応する個別の配光パターンのコーナー部が丸みを帯びて、全体として形成される配光パターンの外縁に凹部が発生するおそれがある。例えば車両用前照灯によって照射される光によって水平線付近における光度が高い領域にこのような凹部が形成された場合、その凹部が視認可能となって運転者などに違和感を与える可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の配光パターンを集合させて一つの配光パターンを形成するときに、その外縁を滑らかに形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用前照灯は、各々による被投影像が投影されて形成される分割配光パターンが互いに隣接し、各々の分割配光パターンの縁部のうち第1縁部が互いに重なり合って境界を形成すると共に、各々の分割配光パターンが集合して形成されるべき集合配光パターンの外縁の一部を第2縁部が形成するよう、投影レンズの後方焦点面に各々が被投影像を形成する一対の像形成手段を備える。一対の像形成手段の少なくとも一方は、分割配光パターンのうち第1縁部終端および第2縁部終端の双方に近接するコーナー部が集合配光パターンの外縁に沿う方向に膨らむよう、被投影像を形成する。
【0006】
この態様によれば、分割配光パターンのコーナー部を集合配光パターンの外縁に沿うように膨らませることで、集合配光パターンの外縁をより円滑に形成することができる。このため、車両運転者に与える違和感などを抑制することができる。
【0007】
一対の像形成手段の各々は、集合配光パターンの水平な外縁の一部を第2縁部が形成するよう被投影像を形成し、一対の像形成手段の少なくとも一方は、コーナー部が水平方向に膨らむよう被投影像を形成してもよい。
【0008】
車両用前照灯によって形成される配光パターンは、一般的に水平方向に伸びるよう形成される。このため、水平な外縁が滑らかか否かが、車両運転者に与える違和感に大きく影響を与える。この態様によれば、このように水平な外縁を滑らかに形成することができ、車両運転者に与える違和感をより抑制することができる。
【0009】
一対の像形成手段の各々は、集合配光パターンの下方の外縁の一部を第2縁部が形成するよう被投影像を形成してもよい。
【0010】
車両用前照灯によって例えばハイビーム領域に配光パターンを形成する場合、水平線に沿うように下方の外縁が形成される。車両運転者は通常は水平線付近を見ながら運転するため、このような配光パターンにおいて下方の外縁形状は運転者から視認されやすい。この態様によれば、このように運転者に視認されやすい下方の外縁を円滑に形成することができる。
【0011】
一対の像形成手段の少なくとも一方は、コーナー部が水平線より下方において水平方向に膨らむよう被投影像を形成してもよい。
【0012】
この態様によれば、膨らむ部分が水平線より上方に及ぶことを回避することができ、水平線より上方においても各々の分割配光パターンの形状が影響を受けることを回避することができる。
【0013】
一対の像形成手段は、第1光源と、第1光源が発する光の一部を遮って第1被投影像を形成するシェーディング部材と、第2光源と、第2光源が発する光を反射して第2被投影像を形成する反射面と、を有してもよい。
【0014】
この態様によれば、シェーディング部材および反射面という簡易な構成によって、第1被投影像による配光パターンおよび第2被投影像による配光パターンの双方を形成することができる。このため、透光と遮光とを切替可能な中間部材を用いる場合などに比べ、低コストな灯具ユニットを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の配光パターンを集合させて一つの配光パターンを形成するときに、その外縁を滑らかに形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る右前照灯ユニット10Rの構成を示す図である。図1では、理解を容易にするために右前照灯ユニット10Rを水平面で切断して上方から見た断面図を示している。右前照灯ユニット10Rは、車両(図示せず)進行方向に見て前面右側に配置される。なお、車両の前面左側には、左前照灯ユニット(図示せず。以下、「左前照灯ユニット10L」という)が設けられる。左前照灯ユニット10Lは右前照灯ユニット10Rと左右対称に構成されており、以下、右前照灯ユニット10Rについて説明することで左前照灯ユニット10Lの説明は省略する。
【0018】
右前照灯ユニット10Rは、透光カバー20、ランプボディ22、エクステンション24、第1灯具ユニット26、および第2灯具ユニット28を有する。ランプボディ22は樹脂などによって細長い開口部を有するカップ型に成形されている。透光カバー20は透光性を有する樹脂などによって成形され、ランプボディ22の開口部を塞ぐようにランプボディ22に取り付けられる。こうしてランプボディ22と透光カバー20とによって灯室が形成され、この灯室内にエクステンション24、第1灯具ユニット26、および第2灯具ユニット28が配置される。
【0019】
エクステンション24は、第1灯具ユニット26、および第2灯具ユニット28からの照射光を通すための開口部を有し、ランプボディ22に固定される。第1灯具ユニット26は第2灯具ユニット28より車両外側に配置される。第1灯具ユニット26はいわゆるパラボラ型の灯具ユニットであり、いわゆるロービーム用配光パターンを形成する。ロービーム用配光パターンは公知であるため説明を省略する。
【0020】
第1灯具ユニット26は、リフレクタ32、光源バルブ34、およびシェード36を有する。光源バルブ34はカップ型に形成され、中央に挿通孔が設けられている。本実施形態では、光源バルブ34はハロゲンランプなどフィラメントを有する白熱灯によって構成されている。なお、光源バルブ34は、メタルハライドバルブなどのHIDランプ(ディスチャージランプともいう)からなる放電灯が採用されてもよい。光源バルブ34は、内部に突出するようリフレクタ32の挿通孔に挿通されてリフレクタ32に固定される。リフレクタ32は、光源バルブ34が照射した光を車両前方に向けて反射させるよう、内面の曲面が形成されている。シェード36は、光源バルブ34から車両前方へ直接進行する光を遮断する。第1灯具ユニット26の構成は公知であるため、第1灯具ユニット26に関する詳細な説明は省略する。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係る第2灯具ユニット28の斜視図であり、図3は、第1の実施形態に係る第2灯具ユニット28の上面図である。また、図4は、第1の実施形態に係る第2灯具ユニット28の正面図である。以下、図2〜図4に関連して第2灯具ユニット28の構成について説明する。
【0022】
第2灯具ユニット28は、投影レンズ40、および光源ユニット42を備える。投影レンズ40は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、その後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。光源ユニット42は、第1像形成ユニット44、第2像形成ユニット46、および第3像形成ユニット48を有する。
【0023】
第1像形成ユニット44は、第1リフレクタ50、基板56、および第1シェーディング部材70に設けられた反射面70aを含む。基板56は、前方から見て光軸Xより右側に配置される。基板56には、第1発光素子62が設けられている。第1発光素子62は、発光チップ(図示せず)および薄膜を有する。発光チップは、1mm角程度の正方形の発光面を有する白色発光ダイオードによって構成される。なお、発光チップはこれに限られないことは勿論であり、例えばレーザダイオードなど略点状に面発光する他の素子状の光源であってもよい。薄膜はこの発光チップの発光面を覆うように設けられる。基板56は、第1発光素子62が下方に光を発するよう光源ユニット42の筐体(図示せず)に取り付けられる。
【0024】
第1リフレクタ50もまた、前方から見て光軸Xよりも右側に配置される。第1リフレクタ50は、曲面状の内面に、アルミニウム材料が全面にわたって蒸着された反射面50aが設けられる。
【0025】
第1シェーディング部材70は、外形が四角形の板状に形成され、外縁部のうち縁部70bが光軸Xに向くよう配置される。このとき前面に、アルミニウム材料または銀が全面にわたって蒸着された反射面70aが設けられる。第1シェーディング部材70は、光軸Xに近づくほど反射面70aが前方に向かうよう光軸Xに対して傾斜して配置される。反射面70aは、縁部70bに至るまで設けられる。なお、第1シェーディング部材70は上方から見てくさび形となる三角柱状に形成されていてもよい。この場合、第1シェーディング部材70は、前方から見て光軸Xよりも右側に配置され、上方から見て鋭角となる縁部が光軸Xに向くよう配置される。
【0026】
第1リフレクタ50は、第1発光素子62が発した光を反射面50aで第1シェーディング部材70の反射面70aに向けて反射する。反射面70aは、第1リフレクタ50によって反射された光を前方の投影レンズ40に向けてさらに反射する。こうして第1像形成ユニット44は、投影レンズ40の後方焦点面に第1被投影像を形成する。
【0027】
第2像形成ユニット46は、第2リフレクタ52、基板58、第1シェーディング部材70、および第2シェーディング部材72を含む。基板58には、第2発光素子64が設けられている。第2発光素子64には、第1発光素子62と同様のものが用いられる。基板58は、第2発光素子64が第1発光素子62よりも後方且つ光軸Xの上方に位置から下方に光を発するよう、光源ユニット42の筐体に取り付けられる。
【0028】
第2シェーディング部材72もまた、外形が四角形の板状に形成され、外縁部のうち縁部72bが光軸Xに向くよう配置される。このとき前面に、アルミニウム材料または銀が全面にわたって蒸着された反射面72aが設けられる。第2シェーディング部材72は、反射面72aが光軸Xに近づくほど前方に向かうよう光軸Xに対して傾斜して配置される。反射面72aは、縁部72bに至るまで設けられる。なお、第2シェーディング部材72は上方から見てくさび形となる三角柱状に形成されていてもよい。この場合、第2シェーディング部材72、前方から見て光軸Xよりも右側に配置され、上方から見て鋭角となる縁部が光軸Xに向くよう配置される。
【0029】
基板56、基板58、および基板60の各々は、上面がヒートシンク74の下面に取り付けられる。ヒートシンク74は、光源ユニット42の筐体に固定される。ヒートシンク74は、第1発光素子62、第2発光素子64、および第3発光素子66の各々を放熱し、熱によってこれらの発光に与えられる影響を抑制する。
【0030】
図4に示すように、第1シェーディング部材70の縁部70bと第2シェーディング部材72の縁部72bは、光軸Xを挟んで間隔をもって対向する。縁部70bと縁部72bは共に上端部が光軸X近傍に位置する。
【0031】
図5は、図3のP−P断面図である。第2リフレクタ52の反射面52aの、光軸Xを含む鉛直面による断面は、2つの焦点、第1焦点F1および第2焦点F2を持つ略楕円状に形成される。第2リフレクタ52は、第2焦点F2が概ね光軸X上に位置し、第1焦点F1が第2焦点F2よりも後方且つ上方に位置するよう配置される。第1焦点F1に、第2発光素子64が配置される。第2焦点F2は、投影レンズ40の後方焦点面に概ね位置する。このため、第2像形成ユニット46は、光軸X近傍の光度が高い被投影像を形成することができる。
【0032】
図2〜4に戻る。第2像形成ユニット46は、第1シェーディング部材70の縁部70bと第2シェーディング部材72の縁部72bとの間の間隔部、第1シェーディング部材70の上縁部70cから上方、および第2シェーディング部材72の上縁部72cから上方を通過するときの光によって、投影レンズ40の後方焦点面に第2被投影像を形成する。
【0033】
第3像形成ユニット48は、第3リフレクタ54、基板60、および第2シェーディング部材72に設けられた反射面72aを含む。基板60は、前方から見て光軸Xより右側に配置される。基板60には、第3発光素子66が設けられている。第3発光素子66は、第1発光素子62と同様のものが用いられている。基板60は、前方から見て光軸Xより右側に配置される。基板60は、第3発光素子66が下方に光を発するよう光源ユニット42の筐体に取り付けられる。
【0034】
第3リフレクタ54もまた、前方から見て光軸Xよりも右側に配置される。第3リフレクタ54は、曲面状の内面に、アルミニウム材料または銀が全面にわたって蒸着された反射面54aが設けられる。
【0035】
第3リフレクタ54は、第3発光素子66が発した光を反射面54aで第1シェーディング部材70の反射面72aに向けて反射する。反射面72aは、第3リフレクタ54によって反射された光を前方の投影レンズ40に向けてさらに反射する。こうして第3像形成ユニット48は、投影レンズ40の後方焦点面に第3被投影像を形成する。
【0036】
なお、図4に示すように、第1像形成ユニット44によって出射される光L1の多くと第3像形成ユニット48から出射される光L3の多くは、光軸Xに近い位置で投影レンズ40に入射する。これに対して、第2像形成ユニット46から出射される光L2の多くは、光軸Xから離間した位置で投影レンズ40に入射する。このように光軸Xから離間した位置で投影レンズ40に入射した光は投影レンズ40を出射するときに微小に拡散する傾向があり、これは投影レンズ40の楕円焦点面を通過する光のうち光軸Xから離間するほど顕著となる。
【0037】
このため、第1の実施形態では、図4に示すように、第1シェーディング部材70および第2シェーディング部材72は、縁部70bと縁部72bとの間隔が下方に行くほど狭まるよう各々が設けられている。これにより第2像形成ユニット46は、縁部70bと縁部72bとの間を通過した光によって長方形に近い形状の配光パターンを形成している。
【0038】
また、図4に示すように、第1シェーディング部材70の上縁部70cおよび第2シェーディング部材72の上縁部72cは、光軸Xから徐々に離間するにしたがって上方に向かうよう傾斜している。これにより、縁部が水平線付近で水平に沿うように配光パターンを形成している。
【0039】
さらに、第1像形成ユニット44および第3像形成ユニット48は、第2像形成ユニット46によって形成される第2被投影像を挟むように、第1被投影像および第3被投影像を形成する。第1被投影像および第3被投影像は、発光素子が発した光を2回にわたって反射して形成される。これに対して、第2被投影像および第3被投影像は、発光素子が発した光を1回だけ反射して形成される。このように、ある反射回数を経て形成された被投影像を、それより少ない反射回数を経て形成された被投影像を挟むように配置することで、全体として中央の光度が高い被投影像を形成することができる。したがって、灯具ユニットによる車両運転者の遠方視認性を向上させることができる。
【0040】
図6は、第1の実施形態に係る第2灯具ユニット28によって仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンPA1を示す図である。第1分割配光パターンPA11は、第1像形成ユニット44によって形成された第1被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。また、第2分割配光パターンPA12は、第2像形成ユニット46によって形成された第2被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。また、第3分割配光パターンPA13は、第3像形成ユニット48によって形成された第3被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。
【0041】
付加配光パターンPA1は、第1分割配光パターンPA11〜第3分割配光パターンPA13が集まり組み合わされて水平方向に長い帯状に形成される。付加配光パターンPA1は、右前照灯ユニット10Rに含まれる第2灯具ユニット28からの照射光と、左前照灯ユニット10Lに含まれる第2灯具ユニット28からの照射光とが重なり合って形成される。第2灯具ユニット28は、付加配光パターンPA1を形成する付加光源として機能する。なお、第2灯具ユニット28は、いわゆるハイビーム用配光パターンを形成するハイビーム用光源として機能してもよい。
【0042】
図7(a)は、第1分割配光パターンPA11の形状を示す図である。第1分割配光パターンPA11は、左縁部PA11aの下端と下縁部PA11bの左端とに近接する左下コーナー部PA11cが、左端から右方向に向かって水平に切り取られたよう形成される。下縁部PA11bは、付加配光パターンPA1の下縁部の一部を形成する。したがって、下縁部PA11bは、付加配光パターンPA1の外縁の一部を形成する第2縁部として利用される。
【0043】
図7(b)は、第2分割配光パターンPA12の形状を示す図である。第2分割配光パターンPA12は、T字を上下逆にしたような形状に形成される。第2分割配光パターンPA12の下縁部PA12cは、付加配光パターンPA1の下縁部の一部を形成する。したがって、下縁部PA12cもまた、付加配光パターンPA1の外縁の一部を形成する第2縁部として利用される。上述のように、第1シェーディング部材70および第2シェーディング部材72が、縁部70bと縁部72bとの間隔が光軸Xから離間するにしたがって徐々に狭まるよう形成されていることから、右縁部PA12aと左縁部PA12bとが互いに略平行となり、第2分割配光パターンPA12の上部は、略長方形状に形成される。
【0044】
また、第2分割配光パターンPA12は、右縁部PA12aの下端と下縁部PA12cの右端に近接する右下コーナー部PA12dが水平方向に膨らむよう形成される。また、第2分割配光パターンPA12は、左縁部PA12bの下端と下縁部PA12cの左端に近接する左下コーナー部PA12eが水平方向に膨らむよう形成される。
【0045】
上述のように、第1シェーディング部材70の上縁部70cおよび第2シェーディング部材72の上縁部72cは、光軸Xから離れるにしたがって上方に向かうよう傾斜するよう形成されている。このため、中央から離れるにしたがって投影レンズ40から出射される光の拡散が大きくなり、水平方向に膨らむ右下コーナー部PA12dおよび左下コーナー部PA12eの上縁部は略水平に形成される。
【0046】
図7(c)は、第3分割配光パターンPA13の形状を示す図である。第3分割配光パターンPA13は、右縁部PA13aの下端と下縁部PA13bの左端とに近接する右下コーナー部PA13cが、右端から左方向に向かって水平に切り取られたように形成される。下縁部PA13bは、付加配光パターンPA1の下縁部の一部を形成する。したがって、下縁部PA13bもまた、付加配光パターンPA1の外縁の一部を形成する第2縁部として利用される。
【0047】
図6に戻る。互いに隣接する第1分割配光パターンPA11と第2分割配光パターンPA12において、第1分割配光パターンPA11の左縁部PA11aと第2分割配光パターンPA12の右縁部PA12aとが互いに重なり合って境界を形成する。したがって、第1分割配光パターンPA11の左縁部PA11aおよび第2分割配光パターンPA12の右縁部PA12aの各々は、互いに重なり合って境界を形成する第1縁部として利用される。また、互いに隣接する第2分割配光パターンPA12と第3分割配光パターンPA13において、第2分割配光パターンPA12の左縁部PA12bと第3分割配光パターンPA13の右縁部PA13aとが互いに重なり合って境界を形成する。したがって、第2分割配光パターンPA12の左縁部PA12bおよび第3分割配光パターンPA13の右縁部PA13aの各々は、互いに重なり合って境界を形成する第1縁部として利用される。
【0048】
上述のように、第2分割配光パターンPA12は、右下コーナー部PA12dおよび左下コーナー部PA12eが付加配光パターンPA1の下縁部に沿う方向に膨らむよう形成されている。被投影像が矩形であっても、それによって形成される配光パターンのコーナー部はある程度丸みを帯びる。このため、矩形の分割配光パターンを隣接させて集合配光パターンを形成する場合、その集合配光パターンに各々の分割配光パターンのコーナー部の丸みによって凹部が生じる可能性がある。
【0049】
このように右下コーナー部PA12dおよび左下コーナー部PA12eを、形成すべき付加配光パターンPA1の下縁部に沿う方向に延ばすことによって、このような凹部の形成を抑制できる。また、車両運転者は、主に前方を見ながら運転する。このように右下コーナー部PA12dおよび左下コーナー部PA12eを、形成すべき付加配光パターンPA1の下縁部に沿う方向に延ばすことによって、凹部が形成される可能性が生じる個所を前方中央からより水平方向に離間した位置にずらすことができる。このため、このような凹部が生じることにより運転者に与える違和感を抑制することができる。
【0050】
第1の実施形態では、右下コーナー部PA12dおよび左下コーナー部PA12eは、H−H線より下方において水平方向に膨らむよう第2分割配光パターンPA12が形成される。これにより、膨らむ部分が水平線より上方に及ぶことを回避することができ、水平線より上方においても各々の分割配光パターンの形状が影響を受けることを回避することができる。
【0051】
また、第1分割配光パターンPA11の左下コーナー部PA11cは、第2分割配光パターンPA12の右下コーナー部PA12dとの重複を避けるように切り取られた形状に形成される。また、第3分割配光パターンPA13の右下コーナー部PA13cは、第2分割配光パターンPA12の左下コーナー部PA12eとの重複を避けるように切り取られた形状に形成される。これにより、第2分割配光パターンPA12の右下コーナー部PA12dおよび左下コーナー部PA12eを膨らませることによって分割配光パターン同士が重複し、付加配光パターンPA1の下部に照度のムラが生じることを回避している。
【0052】
また、上述のように、第1シェーディング部材70の反射面70aは縁部70bに至るまで設けられている。これにより、第1分割配光パターンPA11の左縁部PA11aと第2分割配光パターンPA12の右縁部PA12aとが重なり合って形成される境界が暗くなることが抑制されている。また、上述のように、第2シェーディング部材72の反射面72aは縁部72bに至るまで設けられている。これにより、第2分割配光パターンPA12の左縁部PA12bと第3分割配光パターンPA13の右縁部PA13aとが重なり合って形成される境界が暗くなることが抑制されている。
【0053】
右前照灯ユニット10Rおよび左前照灯ユニット10Lが搭載される車両(図示せず)には公知のハイビームスイッチ(図示せず)の他に、中間ビームスイッチ(図示せず)が設けられている。中間ビームスイッチがユーザによってオンにされると、中間ビームモードが開始される。中間ビームモードでは、第1分割配光パターンPA11〜第3分割配光パターンPA13のうち、対向車や先行車などの前走車が存在する分割配光パターンを形成する発光素子を消灯することにより、前走車の運転者に与えるグレアを抑制する。
【0054】
具体的には、右前照灯ユニット10Rおよび左前照灯ユニット10Lが搭載される車両には、カメラ(図示せず)および制御部(図示せず)が設けられている。制御部は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどを有し、第2灯具ユニット28による光の照射を制御する。カメラは、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCOMS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子を有し、車両前方の映像を撮像して画像データを生成する。カメラは制御部に接続されており、生成された画像データは制御部に出力される。
【0055】
中間ビームスイッチがユーザによってオンにされると、中間ビームオン信号が制御部に出力され、制御部は中間ビームモードによる前照灯ユニットの照射光制御を開始する。中間ビームモード時は、制御部は、カメラから入力された画像データを解析して、例えば前照灯が点灯状態にある対向車などの前走車があるか否かを判定する。そのような前走車がある場合には、制御部は、解析して得られた前照灯の位置を利用してその対向車の位置を特定する。このように画像データを利用して前走車の位置を特定する技術は公知であるため説明を省略する。
【0056】
制御部は、特定した前走車の位置を利用して、第1分割配光パターンPA11〜第3分割配光パターンPA13のいずれかの形成領域に前走車が存在するか否かを判定する。いずれかの分割配光パターンの形成領域に前走車が存在する場合、制御部は、その分割配光パターンを形成する発光素子を消灯させる。なお、制御部は、発光素子を消灯させることに代えて、前走車が存在すると判定された分割配光パターンを形成する照射光の光度を、車両が存在しないと判定されたときよりも低くするよう発光素子の点灯を制御してもよい。
【0057】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る右前照灯ユニット100Rの構成を示す図である。図8では、理解を容易にするために右前照灯ユニット100Rを水平面で切断して上方から見た断面図を示している。右前照灯ユニット100Rは、車両(図示せず)進行方向に見て前面右側に配置される。なお、車両の前面左側には、左前照灯ユニット(図示せず。以下、「左前照灯ユニット100L」という)が設けられる。左前照灯ユニット100Lは右前照灯ユニット100Rと左右対称に構成されており、以下、右前照灯ユニット100Rについて説明することで左前照灯ユニット100Lの説明は省略する。また、第1の実施形態と同様の個所については同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
右前照灯ユニット100Rは、透光カバー20、ランプボディ22、エクステンション24、第1灯具ユニット26、第2灯具ユニット102、および第3灯具ユニット104を有する。ランプボディ22と透光カバー20とによって形成される灯室内にエクステンション24、第1灯具ユニット26、および第2灯具ユニット102、および第3灯具ユニット104が配置される。第2灯具ユニット102は、第3灯具ユニット104より車両外側に配置され、第1灯具ユニット26はさらにその車両外側に配置される。
【0059】
図9は、第2の実施形態に係る第2灯具ユニット102の構成を示す図である。図9では、第2灯具ユニット102を水平面で切断して上方から見た断面図を示している。第2灯具ユニット102は、ホルダ110、投影レンズ112、および第1光照射ユニット114を有する。
【0060】
投影レンズ112は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、その後側焦点面上に形成される被投影像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。ホルダ110は円環部を有し、この円環部に投影レンズ112が取り付けられる。
【0061】
第1光照射ユニット114は、第2発光素子116N2、第4発光素子116N4、第6発光素子116N6、第8発光素子116N8、第1導光部材120、第1リフレクタ122〜第4リフレクタ128を有する。後述するように、第3灯具ユニット104には、第1発光素子116N1、第3発光素子116N3、第5発光素子116N5、および第7発光素子116N7が設けられている。以下、第1発光素子116N1〜第8発光素子116N8を、必要に応じて「発光素子116」と総称する。発光素子116の各々は、発光チップ(図示せず)および薄膜を有する。発光チップは、1mm角程度の正方形の発光面を有する白色発光ダイオードによって構成される。なお、発光チップはこれに限られないことは勿論であり、例えばレーザダイオードなど略点状に面発光する他の素子状の光源であってもよい。薄膜はこの発光チップの発光面を覆うように設けられる。
【0062】
第1導光部材120には、投影レンズ112に向く外面に前面120eが設けられている。前面120eは、投影レンズ112の後方焦点の軌跡を描くよう後方に向けて円弧状に凹んでいる。第1導光部材120には、第1導光路120a〜第4導光路120dが設けられている。これらは、左から第1導光路120a〜第4導光路120dの順に並設されている。第1導光路120a〜第4導光路120dの各々は、前面120eに開口部を有する。第1導光路120a〜第3導光路120cは、前面120eでの開口部から後方に進むにしたがって横幅が広がるよう形成されている。第4導光路120dは、前面120eでの開口部から後方に進んでも横幅が略同一となるよう形成されている。以下、前面120eでの開口部を、単に「開口部」という。第1導光路120a〜第4導光路120dの各々における後方の開口部は、それぞれ第1リフレクタ122〜第4リフレクタ128によって塞がれている。
【0063】
第1導光路120aの左内面には、第2発光素子116N2が設けられている。第2導光路120bの下内面には、第4発光素子116N4が設けられている。第3導光路120cの下内面には、第6発光素子116N6が設けられている。第4導光路120dの右内面には、第8発光素子116N8が設けられている。
【0064】
図10は、図9のQ−Q断面図である。第2リフレクタ124は、第4発光素子116N4からの光を反射する反射面が内面に設けられている。この反射面は、第2導光路120bの開口部を通過する光の光束が上部ほど多くなるよう第4発光素子116N4からの光を反射する。
【0065】
なお、図10では示していないが、第1リフレクタ122は、第2発光素子116N2からの光を反射する反射面が内面に設けられている。この反射面は、第1導光路120aの開口部を通過する光の光束が上部ほど多くなるよう第2発光素子116N2からの光を反射する。第3リフレクタ126は、第6発光素子116N6からの光を反射する反射面が内面に設けられている。この反射面は、第3導光路120cの開口部を通過する光の光束が上部ほど多くなるよう第6発光素子116N6からの光を反射する。第4リフレクタ128は、第8発光素子116N8からの光を反射する反射面が内面に設けられている。この反射面は、第4導光路120dの開口部を通過する光の光束が上部ほど多くなるよう第8発光素子116N8からの光を反射する。これにより、第1導光路120a〜第4導光路120dの各々において、開口部上部を通過する光の光度を開口部下部よりも高めることができる。なお、第1リフレクタ122〜第4リフレクタ128は、第1導光路120a〜第4導光路120dの各々における開口部を通過する光の光束が略均一となるよう、対応する発光素子116からの光を反射してもよい。
【0066】
第1導光路120a〜第4導光路120dの内面は、全域にわたってアルミニウム材料または銀が蒸着され、光の反射率が高められている。したがって、第1導光路120a〜第4導光路120dの各々の内面は、それぞれの内部の光を反射する反射面として機能する。このように導光路内面に蒸着処理を施して光の反射率を高めることで、投影レンズ112に向けて導光路内面で反射する光の光度を増加させることができる。
【0067】
第2導光路120bは、上内面が開口部から投影レンズ112の光軸と平行に延在するよう形成される。このため、例えば矢印L1のように、第2導光路120b内部から上内面で反射した光は、その多くが投影レンズ112に到達することができる。一方、第2導光路120bは、下内面が開口部から下方に傾斜するよう形成される。このとき下面は、前方へ延長線を引いたとき投影レンズ112の上部に達する角度で傾斜している。このため、例えば矢印L2のように、第2導光路120b内部から下内面で反射した光は、その多くが投影レンズ112に到達することができない。このように、第2導光路120bの内面は、投影像の上部を形成するよう投影レンズ112に向けて反射する光よりも投影像の下部を形成するよう投影レンズ112に向けて反射する光の光度の方が大きくなるよう形成されている。このため、仮想鉛直スクリーン上において、投影像の下方に進むにしたがって、照射光の光度を増加させることができる。
【0068】
なお、図3では示していないが、第1導光路120a、第3導光路120c、および第4導光路120dの各々も、開口部から投影レンズ112の光軸と平行に上内面が延在し、開口部から下内面が下方に傾斜するよう設けられている。これらの導光路における下内面の傾斜角度は、第2導光路120bと同様である。
【0069】
また、第1導光路120a〜第4導光路120dの各々は、下内面と投影レンズ112の光軸とがなす角をθ1とし、投影レンズ112の光軸から上方向に傾斜する方向をプラス側とした場合、マイナスθ1より大きくθ1より小さい範囲内で、上内面と投影レンズ112の光軸との成す角度を変更してもよい。例えば、第1導光路120a〜第4導光路120dの各々は、開口部から上方にθ1未満の角度で上内面が傾斜していてもよい。また、第1導光路120a〜第4導光路120dの各々は、開口部から下方にマイナスθ1より大きい角度で上内面が傾斜していてもよい。これによっても、投影像の上部を形成するよう投影レンズ112に向けて反射する光よりも投影像の下部を形成するよう投影レンズ112に向けて反射する光の光度を大きくすることができる。
【0070】
図11は、第2の実施形態に係る第3灯具ユニット104の構成を示す図である。図11では、第3灯具ユニット104を水平面で切断して上方から見た断面図を示している。第3灯具ユニット104は、ホルダ110、投影レンズ112、および第2光照射ユニット134を有する。
【0071】
第2導光部材140には、投影レンズ112に向く外面に前面140eが設けられている。前面140eは、投影レンズ112の後方焦点の軌跡を描くよう後方に向けて円弧状に凹んでいる。第2導光部材140には、第1導光路140a〜第4導光路140dが設けられている。これらは、左から第1導光路140a〜第4導光路140dの順に並設されている。第1導光路140a〜第4導光路140dの各々は、前面140eに開口部を有する。以下、前面140eでの開口部を、単に「開口部」という。第1導光路140a〜第4導光路140d形状は、それぞれ第1導光路120a〜第4導光路120dと線対称に形成されている。
【0072】
第1導光路140a〜第4導光路140dの各々における後方の開口部は、それぞれ第1リフレクタ142〜第4リフレクタ148によって塞がれている。第1リフレクタ142〜第4リフレクタ148の形状は、それぞれ第1リフレクタ122〜第4リフレクタ148と線対称に形成されている。
【0073】
第1導光路140aの左内面には、第1発光素子116N1が設けられている。第2導光路120bの下内面には、第3発光素子116N3が設けられている。第3導光路120cの下内面には、第5発光素子116N5が設けられている。第4導光路140dの右内面には、第7発光素子116N7が設けられている。
【0074】
図12は、第2の実施形態に係る第2灯具ユニット102および第3灯具ユニット104を前方から見た図である。第1導光路120a〜第4導光路120dの各々は、開口部の高さが互いに同一となるよう形成されている。
【0075】
第1光照射ユニット114は、第2発光素子116N2から発せられ第1リフレクタ122によって反射された光のうち、第1導光路120aの開口部を通過するときの光によって第2被投影像を形成する。したがって、第2発光素子116N2、第1リフレクタ122、および第1導光路120aは、第2被投影像を形成する第2像形成手段として機能する。また、第1導光部材120は、第2発光素子116N2から発せられた光の一部を第1導光路120aによって遮って第2被投影像を形成するシェーディング部材として機能する。第1導光路120aの開口部は、投影レンズ112の光軸より上部が水平方向に膨らむことにより、T字型に形成されている。
【0076】
また、第1光照射ユニット114は、第4発光素子116N4から発せられ第2リフレクタ124によって反射された光のうち、第2導光路120bの開口部を通過するときの光によって第4被投影像を形成する。したがって、第4発光素子116N4、第2リフレクタ124、および第2導光路120bは、第4被投影像を形成する第4像形成手段として機能する。また、第1導光部材120は、第4発光素子116N4から発せられた光の一部を第2導光路120bによって遮って第4被投影像を形成するシェーディング部材として機能する。第2導光路120bの開口部は、投影レンズ112の光軸より上部が水平方向に膨らむことにより、T字型に形成されている。
【0077】
また、第1光照射ユニット114は、第6発光素子116N6から発せられ第3リフレクタ126によって反射された光のうち、第3導光路120cの開口部を通過するときの光によって第6被投影像を形成する。したがって、第6発光素子116N6、第3リフレクタ126、および第3導光路120cは、第6被投影像を形成する第6像形成手段として機能する。また、第1導光部材120は、第6発光素子116N6から発せられた光の一部を第3導光路120cによって遮って第6被投影像を形成するシェーディング部材として機能する。第3導光路120cの開口部は、投影レンズ112の光軸より上部が水平方向に膨らむことにより、T字型に形成されている。
【0078】
また、第1光照射ユニット114は、第8発光素子116N8から発せられ第4リフレクタ128によって反射された光のうち、第4導光路120dの開口部を通過するときの光によって第8被投影像を形成する。したがって、第8発光素子116N8、第4リフレクタ128、および第4導光路120dは、第8被投影像を形成する第8像形成手段として機能する。また、第1導光部材120は、第4導光路120dによって第8発光素子116N8から発せられた光の一部を遮って第8被投影像を形成するシェーディング部材として機能する。第4導光路120dの開口部は、投影レンズ112の光軸より上部の右側が水平方向に膨らむよう形成されている。
【0079】
第1導光路140a〜第4導光路140dの各々は、開口部の高さが同一となるよう形成されている。第2光照射ユニット134は、第1発光素子116N1から発せられ第1リフレクタ142によって反射された光のうち、第1導光路140aの開口部を通過するときの光によって第1被投影像を形成する。したがって、第1発光素子116N1、第1リフレクタ142、および第1導光路140aは、第1被投影像を形成する第1像形成手段として機能する。また、第2導光部材140は、第1発光素子116N1から発せられた光の一部を第1導光路140aによって遮って第1被投影像を形成するシェーディング部材として機能する。第1導光路140aの開口部は、投影レンズ112の光軸より上部の左側が水平方向に膨らむよう成されている。
【0080】
また、第2光照射ユニット134は、第3発光素子116N3から発せられ第2リフレクタ144によって反射された光のうち、第2導光路140bの開口部を通過するときの光によって第3被投影像を形成する。したがって、第3発光素子116N3、第2リフレクタ144、および第2導光路140bは、第1被投影像を形成する第3像形成手段として機能する。また、第2導光部材140は、第3発光素子116N3から発せられた光の一部を第2導光路140bによって遮って第3被投影像を形成するシェーディング部材として機能する。第2導光路140bの開口部は、投影レンズ112の光軸より上部が水平方向に膨らむことにより、T字型に形成されている。
【0081】
また、第2光照射ユニット134は、第5発光素子116N5から発せられ第3リフレクタ146によって反射された光のうち、第3導光路140cの開口部を通過するときの光によって第5被投影像を形成する。したがって、第5発光素子116N5、第3リフレクタ146、および第3導光路140cは、第5被投影像を形成する第5像形成手段として機能する。また、第2導光部材140は、第5発光素子116N5から発せられた光の一部を第3導光路140cによって遮って第5被投影像を形成するシェーディング部材として機能する。第3導光路140cの開口部は、投影レンズ112の光軸より上部が水平方向に膨らむことにより、T字型に形成されている。
【0082】
また、第2光照射ユニット134は、第7発光素子116N7から発せられ第4リフレクタ148によって反射された光のうち、第4導光路140dの開口部を通過するときの光によって第7被投影像を形成する。したがって、第7発光素子116N7、第4リフレクタ148、および第4導光路140dは、第7被投影像を形成する第7像形成手段として機能する。また、第2導光部材140は、第4導光路140dによって第7発光素子116N7から発せられた光の一部を遮って第7被投影像を形成するシェーディング部材として機能する。第4導光路140dの開口部は、投影レンズ112の光軸より上部が水平方向に膨らむことにより、T字型に形成されている。
【0083】
図13は、第2の実施形態に係る第2灯具ユニット102および第3灯具ユニット104によって仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンを示す図である。第1分割配光パターンPA21は、第1導光路140aの開口部などによって形成された第1被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。第2分割配光パターンPA22は、第1導光路120aの開口部などによって形成された第2被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。
【0084】
第3分割配光パターンPA23は、第2導光路140bの開口部などによって形成された第3被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。第4分割配光パターンPA24は、第2導光路120bの開口部などによって形成された第3被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。
【0085】
第5分割配光パターンPA25は、第3導光路140cの開口部などによって形成された第3被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。第6分割配光パターンPA26は、第3導光路120cの開口部などによって形成された第3被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。
【0086】
第7分割配光パターンPA27は、第4導光路140dの開口部などによって形成された第3被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。第8分割配光パターンPA28は、第4導光路120dの開口部などによって形成された第3被投影像が投影レンズ40によって前方に投影されて形成される。
【0087】
付加配光パターンPA2は、第1分割配光パターンPA21〜第8分割配光パターンPA28が集まり組み合わされて水平方向に長い帯状に形成される。左前照灯ユニット100Lにも第2灯具ユニット102、および第3灯具ユニット104が設けられる。付加配光パターンPA2は、右前照灯ユニット100Rの第2灯具ユニット102および第3灯具ユニット104からの照射光と、左前照灯ユニット100Lの第2灯具ユニット102および第3灯具ユニット104からの照射光とが重なり合って形成される。したがって、第2灯具ユニット102および第3灯具ユニット104の各々は、付加配光パターンPA2を形成する付加光源として機能する。なお、第2灯具ユニット102および第3灯具ユニット104は、いわゆるハイビーム用配光パターンを形成するハイビーム用光源として機能してもよい。
【0088】
図14(a)は、第4分割配光パターンPA24および第5分割配光パターンPA25の形状を示す図である。また、図14(b)は、第3分割配光パターンPA23および第6分割配光パターンPA26の形状を示す図である。また、14(c)は、第2分割配光パターンPA22および第7分割配光パターンPA27の形状を示す図である。図14(a)〜図14(c)に示すように、第2分割配光パターンPA22〜第7分割配光パターンPA27は、右下コーナー部および左下コーナー部が水平方向に膨らむよう形成されている。
【0089】
図14(d)は、第1分割配光パターンPA21の形状を示す図である。図14(d)に示すように、第1分割配光パターンPA21は、左下コーナー部が水平方向に膨らむよう形成されている。
【0090】
図14(e)は、第8分割配光パターンPA28の形状を示す図である。図14(e)に示すように、第8分割配光パターンPA28は、右下コーナー部が水平方向に膨らむように形成されている。
【0091】
図13に戻る。第1分割配光パターンPA21〜第8分割配光パターンPA28は、左右の縁部において隣り合う分割配光パターンと互いに重なり合い境界を形成する。したがって、第1分割配光パターンPA21〜第8分割配光パターンPA28の各々における左右の縁部は、互いに重なり合って境界を形成する第1縁部として利用される。第1分割配光パターンPA21〜第8分割配光パターンPA28の各々の下縁部は、付加配光パターンPA2の下縁部の一部を形成する。したがって、第1分割配光パターンPA21〜第8分割配光パターンPA28の各々の下縁部は、付加配光パターンPA1の外縁の一部を形成する第2縁部として利用される。
【0092】
上述のように、第1分割配光パターンPA21〜第8分割配光パターンPA28は、右下コーナー部または左下コーナー部が、この境界となる縁部よりも付加配光パターンPA2の下縁部に沿う方向、すなわち水平方向に膨らむよう形成されている。これにより、付加配光パターンPA2の下縁部に凹部が形成することを回避している。
【0093】
なお、第1分割配光パターンPA21〜第8分割配光パターンPA28は、H−H線より下方において、右下コーナー部または左下コーナー部が、この境界となる縁部よりも水平方向に膨らむよう形成されている。これにより、膨らむ部分が水平線より上方に及ぶことを回避することができ、水平線より上方においても各々の分割配光パターンの形状が影響を受けることを回避することができる。
【0094】
なお、右前照灯ユニット100Rおよび左前照灯ユニット100Lが搭載される車両(図示せず)に中間ビームモードが設けられている点は、上述の実施形態と同様である。第3の実施形態に係る中間ビームモードでは、第1分割配光パターンPA21〜第8分割配光パターンPA28のうち、対向車や先行車などの前走車が存在する分割配光パターンを形成する発光素子を消灯することにより、前走車の運転者に与えるグレアを抑制する。
【0095】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例を挙げる。
【0096】
ある変形例では、隣り合う分割配光パターンのうち一方のみが、そのコーナー部が付加配光パターンの外縁に沿う方向に膨らむよう形成される。これによっても、分割配光パターンのコーナー部が丸みを帯びることによって付加配光パターンの外縁における凹部の形成を抑制することができる。
【0097】
ある別の変形例では、水平方向に隣り合う一対の分割配光パターンの少なくとも一方の上部のコーナー部が水平方向に膨らむよう形成される。これにより、付加配光パターンの上縁部における凹部の形成を抑制することができる。
【0098】
ある別の変形例では、複数の分割配光パターンが上下方向に隣り合うよう形成される。隣り合う分割配光パターンの少なくとも一方のコーナー部は、付加配光パターンの外縁に沿う上下方向に膨らむよう形成される。これにより、複数の分割配光パターンが上下方向に隣り合う場合においても、付加配光パターンの外縁における凹部の形成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第1の実施形態に係る右前照灯ユニットの構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る第2灯具ユニットの斜視図であり、図3は、第1の実施形態に係る第2灯具ユニットの上面図である。
【図3】第1の実施形態に係る第2灯具ユニットの上面図である。
【図4】第1の実施形態に係る第2灯具ユニットの正面図である。
【図5】図3のP−P断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る第2灯具ユニットによって仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンを示す図である。
【図7】(a)は、第1分割配光パターンの形状を示す図であり、(b)は、第2分割配光パターンの形状を示す図であり、(c)は、第3分割配光パターンの形状を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る右前照灯ユニットの構成を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る第2灯具ユニットの構成を示す図である。
【図10】図9のQ−Q断面図である。
【図11】第2の実施形態に係る第3灯具ユニットの構成を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る第2灯具ユニットおよび第3灯具ユニットを前方から見た図である。
【図13】第2の実施形態に係る第2灯具ユニットおよび第3灯具ユニットによって仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンを示す図である。
【図14】(a)は、第4分割配光パターンおよび第5分割配光パターンの形状を示す図であり、(b)は、第3分割配光パターンおよび第6分割配光パターンの形状を示す図であり、(c)は、第2分割配光パターンおよび第7分割配光パターンの形状を示す図であり、図14(d)は、第1分割配光パターンの形状を示す図であり、(e)は、第8分割配光パターンの形状を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
10R 右前照灯ユニット、 28 第2灯具ユニット、 40 投影レンズ、 42 光源ユニット、 44 第1像形成ユニット、 46 第2像形成ユニット、 48 第3像形成ユニット、 50 第1リフレクタ、 52 第2リフレクタ、 54 第3リフレクタ、 62 第1発光素子、 64 第2発光素子、 66 第3発光素子、 70 第1シェーディング部材、 70a 反射面、 70b 縁部、 70c 上縁部、 72 第2シェーディング部材、 72a 反射面、 72b 縁部、 72c 上縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々による被投影像が投影されて形成される分割配光パターンが互いに隣接し、各々の分割配光パターンの縁部のうち第1縁部が互いに重なり合って境界を形成すると共に、各々の分割配光パターンが集合して形成されるべき集合配光パターンの外縁の一部を第2縁部が形成するよう、投影レンズの後方焦点面に各々が被投影像を形成する一対の像形成手段を備え、
前記一対の像形成手段の少なくとも一方は、分割配光パターンのうち第1縁部終端および第2縁部終端の双方に近接するコーナー部が集合配光パターンの外縁に沿う方向に膨らむよう、被投影像を形成することを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記一対の像形成手段の各々は、集合配光パターンの水平な外縁の一部を第2縁部が形成するよう被投影像を形成し、
前記一対の像形成手段の少なくとも一方は、前記コーナー部が水平方向に膨らむよう被投影像を形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記一対の像形成手段の各々は、集合配光パターンの下方の外縁の一部を第2縁部が形成するよう被投影像を形成することを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記一対の像形成手段の少なくとも一方は、前記コーナー部が水平線より下方において水平方向に膨らむよう被投影像を形成することを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記一対の像形成手段は、
第1光源と、第1光源が発する光の一部を遮って第1被投影像を形成するシェーディング部材と、
第2光源と、第2光源が発する光を反射して第2被投影像を形成する反射面と、
を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−118274(P2010−118274A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291396(P2008−291396)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】