説明

車両用外装カバー

【課題】組立性を損なうことなく保持力の高いカバー構造を有する車両用外装カバーを提供する。
【解決手段】車両用外装カバーは、ベースプレート10と、インナーカバー20と、アウターカバー30と、ブレード40と、係止部50とからなる。ブレード40は、インナーカバー20の外側に設けられ、付根から先端にわたって板状面41を有するように突出し少なくとも板状面41の法線方向に可撓性を有する。係止部50は、アウターカバーの内側に設けられ、少なくともブレードの板状面の付根から先端方向の一辺に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用外装カバーに関し、特に、車両に合わせて選択可能なアウターカバーを有する車両用外装カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のルーフ等に設けられる車両用外装カバーが存在する。これは、車両を装飾するために用いられたり、内部にアンテナ装置が組み込まれたりするものである。ここで、車両に設けられるアンテナ装置としては、AM/FMラジオアンテナや衛星ラジオアンテナ、GPSアンテナ、テレビアンテナ等種々のアンテナがあり、これらのアンテナ装置の外形状を画定する車両用外装カバーは、ポール型であったりドーム型であったりフィン型であったりする。
【0003】
このような車両用外装カバーにおいて、車両ボディの色や形状に合わせて外装カバーの色や形状を変えたいというニーズがある。また、外観上や防水上の観点から外装カバーの外側にねじ孔等を設けないようにしたいというニーズもある。このようなニーズに対応するために、例えばルーフマウントアンテナの例では、特許文献1や特許文献2に開示のように、インナーカバー内にアンテナモジュールを内蔵し、それに選択可能なアウターカバーを被せることで、車両ボディに合わせたアンテナ装置とするものが存在する。これらの従来技術において、インナーカバーへのアウターカバーの固定は、アウターカバーの内側に設けられるフック先端に設けられた係止爪がインナーカバーの外側に設けられる係止部に係止することで行われるものである。即ち、インナーカバー側に向いたフックが一旦撓んだ後に、インナーカバーの係止部に係止爪が係止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−345083号公報
【特許文献2】特開2008−182663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来例の外装カバーでは、アウターカバーを被せるときのフックの撓み方向が、アウターカバーが外れるときに加わる応力によるフックの撓み方向と同じ方向となる。即ち、アウターカバーを被せるときにはフックはその長手方向に対して垂直方向に撓むが、係止爪が係止部から外れるときにも、その方向と同じ方向に撓む。したがって、フック先端に何らかのロック機構を設けない限り、外れ防止のために係止を深くすると組立性が損なわれ、逆に組立性を良くしようと係止部を浅くすると引っかかり量が減るため外れやすくなってしまっていた。
【0006】
さらに、係止爪が係止部に係止するためにはフックをある程度撓ませる必要があるため、撓む程度にフックの長さを確保する必要があった。このため、フックの設置場所や形状に制約があった。さらにまた、フックの長さが確保できない場合には、撓み量も少なくなるため、係止部が浅くなり、引っかかり量が少なくなっていた。
【0007】
仮に引っかかり量が少ないフックを多く設けることでアウターカバーの所定の保持力を確保しようとした場合には、アウターカバーの内部スペースを圧迫することになり、外装カバーの外形を変える必要が生じる場合もあった。さらに、構造が複雑になるだけでなく、各フックがガタつくことなく係止するように、非常に高精度な成形の必要性があった。また、組立時にすべてのフックを係止する必要があるが、わずかな製造誤差等の狂いで係止しないフックが存在する場合、アウターカバーの保持力が確保できない可能性もある。さらに、組立ラインでフックがすべて係止されたか否かを検査することは困難であった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、組立性を損なうことなく保持力の高いカバー構造を有する車両用外装カバーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による車両用外装カバーは、車両ルーフに固定されるベースプレートと、ベースプレート上に配置され、内部に空間を有するインナーカバーと、インナーカバー上に配置され、車両用外装カバーの外形を画定するアウターカバーと、インナーカバーの外側又はアウターカバーの内側の一方に設けられ、付根から先端にわたって板状面を有するように突出し少なくとも板状面の法線方向に可撓性を有するブレードと、インナーカバーの外側又はアウターカバーの内側の他方に設けられ、少なくともブレードの板状面の付根から先端方向の一辺に係止される係止部と、を具備するものである。
【0010】
ここで、ブレード及び係止部は、それぞれ車両用外装カバーの長手方向の中心に対して線対称に少なくとも一対配置されても良い。
【0011】
さらに、車両用外装カバーの長手方向の、インナーカバーの端部外側又はアウターカバーの端部内側の一方に設けられる端部係止部と、インナーカバーの端部外側又はアウターカバーの端部内側の他方の、端部係止部に対応する位置に設けられる、端部係止部が係止される端部係止受け部と、を具備しても良く、ブレード及び係止部は、それぞれ端部係止部及び端部係止受け部から遠いほうの端部近傍に配置されても良い。
【0012】
また、ブレードは、車両用外装カバーの長手方向の中心に対して線対称に少なくとも一対配置され、車両ルーフに対して板状面が傾斜して設けられ、車両用外装カバーの長手方向から見て一対のブレードがハの字となるように配置されても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用外装カバーには、組立性を損なうことなく保持力の高いカバー構造を有するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の車両用外装カバーを説明するための一部切り欠き斜視図である。
【図2】図2は、本発明の車両用外装カバーの係止部にブレードが係止するときの状態を説明するための斜視図である。
【図3】図3は、本発明の車両用外装カバーの係止部にブレードが係止するときの状態を説明するための、係止構造を通る長手方向に垂直な方向の断面図である。
【図4】図4は、本発明の車両用外装カバーのブレード及び係止部が端部近傍に配置される例を説明するための一部切り欠き斜視図である。
【図5】図5は、本発明の車両用外装カバーのブレード及び係止部の他の例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の車両用外装カバーを説明するための一部切り欠き斜視図である。図示の通り、本発明の車両用外装カバーは、ベースプレート10と、インナーカバー20と、アウターカバー30と、ブレード40と、係止部50とから主に構成されている。
【0016】
ベースプレート10は、車両ルーフ(図示省略)に固定されるものである。例えばベースプレート10は、ねじボスを有しており、ねじボスが車両ルーフに設けられる孔に挿入され、ねじ等を用いて車両ルーフに固定されるものである。ベースプレート10上には、例えばアンテナモジュール等が載置される。この場合、ベースプレート10がグラウンドとして機能するように導電性部材からなれば良い。また、近来の電気自動車等の軽量化への要求に応えるために、樹脂製のベースプレートであっても良い。
【0017】
インナーカバー20は、上述のようなベースプレート10上に配置されるものである。インナーカバー20は、内部に空間を有するものであれば良い。インナーカバー20の内部にアンテナモジュール等が収まり、ベースプレート10と共に内部空間を密閉することで、インナーカバー20内部への塵や雨水の浸入を防止している。
【0018】
アウターカバー30は、インナーカバー20上に配置されるものである。そして、車両用外装カバーの外形を画定するものである。アウターカバー30は、例えば車両ボディに合わせて色や形状を種々選択可能に構成することが可能である。アウターカバー30は、インナーカバー20に被せて全体を覆って外形を画定するものであれば良い。また、アウターカバーの外側にアンテナマスト等の差し込み端子が設けられても良い。この場合、差し込み端子は、アウターカバーをインナーカバーに嵌合するときに同時にインナーカバー側の受け端子と電気的に接続されれば良い。
【0019】
そして、ブレード40は、インナーカバー20の外側又はアウターカバーの内側の一方に設けられるものである。図示例では、ブレード40はインナーカバー20の外側に設けられる例を示した。ブレード40は、付根から先端にわたって板状面41を有するように突出してインナーカバー20の外側に設けられている。そして、ブレード40は、少なくとも板状面41の法線方向に可撓性を有するものである。より具体的には、図示例では、ブレード40は車両用外装カバーの長手方向(図面上左右方向)に向かって突出するように設けられている。そして、ブレード40の可撓方向は、板状面41の法線方向、即ち、車両用外装カバーの長手方向に垂直な方向であって、ベースプレート10の表面に平行な方向である。
【0020】
このブレード40に係止される係止部50は、インナーカバー20の外側又はアウターカバー30の内側の他方に設けられる。図示例では、係止部50は、ブレード40が設けられる位置に対応して、アウターカバー30の内側に設けられる例を示した。係止部50は、少なくともブレード40の板状面41の付根から先端方向の一辺に係止される。
【0021】
図2を用いて、ブレード40と係止部50の詳細について説明する。図2は、本発明の車両用外装カバーの係止部にブレードが係止するときの状態を説明するための斜視図であり、図2(a)は係止前、図2(b)は係止中、図2(c)は係止完了の状態をそれぞれ表している。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。図示の通り、例えばブレード40は、インナーカバー20に横向きに延在するように設けられるものである。また、係止部50は、アウターカバー30の内側に設けられている。アウターカバー30がインナーカバー20に被されるとき、係止部50がブレード40を押し、ブレード40は板状面41の法線方向に撓む(図2(b)参照)。さらにアウターカバー30がインナーカバー20に押し込まれると、係止部50がブレード40を通り越してブレード40が元の状態に戻ると共に、ブレード40の板状面41の付根から先端方向の一辺に係止部50が係止される(図2(c))。図示の通り、本発明の車両用外装カバーでは、ブレード40の可撓方向と係止部50の係止する方向が異なる方向となっている。即ち、図面上、ブレード40は右側の付根を基準に左側の先端が手前側に撓むが、係止部50は上から下に向かって進む。通常の従来の係止構造であれば、上から下に向かって進む係止部に対する係止受け部は下側を基準に上側の先端が手前側に撓む構造である。本発明では、このように撓む方向が異なるため、組立時には容易に係止可能な一方、無理にアウターカバーを剥がそうと思ってもブレードが係止部が外れる方向には容易に撓まないため、非常に保持力が高いものとなる。
【0022】
また、図3を用いて係止部にブレードが係止するときの状態を別の角度から説明する。図3は、本発明の車両用外装カバーの係止部にブレードが係止するときの状態を説明するための、係止構造を通る長手方向に垂直な方向の断面図であり、図3(a)は係止前、図3(b)は係止中、図3(c)は係止完了の状態をそれぞれ表している。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。本発明の車両用外装カバーのブレードは、カバー正面から見た場合に、その角度は車両ルーフに対して直角に設けられても良いし、角度を付けて設けられても良い。即ち、図1に示される例では、ブレードは車両ルーフに対して直角に設けられるものであったが、図3に示される例は、ブレードに角度を設けたものである。図示の通り、例えばブレード40は、車両用外装カバーの長手方向の中心に対して線対称に、一対配置されていても良い。そして、車両ルーフに対してブレード40の板状面41がそれぞれ傾斜して設けられている。これにより、車両用外装カバーの長手方向から見て一対のブレード40がハの字となるように配置されている。
【0023】
このように構成された車両用外装カバーでは、アウターカバー30をインナーカバー20に被せると、図3(b)に示されるように、係止部50により一対のブレード40が内側に押し曲げられる。ここで、可撓方向については、上述した通り、板状面41の法線方向である。そしてさらにアウターカバー30がインナーカバー20に押し込まれると、係止部50がブレード40を通り越してブレード40が元の状態に戻ると共に、ブレード40の板状面41の付根から先端方向の一辺に係止部50が係止される(図3(c))。この例では、一対のブレード40がハの字となるように配置されているため、アウターカバー30の保持力はより高くなる。
【0024】
ここで、再度図1を参照すると、図示例では、車両用外装カバーの長手方向の中心に対して線対称に、ブレード40及び係止部50が一対配置されるものを示した。従来技術では、保持力を高めるために多くの係止構造を設ける必要があったが、本発明では、保持力が高いため、一対の係止構造であっても十分な保持力を得ることが可能である。なお、ブレード及び係止部は、所望な保持力にもよるが、最低1組あれば足りる。
【0025】
さらに、図1に示される例では、車両用外装カバーの長手方向の端部に、端部係止部60及び端部係止受け部61が設けられている。即ち、端部係止部60が、アウターカバー30の端部内側に設けられ、これに対応する位置に、端部係止部60が係止される端部係止受け部61が設けられている。図1に示される例では、ブレード40及び係止部50は、車両用外装カバーの長手方向の前方部分に設けられているが、本発明はこれに限定されず、前方の端部近傍に設けられていても良い。
【0026】
図4は、本発明の車両用外装カバーのブレード及び係止部が端部近傍に配置される例を説明するための一部切り欠き斜視図である。図示の通り、ブレード40及び係止部50は、それぞれこれら端部係止部60及び端部係止受け部61から遠いほうの端部近傍に配置されていても良い。このように、車両用外装カバーの先端部の近傍に係止構造を配置すると、インナーカバー内に設けられるアンテナモジュール等が配置できない先端部の無駄なスペースを有効活用することもできる。さて、このように端部係止部60及び端部係止受け部61を設けた構成の場合、インナーカバー20にアウターカバー30を被せるときには、まず端部係止部60を端部係止受け部61に合わせ、この端部を軸に回転させ、先端側を押し込んでいく。このとき、端部係止部60及び端部係止受け部61から遠いほうの端部近傍に配置されている係止部50がブレード40を撓ませ、アウターカバー30がインナーカバー20に完全に嵌合すると同時にブレード40に係止部50が係止される。
【0027】
このように構成すると、アウターカバーをインナーカバーの端部を合わせた後、嵌合すれば良いだけとなり、組立性が非常に向上する。さらに、係止構造は強固なため、保持力も高く、不用意に分解することも無い。
【0028】
なお、これまでの図示例では、ブレードがインナーカバーの外側に設けられ、係止部がアウターカバーの内側に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されず、係止構造についてはどちらにどちらを設けなければいけないというような制限は無い。即ち、ブレードがアウターカバーの内側に設けられ、係止部がインナーカバーの外側に設けられるものであっても良い。
【0029】
図5は、本発明の車両用外装カバーのブレード及び係止部の他の例を説明するための斜視図である。この例では、ブレード40がアウターカバー30の内側に設けられ、係止部50がインナーカバー20の外側に設けられている。ブレード40は、車両用外装カバーの長手方向に垂直な方向に向かって突出するように設けられている。そして、ブレード40の可撓方向は、板状面41の法線方向である。このような構成であっても、上述の例と同様に、組立性を損なうことなく、保持力を高めることが可能である。また、図示例では、ブレード40及び係止部50を2組設けた例を示したが、本発明はこれに限定されない。図示例のように、車両用外装カバーの長手方向の先端部の近傍に係止構造を配置する場合には、先端部のみを固定するものであれば足り、しかも強固な係止構造であるため、ブレードと係止部は1組であっても良い。
【0030】
なお、本発明の車両用外装カバーは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
10 ベースプレート
20 インナーカバー
30 アウターカバー
40 ブレード
41 板状面
50 係止部
60 端部係止部
61 端部係止受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ルーフに設置される車両用外装カバーであって、該車両用外装カバーは、
車両ルーフに固定されるベースプレートと、
前記ベースプレート上に配置され、内部に空間を有するインナーカバーと、
前記インナーカバー上に配置され、車両用外装カバーの外形を画定するアウターカバーと、
前記インナーカバーの外側又はアウターカバーの内側の一方に設けられ、付根から先端にわたって板状面を有するように突出し少なくとも板状面の法線方向に可撓性を有するブレードと、
前記インナーカバーの外側又はアウターカバーの内側の他方に設けられ、少なくともブレードの板状面の付根から先端方向の一辺に係止される係止部と、
を具備することを特徴とする車両用外装カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用外装カバーにおいて、前記ブレード及び係止部は、それぞれ車両用外装カバーの長手方向の中心に対して線対称に少なくとも一対配置されることを特徴とする車両用外装カバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用外装カバーであって、さらに、
車両用外装カバーの長手方向の、前記インナーカバーの端部外側又はアウターカバーの端部内側の一方に設けられる端部係止部と、
前記インナーカバーの端部外側又はアウターカバーの端部内側の他方の、端部係止部に対応する位置に設けられる、端部係止部が係止される端部係止受け部と、
を具備し、
前記ブレード及び係止部は、それぞれ端部係止部及び端部係止受け部から遠いほうの端部近傍に配置されることを特徴とする車両用外装カバー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用外装カバーにおいて、前記ブレードは、車両用外装カバーの長手方向の中心に対して線対称に少なくとも一対配置され、車両ルーフに対して板状面が傾斜して設けられ、車両用外装カバーの長手方向から見て一対のブレードがハの字となるように配置されることを特徴とする車両用外装カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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