説明

車両用前照灯

【課題】小型化、軽量化、省電力化、コスト軽減化。
【解決手段】この発明は、収束型反射面12を有する主リフレクタ2と、半導体型光源3と、投影レンズ4と、パラボラ型反射面16を有する補助リフレクタ5と、一体構造のシェード6および遮光部材7と、切替装置8と、を備える。切替装置8により、一体構造のシェード6および遮光部材7を第1位置と第2位置とに切替位置させることにより、ロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHPとを切り替えて車両の前方に照射することができる。この結果、この発明は、小型化、軽量化、省電力化、コスト軽減化、を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体型光源を光源とし、カットオフラインを有する配光パターン(ロービーム用配光パターン、すれ違い用配光パターン)とハイビーム用配光パターン(走行用配光パターン)とを切り替えて車両の前方に照射するプロジェクタタイプの車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、ロービーム用配光パターンを形成する第1光源ユニットと、ハイビーム用配光パターンを形成する第2光源ユニットと、から構成されているものである。第1光源ユニットは、プロジェクタタイプのランプユニットであって、光源(発光ダイオード)と、楕円系(収束系)のリフレクタと、シェードと、投影レンズと、を備えるものである。また、第2光源ユニットは、プロジェクタタイプのランプユニットであって、光源(発光ダイオード)と、楕円系(収束系)のリフレクタと、投影レンズと、を備えるものである。以下、従来の車両用前照灯の作用について説明する。第1光源ユニットの光源を点灯すると、光源からの光がリフレクタで反射し、反射光の一部がシェードでカットオフされて、斜めカットオフラインおよび水平カットフラインを有する配光パターンすなわちロービーム用配光パターンが形成され、ロービーム用配光パターンが投影レンズから上下左右反転して車両の前方に照射(投影)される。また、第2光源ユニットの光源を点灯すると、光源からの光がリフレクタで反射し、反射光がハイビーム用配光パターンとして投影レンズから上下左右反転して車両の前方に照射(投影)される。
【0003】
ところが、従来の車両用前照灯は、光源とリフレクタとシェードと投影レンズとを備える第1光源ユニットと、光源とリフレクタと投影レンズとを備える第2光源ユニットと、から構成されているものである。このために、従来の車両用前照灯は、部品点数が多く、かつ、ハイビーム用配光パターン用の第2光源ユニットを必要とし、その分、小型化、軽量化、省電力化、コスト軽減化に課題がある。
【0004】
ここで、光源として放電バルブ、ハロゲン電球、メタルハライドランプ、光源バルブを使用するこの種のプロジェクタタイプの車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。しかしながら、この従来の車両用前照灯は、光源として放電バルブ、ハロゲン電球、メタルハライドランプ、光源バルブを使用するので、光源からの光が基準軸(光軸、反射面軸、レンズ軸)に対して360°の方向に放射される。このために、この従来の車両用前照灯は、光源からの放射光を反射させる反射面(リフレクタ)を基準軸に対して360°の方向に設けるので、構成部品のスペースが大きくなり、前記の従来の車両用前照灯と同様に小型化に課題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2007−109493号公報
【特許文献2】特開2002−324413号公報
【特許文献3】特開2000−215717号公報
【特許文献4】実開昭63−111704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用前照灯では、ハイビーム用配光パターン用の第2光源ユニットを必要とするので、小型化、軽量化、省電力化、コスト軽減化に課題があるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、楕円面を基調とする収束型反射面を有する主リフレクタと、発光チップが前記収束型反射面の第1焦点もしくはその近傍に位置するように配置されている前記半導体型光源と、レンズ焦点が前記収束型反射面の第2焦点もしくはその近傍に位置する投影レンズと、前記主リフレクタと前記投影レンズとの間に配置されている補助リフレクタと、前記補助リフレクタに設けられていて、焦点が前記収束型反射面の第1焦点もしくはその近傍に位置し、前記収束型反射面では配光対象外となる前記半導体型光源からの放射光を、前記投影レンズを通さずに前記ハイビーム用配光パターンのスポット配光として反射させる放物面を基調とするパラボラ型反射面と、前記半導体型光源と前記投影レンズとの間であって、第1位置と第2位置との間を移動可能に配置されていて、前記第1位置に位置するときに、前記半導体型光源から放射されて前記収束型反射面で反射された反射光の一部をカットオフして前記カットオフラインを有する配光パターンを形成し、前記第2位置に位置するときに、前記半導体型光源から放射されて前記収束型反射面で反射された反射光で前記ハイビーム用配光パターンの基本配光を形成するシェードと、前記半導体型光源と前記補助リフレクタとの間であって、第1位置と第2位置との間を移動可能に配置されていて、前記第1位置に位置するときに、前記パラボラ型反射面に入射しようとする前記半導体型光源からの放射光を遮蔽し、前記第2位置に位置するときに、前記半導体型光源からの放射光を前記パラボラ型反射面に入射させる遮光部材と、前記シェードと前記遮光部材とを前記第1位置と前記第2位置とに切り替えて、前記カットオフラインを有する配光パターンと前記スポット配光を有する前記ハイビーム用配光パターンとに切り替える切替装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、半導体型光源が、発光チップの中心を通る法線が基準軸に対して直交するように、配置されていて、主リフレクタが、発光チップからの半球方向の放射光が収束型反射面に入射するように、配置されていて、切替装置が、半導体型光源を挟んで主リフレクタと反対側に配置されていている、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、シェードと遮光部材とが、一体構造をなし、発光チップの中心を通る法線および基準軸に対して直交する軸と平行であり、かつ、収束型反射面の第2焦点から収束型反射面の第1焦点寄りに位置する軸回りに、第1位置と第2位置との間を回転移動可能に配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、前記の課題を解決するための手段により、切替装置でシェードと遮光部材とを第1位置に切替位置させた状態のときに、発光チップからの放射光が収束型反射面で反射されて収束型反射面の第2焦点(投影レンズの焦点)付近に収束し、その反射収束光の一部がシェードでカットオフされ、そして残りの反射収束光がカットオフラインを有する配光パターンとして投影レンズから車両の前方に照射される。このとき、収束型反射面では配光対象外となる半導体型光源からの放射光が、遮光部材で遮蔽されて補助リフレクタのパラボラ方反射面に入射しない。また、切替装置でシェードと遮光部材とを第2位置に切替位置させた状態のときに、発光チップからの放射光であって収束型反射面で反射されて収束型反射面の第2焦点(投影レンズの焦点)付近に収束する反射収束光がシェードでカットオフされずにそのままハイビーム用配光パターンの基本配光として投影レンズから車両の前方に照射される。このとき、収束型反射面では配光対象外となる半導体型光源からの放射光が、遮光部材で遮蔽されずに補助リフレクタのパラボラ方反射面に入射して反射してハイビーム用配光パターンのスポット配光として投影レンズを通らずに車両の前方に照射される。このように、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、半導体型光源を光源とし、カットオフラインを有する配光パターンとハイビーム用配光パターンとを切り替えて車両の前方に照射することができる。
【0011】
その上、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、収束型反射面を有する主リフレクタと半導体型光源と投影レンズとパラボラ型反射面を有する補助リフレクタとシェードと遮光部材と切替装置とからなるので、従来の車両用前照灯と比較して、ハイビーム用配光パターン用の第2光源ユニットを必要とせず、部品点数が少なくて済み、その分、小型化、軽量化、コスト軽減化を図ることができる。
【0012】
しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、シェードでカットオフしていた反射収束光を利用してハイビーム用配光パターンの基本配光を形成し、かつ、収束型反射面では配光対象外となる半導体型光源からの放射光を補助リフレクタのパラボラ型反射面で有効利用してハイビーム用配光パターンのスポット配光を形成する。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、遠方の視認性に優れたハイビーム用配光パターンを得ることができ、かつ、カットオフラインを有する配光パターンとハイビーム用配光パターンとの切替において節度感が得られる。
【0013】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、前記の課題を解決するための手段により、半導体型光源を挟んで主リフレクタと反対側の部分は、不要な部分で部品が存在しない部分であり、この部分に切替装置を配置することにより、配光パターンを切り替えるバイファンクション型の車両用前照灯にも拘らず、さらに、車両用前照灯全体を小型化することができる。
【0014】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、シェードと遮光部材とを一体構造とすることにより、さらに、部品点数を軽減することができ、しかも、シェードと遮光部材とを切り替える切替装置が兼用できるので、さらに、部品点数を軽減することができ、その分、小型化、軽量化、省電力化、コスト軽減化を図ることができる。
【0015】
しかも、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、一体構造のシェードと遮光部材とを、収束型反射面の第2焦点(投影レンズのレンズ焦点)から収束型反射面の第1焦点寄りの位置において第1位置と第2位置との間を回転移動可能に配置するので、一体構造のシェードと遮光部材との回転角度が小さくても、シェードの収束型反射面の第2焦点(投影レンズのレンズ焦点)側の部分の回転移動量が大きくなる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、シェードを小さい回転角度で回転させても、反射収束光を確実にカットオフしたりあるいはカットオフせずに投影レンズ側に通したりすることができる。これにより、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、一体構造のシェードと遮光部材とを回転させる切替装置を、小型で安価な装置にすることができ、その分、小型化、コスト軽減化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施例のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。なお、この明細書および特許請求の範囲において、「上、下、前、後、左、右」とは、この発明にかかる車両用前照灯を車両(自動車)に取り付けた際の車両の「上、下、前、後、左、右」である。
【実施例】
【0017】
以下、この実施例における車両用前照灯の構成について説明する。図中、符号1は、この実施例における車両用前照灯(自動車用前照灯)ある。前記車両用前照灯1は、左側走行車線用の車両用前照灯である。なお、右側走行車線用の車両用前照灯は、左側走行車線用の前記車両用前照灯1の構成などにおいて、左右が逆となる。また、図2において、X、Y、Zは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、左右方向の水平軸であって、走行車線側、すなわち、この実施例において、左側Lが+方向であり、右側Rが−方向である。また、Y軸は、上下方向の鉛直軸であって、この実施例において、上側Uが+方向であり、下側Dが−方向である。さらに、Z軸(基準軸)は、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸であって、この実施例において、前側Fが+方向であり、後側Bが−方向である。
【0018】
前記車両用前照灯1は、図8に示すカットオフラインを有する配光パターンと、図9に示すハイビーム用配光パターン(走行用配光パターン)HPと、を車両(図示せず)の前方に照射するものである。図8に示すカットオフラインを有する配光パターンは、エルボー点Eから走行車線側(左側)にかけて上り勾配の斜めカットオフラインCL1と、斜めカットオフラインCL1から走行車線側にかけて水平な上水平カットオフラインCL2と、エルボー点Eから対向車線側(右側)にかけて水平な下水平カットオフラインCL3と、からなるカットオフライン(Zカットオフライン)を有する配光パターンたとえばロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LPである。なお、前記斜めカットオフラインCL1とスクリーンの水平線HL−HRとのなす角度は、約15°〜35°である。また、前記エルボー点Eは、上下垂直線VU−VD上であって、左右水平線HL−HRよりも下方のであり、前記斜めカットオフラインCL1と前記下水平カットオフラインCL3との交点である。
【0019】
前記車両用前照灯1は、主リフレクタ2と、半導体型光源3と、投影レンズ4と、補助リフレクタ5と、シェード6と、遮光部材7と、切替装置8と、ヒートシンク部材9と、図示しないランプハウジングおよびランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、から構成されている。
【0020】
前記主リフレクタ2および前記半導体型光源3および前記投影レンズ4および前記補助リフレクタ5および前記シェード6および前記遮光部材7および前記切替装置8および前記ヒートシンク部材9は、ランプユニットを構成する。前記ランプユニット3、4、5、6、7、8、9は、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室内に、たとえば光軸調整機構を介して水平軸回りに上下にかつ垂直軸回りに左右に光軸調整可能に配置されている。なお、前記灯室内には、前記ランプユニット2、3、4、5、6、7、8、9以外に、フォグランプ、コーナリングランプ、クリアランスランプ、ターンシグナルランプなどの他のランプユニットが配置されている場合がある。
【0021】
前記ヒートシンク部材9は、上面に固定面を有する前部10と、上部がフィン形状の後部11と、から構成されている。前記ヒートシンク部材9は、たとえば、熱伝導率が高い樹脂部材もしくは金属部材から構成されている。
【0022】
前記主リフレクタ2は、光不透過性でかつ熱伝導率が高い樹脂部材もしくは金属部材などから構成されていて、前記ヒートシンク部材9の前記前部10に固定されている。前記主リフレクタ2は、楕円面形状の4分の1の形状をなす。すなわち、前記主リフレクタ2の前方部分と下方部分とは、開口し、一方、前記主リフレクタ2の上方部分と後方部分と左右両方部分は、閉塞している。
【0023】
前記主リフレクタ2の閉塞部の凹内面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて収束型反射面12が設けられている。前記収束型反射面12は、楕円面を基調とした反射面、たとえば、回転楕円面や楕円を基本とした自由曲面(NURBS曲面)などの反射面(図4、図5の垂直断面が楕円面をなし、かつ、図示しない水平断面が放物面ないし変形放物面をなす反射面)からなる。このために、前記収束型反射面12は、第1焦点(主リフレクタ基本焦点)F1と第2焦点(水平断面上の焦線、すなわち、上(平面)から見て両端が前記投影レンズ4側に位置し中央が前記半導体型光源3側に位置するような湾曲した焦線)F2と、前記第1焦点F1と前記第2焦点F2とを結ぶ光軸と、を有する。前記収束型反射面12の前記光軸は、前記Z軸と一致(ほぼ一致も含む)する。
【0024】
前記半導体型光源3は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。前記半導体型光源3は、熱伝導性絶縁基板(たとえば、セラミック)の基板13と、前記基板13の一面(上面)に設けられている微小な矩形形状(正方形形状もしくは長方形形状)のLEDチップの発光チップ14と、前記発光チップ14を覆うほぼ半球形状(ドーム形状)の光透過部材(レンズ、封止樹脂部材)15と、からなるものである。
【0025】
前記半導体型光源3の前記基板13は、前記ヒートシンク部材9の前記前部10の固定面(上面)に固定されている。前記半導体型光源3の前記発光チップ14の中心Oは、前記収束型反射面12の前記第1焦点F1もしくはその近傍に位置する。前記X軸および前記Y軸および前記Z軸は、前記発光チップ14の中心Oを原点とする直交座標軸である。
【0026】
前記発光チップ14の中心Oを通る法線は、前記Y軸と一致(ほぼ一致も含む)する。前記法線のY軸は、前記Z軸(基準軸) に対して直交する。前記半導体型光源3は、前記発光チップ14の中心Oを通る法線が前記Z軸(基準軸) に対して直交するように、配置されている。これにより、前記発光チップ14の発光面は、前記Y軸の上方向であって、前記主リフレクタ2の前記収束型反射面12に向いている。また、前記発光チップ14が長方形形状の場合において、前記発光チップ14の長辺は、前記X軸と平行あるいは前記X軸に対して若干傾斜している。
【0027】
一方、前記主リフレクタ2は、前記発光チップ14からの半球方向、この例では、X軸およびZ軸を含む平面よりも上方方向の放射光L1が前記収束型反射面12に入射するように、配置されている。
【0028】
前記投影レンズ4は、非球面レンズの凸レンズである。前記投影レンズ4の前方側(外部側)は、曲率が大きい(曲率半径が小さい)凸非球面をなし、一方、前記投影レンズ4の後方側(前記半導体型光源3側)は、平非球面(平面)をなすものである。なお、前記投影レンズ4の後方側は、曲率が小さい(曲率半径が大きい)凸非球面をなすものであってもよい。このような投影レンズ4を使用することにより、前記投影レンズ4の焦点距離が小さくなるので、その分、この実施例における車両用灯具1の前記投影レンズ4の光軸(前記Z軸方向)の寸法がコンパクトとなる。
【0029】
前記投影レンズ4は、前側焦点(前記半導体型光源3側の焦点)および後側焦点(外部側の焦点)と、前記前側焦点と前記後側焦点とを結ぶ光軸とを有する。前記投影レンズ4の光軸は、前記収束型反射面12の光軸および前記Z軸と一致(ほぼ一致も含む)する。前記投影レンズ4の前側焦点は、レンズ焦点(物空間側の焦点面であるメリジオナル像面、投影レンズ基本焦点)FLである。前記投影レンズ4の前記レンズ焦点FLは、前記収束型反射面12の第2焦点F2もしくはその近傍に位置する。
【0030】
前記投影レンズ4は、図7に示すように、X軸およびZ軸を含む平面よりも下方の部分において、図示しないホルダやフレームなど(以下、単に「ホルダ」と称する)に固定されている。前記ホルダは、前記ヒートシンク部材9に固定されている。
【0031】
前記半導体型光源3から放射される光L1は、高い熱を持たないので、前記投影レンズ4として樹脂製のレンズを使用することができる。前記投影レンズ4は、この例ではアクリルを使用する。前記投影レンズ4は、前記カットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPおよび前記ハイビーム用配光パターンHPの基本配光WP1、WP2を車両の前方に照射(投影)するものである。
【0032】
前記補助リフレクタ5は、前記主リフレクタ2と同様に、光不透過性でかつ熱伝導率が高い樹脂部材もしくは金属部材などから構成されている。前記補助リフレクタ5は、前記主リフレクタ2と前記投影レンズ4との間に配置されていて、前記主リフレクタ2もしくは前記ヒートシンク部材9に固定されている。前記補助リフレクタ5は、放物面形状の一部の形状をなす。すなわち、前記補助リフレクタ5の前方部分と下方部分と後方部分とは、開口し、一方、前記補助リフレクタ5の上方部分と左右両方部分は、閉塞している。
【0033】
前記補助リフレクタ5の閉塞部の凹内面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていてパラボラ型反射面16が設けられている。前記パラボラ型反射面16は、放物面を基調とした反射面、たとえば、回転放物面を基本とした自由曲面(NURBS曲面)などの反射面からなる。このために、前記パラボラ型反射面16は、焦点(補助リフレクタ基本焦点)F3と、前記焦点F3を通る光軸と、を有する。
【0034】
前記パラボラ型反射面16の前記焦点F3は、前記収束型反射面12の第1焦点F1もしくはその近傍に位置する。また、前記パラボラ型反射面16の前記光軸は、前記Z軸に一致(ほぼ一致も含む)する。前記パラボラ型反射面16は、前記収束型反射面12では配光対象外となる前記半導体型光源3からの放射光L2を、前記投影レンズ4を通さずに前記ハイビーム用配光パターンHPのスポット配光SPとして反射させる反射面である。
【0035】
前記収束型反射面12では配光対象外となる前記半導体型光源3からの放射光L2とは、前記放射光L2が前記収束型反射面12に入射して反射しても前記投影レンズ4には入射せず、配光に寄与もしくは配光に使用されていない前記半導体型光源3からの放射光をいう。また、前記パラボラ型反射面16からの反射光L3は、図5、図7に示すように、X軸およびZ軸を含む平面より上方における前記投影レンズ4と前記補助リフレクタ5との間から車両の前方に照射される。
【0036】
前記シェード6は、光不透過性の部材からなり、平板形状をなす。なお、所望のカットオフラインが得られるのであれば、平板形状でなくとも良い。前記シェード6には、前記エルボー点E、前記カットオフラインCL1、CL2、CL3を形成するエッジ17が設けられている。
【0037】
前記遮光部材7は、前記シェード6と同様に、光不透過性の部材からなる。前記遮光部材7は、前記収束型反射面12からの反射光L4が前記投影レンズ4に入射するのを妨げないようにリング形状をなす。
【0038】
前記シェード6と前記遮光部材7とは、一体構造をなす。前記シェード6は、前記半導体型光源3と前記投影レンズ4との間であって、第1位置(図1、図2、図4に示す状態の位置)と第2位置(図3、図5に示す状態の位置)との間を移動可能に配置されている。一方、前記遮光部材7は、前記半導体型光源3と前記補助リフレクタ5との間であって、第1位置(図1、図2、図4に示す状態の位置)と第2位置(図3、図5に示す状態の位置)との間を移動可能に配置されている。
【0039】
一体構造をなす前記シェード6と前記遮光部材7とは、X軸(前記発光チップ14の中心Oを通る法線(Y軸)および基準軸(Z軸)に対して直交する軸)と平行であり、かつ、前記収束型反射面12の第2焦点F2からZ軸に対して後方向(前記収束型反射面12の第1焦点F1寄り)の位置に位置する軸18回りに、前記第1位置と前記第2位置との間を回転移動可能に配置されている。
【0040】
すなわち、前記シェード6と一体構造の前記遮光部材7の左右両側壁部には、軸部材19が固定されている。前記軸部材19が前記ホルダに回転可能に保持されている。前記軸部材19の軸心が前記軸18と一致する。
【0041】
前記シェード6は、前記第1位置に位置するときには、前記半導体型光源3から放射されて前記収束型反射面12で反射された反射光L4の一部L5をカットオフして前記エッジ17により前記カットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPを形成するものである。また、前記シェード6は、前記第2位置に位置するときには、前記半導体型光源3から放射されて前記収束型反射面12で反射された反射光L4、L5で前記ハイビーム用配光パターンHPの基本配光WP1、WP2を形成するものである。
【0042】
前記遮光部材7は、前記第1位置に位置するときには、前記パラボラ型反射面16に入射しようとする前記収束型反射面12では配光対象外となる前記半導体型光源3からの放射光L2を遮蔽するものである。また、前記遮光部材7は、前記第2位置に位置するときには、前記収束型反射面12では配光対象外となる前記半導体型光源3からの放射光L2を前記パラボラ型反射面16に入射させるものである。
【0043】
前記切替装置8は、一体構造の前記シェード6と前記遮光部材7とを前記第1位置と前記第2位置とに切り替えて、前記カットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPと前記スポット配光SPを有する前記ハイビーム用配光パターンHPとに切り替えるものである。前記切替装置8は、前記半導体型光源3を挟んで前記主リフレクタ2と反対側に配置されている。
【0044】
前記切替装置8は、図6に示すように、モータ20と、第1ギア21と、第2ギア22と、フェールセーフ用(復帰用)のスプリング23と、を備えるものである。前記モータ20は、前記ホルダもしくは前記ヒートシンク部材9に固定されている。
【0045】
前記第1ギア21は、前記モータ20の回転軸(駆動軸)に固定されている。前記第2ギア22は、前記軸部材19に固定されている。前記第1ギア21と前記第2ギア22とは、噛み合っている。前記第1ギア21の回転径は、前記第2ギア22の回転径よりも小さい。これにより、減速されている。
【0046】
前記スプリング23は、この例ではコイルスプリングである。前記スプリング23は、前記軸部材19に外から嵌合している。前記スプリング23の一端は、前記ホルダもしくは前記ヒートシンク部材9などの固定側部材に係合している。また、前記スプリング23の他端は、前記遮光部材7などの回転側部材に係合されている。なお、前記スプリング30は、コイルスプリング以外のスプリングでも良い。
【0047】
前記ホルダもしくは前記ヒートシンク部材9などの固定側部材と、前記遮光部材7などの回転側部材とには、一体構造をなす前記シェード6と前記遮光部材7とを前記第1位置と前記第2位置とにそれぞれ位置させるためのストッパ(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0048】
この実施例における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0049】
モータ20に通電していない状態においては、切替装置8のスプリング23のスプリング力により、図1、図2、図4に示すように、ストッパが作用して、一体構造のシェード6と遮光部材7とは、第1位置に位置している。
【0050】
この状態において、車両用前照灯1の半導体型光源3の発光チップ14を点灯発光させる。すると、半導体型光源3の発光チップ14から光L1、L2が放射される。この放射光の一部L1は、収束型反射面12に入射してこの収束型反射面12で反射され、この反射光L4、L5が収束型反射面8の第2焦点F2付近に収束(集中)する。第2焦点F2付近に収束(集中)する反射光の一部L5は、遮光部材7と一体構造であって第1位置に位置するシェード6によりカットオフされ、かつ、シェード6のエッジ17によりカットオフラインCL1、CL2、CL3が形成される。一方、シェード6でカットオフされなかった反射光L4は、そのまま投影レンズ4側に進む。
【0051】
そして、投影レンズ4側に進んだ反射光L4は、投影レンズ4を透過して、投影レンズ4のレンズ焦点FLにおける光の像を上下左右に反転させた光の像、すなわち、図8に示すカットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPとして車両の前方に投影されて路面などを照明する。
【0052】
このとき、収束型反射面12では配光対象外となる半導体型光源3からの放射光L2は、シェード6と一体構造であって第1位置に位置する遮光部材7で遮蔽されて補助リフレクタ5のパラボラ方反射面16に入射しない。この結果、図8に示すカットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPに、図9に示すハイビーム用配光パターンHPのスポット配光SPが照射されることはない。
【0053】
つぎに、切替装置8のモータ20に通電する。すると、モータ20が駆動して第1ギア21、第2ギア22がそれぞれ回転する。それに伴って、第2ギア22に固定されている軸部材19がスプリング23のスプリング力に抗して回転する。この軸部材19の回転により、この軸部材19に固定されている一体構造のシェード6と遮光部材7とが図1、図2、図4に示す第1位置から図3、図5に示す第2位置に回転する(図3中の実線矢印を参照)。ストッパが作用して、一体構造のシェード6と遮光部材7とは、第1位置から第2位置に切り替わって位置する。
【0054】
シェード6が第2位置に位置すると、今まで、シェード6にカットオフされていた収束型反射面12からの反射光L5がカットオフされなかった反射光L4と共にそのまま投影レンズ4側に進む。
【0055】
そして、投影レンズ4側に進んだ反射光L4、L5は、投影レンズ4を透過して、投影レンズ4のレンズ焦点FLにおける光の像を上下左右に反転させた光の像、すなわち、図9に示すハイビーム用配光パターンHPの基本配光WP1、WP2として車両の前方に投影されて路面などを照明する。この図9に示すハイビーム用配光パターンHPの基本配光WP1は、図9中の点線より下方の部分の配光であって、今までシェード6でカットオフされなかった反射光L4により形成される配光であって、図8に示すロービーム用配光パターンLPそのままを利用する。一方、この図9に示すハイビーム用配光パターンHPの基本配光WP2は、図9中の点線より上方の部分の配光であって、今までシェード6でカットオフされていた反射光L5を利用して形成される配光であって、基本配光パターンWP2すなわち図8に示すロービーム用配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3の上に配光されるものである。
【0056】
このとき、シェード6と一体構造の遮光部材7も第2位置に位置するので、今まで、遮光部材7で遮蔽されていた収束型反射面12では配光対象外となる半導体型光源3からの放射光L2が補助リフレクタ5のパラボラ方反射面16に入射してこのパラボラ型反射面16で反射する。この反射光L3は、図9に示すハイビーム用配光パターンHPのスポット配光SPとして投影レンズ4を通らずにこの投影レンズ4と補助リフレクタ5との間から車両の前方に照射される。このように、図9に示すハイビーム用配光パターンHPは、図8に示すロービーム用配光パターンLPのとき利用していなかった反射光L5と放射光(すなわち直射光)L2とを利用するので、十分の光量が得られる。
【0057】
図9に示すハイビーム用配光パターンHPのスポット配光SPの中央には、主光軸SZが存在する。この主光軸SZは、図8に示すロービーム用配光パターンLPのエルボー点Eよりも上側でスクリーンの水平線HL−HRと上下垂直線VU−VDとの交点もしくはその近傍に位置する。この主光軸SZを含むスポット配光SPは、ヒートシンク部材9に固定されている半導体型光源3と、主リフレクタ2もしくはヒートシンク部材9に固定されている補助リフレクタ5のパラボラ型反射面16と、により形成されるものであるから、主光軸SZを含むスポット配光SPの位置は、ずれることなく固定されている。この結果、ハイビーム用配光パターンHPの主光軸SZを含むスポット配光SPの部分すなわち重要な部分(ポイント)が変化しないので、狙った配光特性が配光設計通りに得られる。
【0058】
ここで、切替装置8のモータ20への通電を遮断する。すると、スプリング23のスプリング力により、第1ギア21、第2ギア22がそれぞれ逆回転する。それに伴って、第2ギア22に固定されている軸部材19が逆回転する。この軸部材19の逆回転により、この軸部材19に固定されている一体構造のシェード6と遮光部材7が図3、図5に示す第2位置から図1、図2、図4に示す第1位置に回転する。ストッパが作用して、一体構造のシェード6と遮光部材7とは、第2位置から第1位置に切り替わって位置する。
【0059】
また、一体構造のシェード6と遮光部材7とが第2位置に位置している状態または第1位置から第2位置に回転移動中のとき、切替装置8のモータ20への通電が遮断されると(電力供給が断たれると)、スプリング23のスプリング力により、一体構造のシェード6と遮光部材7が第1位置に復帰する。このために、図9に示すハイビーム用配光パターンHPから図8に示すロービーム用配光パターンLPに切り替えることができる。これにより、フェールセーフ機能が作用することとなる。
【0060】
以上のようにして、図8に示すロービーム用配光パターンLPと図9に示すハイビーム用配光パターンHPとが車両の前方に照射される。
【0061】
この実施例における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0062】
この実施例における車両用前照灯1は、切替装置8でシェード6と遮光部材7とを第1位置に切替位置させた状態のときに、半導体型光源3の発光チップ14からの放射光L1が収束型反射面12で反射されて収束型反射面12の第2焦点F2(投影レンズ4の焦点FL)付近に収束し、その反射収束光の一部L5が第1位置に位置するシェード6でカットオフされ、そして残りの反射収束光L4がカットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPとして投影レンズ4から車両の前方に照射される。このとき、収束型反射面12では配光対象外となる半導体型光源3からの放射光L2が、第1位置に位置する遮光部材7で遮蔽されて補助リフレクタ5のパラボラ方反射面16に入射しない。この結果、図8に示すカットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPに、図9に示すハイビーム用配光パターンHPのスポット配光SPが照射されることはない。
【0063】
また、切替装置8でシェード6と遮光部材7とを第2位置に切替位置させた状態のときに、半導体型光源3の発光チップ14からの放射光L1であって収束型反射面12で反射されて収束型反射面12の第2焦点F2(投影レンズ4の焦点FL)付近に収束する反射収束光L4、L5が第2位置に位置するシェード6でカットオフされずにそのままハイビーム用配光パターンHPの基本配光WP1、WP2として投影レンズ4から車両の前方に照射される。このとき、収束型反射面12では配光対象外となる半導体型光源3からの放射光L2が、第2位置に位置する遮光部材7で遮蔽されずに補助リフレクタ5のパラボラ方反射面16に入射して反射してハイビーム用配光パターンHPのスポット配光SPとして投影レンズ4を通らず投影レンズ4と補助リフレクタ5との間から車両の前方に照射される。
【0064】
このように、この実施例における車両用前照灯1は、半導体型光源3を光源とし、図8に示すロービーム用配光パターンLPと図9に示すハイビーム用配光パターンHPとを切り替えて車両の前方に照射することができる。
【0065】
その上、この実施例における車両用前照灯1は、収束型反射面12を有する主リフレクタ2と半導体型光源3と投影レンズ4とパラボラ型反射面16を有する補助リフレクタ5とシェード6と遮光部材7と切替装置8とからなるので、従来の車両用前照灯と比較して、ハイビーム用配光パターン用の第2光源ユニットを必要とせず、部品点数が少なくて済み、その分、小型化、軽量化、コスト軽減化を図ることができる。
【0066】
しかも、この実施例における車両用前照灯1は、シェード6でカットオフしていた反射収束光L5を利用してハイビーム用配光パターンHPの基本配光WP2を形成し、かつ、収束型反射面12では配光対象外となる半導体型光源3からの放射光L2を補助リフレクタ5のパラボラ型反射面16で有効利用してハイビーム用配光パターンHPのスポット配光SPを形成する。この結果、この実施例における車両用前照灯1は、遠方の視認性に優れたハイビーム用配光パターンHPを得ることができ、かつ、カットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHPとの切替において節度感が得られる。
【0067】
また、この実施例における車両用前照灯1は、光源として光放射方向が半球方向の半導体型光源3を使用するので、この半導体型光源3からの半球方向の放射光を入射するように主リフレクタ2を配置すれば、半導体型光源3の放射光の半球方向と反対側の半球方向側の部分は、不要な部分で部品が存在しない部分である。このために、この実施例における車両用前照灯1は、半導体型光源3を挟んで主リフレクタ2と反対側の部分に切替装置8を配置することにより、配光パターンを切り替えるバイファンクション型の車両用前照灯にも拘らず、さらに、車両用前照灯全体を小型化することができる。
【0068】
さらに、この実施例における車両用前照灯1は、シェード6と遮光部材7とを一体構造とすることにより、さらに、部品点数を軽減することができ、しかも、シェード6と遮光部材7とを切り替える切替装置8が兼用できるので、さらに、部品点数を軽減することができ、その分、小型化、軽量化、省電力化、コスト軽減化を図ることができる。
【0069】
しかも、この実施例における車両用前照灯1は、一体構造のシェード6と遮光部材7とを、収束型反射面12の第2焦点F2(投影レンズ4のレンズ焦点FL)からZ軸方向に対して後側の位置(収束型反射面12の第1焦F1点寄りの位置)において第1位置と第2位置との間を回転移動可能に配置するので、一体構造のシェード6と遮光部材7との回転角度が小さくても、シェード6の収束型反射面12の第2焦点F2(投影レンズ4のレンズ焦点FL)側の部分、すなわち、ロービーム用配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3を形成するエッジ17の部分の回転移動量が大きくなる。この結果、この実施例における車両用前照灯1は、シェード6を小さい回転角度で回転させても、反射収束光L5を確実にカットオフしたりあるいはカットオフせずに投影レンズ4側に通したりすることができる。これにより、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯は、一体構造のシェード6と遮光部材7とを回転させる切替装置8を、小型で安価な装置にすることができ、その分、小型化、コスト軽減化が図られる。
【0070】
なお、前記の実施例においては、ロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHPとを切り替えて車両の前方に照射するものである。ところが、この発明おいては、切り替える配光パターンを、ロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHPとの2切替のほかに、他の配光パターンを1個もしくは複数個加えて、3個以上の配光パターンを切り替えるようにしても良い。また、切り替える配光パターンとして、ロービーム用配光パターンLPとハイビーム用配光パターンHPと以外の配光パターン、たとえば、ミッドビーム用配光パターン、高速道路用配光パターン、フォグランプ用配光パターンなど配光パターンであっても良い。
【0071】
また、前記の実施例においては、ロービーム用配光パターンLPのカットオフラインが斜めカットオフラインCL1と、上水平カットオフラインCL2と、下水平カットオフラインCL3とからなるZカットオフラインである。ところが、この発明においては、カットオフラインとして、Zカットオフライン以外のカットオフライン、たとえば、単に水平なカットオフライン、あるいは、エルボー点を境に、走行車線側の斜めカットオフラインと、対向車線側の水平カットオフラインとからなるカットオフラインでも良い。
【0072】
さらに、前記の実施例においては、左側走行車線用の車両用前照灯1について説明する。ところが、この発明においては、右側走行車線用の車両用前照灯についても適用することができる。
【0073】
さらにまた、前記の実施例においては、半導体型光源3の発光チップ14の中心Oを通る法線がY軸と一致(ほぼ一致も含む)し、かつ、半導体型光源3の発光チップ14の発光面がY軸の上方向に向くように、半導体型光源3が配置されていて、一方、主リフレクタ2が半導体型光源3からの半球方向の放射光を入射するようにX軸およびZ軸を含む平面に対して上方に配置されているものである。ところが、この発明においては、半導体型光源3の発光チップ14の発光面の向きをY軸の上方向以外の方向、たとえば、下方向や右方向や肥大方向や斜め方向に変えても良い。この場合、主リフレクタ2の配置方向も半導体型光源3の発光チップ14の発光面の向きに合わせて変える必要がある。すなわち、主リフレクタ2を、半導体型光源3からの半球方向の放射光を入射するように、配置する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明にかかる車両用前照灯の実施例を示す要部の斜視図である。
【図2】同じく、一体構造のシェードと遮光部材とが第1位置に位置するときの状態を示す一部断面斜視図である。
【図3】同じく、一体構造のシェードと遮光部材とが第2位置に位置するときの状態を示す一部断面斜視図である。
【図4】同じく、一体構造のシェードと遮光部材とが第1位置に位置するときの光路を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図5】同じく、一体構造のシェードと遮光部材とが第2位置に位置するときの光路を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図6】同じく、一体構造のシェードと遮光部材と切替装置を示す斜視図である。
【図7】同じく、パラボラ型反射面からの反射光の光路を示す投影レンズと補助リフレクタとの正面図である。
【図8】同じく、ロービーム用配光パターンを示す説明図である。
【図9】同じく、ハイビーム用配光パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1 車両用前照灯
2 主リフレクタ
3 半導体型光源
5 補助リフレクタ
6 シェード
7 遮光部材
8 切替装置
9 ヒートシンク部材
10 前部
11 後部
12 収束型反射面
13 基板
14 発光チップ
15 光透過部材
16 パラボラ型反射面
17 エッジ
18 軸
19 軸部材
20 モータ
21 第1ギア
22 第2ギア
23 スプリング
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
HL−HR スクリーンの左右の水平線
X X軸(水平軸)
Y Y軸(鉛直軸)
Z Z軸(基準軸)
R 右側
L 左側
U 上側
D 下側
F 前側
B 後側
E エルボー点
CL1 斜めカットオフライン
CL2 上水平カットオフライン
CL3 下水平カットオフライン
LP ロービーム用配光パターン
HP ハイビーム用配光パターン
SP スポット配光
WP1、WP2 基本配光
O 発光チップの中心
F1 収束型反射面の第1焦点
F2 収束型反射面の第2焦点
F3 パラボラ型反射面の焦点
FL レンズの基準焦点
L1 半導体型光源からの放射光
L2 収束型反射面では配光対象外となる半導体型光源からの放射光
L3 パラボラ型反射面からの反射光
L4 シェードにカットオフされない収束型反射面からの反射光
L5 第1位置に位置するシェードにカットオフされかつ第2位置に位置するシェードにカットオフされない収束型反射面からの反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体型光源を光源とし、カットオフラインを有する配光パターンとハイビーム用配光パターンとを切り替えて車両の前方に照射するプロジェクタタイプの車両用前照灯において、
楕円面を基調とする収束型反射面を有する主リフレクタと、
発光チップが前記収束型反射面の第1焦点もしくはその近傍に位置するように配置されている前記半導体型光源と、
レンズ焦点が前記収束型反射面の第2焦点もしくはその近傍に位置する投影レンズと、
前記主リフレクタと前記投影レンズとの間に配置されている補助リフレクタと、
前記補助リフレクタに設けられていて、焦点が前記収束型反射面の第1焦点もしくはその近傍に位置し、前記収束型反射面では配光対象外となる前記半導体型光源からの放射光を、前記投影レンズを通さずに前記ハイビーム用配光パターンのスポット配光として反射させる放物面を基調とするパラボラ型反射面と、
前記半導体型光源と前記投影レンズとの間であって、第1位置と第2位置との間を移動可能に配置されていて、前記第1位置に位置するときに、前記半導体型光源から放射されて前記収束型反射面で反射された反射光の一部をカットオフして前記カットオフラインを有する配光パターンを形成し、前記第2位置に位置するときに、前記半導体型光源から放射されて前記収束型反射面で反射された反射光で前記ハイビーム用配光パターンの基本配光を形成するシェードと、
前記半導体型光源と前記補助リフレクタとの間であって、第1位置と第2位置との間を移動可能に配置されていて、前記第1位置に位置するときに、前記パラボラ型反射面に入射しようとする前記半導体型光源からの放射光を遮蔽し、前記第2位置に位置するときに、前記半導体型光源からの放射光を前記パラボラ型反射面に入射させる遮光部材と、
前記シェードと前記遮光部材とを前記第1位置と前記第2位置とに切り替えて、前記カットオフラインを有する配光パターンと前記スポット配光を有する前記ハイビーム用配光パターンとに切り替える切替装置と、
を備える、ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記半導体型光源は、前記発光チップの中心を通る法線が基準軸に対して直交するように、配置されていて、
前記主リフレクタは、前記発光チップからの半球方向の放射光が前記収束型反射面に入射するように、配置されていて、
前記切替装置は、前記半導体型光源を挟んで前記主リフレクタと反対側に配置されていている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記シェードと前記遮光部材とは、一体構造をなし、前記発光チップの中心を通る法線および基準軸に対して直交する軸と平行であり、かつ、前記収束型反射面の第2焦点から前記収束型反射面の第1焦点寄りに位置する軸回りに、前記第1位置と前記第2位置との間を回転移動可能に配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−153333(P2010−153333A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333183(P2008−333183)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】