車両用外装ランプの防水構造
【課題】車両の後部に装備されるリヤコンビネーションランプ及びその付近に高圧洗浄水と噴き付けると、ボディとの間の隙間に浸入してバルブコネクタ側へ浸水する場合がある。従来、その防水対策としてランプハウジングに遮水壁部を設けて隙間を遮蔽していたが、跳ね返った高圧水が隙間を経てバルブコネクタ側に浸水するおそれがあったので、本発明では高圧水等に対する防水性能をより高めることを目的とする。
【解決手段】遮水壁部20の浸水側表面に横溝形式の跳ね返り抑制溝21a〜21aを設けて、高圧水の跳ね返り方向及び水圧を分散させることにより、隙間6側への跳ね返りを抑制し、これにより隙間2の奥部への浸水を抑制してランプハウジング11内の浸水を防止する。
【解決手段】遮水壁部20の浸水側表面に横溝形式の跳ね返り抑制溝21a〜21aを設けて、高圧水の跳ね返り方向及び水圧を分散させることにより、隙間6側への跳ね返りを抑制し、これにより隙間2の奥部への浸水を抑制してランプハウジング11内の浸水を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両ボディの例えば後面であってリヤバンパーやバックドア周辺に装備されるリヤコンビネーションランプ等の外装ランプの防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リヤコンビネーションランプ等の外装ランプについては、雨天走行時等を考慮して様々な防水対策が施されている。この種の外装ランプは、車両ボディあるいはバックドアに設けたランプ取り付け凹部に嵌り込む状態で装備される。このランプ取り付け凹部の底部からワイヤハーネスが引き出されて、外装ランプのバルブコネクタに接続される。このバルブコネクタ用の開口には止水パッキンが装着される等してその防水対策が施されている。また、主として洗車時等の高圧洗浄水等(以下、単に高圧水とも言う。)に対するより確実な防水対策として、図11に示すようにランプハウジング31の周囲に遮水壁部30を設けてランプ取り付け部(ボディ側)の下壁部32との間の隙間33を狭めることにより、ランプハウジング31とランプ取り付け部との間の隙間に浸水した高圧水が図中単線矢印で示すように遮水壁部30の後面に突き当たることにより、当該高圧水がより奥部のバルブコネクタ及びその周辺へ浸入(浸水)することが防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−153733号公報
【特許文献2】特開平8−55505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防水対策によれば、外装ランプのランプハウジング31に設けた遮水壁部30とランプ取り付け部の下壁部32との間には、依然として僅かな隙間33が存在する。しかも、従来の遮水壁部30の後面は単に平坦な面であったため、遮水壁部30の後面に噴き当たった高圧水の多くが図中白抜きの矢印で示すように下壁部32側に跳ね返り、その後隙間33を経てバルブコネクタ側に浸入するおそれがあり、これに対するより高い防水対策が必要であった。
本発明はこの従来の問題に鑑みてなされたもので、外装ランプの高圧洗浄水等に対する防水性能を一層高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は下記の発明により解決される。
第1の発明は、車両のランプ取り付け部に装備される外装ランプの防水構造であって、ランプハウジングに、ランプ取り付け部との間の隙間を閉塞する遮水壁部を備えており、この遮水壁部の浸水側表面に、ランプ取り付け部側への跳ね返りを抑制するための跳ね返り抑制部を設けた防水構造である。
第1の発明によれば、外装ランプに設けた遮水壁部により、当該外装ランプとランプ取り付け凹部側との間の隙間が概ね閉塞されてバルブコネクタ側への浸水が抑制されるとともに、この遮水壁部に設けた跳ね返り抑制部により、ランプ取り付け部側への跳ね返りが抑制されることにより、当該外装ランプのバルブコネクタ側(ランプ取り付け部の奥部)への浸水がより一層確実に防止される。
第2の発明は、第1の発明において、跳ね返り抑制部として、ランプ取り付け部の面方向に沿って跳ね返り抑制溝を設けた防水構造である。
第2の発明によれば、跳ね返り抑制溝によって浸水の跳ね返りが抑制(拡散)されて、バルブコネクタ及びその周辺に対する高い防水性能が確保される。
また、既存の遮水壁部に跳ね返り抑制部としての跳ね返り抑制溝を設ける構成であることから、別途新たな部材を追加する場合のような部品点数の増加を招くことなく、かつ組み付け性を低減することなく高圧水等に対する高い防水性能を確保することができる。
第3の発明は、第1の発明において、跳ね返り抑制部として、遮水壁部の浸水側表面に浸水側に凸となる浸水分岐凸部を設けた防水構造である。
第3の発明によれば、浸水側に凸となる浸水分岐凸部により当該遮水壁部に噴き当てられた高圧水が分岐拡散されてランプ取り付け部側への跳ね返りが抑制され、これによりバルブコネクタ及びその周辺への浸水がより確実に抑制される。また、遮水壁部の形状を工夫して跳ね返りを抑制する構成であるので、別途部材を追加する構成に比して部品点数の増加を招くことなく、かつ組み付け性の低下を招くことなく高い防水性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】車両の後部を後方から見た斜視図であり、本実施形態に係る防水構造を備えた外装ランプを後部に装備した車両の後部斜視図である。
【図2】図1中、(II)-(II)線断面矢視図であって、リヤコンビネーションランプの縦断面図である。
【図3】リヤコンビネーションランプを図2中矢印(III)方向から見た後面図である。
【図4】遮水壁部の後面図である。
【図5】図4中(V)-(V)線断面矢視図であって、遮水壁部の縦断面図である。
【図6】別形態の跳ね返り抑制溝を備えた遮水壁部の縦断面図である。
【図7】さらに別形態の跳ね返り抑制溝を備えた遮水壁部の後面図である。
【図8】さらに別形態の跳ね返り抑制部を備えた遮水壁部の縦断面図である。
【図9】本発明の遮水壁部の平面図である。
【図10】本発明の別形態に係る遮水壁部の平面図である。
【図11】跳ね返り抑制部を備えない従来の遮水壁部に対する高圧水の跳ね返り状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る防水構造を有する外装ランプ10を備えた車両1の後部を示している。本実施形態では、外装ランプ10としてリヤコンビネーションランプを例示する。図2に示すようにこの外装ランプ10は、ランプハウジング11内に光源12(ランプバルブ)を内装している。ランプハウジング11の後部開口は、ランプレンズ13で水密に塞がれている。
外装ランプ10は、車両1の後部に設けたランプ取り付け部2に嵌め込まれた状態で装備されている。ランプ取り付け部2の底部2aに逃がし窓3が設けられている。これに合わせてランプハウジング11の底部にはハーネス挿通孔11aが設けられている。このハーネス挿通孔11aと逃がし窓3を経て電源供給用等のハーネス4が車室内側からランプ取り付け部2内に取り回されている。ハーネス4は、ランプハウジング11内において外装ランプ10の電源回路基板(図示省略)に結線されている。
ハーネス挿通孔11aは止水パッキン14によって水密に塞がれている。この止水パッキン14によって、ランプハウジング11内への水の浸入(浸水)が防止される。
外装ランプ10のランプレンズ13の下部とランプ取り付け部2の下面壁部2bとの間には僅かな隙間5が発生している。図2中白抜きの矢印で示すように、この隙間5を経て洗車時等の高圧水がランプ取り付け部2内に浸水する場合がある。
ランプハウジング11の下面には、遮水壁部20が設けられている。この遮水壁部20は、ランプハウジング11の下面から下方へ向けて張り出す状態に設けられている。また、図3に示すように遮水壁部20は、ランプハウジング11の下面に沿って車幅方向(左右方向)に長く延びる状態で設けられている。この遮水壁部20によって、ランプハウジング11の下面とランプ取り付け部2の下面壁部2bとの間の隙間6が狭くなっている。このため、入り口側の隙間5を経てランプ取り付け部2内に浸入した高圧水等がこの遮水壁部20に突き当たって、ランプ取り付け部2の底部2a側へ浸水することが抑制される。
本実施形態の遮水壁部20にはさらに工夫が加えられている。図4に示すように遮水壁部20の後面(浸水側表面)には、突き当たった高圧水等の下方(下面壁部2b側)への跳ね返りを抑制するための跳ね返り抑制部21が設けられている。図4に示す第1実施形態の跳ね返り抑制部21は、複数の跳ね返り抑制溝21a〜21aを備えている。図5に示すように跳ね返り抑制溝21a〜21aは、それぞれ断面半円形の横溝で、当該遮水壁部20の後面のほぼ全領域にわたる範囲で左右方向(車幅方向)に沿って延びるとともに、上下方向に相互に並列に配置されている。
【0008】
このように外装ランプ10のランプハウジング11に遮水壁部20を設け、かつこの遮水壁部20の後面に跳ね返り抑制部21を設けた第1実施形態の防水構造によれば、当該遮水壁部20の後面(跳ね返り抑制部21)に突き当たった高圧水等は、跳ね返り抑制溝21a〜21aによって跳ね返り方向及び水圧が分散されることにより、下方(下面壁部2b側)への跳ね返りが抑制される。遮水壁部20の後面に突き当たった高圧水等の下面壁部2b側(隙間6側)への跳ね返りが、平坦な後面である場合に比して抑制されることにより、ランプ取り付け部2のより奥部への浸水が抑制され、これにより挿通孔11aを経たランプハウジング11内部への浸水がより確実に防止される。ランプハウジング11内への浸水が防止されることにより当該外装ランプ10の不灯等のトラブルを未然に回避することができる。
また、遮水壁部20の後面に例えばスポンジ等の多孔質部材を貼り付けておくことによっても跳ね返りを抑制することができるが、この場合には別途多孔質部材を用意して貼り付ける工程が必要となり、この点でコストアップを招く問題がある。本実施形態では、このような別部品を必要としないことからコストアップを招くことなく防水効果を高めることができる。
遮水壁部20に設ける跳ね返り抑制部には、例示した跳ね返り抑制溝21a〜21aに代えて様々な形態の跳ね返り抑制部を適用することができる。図6には、断面半円形の跳ね返り抑制溝21a〜21aに代えて同じく横溝形式で断面コ字形の跳ね返り抑制溝22a〜22aを備えた第2実施形態の跳ね返り抑制部22が示されている。この跳ね返り抑制溝22a〜22aも、遮水壁部20の後面のほぼ全領域において車幅方向に延びる状態に設けられており、上下方向に相互に並列に配置されている。この断面コ字形の跳ね返り抑制溝22a〜22aによっても突き当たった高圧水等の跳ね返り方向及び水圧が分散されることから、当該遮水壁部20とランプ取り付け部2の下面壁部2bとの間の隙間6を経た浸水を抑制してランプハウジング11内への浸水を低減することができる。
【0009】
図7には第3実施形態の跳ね返り抑制部23が示されている。この第3実施形態の跳ね返り抑制部23は、第1、第2実施形態の跳ね返り抑制溝21a,22aとは異なって縦方向(上下方向)に長く延びる縦溝形式の跳ね返り抑制溝23aを備えている。多数の跳ね返り抑制溝23a〜23aは、遮水壁部20の後面のほぼ全領域にわたる範囲で、車幅方向(左右方向)に並列に配置されている。各跳ね返り抑制溝23aの断面形状は、半円形状、コ字形あるいはV字形であってもよい。
この第3実施形態の跳ね返り抑制部23によっても、隙間5を経てランプハウジング11とランプ取り付け部2の下面壁部2bとの間の隙間に浸入した高圧水等が跳ね返り抑制溝23a〜23aに突き当たることによりその跳ね返り方向及び水圧が分散されるため、隙間6側への跳ね返りを抑制することができ、これによりランプハウジング11内への浸水を低減することができる。
図8には、第4実施形態の跳ね返り抑制部24が示されている。この第4実施形態の跳ね返り抑制部24は、遮水壁部20の後面に、横溝21a,22a若しくは縦溝23aに代えて多数の跳ね返り抑制孔24a〜24aを設けた構成を備えている。各跳ね返り抑制孔24aは、遮水壁部20の板厚方向に貫通する状態で設けられている。この第4実施形態の跳ね返り抑制部24によっても、突き当たった高圧水等の跳ね返り方向及び水圧が分散されるため、隙間6を経てランプハウジング11内への浸水を抑制することができる。なお、各跳ね返り抑制孔24aは、遮水壁部20の前面側に貫通しない孔であってもよい。
また、跳ね返り抑制孔24a〜24aに代えて遮水壁部20の後面に多数の凸部若しくは突条を設けることによっても突き当たった高圧水等の跳ね返り方向及び水圧を分散することができるので、同様の作用効果を得ることができる。
【0010】
図9には、第5実施形態の跳ね返り抑制部25が示されている。この第5実施形態の跳ね返り抑制部25は、遮水壁部20の浸水側表面(後面)に浸水側(図中下側)に凸となる浸水分岐凸部25aを設けた構成を備えている。このように遮水壁部20の後面に平面的に見て後方に凸となる向きに湾曲する跳ね返り抑制部25を設けることにより、高圧水の跳ね返り方向及び水圧を分散させることができ、これにより第1〜第4実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
跳ね返り抑制部25の浸水分岐凸部25aは、上記したように湾曲形状とする他、例えば図10に示すようにV字形に屈曲する形状であってもよい。この第6実施形態の跳ね返り抑制部26によっても、遮水壁部20の後面が後方に凸となる向きの浸水分岐凸部26aを備えていることから、当該浸水分岐凸部26aに突き当たった高圧水の跳ね返り方向及び水圧を分散させることができるので、ランプ取り付け部2の下面壁部2b側への跳ね返りを低減することができ、これにより第1〜第5実施形態と同等の作用効果を得ることができる。上記例示したようにV字形に屈曲する遮水壁部20に代えて頂点を浸水側(後方)に向けた断面三角形の遮水壁部としてもよい。
以上説明した第1〜第6実施形態には、さらに変更を加えることができる。例えば、遮水壁部20をランプハウジング11の下面に一体に設ける構成を例示したが、別部材として用意したものを、ランプハウジング11の下面にビス止め等により取り付ける構成としてもよい。
また、横溝形式の跳ね返り抑制溝21a〜21a,22a〜22a、縦溝形式の跳ね返り抑制溝23a〜23a、跳ね返り抑制孔24a〜24a及び浸水分岐凸部25a,26aを適宜組み合わせて跳ね返り抑制部とすることができる。
さらに、ランプハウジング11の下面に複数の遮水壁部20を例えば千鳥足配置することにより、一層高い防水性能を得ることができる。
また、外装ランプ10として、車両の後部に装備されるリヤコンビネーションランプを例示したが、ライセンスランプや車両前部のヘッドランプ等その他の外装ランプの防水構造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0011】
1…車両
2…ランプ取り付け部、2a…底部、2b…下面壁部
3…逃がし窓
4…ハーネス
5…隙間(ランプレンズ13と下面壁部2bとの間の入り口側の隙間)
6…隙間(ランプハウジング11と下面壁部2bとの間の隙間)
10…外装ランプ(リヤコンビネーションランプ)
11…ランプハウジング、11a…ハーネス挿通孔
12…光源(ランプバルブ)
13…ランプレンズ
14…止水パッキン
20…遮水壁部
21…跳ね返り抑制部(第1実施形態)、21a…跳ね返り抑制溝(断面半円形の横溝)
22…跳ね返り抑制部(第2実施形態)、22a…跳ね返り抑制溝(断面コ字形の横溝)
23…跳ね返り抑制部(第3実施形態)、23a…跳ね返り抑制溝(縦溝形式)
24…跳ね返り抑制部(第4実施形態)、24a…跳ね返り抑制孔
25…跳ね返り抑制部(第5実施形態)、25a…浸水分岐凸部(湾曲形)
26…跳ね返り抑制部(第6実施形態)、26a…浸水分岐凸部(V字形)
30…遮水壁部(従来)
31…ランプハウジング
32…下壁部
33…隙間(ランプハウジング31と下壁部32との間の隙間)
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両ボディの例えば後面であってリヤバンパーやバックドア周辺に装備されるリヤコンビネーションランプ等の外装ランプの防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リヤコンビネーションランプ等の外装ランプについては、雨天走行時等を考慮して様々な防水対策が施されている。この種の外装ランプは、車両ボディあるいはバックドアに設けたランプ取り付け凹部に嵌り込む状態で装備される。このランプ取り付け凹部の底部からワイヤハーネスが引き出されて、外装ランプのバルブコネクタに接続される。このバルブコネクタ用の開口には止水パッキンが装着される等してその防水対策が施されている。また、主として洗車時等の高圧洗浄水等(以下、単に高圧水とも言う。)に対するより確実な防水対策として、図11に示すようにランプハウジング31の周囲に遮水壁部30を設けてランプ取り付け部(ボディ側)の下壁部32との間の隙間33を狭めることにより、ランプハウジング31とランプ取り付け部との間の隙間に浸水した高圧水が図中単線矢印で示すように遮水壁部30の後面に突き当たることにより、当該高圧水がより奥部のバルブコネクタ及びその周辺へ浸入(浸水)することが防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−153733号公報
【特許文献2】特開平8−55505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防水対策によれば、外装ランプのランプハウジング31に設けた遮水壁部30とランプ取り付け部の下壁部32との間には、依然として僅かな隙間33が存在する。しかも、従来の遮水壁部30の後面は単に平坦な面であったため、遮水壁部30の後面に噴き当たった高圧水の多くが図中白抜きの矢印で示すように下壁部32側に跳ね返り、その後隙間33を経てバルブコネクタ側に浸入するおそれがあり、これに対するより高い防水対策が必要であった。
本発明はこの従来の問題に鑑みてなされたもので、外装ランプの高圧洗浄水等に対する防水性能を一層高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は下記の発明により解決される。
第1の発明は、車両のランプ取り付け部に装備される外装ランプの防水構造であって、ランプハウジングに、ランプ取り付け部との間の隙間を閉塞する遮水壁部を備えており、この遮水壁部の浸水側表面に、ランプ取り付け部側への跳ね返りを抑制するための跳ね返り抑制部を設けた防水構造である。
第1の発明によれば、外装ランプに設けた遮水壁部により、当該外装ランプとランプ取り付け凹部側との間の隙間が概ね閉塞されてバルブコネクタ側への浸水が抑制されるとともに、この遮水壁部に設けた跳ね返り抑制部により、ランプ取り付け部側への跳ね返りが抑制されることにより、当該外装ランプのバルブコネクタ側(ランプ取り付け部の奥部)への浸水がより一層確実に防止される。
第2の発明は、第1の発明において、跳ね返り抑制部として、ランプ取り付け部の面方向に沿って跳ね返り抑制溝を設けた防水構造である。
第2の発明によれば、跳ね返り抑制溝によって浸水の跳ね返りが抑制(拡散)されて、バルブコネクタ及びその周辺に対する高い防水性能が確保される。
また、既存の遮水壁部に跳ね返り抑制部としての跳ね返り抑制溝を設ける構成であることから、別途新たな部材を追加する場合のような部品点数の増加を招くことなく、かつ組み付け性を低減することなく高圧水等に対する高い防水性能を確保することができる。
第3の発明は、第1の発明において、跳ね返り抑制部として、遮水壁部の浸水側表面に浸水側に凸となる浸水分岐凸部を設けた防水構造である。
第3の発明によれば、浸水側に凸となる浸水分岐凸部により当該遮水壁部に噴き当てられた高圧水が分岐拡散されてランプ取り付け部側への跳ね返りが抑制され、これによりバルブコネクタ及びその周辺への浸水がより確実に抑制される。また、遮水壁部の形状を工夫して跳ね返りを抑制する構成であるので、別途部材を追加する構成に比して部品点数の増加を招くことなく、かつ組み付け性の低下を招くことなく高い防水性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】車両の後部を後方から見た斜視図であり、本実施形態に係る防水構造を備えた外装ランプを後部に装備した車両の後部斜視図である。
【図2】図1中、(II)-(II)線断面矢視図であって、リヤコンビネーションランプの縦断面図である。
【図3】リヤコンビネーションランプを図2中矢印(III)方向から見た後面図である。
【図4】遮水壁部の後面図である。
【図5】図4中(V)-(V)線断面矢視図であって、遮水壁部の縦断面図である。
【図6】別形態の跳ね返り抑制溝を備えた遮水壁部の縦断面図である。
【図7】さらに別形態の跳ね返り抑制溝を備えた遮水壁部の後面図である。
【図8】さらに別形態の跳ね返り抑制部を備えた遮水壁部の縦断面図である。
【図9】本発明の遮水壁部の平面図である。
【図10】本発明の別形態に係る遮水壁部の平面図である。
【図11】跳ね返り抑制部を備えない従来の遮水壁部に対する高圧水の跳ね返り状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る防水構造を有する外装ランプ10を備えた車両1の後部を示している。本実施形態では、外装ランプ10としてリヤコンビネーションランプを例示する。図2に示すようにこの外装ランプ10は、ランプハウジング11内に光源12(ランプバルブ)を内装している。ランプハウジング11の後部開口は、ランプレンズ13で水密に塞がれている。
外装ランプ10は、車両1の後部に設けたランプ取り付け部2に嵌め込まれた状態で装備されている。ランプ取り付け部2の底部2aに逃がし窓3が設けられている。これに合わせてランプハウジング11の底部にはハーネス挿通孔11aが設けられている。このハーネス挿通孔11aと逃がし窓3を経て電源供給用等のハーネス4が車室内側からランプ取り付け部2内に取り回されている。ハーネス4は、ランプハウジング11内において外装ランプ10の電源回路基板(図示省略)に結線されている。
ハーネス挿通孔11aは止水パッキン14によって水密に塞がれている。この止水パッキン14によって、ランプハウジング11内への水の浸入(浸水)が防止される。
外装ランプ10のランプレンズ13の下部とランプ取り付け部2の下面壁部2bとの間には僅かな隙間5が発生している。図2中白抜きの矢印で示すように、この隙間5を経て洗車時等の高圧水がランプ取り付け部2内に浸水する場合がある。
ランプハウジング11の下面には、遮水壁部20が設けられている。この遮水壁部20は、ランプハウジング11の下面から下方へ向けて張り出す状態に設けられている。また、図3に示すように遮水壁部20は、ランプハウジング11の下面に沿って車幅方向(左右方向)に長く延びる状態で設けられている。この遮水壁部20によって、ランプハウジング11の下面とランプ取り付け部2の下面壁部2bとの間の隙間6が狭くなっている。このため、入り口側の隙間5を経てランプ取り付け部2内に浸入した高圧水等がこの遮水壁部20に突き当たって、ランプ取り付け部2の底部2a側へ浸水することが抑制される。
本実施形態の遮水壁部20にはさらに工夫が加えられている。図4に示すように遮水壁部20の後面(浸水側表面)には、突き当たった高圧水等の下方(下面壁部2b側)への跳ね返りを抑制するための跳ね返り抑制部21が設けられている。図4に示す第1実施形態の跳ね返り抑制部21は、複数の跳ね返り抑制溝21a〜21aを備えている。図5に示すように跳ね返り抑制溝21a〜21aは、それぞれ断面半円形の横溝で、当該遮水壁部20の後面のほぼ全領域にわたる範囲で左右方向(車幅方向)に沿って延びるとともに、上下方向に相互に並列に配置されている。
【0008】
このように外装ランプ10のランプハウジング11に遮水壁部20を設け、かつこの遮水壁部20の後面に跳ね返り抑制部21を設けた第1実施形態の防水構造によれば、当該遮水壁部20の後面(跳ね返り抑制部21)に突き当たった高圧水等は、跳ね返り抑制溝21a〜21aによって跳ね返り方向及び水圧が分散されることにより、下方(下面壁部2b側)への跳ね返りが抑制される。遮水壁部20の後面に突き当たった高圧水等の下面壁部2b側(隙間6側)への跳ね返りが、平坦な後面である場合に比して抑制されることにより、ランプ取り付け部2のより奥部への浸水が抑制され、これにより挿通孔11aを経たランプハウジング11内部への浸水がより確実に防止される。ランプハウジング11内への浸水が防止されることにより当該外装ランプ10の不灯等のトラブルを未然に回避することができる。
また、遮水壁部20の後面に例えばスポンジ等の多孔質部材を貼り付けておくことによっても跳ね返りを抑制することができるが、この場合には別途多孔質部材を用意して貼り付ける工程が必要となり、この点でコストアップを招く問題がある。本実施形態では、このような別部品を必要としないことからコストアップを招くことなく防水効果を高めることができる。
遮水壁部20に設ける跳ね返り抑制部には、例示した跳ね返り抑制溝21a〜21aに代えて様々な形態の跳ね返り抑制部を適用することができる。図6には、断面半円形の跳ね返り抑制溝21a〜21aに代えて同じく横溝形式で断面コ字形の跳ね返り抑制溝22a〜22aを備えた第2実施形態の跳ね返り抑制部22が示されている。この跳ね返り抑制溝22a〜22aも、遮水壁部20の後面のほぼ全領域において車幅方向に延びる状態に設けられており、上下方向に相互に並列に配置されている。この断面コ字形の跳ね返り抑制溝22a〜22aによっても突き当たった高圧水等の跳ね返り方向及び水圧が分散されることから、当該遮水壁部20とランプ取り付け部2の下面壁部2bとの間の隙間6を経た浸水を抑制してランプハウジング11内への浸水を低減することができる。
【0009】
図7には第3実施形態の跳ね返り抑制部23が示されている。この第3実施形態の跳ね返り抑制部23は、第1、第2実施形態の跳ね返り抑制溝21a,22aとは異なって縦方向(上下方向)に長く延びる縦溝形式の跳ね返り抑制溝23aを備えている。多数の跳ね返り抑制溝23a〜23aは、遮水壁部20の後面のほぼ全領域にわたる範囲で、車幅方向(左右方向)に並列に配置されている。各跳ね返り抑制溝23aの断面形状は、半円形状、コ字形あるいはV字形であってもよい。
この第3実施形態の跳ね返り抑制部23によっても、隙間5を経てランプハウジング11とランプ取り付け部2の下面壁部2bとの間の隙間に浸入した高圧水等が跳ね返り抑制溝23a〜23aに突き当たることによりその跳ね返り方向及び水圧が分散されるため、隙間6側への跳ね返りを抑制することができ、これによりランプハウジング11内への浸水を低減することができる。
図8には、第4実施形態の跳ね返り抑制部24が示されている。この第4実施形態の跳ね返り抑制部24は、遮水壁部20の後面に、横溝21a,22a若しくは縦溝23aに代えて多数の跳ね返り抑制孔24a〜24aを設けた構成を備えている。各跳ね返り抑制孔24aは、遮水壁部20の板厚方向に貫通する状態で設けられている。この第4実施形態の跳ね返り抑制部24によっても、突き当たった高圧水等の跳ね返り方向及び水圧が分散されるため、隙間6を経てランプハウジング11内への浸水を抑制することができる。なお、各跳ね返り抑制孔24aは、遮水壁部20の前面側に貫通しない孔であってもよい。
また、跳ね返り抑制孔24a〜24aに代えて遮水壁部20の後面に多数の凸部若しくは突条を設けることによっても突き当たった高圧水等の跳ね返り方向及び水圧を分散することができるので、同様の作用効果を得ることができる。
【0010】
図9には、第5実施形態の跳ね返り抑制部25が示されている。この第5実施形態の跳ね返り抑制部25は、遮水壁部20の浸水側表面(後面)に浸水側(図中下側)に凸となる浸水分岐凸部25aを設けた構成を備えている。このように遮水壁部20の後面に平面的に見て後方に凸となる向きに湾曲する跳ね返り抑制部25を設けることにより、高圧水の跳ね返り方向及び水圧を分散させることができ、これにより第1〜第4実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
跳ね返り抑制部25の浸水分岐凸部25aは、上記したように湾曲形状とする他、例えば図10に示すようにV字形に屈曲する形状であってもよい。この第6実施形態の跳ね返り抑制部26によっても、遮水壁部20の後面が後方に凸となる向きの浸水分岐凸部26aを備えていることから、当該浸水分岐凸部26aに突き当たった高圧水の跳ね返り方向及び水圧を分散させることができるので、ランプ取り付け部2の下面壁部2b側への跳ね返りを低減することができ、これにより第1〜第5実施形態と同等の作用効果を得ることができる。上記例示したようにV字形に屈曲する遮水壁部20に代えて頂点を浸水側(後方)に向けた断面三角形の遮水壁部としてもよい。
以上説明した第1〜第6実施形態には、さらに変更を加えることができる。例えば、遮水壁部20をランプハウジング11の下面に一体に設ける構成を例示したが、別部材として用意したものを、ランプハウジング11の下面にビス止め等により取り付ける構成としてもよい。
また、横溝形式の跳ね返り抑制溝21a〜21a,22a〜22a、縦溝形式の跳ね返り抑制溝23a〜23a、跳ね返り抑制孔24a〜24a及び浸水分岐凸部25a,26aを適宜組み合わせて跳ね返り抑制部とすることができる。
さらに、ランプハウジング11の下面に複数の遮水壁部20を例えば千鳥足配置することにより、一層高い防水性能を得ることができる。
また、外装ランプ10として、車両の後部に装備されるリヤコンビネーションランプを例示したが、ライセンスランプや車両前部のヘッドランプ等その他の外装ランプの防水構造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0011】
1…車両
2…ランプ取り付け部、2a…底部、2b…下面壁部
3…逃がし窓
4…ハーネス
5…隙間(ランプレンズ13と下面壁部2bとの間の入り口側の隙間)
6…隙間(ランプハウジング11と下面壁部2bとの間の隙間)
10…外装ランプ(リヤコンビネーションランプ)
11…ランプハウジング、11a…ハーネス挿通孔
12…光源(ランプバルブ)
13…ランプレンズ
14…止水パッキン
20…遮水壁部
21…跳ね返り抑制部(第1実施形態)、21a…跳ね返り抑制溝(断面半円形の横溝)
22…跳ね返り抑制部(第2実施形態)、22a…跳ね返り抑制溝(断面コ字形の横溝)
23…跳ね返り抑制部(第3実施形態)、23a…跳ね返り抑制溝(縦溝形式)
24…跳ね返り抑制部(第4実施形態)、24a…跳ね返り抑制孔
25…跳ね返り抑制部(第5実施形態)、25a…浸水分岐凸部(湾曲形)
26…跳ね返り抑制部(第6実施形態)、26a…浸水分岐凸部(V字形)
30…遮水壁部(従来)
31…ランプハウジング
32…下壁部
33…隙間(ランプハウジング31と下壁部32との間の隙間)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のランプ取り付け部に装備される外装ランプの防水構造であって、ランプハウジングに、前記ランプ取り付け部との間の隙間を閉塞する遮水壁部を備えており、該遮水壁部の浸水側表面に、前記ランプ取り付け部側への跳ね返りを抑制するための跳ね返り抑制部を設けた防水構造。
【請求項2】
請求項1記載の防水構造であって、前記跳ね返り抑制部として、前記ランプ取り付け部の面方向に沿って跳ね返り抑制溝を設けた防水構造。
【請求項3】
請求項1記載の防水構造であって、前記跳ね返り抑制部として、前記遮水壁部の浸水側表面に浸水側に凸となる浸水分岐凸部を設けた防水構造。
【請求項1】
車両のランプ取り付け部に装備される外装ランプの防水構造であって、ランプハウジングに、前記ランプ取り付け部との間の隙間を閉塞する遮水壁部を備えており、該遮水壁部の浸水側表面に、前記ランプ取り付け部側への跳ね返りを抑制するための跳ね返り抑制部を設けた防水構造。
【請求項2】
請求項1記載の防水構造であって、前記跳ね返り抑制部として、前記ランプ取り付け部の面方向に沿って跳ね返り抑制溝を設けた防水構造。
【請求項3】
請求項1記載の防水構造であって、前記跳ね返り抑制部として、前記遮水壁部の浸水側表面に浸水側に凸となる浸水分岐凸部を設けた防水構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−248387(P2012−248387A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118912(P2011−118912)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]