説明

車両用前照灯

【課題】部品点数の増加やコストアップを招くことなく、車両のバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間からの光の漏れを防ぐことができる車両用前照灯を提供すること。
【解決手段】ハウジング2とその前面開口部を覆うレンズ3によって画成される灯室4内に少なくとも光源を収容して構成され、前記レンズ3の前記ハウジング2との結合部近傍に外方に向けて突設された凸条3bが車両の側面視でバンパ22とフェンダパネルの見切り部の隙間を横切るよう配置された車両用前照灯1において、前記レンズ3に形成された凸条3bの少なくとも前記バンパ22と前記フェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分の高さを他の部位の高さよりも低くする。例えば、レンズ3の凸条3bのバンパ22とフェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分を切除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲がフェンダパネル、バンパ、フード等の複数の部品によって囲まれた状態で車両前部の左右に取り付けられる車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両前部の左右に配置される前照灯(ヘッドランプ)は、車体への取付部を有するハウジングとその前面開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に光源やリフレクタ等を収容して構成され、その周囲がフェンダパネル、バンパ、フード等の複数の部品によって囲まれた状態で取り付けられる。
【0003】
斯かる前照灯においては、ハウジングとレンズとの結合は、ハウジングの前面開口部の周縁に形成された環状溝に、レンズの周縁部にハウジング側に向かって突出するように形成された挿入部を嵌合することによってなされている。この場合、ハウジングとレンズの結合部には高い水密性を保つ必要があるため、両者の結合部をシールゴムによってシールしたり、ホットメルト接着剤によって結合部を接着することが行われている。
【0004】
ハウジングとレンズの結合部をシールリングによってシールする場合には、ハウジングの環状溝とレンズの挿入部との間に、環状溝の全周に亘って連続した断面略U字状のシールゴムを介装することによってハウジングとレンズの結合部に高い水密性を確保している。
【0005】
ホットメルト接着剤によってハウジングとレンズとの結合部を接着する場合には、ハウジングの環状溝とレンズの挿入部との隙間にホットメルト接着剤を充填してハウジングとレンズとの結合部に高い水密性を確保している。この方法を採用する場合、レンズ側の結合部となる挿入部の基端部分には、レンズを取り巻くように外方に向かって突出する環状の凸条が形成されている。この凸条は、レンズ周縁の剛性の向上、ハウジングの環状溝に充填されたホットメルト接着剤の漏れ出し防止、レンズへのコーティング剤の塗布範囲の境界の明示、コーティング剤のホットメルト接着剤への混入防止等の諸機能を有している。
【0006】
而して、前照灯は、前述のようにその周囲がフェンダパネル、バンパ、フード等の複数の部品によって囲まれた状態でハウジングが車体に固定されることによって車両前部の左右にそれぞれ取り付けられるが、ハウジングとレンズの結合部は、車両のバンパとフェンダパネルの裏側に配置される。ここで、レンズに凸条が形成されている場合には、この凸条が車両の側面視でバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間を横切る。
【0007】
ところで、日中に前照灯のレンズに太陽光が入射すると、この太陽光がレンズ内を全反射しながら凸条まで達し、この凸条から外部に出射した光がバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間から漏れて光ることがある。この場合、レンズの凸条が車両のバンパやフェンダパネルの裏側に配置されていれば問題はないが、前述のようにレンズの凸条が車両の側面視でバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間を横切るよう配置されていると、この凸条から出射する光がバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間から漏れて光るために車両の商品性が損なわれるという問題がある。この場合、光る凸条部分以外の部位はバンパやフェンタの影で暗い状態にあるため、光る凸条部分が更に目立つために車両の商品性が著しく損なわれる。
【0008】
上記問題を解決するために特許文献1には、車両のフロントエンドアッパパネルの車幅方向端部をラジエータサポートに固定するブラケットに遮蔽板を一体に形成し、該遮蔽板によってフロントエンドアッパパネルとフェンダパネルの境界の隙間から外部に漏れる光を遮蔽する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公平7−035827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1において提案された構成では、ブラケットをボルトで固定する必要があるために部品点数が増え、製造コストが高くなるという問題がある。又、バンパやフェンダパネルから遮蔽物を一体に延設することも考えられるが、製造の関係から形状的に遮蔽物を設けられない場合がある。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数の増加やコストアップを招くことなく、車両のバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間からの光の漏れを防ぐことができる車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその前面開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して構成され、前記レンズの前記ハウジングとの結合部近傍に外方に向けて突設された凸条が車両の側面視でバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間を横切るよう配置された車両用前照灯において、前記レンズに形成された凸条の少なくとも前記バンパと前記フェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分の高さを他の部位の高さよりも低くしたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記レンズに形成された凸条の少なくとも前記バンパと前記フェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分を切除したことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ハウジングの前記レンズとの結合部近傍に延設部を前記レンズの凸条を越えるように形成し、該延設部を前記バンパと前記フェンダパネルの見切り部の隙間に対向する部分に配置したことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記延設部を前記レンズに突設された凸条に係合するクリップで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、レンズに形成された凸条の少なくともバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分の高さを他の部位の高さよりも低くしたため、この部分からの光の出射が抑えられ、バンパとフェンダパネルの見切り部の隙間からの光の漏れが防がれて車両の外観品質が高められる。そして、このような効果は遮光部品等を別途設けることなく得られるため、部品点数の増加やコストアップを招くことがない。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、レンズに形成された凸条の少なくともバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分を切除したため、この部分からの光の出射が一層効果的に抑えられる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、光を透過しない材料で構成されたハウジングに形成された延設部によってレンズの凸条のバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分が外側から覆われるため、バンパとフェンダパネルの見切り部の隙間からの光の漏れがハウジングの延設部によって防がれて車両の外観品質が高められる。そして、そして、このような効果は遮光部品等を別途設けることなく得られるため、部品点数の増加やコストアップを招くことがない。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、ハウジングに既設のクリップを利用してバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間からの漏れを防ぐことができるため、部品点数の増加とそれに伴うによるコストアップを防ぐことができる。又、クリップによってレンズとハウジングとの結合剛性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両用前照灯を備えた車両前部の側面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る車両用前照灯の側断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】本発明の別実施形態を示す図1のB−B線断面図である。
【図6】本発明の別実施形態を示す図1のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る車両用前照灯を備えた車両前部の側面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は本発明に係る車両用前照灯の側断面図、図4は図1のB−B線断面図である。
【0023】
図1に示すように、車両20の前部左右には本発明に係る前照灯(図1には一方のみ示す)1がその周囲をフェンダパネル21、バンパ22、フード23等の複数の部品によって囲まれた状態で取り付けられている。
【0024】
ここで、本発明に係る前照灯(ヘッドランプ)1は、図3に示すように、車体への取付部を有するハウジング2とその前面開口部を覆う透明なレンズ(アウタレンズ)3によって画成される灯室4内に、ハロゲンランプ等の光源5、該光源5から出射される光を反射させて車両前方(図3の左方)に向けるリフレクタ6、光源5からの直射光の一部を遮るシェード7、リフレクタ6によって反射した光を集光するインナレンズ8、該インナレンズ8の周囲に配されるエクステンション9等の部品を収容して構成されている。
【0025】
上記ハウジング2は、ポリプロピレン(PP)樹脂の射出成形によって一体成形される不透明(光と透過しない)の樹脂成形品であって、その前面開口部の周縁には車両前方に向かって横U字状に開く環状溝2aが形成されている。
【0026】
又、前記レンズ3は、ポリカーボネイト(PC)樹脂の射出成形によって一体成形される透明な樹脂成形品であって、その後面開口部の周縁にはハウジング側(車両後方)に向かって突出する挿入部3aが形成されている。そして、レンズ3の挿入部3aの基端部分には、当該レンズ3を取り巻くように外方に向かって突出する環状の凸条3bが一体に形成されている。
【0027】
而して、ハウジング2の前面開口部の周縁に形成された前記環状溝2aにレンズ3の後面開口部周縁に形成された前記挿入部3aを車両前方から嵌め込み、ハウジング2の環状溝2aとレンズ3の挿入部3aとの隙間にホットメルト接着剤10を充填することによってハウジング2とレンズ3が結合一体化され、両者の結合部にはホットメルト接着剤10によって高い水密性が確保されている。この場合、レンズ3の挿入部3aの基端部に形成された凸条3bは、レンズ3の後面開口部周縁の剛性の向上、ハウジング2の環状溝2aに充填されたホットメルト接着剤10の漏れ出し防止、レンズ3へのコーティング剤の塗布範囲の境界の明示、コーティング剤のホットメルト接着剤10への混入防止等の諸機能を有している。尚、図2には一方の前照灯1のみを示すが、他方の前照灯1の基本構成は同じであるため、これについての図示は省略する。
【0028】
以上のように構成された前照灯1は、前述のようにその周囲が車両20のフェンダパネル21、バンパ22、フード23等の複数の部品によって囲まれた状態でハウジング2が車体に固定されることによって車両20の前部左右にそれぞれ取り付けられるが、ハウジング2とレンズ3の結合部は、車両のフェンダパネル21とバンパ22の裏側に配置される。つまり、前照灯1の側方に、フェンダパネル21とバンパ22の見切り部が、前照灯1側の端縁から前輪を収納するホイールハウス側の端縁まで配置されている。
【0029】
ところで、図1及び図2に示すように、車両20の両側部(図1及び図2には左側部のみ図示)には側面視でフェンダパネル21とバンパ22の見切り部に隙間δ(図2参照)が形成されるが、各前照灯1のフェンダパネル21とバンパ22の裏側に配置されるハウジング2とレンズ3の結合部において、レンズ3に形成された凸条3bは車両20の側面視でフェンダパネル21とバンパ22の見切り部の隙間δを横切るように配置されている。つまり、フェンダパネル21とバンパ22の見切り部は、その一部がそれらの裏側の車体部品が見える隙間δとなっており、該隙間δ部分にハウジング2とレンズ3の結合部が配置されている。そして、凸条3bは、車両20の側面視でフェンダパネル21とバンパ22の見切り部の角度(見切り線の角度)と異なる角度で形成され、車両20の側面視で見切り部と交差するように配置されている。
【0030】
従って、日中に前照灯1のレンズ3に太陽光が入射すると、この太陽光がレンズ3内を全反射しながら凸条3bまで達してこの凸条3bが光り、この凸条3bから外部に出射した光がフェンダパネル21とバンパ22の見切り部の隙間δから漏れて光って見えることがあり、これによって車両20の商品性が損なわれるという問題があることは前述の通りである。
【0031】
上記問題を解決するため、本実施の形態では、図4に示すように、前照灯1のレンズ3に形成された凸条3bの少なくともフェンダパネル21とバンパ22の見切り部の隙間δを横切る部分の高さを他の部位の高さよりも低くしている。つまり、見切り部の隙間δの裏側に位置する部分(隙間δから見える部分)の凸条3bに関し、その突出高さを他の部位の高さよりも低くしている。このようにすれば、レンズ3の凸条3bの他の部位よりも高さが低い部分からの光の出射が抑えられるため、フェンダパネル21とバンパ22の見切り部の隙間δからの光の漏れが防がれ、隙間δの一部が光ることによる車両20の商品性の低下が防がれる。そして、このような効果は遮光部品等を別途設けることなく得られるため、部品点数の増加やコストアップを招くことがなく、低コストで前記問題を解決することができる。尚、図4は、見切り部の隙間δに沿った断面を示している。後述する図5及び図6も同様である。
【0032】
或いは、図5に示すように、レンズ3に形成された凸条3bの少なくともフェンダパネル21とバンパ22の見切り部の隙間δを横切る部分(隙間δから見える部分)を完全に切除すれば、この部分からの光の出射が一層効果的に抑えられる。又、レンズ3の凸条3bへの加工(変更の適応)を簡単に行うことができる。
【0033】
更には、図6に示すように、前照灯1のハウジング2のレンズ3との結合部近傍に延設部2bをレンズ3の凸条3bを越えるように形成し、該延設部2bをフェンダパネル21とバンパ22の見切り部の隙間δに対向する部分に配置することができる。つまり、凸条3bと見切り部との間に延設部2bを配置することができる。このようにすれば、光を透過しない材料(ポリプロピレン(PP)樹脂)で構成されたハウジング2に形成された延設部2bによってレンズ3の凸条3bのフェンダパネル21とバンパ22の見切り部の隙間δを横切る部分が外側から覆われるため、フェンダパネル21とバンパ22の見切り部の隙間δからの光の漏れがハウジング2の延設部2bによって防がれて車両20の外観品質が高められる。そして、このような効果は遮光部品等を別途設けることなく得られるため、部品点数の増加やコストアップを招くことがない。この場合、延設部2bをレンズ3に突設された凸条3bに係合してハウジング2とレンズ3を結合するクリップの一部で構成すれば、ハウジング2に何ら変更を加えることなく低コストで前記問題を解決することができる。又、クリップ2bによってハウジング2とレンズ3との結合剛性を高めることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用前照灯(ヘッドランプ)
2 ハウジング
2a ハウジングの環状溝
2b ハウジングの延設部(クリップ)
3 レンズ
3a レンズの挿入部
3b レンズの凸条
4 灯室
5 光源
6 リフレクタ
7 シェード
8 インナレンズ
9 エクステンション
10 ホットメルト接着剤
20 車両
21 フェンダパネル
22 バンパ
23 フード
δ フェンダパネルとバンパの見切り部の隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその前面開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して構成され、前記レンズの前記ハウジングとの結合部近傍に外方に向けて突設された凸条が車両の側面視でバンパとフェンダパネルの見切り部の隙間を横切るよう配置された車両用前照灯において、
前記レンズに形成された凸条の少なくとも前記バンパと前記フェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分の高さを他の部位の高さよりも低くしたことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記レンズに形成された凸条の少なくとも前記バンパと前記フェンダパネルの見切り部の隙間を横切る部分を切除したことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記ハウジングの前記レンズとの結合部近傍に延設部を前記レンズの凸条を越えるように形成し、該延設部を前記バンパと前記フェンダパネルの見切り部の隙間に対向する部分に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記延設部を前記レンズに突設された凸条に係合するクリップで構成したことを特徴とする請求項3記載の車両用前照灯。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218905(P2011−218905A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88333(P2010−88333)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】