説明

車両用前照灯

【課題】 アウターレンズに防曇塗装膜が塗布された大型の車両用前照灯においてアウターレンズに発生する曇り現象を防止するとともに、発生した曇りを速やかに解消させることができる車両用前照灯を提供する。
【解決手段】 走行用ランプ8が配置される上段ランプ部4と、すれ違い用ランプ7が配置される下段ランプ部5からなり、上段ランプ部4と下段ランプ部5の間に仕分け板6を設けて相互の対流を遮断し、かつ、上段ランプ部4のエクステンション14に設けられた突起部9により、アウターレンズ2の低界面活性剤入りの防曇塗装領域Rに向かう対流を抑制するとともに、上段ランプ部4のハウジング3背面側に設けられた2つの呼吸孔12によって、上段ランプ部4として独立して呼吸効果を得ることにより、アウターレンズ2の表面の曇りを防止してクリアー性を向上させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用ランプとすれ違い用ランプを有する車両用前照灯に関し、特に防曇機能を持たせた車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用前照灯は、例えば特許文献1などで知られている。その特許文献1で知られる車両用前照灯は、ロービームユニットとハイビームユニットを備えている。また、アウターレンズのロービーム照射面にて生じた湿気がエクステンション材とロービームユニットの隙間からハイビームユニット側へ流れ込むのを遮るための整流板とハウジング背面に形成した呼吸孔とを有し、整流板によりロービームユニットからハイビームユニット側への対流を一部規制するようにして任意の方向への対流を強めて結露を防止するとともに、呼吸孔による呼吸機能によって曇りの発生を防止しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−119198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、ロービームユニットとハイビームユニットが搭載された2灯式の車両用前照灯においては、車両用前照灯の大型化に伴い、ハウジングの体積も増加することになる。そして、ハウジングの体積が増加するのに伴い、対流の規制も困難となり、結露防止と曇り防止の対策が難しくなるという問題点があった。
【0005】
さらに、大型化した車両用前照灯においては、アウターレンズの角部など特定の箇所に曇りが発生しやすく、また灯具自体が大容量となるために空気の対流が十分に行き渡らず、曇りの防止及びを解消がしづらいという問題点があった。
【0006】
また、従来、アウターレンズに防曇塗装膜を設けることにより曇り防止を図るようにした構造の車両用前照灯も知られている。しかしながら、このような車両用前照灯においても、車両用前照灯の上部領域では、温められて多くの水分を含んでいる空気がランプ上部側に向かうため、一般的な界面活性剤を含む防曇塗装膜では、アウターレンズ表面の水分保持量が飽和して水垂れが発生しやすい。そして、この水垂れが乾燥した後に垂れ跡が残り、この垂れ跡がアウターレンズの見栄えを悪くすることになり、この垂れ跡による品質の低下が問題となっていた。
【0007】
そこで、従来、このような防曇塗装膜による水垂れの対策として、アウターレンズの一部に界面活性剤を用いないで防曇塗装膜を配置した構造も知られている。しかしながら、防曇塗装膜に界面活性剤を使用しない場合では、防曇性能が低下し、十分な曇り防止効果が得られないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、走行用ランプとすれ違い用ランプが上段、下段に分かれて配置されるような大容量の車両用前照灯において、アウターレンズに発生する曇り現象を防止するとともに、発生した曇りを速やかに解消させることができる車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用前照灯は、ランプハウジングと、前記ランプハウジングの前面開口を塞いで配置され、内部に灯室を画成してなるアウターレンズと、前記灯室内を上段ランプ部と下段ランプ部の上下に仕分けするようにして前記灯室内に配設された金属部材からなる仕分け板と、少なくとも前記上段ランプ部内に対応して前記灯室内に設けられた2つの呼吸孔と、前記上段ランプ部と前記下段ランプ部にそれぞれ別れて配設された違い用ランプ及び走行用ランプと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ランプハウジングとアウターレンズにより灯室が画成されており、上段ランプ部と下段ランプ部とが金属部材からなる仕分け板によって仕分けされているため、上段ランプ部と下段ランプ部間の対流が遮断される。この対流の遮断により、例えば下段ランプ部ですれ違い用ランプが点灯した際に生じた熱で、下段ランプ部内の湿った空気が温められ、この温められた空気が上昇して上段ランプ部側に侵入するのを防止する。そして、その温められて湿った空気で上段ランプ部側のアウターレンズに曇り現象が発生するのを有効に防止できる。
【0011】
また、上段ランプ部及び下段ランプ部のいずれかを点灯させた際に、その熱で湿った空気が温められ、非点灯側のランプ部のアウターレンズ前面に曇り現象が発生したとしても、温まった空気が侵入し易い上段ランプ部には少なくとも2つの呼吸孔が設けられているため、仮に、侵入してしまった湿った空気があったとしても、呼吸孔よりすみやかに換気することができる。さらに、2つの呼吸孔により、上段ランプ部に独立した呼吸作用が得られ、アウターレンズの曇り現象の発生を抑制する。
【0012】
上記構成において、前記上段ランプ部に前記走行用ランプが配置され、前記下段ランプ部に前記すれ違い用ランプが配置されてなるとともに、前記上段ランプ部と前記下段ランプ部との間にそれぞれのランプ部からの光を遮らないようにして配設されたエクステンションと、前記アウターレンズに設けられた低界面活性剤を用いた防曇塗装膜と、前記防曇塗装部分に対応する前記エクステンションの外周縁の一部に前記アウターレンズ側に向って突設してなる突起部を備える、構成を採用できる。
【0013】
この構成によれば、アウターレンズに設けられた防曇塗装膜のうち、低界面活性剤による塗装部分に対応するエクステンションの外周縁の一部に、アウターレンズに向かう突起部が設けられることによって、車両用前照灯のハウジング側からアウターレンズ側への空気の流れを規制し、防曇性能の低い低界面活性剤による塗装部分の曇りを抑制させることができる。また、突起部によってハウジング側からアウターレンズの低界面活性剤による防曇塗装部分に向かう湿った空気の流れを規制することにより、アウターレンズの曇り現象の発生を抑制するとともに、曇りの解消性を高めることができる。
【0014】
上記構成において、上段ランプ部に設けられた2つの呼吸孔は、ハウジング背面に略対角線上に位置するように設けられている、構成を採用できる。
【0015】
この構成によれば、上段ランプ部に設けられた二つの呼吸孔がハウジング背面に略対角線上に位置するようにして設けられているため、突起部と仕分け板に挟まれた上段ランプ部における空間に十分な呼吸効果をもたらすことができ、アウターレンズの曇りを抑制するとともに、曇りの解消性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ランプハウジングとアウターレンズにより画成されている灯室内が、金属部材からなる仕分け板によって上段ランプ部と下段ランプ部に仕分けされて、上段ランプ部と下段ランプ部間の対流が遮断されているので、例えば下段ランプ部ですれ違い用ランプが点灯した際に生じた熱で、下段ランプ部内の湿った空気が温められ、この温められた空気が上昇して上段ランプ部側に侵入し、この温められて侵入して来る湿った空気により上段ランプ部側のアウターレンズに曇り現象が発生するのを有効に防止することができる。
【0017】
また、上段ランプ部及び下段ランプ部のいずれかを点灯させた際に、その熱で湿った空気が温められ、非点灯側のランプ部のアウターレンズ前面に曇り現象が発生したとしても、温まった空気が侵入し易い上段ランプ部には2つの呼吸孔が設けられているので、侵入してしまった湿った空気を呼吸孔よりすみやかに換気することができ、曇りの解消性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態における車両用前照灯の正面図である。
【図2】図1のA−A線縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態における車両用前照灯のハウジング内部の具体的構成を示す斜視図である。
【図4】図2における突起部周辺構造を拡大して示す図である。
【図5】本発明の実施形態における車両用前照灯に設けられた防曇塗装膜の説明図である。
【図6】本発明の実施形態における車両用前照灯の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0020】
図1乃至図6は本発明の実施形態に係る車両用前照灯を示し、図1はその車両用前照灯の正面図、図2は図1のA―A線縦断面図、図3はその車両用前照灯のハウジング内部の具体的構成を示す斜視図、図4は図2における突起部周辺構造を拡大して示す図、図5はその車両用前照灯に設けられた防曇塗装膜の説明図、図6はその車両用前照灯の裏面図である。
【0021】
図1乃至図6において、車両用前照灯1は、車両前方方向より見て車両の前部左右両端部に設けられる灯具であり、同図では前方視左側の灯具を代表して示している。したがって、車両前照灯1は、車両前方方向より車両を見た場合に、車両の前部左右両側部に各々配設された状態で見える。
【0022】
また、各車両前照灯1は、アウターレンズ2とハウジング3により内部に灯室22を画成してなる前照灯であり、灯室22内は仕分け板6で上下に仕分けられ、その仕分け板6の上部側に走行用ランプ8及びターンランプ15を配設した灯室22aを有する上段ランプ部4が形成され、下部側にすれ違い用ランプ7及びクリアランス16を配設した灯室22bを有する下段ランプ部5が形成されている。なお、図2及び図5では、車両前照灯1における内部の配置構造の理解を容易にするために、アウターレンズ2を透かして車両前照灯1の内部を見た状態にして描いている。
【0023】
さらに、各ランプ部4,5の各灯室22a,22bには、図3及び図6に示すように、ハウジング3の裏面側に開口させてなる複数個(本実施例では2個ずつ)の呼吸孔12が設けられている。この呼吸孔12は、上段ランプ部4及び下段ランプ部5において、車両内側となる下側角部に各々1個ずつと、車両外側となる上側角部に各々1個ずつの、合計4個形成されている。これら呼吸孔12は、上段ランプ部4の灯室22a内における空気及び下段ランプ5の灯室22b内における空気をそれぞれ呼吸効果によって排気(換気)する機能を持たせている。呼吸孔12には図示しないフィルターなどが取り付けられており、ハウジング3外部からの埃や塵、水分などの侵入を防ぐ構成となっている。なお、これら呼吸孔12は、上段ランプ部4と下段ランプ部5の両方に設けずに、上段ランプ部4側にだけ設けてもよく、またその個数も任意に選択可能である。
【0024】
前記アウターレンズ2は、光透過性の材質、例えば、ポリカーボネイトなどの透明な合成樹脂材で形成されており、図4に示すように、全周縁に設けられたシール部17を介してハウジング3の前面側に、そのハウジング3の開口を塞ぐようにして組み付けられている。
【0025】
また、図2に示すように、アウターレンズ2は、上段ランプ部4に対応している部分2aと下段ランプ部5に対応している部分2bを有しているとともに、部分2aと部分2bの間に段差部18を設けている。段差部18は、上段ランプ部4及び下段ランプ部5の外表面から車両後方へ向かって下がった凹所として形成されており、その段差部18に車体10のフィニッシャー11などが配設されている。
【0026】
前記フィニッシャー11は、例えば車体10のバンパーなどと同一の部材からなり、また表面には車体10と同一色の塗装が施されている。そして、フィニッシャー11は、アウターレンズ2の上段ランプ部4と下段ランプ部5の表面とほぼ面一で、かつ段差部18による凹部、すなわち段差部18の開口面を塞ぐようにして配設されている。したがって、その段差部18に配設されたフィニッシャー11により、上段ランプ部4と下段ランプ部5が上下2つに分割された状態に装飾されて、これにより見栄えを良くすることができるとともに、段差部18の部分を通して外部から灯室22内が見えるのを防止している。
【0027】
また、図5に示すように、アウターレンズ2の裏面で、かつ上段ランプ部4の光源バルブ81よりも上側部分と対応している領域、すなわち図中、斜線を施している領域Rには、水垂れや曇りの発生を効果的に抑制するために、例えば低界面活性剤入りの防曇塗装膜21が塗布されている。
【0028】
なお、界面活性剤入りの防曇塗装膜21としては、例えば、親水性重合体部分と疎水性重合体部分からなるブロック重合体、及び親水性重合体部分と疎水性重合体部分からなるクラフト重合体から選ばれる1種以上の共重合体に界面活性剤を含む組成の樹脂塗膜形成組成物などがある(例えば、特開平2-255854号参照)。
【0029】
また、灯室22内をすれ違い用ランプ7及びクリアランスランプ16が設けられた上段ランプ部4の灯室22aと走行用ランプ8及びターンランプ15が設けられた下段ランプ部5の灯室22bとに区画している前記仕分け板6は、金属性の平板部材からなり、アウターレンズ2の段差部18の後ろ側で、かつフィニッシャー11の後方側に設けられている。仕分け板6の後方縁部はハウジング3の内面に略一致させた形状にして形成されており、その後方縁部をハウジング3内に当接させ、かつ前方縁部を図2に示すようにアウターレンズ2の表面近傍位置まで延出された状態にして取り付けている。その取り付けの際、上段ランプ部4と下段ランプ部5のランプ形状に応じて一部を折り曲げるとともに、略水平に配置して上段ランプ部4と下段ランプ部5を仕切る。そして、その仕切により上段ランプ部4と下段ランプ部5の間に発生する対流を遮断するようにし、その後、取付部13をスクリューネジや取付ピンなどを用いて固定することにより、ハウジング3に取り付けられている。
【0030】
また、仕分け板6の表面には強度を増大させるための補強ビード19が設けられており、その補強ビード19の補強により車両の振動などによるビビリ音を防ぐことができるようになっている。そして、仕分け板6は、下段ランプ部5が点灯した際に、この下段ランプ部5に生じた熱で灯室22b内の湿った空気が温められ、この温められた空気が上昇して上段ランプ部4側に侵入して来る湿った空気を遮断し、上段ランプ部4側のアウターレンズ2の部分、すなわち上側部分2aに曇り現象が発生するのを防止する。
【0031】
なお、仮に、仕分け板6の隙間を通って下段ランプ部5内の湿った空気が上段ランプ部4に侵入したときには、低界面活性剤入りの防曇塗装を設けた領域Rに曇りが発生する場合があるが、この場合は発生してしまった曇りを上段ランプ部4に設けられている2つの呼吸孔12の呼吸(換気)によりすみやかに取り除くことができる。
【0032】
前記ハウジング3は、不透明な合成樹脂材からなり、光軸調整装置(図示しない)により、前記すれ違い用ランプ7及び走行用ランプ8をそれぞれ上下左右方向へ光軸調整可能な状態にして支持している。
【0033】
前記上段ランプ部4は、図1,図2及び図5に示すように、前記走行用ランプ8と、その側方に隣接して設けられた他のランプ、例えばターンランプ15と、エクステンション14と、ハウジング3の裏面に配置された2つの前記呼吸孔12により構成されている。
【0034】
前記走行用ランプ8は、図1及び図5に示すように、前記光源バルブ81と、その光源バルブ81からの照射光を放物系反射面からなるリフレクタ82とにより、走行用配光パターンとして前方に照射する車両用灯具として構成されている。
【0035】
図2に示すように、走行用ランプ8の側方に隣接して設けられる前記ターンランプ15は、走行用ランプ8の車両内側に設けられ、図示しないアンバーバルブなどの有色灯からなる光源15aと、光源15aの光を前方及び側方に照射するリフレクタ15bとからなり、車両方向指示器と連動して点滅する車両用灯具として構成されている。
【0036】
前記上段ランプ側部4側の前記エクステンション14は、図1,図2,図4及び図5に示すように、ハウジング3の外形に沿う形状を成しており、走行用ランプ8及びターンランプ15とハウジング3の隙間で、かつ、走行用ランプ8とターンランプ15の配光を遮らない位置に配設されて、走行用ランプ8とターンランプ15を装飾し、これにより見栄えを良くすることができるとともに、走行用ランプ8とターンランプ15の周囲から車両用前照灯1の内部が見えるのを防止している。
【0037】
また、図4に示すように、上段ランプ部4に設けられるエクステンション14の上側縁部には、アウターレンズ2に向かって突出するようにして突起部9が一体に形成されている。さらに、突起部9が形成されている部分と対応しているアウターレンズ2の裏面の部分には、低界面活性剤入りの防曇塗装膜21が塗布されている。
【0038】
前記下段ランプ部5は、図1及び図2に示すように、すれ違い用ランプ7と、その側方に隣接して設けられた他のランプ、例えば前記クリアランスランプ16と、前記エクステンション14と、前記ハウジング3の裏面に配置された呼吸孔12により構成されている。
【0039】
前記すれ違い用ランプ7は、図1及び図2に示すように、光源バルブ71aからの照射光をリフレクタ71bによって投影レンズ74の後側焦点位置に集光し、投影レンズ74の後側焦点位置に設けられたシェード73によって遮蔽されない光が投影レンズ74を透過し、すれ違い用配光パターンとして車両前方に照射されるプロジェクタ型の車両用灯具として構成されている。また、投影レンズ74はフレーム75に保持されており、シェード73はリフレクタ71bとフレーム75の間に挟持されている。
【0040】
図1に示すように、前記すれ違い用ランプ7の側方に隣接して設けられる前記クリアランスランプ16は、すれ違い用ランプ7の車両外側の位置に設けられており、光源バルブとリフレクタとでクリアランスランプとしての配光を形成する。
【0041】
図1,図2,図4,図5に示すように、前記下段ランプ部5側のエクステンション14は、ハウジング3の外形に沿うような形状をし、すれ違い用ランプ7及びクリアランスランプ16とハウジング3の隙間で、かつ、すれ違い用ランプ7とクリアランスランプ16の配光を遮らない位置に設けられており、車両用前照灯1の灯室内が見えるのを防止している。
【0042】
したがって、このように構成された車両用前照灯1によれば、ランプハウジング3とアウターレンズ2により画成して形成されている灯室22内が、金属部材からなる仕分け板6によって上段ランプ部4と下段ランプ部5に仕分けされて、上段ランプ部4と下段ランプ部5間の対流が遮断されているので、例えば下段ランプ部5ですれ違い用ランプ7が点灯した際に生じた熱で、下段ランプ部5内の湿った空気が温められ、この温められた空気が上昇して上段ランプ部4側に侵入するのを阻止する。そして、その温められて湿った空気で、上段ランプ部4側のアウターレンズ2の上側部分2aに曇り現象が発生するのを有効に防止することができる。
【0043】
また、上段ランプ部4及び下段ランプ部5のいずれかを点灯させた際に、その熱で湿った空気が温められ、非点灯側のランプ部のアウターレンズ2の前面に曇り現象が発生したとしても、温まった空気が侵入し易い上段ランプ部4には2つの呼吸孔12が設けられているので、仮に侵入してしまった湿った空気があったとしても、呼吸孔12よりすみやかに換気することができ、曇りの解消性を向上させることができる。
【0044】
さらに、低界面活性剤による塗装部分と対応するエクステンション14の外周縁の一部に、アウターレンズ2側へ向かう突起部9を設けているので、この突起部9が車両用前照灯1のハウジング3側からアウターレンズ2側への空気の流れを規制し、防曇性能の低い低界面活性剤による塗装部分の曇りを抑制させることができる。また、さらに突起部9によってハウジング3側からアウターレンズ2の低界面活性剤による防曇塗装部分に向かう湿った空気の流れを規制することにより、アウターレンズ2の曇り現象の発生を抑制するとともに、曇りの解消性を高めることができる。
【0045】
また、少なくとも上段ランプ部4に設けられた2つの呼吸孔12がハウジング3背面に略対角線上に位置するようにして設けられているため、突起部9と仕分け板6に挟まれた上段ランプ部4における空間(灯室22a)に十分な呼吸効果をもたらすことができ、アウターレンズ2の曇りをさらに抑制して曇りの解消性を高めることができる。
【0046】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0047】
1 車両用前照灯
2 アウターレンズ
2a 上側部分
2b 下側部分
3 ハウジング
4 上段ランプ部
5 下段ランプ部
6 仕分け板
7 すれ違い用ランプ
71a 光源バルブ
71b リフレクタ
73 シェード
74 投影レンズ
75 フレーム
8 走行用ランプ
81 光源バルブ
82 リフレクタ
9 突起部
10 車体
11 フィニッシャー
12 呼吸孔
13 取付部
14 エクステンション
15 ターンランプ
16 クリアランスランプ
17 シール部
18 段差部
19 補強ビード
21 防曇塗装膜
22 灯室
R 低界面活性剤入り防曇塗装膜塗布領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングと、
前記ランプハウジングの前面開口を塞いで配置され、内部に灯室を画成したなるアウターレンズと、
前記灯室内を上段ランプ部と下段ランプ部の上下に仕分けするようにして前記灯室内に配設された金属部材からなる仕分け板と、
少なくとも前記上段ランプ部内に対応して前記灯室内に設けられた2つの呼吸孔と、
前記上段ランプ部と前記下段ランプ部にそれぞれ別れて配設された違い用ランプ及び走行用ランプと、
を備えたことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記上段ランプ部に前記走行用ランプが配置され、前記下段ランプ部に前記すれ違い用ランプが配置されてなるとともに、前記上段ランプ部と前記下段ランプ部との間にそれぞれのランプ部からの光を遮らないようにして配設されたエクステンションと、前記アウターレンズに設けられた低界面活性剤を用いた防曇塗装膜と、前記防曇塗装部分に対応する前記エクステンションの外周縁の一部に前記アウターレンズ側に向って突設してなる突起部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記上段ランプ部に設けられた前記2つの呼吸孔は、前記ハウジング背面に略対角線上に位置するように設けられている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−3958(P2012−3958A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138160(P2010−138160)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】