説明

車両用前照灯

【課題】第1および第2灯具ユニットを有する灯具本体が、エイミング機構を介してランプボディに傾動可能に支持されてなる車両用前照灯において、灯具本体の組付作業性を十分に確保するとともに、そのエイミング操作を精度良く行えるようにした上で、灯具本体の支持強度を高める。
【解決手段】車幅方向に所定間隔をおいて配置された第1および第2灯具ユニット30、40の間にエイミング支点Oが配置されるとともに、その第1灯具ユニット30側に左右エイミング点Bが配置された灯具本体16に対して、その第2灯具ユニット40側でかつエイミング支点Oと左右エイミング点Bとを結ぶ直線L上の位置に、弾性部材60を設ける。この弾性部材60は、直線Lに沿って延びる軸部60Aと1対の弾性片部60B1、60B2とを備えた構成とし、各弾性片部60B1、60B2を上下方向に撓ませた状態でランプボディ12の係合用凹部12aに挿入される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、第1および第2灯具ユニットを有する灯具本体が、エイミング機構を介してランプボディに傾動可能に支持されてなる車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用前照灯として、車幅方向に所定間隔をおいて配置された第1および第2灯具ユニットを有する灯具本体が、エイミング機構を介してランプボディに傾動可能に支持された構成のものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用前照灯のエイミング機構として、第1灯具ユニットと第2灯具ユニットとの間にエイミング支点が位置し、このエイミング支点の下方に上下エイミング点が位置するとともにエイミング支点の側方に左右エイミング点が位置する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−135605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載されているように、灯具レイアウト上の要請等から、エイミング支点が第1灯具ユニットと第2灯具ユニットとの間に配置されることも少なくない。このような構成において、エイミング支点に関して第1灯具ユニットと左右同じ側に左右エイミング点が配置される場合には、灯具本体における第2灯具ユニットの部分が片持ち支持の状態となり、その支持強度が不十分なものとなる。このため、車体振動等により、第2灯具ユニットからの照射光がぶれたり、灯具本体が破損したりするおそれがある。
【0006】
そこで、上記「特許文献1」に記載された車両用前照灯においては、その灯具本体における、エイミング支点に関して第2灯具ユニットと左右同じ側でかつエイミング支点と左右エイミング点とを結ぶ直線上の位置に、この直線に沿って延びる振止めピンが設けられるとともに、この振止めピンがランプボディに形成された摺動溝に嵌着された構成とすることにより、灯具本体の支持強度を高める工夫がなされている。
【0007】
しかしながら、このように単に振止めピンを設けただけでは、次のような問題がある。
【0008】
すなわち、灯具本体およびランプボディの各々の寸法精度が十分に確保されていないと、剛体としての振止めピンをランプボディの摺動溝に嵌着することが困難となり、このため灯具本体の組付作業性が低下してしまう、という問題がある。
【0009】
また、エイミング操作により、灯具本体を左右方向に傾動させると、これに伴って振止めピンがランプボディの摺動溝に対して摺動することとなるが、振止めピンは摺動溝に嵌着されているので、その摺動抵抗を適正範囲内の大きさに制御することが容易でない。このため、エイミング操作を精度良く行うことができず、場合によっては摺動部分に負荷がかかり振止めピンが破損してしまう、という問題もある。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、第1および第2灯具ユニットを有する灯具本体が、エイミング機構を介してランプボディに傾動可能に支持されてなる車両用前照灯において、灯具本体の組付作業性を十分に確保するとともに、そのエイミング操作を精度良く行うことができるようにした上で、灯具本体の支持強度を高めることができる車両用前照灯を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、従来の振止めピンに代えて、所定の弾性部材を用いた構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る車両用前照灯は、
第1および第2灯具ユニットを有する灯具本体が、エイミング機構を介してランプボディに傾動可能に支持されてなる車両用前照灯において、
上記第1および第2灯具ユニットが、車幅方向に所定間隔をおいて配置されており、
上記エイミング機構における、上記灯具本体を傾動させる際のエイミング支点が、上記第1灯具ユニットと上記第2灯具ユニットとの間に位置しており、上記灯具本体を左右方向に傾動させる際の左右エイミング点が、上記エイミング支点に関して上記第1灯具ユニットと左右同じ側に位置しており、
上記灯具本体における、上記エイミング支点に関して上記第2灯具ユニットと左右同じ側でかつ上記エイミング支点と上記左右エイミング点とを結ぶ直線上の位置に、該灯具本体を上記ランプボディに係合させるための弾性部材が設けられており、
上記ランプボディに、上記弾性部材と係合する係合用凹部が、所定の上下幅で前後方向に延びるようにして形成されており、
上記弾性部材が、上記直線に沿って延びる軸部と、この軸部から延びる弾性片部とを備えてなり、上記弾性片部を上下方向に撓ませた状態で上記ランプボディの係合用凹部に挿入されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「第1灯具ユニット」および「第2灯具ユニット」は、車幅方向に所定間隔をおいて配置されていれば、上下方向に関しては、同じ高さに配置されていてもよいし、異なる高さに配置されていてもよい。
【0014】
上記「第1灯具ユニット」および「第2灯具ユニット」の各々の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットやパラボラ型の灯具ユニット等が採用可能である。
【0015】
上記「灯具本体」は、第1および第2灯具ユニットを有するものであれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。その際、この「灯具本体」は、第1および第2灯具ユニットを、これらと別体で形成されたユニット支持部材で支持する構成となっていてもよいし、このユニット支持部材が、第1および第2灯具ユニットの一方または両方の構成部材と一体で形成された構成となっていてもよい。
【0016】
上記エイミング機構における、灯具本体を上下方向に傾動させる際の上下エイミング点の具体的な位置については、特に限定されるものではない。
【0017】
上記「弾性部材」は、直線に沿って延びる軸部と、この軸部から延びる弾性片部とを備えた構成であって、かつ、その弾性片部を上下方向に撓ませた状態でランプボディの係合用凹部に挿入される構成となっていれば、これら軸部および弾性片部の各々の具体的な構成は特に限定されるものではく、また、これら軸部および弾性片部以外の部分の具体的な構成についても特に限定されるものではない。また、この「弾性部材」は、灯具本体と別体で形成されていてもよいし、灯具本体と一体で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用前照灯は、車幅方向に所定間隔をおいて配置された第1灯具ユニットと第2灯具ユニットとの間にエイミング支点が配置されるとともに、エイミング支点に関して第1灯具ユニットと左右同じ側に左右エイミング点が配置された構成となっているが、灯具本体における、エイミング支点に関して第2灯具ユニットと左右同じ側でかつエイミング支点と左右エイミング点とを結ぶ直線上の位置には、この灯具本体をランプボディに係合させるための弾性部材が設けられているので、この弾性部材において灯具本体をランプボディと係合させることができ、これにより灯具本体の支持強度を高めることができる。このため、車体振動等により、第2灯具ユニットからの照射光がぶれたり、灯具本体が破損したりするおそれを最小限に抑えることができる。
【0019】
しかも、ランプボディには、弾性部材と係合する係合用凹部が、所定の上下幅で前後方向に延びるようにして形成されており、一方、弾性部材は、上記直線に沿って延びる軸部と、この軸部から延びる弾性片部とを備えており、その弾性片部を上下方向に撓ませた状態でランプボディの係合用凹部に挿入されるように構成されているので、灯具本体およびランプボディの各々の寸法精度が十分に確保されていない場合であっても、弾性部材を容易にランプボディと係合させることができ、これにより灯具本体の組付作業性を十分に確保することができる。
【0020】
また、このような弾性部材を用いることにより、灯具本体のエイミング操作を精度良く行うことができる。すなわち、エイミング操作により、灯具本体を左右方向に傾動させると、これに伴って弾性部材がランプボディの係合用凹部内において摺動することとなるが、弾性部材は、その弾性片部を上下方向に撓ませた状態でランプボディの係合用凹部に挿入されているので、その摺動抵抗を適正範囲内の大きさに制御することが容易に可能となる。
【0021】
このように本願発明によれば、第1および第2灯具ユニットを有する灯具本体が、エイミング機構を介してランプボディに傾動可能に支持されてなる車両用前照灯において、灯具本体の組付作業性を十分に確保するとともに、そのエイミング操作を精度良く行うことができるようにした上で、灯具本体の支持強度を高めることができる。
【0022】
しかも、本願発明に係る車両用前照灯のように、灯具本体が弾性部材を介してランプボディに係合する構成とすることにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0023】
すなわち、上記従来の車両用前照灯のように、剛体としての振止めピンがランプボディの摺動溝に嵌着された構成とした場合には、エイミング操作により振止めピンがランプボディの摺動溝内において摺動すると、この摺動によりランプボディが削られて粉状片が発生しやすくなるが、本願発明のように弾性部材を用いることにより、粉状片の発生を効果的に抑制することができる。そしてこれにより、灯具の外観不良が発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0024】
上記構成において、弾性部材の具体的な構成が特に限定されないことは上述したとおりであるが、その弾性片部として、軸部から上下両側へ向けて断面略C字状に延びるようにして1対形成された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0025】
すなわち、エイミング操作あるいはレベリング操作により、灯具本体を上下方向に傾動させると、これに伴って弾性部材が係合用凹部内において上記直線を中心にして回転することとなるが、その1対の弾性片部が断面略C字状に延びているので、係合用凹部内における弾性部材の回転が円滑に行われるようにすることができる。
【0026】
ここで、「上下両側へ向けて断面略C字状に延びる」とは、1対の弾性片部を全体として見たときに、その鉛直断面形状が略C字状になっていることを意味するものである。
【0027】
この場合において、弾性部材の軸部を、1対の弾性片部に囲まれた空間の略中央に位置する構成とした上で、この軸部から前後方向に延びる板状の連結部を介して1対の弾性片部の基端部と繋がる構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0028】
すなわち、1対の弾性片部の基端部が軸部と直接繋がる構成とした場合に比して、各弾性片部をより長く形成することができるので、その撓み変形を一層無理なく行わせることができる。また、断面略C字状に形成された1対の弾性片部の外周面の中心軸線を上記直線に、より近づけることができるので、エイミング操作あるいはレベリング操作により、灯具本体を上下方向に傾動させたときの、弾性部材の係合用凹部内における回転が、より円滑に行われるようにすることができる。そしてこれにより、本願発明の作用効果を一層高めることができる。
【0029】
上記構成において、ランプボディの係合用凹部における上面壁および下面壁に、前後方向に延びる複数のリブ状突起部が、左右方向に所定間隔をおいて形成された構成とすれば、弾性部材とランプボディとの係合を確実に図った上で、両者の接触面積を小さくすることができる。そしてこれにより、弾性部材の摺動抵抗を適正範囲内の大きさに制御することが一層容易に可能となる。
【0030】
上記構成において、第2灯具ユニットの重量が、第1灯具ユニットの重量よりも大きい値に設定されている場合には、車体振動等により、第2灯具ユニットからの照射光がぶれたり、灯具本体が破損したりするおそれが高いので、本願発明の構成を採用することが特に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用前照灯を示す正面図
【図2】図1のII部詳細図
【図3】図2のIII 方向矢視図
【図4】図2のIV−IV線断面図
【図5】上記実施形態の作用を示す、図4の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0033】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用前照灯を示す正面図である。
【0034】
同図に示すように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、車両前端部右側に設けられる灯具であって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、第1および第2灯具ユニット30、40を有する灯具本体16が、エイミング機構18を介してランプボディ12に傾動可能に支持された構成となっている。なお、上記灯室内には、第1および第2灯具ユニット30、40を囲むパネル20が設けられている。
【0035】
そして、この車両用前照灯10においては、第2灯具ユニット40からの照射光により、ロービーム用配光パターンを形成するとともに、この第2灯具ユニット40からの照射光に第1灯具ユニット30からの照射光を追加することにより、ハイビーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0036】
第1および第2灯具ユニット30、40は、車幅方向に所定間隔をおいて配置されている。その際、車幅方向内側に配置された第2灯具ユニット40は、車幅方向外側に配置された第1灯具ユニット30に対して、斜め下方に位置するようにして配置されている。
【0037】
エイミング機構18における、灯具本体16を傾動させる際のエイミング支点Oと、灯具本体16を上下方向に傾動させる際の上下エイミング点Aおよび灯具本体16を左右方向に傾動させる際の左右エイミング点Bとは、エイミング支点Oを基準にしてL字状に配置されている。
【0038】
その際、エイミング支点Oは、車幅方向に関して、第1灯具ユニット30と第2灯具ユニット40との間(より正確には、第1灯具ユニット30の光軸Ax1と第2灯具ユニット40の光軸Ax2との間)に位置している。また、上下エイミング点Aは、エイミング支点Oの略真下に位置している。そして、左右エイミング点Bは、エイミング支点Oに関して第1灯具ユニット30と左右同じ側(すなわち車幅方向外側)に位置している。より具体的には、この左右エイミング点Bは、第1灯具ユニット30の車幅方向外側の端部近傍において、エイミング支点Oと略同じ高さに位置している。
【0039】
第1灯具ユニット30は、その光軸Ax1がエイミング支点Oと左右エイミング点Bとを結ぶ直線Lよりも僅かに上方に位置するように配置されている。一方、第2灯具ユニット40は、その光軸Ax2が直線Lよりもかなり下方に位置しており、直線Lは、この第2灯具ユニット40よりも上方側を通っている。
【0040】
第1灯具ユニット30は、光源バルブ32と、この光源バルブ32からの光を前方へ反射させるリフレクタ34とを備えたパラボラ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0041】
光源バルブ32は、ハロゲンバルブであって、リフレクタ34の後頂部に形成された開口部に挿入固定されている。リフレクタ34の反射面は、光源バルブ32の発光中心近傍の点を焦点とする放物面を基準面として形成された複数の反射素子34sを有している。そして、これら複数の反射素子34sにより、光源バルブ32からの光を拡散偏向反射させるようになっている。
【0042】
第2灯具ユニット40は、光源バルブ42と、この光源バルブ42からの光を前方へ反射させるリフレクタ44と、このリフレクタ44の前方において光軸Ax2上に配置された投影レンズ46と、この投影レンズ46とリフレクタ44との間に配置されたシェード48とを備えたプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0043】
光源バルブ42は、ハロゲンバルブであって、リフレクタ44の後頂部に形成された開口部に挿入固定されている。リフレクタ44の反射面は、光源バルブ32の発光中心近傍の点を第1焦点とする楕円面で構成されており、光源バルブ42からの光を光軸Ax2寄りに反射させるようになっている。シェード48は、その上端縁が投影レンズ46の後側焦点を通るように配置されており、リフレクタ44からの反射光の一部を遮蔽して投影レンズ46から出射する上向きの光を除去するようになっている。
【0044】
このプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成された第2灯具ユニット40は、パラボラ型の灯具ユニットとして構成された第1灯具ユニット30に比して、かなり大きい重量を有するものとなっている。
【0045】
灯具本体16は、第1および第2灯具ユニット30、40と、これらを支持するユニット支持部材50とからなっている。
【0046】
ユニット支持部材50は、FRP製であって、第1灯具ユニット30のリフレクタ34と一体で形成されている。一方、第2灯具ユニット40は、このユニット支持部材50にネジ締め等により固定支持されている。
【0047】
このユニット支持部材50におけるエイミング支点Oの位置には、ランプボディ12に固定支持された支点ピン22の球状先端部と係合するナット52が装着されている。また、このユニット支持部材50における上下エイミング点Aの位置には、ランプボディ12に固定支持されたレベリング用アクチュエータ24の出力ロッド24aと係合するナット54が装着されている。さらに、このユニット支持部材50における左右エイミング点Bの位置には、ランプボディ12に支持されたエイミングスクリュウ26と係合するナット56が装着されている。
【0048】
そして、このユニット支持部材50における、エイミング支点Oに関して第2灯具ユニットと左右同じ側(すなわち車幅方向内側)でかつエイミング支点Oと左右エイミング点Bとを結ぶ直線L上の位置には、灯具本体16をランプボディ12に係合させるための弾性部材60が設けられている。その際、この弾性部材60は、第2灯具ユニット40の光軸Ax2に関して、エイミング支点Oと略左右対称の位置に配置されている。
【0049】
一方、ランプボディ12には、弾性部材60を係合させるための係合用凹部12aが、所定の上下幅で前後方向に延びるようにして形成されている。
【0050】
図2は、図1のII部詳細図である。また、図3は、図2のIII 方向矢視図であり、図4は、図2のIV−IV線断面図である。
【0051】
これらの図にも示すように、弾性部材60は、ナイロン樹脂製であって、直線Lに沿って延びる軸部60Aと、この軸部60Aから上下両側へ向けて断面略C字状に延びる1対の弾性片部60B1、60B2と、軸部60Aの一端部から車幅方向外側へ延びる取付部60Cとからなっている。
【0052】
この弾性部材60において、その軸部60Aは、1対の弾性片部60B1、60B2に囲まれた空間の略中央に位置しており、この軸部60Aから後方へ向けて板状に延びる連結部60Dを介して1対の弾性片部60B1、60B2の基端部と繋がっている。その際、この軸部60Aは、縦長の略矩形状に形成されている。各弾性片部60B1、60B2は、その基端部が軸部60Aと略同一の肉厚で形成されており、その基端部から先端部へ向けて徐々に肉厚が薄くなるように形成されている。連結部60Dは、その肉厚が軸部60Aの肉厚よりも厚くなっている。そして、この弾性部材60においては、その軸部60Aおよび連結部60Dで十分な剛性を確保した上で、各弾性片部60B1、60B2をできるだけ長尺にして、その撓み変形が生じやすくなるようにしている。
【0053】
この弾性部材60は、その取付部60Cにおいて、ユニット支持部材50に固定されている。この固定は、ユニット支持部材50の上端部における車幅方向内側の端部に、弾性部材60の取付部60Cを、車両後方側からネジ62で締め付けることにより行われている。
【0054】
その際、ユニット支持部材50には、弾性部材60の取付部60Cを受けるためのフランジ部50aと、ネジ62を締め付けるためのボス部50bと、このボス部50bから延びる位置決めリブ50cとが形成されている。一方、弾性部材60の取付部60Cは、これらボス部50aおよび位置決めリブ50cを覆うような形状に形成されている。そしてこれにより、弾性部材60の取付部60Cがユニット支持部材50にネジ締めされたとき、弾性部材60がユニット支持部材50に対して位置決めされた状態で固定支持されるようになっている。
【0055】
弾性部材60は、その取付部60Cがユニット支持部材50に固定された状態において、その軸部60Aおよび1対の弾性片部60B1、60B2が、ユニット支持部材50から車幅方向内側へ突出するようになっている。
【0056】
その際、上記直線Lは、図3に示すように、平面視においては車幅方向に延びてはおらず、車幅方向内側が車両前方側へ変位するように僅かに傾斜した方向に延びている。そして、弾性部材60における軸部60A、連結部60Dおよび1対の弾性片部60B1、60B2は、車幅方向に延びる取付部60Cに対して、車両前方側へ僅かに折れ曲がるようにして形成されている。
【0057】
弾性部材60とランプボディ12との係合は、弾性部材60の各弾性片部60B1、60B2を上下方向に撓ませた状態でランプボディ12の係合用凹部12aに挿入することにより行われている。
【0058】
このランプボディ12における係合用凹部12aの上面壁には、前後方向に延びる2つのリブ状突起部12b1が、左右方向に所定間隔をおいて形成されている。一方、この係合用凹部12aの下面壁には、前後方向に延びる2つのリブ状突起部12b2が、左右方向に所定間隔をおいて形成されている。その際、これら各リブ状突起部12b2は、各リブ状突起部12b1と対向する位置に形成されている。
【0059】
この係合用凹部12aは、ランプボディ12を成形する際の金型抜き勾配の分だけ、その上面壁および下面壁間の間隔が車両後方側へ向けて徐々に狭くなるようにテーパ状に形成されている。その際、この係合用凹部12aの上面壁に形成された2つのリブ状突起部12b1と、その下面壁に形成された2つのリブ状突起部12b2との間隔は、係合用凹部12aの前端位置において、弾性部材60における1対の弾性片部60B1、60B2の最大上下幅と略同じ値となるように設定されている。
【0060】
すなわち、図4において単品で示す弾性部材60を、ランプボディ12の係合用凹部12aに挿入すると、その1対の弾性片部60B1、60B2は、同図に2点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで撓んだ状態で、ランプボディ12と係合するようになっている。
【0061】
図5は、図4をさらに拡大して示す図である。
【0062】
同図に示すように、エイミング操作により、灯具本体16を左右方向に傾動させると、これに伴って弾性部材60がランプボディ12の係合用凹部12a内において略車両前後方向に摺動することとなる。
【0063】
その際、係合用凹部12aはテーパ状に形成されているので、弾性部材60が同図に実線で示す位置から後方側へ変位すると、同図に1点鎖線で示すように、1対の弾性片部60B1、60B2の撓み量が大きくなる一方、前方側へ変位すると、同図に2点鎖線で示すように、1対の弾性片部60B1、60B2の撓み量が小さくなる。
【0064】
同図に破線で示す弾性部材60は、同図に2点鎖線で示す位置まで前方側へ変位した弾性部材60を、さらに回転させたときの状態を示すものであり、レベリング用アクチュエータ24の駆動により、灯具本体16を下向きに傾動させたときのものである。
【0065】
以上詳述したように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、車幅方向に所定間隔をおいて配置された第1灯具ユニット30と第2灯具ユニット40との間にエイミング支点Oが配置されるとともに、エイミング支点Oに関して第1灯具ユニット30と左右同じ側に左右エイミング点Bが配置された構成となっているが、灯具本体16における、エイミング支点Oに関して第2灯具ユニット40と左右同じ側でかつエイミング支点Oと左右エイミング点Bとを結ぶ直線L上の位置には、この灯具本体16をランプボディ12に係合させるための弾性部材60が設けられているので、この弾性部材60において灯具本体16をランプボディ12と係合させることができ、これにより灯具本体16の支持強度を高めることができる。このため、車体振動等により、第2灯具ユニット40からの照射光がぶれたり、灯具本体16が破損したりするおそれを最小限に抑えることができる。
【0066】
しかも、ランプボディ12には、弾性部材60と係合する係合用凹部12aが、所定の上下幅で前後方向に延びるようにして形成されており、一方、弾性部材60は、直線Lに沿って延びる軸部60Aと、この軸部60Aから延びる1対の弾性片部60B1、60B2とを備えており、その各弾性片部60B1、60B2を上下方向に撓ませた状態でランプボディ12の係合用凹部12aに挿入されるように構成されているので、灯具本体16およびランプボディ12の各々の寸法精度が十分に確保されていない場合であっても、弾性部材60を容易にランプボディ12と係合させることができ、これにより灯具本体16の組付作業性を十分に確保することができる。
【0067】
また、このような弾性部材60を用いることにより、灯具本体16のエイミング操作を精度良く行うことができる。すなわち、エイミング操作により、灯具本体16を左右方向に傾動させると、これに伴って弾性部材60がランプボディ12の係合用凹部12a内において摺動することとなるが、弾性部材60は、その各弾性片部60B1、60B2を上下方向に撓ませた状態でランプボディ12の係合用凹部12aに挿入されているので、その摺動抵抗を適正範囲内の大きさに制御することが容易に可能となる。
【0068】
このように本実施形態によれば、第1および第2灯具ユニット30、40を有する灯具本体16が、エイミング機構18を介してランプボディ12に傾動可能に支持されてなる車両用前照灯10において、灯具本体16の組付作業性を十分に確保するとともに、そのエイミング操作を精度良く行うことができるようにした上で、灯具本体16の支持強度を高めることができる。
【0069】
しかも、本実施形態に係る車両用前照灯10のように、灯具本体16が弾性部材60を介してランプボディ12に係合する構成とすることにより、次のような作用効果を得ることができる。
【0070】
すなわち、上記従来の車両用前照灯のように、剛体としての振止めピンがランプボディの摺動溝に嵌着された構成とした場合には、エイミング操作により振止めピンがランプボディの摺動溝内において摺動すると、この摺動によりランプボディが削られて粉状片が発生しやすくなるが、本実施形態のように弾性部材60を用いることにより、粉状片の発生を効果的に抑制することができる。そしてこれにより、灯具の外観不良が発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0071】
その際、本実施形態の弾性部材60は、その1対の弾性片部60B1、60B2が、軸部60Aから上下両側へ向けて断面略C字状に延びるようにして形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0072】
すなわち、エイミング操作またはレベリング操作により、灯具本体16を上下方向に傾動させると、これに伴って弾性部材60が係合用凹部12a内において直線Lを中心にして回転することとなるが、その1対の弾性片部60B1、60B2が断面略C字状に延びているので、係合用凹部12a内における弾性部材60の回転が円滑に行われるようにすることができる。
【0073】
しかも、この弾性部材60は、その軸部60Aが、1対の弾性片部60B1、60B2に囲まれた空間の略中央に位置しており、この軸部60Aから前後方向に延びる板状の連結部60Dを介して1対の弾性片部60B1、60B2の基端部と繋がっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0074】
すなわち、1対の弾性片部60B1、60B2の基端部が軸部60Aと直接繋がる構成とした場合に比して、各弾性片部60B1、60B2をより長く形成することができるので、その撓み変形を一層無理なく行わせることができる。また、断面略C字状に形成された1対の弾性片部60B1、60B2の外周面の中心軸線を直線Lに、より近づけることができるので、エイミング操作により、灯具本体16を上下方向に傾動させたときの、弾性部材60の係合用凹部12a内における回転がより円滑に行われるようにすることができる。そしてこれにより、本実施形態の作用効果を一層高めることができる。
【0075】
また本実施形態においては、ランプボディ12の係合用凹部12aにおける上面壁および下面壁に、前後方向に延びる複数のリブ状突起部12b1、12b2が、左右方向に所定間隔をおいて形成されているので、弾性部材60とランプボディ12との係合を確実に図った上で、両者の接触面積を小さくすることができる。そしてこれにより、弾性部材60の摺動抵抗を適正範囲内の大きさに制御することが一層容易に可能となる。
【0076】
ところで、本実施形態に係る車両用前照灯10のように、第2灯具ユニット40が、プロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されており、パラボラ型の灯具ユニットとして構成された第1灯具ユニット30に比して、かなり大きい重量を有している場合には、車体振動等により、第2灯具ユニット40からの照射光がぶれたり、ユニット支持部材50が破損したりするおそれが高いので、本実施形態の構成を採用することが特に効果的である。
【0077】
本実施形態に係る車両用前照灯10は、エイミング支点Oと上下エイミング点Aおよび左右エイミング点Bとが、エイミング支点Oを基準にしてL字状に配置された構成となっているので、灯具本体に対する上下方向のエイミングと左右方向のエイミングとを、それぞれ1回のエイミング操作により行うことが可能となり、これによりエイミング操作を簡単に行うことができる。しかも、エイミング操作により、灯具本体16を左右方向に傾動させたとき、弾性部材60をランプボディ12の係合用凹部12a内において略車両前後方向に無理なく摺動させることができる。また、エイミング操作またはレベリング操作により、灯具本体16を上下方向に傾動させたとき、弾性部材60をランプボディ12の係合用凹部12a内において無理なく回転させることができる。
【0078】
上記実施形態においては、弾性部材60が、ナイロン樹脂製であるものとして説明したが、弾性を有する素材であれば、ナイロン樹脂以外の素材で弾性部材60を構成することももちろん可能である。
【0079】
上記実施形態においては、FRP製のユニット支持部材50にナイロン樹脂製の弾性部材60が設けられているものとして説明したが、ユニット支持部材50を、弾性を有する素材(例えばポリカーボネート樹脂)で構成し、このユニット支持部材50と一体で弾性部材60を形成することも可能である。
【0080】
上記実施形態においては、弾性部材60が、その軸部60Aから連結部60Dを介して上下両側へ向けて断面略C字状に延びるようにして形成された1対の弾性片部60B1、60B2を備えているものとして説明したが、これ以外にも、例えば、軸部60Aから断面略S字状に延びるようにして形成された1対の弾性片部を備えた構成、あるいは、軸部60Aから断面渦巻状に延びるようにして形成された単一の弾性片部を備えた構成等を採用することも可能である。
【0081】
上記実施形態においては、第1灯具ユニット30の光源バルブ32および第2灯具ユニット40の光源バルブ42が、いずれもハロゲンバルブであるものとして説明したが、これらを放電バルブや発光ダイオード等で構成することも可能である。
【0082】
上記実施形態においては、上下エイミング点Aがエイミング支点Oの略真下に配置されているものとして説明したが、これ以外の位置(例えば左右エイミング点Bの下方等)に配置される場合においても、灯具本体16における第2灯具ユニット40の部分が片持ち支持の状態となり、その支持強度が不十分なものとなる。したがって、上記実施形態の構成を採用することにより、灯具本体16の支持強度を高めるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0083】
10 車両用前照灯
12 ランプボディ
12a 係合用凹部
12b1、12b2 リブ状突起部
14 透光カバー
16 灯具本体
18 エイミング機構
20 パネル
22 支点ピン
24 レベリング用アクチュエータ
24a 出力ロッド
26 エイミングスクリュウ
30 第1灯具ユニット
32、42 光源バルブ
34、44 リフレクタ
34s 反射素子
40 第2灯具ユニット
46 投影レンズ
48 シェード
50 ユニット支持部材
50a フランジ部
50b ボス部
50c 位置決めリブ
52、54、56 ナット
60 弾性部材
60A 軸部
60B1、60B2 弾性片部
60C 取付部
60D 連結部
62 ネジ
A 上下エイミング点
Ax1 第1灯具ユニットの光軸
Ax2 第2灯具ユニットの光軸
B 左右エイミング点
L 直線
O エイミング支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2灯具ユニットを有する灯具本体が、エイミング機構を介してランプボディに傾動可能に支持されてなる車両用前照灯において、
上記第1および第2灯具ユニットが、車幅方向に所定間隔をおいて配置されており、
上記エイミング機構における、上記灯具本体を傾動させる際のエイミング支点が、上記第1灯具ユニットと上記第2灯具ユニットとの間に位置しており、上記灯具本体を左右方向に傾動させる際の左右エイミング点が、上記エイミング支点に関して上記第1灯具ユニットと左右同じ側に位置しており、
上記灯具本体における、上記エイミング支点に関して上記第2灯具ユニットと左右同じ側でかつ上記エイミング支点と上記左右エイミング点とを結ぶ直線上の位置に、該灯具本体を上記ランプボディに係合させるための弾性部材が設けられており、
上記ランプボディに、上記弾性部材と係合する係合用凹部が、所定の上下幅で前後方向に延びるようにして形成されており、
上記弾性部材が、上記直線に沿って延びる軸部と、この軸部から延びる弾性片部とを備えてなり、上記弾性片部を上下方向に撓ませた状態で上記ランプボディの係合用凹部に挿入されている、ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
上記弾性片部が、上記軸部から上下両側へ向けて断面略C字状に延びるようにして1対形成されている、ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項3】
上記弾性部材の軸部が、上記1対の弾性片部に囲まれた空間の略中央に位置しており、該軸部から前後方向に延びる板状の連結部を介して上記1対の弾性片部の基端部と繋がっている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用前照灯。
【請求項4】
上記ランプボディの係合用凹部における上面壁および下面壁に、前後方向に延びる複数のリブ状突起部が、左右方向に所定間隔をおいて形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用前照灯。
【請求項5】
上記第2灯具ユニットの重量が、上記第1灯具ユニットの重量よりも大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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