説明

車両用掃気システム

【課題】排熱効率を向上させると共に、簡易な構造で重量や製造コスト等の増加を抑制することができる車両用掃気システムを提供すること。
【解決手段】外気を車室R内に送風可能な空調ユニット(送風ユニット)10と、ルーフアウタパネル21とルーフインナパネル22との間に設けられ、且つ、車室R内と車両後部に形成されたドラフターグリル(ドラフタ)31とを連通する掃気風路20とを有し、掃気風路20の空気取入口23は、車室Rの前部に位置し、空調ユニット10は、空気取入口23に向かって外気を送風する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内の温度環境を改善するための車両用掃気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、側面ボディ、車両のドア、窓ガラス、屋根のそれぞれを二重構造にして一連の空気流通路を形成し、この空気流通路に車室内の空気を取り入れて車外に排出する車両用掃気システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車両用掃気システムでは、車室内の空気を排出する際に、空気流通路内に蓄熱された熱量も共に排出することで車室の熱量の低減を図っていた。
【特許文献1】特開平5−338428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の車両用掃気システムでは、空気流通路が車両の上面から側部にわたって形成されているため、車両の側部の比較的蓄熱量が少ない空気も排出しなければならず、車室の排熱効率が悪くなるという問題が生じていた。
【0005】
また、この車両用掃気システムでは、車両の側面ボディ、ドア、窓ガラス、屋根のそれぞれを二重構造として一連の空気流通路を形成しているので、構造が大掛かりなものとなり、重量や製造コスト等が増加するおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明は、排熱効率を向上させると共に、簡易な構造で重量や製造コスト等の増加を抑制することができる車両用掃気システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る車両用掃気システムは、外気を車室内に送風可能な送風ユニットと、ルーフアウタパネルとルーフインナパネルとの間に設けられ、且つ、前記車室内と車両後部に形成されたドラフタとを連通する掃気風路とを有し、前記掃気風路の空気取入口は、前記車室の前部に位置し、前記送風ユニットは、前記空気取入口に向かって外気を送風することを特徴とする車両用掃気システム。
【0008】
また、前記掃気風路の空気取入口は、前記ルーフアウタパネル及び前記ルーフインナパネルの前端部の近傍に設けられ、前記掃気風路の空気排出口は、リヤピラー内に形成されて前記ドラフタに連通した連通ダクトに接続されていてもよい。
【0009】
また、前記掃気風路の空気取入口と前記ドラフタとの間には、この掃気風路内の空気を前記ドラフタに向けて誘導する誘導送風機が設けられてもよい。
【0010】
また、前記誘導送風機の上流側には、トランクルーム内に連通したトランクダクトが接続され、このトランクダクトの接続口には、前記誘導送風機により誘導された空気によって開く遮蔽ドアが設けられてもよい。
【0011】
また、前記送風ユニットは、前記車室内の温度調整を行うための空調ユニットであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、車両前部に位置した掃気風路の空気取入口に向けて送風ユニットにより外気を送風することで、ルーフアウタパネルとルーフインナパネルとの間に溜まっている空気を車両後部に形成されたドラフタから排出することとなる。
【0013】
ここで、ルーフアウタパネルとルーフインナパネルとの間に溜まっている空気は、車両の上部にあるので比較的蓄熱量が大きいため、この蓄熱量の大きい空気だけを排出することができて車両の排熱効率を向上させることが可能となる。
【0014】
また、送風ユニットによって送風された外気で掃気風路内の空気を排出するので、車室内の空気が乱れにくく、排熱効率をさらに向上させることができる。
【0015】
さらに、掃気風路がルーフアウタパネルとルーフインナパネルとの間に設けられているので、構造を簡易にすることができて、重量や製造コスト等の増加を抑制することが可能となる。
【0016】
また、掃気風路の空気取入口がルーフアウタパネル及びルーフインナパネルの前端部近傍に設けられ、掃気風路の空気排出口がリヤピラー内に形成された連通ダクトに接続されることにより、掃気風路がルーフアウタパネルとルーフインナパネルとの前端部から後端部近傍に至るまで形成されることとなる。
【0017】
これにより、蓄熱量の大きな車両天井内の空気を十分に排出することができ、排熱効率をさらに向上させることができる。
【0018】
また、掃気風路の空気取入口とドラフタとの間に空気を誘導する誘導送風機が設けられることにより、掃気風路内の空気を強制的に排出することが可能となり、排熱効率をさらに向上させることができる。
【0019】
なお、この誘導送風機をリヤピラーの下端部近傍に配置すれば、誘導送風機が邪魔になりにくくなる。
【0020】
また、この誘導送風機の上流側にトランクルーム内に連通したトランクダクトが接続されると共に、このトランクダクトの連通口に空気によって開く遮蔽ドアが設けられることにより、トランクルーム内の換気も効率よく行うことができる。
【0021】
また、送風ユニットが車室内の温度調整を行う空調ユニットであるので、既存の構成を利用して掃気風路内に外気を送風することが可能となり、重量や製造コストの増加をさらに抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る車両用掃気システムの最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
本発明に係る車両用掃気システムを備えた車両1は、図1及び図2に示すように、空調ユニット(送風ユニット)10と、掃気風路20と、リヤ送風ファン(誘導送風機)30と、ドラフターグリル(ドラフタ)31とを有している。
【0024】
空調ユニット10は、外気を取り入れて車室R内に送風するものであり、図3に示すように、ダクト2内に配置されたフロント送風ファン11、エバポレータ13、ヒータコア14と、このダクト2に連通されたアッパーベント吹出グリル12、ベント吹出グリル15、フット吹出グリル16と、車両1に設けられて各種制御信号を出力する空調コントローラ17とを有している。
【0025】
フロント送風ファン11は、空調コントローラ17によって駆動されるファンモータ11aで回転駆動してダクト2内の空気を流動させるものであり、エバポレータ13の上流側に配置されている。なお、このファンモータ11aは、イモビライザーシステム40からのイモビ信号又はエアコンスイッチ41からON信号が空調コントローラ17に入力されることで駆動し、エアコンスイッチ41からOFF信号が空調コントローラ17に入力されることで停止する。
【0026】
ダクト2のフロント送風ファン11よりも上流側には、車室内空気を導入する内気導入口18aと、外気を導入する外気導入口18bとが設けられている。
【0027】
この内気導入口18aと外気導入口18bとが分岐する部分には、内気導入口18aと外気導入口18bとを任意の比率で開閉するインテークドアD1が設けられている。
【0028】
このインテークドアD1は、空調コントローラ17で駆動されるインテークドアアクチュエータD1´によって開閉する。
【0029】
エバポレータ13は、フロント送風ファン11によって導入された空気の熱を冷媒に吸熱して冷風をつくる吸熱タイプの熱交換器である。また、ヒータコア14は、エバポレータ13の下流側に配置され、暖められた冷媒の熱を放熱して温風をつくる放熱タイプの熱交換器である。
【0030】
なお、このヒータコア14の上流側には、エアミックスドアD2が設けられている。このエアミックスドアD2は、空調コントローラ17により駆動されるエアミックスアクチュエータD2´により開閉し、エバポレータ13により冷やされた後にヒータコア14を迂回した冷風と、ヒータコア14を通過して暖められた温風との割合(冷風と温風との風量配分)を調節するようになっている。
【0031】
そして、アッパーベント吹出グリル12は、ダクト2から延びるベントダクト2aを介してダクト2に連通しており、インストルメントパネルPの上部に形成されて空気を上向きに吹き出すようになっている。
【0032】
また、このアッパーベント吹出グリル12から吹き出された空気は、図1に示すように、フロントガラスFに沿いながら流れ、掃気風路20の後述する空気取入口23に向かって送風されることとなる。
【0033】
なお、ベントダクト2aとダクト2との間には、アッパーベントドアD3が設けられている。このアッパーベントドアD3は、空調コントローラ17により駆動されるアッパーベントドアアクチュエータD3´により開閉し、吹出風量を調整する。
【0034】
ベント吹出グリル15及びフット吹出グリル16は、それぞれインストルメントパネルPに形成されている。
【0035】
このベント吹出グリル15とフット吹出グリル16とが分岐する部分には、グリル切替ドアD4が設けられている。このグリル切替ドアD4は、図示しないグリル切替スイッチにより入力される切替信号に応じて空調コントローラ17で駆動されるグリル切替ドアアクチュエータD4´により開閉される。
【0036】
空調コントローラ17は、この車両用空調装置1を駆動制御するものであり、イモビライザーシステム40、エアコンスイッチ41等からの所定の信号が入力されると共に、外気温度センサ43、内気温度センサ44、掃気風路内温度センサ45、太陽電池センサ46等の各種センサからの検出値が入力される。
【0037】
なお、外気温度センサ43は、車室R外の外気温度を検出するセンサであり、内気温度センサ44は、車室R内の内気温度を検出するセンサであり、掃気風路内温度センサ45は、掃気風路20内の温度を検出するセンサであり、太陽電池センサ46は、後述する蓄電装置(図示せず)の残量を検出するセンサである。
【0038】
ここで、掃気風路内温度センサ45は、ルーフインナパネル22に取り付けられた車内灯(図示せず)内に配置されている。
【0039】
さらに、この空調コントローラ17は、リヤ送風ファン30のファンモータ30aと、ドラフターグリル31の内側に設けられたドラフタードアD5を開閉するドラフタードアアクチュエータD5´を駆動制御する。
【0040】
掃気風路20は、車両1の外表面を形成するルーフアウタパネル21と、このルーフアウタパネル21に対向すると共に、車室R側に配置されたルーフインナパネル22との間に設けられている。
【0041】
すなわち、ここでは、ルーフアウタパネル21とルーフインナパネル22との間に、所定の幅で間隙が設けられており、このルーフアウタパネル21とルーフインナパネル22とで構成される車両1の天井部分全体が掃気風路20となっている。
【0042】
この掃気風路20の空気取入口23は、ルーフアウタパネル21及びルーフインナパネル22の前端部近傍に形成されている。これにより、この空気取入口23は、車両1の前部に位置することとなる。また、この空気取入口23は、車室R内に開口すると共に、車幅方向に沿ったスリット形状を呈している。
【0043】
また、この掃気風路20は一対の空気排出口24,24を有しており、各空気排出口24は後述する連通ダクト32に接続されている。なお、各空気排出口24は、車両1の天井部分と一対のリヤピラー32a,32aとが接続する部分にそれぞれ形成され、車両側部に位置している(図1参照)。
【0044】
連通ダクト32は、リヤピラー32a内に形成された風路であり、一端が掃気風路20の空気排出口24に接続され、他端がリヤ送風ファン30を介してドラフターグリル31に連通している。
【0045】
リヤ送風ファン30は、連通ダクト32内に配置され(図3参照)、掃気風路20内の空気をドラフターグリル31に向けて誘導するものである。ここでは、このリヤ送風ファン30は、リヤピラー32aの下端部近傍に配置されている。
【0046】
また、連通ダクト32のうち、リヤ送風ファン30の上流側には、車両1に形成されたトランクルームTに連通したトランクダクト33が接続されている。そして、トランクダクト33と連通ダクト32との間には、リヤ送風ファン30により誘導された空気によって開く遮蔽ドア34が設けられている。
【0047】
この遮蔽ドア34は、例えばゴム等で形成されており、通常はトランクダクト33を閉鎖する方向に付勢されている。そして、リヤ送風ファン30が駆動して連通ダクト32内に負圧が生じると、この負圧によって連通ダクト32側に引っ張られてトランクダクト33が開放され、トランクルームTと連通ダクト32とが連通する。
【0048】
ドラフターグリル31は、車両後部に形成されて車外に開口すると共に、このドラフターグリル31の内側に設けられたドラフタードアD5により開閉するようになっている。
【0049】
さらに、この車両1には、図示しない太陽電池パネル及び、この太陽電池パネルにより生じた電力エネルギーを蓄える図示しない蓄電装置が設けられている。この蓄電装置は、フロント送風ファン11及びリヤ送風ファン30に電力供給を可能にするように接続されている。
【0050】
次に、本発明に係る車両用掃気システムの作用を、この車両用掃気システムにて実行される車内掃気処理の流れを示す図4に示すフローチャートに沿って説明する。なお、この図4に示す車内掃気処理は、車両1に乗員が乗り込む直前において実行されるものである。
【0051】
ステップ1では、車両1に搭載されているイモビライザーシステム40にてイモビ信号を検知したか否かを判断し、イモビ信号を検知しない場合(NOの場合)には、ステップ1をリターンし、イモビ信号を検知した場合(YESの場合)には、ステップ2へ移行する。
【0052】
ステップ2では、検知されたイモビ信号を空調コントローラ17に入力し、ステップ3へ移行する。
【0053】
ステップ3では、イモビ信号が入力された空調コントローラ17は、内気温度センサ44によって車室R内の内気温度を検出し、この内気温度があらかじめ設定された所定の温度(X℃)以上であるか否かを判断し、内気温度が所定の温度よりも小さい場合(NOの場合)には、車内掃気は行われず、この車内掃気処理は終了する。一方、内気温度が所定温度以上の場合(YESの場合)には、ステップ4へ移行する。
【0054】
ステップ4では、空調コントローラ17は、運転モードを掃気モードに設定すると共に、インテークドアD1により外気導入口18bを開放し、エアミックスドアD2によりヒータコア14側への風流れを遮断し、アッパーベントドアD3によりベントダクト2aを開放し、グリル切替ドアD4によりベント吹出グリル15を開放し、ドラフタードアD5によりドラフターグリル31を開放する。すなわち、各ドアD1〜D5は、図3において実線で示した状態となる。そして、ステップ5へ移行する。
【0055】
ステップ5では、フロント送風ファン11のファンモータ11aを回転駆動する。さらに、ステップ6では、リヤ送風ファン30のファンモータ30aを回転駆動する。
【0056】
これにより、外気導入口18bから吸い込まれた外気は、フロント送風ファン11→エバポレータ13→ベントダクト2a→アッパーベント吹出グリル12を経由して、車室R内へ排出される。そして、車室R内に排出された外気はフロントガラスに沿って流れ、掃気風路20の空気取入口23に向けて送風される。
【0057】
なお、このときエバポレータ13に冷媒を供給する図示しないコンプレッサは駆動しないので、吸い込まれた外気は冷却されない。
【0058】
また、リヤ送風ファン30は、連通ダクト32内で駆動してこの連通ダクト32内を負圧にし、掃気風路20内の空気をドラフターグリル31に誘導する。
【0059】
このように、空気取入口23に向けて外気が送風されると共に、リヤ送風ファン30により掃気風路20内の空気がドラフターグリル31に誘導されるので、掃気風路20内の空気は、車両1の前部側から後部側に向かって流れた後、空気排出口24→連通ダクト32→リヤ送風ファン30→ドラフターグリル31を順に経由して、車外に排出される。
【0060】
すなわち、ルーフアウタパネル21とルーフインナパネル22との間に溜まっている空気を車両1の後部に形成されたドラフターグリル31から排出することとなる。
【0061】
ここで、ルーフアウタパネル21とルーフインナパネル22との間の掃気風路20内に溜まっている空気は、車両1の上部にあるので比較的蓄熱量が大きいものとなっている。そのため、この蓄熱量の大きい空気だけを排出することができて車両1の排熱効率を向上させることが可能となる。
【0062】
また、フロント空調ユニット10によって送風された外気で掃気風路20内の空気を排出するので、車室R内の空気が乱れにくく、排熱効率をさらに向上させることができる。
【0063】
さらに、掃気風路20がルーフアウタパネル21とルーフインナパネル22との間に設けられているので、構造を簡易にすることができて、重量や製造コスト等の増加を抑制することが可能となる。
【0064】
また、ここでは、掃気風路20の空気取入口23は、ルーフアウタパネル21及びルーフインナパネル22の前端部近傍に設けられている。さらに、掃気風路20の空気排出口24は、リヤピラー32a内に形成された連通ダクト32に接続されている。これにより、掃気風路20がルーフアウタパネル21とルーフインナパネル22との前端部から後端部近傍に至るまで形成されることとなる。つまり、車両1の天井部分全体が掃気風路20となっている。
【0065】
これにより、蓄熱量の大きな車両1の天井内の空気を十分に排出することができ、排熱効率をさらに向上させることができる。
【0066】
また、この車両1の天井部分に空気層を設けることとなるので、車両1の断熱性を向上することも可能となり、車室R内の温度変化を効率よく抑制することができる。
【0067】
そして、ここでは、掃気風路20の空気取入口23とドラフターグリル31との間に、掃気風路20内の空気を誘導するリヤ送風ファン30が設けられている。このため、掃気風路20内の空気を強制的に排出することが可能となり、排熱効率をさらに向上させることができる。
【0068】
なお、このリヤ送風ファン30は、リヤピラー32aの下端部近傍に配置されているので、このリヤ送風ファン30が邪魔になりにくく、車両1のデザイン性を損なうことがない。
【0069】
さらに、このとき、リヤ送風ファン30によって連通ダクト32内に生じた負圧により遮蔽ドア34が引っ張られてトランクダクト33が開放され、トランクルームTと連通ダクト32とが連通する。
【0070】
これにより、トランクルームT内の空気は、トランクダクト33→連通ダクト32→リヤ送風ファン30→ドラフターグリル31を順に経由して車外に排出される。そのため、トランクルームT内の換気も効率よく行うことができる。
【0071】
このように掃気風路20内の空気を排出した後、ステップ7では、掃気風路20内の温度が外気温度以下であるか否かを判断する。なお、この判断は、空調コントローラ17により、外気温度センサ43から入力された外気温度と、掃気風路内温度センサ45から入力された掃気風路内温度とを比較することで行われる。
【0072】
そして、掃気風路内温度が外気温度よりも高い場合(NOの場合)には、ステップ4にリターンする。一方、掃気風路内温度が外気温度以下の場合(YESの場合)には、ステップ8へ移行する。
【0073】
ステップ8では、フロント送風ファン11のファンモータ11aを停止する。さらに、ステップ9では、リヤ送風ファン30のファンモータ30aを停止する。そして、この車内掃気処理を終了する。
【0074】
次に、所定時間駐車中の車両1において実行される車内掃気処理を、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0075】
ステップ10では、車両1を停車後あらかじめ定めた所定時間経過しているか否かを判断し、所定時間経過していない場合(NOの場合)には、ステップ10をリターンし、所定時間経過している場合(YESの場合)には、ステップ11へ移行する。
【0076】
ステップ11では、蓄電装置(図示せず)に蓄えられた電力エネルギーが12V以上であるか否かを判断し、12Vに満たない場合(NOの場合)には、ステップ11をリターンし、12V以上の場合(YESの場合)には、ステップ12へ移行する。
【0077】
なお、ここでは判断閾値を12Vとしているが、フロント送風ファン11及びリヤ送風ファン30を駆動するのに必要な電力エネルギーがあればよい。
【0078】
そして、ステップ12では、空調コントローラ17は、内気温度センサ44によって車室R内の内気温度を検出し、この内気温度があらかじめ設定された所定の温度(X℃)以上であるか否かを判断し、内気温度が所定の温度よりも小さい場合(NOの場合)には、車内掃気は行われず、この車内掃気処理は終了する。一方、内気温度が所定温度以上の場合(YESの場合)には、ステップ13へ移行する。
【0079】
ステップ13では、空調コントローラ17は運転モードを掃気モードに設定し、各ドアD1〜D5を前述のステップ4の場合と同様に駆動制御して、ステップ14へ移行する。
【0080】
ステップ14では、フロント送風ファン11のファンモータ11aを回転駆動する。さらに、ステップ15では、リヤ送風ファン30のファンモータ30aを回転駆動する。
【0081】
これにより、外気導入口18bから吸い込まれた外気は、フロント送風ファン11→エバポレータ13→ベントダクト2a→アッパーベント吹出グリル12を経由して、車室R内へ排出される。そして、車室R内に排出された外気はフロントガラスに沿って流れ、掃気風路20の空気取入口23に向けて送風される。
【0082】
さらに、掃気風路20内の空気は、車両1の前部側から後部側に向かって流れた後、空気排出口24→連通ダクト32→リヤ送風ファン30→ドラフターグリル31を順に経由して、車外に排出される。
【0083】
そして、ステップ16では、空調コントローラ17は、掃気風路20内の温度が外気温度以下であるか否かを判断し、掃気風路内温度が外気温度よりも高い場合(NOの場合)には、ステップ13にリターンする。一方、掃気風路内温度が外気温度以下の場合(YESの場合)には、ステップ17へ移行する。
【0084】
ステップ17では、フロント送風ファン11のファンモータ11aを停止する。さらに、ステップ18では、リヤ送風ファン30のファンモータ30aを停止する。そして、この車内掃気処理を終了する。
【0085】
このように、車両1を駐車している場合であっても、所定時間経過ごとに掃気風路20内の掃気を行うことにより、車室R内の温度が極端に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0086】
以上、この発明にかかる実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0087】
例えば、上述の実施の形態では、掃気風路内温度が外気温度以下になった場合にフロント送風ファン11及びリヤ送風ファン30を停止しているが、これに限らない。フロント送風ファン11及びリヤ送風ファン30は、掃気風路内温度に関わらず所定時間(例えば30秒)経過後に停止してもよい。
【0088】
また、上述の実施の形態では、車両1に設けられている空調ユニット10により外気を送風しているが、例えば外気を掃気風路20の空気取入口23に向けて送風するためだけの送風ユニットを車両1に設けてもよい。
【0089】
なお、上述の実施の形態のように、既存の空調ユニット1を利用して外気を送風することにより、重量や製造コスト等の増加をさらに抑制することが可能となっている。
【0090】
さらに、ドラフターグリル31は、例えばルーフアウタパネル21及びルーフインナパネル22の後端部近傍、つまり車両1の天井部分の後端部に形成されていてもよい。
【0091】
この場合、連通ダクト32を介さずに掃気風路20の空気排出口24をドラフターグリル31に接続することができ、排気効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0092】

【図1】本発明に係る車両用掃気システムが適用された車両を示す平面図である。
【図2】本発明に係る車両用掃気システムが適用された車両を示す側面図である。
【図3】本発明に係る車両用掃気システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る車両用掃気システムにて実行される車内掃気処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】所定時間駐車後に実行される車内掃気処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
10 空調ユニット(送風ユニット)
20 掃気風路
21 ルーフアウタパネル
22 ルーフインナパネル
23 空気取入口
31 ドラフターグリル(ドラフタ)
R 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を車室内に送風可能な送風ユニットと、ルーフアウタパネルとルーフインナパネルとの間に設けられ、且つ、前記車室内と車両後部に形成されたドラフタとを連通する掃気風路とを有し、
前記掃気風路の空気取入口は、前記車室の前部に位置し、
前記送風ユニットは、前記空気取入口に向かって外気を送風することを特徴とする車両用掃気システム。
【請求項2】
前記掃気風路の空気取入口は、前記ルーフアウタパネル及び前記ルーフインナパネルの前端部の近傍に形成され、
前記掃気風路の空気排出口は、リヤピラー内に形成されて前記ドラフタに連通した連通ダクトに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用掃気システム。
【請求項3】
前記掃気風路の空気取入口と前記ドラフタとの間には、この掃気風路内の空気を前記ドラフタに向けて誘導する誘導送風機が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用掃気システム。
【請求項4】
前記誘導送風機の上流側には、トランクルーム内に連通したトランクダクトが接続され、このトランクダクトの接続口には、前記誘導送風機により誘導された空気によって開く遮蔽ドアが設けられたことを特徴とする請求項3に記載の車両用掃気システム。
【請求項5】
前記送風ユニットは、前記車室内の温度調整を行うための空調ユニットであることを特徴とする請求項1から4にいずれか一項に記載の車両用掃気システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate