説明

車両用加熱装置

【課題】装置における漏電及び感電の発生を確実に防止し、安全性及び信頼性、並びに伝熱効率を高めることができる車両用加熱装置を提供する。
【解決手段】電熱線ヒータ(12)が収容される伝熱ブロック(2)と、電熱線ヒータ(12)の端子(36)に電気的に接続される制御部(34)と、電熱線ヒータ(2)で加熱された熱媒体が流れる流路(14)とを備え、伝熱ブロック(2)は、端子(36)から制御部(34)に亘る通電領域とは異なる領域に流路(14)のシール部(50)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱装置には、内方を熱媒体である温水が流通する流通パイプと、この流通パイプに並設した電熱線ヒータとを伝熱金属内に埋設して扁平状の伝熱体を形成し、この伝熱体を複数個集積させ、流通パイプを直列に接続し熱源器として構成したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-48422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、ハイブリッド自動車や電気自動車の開発及び普及が促進され、今後はエンジンの廃熱を十分に利用できなくなることから、上述したような電熱線ヒータを発熱体とした加熱装置を上記車両に搭載することが考えられる。ハイブリッド自動車の場合には、エンジンの廃熱を補うように熱供給可能な補助熱源として、電気自動車の場合には、エンジンに代わって熱供給可能な代替熱源として、車両用空調装置の冷凍回路を循環する冷媒などの加熱に用いることが期待される。
【0005】
上記電熱線ヒータは、有底円筒状の金属パイプ内にニクロム線などのコイル状の電熱線を挿入し、金属パイプ内に高い電気絶縁性及び熱伝導性を有する耐熱絶縁材を加圧充填して電熱線を封入して形成する、いわゆるカートリッジヒータであり、金属パイプの開口部には電熱線に接続された端子が設けられている。上記従来技術では、カートリッジヒータの端子は加熱装置の外部に設けられた制御装置に電気的に接続され、上記電熱線に通電して制御するための電気回路が構成される。
【0006】
ここで、上記従来技術以外の装置構成として、電熱線ヒータが収容される伝熱ブロックと、伝熱ブロックが収容されるケースとから構成され、伝熱ブロックとケースとの間に熱媒体としての水の流路を形成することで、電熱線ヒータの熱を伝熱ブロックを介して水に伝達する構成が考えられる。この加熱装置のケースに制御基板を搭載し、制御基板に給電のためのハーネスや通信線を接続すれば、制御部一体型の加熱装置を構成することができる。
【0007】
このような装置構成の場合には、制御基板とカートリッジヒータの端子との位置関係によって、配線や制御基板の構成部品の一部が伝熱ブロックとケースとの間の水のシール部を跨いで配置される。従って、シール部に設けられたガスケットが劣化等により破損すると、配線や制御基板、ひいてはカートリッジヒータの端子に水がかかり、漏電や感電が発生するおそれがある。
【0008】
また、上記装置構成の場合には、伝熱ブロックとケースとの間に流路を形成するために伝熱ブロックの外面又はケースの内面に流路を仕切るためのガイドを設ける必要がある。このガイドとガイドの対向壁とは別体に設けられることから、これらの間にはどうしても隙間が生じ、この隙間は流路にとってのバイパス路となるため、隣り合う流路を気密に区画することができず、装置の伝熱効率が低下するおそれがある。しかし、上記装置構成の場合も、上記従来技術の場合も、漏電及び感電の危険性、並びに伝熱効率低下の点につき格別な配慮がなされていない。
【0009】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、装置における漏電及び感電の発生を確実に防止して安全性及び信頼性を高め、更には伝熱効率をも高めることができる車両用加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1記載の車両用加熱装置は、電熱線ヒータが収容される伝熱ブロックと、電熱線ヒータの端子に電気的に接続される制御部と、電熱線ヒータで加熱された熱媒体が流れる流路とを備え、伝熱ブロックは、端子から制御部に亘る通電領域とは異なる領域に流路のシール部を有することを特徴としている。
請求項2記載の発明は、流路は伝熱ブロックの内部に鋳造成形されることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明は、伝熱ブロックは流路に連通する開口部を備え、流路は、中子を伝熱ブロックとともに鋳造した後に、開口部から中子を排出することで形成されることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、開口部は、流路に熱媒体の流入出を行うためのポートであることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、開口部は、中子を伝熱ブロックの内部から排出するための排出穴であり、伝熱ブロックは、排出穴を塞ぐことでシール部を形成するキャップ部材を備えることを特徴としている。
請求項6記載の発明は、中子は加熱及び加振により崩壊する崩壊性中子であることを特徴としている。
【0013】
請求項7記載の発明は、通電領域を覆って通電領域をシール部と遮断する蓋部材を備えることを特徴としている。
請求項8記載の発明は、制御部は発熱素子を有し、発熱素子は伝熱ブロックに熱的に接触されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の車両用加熱装置によれば、伝熱ブロックが電熱線ヒータの端子から制御部に亘る通電領域とは異なる領域に流路のシール部を有することにより、シール部からの熱媒体の漏洩によって生じる漏電及び感電の発生を確実に防止することができ、装置の安全性及び信頼性を高めることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、流路は伝熱ブロックの内部に鋳造成形されることにより、隣り合う流路間に隙間のない流路を連続して形成することができるため、流路を流れる熱媒体の流れを円滑にすることができる。従って、電熱線ヒータから流路を流れる熱媒体への伝熱を段階的に行わせることができるとともに、流路内における熱媒体の滞留が防止されることによって伝熱の弊害要因となる流路内における気泡の滞留を抑制することができるため、装置の伝熱効率を高めることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、流路は、中子を伝熱ブロックとともに鋳造した後に、開口部から中子を排出することで形成されることにより、開口部を除いた繋ぎ目のない流路を連続して形成することができ、熱媒体の漏洩の危険性を低減することができるため、装置の漏電及び感電の発生を確実に防止することができ、装置の安全性及び信頼性を更に高めることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、開口部は、流路に熱媒体の流入出を行うためのポートであることにより、中子を伝熱ブロックとともに鋳造した後に、ポートから中子を排出することで流路を形成することができるため、流路を完全に繋ぎ目、隙間なく連続して形成することができ、装置の安全性及び信頼性をより一層高めることができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、開口部は、中子を伝熱ブロックの内部から排出するための排出穴であり、伝熱ブロックは、排出穴を塞ぐことでシール部を形成するキャップ部材を備えることにより、中子を複雑な形状に形成したとしても、排出穴から中子を容易に排出することができるため、中子形状、ひいては流路形状の自由度が拡大し、流路を伝熱に最適な形状及び長さとすることができ、装置の伝熱効率を更に高めることができる。
【0019】
また、排出穴を中子の排出が可能な範囲で極力小さく形成することにより、シール部を極力小さく形成することができるため、熱媒体の漏洩の危険性を低減することができ、装置の漏電及び感電の発生を更に確実に防止することができる。
請求項6記載の発明によれば、中子は加熱により脆くなり、加振により崩壊する崩壊性中子であることにより、伝熱ブロックの鋳造後に伝熱ブロックの内部から中子を容易に取り出すことができる。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、通電領域を覆って通電領域をシール部と遮断する蓋部材を備えることにより、通電領域とシール部とを確実に遮断することができるとともに、装置の外部要因による漏電及び感電の発生をも防止することができるため、装置の安全性及び信頼性を更に高めることができる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、制御部は発熱素子を有し、発熱素子である例えばIGBTが伝熱ブロックに熱的に接触されることにより、別体となる放熱フィンや送風手段等の放熱手段を設けなくとも、伝熱ブロック自体、ひいては流路を流れる熱媒体に吸熱させて発熱素子の放熱が可能となるため、装置の小型化を図りつつ、その安全性及び信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用加熱装置の外観を示した斜視図である。
【図2】図1の装置の蓋を取り外した状態の内部を示した斜視図である。
【図3】図2の装置の流路の形成に際して伝熱ブロックとともに中子が鋳込まれ状態を透過して示した斜視図である。
【図4】図3の中子の斜視図である。
【図5】図1の装置の縦断面図である。
【図6】図5のA−A方向からみた装置の断面図である。
【図7】図5のB−B方向からみた装置の断面図である。
【図8】図2の伝熱ブロックの前部から制御基板の背面側をみた拡大図である。
【図9】図8のC方向から制御基板の背面側をみた斜視図である。
【図10】図8のD方向からIGBTの設置状況をみた拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図10は本発明の一実施形態に係る車両用加熱装置1を示す。
当該加熱装置1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に搭載され、ハイブリッド自動車の場合には、エンジンの不足する廃熱を補うようにして熱供給する補助熱源として、電気自動車の場合には、存在しないエンジンに代わって熱供給する代替熱源として、車両用空調装置の冷凍回路を循環する冷媒などの加熱に用いられる。
【0024】
なお、本実施形態ではハイブリッド自動車の場合について説明し、装置1の流路14にはエンジンを冷却するべく冷却水回路を循環するLLC(冷却水、不凍液)が熱媒体として流れてカートリッジヒータ12により加熱される。この冷却水回路は車両用空調装置に設けられ、エンジン及び装置1で加熱されたLLCの熱は上記空調装置に設けられた冷凍回路を循環する冷媒の加熱に用いられ、車室内の冷暖房が可能となる。更に、ハイブリッド自動車、電気自動車の何れの場合においても、不凍液が循環する暖房用回路に図示しないヒータコアとともに加熱装置1を設け、加熱装置1を不凍液の熱源の1つとして利用し、上記ヒータコアで暖房された空気を送風することも考えられる。
【0025】
図1は装置1の外観を示し、図2は装置1の内部を示している。装置1は、伝熱ブロック2と、伝熱ブロック2の上部2a及び前部2bを覆う蓋(蓋部材)4と、伝熱ブロック2の側部2cに設けられた開口部(排出穴)6を覆うサイドキャップ(キャップ部材)8とを備えている。蓋4及びサイドキャップ8は伝熱ブロック2に複数の止めネジ10で締結されている。
【0026】
伝熱ブロック2にはその前部2aから2本のカートリッジヒータ(電熱線ヒータ)12が収容されている。伝熱ブロック2の内部にはカートリッジヒータ12で加熱されたLLCが流れる流路14が形成されている。開口部6は流路14に連通され、開口部6と反対側の伝熱ブロック2の側部2dには装置1の外部から流路14にLLCを流入するための入口ポート(ポート)16と、カートリッジヒータ12からの伝熱により加熱された後のLLCを流路14から流出するための出口ポート(ポート)18とが設けられている。入口ポート16及び出口ポート18には図示しない外部配管がそれぞれ接続され、これらの接続部には各シール部が形成される。
【0027】
伝熱ブロック2の後部壁2eからは高電圧ハーネス20と、低電圧ハーネス22及びCAN通信線24とがコネクタ26を介して引き出されている。伝熱ブロック2の底部2fには装置1を車両に固定するための固定部28が形成され、固定部28にはネジ穴30が形成されている。
伝熱ブロック2の上部2bに形成された台座部32には、制御基板(制御部)34が載置されてネジ止めされている。制御基板34には、伝熱ブロック2の前部2aにおいて突設されたカートリッジヒータ12の端子36、及び上記ハーネス20、22及び通信線24の端末が電気的に接続されている。
【0028】
伝熱ブロック2の外周端部38には蓋4をネジ止めで締結するための締結面38aが形成され、締結面38aは伝熱ブロック2の側部2c、2dからみて後部壁2eから前部2aにかけて下方向に傾斜して形成されている。伝熱ブロック2の締結面38aをこのように傾斜させて形成することにより、伝熱ブロック2の前部2aからカートリッジヒータ12を収容し易く、更に、伝熱ブロック2の台座部32に制御基板34を載置し易い上、設置後のカートリッジヒータ12及び制御基板34に対する作業がし易くなっている。
【0029】
また、締結面38aにはガスケット40が配置され、蓋4とガスケット40を止めネジ10で締結することにより装置1の内外をシールするシール部42が形成される。蓋4の内側と伝熱ブロック2との間には、シール部42によって端子36及び制御基板34から構成された装置1の通電部44が存在する気密な空間が形成される。
【0030】
同様に、伝熱ブロック2の側部2cにはサイドキャップ8の締結面46が形成され、締結面46にガスケット48を配置し、サイドキャップ8とガスケット48とを止めネジ10で締結することにより開口部6にもシール部50が形成される。すなわち、上述した通電部44は伝熱ブロック2の前部2a及び上部2bに形成されるのに対し、シール部50は側部2cに形成され、入口ポート16及び出口ポート18は側部2dに形成されており、通電部44と流路14からのLLC漏洩の危険性のある部位とは互いに伝熱ブロック2の異なるブロック面に形成されている。
【0031】
更に、通電部44は蓋4によって覆われているため、通電部44の存する空間は、シール部42で気密に区画され、LLC漏洩の危険性のある部位とは遮断された通電領域となっている。
図3は流路14の形成に際して伝熱ブロック2とともに中子52が鋳込まれ状態を透過して示した斜視図であり、図4は中子52の斜視図である。
【0032】
図3に示すように、中子52は開口部6を除いて入口ポート16から出口ポート18にかけて繋ぎ目や隙間がなく伝熱ブロック2自体であるアルミニウム系材料と一体に鋳込まれて形成されている。中子52の内側にはカートリッジヒータ12の挿入穴54が形成されている。
【0033】
流路14は図4に示す中子52を伝熱ブロック2とともに鋳造した後にシール部50の形成される開口部6から排出することで形成され、開口部6は中子52の排出穴としての役割を担っている。中子52は砂若しくはワックス等でできた崩壊性の中子であり、伝熱ブロック2の鋳造後に加熱により脆くなり、加振により崩壊して開口部6から排出され、伝熱ブロック2の内部を洗浄することで流路14が形成される。
【0034】
図4に示すように、中子52は流路14に該当する流路該当部56、入口ポート16に該当する入口ポート該当部58、出口ポートに該当する出口ポート該当部60、開口部6に該当する開口部該当部62を有して形成されている。流路該当部56は挿入穴54の形状に沿って挿入穴54よりも若干大きな径で形成され、伝熱ブロック2内には挿入穴54と流路14との間に極力肉厚を薄くした薄肉部64が形成されている。
【0035】
また、流路該当部56には、入口ポート該当部58から出口ポート該当部60にかけて挿入穴54の長手方向に対し垂直方向に交互に高さをずらした2つの仕切空間66が設けられている。
ここで、カートリッジヒータ12が収容される伝熱ブロック2と、伝熱ブロック2が収容されるケースとから加熱装置を構成し、伝熱ブロック2とケースとの間に流路14を形成することで、カートリッジヒータ12の熱をLLCに伝達する装置構成が考えられる。この構成の場合には、伝熱ブロック2とケースとの間に流路14を形成するために伝熱ブロック2の外面又はケースの内面に流路14を仕切るためのガイドを設ける必要がある。このガイドとガイドの対向壁とは別体に設けられることから、これらの間にはどうしても隙間が生じ、この隙間は流路14にとってのバイパス路となるため、隣り合う流路14を気密に区画することができず、装置の伝熱効率が低下するおそれがある。
【0036】
しかし、本実施形態のように崩壊性の中子52を鋳込んで伝熱ブロック2を鋳造することにより、上記仕切空間66は伝熱ブロック2の鋳造後には隙間のない路壁68(図5参照)を形成し、路壁68は隣り合う流路14を気密に区画する。
更に、開口部該当部62は、伝熱ブロック2の鋳造後には崩壊した中子52を流路14から排出し易い開口部6を形成するべく、適切な大きさ及び形状を有した適切な位置に形成されるとともに、シール部50からのLLC漏れの危険性を低減するべく、極力小さく必要最低限の大きさで形成される。
【0037】
図5は装置1の縦断面図であり、図6は図5のA−A方向からみた装置1の断面図であり、図7は図5のB−B方向からみた装置1の断面図である。崩壊した中子52を開口部6から排出した後には、図5〜7に示す断面形状の流路14が形成され、LLCは路壁68に沿って入口ポート16から出口ポート18に向けカートリッジヒータ12の長手方向に蛇行しながら流路14を流通する。
【0038】
図8は伝熱ブロック2の前部2aから制御基板34の背面側をみた拡大図であり、この図においては制御基板34は取り外されている。伝熱ブロック2の前部2aにはバスバー組体70がネジ止めされ、制御基板34は同じ通電部44の一部であるバスバー組体70を介してカートリッジヒータ12の端子36に電気的に接続される。
【0039】
図9は図8のC方向から制御基板34の背面側をみた斜視図である。伝熱ブロック2の台座部32には制御基板34の電気回路を構成するIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)(発熱素子)72が載置されている。IGBT72は、カートリッジヒータ12のオンオフを行うスイッチング素子であり、高電圧が流れ高温となる発熱素子である。IGBT72の近傍には伝熱ブロック2に接触して温度センサ74が配置されている。温度センサ74は伝熱ブロック2が異常に高温となったときには、制御基板34の電気回路を切断し、IGBT72を保護する役割を担っている。
【0040】
図10は図8のD方向からIGBT72の設置状況をみた拡大図である。IGBT72は詳しくは漏電及び感電防止のための絶縁シート75を介して台座部32に載置されている。IGBT72は、台座部32に止めネジ76で固定された押さえ金具78によって上から台座部32に押さえられて固定されている。IGBT72で発生する熱は絶縁シート75を介して伝熱ブロック2自体、ひいては流路14を流れるLLCに伝達される。
【0041】
以上のように本実施形態の車両用加熱装置1によれば、通電部44とシール部50とが互いに伝熱ブロック2の異なるブロック面に形成される。更に、通電部44の存する空間が蓋4によって遮断され、シール部42で気密に区画された通電領域となっている。従って、シール部50に設けられたガスケット48が劣化して破損し、シール部50からLLCが漏洩し、通電部44にLLCがかかることによって生じる漏電及び感電の発生を確実に防止することができ、装置の安全性及び信頼性を高めることができる。
【0042】
しかも、蓋4によって装置1の外部要因による漏電及び感電の発生をも防止することができる。
また、流路14が中子52を伝熱ブロック2とともに鋳造した後にシール部50の形成される開口部6から排出することで形成されることにより、隣り合う流路14間に路壁68を形成することにより隙間のない流路14を連続して形成することができるため、流路14の液流を円滑にすることができる。従って、カートリッジヒータ12から流路14を流れるLLCへの伝熱を段階的に行わせることができるとともに、流路14内におけるLLCの滞留が防止されることによって伝熱の弊害要因となる流路14内における気泡の滞留を抑制することができるため、装置1の伝熱効率を高めることができる。
【0043】
更に、開口部6を除き、繋ぎ目のない流路14を連続して形成することができ、LLCの漏洩の危険性を低減することができるため、装置1の漏電及び感電の発生を確実に防止することができ、装置1の安全性及び信頼性を更に高めることができる。
更にまた、開口部6を設けて中子52の排出穴として利用することにより、中子52を複雑な形状に形成したとしても、開口部6から中子52を容易に排出することができるため、中子52の形状、ひいては流路14の形状の自由度が拡大し、流路14を伝熱に最適な形状及び長さとすることができ、装置1の伝熱効率を更に高めることができる。
【0044】
また、開口部6を中子52の排出が可能な範囲で極力小さく形成することにより、シール部50も極力小さく形成することができるため、開口部6ひいてシール部50を設けた場合のLLCの漏洩の危険性を低減することができ、装置1の漏電及び感電の発生を更に確実に防止することができる。
更にまた、制御基板34を構成するIGBT72は伝熱ブロック2に絶縁シート75を介して熱的に接触されることにより、別体となる放熱フィンや送風機等の放熱手段を設けなくとも、伝熱ブロック2自体、ひいては流路14を流れるLLCに吸熱させてIGBT72の放熱が可能となるため、装置1の小型化を図りつつ、その安全性及び信頼性を高めることができる。
【0045】
本発明は上述の実施例に制約されるものではなく、更に種々の変形が可能である。
例えば、本実施形態では熱崩壊性の中子52を使用しているが、これに限らず、伝熱ブロック2の鋳造後の水洗浄時に水に溶けて開口部6や入口ポート16又は出口ポート18から排出可能となる水溶性中子を使用しても、上記と同様の流路14を形成可能である。
また、本実施形態では伝熱ブロック2に開口部6を設けているが、開口部6は専ら中子52の排出穴として利用される。従って、流路14が複雑でない場合には、中子52を入口ポート16又は出口ポート18のみから排出することも可能であり、開口部6を有さない構成としても良い。
【0046】
具体的には、図1の場合には入口ポート16及び出口ポート18が側部2dに形成されていることにより、入口ポート16及び出口ポート18に接続される図示しない外部配管とのシール部が通電部44と異なる領域に形成されていると云える。この場合には、伝熱ブロック6に存在するシール部は、装置1として必須である入口ポート16及び出口ポート18におけるもののみとなり、伝熱ブロック6全体としてはシール部を最も小さくすることができ、装置1の安全性及び信頼性をより一層高めることができる。
【0047】
しかも、この場合には、流路14を繋ぎ目や隙間を完全になくして連続して形成可能となるため、装置1の伝熱効率をより一層高めることができる。
更に、本実施形態の加熱装置1はハイブリッド自動車の車両に搭載されるが、電気自動車の場合には、流路14に冷凍回路を循環する冷媒が熱媒体として流れてカートリッジヒータ12により加熱される。この冷凍回路は上記と同様に車両用空調装置に設けられ、加熱装置1で加熱された冷媒の熱によって車室内の冷暖房が可能となる。また、流路14には熱媒体としての水を流通し、水をカートリッジヒータ12により温水にし、この温水をエンジンの代替熱源として車両用空調装置の暖房用回路を循環する冷媒などを加熱するための熱源として利用することも考えられる。
【0048】
また、ハイブリッド自動車、電気自動車の何れの場合においても、不凍液が循環する暖房用回路に図示しないヒータコアとともに加熱装置1を設け、加熱装置1を不凍液の熱源の一つとして利用し、ヒータコアで暖房された空気を送風することも考えられるのは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用加熱装置
2 伝熱ブロック
4 蓋(蓋部材)
6 開口部(排出穴)
8 サイドキャップ(キャップ部材)
12 カートリッジヒータ(電熱線ヒータ)
14 流路
16 入口ポート(ポート)
18 出口ポート(ポート)
34 制御基板(制御部)
36 端子
50 シール部
52 中子
72 IGBT(発熱素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱線ヒータが収容される伝熱ブロックと、
前記電熱線ヒータの端子に電気的に接続される制御部と、
前記電熱線ヒータで加熱された熱媒体が流れる流路とを備え、
前記伝熱ブロックは、前記端子から前記制御部に亘る通電領域とは異なる領域に前記流路のシール部を有することを特徴とする車両用加熱装置。
【請求項2】
前記流路は前記伝熱ブロックの内部に鋳造成形されることを特徴とする請求項1に記載の車両用加熱装置。
【請求項3】
前記伝熱ブロックは前記流路に連通する開口部を備え、
前記流路は、中子を前記伝熱ブロックとともに鋳造した後に、前記開口部から前記中子を排出することで形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用加熱装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記流路に熱媒体の流入出を行うためのポートであることを特徴とする請求項3に記載の車両用加熱装置。
【請求項5】
開口部は、前記中子を前記伝熱ブロックの内部から排出するための排出穴であり、
前記伝熱ブロックは、前記排出穴を塞ぐことで前記シール部を形成するキャップ部材を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用加熱装置。
【請求項6】
前記中子は加熱及び加振により崩壊する崩壊性中子であることを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の車両用加熱装置。
【請求項7】
前記通電領域を覆って前記通電領域を前記シール部と遮断する蓋部材を備えることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の車両用加熱装置。
【請求項8】
前記制御部は発熱素子を有し、前記発熱素子は前記伝熱ブロックに熱的に接触されることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の車両用加熱装置。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131331(P2012−131331A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284492(P2010−284492)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】