説明

車両用報知装置

【課題】車両発進時の衝突の回避行動に必要な車の情報(少なくとも発進可能性の情報)を歩行者等の車外の人間に報知できる車両用報知装置を提供する。
【解決手段】発進可能性を車外に居る人に報知可能な報知手段(レーザ光照射器3)と、車両の発進可能性を段階的に判定し、その判定結果に応じて前記報知手段による報知の態様(レーザ光照射器3の点灯、点滅状態)を変化させる手段(車両状態検知器1、報知用コントローラ2)とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両発進時の衝突の回避行動に必要な車の情報を車外の歩行者等に報知できる車両用報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今自動車の騒音対策が進み、自動車そのものが発する走行音が小さくなっており、また大気汚染防止に対する関心が高まり、ハイブリッド車の普及や燃料電池車の研究が進むなどエンジンの駆動音はますます静かになる傾向がある。これらは好ましい進化である反面、音による車の接近認知が難しくなることに起因する交通事故の発生が懸念されており、また、車の接近に歩行者が気付いて双方が円滑に進行出来るよう配慮しにくくなっている。
これらの課題を踏まえ、特許文献2や特許文献3のように、光を路面上に照射し、車速や進行方向に応じて照射方法を変える発明が公知である。また、歩行者を検知し警告を発する発明も公知である。
【0003】
なお特許文献1のように、レーザスポットを路面に照射し、スポットを左右に振ったり、横又は縦に複数並べたりすることも知られている。また特許文献2では、レーザスポットを照射する際、自車と路面の間に歩行者がいたら、それを避けてスポット発光し、その際、自車の速度に応じて、それに対応した形のスポットを路面に照射する。また特許文献3では、レーザスポットの照射の形を、さらに自由に変え、その際、道路とタイヤの摩擦係数、周囲の車と自車との距離なども考慮して、照射する形や位置を決める。また特許文献4では、レーザスポット照射の際、道路形状に応じて、交差点の真ん中に照射したり、道路のカーブに沿って線形のスポットにしたりする。
【0004】
【特許文献1】特開平5−238307号公報
【特許文献2】特開2003−231438号公報
【特許文献3】特開2005−157873号公報
【特許文献4】特開2006−85313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記公知技術は、いずれも車両の走行中に通知するのみであり、「停車中の車の発進可能性」を周囲に報知するものではない。このため、例えば駐車場に停車している車の運転者がシフトやブレーキ操作を誤って急発進する場合などは事故を回避できないという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、車両発進時の衝突の回避行動に必要な車の情報(少なくとも発進可能性の情報、さらには進行方向の情報)を歩行者等の車外の人間に報知できる車両用報知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の車両用報知装置は、車両の発進可能性が所定の複数段階のうちどれであるかを判定する発進可能性判定手段と、前記発進可能性を車外に居る人に報知可能な報知手段と、前記発進可能性判定手段による判定結果に応じて前記報知手段による報知の態様を変化させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本願の車両用報知装置では、車両の発進可能性の情報が周囲の歩行者や他車両の運転者に伝わるので、これらの者が発進する車両に対して安全な回避行動をとることができるという効果が得られる。しかも本願では、発進可能性を段階的に判定し、その判定結果に応じて報知の態様を変化させている。このため、発進可能性の程度が細かく歩行者等に伝わり、回避行動の必要性に応じた態様で歩行者等に注意を喚起することができる。
【0009】
次に、本願の車両用報知装置の好ましい態様は、前記発進可能性判定手段が、前記発進可能性の判定を、車両のシフトポジションとサイドブレーキポジションのうちの少なくとも一つ以上に基づいて判定することを特徴とする。この場合、発進可能性の判定を的確に行える。
【0010】
また、本願の車両用報知装置の別の好ましい態様は、前記前記発進可能性判定手段によって前記発進可能性が有ると判定された場合に当該車両が前進するか後進するかを判定する進行方向判定手段をさらに備えるとともに、前記報知手段は報知する位置範囲を制御できるものであり、前記制御手段は前記進行方向判定手段の判定結果に応じて前記位置範囲を変化させる態様である。
ここで、「発進可能性が有ると判定された場合」とは、発進可能性判定手段による判定結果が、発進可能性無しという判定結果以外であることを意味する。例えば、「発進可能性が最高段階と判定された場合」でもよいし、「発進可能性が最低段階以上に判定された場合」でもよいし、「発進可能性が特定の段階以上に判定された場合」でもよい。
この態様の場合には、車両の発進可能性の情報に加えて、車両の発進方向の情報が周囲の歩行者や他車両の運転者に伝わるので、これらの者が安全な回避行動をとることが、より確実にできるという効果が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本願の車両用報知装置によれば、車両発進時の衝突の回避行動に必要な車の情報(少なくとも発進可能性の情報)が周囲の歩行者や他車両の運転者に伝わるので、これらの者が発進する車両に対して安全な回避行動をとることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の各例を図面に基づいて説明する。
(第1形態例)
まず、第1形態例を説明する。
図1は、本例の車両用報知装置の構成を説明する図である。図2は、同装置の動作を説明するフローチャートである。また図3は、車両前進時の歩行者への報知動作を説明する図であり、図4は、車両後退時の歩行者への報知動作を説明する図である。
本装置は、図1に示すように、車両状態検知器1と、報知用コントローラ2と、レーザ光照射器3と、を備える。
【0013】
ここで、車両状態検知器1は、車両の発進可能性や進行方向の情報を計算するための車両の各種情報(エンジンの作動状態、サイドブレーキの作動状態、フットブレーキの作動状態、及び変速機のシフト位置)を出力できる手段であり、実際には例えば車両における各種のセンサや他のシステムのコントローラによって構成される。
また、報知用コントローラ2は、本装置において制御処理を行うものであり、例えばマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)を含んで構成される。
レーザ光照射器3は、車両周辺の特定位置範囲にレーザ光を照射可能な機器である。図示省略しているが、本例の場合このレーザ光照射器3は、例えば車両のヘッドライトの周辺に配置されて前方の特定位置範囲(例えば車両前方数メートルの路面)にレーザ光を照射可能な前方側照射器3aと、車両のテールライトの周辺に配置されて後方の特定位置範囲(例えば車両後方数メートルの路面)にレーザ光を照射可能な後方側照射器3bと、よりなる。
【0014】
なお後述するように、報知用コントローラ2は、車両状態検知器1の出力に基づき車両の発進可能性が所定の複数段階のうちどれであるかを判定する機能を持ち、車両状態検知器1とともに本発明の発進可能性判定手段を構成する。
またレーザ光照射器3は、前記発進可能性を車外に居る人に報知可能であり、本発明の報知手段を構成する。
また後述するように、報知用コントローラ2は、発進可能性の判定結果に応じてレーザ光照射器3(報知手段)による報知の態様を変化させる機能を持ち、本発明の制御手段を構成する。
また後述するように、報知用コントローラ2は、発進可能性が有ると判定された場合(本例では、発進可能性が最高段階と判定された場合)に、当該車両が前進するか後進するかを車両状態検知器1の出力に基づいて判定する機能を持ち、車両状態検知器1とともに本発明の進行方向判定手段を構成する。なお本例では、前進、後進の判定はシフトポジション(変速機のシフト位置)で判定する。
【0015】
次に、報知用コントローラ2の機能及び動作を図2のフローチャートにより説明する。
報知用コントローラ2は、本例では車両の発進可能性を四つの段階に判定する。即ち、発進可能性無しの段階(以下ではゼロ段階という)、発進可能性有りの最低段階(以下では1段階という)、発進可能性有りの次の段階(以下では2段階という)、発進可能性有りの次の段階(以下では3段階という)、のうちの何れかに判定する。ここで、1段階よりも2段階、2段階よりも3段階の方が発進可能性は高く、3段階は最高段階となっている。
【0016】
報知用コントローラ2は、例えば周期的に図2に示す処理を実行する。まずステップS1では、車両のエンジンが作動しているか否か判定し、作動していなければ発進可能性はゼロ段階であるとしてステップS1bを実行した後に1シーケンスの処理を終了する。この際、ステップS1bでは、レーザ光照射器3が投光状態(後述する投光状態1〜4のうちの何れか)にあれば、この投光状態を止める制御を実行し、レーザ光照射器3を非作動状態(レーザ光の照射が全く無い状態)とする。
ステップS1でエンジンが作動していると判定されると、ステップS2に進み、ここでレーザ光照射器3(前方側照射器3aと後方側照射器3bの両方)を投光状態1とする制御を実行する。この投光状態1は、レーザ光照射器3を最も長い間隔で点滅させて、レーザ光を最も長い間隔で間欠的に照射する。例えば、投光状態1では2秒点灯/2秒消灯とする。但し、点灯/消灯の間隔の具体的数値は、この例に限られず、適宜設定できるのはもちろんである(以下同様)。
【0017】
次にステップS3では、車両のサイドブレーキが非作動状態か否か(即ち、サイドブレーキポジションがOFFの位置にあるか否か)を判定し、作動状態(即ち、サイドブレーキポジションがOFFの位置にない状態)であれば発進可能性は1段階であるとして1シーケンスの処理を終了する。
ステップS3でサイドブレーキが非作動状態であると判定されると、ステップS4に進み、ここでレーザ光照射器3(前方側照射器3aと後方側照射器3bの両方)を投光状態2とする制御を実行する。この投光状態2は、レーザ光照射器3を投光状態1よりも短い間隔で点滅させて、レーザ光を投光状態1よりも短い間隔で間欠的に照射する。例えば、投光状態2では1秒点灯/1秒消灯とする。
【0018】
次に、ステップS4を経るとステップS7に進む。ステップS7では、車両の変速機のシフト位置(シフトポジション)が「D」、「2」、「L」のうちの何れかの位置にあるか否か判定し、これらの位置になければステップS9に進む。なお、「D」は通常の変速比で前進する際のシフト位置であり、「2」は「D」よりも低い変速比(同じ車速ならエンジンが高回転になる変速比)で前進する際のシフト位置であり、「L」は「2」よりもさらに低い変速比で前進する際のシフト位置である。
ステップS7でシフト位置が上記「D」、「2」、「L」の何れかにあると判定されると、発進可能性は3段階であり発進方向は前進であると判定してステップS8に進み、レーザ光照射器3を投光状態3とする制御を実行する。この投光状態3は、前側のレーザ光照射器3(前方側照射器3aのみ)を点滅ではなく完全に点灯させて、レーザ光を前方にのみ照射し続ける。なおこの投光状態3では、後方側照射器3bは消灯する。
【0019】
次にステップS9では、前記シフト位置が「R」の位置にあるか否か判定し、これらの位置になければ(即ち、シフト位置が「P」又は「N」であれば)、発進可能性は2段階であるとして1シーケンスの処理を終了する。なお、「R」は後進する際のシフト位置であり、「P」は駐車する際のシフト位置であり、「N」はいわゆるニュートラルのシフト位置である。
ステップS9でシフト位置が上記「R」にあると判定されると、発進可能性は3段階であり発進方向は後退であると判定してステップS10に進み、レーザ光照射器3を投光状態4とする制御を実行する。この投光状態4は、後側のレーザ光照射器3(後方側照射器3bのみ)を点滅ではなく完全に点灯させて、レーザ光を後方にのみ照射し続ける。なおこの投光状態4では、前方側照射器3aは消灯する。
【0020】
以上説明した車両用報知装置によれば、報知用コントローラ2の前述した制御処理によって、車両の発進可能性が所定の複数段階のうちどれであるかが判定されるとともに、発進可能性が最高段階(3段階)である場合に車両の進行方向が判定され、その判定結果に応じて報知手段であるレーザ光照射器3の状態が変化し、車外の歩行者等にその情報(発進可能性や発進方向の情報)が報知される。
即ち、エンジンが非作動状態であると、ステップS1及びS1bの処理によって発進可能性がゼロ段階である(発進可能性は無い)と判定され、レーザ光照射器3は非作動状態に制御され、レーザ光の照射は行われない。
【0021】
また、エンジンが作動状態でサイドブレーキが作動状態にある場合には、ステップS1〜S3の処理によって、発進可能性が1段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態1とされ、レーザ光が最も長い間隔で間欠的に照射される。
【0022】
また、エンジンが作動状態でサイドブレーキが非作動状態であり、かつ前記シフト位置が「D」、「2」、「L」、「R」の何れでもない場合には、ステップS1〜S9の処理によって、発進可能性が2段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態2とされ、レーザ光が投光状態1よりも短い間隔で間欠的に照射される。
また、エンジンが作動状態でサイドブレーキが非作動状態であり、かつ前記シフト位置が「D」、「2」、「L」、「R」の何れかである場合には、ステップS1〜S10の処理によって、発進可能性が3段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態3又は4とされ、レーザ光が継続的に照射される。
【0023】
ここで、発進可能性が3段階と判定された場合、前記シフト位置が「D」、「2」、「L」の何れかである場合には、ステップS7の処理によって、発進方向が前進であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態3とされ、例えば図3に示すようにレーザ光が前方にのみ継続的に照射される。
また、発進可能性が3段階と判定された場合、前記シフト位置が、「R」である場合には、ステップS9の処理によって、発進方向が後退であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態4とされ、例えば図4に示すようにレーザ光が後方にのみ継続的に照射される。
【0024】
このため本装置によれば、車両の発進可能性の情報に加え、車両の発進方向の情報が、周囲の歩行者や他車両の運転者に適宜瞬時に伝わるので、これらの者が発進する車両に対して安全な回避行動を的確にとることができるという効果が得られる。しかも本装置では、発進可能性を段階的に判定し、その判定結果に応じて報知の態様を変化させている。このため、発進可能性の程度が細かく歩行者等に伝わり、回避行動の必要性に応じた程度で歩行者等に注意を喚起することができる。また本装置では、発進可能性の判定を、車両のシフトポジションとサイドブレーキポジションに基づいて判定している。車両のシフトポジションとサイドブレーキポジションは、車両が発進する前に必ず変化するため、発進可能性の判定を的確に行える。
【0025】
(第2形態例)
次に、第2形態例を説明する。図5は本例における報知用コントローラ2の動作を示すフローチャートである。
本例は、前述の第1形態例に対して報知用コントローラ2の動作が次のように異なる。即ち、図5に示すように、前述の第1形態例のフローチャート(図2)に対して、ステップS4とS7の間にステップS5,S6が追加されている。
ステップS5では、車両のフットブレーキが作動しているか否かを判定し、作動していなければ発進可能性は2段階であるとして1シーケンスの処理を終了する。
ステップS5でフットブレーキが作動していると判定されると、ステップS6に進み、ここでレーザ光照射器3(前方側照射器3aと後方側照射器3bの両方)を投光状態3とする制御を実行する。この投光状態3は、レーザ光照射器3を投光状態2よりも短い間隔で点滅させて、レーザ光を投光状態2よりも短い間隔で間欠的に照射する。例えば、投光状態3では0.3秒点灯/0.3秒消灯とする。
【0026】
なお本例では、上記ステップS5,S6が追加されることによって、判定される発進可能性の段階は一つ増えて五つの段階(ゼロ段階〜4段階)となり、ステップS8,S10の投光状態の番号も1ずつ増える。
即ち、テップS7では、車両の変速機のシフト位置(シフトポジション)が「D」、「2」、「L」のうちの何れかの位置にあるか否か判定し、これらの位置になければステップS9に進む。
ステップS7でシフト位置が上記「D」、「2」、「L」の何れかにあると判定されると、発進可能性は4段階であり発進方向は前進であると判定してステップS8に進み、レーザ光照射器3を投光状態4とする制御を実行する。この投光状態4は、前側のレーザ光照射器3(前方側照射器3aのみ)を点滅ではなく完全に点灯させて、レーザ光を前方にのみ照射し続ける。なおこの投光状態4では、後方側照射器3bは消灯する。
【0027】
次にステップS9では、前記シフト位置が「R」の位置にあるか否か判定し、これらの位置になければ(即ち、シフト位置が「P」又は「N」であれば)、発進可能性は3段階であるとして1シーケンスの処理を終了する。
ステップS9でシフト位置が上記「R」にあると判定されると、発進可能性は4段階であり発進方向は後退であると判定してステップS10に進み、レーザ光照射器3を投光状態5とする制御を実行する。この投光状態5は、後側のレーザ光照射器3(後方側照射器3bのみ)を点滅ではなく完全に点灯させて、レーザ光を後方にのみ照射し続ける。なおこの投光状態5では、前方側照射器3aは消灯する。
【0028】
以上説明した車両用報知装置によれば、報知用コントローラ2の前述した制御処理によって、車両の発進可能性が段階的に判定されるとともに、発進可能性が最高段階(4段階)である場合に車両の進行方向が判定され、その判定結果に応じて報知手段であるレーザ光照射器3の状態が変化し、車外の歩行者等にその情報(発進可能性や発進方向の情報)が報知される。
即ち、エンジンが非作動状態であると、ステップS1及びS1bの処理によって発進可能性がゼロ段階である(発進可能性は無い)と判定され、レーザ光照射器3は非作動状態に制御され、レーザ光の照射は行われない。
【0029】
また、エンジンが作動状態でサイドブレーキが作動状態にある場合には、ステップS1〜S3の処理によって、発進可能性が1段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態1とされ、レーザ光が最も長い間隔で間欠的に照射される。
また、エンジンが作動状態でサイドブレーキが非作動状態でフットブレーキが非作動状態にある場合には、ステップS1〜S5の処理によって、発進可能性が2段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態2とされ、レーザ光が比較的短い間隔で間欠的に照射される。
【0030】
また、エンジンが作動状態でサイドブレーキが非作動状態でフットブレーキが作動状態にあり、かつ前記シフト位置が「D」、「2」、「L」、「R」の何れでもない場合には、ステップS1〜S9の処理によって、発進可能性が3段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態3とされ、レーザ光が最も短い間隔で間欠的に照射される。
また、エンジンが作動状態でサイドブレーキが非作動状態でフットブレーキが作動状態にあり、かつ前記シフト位置が「D」、「2」、「L」、「R」の何れかである場合には、ステップS1〜S10の処理によって、発進可能性が4段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態4又は5とされ、レーザ光が継続的に照射される。
【0031】
ここで、発進可能性が4段階と判定された場合、前記シフト位置が「D」、「2」、「L」の何れかである場合には、ステップS7の処理によって、発進方向が前進であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態4とされ、例えば図3に示すようにレーザ光が前方にのみ継続的に照射される。
また、発進可能性が4段階と判定された場合、前記シフト位置が、「R」である場合には、ステップS9の処理によって、発進方向が後退であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態5とされ、例えば図4に示すようにレーザ光が後方にのみ継続的に照射される。
【0032】
このため本装置によれば、第1形態例と同様に、車両の発進可能性の情報に加え、車両の発進方向の情報が、周囲の歩行者や他車両の運転者に適宜瞬時に伝わるので、これらの者が発進する車両に対して安全な回避行動を的確にとることができるという効果が得られる。しかも本装置では、フットブレーキの作動状態も考慮して発進可能性をより多段階に判定し、その判定結果に応じて報知の態様を変化させている。このため、発進可能性の程度がより細かく歩行者等に伝わり、回避行動の必要性に応じた程度で歩行者等に注意を喚起することができる。
【0033】
(第3形態例)
次に、第3形態例を説明する。図6は本例における報知用コントローラ2の動作を示すフローチャートである。
本例は、前述の第1形態例に対して報知用コントローラ2の動作が次のように異なる。即ち、図6に示すように、前述の第1形態例のフローチャート(図2)に対して、ステップS2とS3の間にステップS2b,S2cが追加され、ステップS4とS7の間にステップS4b,S6が追加されている。
ステップS2bでは、車両内に乗員がいるか否かを判定し、乗員が検知されなければ発進可能性は1段階であるとして1シーケンスの処理を終了する。なお、乗員の検知方法としては、シート下に設置した圧力センサやひずみゲージを用い抵抗値変化から推定する方法や、シート背面に設置した電波センサを用い、電波の反射量、反射波の到達時間などから推定する方法や、カメラ画像から人体の有無を検知する方法などがある。
【0034】
ステップS2bで車内に乗員がいると検知されると、ステップS2cに進み、ここでレーザ光照射器3(前方側照射器3aと後方側照射器3bの両方)を投光状態2とする制御を実行する。この投光状態2は、レーザ光照射器3を投光状態1よりも短い間隔で点滅させて、レーザ光を投光状態1よりも短い間隔で間欠的に照射する。例えば、投光状態2では1.5秒点灯/1.5秒消灯とする。
次にステップS3では、車両のサイドブレーキが非作動状態か否か(即ち、サイドブレーキポジションがOFFの位置にあるか否か)を判定し、作動状態(即ち、サイドブレーキポジションがOFFの位置にない状態)であれば発進可能性は2段階であるとして1シーケンスの処理を終了する。
ステップS3でサイドブレーキが非作動状態であると判定されると、ステップS4に進み、ここでレーザ光照射器3(前方側照射器3aと後方側照射器3bの両方)を投光状態3とする制御を実行する。この投光状態3は、レーザ光照射器3を投光状態2よりも短い間隔で点滅させて、レーザ光を投光状態2よりも短い間隔で間欠的に照射する。例えば、投光状態2では1秒点灯/1秒消灯とする。
【0035】
次に、ステップS4bでは、車両のステアリングハンドルが握られているか否か判定し、握られていないと判定した場合には、発進可能性は3段階であるとして1シーケンスの処理を終了する。なお、ステアリングハンドルが握られているか否かの判定方法としては、ハンドルに設置した圧力センサ、温度センサ、汗検知センサなどを使用する方法がある。
ステップS4bでステアリングハンドルが握られていると判定されると、ステップS6に進み、ここでレーザ光照射器3(前方側照射器3aと後方側照射器3bの両方)を投光状態4とする制御を実行する。この投光状態4は、レーザ光照射器3を投光状態3よりも短い間隔で点滅させて、レーザ光を投光状態3よりも短い間隔で間欠的に照射する。例えば、投光状態4では0.3秒点灯/0.3秒消灯とする。
【0036】
なお本例では、上記ステップS2b,S2c及びステップS4b,S6が追加されることによって、判定される発進可能性の段階は第1形態例よりも二つ増えて六つの段階(ゼロ段階〜5段階)となり、ステップS8,S10の投光状態の番号も2ずつ増える。
即ち、テップS7では、車両の変速機のシフト位置(シフトポジション)が「D」、「2」、「L」のうちの何れかの位置にあるか否か判定し、これらの位置になければステップS9に進む。
ステップS7でシフト位置が上記「D」、「2」、「L」の何れかにあると判定されると、発進可能性は5段階であり発進方向は前進であると判定してステップS8に進み、レーザ光照射器3を投光状態5とする制御を実行する。この投光状態5は、前側のレーザ光照射器3(前方側照射器3aのみ)を点滅ではなく完全に点灯させて、レーザ光を前方にのみ照射し続ける。なおこの投光状態5では、後方側照射器3bは消灯する。
【0037】
次にステップS9では、前記シフト位置が「R」の位置にあるか否か判定し、これらの位置になければ(即ち、シフト位置が「P」又は「N」であれば)、発進可能性は4段階であるとして1シーケンスの処理を終了する。
ステップS9でシフト位置が上記「R」にあると判定されると、発進可能性は5段階であり発進方向は後退であると判定してステップS10に進み、レーザ光照射器3を投光状態6とする制御を実行する。この投光状態6は、後側のレーザ光照射器3(後方側照射器3bのみ)を点滅ではなく完全に点灯させて、レーザ光を後方にのみ照射し続ける。なおこの投光状態6では、前方側照射器3aは消灯する。
【0038】
以上説明した車両用報知装置によれば、報知用コントローラ2の前述した制御処理によって、車両の発進可能性が段階的に判定されるとともに、発進可能性が最高段階(5段階)である場合に車両の進行方向が判定され、その判定結果に応じて報知手段であるレーザ光照射器3の状態が変化し、車外の歩行者等にその情報(発進可能性や発進方向の情報)が報知される。
即ち、エンジンが非作動状態であると、ステップS1及びS1bの処理によって発進可能性がゼロ段階である(発進可能性は無い)と判定され、レーザ光照射器3は非作動状態に制御され、レーザ光の照射は行われない。
【0039】
また、エンジンが作動状態で乗員が検知されていない状態では、ステップS1〜S2bの処理によって、発進可能性が1段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態1とされ、レーザ光が最も長い間隔で間欠的に照射される。
また、エンジンが作動状態で乗員が検知されており、サイドブレーキが作動状態にある場合には、ステップS1〜S3の処理によって、発進可能性が2段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態2とされ、レーザ光が投光状態1よりも短い間隔で間欠的に照射される。
また、エンジンが作動状態で乗員が検知されており、サイドブレーキが非作動状態にあり、ステアリングハンドルが握られていないと判定している場合には、ステップS1〜S4bの処理によって、発進可能性が3段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態3とされ、レーザ光が投光状態2よりも短い間隔で間欠的に照射される。
【0040】
また、エンジンが作動状態で乗員が検知されており、サイドブレーキが非作動状態にあり、ステアリングハンドルが握られていると判定しており、かつ前記シフト位置が「D」、「2」、「L」、「R」の何れでもない場合には、ステップS1〜S9の処理によって、発進可能性が4段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態4とされ、レーザ光が最も短い間隔で間欠的に照射される。
また、エンジンが作動状態で乗員が検知されており、サイドブレーキが非作動状態にあり、ステアリングハンドルが握られていると判定しており、かつ前記シフト位置が「D」、「2」、「L」、「R」の何れかである場合には、ステップS1〜S10の処理によって、発進可能性が5段階であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態5又は6とされ、レーザ光が継続的に照射される。
【0041】
ここで、発進可能性が5段階と判定された場合、前記シフト位置が「D」、「2」、「L」の何れかである場合には、ステップS7の処理によって、発進方向が前進であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態5とされ、例えば図3に示すようにレーザ光が前方にのみ継続的に照射される。
また、発進可能性が5段階と判定された場合、前記シフト位置が、「R」である場合には、ステップS9の処理によって、発進方向が後退であると判定され、レーザ光照射器3は投光状態6とされ、例えば図4に示すようにレーザ光が後方にのみ継続的に照射される。
【0042】
このため本装置によれば、第1形態例と同様に、車両の発進可能性の情報に加え、車両の発進方向の情報が、周囲の歩行者や他車両の運転者に適宜瞬時に伝わるので、これらの者が発進する車両に対して安全な回避行動を的確にとることができるという効果が得られる。しかも本装置では、乗員の有無やステアリングハンドルが握られているか否かも考慮して発進可能性をより多段階に判定し、その判定結果に応じて報知の態様を変化させている。このため、発進可能性の程度がより細かく歩行者等に伝わり、回避行動の必要性に応じた程度で歩行者等に注意を喚起することができる。
【0043】
なお、本発明は上述した形態例に限られず、各種の変形や応用があり得る。
例えば、報知手段による報知の態様や変化の例は各種あり得る。レーザ光を照射する報知手段の場合、例えば次のようにしてもよい。即ち、例えば前記第2形態例の図5に示すフローチャートにおいて、「投光状態1」に相当するステップでレーザ光が車の1m前方を照らす、「投光状態2」では3m前方を照らす、「投光状態3」では10m前方を照らす、そして「投光状態4」では20m前方を照らす、「投光状態5」では前方ではなく20m後方を照らすなどと、点滅でなくレーザ光が照らす地点と車との相対距離を変えるやり方もあり得る。
また、光による報知手段としては、レーザ光を照射するものが望ましいが、視認性の高いスポットライトでもよい。なお、前記スポットライトは反射板やレンズを使って集光するものが望ましい。
また、レーザ光を発射する代わりに、車に予め備わった既存のライト類(ヘッドライト、テールライト、ハザードランプ等)やバンパーを、前記形態例に準じた形で光らせることもできる。なお、バンパーを光らせる際は、バンパーの外側を透明または半透明の樹脂等で構成し、その内部にライト等の既存の発光体を内蔵させることで実現できる。
【0044】
また、特定の範囲に制御できる音による報知手段としてもよい。音による報知手段としては、超音波変調により特定の方向や範囲に音を絞るものがよい。この音による報知手段も車両の前方と後方の少なくとも2箇所に設置し、前方はヘッドライト横、後方はテールライト横に設置することが望ましい。
また、光を使う代わりに音を使う場合は、音を鳴らす間隔を、例えば前記第2形態例の「投光状態1」に相当するステップでは長くし、「投光状態2」に相当するステップではそれよりも短くし、「投光状態3」に相当するステップではさらに短くする。そして、「投光状態4」に相当するステップでは連続して鳴らす、「投光状態5」に相当するステップでは鳴らさない、というように置き換えることができる。音による報知手段として、車に予め備わった既存のクラクションなどを使うこともできるし、それとは別に、音を発生させる機構を用意することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】車両用報知装置の構成を説明する図である。
【図2】同装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】車両前進時の歩行者への報知動作を説明する図である。
【図4】車両後退時の歩行者への報知動作を説明する図である。
【図5】同装置の第2形態例の動作を説明するフローチャートである。
【図6】同装置の第3形態例の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1 車両状態検知器(発進可能性判定手段、進行方向判定手段)
2 報知用コントローラ(制御手段、発進可能性判定手段、進行方向判定手段)
3 レーザ光照射器(報知手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の発進可能性が所定の複数段階のうちどれであるかを判定する発進可能性判定手段と、前記発進可能性を車外に居る人に報知可能な報知手段と、前記発進可能性判定手段による判定結果に応じて前記報知手段による報知の態様を変化させる制御手段と、を備えたことを特徴とする車両用報知装置。
【請求項2】
前記発進可能性判定手段は、前記発進可能性の判定を、車両のシフトポジションとサイドブレーキポジションのうちの少なくとも一つ以上に基づいて判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用報知装置。
【請求項3】
前記発進可能性判定手段によって前記発進可能性が有ると判定された場合に当該車両が前進するか後進するかを判定する進行方向判定手段をさらに備えるとともに、前記報知手段は報知する位置範囲を制御できるものであり、前記制御手段は前記進行方向判定手段の判定結果に応じて前記位置範囲を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用報知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−40236(P2009−40236A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207853(P2007−207853)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】