説明

車両用排気エネルギー回収装置

【課題】熱音響発電装置を車両に搭載することにより、燃費向上とCO2排出量低減を図り得る車両用排気エネルギー回収装置を提供する。
【解決手段】車両に、排気が流通される高温部3と、エンジン冷却水が流通される低温部4と、蓄熱器5と、発振器6と、発電器7とを有する熱音響発電装置8を搭載し、エンジン2とトランスミッション9との間に、発電器7に対しインバータ10を介して接続されるモータ11を、プロペラシャフト12を回転駆動可能となるよう介装し、更に、モータ11及び発電器7に対しインバータ10を介して接続される蓄電手段13を設け、熱音響発電装置8で発生させた電気によりインバータ10を介してモータ11を駆動するか、或いは熱音響発電装置8で発生させた電気をインバータ10を介して蓄電手段13に蓄えるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用排気エネルギー回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両においては、燃費向上とCO2排出量低減を図ることは最重要課題となっている。
【0003】
ディーゼルエンジン等のエンジンを搭載した車両の場合、全燃料熱量に対し、正味馬力はおよそ40[%]程度に過ぎず、それ以外の損失熱量はおよそ60[%]程度にも及んでおり、該損失熱量のうちおよそ30[%]程度が排気損失であり、残りのおよそ30[%]程度が冷却水損失や駆動系損失等となっている。
【0004】
現状において、前記エンジンの排気は、パティキュレートやNOxを除去した後、そのまま大気へ放出されているのがほとんどであり、このため、前記排気損失を低減する余地はまだ残されており、該排気損失を低減する手段が模索されているが、その一つとして熱音響発電装置を用いることが挙げられている。
【0005】
該熱音響発電装置は、気体を封入した直管型の筒体の一端部に、気体に対し圧力振動を与えるための圧力振動発生装置を設け、前記筒体の中間部に放熱部、蓄熱部及び加熱部を設け、前記筒体の他端部に発電器を設け、前記圧力振動発生装置、放熱部、蓄熱部、加熱部及び発電器をその順に直線上に位置するように配設し、前記加熱部と発電器との間に気体の圧力振動の進行波が直進する伝送通路を設け、前記圧力振動発生装置により発生させた圧力振動を前記蓄熱部内に生じた温度勾配によって増幅させ、該増幅された圧力振動によって生じた進行波により前記発電器を作動させるように構成したものである。
【0006】
尚、前記熱音響発電装置に関する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−167580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の如き熱音響発電装置を排気エネルギー回収装置として実際の車両に対しどのように搭載するかという具体策については全く提案されていないのが現状であった。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、熱音響発電装置を車両に搭載することにより、燃費向上とCO2排出量低減を図り得る車両用排気エネルギー回収装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エンジンからの排気が流通される高温部と、冷却水が流通される低温部と、前記高温部と低温部との間に形成され且つ気体が封入された蓄熱器と、前記低温部に隣接するよう配設され且つ前記蓄熱器内の気体に対し疎密波の波動を伝播させる発振器と、前記高温部に隣接するよう配設され且つ前記蓄熱器内の気体に生じた温度勾配にて増幅された疎密波の波動により駆動され電気を発生させる発電器とを有する熱音響発電装置と、
エンジンのプロペラシャフトを回転駆動可能で且つ前記熱音響発電装置の発電器に対しインバータを介して接続されるモータと、
該モータ及び熱音響発電装置の発電器に対しインバータを介して接続される蓄電手段と
を備え、
前記熱音響発電装置で発生させた電気により前記インバータを介して前記モータを駆動するか、或いは前記熱音響発電装置で発生させた電気を前記インバータを介して前記蓄電手段に蓄えるよう構成したことを特徴とする車両用排気エネルギー回収装置にかかるものである。
【0011】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0012】
エンジンの排気が熱音響発電装置の高温部に流通されると共に、該熱音響発電装置の低温部に冷却水が流通された状態で、発振器から蓄熱器内の気体に対し疎密波の波動を伝播させると、該熱音響発電装置においては、排気と冷却水との温度差により前記蓄熱器内の気体に生じた温度勾配にて前記疎密波の波動が増幅され、該増幅された疎密波の波動により発電器が駆動され電気を発生する。
【0013】
前記熱音響発電装置で発生させた電気は、車両の運転状況に応じて、インバータの出力切換機能により、モータを駆動することに利用されるか、或いは蓄電手段に蓄えられる。尚、前記熱音響発電装置の発生電圧が、モータの駆動電圧と異なるとき、或いは蓄電手段に適した電圧と異なるときは、前記インバータにより用途に応じた電圧への変換が行われるが、発生電圧によっては、電圧変換が不要な場合も勿論ある。
【0014】
そして、前記熱音響発電装置で発生させた電気がモータを駆動することに利用される場合、該電気が供給されたモータにより、プロペラシャフトが回転駆動され、エンジンは、その際に必要なトルクから前記モータが発生するモータ駆動トルクを差し引いたトルクを発生すれば良いことになる。
【0015】
従って、エンジンへの供給燃料を低減することができるので、燃費が向上すると共に、CO2排出量も低減可能となる。
【0016】
尚、低速走行時や停車時等に前記熱音響発電装置で発生させた電気が使い切れないような場合は、蓄電手段に充電することが可能となる。又、減速時にはモータを発電機として使用することにより、発電を行い、蓄電手段に充電することが可能となる。
【0017】
前記車両用排気エネルギー回収装置においては、前記熱音響発電装置の高温部に、エンジンからの排気を流通させる排気管を接続し、該排気管における高温部の入側に排気バルブを設けると共に、該排気管における排気バルブより上流側から分岐し且つ前記高温部の出側につながる排気バイパス管を設け、該排気バイパス管に排気バイパスバルブを設け、排気温度が設定値以上の場合に前記排気バルブを開き且つ前記排気バイパスバルブを閉じ、排気温度が設定値未満の場合に前記排気バルブを閉じ且つ前記排気バイパスバルブを開くよう構成することができ、このようにすると、排気温度が設定値以上の場合にのみ、排気バルブが開き且つ排気バイパスバルブが閉じて排気が熱音響発電装置の高温部に流入し、排気温度が設定値未満の場合には排気バルブが閉じ且つ排気バイパスバルブが開いて排気が熱音響発電装置の高温部に流入せずに排気バイパス管から排出されるため、該熱音響発電装置における発電効率を高めることが可能になると共に、システム作動時以外は排気が熱音響発電装置内に流入しないので、過熱を防止する面でも有効となる。
【0018】
又、前記車両用排気エネルギー回収装置においては、前記熱音響発電装置の低温部に、エンジン冷却水の一部を流通させるエンジン冷却水管を接続し、該エンジン冷却水管における低温部の出側に冷却水バルブを設け、エンジン冷却水温度が設定値以上の場合に前記冷却水バルブを開き、エンジン冷却水温度が設定値未満の場合に前記冷却水バルブを閉じるよう構成することができ、このようにすると、冷却水としてエンジン冷却水を使用する場合に、エンジン始動直後等のエンジン冷却水温度が低く設定値未満のときには冷却水バルブが閉じることから、エンジン冷却水をエンジン内だけで循環させることができるので、水温を早く上昇させることが可能となる。更に、冷却水バルブは、エンジン冷却水管における低温部の出側に設けてあり、たとえ冷却水バルブが閉じていたとしても、常にエンジン冷却水が満たされるようになっているため、この状態で熱音響発電装置の高温部に排気が流入し続けても、該熱音響発電装置の過熱を防止可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用排気エネルギー回収装置によれば、熱音響発電装置を車両に搭載することにより、燃費向上とCO2排出量低減を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例を示す全体概要構成図である。
【図2】本発明の実施例における制御ブロック図である。
【図3】本発明の実施例における熱音響発電装置の原理を示す概略図である。
【図4】本発明の実施例における制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1〜図4は本発明の実施例であって、トラック等の車両1に、エンジン2からの排気が流通される高温部3と、エンジン冷却水が流通される低温部4と、前記高温部3と低温部4との間に形成され且つ気体が封入された蓄熱器5と、前記低温部4に隣接するよう配設され且つ前記蓄熱器5内の気体に対し疎密波の波動を伝播させる発振器6と、前記高温部3に隣接するよう配設され且つ前記蓄熱器5内の気体に生じた温度勾配にて増幅された疎密波の波動により駆動され電気を発生させる発電器7とを有する熱音響発電装置8を搭載し、エンジン2とトランスミッション9との間に、前記熱音響発電装置8の発電器7に対しインバータ10を介して接続されるモータ11を、該モータ11及びエンジン2にてプロペラシャフト12を回転駆動可能となるよう介装し、更に、前記モータ11及び熱音響発電装置8の発電器7に対しインバータ10を介して接続されるバッテリ又はキャパシタ等の蓄電手段13を設け、前記熱音響発電装置8で発生させた電気により前記インバータ10を介して前記モータ11を駆動するか、或いは前記熱音響発電装置8で発生させた電気を前記インバータ10を介して前記蓄電手段13に蓄えるよう構成したものである。
【0023】
本実施例の場合、前記熱音響発電装置8の高温部3には、エンジン2からの排気を流通させる排気管14を接続し、該排気管14における高温部3の入側に排気バルブ15を設けると共に、該排気管14における排気バルブ15より上流側から分岐し且つ前記高温部3の出側につながる排気バイパス管16を設け、該排気バイパス管16に排気バイパスバルブ17を設け、排気温度検出器18で検出した排気温度18aを制御ユニット19へ入力し、該排気温度18aが設定値以上の場合に前記排気バルブ15を開き且つ前記排気バイパスバルブ17を閉じる開閉制御信号15a,17aを制御ユニット19から出力する一方、前記排気温度18aが設定値未満の場合に前記排気バルブ15を閉じ且つ前記排気バイパスバルブ17を開く開閉制御信号15a,17aを制御ユニット19から出力するよう構成してある。
【0024】
又、前記熱音響発電装置8の低温部4には、エンジン冷却水の一部を流通させるエンジン冷却水管20を接続し、該エンジン冷却水管20における低温部4の出側に冷却水バルブ21を設け、エンジン冷却水温度検出器22で検出したエンジン冷却水温度22aを制御ユニット19へ入力し、該エンジン冷却水温度22aが設定値以上の場合に前記冷却水バルブ21を開く開閉制御信号21aを制御ユニット19から出力する一方、前記エンジン冷却水温度22aが設定値未満の場合に前記冷却水バルブ21を閉じる開閉制御信号21aを制御ユニット19から出力するよう構成してある。
【0025】
ここで、前記熱音響発電装置8の原理について簡単に説明すると、図3に示す如く、シリンダ状に形成された発振器6の内部と発電器7内部にはそれぞれピストン6A,7Aが摺動自在に嵌挿されており、エンジン2の排気を熱音響発電装置8の高温部3に流通させると共に、該熱音響発電装置8の低温部4にエンジン冷却水を流通した状態で、前記発振器6のピストン6Aを振動させて疎密波を生成し、蓄熱器5内の気体に対し疎密波の波動を伝播させることにより、排気とエンジン冷却水との温度差に伴って前記蓄熱器5内の気体に生じた温度勾配にて前記疎密波の波動を増幅し、該増幅された疎密波の波動により前記発電器7のピストン7Aを駆動して電気を発生させ、エネルギーを回収できるようになっている。
【0026】
尚、前記制御ユニット19は、前記排気温度18a、並びにエンジン冷却水温度22aの監視による排気バルブ15及び排気バイパスバルブ17の開閉制御、並びに冷却水バルブ21の開閉制御に加え、エンジン2の運転状態を示す運転状態信号2a(例えば、回転数、トルク等)やトランスミッション9の運転状態を示す運転状態信号9a(例えば、設定段、回転数等)に基づいてそれらを監視すると共に、インバータ10の入力元が熱音響発電装置8の発電器7或いは蓄電手段13のいずれであるかという点とその電圧・電流等を監視し、これら監視される入力情報に基づいて、前記熱音響発電装置8の発振周波数と入力電圧・電流を発振器制御信号6aにより制御し、インバータ10での変換電圧、インバータ10の入力と出力等をインバータ制御信号10aにより制御し、前記モータ11の駆動をモータ制御信号11aにより制御し、更に前記エンジン2やトランスミッション9の運転状態等をも制御するようになっている。
【0027】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0028】
車両1の運転時には、排気温度検出器18で検出した排気温度18aとエンジン冷却水温度検出器22で検出したエンジン冷却水温度22aとが制御ユニット19へ入力されており、先ず、図4のフローチャートにおいて、ステップS1で排気温度18aが設定値以上であるか否かの判断が行われ、該排気温度18aが設定値以上である場合には、ステップS2でエンジン冷却水温度22aが設定値以上であるか否かの判断が行われ、該エンジン冷却水温度22aが設定値以上である場合には、制御ユニット19から出力される開閉制御信号15a,17a,21aにより、ステップS3で、排気バルブ15が開かれ、排気バイパスバルブ17が閉じられ、冷却水バルブ21が開かれ、エンジン2の排気が熱音響発電装置8の高温部3に流通されると共に、該熱音響発電装置8の低温部4にエンジン冷却水が流通された状態となり、この状態で、制御ユニット19から出力される発振器制御信号6aによりステップS4で発振器6が駆動され、発振器6のピストン6Aが振動して疎密波を生成し、蓄熱器5内の気体に対し疎密波の波動が伝播されると、該熱音響発電装置8においては、排気とエンジン冷却水との温度差により前記蓄熱器5内の気体に生じた温度勾配にて前記疎密波の波動が増幅され、該増幅された疎密波の波動により発電器7のピストン7Aが駆動され電気を発生する。尚、前記ステップS1で排気温度18aが設定値以上でないと判断された場合、並びに前記ステップS2でエンジン冷却水温度22aが設定値以上でないと判断された場合には、ステップS1における判断の上流側に制御が戻され、同様の操作が繰り返し行われる。
【0029】
続くステップS5でアクセルがオンであるか否かの判断が行われ、該アクセルがオンである場合には、ステップS6でモータ制御信号11aによりモータ11が駆動され、ステップS7でモータ駆動トルクTmが計算され、ステップS8でエンジン必要トルクTe1が計算され、ステップS9で変数としてのトルクTe2に対し、
Te2=Te1−Tm
という関係式で代入が行われ、ステップS10でエンジン出力トルクをTe2へ変更する制御がなされる。
【0030】
このように、前記熱音響発電装置8で発生させた電気がモータ11を駆動することに利用される場合、該電気が供給されたモータ11により、プロペラシャフト12が回転駆動され、エンジン2は、その際に必要なエンジン必要トルクTe1から前記モータ11が発生するモータ駆動トルクTmを差し引いたトルクTe2を発生すれば良いことになる。尚、前記熱音響発電装置8の発生電圧が、モータ11の駆動電圧と異なるときは、インバータ制御信号10aにて制御される前記インバータ10により用途に応じた電圧への変換が行われるが、発生電圧によっては、電圧変換が不要な場合も勿論ある。
【0031】
従って、エンジン2への供給燃料を低減することができるので、燃費が向上すると共に、CO2排出量も低減可能となる。
【0032】
一方、前記ステップS5でアクセルがオンでないと判断された場合には、ステップS11で蓄電手段13の充電が必要であるか否かの判断が行われ、該蓄電手段13の充電が必要である場合には、ステップS12で熱音響発電装置8で発電が行われているか否かの判断が行われ、熱音響発電装置8で発電が行われている場合には、ステップS13で蓄電手段13の充電が行われた後、ステップS1における判断の上流側に制御が戻され、同様の操作が繰り返し行われる。前記ステップS11で蓄電手段13の充電が必要でないと判断された場合には、ステップS1における判断の上流側に制御が戻され、同様の操作が繰り返し行われる。前記ステップS12で熱音響発電装置8で発電が行われていないと判断された場合には、ステップS14でモータ11を発電機として発電しているか否かの判断が行われ、該モータ11を発電機として発電している場合には、ステップS13で蓄電手段13の充電が行われた後、ステップS1における判断の上流側に制御が戻され、同様の操作が繰り返し行われる。前記ステップS14でモータ11を発電機として発電していないと判断された場合には、ステップS1における判断の上流側に制御が戻され、同様の操作が繰り返し行われる。尚、前記熱音響発電装置8の発生電圧が蓄電手段13に適した電圧と異なるときは、インバータ制御信号10aにて制御される前記インバータ10により用途に応じた電圧への変換が行われるが、発生電圧によっては、電圧変換が不要な場合も勿論ある。
【0033】
これにより、低速走行時や停車時等に前記熱音響発電装置8で発生させた電気が使い切れないような場合は、蓄電手段13に充電することが可能となる。又、減速時にはモータ11を発電機として使用することにより、発電を行い、蓄電手段13に充電することが可能となる。
【0034】
前記ステップS10でエンジン出力トルクをTe2へ変更する制御がなされた後は、ステップS15で排気温度18aが設定値以上であるか否かの判断が再び行われ、該排気温度18aが設定値以上である場合には、ステップS2における判断の上流側に制御が戻され、同様の操作が繰り返し行われる一方、前記ステップS15で排気温度18aが設定値以上でないと判断された場合には、ステップS16でモータ11の駆動が停止され、ステップS17でエンジン出力トルクをTe1へ変更する制御がなされ、制御ユニット19から出力される開閉制御信号15a,17a,21aにより、ステップS18で、排気バルブ15が閉じられ、排気バイパスバルブ17が開かれ、冷却水バルブ21が閉じられ、エンジン2の排気が熱音響発電装置8の高温部3に流通されずに排気バイパス管16を経て大気へ放出されると共に、該熱音響発電装置8の低温部4にエンジン冷却水が流通されずに停止した状態となり、ステップS19で蓄電手段13の充電が必要であるか否かの判断が行われ、該蓄電手段13の充電が必要である場合には、ステップS20でアクセルがオンであるか否かの判断が行われ、該アクセルがオンでない場合には、ステップS21でモータ11を発電機として発電しているか否かの判断が行われ、該モータ11を発電機として発電している場合には、ステップS22で蓄電手段13の充電が行われた後、ステップS1における判断の上流側に制御が戻され、同様の操作が繰り返し行われる。前記ステップS19で蓄電手段13の充電が必要でないと判断された場合と、前記ステップS20でアクセルがオンでないと判断された場合と、前記ステップS21でモータ11を発電機として発電していないと判断された場合には、ステップS22で蓄電手段13の充電が行われずにそのまま、ステップS1における判断の上流側に制御が戻され、同様の操作が繰り返し行われる。
【0035】
更に本実施例においては、前記熱音響発電装置8の高温部3に、エンジン2からの排気を流通させる排気管14を接続し、該排気管14における高温部3の入側に排気バルブ15を設けると共に、該排気管14における排気バルブ15より上流側から分岐し且つ前記高温部3の出側につながる排気バイパス管16を設け、該排気バイパス管16に排気バイパスバルブ17を設け、排気温度18aが設定値以上の場合に前記排気バルブ15を開き且つ前記排気バイパスバルブ17を閉じ、排気温度18aが設定値未満の場合に前記排気バルブ15を閉じ且つ前記排気バイパスバルブ17を開くよう構成したことにより、排気温度18aが設定値以上の場合にのみ、排気バルブ15が開き且つ排気バイパスバルブ17が閉じて排気が熱音響発電装置8の高温部3に流入し、排気温度18aが設定値未満の場合には排気バルブ15が閉じ且つ排気バイパスバルブ17が開いて排気が熱音響発電装置8の高温部3に流入せずに排気バイパス管16から排出されるため、該熱音響発電装置8における発電効率を高めることが可能になると共に、システム作動時以外は排気が熱音響発電装置8内に流入しないので、過熱を防止する面でも有効となる。
【0036】
又、本実施例においては、前記熱音響発電装置8の低温部4に、エンジン冷却水の一部を流通させるエンジン冷却水管20を接続し、該エンジン冷却水管20における低温部4の出側に冷却水バルブ21を設け、エンジン冷却水温度22aが設定値以上の場合に前記冷却水バルブ21を開き、エンジン冷却水温度22aが設定値未満の場合に前記冷却水バルブ21を閉じるよう構成してあるため、冷却水としてエンジン冷却水を使用する場合に、エンジン2始動直後等のエンジン冷却水温度22aが低く設定値未満のときには冷却水バルブ21が閉じることから、エンジン冷却水をエンジン2内だけで循環させることができるので、水温を早く上昇させることが可能となる。更に、冷却水バルブ21は、エンジン冷却水管20における低温部4の出側に設けてあり、たとえ冷却水バルブ21が閉じていたとしても、常にエンジン冷却水が満たされるようになっているため、この状態で熱音響発電装置8の高温部3に排気が流入し続けても、該熱音響発電装置8の過熱を防止可能となる。
【0037】
こうして、熱音響発電装置8を車両1に搭載することにより、燃費向上とCO2排出量低減を図り得る。
【0038】
尚、本発明の車両用排気エネルギー回収装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、モータはエンジンとトランスミッションとの間に介装する代わりに、トランスミッションの出力軸側に設けてプロペラシャフトを直接回転駆動するようにしても良いこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2 エンジン
3 高温部
4 低温部
5 蓄熱器
6 発振器
7 発電器
8 熱音響発電装置
10 インバータ
10a インバータ制御信号
11 モータ
11a モータ制御信号
12 プロペラシャフト
13 蓄電手段
14 排気管
15 排気バルブ
15a 開閉制御信号
16 排気バイパス管
17 排気バイパスバルブ
17a 開閉制御信号
18 排気温度検出器
18a 排気温度
19 制御ユニット
20 エンジン冷却水管
21 冷却水バルブ
21a 開閉制御信号
22 エンジン冷却水温度検出器
22a エンジン冷却水温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気が流通される高温部と、冷却水が流通される低温部と、前記高温部と低温部との間に形成され且つ気体が封入された蓄熱器と、前記低温部に隣接するよう配設され且つ前記蓄熱器内の気体に対し疎密波の波動を伝播させる発振器と、前記高温部に隣接するよう配設され且つ前記蓄熱器内の気体に生じた温度勾配にて増幅された疎密波の波動により駆動され電気を発生させる発電器とを有する熱音響発電装置と、
エンジンのプロペラシャフトを回転駆動可能で且つ前記熱音響発電装置の発電器に対しインバータを介して接続されるモータと、
該モータ及び熱音響発電装置の発電器に対しインバータを介して接続される蓄電手段と
を備え、
前記熱音響発電装置で発生させた電気により前記インバータを介して前記モータを駆動するか、或いは前記熱音響発電装置で発生させた電気を前記インバータを介して前記蓄電手段に蓄えるよう構成したことを特徴とする車両用排気エネルギー回収装置。
【請求項2】
前記熱音響発電装置の高温部に、エンジンからの排気を流通させる排気管を接続し、該排気管における高温部の入側に排気バルブを設けると共に、該排気管における排気バルブより上流側から分岐し且つ前記高温部の出側につながる排気バイパス管を設け、該排気バイパス管に排気バイパスバルブを設け、排気温度が設定値以上の場合に前記排気バルブを開き且つ前記排気バイパスバルブを閉じ、排気温度が設定値未満の場合に前記排気バルブを閉じ且つ前記排気バイパスバルブを開くよう構成した請求項1記載の車両用排気エネルギー回収装置。
【請求項3】
前記熱音響発電装置の低温部に、エンジン冷却水の一部を流通させるエンジン冷却水管を接続し、該エンジン冷却水管における低温部の出側に冷却水バルブを設け、エンジン冷却水温度が設定値以上の場合に前記冷却水バルブを開き、エンジン冷却水温度が設定値未満の場合に前記冷却水バルブを閉じるよう構成した請求項1又は2記載の車両用排気エネルギー回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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