車両用収納装置
【課題】蓋部材の剛性を維持しつつ、蓋部材が受ける荷重を蓋部材自体で吸収しやすくなる車両用収納装置を提供する。
【解決手段】車両の後方に設けた荷室に、車両の前後方向後方に敷設された第1フロア底面6と、第1フロア底面6よりも車両の前後方向前方に敷設され、かつ第1フロア底面6の敷設位置よりも敷設位置が高く設定された第2フロア底面7と、第1フロア底面6を覆う板状の蓋部材8とを備えた車両用収納装置4において、第2フロア底面7の下方であって、かつ第1フロア底面6側に第1ガイド46を設け、この第1ガイド46は、車両の前後方向前方から後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成され、第1ガイド46の上端が第2フロア底面7の下面7aに当接するように配置されている。
【解決手段】車両の後方に設けた荷室に、車両の前後方向後方に敷設された第1フロア底面6と、第1フロア底面6よりも車両の前後方向前方に敷設され、かつ第1フロア底面6の敷設位置よりも敷設位置が高く設定された第2フロア底面7と、第1フロア底面6を覆う板状の蓋部材8とを備えた車両用収納装置4において、第2フロア底面7の下方であって、かつ第1フロア底面6側に第1ガイド46を設け、この第1ガイド46は、車両の前後方向前方から後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成され、第1ガイド46の上端が第2フロア底面7の下面7aに当接するように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前後方向後方に設けられる車両用収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の前後方向後方に設けられている荷室に、この荷室のフロア底面よりも下方に向かって掘り下げた収納凹部を設け、この収納凹部を蓋部材で閉塞することにより、用途に応じて様々な荷物を荷室に収納することができる車両用収納装置が提案されている。
例えば、車両用収納装置のフロア底面を、前後方向の一方の高さを他方の高さより高くすると共に、他方の高さをハッチバックのドア開口部における下端部の高さと略同一の高さとした段部を有するように形成し、この段部を閉塞する蓋部材を設けたものがある。この蓋部材は、車両の前後方向に断面した形状が略三角形状となるように形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これによれば、蓋部材を段部を閉塞するように配置すると、前後方向に断面した形状が略三角形状になっているので、フロア底面を傾斜させたスロープ状の床面にすることができる。すなわち、蓋部材は、上面が車両の後側に低くなるように傾斜させて配置することができ、重量物や、車輪を有する自転車、バイク、車椅子等の荷物を車両内に運び込み易くすることができる。
一方、蓋部材を上下反転させて段部を閉塞するように配置すると、蓋部材上が平坦になるので、買い物袋に収納した品物や、バッグ類等の一般的な大きさの荷物を蓋部材上に載置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓋部材は、この上部に荷物を積載することになるので、荷物の荷重に耐え得る剛性が必要となる。ここで、例えば車両を急ブレーキさせたり、車両が後突されたりすると、蓋部材に慣性力が作用して蓋部材に後方から前方に向かう荷重がかかり、蓋部材が前方に変位しようとする。この場合、蓋部材の剛性が高いと、蓋部材にかかる荷重を蓋部材自体で吸収することが困難であるという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、蓋部材の剛性を維持しつつ、蓋部材が受ける荷重を蓋部材自体で吸収しやすくなる車両用収納装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両(例えば、実施形態における車両1)の後方に設けた荷室(例えば、実施形態における荷室3)に、前記車両の前後方向後方に敷設された第1フロア底面(例えば、実施形態における第1フロア底面6)と、前記第1フロア底面よりも前記車両の前後方向前方に敷設され、かつ前記第1フロア底面の敷設位置よりも敷設位置が高く設定された第2フロア底面(例えば、実施形態における第2フロア底面7)と、前記第1フロア底面を覆う板状の蓋部材(例えば、実施形態における蓋部材8)とを備えた車両用収納装置(例えば、実施形態における車両用収納装置4)において、前記第2フロア底面の下方であって、かつ前記第1フロア底面の前記車両の前後方向前方にガイド(例えば、実施形態における第1ガイド46)を設け、このガイドは、前記車両の前後方向前方から後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成され、前記ガイドの上端が前記第2フロア底面の下面に当接するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、例えば、車両を急ブレーキさせたり、車両が後突されたりした際、蓋部材に作用する慣性力によってこの蓋部材が前方に変位すると、蓋部材の前端部がガイドに沿って第2フロア底面の下方に向かって案内される。つまり、蓋部材の後端部には、前方へ向かう慣性力が作用する一方、蓋部材の前端部には、ガイドによって下方に向かう力が作用する。このため、これらの力の合力により、蓋部材が曲折され易くなる。
また、ガイドの上端が第2フロア底面の下面に当接するように配置されているので、ガイドを設けない場合と比較して第2フロア底面が上からの荷重を受けやすくなる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記第2フロア底面は、前記ガイドの上端よりも前記車両の前後方向後方に向かって、かつ水平方向に沿って延出する延出部(例えば、実施形態における延出部49)を備えている一方、前記蓋部材の前記車両の前後方向前端に、前記第2フロア底面側に向かって突出する突出部(例えば、実施形態における突出部24)を設けると共に、前記突出部の上端から前記車両の前後方向後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成された傾斜面(例えば、実施形態における第1傾斜面21a)を設け、前記突出部の位置は、前記第1フロア底面を前記蓋部材が覆った状態で、前記延出部の下方に位置するように設定されていることを特徴とする。
【0010】
このように、延出部の下方に突出部を入り込ませることにより、蓋部材の上下のバタつきを抑えることができる。
さらに、延出部の下方に突出部が位置しているので、蓋部材に慣性力が作用した場合、蓋部材が第2フロア底面を乗り上げて前方に変位するのを防止できる。これに加え、傾斜面を設ける分、蓋部材の前端部をスムーズに第2フロア底面の下方に入り込ませることができる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、前記蓋部材は、この蓋部材の上面(例えば、実施形態における上面11b)を形成する第1表皮材(例えば、実施形態における第1表皮材21)と、前記蓋部材の下面(例えば、実施形態における下面11c)を形成する第2表皮材(例えば、実施形態における第2表皮材22)とが前記蓋部材の周縁で接合されてなる接合部(例えば、実施形態における接合部23)を備え、前記接合部の前記車両の前後方向前部は、前記突出部として構成されていることを特徴とする。
【0012】
このように、蓋部材の表面を第1表皮材と第2表皮材とにより被覆する場合、これら表皮材の接合部を突出部として利用するので、突出部を形成するための部品を別途配置する必要がなくなる。このため、製造コストを低減することが可能になると共に、蓋部材の軽量化を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載した発明によれば、例えば、車両を急ブレーキさせたり、車両が後突されたりした際、蓋部材に作用する慣性力によってこの蓋部材が前方に変位すると、蓋部材の前端部がガイドに沿って第2フロア底面の下方に向かって案内される。つまり、蓋部材の後端部には、前方へ向かう慣性力が作用する一方、蓋部材の前端部には、ガイドによって下方に向かう力が作用する。このため、これらの力の合力により、蓋部材が曲折され易くなるので、蓋部材にかかる荷重を蓋部材自体で吸収することが可能になる。
また、ガイドの上端が第2フロア底面の下面に当接するように配置されているので、ガイドを設けない場合と比較して第2フロア底面が上からの荷重を受けやすくなる。
【0014】
請求項2に記載した発明によれば、延出部の下方に突出部を入り込ませることにより、蓋部材の上下のバタつきを抑えることができる。
さらに、延出部の下方に突出部が位置しているので、蓋部材に慣性力が作用した場合、蓋部材が第2フロア底面を乗り上げて前方に変位するのを防止できる。これに加え、傾斜面を設ける分、蓋部材の前端部をスムーズに第2フロア底面の下方に入り込ませることができる。このため、蓋部材にかかる荷重をより確実に蓋部材自体で吸収することが可能になる。
【0015】
請求項3に記載した発明によれば、蓋部材の表面を第1表皮材と第2表皮材とにより被覆する場合、これら表皮材の接合部を突出部として利用するので、突出部を形成するための部品を別途配置する必要がなくなる。このため、製造コストを低減することが可能になると共に、蓋部材の軽量化を図ることが可能になる。よって、蓋部材の生産性、取り付け作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における車両の後部に設けられている荷室の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における車両の後部に設けられている荷室の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における蓋部材の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における蓋部材の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるリンフォースの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態におけるリンフォースの側面図である。
【図7】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図8】本発明の実施形態におけるシートビームアッセンブリの斜視図である。
【図9】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図10】本発明の実施形態におけるリンフォースの作用説明図である。
【図11】本発明の実施形態における蓋部材をフラットモード配置した状態のシートビームアッセンブリの作用説明図である。
【図12】本発明の実施形態における蓋部材を示し、(a)、(b)は蓋部材の挙動図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、図2は、車両の後部に設けられている荷室の斜視図であって、図1は車両用収納装置の使用方法の一例を示し、図2は車両用収納装置の使用方法の他の一例を示す。なお、以下の説明において、車両の前後方向前方を単に前方、車両の前後方向後方を単に後方、車両の高さ方向上方を単に上方、車両の高さ方向下方を単に下方などと表現して説明する場合がある。
【0018】
図1、図2に示すように、車両1は、この後端にドア開口部1aを有し、このドア開口部1aを不図示のハッチバックにより開閉することができるようになっている。また、車両1は、ドア開口部1aと、後部シート2との間に荷室3を備えており、ここに車両用収納装置4が設けられている。さらに、車両1は、後部シート2のシートバック2aを前側に倒すことにより、荷室3と車室5とが繋がるようになっている(図2参照)。
【0019】
(車両用収納装置)
車両用収納装置4は、荷室3の底部を形成し、かつ荷室3に荷物を積載可能な空間を形成するものである。車両用収納装置4は、荷室3の床面を構成する第1フロア底面6と、第1フロア底面6の前方に敷設され、第1フロア底面6よりも段差により敷設位置が高くなるように設定された第2フロア底面7と、第1フロア底面6を覆う蓋部材8とを有している。
【0020】
第1フロア底面6には、この大部分に段差により掘り下げられた収納凹部9が形成されている。第2フロア底面7は、後部シート2が配置される床面を構成しているものであって、第2フロア底面7の後縁部、つまり、第1フロア底面6側にフラップ部材10を備えている。このフラップ部材10は、後部シート2と荷室との間に形成される隙間を閉塞するためのものであって、後部シート2のシートバック2aの傾倒動作に追随可能なように可倒可能に構成されている。
【0021】
(蓋部材)
図3は、蓋部材の分解斜視図、図4は、蓋部材の斜視図である。
図1〜図4に示すように、蓋部材8は、後部シート2の座席幅に対応するように、第1蓋部材8aと、第2蓋部材8bとにより構成されている。すなわち、第1蓋部材8aの車幅方向の幅W1は、第2蓋部材8bの車幅方向の幅W2よりも長く設定されている。そして、2つの蓋部材8a,8bは、それぞれ独立して形成されている。
ここで、2つの蓋部材8a,8bの構造は同様であるので、以下の説明においては、第1蓋部材8aのみ説明し、第2蓋部材8bの説明は、第1蓋部材8aと同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
第1蓋部材8aは、前後方向に延設され、第1フロア底面6、および第1フロア底面6の大部分に形成されている収納凹部9を覆うボード部11と、ボード部11の長手方向一端側に設けられたスロープ部12とが一体成形されたものである。また、第1蓋部材8aは、スロープ部12を下側に向けると共に、後方に向けた状態で配置したり(図1参照、以下、フラットモード配置という)、スロープ部12を上側に向けると共に、前方に向けた状態で配置したり(図2参照、以下、スロープモード配置という)して使用することができるようになっている。
なお、以下の説明においては、各蓋部材8a,8bをフラットモード配置した状態で、各蓋部材8a,8bにおける前後方向前側を単に前側、前後方向後側を単に後側、高さ方向上側を単に上側、高さ方向下側を単に下側などと表現して説明する。
【0023】
図3に詳示するように、ボード部11は、第1蓋部材8aをフラットモード配置した状態において、長手方向に沿って、かつ水平方向に沿って延在する板状の発泡部材13を有している。発泡部材13には、長手方向中央よりもややスロープ部12とは反対側に、開口部15が形成されている。この開口部15は、第1蓋部材8aを持ち上げるためのハンドル部16を取り付けるためのものである。また、発泡部材13には、複数(この実施形態では4本)のリンフォース14がインサート成型されている。
【0024】
図5は、リンフォースの斜視図、図6は、リンフォースの側面図である。
図3〜図6に示すように、リンフォース14は、ボード部11の剛性を高めるために例えばアルミにより形成されたI型のフレームであって、前後方向に沿って延設されている。リンフォース14の長さは、ボード部11の長手方向全体に亘る長さに設定されており、ボード部11の全体の剛性を高めることができるようになっている。
【0025】
また、リンフォース14には、発泡部材13に形成されている開口部15のスロープ部12側縁に対応する位置に、スリット17が形成されている。スリット17は、第1蓋部材8aをフラットモード配置した状態において、リンフォース14の上端から高さ方向略中央に至る間に形成されている。そして、スリット17には、補強プレート18が上方から差込まれるようになっている。
【0026】
補強プレート18の肉厚T1は、スリット17の幅W3と略同一になるように設定されている。また、補強プレート18の高さ方向の長さL1は、リンフォース14の高さH1と略同一になるように設定されている。さらに、補強プレート18にもスリット19が形成されている。スリット19は、補強プレート18の高さ方向下端から高さ方向略中央に至る間に形成されている。
そして、これら補強プレート18のスリット19、およびリンフォース14のスリット17によって、リンフォース14と同一軸線上に補強プレート18を位置させることができる。差込まれた補強プレート18は、例えばホットメルトによりリンフォース14に固定され、このリンフォース14からの補強プレート18の脱落を防止できるようになっている。
【0027】
このように構成された複数のリンフォース14は、発泡部材13の短手方向に沿って等間隔に配置されている。なお、この実施形態において、第2蓋部材8bには、2本のリンフォース14が設けられている(図4参照)。
【0028】
図7は、図4のA−A線に沿う断面図である。
図3、図4、図7に示すように、発泡部材13には、この上面13a側に第1表皮材21が被覆されていると共に、下面13b側に第2表皮材22が被覆されている。これら表皮材21,22は、例えばPPシートにより形成されたものであって、発泡部材13の外周部で互いに重なり合うようになっている。この重なり合う各表皮材21,22の周縁は、接合部23として構成されている。この接合部23を熱溶着することによって、発泡部材13の表面に各表皮材21,22が固着される。
【0029】
ここで、図7に詳示するように、第2表皮材22の面積は、第1表皮材21の面積よりも大きく設定されており、第2表皮材22が発泡部材13の下半分からやや上側に至るまで覆った状態になる。このため、接合部23は、発泡部材13の厚さ方向中央よりもやや上側に位置した状態になる。また、接合部23は、第1表皮材21と第2表皮材22とを重ね合わせた状態で熱溶着するので、外側に向かって突出した突出部24を形成した状態になる。
【0030】
さらに、各表皮材21,22は、例えばPPシートを用い、このPPシートを発泡部材13を包み込むように形成されるので、発泡部材13の外周部に対応する位置に膨出部25を形成することができる。この膨出部25は、第1表皮材21側に形成された第1傾斜面21aと、第2表皮材22側に形成された第2傾斜面22aとにより構成されている。
【0031】
第1傾斜面21aは、ボード部11の最外周部に形成された突出部24からボード部11の中央に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成されている。すなわち、ボード部11の前端部11aにおいては、第1傾斜面21aは、突出部24から後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成された状態になっている。一方、第2傾斜面22aは、この傾斜角度が第1傾斜面21aの傾斜角度よりも鈍角となるように設定されている。
【0032】
図3、図4に示すように、各表皮材21,22の表面には、リンフォース14が配置されている箇所に対応するように、前後方向に長い板状のスライダ26が複数設けられている。スライダ26は、ボード部11に載置された荷物の移動をスムーズに行うためのものであって、発泡材や樹脂等によって形成されている。
【0033】
一方、ボード部11の後端部であって、かつボード部11の下面11cには、スロープ部12が一体成形されている。スロープ部12は、ボード部11の短手方向、つまり、車幅方向に延在する本体フレーム27と、本体フレーム27の両端に設けられた一対のサイドカバー28,28とを有している。
【0034】
本体フレーム27は、例えばアルミを押出し成形してなるものであって、多角筒状に形成されている。すなわち、本体フレーム27は、第1蓋部材8aをフラットモード配置した状態において、後端側に形成され、高さ方向に沿う後端面27aと、後端面27aと前方側で対向する前端面27bと、これら後端面27a、および前端面27bの上端側で両者27a,27bに跨る上面27cと、前端面27bから後端面27aに向かうに従って漸次高さが低くなるように形成された傾斜面27dと、傾斜面27dと後端面27aとに跨るように形成され、収納凹部9の底面を構成する第3フロア底面9a(図1参照)に当接する下面27eとを有している。
【0035】
また、後端面27aと上面27cとの接続部には、ボード部11の上面11b側に回り込むように延出形成されたサポート部29が一体成形されている。さらに、後端面27aと下面27eとの接続部には、段差部30が形成されている。この段差部30は、第1蓋部材8aをスロープモード配置した際、第1フロア底面6とスロープ部12との干渉を避けるためのものである(図2参照、詳細は後述する)。
【0036】
サイドカバー28は、樹脂により形成されたものであって、荷室3に対する本体フレーム27の端部の接触を阻止する役割を有していると共に、本体フレーム27の剛性を高める役割も有している。サイドカバー28は、本体フレーム27の両端を閉塞するように、本体フレーム27の断面形状に対応するように形成されたプレート部31を有している。プレート部31の中央の大部分には、本体フレーム27側に向かって突出されたインロー部32が一体成形されている。インロー部32は、本体フレーム27にインロー嵌合されるものである。
また、プレート部31の周縁には、本体フレーム27の開口縁を外側から覆うように立ち上がり形成された外嵌部33が設けられている。この外嵌部33は、本体フレーム27に外嵌されるものである。すなわち、サイドカバー28は、インロー部32、および外嵌部33によって本体フレーム27に固着される。
【0037】
このように構成された蓋部材8が載置される第1フロア底面6と、第1フロア底面6の前方に敷設されている第2フロア底面7の後部は、これら第1フロア底面6、および第2フロア底面7の後部の下方に設けられているシートビームアッセンブリ40に支持されている。
【0038】
(シートビームアッセンブリ)
図8は、シートビームアッセンブリの斜視図、図9は、図4のB−B線に沿う断面図である。
図4、図7〜図9に示すように、シートビームアッセンブリ40は、金属等の剛性の高い材料で形成されたものであって、第1フレーム41と、第1フレーム41の前方(図8における左方)に配置され、第1フレーム41と一体化された第2フレーム42とを有している。
【0039】
第1フレーム41は、車幅方向に延在する第1支柱43と、第1支柱43の両端から後方に向かって、かつ斜め下方に向かって屈曲延出する第2支柱44、および第3支柱45とにより構成されている。
第1支柱43には、この第1支柱43から後方に向かって、かつ斜め上方に向かって突出する第1ガイド46が複数設けられている。第1ガイド46は、断面略U字状に形成されたガイド本体46aを有しており、このガイド本体46aが上側に向かって開くように配置されている。
【0040】
ガイド本体46aの周縁には、外フランジ部47が一体成形されている。外フランジ部47の上端は、水平方向に沿って延出した状態になっており、ここに第2フロア底面7の下面7aが当接するようになっている。
一方、第2フロア底面7の下面7aには、第1ガイド46の上端に対応する位置に、第1ガイド46の上端を受け入れる凹部48が形成されている。第1ガイド46の上端に第2フロア底面7の凹部48が載置されることにより、第1ガイド46に第2フロア底面7の後部が支持された状態になる。
ここで、第2フロア底面7は、凹部48よりも後方側に向かって延出した部位を延出部49として構成している。この延出部49は、各蓋部材8a,8bをフラットモード配置した際、各蓋部材8a,8bの前部のバタつきを抑える役割を有している(詳細は後述する)。
【0041】
また、第1支柱43には、後方に向かって突出する第2ガイド51が複数設けられている。第2ガイド51は、隣接する第1ガイド46,46間の所定位置に配置されている。第2ガイド51の先端部は、断面略コの字状に形成されている。すなわち、第2ガイド51の先端部は、上壁51aと、この上壁51aの車幅方向左右から下方に向かって屈曲延出する側壁51b,51bとにより構成されている。第2ガイド51の上壁51aは、水平方向に沿って延在している。
【0042】
第2支柱44、および第3支柱45には、それぞれ先端に取り付け台座52,53が一体成形されている。これら取り付け台座52,53には、それぞれ不図示のボルトを挿通するための孔54,55が形成されている。これら孔54,55に不図示のボルトを挿通し、車両1に刻設されている雌ネジ部(不図示)にボルトを螺入することにより、車両1に第1フレーム41を締結固定できるようになっている。
【0043】
一方、第2フレーム42は、第1フレーム41の第2支柱44、および第3支柱45からそれぞれ前方に向かって延出する第1支持フレーム56、および第2支持フレーム57と、これら第1支持フレーム56と第2支持フレーム57との間に跨るように車幅方向に延在する第4支柱58とにより構成されている。
【0044】
第1支持フレーム56、および第2支持フレーム57には、それぞれ先端に取り付け台座61,62が一体成形されている。これら取り付け台座61,62には、それぞれ不図示のボルトを挿通するための孔(不図示)が形成されている。すなわち、不図示のボルトによって、車両1に取り付け台座61,62を締結固定し、これによって、車両1に第2フレーム42が固定される。
また、第2フレーム42の第4支柱58と、第1フレーム41の第1支柱43との間には、両者58,43に跨る連結バー63が複数設けられている。これら連結バー63は、シートビームアッセンブリ40の剛性を高めるためのものである。
【0045】
ここで、第1支柱43、および第1支柱43に立設されている第2ガイド51の周囲には、これらを第1支柱43、および第2ガイド51を覆うように形成された樹脂製のカバー71が設けられている。
より具体的には、カバー71は、第2ガイド51を取り囲むように断面略コの字状に形成された第1フロア形成部72を有している。第1フロア形成部72は、第2ガイド51の上壁51aに当接する上面部72aと、上面部72aの後端(図7、図9における右端)から下方に延出し、第2ガイド51の先端を覆う側面部72bと、側面部72bの下端(図7、図9における下端)から前方(図7、図9における左方)に向かって延出する下面部72cとにより構成されている。
【0046】
そして、第1フロア形成部72の上面部72aが、第1フロア底面6として構成されている。すなわち、第1フロア底面6は、第2ガイド51に支持された状態になっている。
また、第1フロア形成部72の上面部72aには、複数のクッション73が車幅方向に沿って等間隔に配置されている。つまり、各蓋部材8a,8bにおけるボード部11の前端部11aは、第1フロア底面6にクッション73を介して支持された状態になっている。クッション73は、弾性を有するゴム等により形成されている。
【0047】
さらに、第1フロア形成部72の上面部72aには、後方縁に第1支柱43の上方を覆う上カバー部74が一体成形されている。
上カバー部74は、第2フロア底面7の下面7aに当接する上面部74aと、上面部74aの後縁から下方に向かって延出された後側部74bと、上面部74aの前縁から下方に向かって延出された前側部74cとにより構成されている。そして、後側部74bが第1フロア形成部72の上面部72aに連設されている一方、前側部74cが第1支柱43に取り付けられている。
【0048】
ここで、上カバー部74の前側部74cは、第2フロア底面7の延出部49の先端よりもやや奥まった位置に形成されている。このため、第2フロア底面7の延出部49、上カバー部74の前側部74c、および第1フロア形成部72の上面部72aにより、各蓋部材8a,8bのボード部11の前端部11aを受け入れ可能な受け入れ凹部76が形成される。
【0049】
また、第1フロア形成部72の下面部72cには、前端縁(図7における左端縁)から下方に向かって延出する取り付け壁75が一体成形されている。この取り付け壁75は、荷室3に設けられている収納凹部9の前側壁9b(図1参照)に重なり合っており、この前側壁9bに固定された状態になっている。すなわち、カバー71は、荷室3の収納凹部9と、シートビームアッセンブリ40が収納されている収納部S1とを隔てるための隔壁の役割も有している。
【0050】
一方、図1、図2に示すように、車両1のドア開口部1aの下部には、収納凹部9の第3フロア底面9aに連なるようにガーニッシュ81が設けられている。ガーニッシュ81は、第3フロア底面9aよりも突出形成されている。
また、荷室3の側壁を構成するリヤサイドライニング3aは、ドア開口部1aの下部の内側に回りこむように形成されており、ガーニッシュ81の表面と面一になっている。そして、これらガーニッシュ81、およびリヤサイドライニング3aの前端部が、蓋部材8のドア開口部81a側への抜けを規制する抜け止めとして機能している。
【0051】
このような構成のもと、図1に示すように、第1蓋部材8a、および第2蓋部材をフラットモード配置とすると、各蓋部材8a,8bは、スロープ部12の下面27eが第3フロア底面9aの後端側に当接すると共に、スロープ部12の後端面27aがガーニッシュ81に当接した状態になる。また、第1フロア底面6に、ボード部11の前端部11aの下面11cが載置される。
【0052】
このとき、図7に示すように、シートビームアッセンブリ40に設けられているカバー71の受け入れ凹部76には、ボード部11の前端部11aが臨まされた状態になる。これにより、ボード部11の前端部11aに形成されている突出部24は、第2フロア底面7の延出部49の下方に位置した状態になる。また、ボード部11の前端部11aに形成されている第1傾斜面21aは、第2フロア底面7の延出部49における下面7a側の角部に当接した状態になる。これにより、ボード部11の前端部11aの上下方向の変位が規制され、この前端部11aのバタつきを抑えることができる。
【0053】
また、第1フロア底面6にボード部11の前端部11aが載置された状態では、ボード部11の上面11bと第2フロア底面7の上面7bとが略面一になっている。すなわち、第1フロア底面6と第2フロア底面7との間の高さH1は、第1フロア底面6にボード部11の前端部11aを載置した状態において、ボード部11の上面11bと第2フロア底面7の上面7bとが略面一となるように設定されている。
【0054】
このように、各蓋部材8a,8bが配置されることにより、荷室3に設けられている収納凹部9が各蓋部材8a,8bにより覆われた状態になる。そして、収納凹部9と各蓋部材8a,8bとにより囲まれた空間K1が形成され、この空間K1に荷物を収納することができると共に、ボード部11の上面11bに荷物を載置することができる。
ここで、図5に示すように、ボード部11のリンフォース14には、スリット17が形成されているが、このスリット17には、補強プレート18が差込まれているので、リンフォース14は、荷物の荷重に耐え得る。
【0055】
より詳しく、図10に基づいて説明する。
図10は、リンフォースの作用説明図である。
同図に示すように、各蓋部材8a,8bをフラットモード配置した状態にあっては、リンフォース14の上部にスリット17が形成された状態になる。この状態で上側から荷重を受けると(図8における矢印Y1参照)、リンフォース14には、これが下側に向かって撓むような力が作用する(図10における符号14’参照)。つまり、リンフォース14のスリット17の両側は、スリット17の下端17aを中心にして内側に変位しようとする(図10における矢印Y2参照)。
【0056】
しかしながら、スリット17には、補強プレート18が差込まれているので、スリット17の下端17aを中心にして、スリット17の両側が内側に変位することを防止できる。このため、リンフォース14は、フラットモードにおいて、荷物の荷重を十分受けることができ、リンフォース14の下側に向かう撓みを防止できる。
【0057】
一方、図2に示すように、第1蓋部材8aをスロープモード配置とすると、ボード部11の上面11b全体が収納凹部9の第3フロア底面9aに当接すると共に、スロープ部12に形成されている段差部30がカバー71の第1フロア形成部72の下側に位置した状態になる。すなわち、第1蓋部材8aのスロープ部12は、収納凹部9の第3フロア底面9aと、カバー71の第1フロア形成部72とで上下方向の移動が規制された状態になる。これにより、スロープ部12のバタつきを抑えることができる。
【0058】
このように、第1蓋部材8aをスロープモード配置とすることにより、ボード部11の高さをフラットモード配置時よりも低く設定することができる。これにより、背高な荷物もスムーズに荷室3に運び込むことが可能になる。
なお、図2においては、第1蓋部材8aのみをスロープモード配置した状態を示しているが、第1蓋部材8a、および第2蓋部材8bをスロープモード配置とすることも可能であるし、第1蓋部材8aをフラットモード配置とする一方、第2蓋部材8bをスロープモード配置とすることも可能である。
【0059】
(シートビームアッセンブリの作用)
次に、図10〜図12に基づいて、シートビームアッセンブリ40の作用について説明する。
図11は、蓋部材をフラットモード配置した状態におけるシートビームアッセンブリの作用説明図、図12は、蓋部材を示し、(a)、(b)は蓋部材の後方から前方に向かって外部過重がかかった際の挙動説明図である。
図11、図12(a)に示すように、蓋部材8をフラットモード配置した状態における車両1の停止時や通常の走行時にあっては、前述したように、第1フロア底面6上にボード部11の前端部11aが載置されている。
【0060】
ここで、例えば車両1を急ブレーキさせたり、車両1が後突されたりすると、蓋部材8に慣性力が作用し、蓋部材8に後方から前方に向かう荷重がかかる。すると、蓋部材8が前方に向かって変位しようとする(図12(a)における矢印参照)。
このとき、蓋部材8は、第2フロア底面7の延出部49における下面7a側の角部に、ボード部11の第1傾斜面21aが当接した状態となっている。このため、ボード部11の前端部11aには、下側に向かう力が作用し、ボード部11の前端部11aが第2フロア底面7を乗り上げてしまうのを防止できる。
【0061】
また、カバー71が樹脂により形成されているので、蓋部材8に、シートビームアッセンブリ40に設けられているカバー71を突き破ってしまうような大きさの荷重がかかる場合がある。このような場合、ボード部11の前端部11aが上カバー部74を構成している前側部74cを突き破り、第2フロア底面7の下側に入り込む(図11における符号11’参照)。
【0062】
そして、さらに蓋部材8が前方へと変位し、ボード部11の前端部11aがシートビームアッセンブリ40の第1フレーム41に設けられている第1ガイド46に当接する(図11における符号11’’)。
このとき、第1ガイド46は、金属等の剛性の高い材料で形成されていることに加え、第1支柱43から後方に向かって、かつ斜め上方に向かって突設された状態になっているので、ボード部11の前端部11aがガイドに沿って斜め下方に向かって変位しようとする(図11における矢印参照)。
【0063】
このような状態では、ボード部11の前端部11aには、斜め下方に向かう力が作用している一方、スロープ部12には水平方向前方に向かう力が作用していることになる。そして、これらの合力によって、ボード部11の長手方向中央部近傍には、上側に向かう力、つまり、山折側の力が作用する(図10における矢印Y3参照)。
【0064】
ここで、図10に示すように、蓋部材8をフラットモード配置した状態においては、ボード部11を構成するリンフォース14は、上部にスリット17が形成されている状態になっている。この状態で上側に向かう力が作用すると、リンフォース14のスリット17の両側は、スリット17の下端17aを中心にして外側に変位しようとする(図10における矢印Y4参照)。
【0065】
この場合、図10、図12(b)に示すように、スリット17に差し込まれている補強プレート18が何ら作用せず、スリット17の両側が下端17aを中心して外側に向かって変位する。そして、ボード部11は、この前端部11aがシートビームアッセンブリ40の第1支柱43に当接しつつ、スリット17を中心にして山折側に向かって曲折する。
【0066】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、例えば、車両1を急ブレーキさせたり、車両1が後突されたりした際、蓋部材8のボード部11が曲折することにより、蓋部材8に作用する慣性力による衝撃を、蓋部材8自体で容易に吸収することができる。
また、シートビームアッセンブリ40の第1ガイド46は、この上端が第2フロア底面7の下面7aに当接するように配置されているので、第1ガイド46を設けない場合と比較して第2フロア底面7が上からの荷重を受けやすくなる。
【0067】
さらに、第2フロア底面7に、第1ガイド46の上端よりも後方に向かって延出する延出部49を形成し、蓋部材8をフラットモード配置した状態において、延出部49の下方にボード部11の突出部24が位置するように構成されている。そして、ボード部11の前端部11aに形成されている第1傾斜面21aは、第2フロア底面7の延出部49における下面7a側の角部に当接した状態になる。
このため、ボード部11の前端部11aの上下方向の変位が規制され、この前端部11aのバタつきを抑えることができる。また、蓋部材8に慣性力が作用した際、ボード部11の前端部11aが第2フロア底面7を乗り上げてしまうことを確実に防止できる。
【0068】
そして、蓋部材8のボード部11を形成するにあたって、発泡部材13の表面を被覆する第1表皮材21、および第2表皮材22を発泡部材13の外周部で重なり合わせて接合部23を形成し、さらに、この接合部23をボード部11の前端部11aを第2フロア底面7への乗り上げを防止するための突出部24として機能させている。このため、別部材で突出部24を形成する必要がない分、製造コストを低減できると共に、蓋部材8全体の軽量化を図ることができる。よって、蓋部材8の生産性、取り付け作業性を向上させることができる。
【0069】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ボード部11の外周部に突出部24(接合部23)を形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ボード部11に突出部24を形成しなくてもよい。この場合、少なくともボード部11に形成されている第1傾斜面21aの前端部を、第2フロア底面7の延出部49よりも下側に位置させればよい。
【符号の説明】
【0070】
1…車両 3…荷室 4…車両用収納装置 6…第1フロア底面 7…第2フロア底面 8…蓋部材 8a…第1蓋部材 8b…第2蓋部材 11…ボード部 11a…前端部 11b…上面 11c…下面 12…スロープ部 21…第1表皮材 21a…第1傾斜面(傾斜面) 22…第2表皮材 23…接合部 24…突出部 46…第1ガイド(ガイド) 49…延出部
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前後方向後方に設けられる車両用収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の前後方向後方に設けられている荷室に、この荷室のフロア底面よりも下方に向かって掘り下げた収納凹部を設け、この収納凹部を蓋部材で閉塞することにより、用途に応じて様々な荷物を荷室に収納することができる車両用収納装置が提案されている。
例えば、車両用収納装置のフロア底面を、前後方向の一方の高さを他方の高さより高くすると共に、他方の高さをハッチバックのドア開口部における下端部の高さと略同一の高さとした段部を有するように形成し、この段部を閉塞する蓋部材を設けたものがある。この蓋部材は、車両の前後方向に断面した形状が略三角形状となるように形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これによれば、蓋部材を段部を閉塞するように配置すると、前後方向に断面した形状が略三角形状になっているので、フロア底面を傾斜させたスロープ状の床面にすることができる。すなわち、蓋部材は、上面が車両の後側に低くなるように傾斜させて配置することができ、重量物や、車輪を有する自転車、バイク、車椅子等の荷物を車両内に運び込み易くすることができる。
一方、蓋部材を上下反転させて段部を閉塞するように配置すると、蓋部材上が平坦になるので、買い物袋に収納した品物や、バッグ類等の一般的な大きさの荷物を蓋部材上に載置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓋部材は、この上部に荷物を積載することになるので、荷物の荷重に耐え得る剛性が必要となる。ここで、例えば車両を急ブレーキさせたり、車両が後突されたりすると、蓋部材に慣性力が作用して蓋部材に後方から前方に向かう荷重がかかり、蓋部材が前方に変位しようとする。この場合、蓋部材の剛性が高いと、蓋部材にかかる荷重を蓋部材自体で吸収することが困難であるという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、蓋部材の剛性を維持しつつ、蓋部材が受ける荷重を蓋部材自体で吸収しやすくなる車両用収納装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両(例えば、実施形態における車両1)の後方に設けた荷室(例えば、実施形態における荷室3)に、前記車両の前後方向後方に敷設された第1フロア底面(例えば、実施形態における第1フロア底面6)と、前記第1フロア底面よりも前記車両の前後方向前方に敷設され、かつ前記第1フロア底面の敷設位置よりも敷設位置が高く設定された第2フロア底面(例えば、実施形態における第2フロア底面7)と、前記第1フロア底面を覆う板状の蓋部材(例えば、実施形態における蓋部材8)とを備えた車両用収納装置(例えば、実施形態における車両用収納装置4)において、前記第2フロア底面の下方であって、かつ前記第1フロア底面の前記車両の前後方向前方にガイド(例えば、実施形態における第1ガイド46)を設け、このガイドは、前記車両の前後方向前方から後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成され、前記ガイドの上端が前記第2フロア底面の下面に当接するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、例えば、車両を急ブレーキさせたり、車両が後突されたりした際、蓋部材に作用する慣性力によってこの蓋部材が前方に変位すると、蓋部材の前端部がガイドに沿って第2フロア底面の下方に向かって案内される。つまり、蓋部材の後端部には、前方へ向かう慣性力が作用する一方、蓋部材の前端部には、ガイドによって下方に向かう力が作用する。このため、これらの力の合力により、蓋部材が曲折され易くなる。
また、ガイドの上端が第2フロア底面の下面に当接するように配置されているので、ガイドを設けない場合と比較して第2フロア底面が上からの荷重を受けやすくなる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記第2フロア底面は、前記ガイドの上端よりも前記車両の前後方向後方に向かって、かつ水平方向に沿って延出する延出部(例えば、実施形態における延出部49)を備えている一方、前記蓋部材の前記車両の前後方向前端に、前記第2フロア底面側に向かって突出する突出部(例えば、実施形態における突出部24)を設けると共に、前記突出部の上端から前記車両の前後方向後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成された傾斜面(例えば、実施形態における第1傾斜面21a)を設け、前記突出部の位置は、前記第1フロア底面を前記蓋部材が覆った状態で、前記延出部の下方に位置するように設定されていることを特徴とする。
【0010】
このように、延出部の下方に突出部を入り込ませることにより、蓋部材の上下のバタつきを抑えることができる。
さらに、延出部の下方に突出部が位置しているので、蓋部材に慣性力が作用した場合、蓋部材が第2フロア底面を乗り上げて前方に変位するのを防止できる。これに加え、傾斜面を設ける分、蓋部材の前端部をスムーズに第2フロア底面の下方に入り込ませることができる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、前記蓋部材は、この蓋部材の上面(例えば、実施形態における上面11b)を形成する第1表皮材(例えば、実施形態における第1表皮材21)と、前記蓋部材の下面(例えば、実施形態における下面11c)を形成する第2表皮材(例えば、実施形態における第2表皮材22)とが前記蓋部材の周縁で接合されてなる接合部(例えば、実施形態における接合部23)を備え、前記接合部の前記車両の前後方向前部は、前記突出部として構成されていることを特徴とする。
【0012】
このように、蓋部材の表面を第1表皮材と第2表皮材とにより被覆する場合、これら表皮材の接合部を突出部として利用するので、突出部を形成するための部品を別途配置する必要がなくなる。このため、製造コストを低減することが可能になると共に、蓋部材の軽量化を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載した発明によれば、例えば、車両を急ブレーキさせたり、車両が後突されたりした際、蓋部材に作用する慣性力によってこの蓋部材が前方に変位すると、蓋部材の前端部がガイドに沿って第2フロア底面の下方に向かって案内される。つまり、蓋部材の後端部には、前方へ向かう慣性力が作用する一方、蓋部材の前端部には、ガイドによって下方に向かう力が作用する。このため、これらの力の合力により、蓋部材が曲折され易くなるので、蓋部材にかかる荷重を蓋部材自体で吸収することが可能になる。
また、ガイドの上端が第2フロア底面の下面に当接するように配置されているので、ガイドを設けない場合と比較して第2フロア底面が上からの荷重を受けやすくなる。
【0014】
請求項2に記載した発明によれば、延出部の下方に突出部を入り込ませることにより、蓋部材の上下のバタつきを抑えることができる。
さらに、延出部の下方に突出部が位置しているので、蓋部材に慣性力が作用した場合、蓋部材が第2フロア底面を乗り上げて前方に変位するのを防止できる。これに加え、傾斜面を設ける分、蓋部材の前端部をスムーズに第2フロア底面の下方に入り込ませることができる。このため、蓋部材にかかる荷重をより確実に蓋部材自体で吸収することが可能になる。
【0015】
請求項3に記載した発明によれば、蓋部材の表面を第1表皮材と第2表皮材とにより被覆する場合、これら表皮材の接合部を突出部として利用するので、突出部を形成するための部品を別途配置する必要がなくなる。このため、製造コストを低減することが可能になると共に、蓋部材の軽量化を図ることが可能になる。よって、蓋部材の生産性、取り付け作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における車両の後部に設けられている荷室の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における車両の後部に設けられている荷室の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における蓋部材の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における蓋部材の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるリンフォースの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態におけるリンフォースの側面図である。
【図7】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図8】本発明の実施形態におけるシートビームアッセンブリの斜視図である。
【図9】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図10】本発明の実施形態におけるリンフォースの作用説明図である。
【図11】本発明の実施形態における蓋部材をフラットモード配置した状態のシートビームアッセンブリの作用説明図である。
【図12】本発明の実施形態における蓋部材を示し、(a)、(b)は蓋部材の挙動図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、図2は、車両の後部に設けられている荷室の斜視図であって、図1は車両用収納装置の使用方法の一例を示し、図2は車両用収納装置の使用方法の他の一例を示す。なお、以下の説明において、車両の前後方向前方を単に前方、車両の前後方向後方を単に後方、車両の高さ方向上方を単に上方、車両の高さ方向下方を単に下方などと表現して説明する場合がある。
【0018】
図1、図2に示すように、車両1は、この後端にドア開口部1aを有し、このドア開口部1aを不図示のハッチバックにより開閉することができるようになっている。また、車両1は、ドア開口部1aと、後部シート2との間に荷室3を備えており、ここに車両用収納装置4が設けられている。さらに、車両1は、後部シート2のシートバック2aを前側に倒すことにより、荷室3と車室5とが繋がるようになっている(図2参照)。
【0019】
(車両用収納装置)
車両用収納装置4は、荷室3の底部を形成し、かつ荷室3に荷物を積載可能な空間を形成するものである。車両用収納装置4は、荷室3の床面を構成する第1フロア底面6と、第1フロア底面6の前方に敷設され、第1フロア底面6よりも段差により敷設位置が高くなるように設定された第2フロア底面7と、第1フロア底面6を覆う蓋部材8とを有している。
【0020】
第1フロア底面6には、この大部分に段差により掘り下げられた収納凹部9が形成されている。第2フロア底面7は、後部シート2が配置される床面を構成しているものであって、第2フロア底面7の後縁部、つまり、第1フロア底面6側にフラップ部材10を備えている。このフラップ部材10は、後部シート2と荷室との間に形成される隙間を閉塞するためのものであって、後部シート2のシートバック2aの傾倒動作に追随可能なように可倒可能に構成されている。
【0021】
(蓋部材)
図3は、蓋部材の分解斜視図、図4は、蓋部材の斜視図である。
図1〜図4に示すように、蓋部材8は、後部シート2の座席幅に対応するように、第1蓋部材8aと、第2蓋部材8bとにより構成されている。すなわち、第1蓋部材8aの車幅方向の幅W1は、第2蓋部材8bの車幅方向の幅W2よりも長く設定されている。そして、2つの蓋部材8a,8bは、それぞれ独立して形成されている。
ここで、2つの蓋部材8a,8bの構造は同様であるので、以下の説明においては、第1蓋部材8aのみ説明し、第2蓋部材8bの説明は、第1蓋部材8aと同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
第1蓋部材8aは、前後方向に延設され、第1フロア底面6、および第1フロア底面6の大部分に形成されている収納凹部9を覆うボード部11と、ボード部11の長手方向一端側に設けられたスロープ部12とが一体成形されたものである。また、第1蓋部材8aは、スロープ部12を下側に向けると共に、後方に向けた状態で配置したり(図1参照、以下、フラットモード配置という)、スロープ部12を上側に向けると共に、前方に向けた状態で配置したり(図2参照、以下、スロープモード配置という)して使用することができるようになっている。
なお、以下の説明においては、各蓋部材8a,8bをフラットモード配置した状態で、各蓋部材8a,8bにおける前後方向前側を単に前側、前後方向後側を単に後側、高さ方向上側を単に上側、高さ方向下側を単に下側などと表現して説明する。
【0023】
図3に詳示するように、ボード部11は、第1蓋部材8aをフラットモード配置した状態において、長手方向に沿って、かつ水平方向に沿って延在する板状の発泡部材13を有している。発泡部材13には、長手方向中央よりもややスロープ部12とは反対側に、開口部15が形成されている。この開口部15は、第1蓋部材8aを持ち上げるためのハンドル部16を取り付けるためのものである。また、発泡部材13には、複数(この実施形態では4本)のリンフォース14がインサート成型されている。
【0024】
図5は、リンフォースの斜視図、図6は、リンフォースの側面図である。
図3〜図6に示すように、リンフォース14は、ボード部11の剛性を高めるために例えばアルミにより形成されたI型のフレームであって、前後方向に沿って延設されている。リンフォース14の長さは、ボード部11の長手方向全体に亘る長さに設定されており、ボード部11の全体の剛性を高めることができるようになっている。
【0025】
また、リンフォース14には、発泡部材13に形成されている開口部15のスロープ部12側縁に対応する位置に、スリット17が形成されている。スリット17は、第1蓋部材8aをフラットモード配置した状態において、リンフォース14の上端から高さ方向略中央に至る間に形成されている。そして、スリット17には、補強プレート18が上方から差込まれるようになっている。
【0026】
補強プレート18の肉厚T1は、スリット17の幅W3と略同一になるように設定されている。また、補強プレート18の高さ方向の長さL1は、リンフォース14の高さH1と略同一になるように設定されている。さらに、補強プレート18にもスリット19が形成されている。スリット19は、補強プレート18の高さ方向下端から高さ方向略中央に至る間に形成されている。
そして、これら補強プレート18のスリット19、およびリンフォース14のスリット17によって、リンフォース14と同一軸線上に補強プレート18を位置させることができる。差込まれた補強プレート18は、例えばホットメルトによりリンフォース14に固定され、このリンフォース14からの補強プレート18の脱落を防止できるようになっている。
【0027】
このように構成された複数のリンフォース14は、発泡部材13の短手方向に沿って等間隔に配置されている。なお、この実施形態において、第2蓋部材8bには、2本のリンフォース14が設けられている(図4参照)。
【0028】
図7は、図4のA−A線に沿う断面図である。
図3、図4、図7に示すように、発泡部材13には、この上面13a側に第1表皮材21が被覆されていると共に、下面13b側に第2表皮材22が被覆されている。これら表皮材21,22は、例えばPPシートにより形成されたものであって、発泡部材13の外周部で互いに重なり合うようになっている。この重なり合う各表皮材21,22の周縁は、接合部23として構成されている。この接合部23を熱溶着することによって、発泡部材13の表面に各表皮材21,22が固着される。
【0029】
ここで、図7に詳示するように、第2表皮材22の面積は、第1表皮材21の面積よりも大きく設定されており、第2表皮材22が発泡部材13の下半分からやや上側に至るまで覆った状態になる。このため、接合部23は、発泡部材13の厚さ方向中央よりもやや上側に位置した状態になる。また、接合部23は、第1表皮材21と第2表皮材22とを重ね合わせた状態で熱溶着するので、外側に向かって突出した突出部24を形成した状態になる。
【0030】
さらに、各表皮材21,22は、例えばPPシートを用い、このPPシートを発泡部材13を包み込むように形成されるので、発泡部材13の外周部に対応する位置に膨出部25を形成することができる。この膨出部25は、第1表皮材21側に形成された第1傾斜面21aと、第2表皮材22側に形成された第2傾斜面22aとにより構成されている。
【0031】
第1傾斜面21aは、ボード部11の最外周部に形成された突出部24からボード部11の中央に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成されている。すなわち、ボード部11の前端部11aにおいては、第1傾斜面21aは、突出部24から後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成された状態になっている。一方、第2傾斜面22aは、この傾斜角度が第1傾斜面21aの傾斜角度よりも鈍角となるように設定されている。
【0032】
図3、図4に示すように、各表皮材21,22の表面には、リンフォース14が配置されている箇所に対応するように、前後方向に長い板状のスライダ26が複数設けられている。スライダ26は、ボード部11に載置された荷物の移動をスムーズに行うためのものであって、発泡材や樹脂等によって形成されている。
【0033】
一方、ボード部11の後端部であって、かつボード部11の下面11cには、スロープ部12が一体成形されている。スロープ部12は、ボード部11の短手方向、つまり、車幅方向に延在する本体フレーム27と、本体フレーム27の両端に設けられた一対のサイドカバー28,28とを有している。
【0034】
本体フレーム27は、例えばアルミを押出し成形してなるものであって、多角筒状に形成されている。すなわち、本体フレーム27は、第1蓋部材8aをフラットモード配置した状態において、後端側に形成され、高さ方向に沿う後端面27aと、後端面27aと前方側で対向する前端面27bと、これら後端面27a、および前端面27bの上端側で両者27a,27bに跨る上面27cと、前端面27bから後端面27aに向かうに従って漸次高さが低くなるように形成された傾斜面27dと、傾斜面27dと後端面27aとに跨るように形成され、収納凹部9の底面を構成する第3フロア底面9a(図1参照)に当接する下面27eとを有している。
【0035】
また、後端面27aと上面27cとの接続部には、ボード部11の上面11b側に回り込むように延出形成されたサポート部29が一体成形されている。さらに、後端面27aと下面27eとの接続部には、段差部30が形成されている。この段差部30は、第1蓋部材8aをスロープモード配置した際、第1フロア底面6とスロープ部12との干渉を避けるためのものである(図2参照、詳細は後述する)。
【0036】
サイドカバー28は、樹脂により形成されたものであって、荷室3に対する本体フレーム27の端部の接触を阻止する役割を有していると共に、本体フレーム27の剛性を高める役割も有している。サイドカバー28は、本体フレーム27の両端を閉塞するように、本体フレーム27の断面形状に対応するように形成されたプレート部31を有している。プレート部31の中央の大部分には、本体フレーム27側に向かって突出されたインロー部32が一体成形されている。インロー部32は、本体フレーム27にインロー嵌合されるものである。
また、プレート部31の周縁には、本体フレーム27の開口縁を外側から覆うように立ち上がり形成された外嵌部33が設けられている。この外嵌部33は、本体フレーム27に外嵌されるものである。すなわち、サイドカバー28は、インロー部32、および外嵌部33によって本体フレーム27に固着される。
【0037】
このように構成された蓋部材8が載置される第1フロア底面6と、第1フロア底面6の前方に敷設されている第2フロア底面7の後部は、これら第1フロア底面6、および第2フロア底面7の後部の下方に設けられているシートビームアッセンブリ40に支持されている。
【0038】
(シートビームアッセンブリ)
図8は、シートビームアッセンブリの斜視図、図9は、図4のB−B線に沿う断面図である。
図4、図7〜図9に示すように、シートビームアッセンブリ40は、金属等の剛性の高い材料で形成されたものであって、第1フレーム41と、第1フレーム41の前方(図8における左方)に配置され、第1フレーム41と一体化された第2フレーム42とを有している。
【0039】
第1フレーム41は、車幅方向に延在する第1支柱43と、第1支柱43の両端から後方に向かって、かつ斜め下方に向かって屈曲延出する第2支柱44、および第3支柱45とにより構成されている。
第1支柱43には、この第1支柱43から後方に向かって、かつ斜め上方に向かって突出する第1ガイド46が複数設けられている。第1ガイド46は、断面略U字状に形成されたガイド本体46aを有しており、このガイド本体46aが上側に向かって開くように配置されている。
【0040】
ガイド本体46aの周縁には、外フランジ部47が一体成形されている。外フランジ部47の上端は、水平方向に沿って延出した状態になっており、ここに第2フロア底面7の下面7aが当接するようになっている。
一方、第2フロア底面7の下面7aには、第1ガイド46の上端に対応する位置に、第1ガイド46の上端を受け入れる凹部48が形成されている。第1ガイド46の上端に第2フロア底面7の凹部48が載置されることにより、第1ガイド46に第2フロア底面7の後部が支持された状態になる。
ここで、第2フロア底面7は、凹部48よりも後方側に向かって延出した部位を延出部49として構成している。この延出部49は、各蓋部材8a,8bをフラットモード配置した際、各蓋部材8a,8bの前部のバタつきを抑える役割を有している(詳細は後述する)。
【0041】
また、第1支柱43には、後方に向かって突出する第2ガイド51が複数設けられている。第2ガイド51は、隣接する第1ガイド46,46間の所定位置に配置されている。第2ガイド51の先端部は、断面略コの字状に形成されている。すなわち、第2ガイド51の先端部は、上壁51aと、この上壁51aの車幅方向左右から下方に向かって屈曲延出する側壁51b,51bとにより構成されている。第2ガイド51の上壁51aは、水平方向に沿って延在している。
【0042】
第2支柱44、および第3支柱45には、それぞれ先端に取り付け台座52,53が一体成形されている。これら取り付け台座52,53には、それぞれ不図示のボルトを挿通するための孔54,55が形成されている。これら孔54,55に不図示のボルトを挿通し、車両1に刻設されている雌ネジ部(不図示)にボルトを螺入することにより、車両1に第1フレーム41を締結固定できるようになっている。
【0043】
一方、第2フレーム42は、第1フレーム41の第2支柱44、および第3支柱45からそれぞれ前方に向かって延出する第1支持フレーム56、および第2支持フレーム57と、これら第1支持フレーム56と第2支持フレーム57との間に跨るように車幅方向に延在する第4支柱58とにより構成されている。
【0044】
第1支持フレーム56、および第2支持フレーム57には、それぞれ先端に取り付け台座61,62が一体成形されている。これら取り付け台座61,62には、それぞれ不図示のボルトを挿通するための孔(不図示)が形成されている。すなわち、不図示のボルトによって、車両1に取り付け台座61,62を締結固定し、これによって、車両1に第2フレーム42が固定される。
また、第2フレーム42の第4支柱58と、第1フレーム41の第1支柱43との間には、両者58,43に跨る連結バー63が複数設けられている。これら連結バー63は、シートビームアッセンブリ40の剛性を高めるためのものである。
【0045】
ここで、第1支柱43、および第1支柱43に立設されている第2ガイド51の周囲には、これらを第1支柱43、および第2ガイド51を覆うように形成された樹脂製のカバー71が設けられている。
より具体的には、カバー71は、第2ガイド51を取り囲むように断面略コの字状に形成された第1フロア形成部72を有している。第1フロア形成部72は、第2ガイド51の上壁51aに当接する上面部72aと、上面部72aの後端(図7、図9における右端)から下方に延出し、第2ガイド51の先端を覆う側面部72bと、側面部72bの下端(図7、図9における下端)から前方(図7、図9における左方)に向かって延出する下面部72cとにより構成されている。
【0046】
そして、第1フロア形成部72の上面部72aが、第1フロア底面6として構成されている。すなわち、第1フロア底面6は、第2ガイド51に支持された状態になっている。
また、第1フロア形成部72の上面部72aには、複数のクッション73が車幅方向に沿って等間隔に配置されている。つまり、各蓋部材8a,8bにおけるボード部11の前端部11aは、第1フロア底面6にクッション73を介して支持された状態になっている。クッション73は、弾性を有するゴム等により形成されている。
【0047】
さらに、第1フロア形成部72の上面部72aには、後方縁に第1支柱43の上方を覆う上カバー部74が一体成形されている。
上カバー部74は、第2フロア底面7の下面7aに当接する上面部74aと、上面部74aの後縁から下方に向かって延出された後側部74bと、上面部74aの前縁から下方に向かって延出された前側部74cとにより構成されている。そして、後側部74bが第1フロア形成部72の上面部72aに連設されている一方、前側部74cが第1支柱43に取り付けられている。
【0048】
ここで、上カバー部74の前側部74cは、第2フロア底面7の延出部49の先端よりもやや奥まった位置に形成されている。このため、第2フロア底面7の延出部49、上カバー部74の前側部74c、および第1フロア形成部72の上面部72aにより、各蓋部材8a,8bのボード部11の前端部11aを受け入れ可能な受け入れ凹部76が形成される。
【0049】
また、第1フロア形成部72の下面部72cには、前端縁(図7における左端縁)から下方に向かって延出する取り付け壁75が一体成形されている。この取り付け壁75は、荷室3に設けられている収納凹部9の前側壁9b(図1参照)に重なり合っており、この前側壁9bに固定された状態になっている。すなわち、カバー71は、荷室3の収納凹部9と、シートビームアッセンブリ40が収納されている収納部S1とを隔てるための隔壁の役割も有している。
【0050】
一方、図1、図2に示すように、車両1のドア開口部1aの下部には、収納凹部9の第3フロア底面9aに連なるようにガーニッシュ81が設けられている。ガーニッシュ81は、第3フロア底面9aよりも突出形成されている。
また、荷室3の側壁を構成するリヤサイドライニング3aは、ドア開口部1aの下部の内側に回りこむように形成されており、ガーニッシュ81の表面と面一になっている。そして、これらガーニッシュ81、およびリヤサイドライニング3aの前端部が、蓋部材8のドア開口部81a側への抜けを規制する抜け止めとして機能している。
【0051】
このような構成のもと、図1に示すように、第1蓋部材8a、および第2蓋部材をフラットモード配置とすると、各蓋部材8a,8bは、スロープ部12の下面27eが第3フロア底面9aの後端側に当接すると共に、スロープ部12の後端面27aがガーニッシュ81に当接した状態になる。また、第1フロア底面6に、ボード部11の前端部11aの下面11cが載置される。
【0052】
このとき、図7に示すように、シートビームアッセンブリ40に設けられているカバー71の受け入れ凹部76には、ボード部11の前端部11aが臨まされた状態になる。これにより、ボード部11の前端部11aに形成されている突出部24は、第2フロア底面7の延出部49の下方に位置した状態になる。また、ボード部11の前端部11aに形成されている第1傾斜面21aは、第2フロア底面7の延出部49における下面7a側の角部に当接した状態になる。これにより、ボード部11の前端部11aの上下方向の変位が規制され、この前端部11aのバタつきを抑えることができる。
【0053】
また、第1フロア底面6にボード部11の前端部11aが載置された状態では、ボード部11の上面11bと第2フロア底面7の上面7bとが略面一になっている。すなわち、第1フロア底面6と第2フロア底面7との間の高さH1は、第1フロア底面6にボード部11の前端部11aを載置した状態において、ボード部11の上面11bと第2フロア底面7の上面7bとが略面一となるように設定されている。
【0054】
このように、各蓋部材8a,8bが配置されることにより、荷室3に設けられている収納凹部9が各蓋部材8a,8bにより覆われた状態になる。そして、収納凹部9と各蓋部材8a,8bとにより囲まれた空間K1が形成され、この空間K1に荷物を収納することができると共に、ボード部11の上面11bに荷物を載置することができる。
ここで、図5に示すように、ボード部11のリンフォース14には、スリット17が形成されているが、このスリット17には、補強プレート18が差込まれているので、リンフォース14は、荷物の荷重に耐え得る。
【0055】
より詳しく、図10に基づいて説明する。
図10は、リンフォースの作用説明図である。
同図に示すように、各蓋部材8a,8bをフラットモード配置した状態にあっては、リンフォース14の上部にスリット17が形成された状態になる。この状態で上側から荷重を受けると(図8における矢印Y1参照)、リンフォース14には、これが下側に向かって撓むような力が作用する(図10における符号14’参照)。つまり、リンフォース14のスリット17の両側は、スリット17の下端17aを中心にして内側に変位しようとする(図10における矢印Y2参照)。
【0056】
しかしながら、スリット17には、補強プレート18が差込まれているので、スリット17の下端17aを中心にして、スリット17の両側が内側に変位することを防止できる。このため、リンフォース14は、フラットモードにおいて、荷物の荷重を十分受けることができ、リンフォース14の下側に向かう撓みを防止できる。
【0057】
一方、図2に示すように、第1蓋部材8aをスロープモード配置とすると、ボード部11の上面11b全体が収納凹部9の第3フロア底面9aに当接すると共に、スロープ部12に形成されている段差部30がカバー71の第1フロア形成部72の下側に位置した状態になる。すなわち、第1蓋部材8aのスロープ部12は、収納凹部9の第3フロア底面9aと、カバー71の第1フロア形成部72とで上下方向の移動が規制された状態になる。これにより、スロープ部12のバタつきを抑えることができる。
【0058】
このように、第1蓋部材8aをスロープモード配置とすることにより、ボード部11の高さをフラットモード配置時よりも低く設定することができる。これにより、背高な荷物もスムーズに荷室3に運び込むことが可能になる。
なお、図2においては、第1蓋部材8aのみをスロープモード配置した状態を示しているが、第1蓋部材8a、および第2蓋部材8bをスロープモード配置とすることも可能であるし、第1蓋部材8aをフラットモード配置とする一方、第2蓋部材8bをスロープモード配置とすることも可能である。
【0059】
(シートビームアッセンブリの作用)
次に、図10〜図12に基づいて、シートビームアッセンブリ40の作用について説明する。
図11は、蓋部材をフラットモード配置した状態におけるシートビームアッセンブリの作用説明図、図12は、蓋部材を示し、(a)、(b)は蓋部材の後方から前方に向かって外部過重がかかった際の挙動説明図である。
図11、図12(a)に示すように、蓋部材8をフラットモード配置した状態における車両1の停止時や通常の走行時にあっては、前述したように、第1フロア底面6上にボード部11の前端部11aが載置されている。
【0060】
ここで、例えば車両1を急ブレーキさせたり、車両1が後突されたりすると、蓋部材8に慣性力が作用し、蓋部材8に後方から前方に向かう荷重がかかる。すると、蓋部材8が前方に向かって変位しようとする(図12(a)における矢印参照)。
このとき、蓋部材8は、第2フロア底面7の延出部49における下面7a側の角部に、ボード部11の第1傾斜面21aが当接した状態となっている。このため、ボード部11の前端部11aには、下側に向かう力が作用し、ボード部11の前端部11aが第2フロア底面7を乗り上げてしまうのを防止できる。
【0061】
また、カバー71が樹脂により形成されているので、蓋部材8に、シートビームアッセンブリ40に設けられているカバー71を突き破ってしまうような大きさの荷重がかかる場合がある。このような場合、ボード部11の前端部11aが上カバー部74を構成している前側部74cを突き破り、第2フロア底面7の下側に入り込む(図11における符号11’参照)。
【0062】
そして、さらに蓋部材8が前方へと変位し、ボード部11の前端部11aがシートビームアッセンブリ40の第1フレーム41に設けられている第1ガイド46に当接する(図11における符号11’’)。
このとき、第1ガイド46は、金属等の剛性の高い材料で形成されていることに加え、第1支柱43から後方に向かって、かつ斜め上方に向かって突設された状態になっているので、ボード部11の前端部11aがガイドに沿って斜め下方に向かって変位しようとする(図11における矢印参照)。
【0063】
このような状態では、ボード部11の前端部11aには、斜め下方に向かう力が作用している一方、スロープ部12には水平方向前方に向かう力が作用していることになる。そして、これらの合力によって、ボード部11の長手方向中央部近傍には、上側に向かう力、つまり、山折側の力が作用する(図10における矢印Y3参照)。
【0064】
ここで、図10に示すように、蓋部材8をフラットモード配置した状態においては、ボード部11を構成するリンフォース14は、上部にスリット17が形成されている状態になっている。この状態で上側に向かう力が作用すると、リンフォース14のスリット17の両側は、スリット17の下端17aを中心にして外側に変位しようとする(図10における矢印Y4参照)。
【0065】
この場合、図10、図12(b)に示すように、スリット17に差し込まれている補強プレート18が何ら作用せず、スリット17の両側が下端17aを中心して外側に向かって変位する。そして、ボード部11は、この前端部11aがシートビームアッセンブリ40の第1支柱43に当接しつつ、スリット17を中心にして山折側に向かって曲折する。
【0066】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、例えば、車両1を急ブレーキさせたり、車両1が後突されたりした際、蓋部材8のボード部11が曲折することにより、蓋部材8に作用する慣性力による衝撃を、蓋部材8自体で容易に吸収することができる。
また、シートビームアッセンブリ40の第1ガイド46は、この上端が第2フロア底面7の下面7aに当接するように配置されているので、第1ガイド46を設けない場合と比較して第2フロア底面7が上からの荷重を受けやすくなる。
【0067】
さらに、第2フロア底面7に、第1ガイド46の上端よりも後方に向かって延出する延出部49を形成し、蓋部材8をフラットモード配置した状態において、延出部49の下方にボード部11の突出部24が位置するように構成されている。そして、ボード部11の前端部11aに形成されている第1傾斜面21aは、第2フロア底面7の延出部49における下面7a側の角部に当接した状態になる。
このため、ボード部11の前端部11aの上下方向の変位が規制され、この前端部11aのバタつきを抑えることができる。また、蓋部材8に慣性力が作用した際、ボード部11の前端部11aが第2フロア底面7を乗り上げてしまうことを確実に防止できる。
【0068】
そして、蓋部材8のボード部11を形成するにあたって、発泡部材13の表面を被覆する第1表皮材21、および第2表皮材22を発泡部材13の外周部で重なり合わせて接合部23を形成し、さらに、この接合部23をボード部11の前端部11aを第2フロア底面7への乗り上げを防止するための突出部24として機能させている。このため、別部材で突出部24を形成する必要がない分、製造コストを低減できると共に、蓋部材8全体の軽量化を図ることができる。よって、蓋部材8の生産性、取り付け作業性を向上させることができる。
【0069】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ボード部11の外周部に突出部24(接合部23)を形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ボード部11に突出部24を形成しなくてもよい。この場合、少なくともボード部11に形成されている第1傾斜面21aの前端部を、第2フロア底面7の延出部49よりも下側に位置させればよい。
【符号の説明】
【0070】
1…車両 3…荷室 4…車両用収納装置 6…第1フロア底面 7…第2フロア底面 8…蓋部材 8a…第1蓋部材 8b…第2蓋部材 11…ボード部 11a…前端部 11b…上面 11c…下面 12…スロープ部 21…第1表皮材 21a…第1傾斜面(傾斜面) 22…第2表皮材 23…接合部 24…突出部 46…第1ガイド(ガイド) 49…延出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方に設けた荷室に、
前記車両の前後方向後方に敷設された第1フロア底面と、
前記第1フロア底面よりも前記車両の前後方向前方に敷設され、かつ前記第1フロア底面の敷設位置よりも敷設位置が高く設定された第2フロア底面と、
前記第1フロア底面を覆う板状の蓋部材とを備えた車両用収納装置において、
前記第2フロア底面の下方であって、かつ前記第1フロア底面の前記車両の前後方向前方にガイドを設け、
このガイドは、
前記車両の前後方向前方から後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成され、前記ガイドの上端が前記第2フロア底面の下面に当接するように配置されていることを特徴とする車両用収納装置。
【請求項2】
前記第2フロア底面は、前記ガイドの上端よりも前記車両の前後方向後方に向かって、かつ水平方向に沿って延出する延出部を備えている一方、
前記蓋部材の前記車両の前後方向前端に、前記第2フロア底面側に向かって突出する突出部を設けると共に、前記突出部の上端から前記車両の前後方向後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成された傾斜面を設け、
前記突出部の位置は、前記第1フロア底面を前記蓋部材が覆った状態で、前記延出部の下方に位置するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用収納装置。
【請求項3】
前記蓋部材は、この蓋部材の上面を形成する第1表皮材と、前記蓋部材の下面を形成する第2表皮材とが前記蓋部材の周縁で接合されてなる接合部を備え、
前記接合部の前記車両の前後方向前部は、前記突出部として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用収納装置。
【請求項1】
車両の後方に設けた荷室に、
前記車両の前後方向後方に敷設された第1フロア底面と、
前記第1フロア底面よりも前記車両の前後方向前方に敷設され、かつ前記第1フロア底面の敷設位置よりも敷設位置が高く設定された第2フロア底面と、
前記第1フロア底面を覆う板状の蓋部材とを備えた車両用収納装置において、
前記第2フロア底面の下方であって、かつ前記第1フロア底面の前記車両の前後方向前方にガイドを設け、
このガイドは、
前記車両の前後方向前方から後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成され、前記ガイドの上端が前記第2フロア底面の下面に当接するように配置されていることを特徴とする車両用収納装置。
【請求項2】
前記第2フロア底面は、前記ガイドの上端よりも前記車両の前後方向後方に向かって、かつ水平方向に沿って延出する延出部を備えている一方、
前記蓋部材の前記車両の前後方向前端に、前記第2フロア底面側に向かって突出する突出部を設けると共に、前記突出部の上端から前記車両の前後方向後方に向かうに従って漸次高さが高くなるように形成された傾斜面を設け、
前記突出部の位置は、前記第1フロア底面を前記蓋部材が覆った状態で、前記延出部の下方に位置するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用収納装置。
【請求項3】
前記蓋部材は、この蓋部材の上面を形成する第1表皮材と、前記蓋部材の下面を形成する第2表皮材とが前記蓋部材の周縁で接合されてなる接合部を備え、
前記接合部の前記車両の前後方向前部は、前記突出部として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用収納装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−235704(P2011−235704A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107452(P2010−107452)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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