説明

車両用換気装置

【課題】車両外部の空気に含まれるさまざまなガスに対して、閾値を用いてすばやく良否を判定し、良と判定され、外部空気を車室内に取り込んだ場合においても、個人の感受性または嗜好性に応じて、さらに判定をやり直すことのできる車両用換気装置にする。
【解決手段】ガスセンサ2は、車両外部の複数種類のガスを検出し、演算手段8は、ガスセンサからの複数の出力信号をパターン化して外気切替装置11を制御する。第1の制御手段25は、閾値によって各閾値以内の濃度であるときに、外気取込み信号を発生する。第2の制御手段28は、操作手段18によって外気遮断モードに手動切替操作されたときに、出力信号を参照パターンとして記憶させる。第3の制御手段35は、パターン化された出力信号が参照パターンに類似しているときには、各閾値以内のガスの濃度であっても外気遮断モードにモードを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外部の複数種類のガスが検出され、複数種類のガスに応じた複数の出力信号を発生するガスセンサを用いて、自動的に車両外部の空気を車室内に取り込むか、取り込まないかを切り替える外気切替装置を持った車両用換気装置に関する。特に、内気および外気を選択的に導入する車両用空調装置の内外気切替装置に適用されて有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置には、排気ガスの車両内への侵入が防止され、乗客のフィーリングを向上させるために、排気ガス中のHCやCO、NOxなどのガス成分(汚染物質)を排ガスセンサによって検知するものがある。
【0003】
そして、そのセンサ信号に基づいて、ガス成分の濃度が閾値を越えると、内外気ドアが自動的に制御され、排気ガスの車室内への侵入が防止されるいわゆるオート内外気切替機能をもったものがある。
【0004】
排気ガスセンサとしては、半導体素子であるSnO2を基材に用いている半導体ガスセンサが一般的に使用されている。この半導体ガスセンサは、約400℃まで暖めた状態でHC、CO等いわゆる還元性ガスと反応すると、その抵抗値が小さくなり、またNO2等いわゆる酸化性ガスと反応すると、その抵抗値が上昇するという特性を持っている。よって、このような特性を基に排気ガスの有無を検知することができる。
【0005】
そして、このような複数のセンサエレメントを持つガスセンサを使用されて、複数種類のガスの濃度が検出され、それぞれのガスの濃度が閾値を超えた場合に、内外気切替装置の内外気切替ドアを自動制御するものが知られている。
【0006】
これは閾値を用いて濃度が判定され、より正確な制御が行われるように、車両加速度という特定のファクタによって閾値の値が変化するようになっている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−56450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この従来のものは、乗員の個人的なガスに対する感受性または嗜好性に関しては充分に対策できていない。
【0008】
その理由は、ガスセンサでは、臭気の原因物質そのものの検出が困難であり、かつ個人的なガスに対する感受性または嗜好性にいたっては、かなりの幅があるためである。
【0009】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、車両外部の空気に含まれるさまざまなガスに対して、閾値を用いてすばやく良否が判定され、良と判定された場合においても、個人の感受性または嗜好性に応じてさらに判定をやり直すことのできる車両用換気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明では、車両外部の空気を車室内に取り込む外気導入モードと、外気の導入を遮断する外気遮断モードとを切り替える外気切替装置(11)を持った車両用換気装置であって、車両外部の複数種類のガスを検出し、複数種類のガスに応じた複数の出力信号を発生するガスセンサ(2)、ガスセンサ(2)からの複数の出力信号が入力されて信号を発生し外気切替装置(11)を制御する演算手段(8)、および、車両乗員によって車室内で操作され手動で外気切替装置(11)を切り替える操作信号を発生する操作手段(18)を備え、演算手段(8)は、第1の制御手段(25)と第2の制御手段(28)と第3の制御手段(35)とを備え、第1の制御手段(25)は、設定された閾値を用いて複数種類の出力信号から車両外部の空気の良否を判定し、良と判定されたときに外気切替装置(11)を前記外気導入モードに切り替えるための外気取込み信号を発生し、第2の制御手段(28)は、外気取込み信号が発生されているときに、操作手段(18)によって外気切替装置(11)が外気遮断モードに手動切替操作されると外気遮断モードに切り替えるための優先信号を発生するとともに、このときの複数種類の出力信号を参照データとして記憶させ、第3の制御手段(35)は、参照データが記憶されているときに、第1の制御手段(25)が車両外部の空気を良と判定しており、かつ、複数種類の出力信号が参照データを基に類似と判定されると、外気遮断モードに外気切替装置(11)を切り替えるための外気取り込み解除信号を発生することを特徴としている。
【0012】
この請求項1に記載の発明によれば、第1の制御手段では、設定された閾値を用いて、迅速簡単に車両外部の空気の良否を判定でき、良と判定されたときに、外気切替装置(11)を外気導入モードに切り替えることができる。そして、車両外部の空気が、一応良と判定されたときでも、個人的な感受性または嗜好性の相違により、車両運転中に乗員が操作スイッチを操作して、手動で車両外部の空気を取り込まない側に切り替えることがある。そのような切り替えに鑑み、第2の制御手段(28)は、このときの状況を学習するために、複数の出力信号を参照データとして記憶させる。よって、この後、同様の状況が発生した場合には、自動的に第3の制御手段(35)にて、複数の出力信号が参照データを基に類似するとの判定が行われ、外気遮断モードに切り替えられることが可能になる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明では、ガスセンサ(2)は車両外部の複数種類のガスを検出し、各ガスの濃度に応じた複数の出力信号を発生し、演算手段(8)は、ガスセンサ(2)からの複数の出力信号が入力され、複数の出力信号をパターン化するパターン化手段を有して、パターン化された出力信号を発生し、第1の制御手段は、ガスセンサ(2)の複数の出力信号に対応した閾値によって、各ガスの濃度が各閾値以内の濃度であるときには外気切替装置(11)を外気導入モードに切り替えるための外気取込み信号を発生し、第2の制御手段は、外気取込み信号が発生されたときに、操作手段(18)によって外気切替装置(11)が外気遮断モードに手動切替操作されたときには外気遮断モードに切り替えるための優先信号を発生するとともに、このときのパターン化された出力信号を参照データとなる参照パターンとして記憶させ、第3の制御手段(35)は、参照パターンが記憶されているときに、各ガスの濃度が各閾値以内の濃度であり、かつ、パターン化された出力信号が参照パターンに類似しているときには、外気切替装置(11)を外気遮断モードに切り替えるための外気取り込み解除信号を発生することを特徴としている。
【0014】
この請求項2に記載の発明によれば、ガスセンサからの複数の出力信号をパターン化する手段が設けられているので、パターン化された出力信号が、参照データとなる参照パターンとして記憶される。したがって、広く知られるパターン認識の技術を利用して、パターン化された出力信号が、参照パターンに類似しているか否かの判定ができ、類似判断の多様化や正確化に寄与する。
【0015】
また、請求項3に記載の発明では、車両用換気装置は車両外部の空気を取り込んで車室内を空調する車両用空調装置から成り、外気切替装置(11)は、空調する空気を車両外部から取り込む外気導入モード側である外気導入口側、または、空調する空気を車室内側から取り込む外気遮断モード側である内気導入口側に切り替える内外気切替装置(11)であることを特徴としている。
【0016】
この請求項3に記載の発明によれば、車両用空調装置の内外気切替を、より正確に行うことができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明では、ガスセンサ(2)は複数の異なるセンサエレメント(2a、2b、2c、2d、2e)の集合からなり、個々のセンサエレメント(2a、2b、2c、2d、2e)が各々異なる特性でガスを検出し、該ガスの濃度に応じた個々の出力信号を発生することを特徴としている。
【0018】
この請求項4に記載の発明によれば、さまざまなセンサエレメント(2a、2b、2c、2d、2e)を用いて、ガスを多面的に検知することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明では、複数の出力信号は、各々ベクトルで表され、該ベクトル先端部分が橋絡されてパターン化されることを特徴としている。
【0020】
この請求項5に記載の発明によれば、複数の出力信号が、ベクトルを用いて図形化されることで、パターン化が容易にできる。
【0021】
また、請求項6に記載の発明では、パターン化された出力信号が参照パターンに類似しているか否かは、参照パターンを基に設定された上下限領域内にパターン化した出力信号が入るか否かで決定されることを特徴としている。
【0022】
この請求項6に記載の発明によれば、類似判断が簡単にできる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明では、車両内に車両位置特定装置(40)が設けられ、第2の制御手段(28)が、複数種類の出力信号を参照データとして記憶させるときに、車両位置特定装置(40)内において、車両が走行している特定地域の領域の情報を記憶させることを特徴としている。
【0024】
この請求項7に記載の発明によれば、乗員が臭いを気にして、操作手段(18)が操作された特定地域の領域の情報を、車両位置特定装置内に記憶させ活用することができる。
【0025】
また、請求項8に記載の発明では、車両内に車両位置特定装置(40)が設けられ、第2の制御手段(28)が、パターン化された出力信号を参照パターンとして記憶させるときに、車両位置特定装置(40)内において、車両が走行している特定地域の領域の情報を記憶させることを特徴としている。
【0026】
この請求項8に記載の発明によれば、乗員が臭いを気にして、操作手段(18)が操作された特定地域の領域の情報を、車両位置特定装置内に記憶させ活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図8を用いて詳細に説明する。この実施形態は、車室内を空調する車両用空調装置から成る車両用換気装置である。そして外気導入口側が、空調する空気を車両外部から取り込む外気導入モード側に相当し、内気導入口側が、空調する空気を車室内側から取り込む、外気遮断モード側に相当する。
【0028】
図1は、第1実施形態としての車両用空調装置を備えた車両の模式図である。車両前方のエンジンルームへの空気取り入れ部分近傍には、ガスセンサ2が設けられている。このガスセンサ2は、単体のガスセンサの中に、図2のように複数の異なるセンサエレメント2a、2b、2c、2d、2eが設けられているものである。これにより、空気の中に含まれるいろいろなガスに対応して異なる出力を出すことができる。
【0029】
このためには、同じ原理のセンサでも、特性や感度の異なるセンサエレメントを並べて設けてもよい。たとえば、検出すべき臭気には、脂肪酸、アンモニア、アミン、アルデヒド、芳香族類、炭化水素HC、硫化水素H2S等の臭気がある。
【0030】
図2に示すように、これらのガスに反応し、それぞれ特性の異なる5つのセンサエレメントが一つのケース3内に収納されている。ここで、各センサエレメントの信号が、多数の配線で演算手段となる電子制御ユニット(ECU)8に送信されるようにしてもよいが、この実施形態では多重通信で送信されている。そのために、ケース内3に回路部4が設けられている。そして、回路部4内には、各センサエレメントからの信号を増幅する増幅器と、各センサエレメントからの信号を多重通信化して、一つの信号線内に多重信号として供給する通信部とが収納されている。そして、演算手段をなす電子制御ユニット8と、ガスセンサ2とは、双方向の多重通信線路9で結合されている。
【0031】
なお、ガスセンサ2は、半導体素子であるSnO2を基材に用いている複数のセンサエレメントを備えている。これは大きく分けて、二種類あり、一方の種類のセンサエレメントは、外気に含まれる汚染物質のうちHC、CO等の還元性ガスに反応すると抵抗値が低くなる。そして、このセンサエレメントおよび基準抵抗素子の共通接続端子からは、当該センサエレメントの抵抗値を示す検出信号であるHC信号を出力する。
【0032】
他方の種類のセンサエレメントは、外気に含まれる汚染物質のうちNOx等の酸化性ガスに反応すると抵抗値が高くなるものである。このセンサエレメントおよび基準抵抗素子は、電子制御ユニット8の正極端子およびグランドの間において直列接続されている。このため、このセンサエレメントおよび基準抵抗素子の共通接続端子からは、当該センサエレメントの抵抗値を示す検出信号であるNOx信号を出力する。
【0033】
ここで、それぞれのセンサエレメントを約400℃に温める電気式ヒータが設けられている。これは、それぞれのセンサエレメントを還元性ガス、酸化性ガスなどに反応させる状態に保つためである。
【0034】
この実施形態においては、特性が異なる、これら二種類のセンサが組み合わせて構成されており、HC信号を出力するセンサエレメント3個と、NOx信号を出力するセンサエレメント2個を組み合わせ、各センサエレメント同士は、同じガス検出原理でも特性の違うものが選定されている。
【0035】
次に、図3を用いて説明する。この図3は、車両用空調制御装置の中の演算手段と内外気切替装置との関係を示すブロック図である。図1及び図3に示すように、内外気切替装置11は、サーボモータ12によって駆動されるダンパ13が、車両前側と車両後ろ側とに枢動して、作動が切り替わるようになっている。
【0036】
ダンパ13が車両後ろ側に位置した時に、車両外部の空気を、電動のブロワ15を介して車室内16に取り込む外気導入モードを実行するようになっている。この場合は、ブロワ15の吸い込み側が、外気導入口と連通する。
【0037】
そして、ステアリング部分には、操作パネルが在り、この中には外気切替装置11の外気導入モードを手動運転で強制的に切り替えるための信号を発生する操作手段をなす操作スイッチ18が設けられている。
【0038】
ガスセンサ2からの信号は、演算手段をなす電子制御ユニット(ECU)8内のパターン化手段36でパターン化される。図4は、その一例を示すもので、5つのセンサエレメント2a、2b、2c、2d、2eから出力された信号は、方向の異なるベクトルで表示されている。
【0039】
そして、ベクトル2aVはセンサエレメント2aで検出された信号であり、ベクトル2bVはセンサエレメント2bで検出された信号である。同様に、ベクトル2cVはセンサエレメント2cで検出された信号、ベクトル2dVはセンサエレメント2dで検出された信号、そして、ベクトル2eVはセンサエレメント2eで検出された信号である。そして、図5で示すように、各ベクトル先端部が橋絡された形状が五角形になるようにされている。つまり複数の出力信号は各々ベクトルで表され、該ベクトル先端部分が橋絡されて全体がパターン化されている。
【0040】
図3の20は、図4及び図5で示す閾値21が、あらかじめ格納された閾値格納メモリである。この閾値格納メモリ20に格納された閾値21も、図4及び図5のようにベクトルの原点を中心とする五角形に設定されている。
【0041】
理想的には、これらのセンサエレメントの各々がターゲットとなる特定の、それぞれ異なる物質に、特に反応することが望ましいが、この実施形態では、還元性ガスと酸化ガスに反応する異なる特性を持つセンサエレメントが5個組み合わされて構成されている。
【0042】
図3の演算手段は、空調用制御装置内のマイクロコンピュータで形成されたものである。この演算手段内の第1の制御手段25は、各ベクトルの先端が閾値格納メモリ20内の閾値21から形成されたゾーン内に全て納まるか否かを判定する。
【0043】
そして、図4のように全て納まるときは、外気取り込み信号を発生する。この結果、内外気切替装置11のサーボモータ12が駆動されて、ダンパ13が外気導入モード側である外気導入口側に駆動されて外気導入モードが実行される。
【0044】
また、いずれか一つのベクトルでも、その先端が、閾値21にて形成されたゾーンを突き抜けるときは、外気取り込み解除信号を内外気切替装置11に送信する。この結果、サーボモータ12が駆動されて、ダンパ13が、外気遮断モード側である内気導入口側に駆動されて、内気循環モードが実行される。この場合は、ブロワ15の吸い込み側が内気導入口と連通する。このようにして、走行中に自動的に、車両外部のガスの臭気が強いときは外気取り込みを制限することができる。
【0045】
ここで、車両が畜産施設付近を走行したとしても、各ベクトルの先端が、閾値21から形成されたゾーン内に全て納まり、外気導入口側にダンパ13が維持され続ける場合がある。このような場合において、乗員の臭気に対する感受性または嗜好性の違いから、乗員が臭いと感じて、外気取り込みを嫌がり、操作パネル内の操作スイッチ18を操作することがある。
【0046】
このような手動切替信号が、操作スイッチ18から発せられたときは、第2の制御手段28が、優先的に内外気切替装置11に優先信号を発生し、内気導入口側に切替操作する。
【0047】
ここで、ガスセンサ2からの信号によって、自動的に外気導入口側に制御されている外気導入モードのときに、乗員が臭いと感じて、外気を取り込まないように操作スイッチ18を手動操作して、内気循環モードとした場合について述べる。
【0048】
この場合は、第2の制御手段28が、参照パターン格納メモリ30に、その時点でのガスセンサ2の出力信号を、参照データとなる参照パターン31(図5)として取り込むよう命令を発する。
【0049】
このようにして、参照パターン31が格納される。その後に、操作手段18による手動操作が終了すると、自動運転モードに戻る。従って、この自動運転モードでは、前述のように、第1の制御手段25が、各ベクトルの先端が閾値21から形成されたゾーン内に全て納まると判定された場合は、ダンパ13を、外気導入口側に自動的に駆動する。
【0050】
この場合に、ガスセンサ2の出力信号のパターンと、参照パターン格納メモリ30内に記憶されている参照パターン31との類似判定を行うパターン認識を、第3の制御手段35にて実行する。このパターン認識としては、さまざまな公知の方法が採用できる。図5では、参照パターン31として格納された五角形のパターンの内外に、上限側パターン31aと下限側パターン31bとが設定されている。
【0051】
その上で、上限側パターン31aと下限側パターン31bの間に挟まれた領域内に、その時点でのガスセンサ2の出力信号のパターンが収まる場合が、類似と判定され、収まらずに、はみ出す場合が非類似と判定される。
【0052】
類似と判定された場合は、第3の制御手段35は、外気取り込み解除信号を内外気切替装置11に発する。この結果、操作手段18が操作されなくても、自動的に内気導入口側に内外気切替装置11のダンパ13が駆動され、内気循環モードが実行される。
【0053】
また、電子制御ユニット8は、マイクロコンピュータを有し、ブロワ15の送風量は、マイクロコンピュータからの出力信号でブロワモータの印加電圧を調整して、モータ回転数を調整することにより制御される。なお、その他のアクチュエータも、マイクロコンピュータからの出力信号に基づいて、駆動回路にて制御される。
【0054】
マイクロコンピュータには、車室内計器盤に設置された空調操作パネルから操作信号が入力される。この空調操作パネルには、空調装置の自動制御状態を設定するオートスイッチ、前述の本発明の操作手段18としても使用され、自動運転モード、外気導入モード又は外気遮断モードでもある内気循環モードに切替設定するための内外気切替スイッチ18、吹出モードを手動で切替設定するための吹出モード切替スイッチ、ファンの送風量を手動で切替設定するための送風量切替スイッチ、および、車室内温度を乗員の好みの温度に設定するための温度設定スイッチ等が設けられている。
【0055】
また、マイクロコンピュータには、車室内の空調状態に影響を及ぼす環境条件を検出する各種センサからの信号が入力される。特に、外気に含まれる汚染物質の濃度を検出するガスセンサ2から出力される検出信号が入力され、場合によっては車両位置特定装置となるカーナビゲーション装置40からの信号が双方向で接続される。
【0056】
次に、動作について説明する。空調装置の自動制御状態(自動運転時)では、周知のように読み込んだ設定温度、環境条件信号等に基づいて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度(以下、TAOと記す)を算出する。次に、送風量を決めるブロワ電圧を、上記TAOに基づいて決定する。次に、TAOに基づいて、吹出モードドアの開閉による吹出モードを決定する。
【0057】
次に、TAOに対するエアミックスドアの開度を算出する。次に、操作手段(内外気切替スイッチ)18が、自動運転モードに設定されている場合、ガスセンサの検出信号に基づいて、内外気切替ドアによる内外気吸込モードを決定する。すなわち外気導入モードか内気循環モードかを前述のようにして決定する。なお、本実施形態においては、自動運転モードに設定された場合、ダンパ13は外気導入モードになる初期位置に駆動されるものとして、以下の作動を説明する。
【0058】
次に、上記内外気吸込モードを決定する制御をフローチャートに基づいて説明する。図6において、ガスセンサの検出信号に基づいて、内外気切替ドアによる内外気吸込モードを自動的に決定する制御がステップS1で開始される。
【0059】
ステップS2において、ダンパ13がその初期位置に駆動され、外気導入モードとされる。次に、ステップS3でガスセンサの複数の出力信号を読みこむ。次に、この読み込んだ複数の出力信号をステップS4でパターン化する。このステップS4が、図3における複数の出力信号をパターン化するパターン化手段36に相当する。
【0060】
そして、ステップS5では、参照パターン31が参照パターン格納メモリ30に格納されているか否かを判定する。格納されていない場合は、図7のステップS6を経由してステップS8に進み、ここでパターン化された出力信号G1〜GNと閾値21とを比較する。
【0061】
このステップS8において、出力信号G1〜GNのいずれかが閾値21よりも大きい場合は、臭気が強いと判定する。よって、この場合はステップS9で、外気遮断モードである内気循環モードに切り替えられる。このステップS8、S9が第1の制御手段25に該当する。
【0062】
ステップS8において、閾値21よりも全てのパターン化された出力信号G1〜GNが小さい場合(ステップ8の判定がNO)は、ステップS10に進む。このステップS10では、外気導入モードでの自動運転中に、内気循環モードを選択する手動操作が操作スイッチ18で行われたかどうかを判定する。
【0063】
上記手動操作が有った場合は、ステップS11で、このときのパターン化された出力信号を、参照データとなる参照パターン31として、参照パターン格納メモリ30に記憶する。そして、ステップS12において、内気循環モードに切り替えられる。
【0064】
上記手動操作がない場合は、ステップS13で外気導入モードが維持され、ステップS0に戻る。この手動操作に応じてパターンを記憶するステップS11と内気循環モードに切り替えるステップS12が、第2の制御手段28を構成する。
【0065】
次に、図6において、参照パターン31がメモリ30に格納されている場合は、図8のステップS14に進む。そして、ステップS15でパターン化された出力信号G1〜GNと閾値21とを比較する。
【0066】
出力信号G1〜GNの中のいずれかの信号が、閾値21よりも大きい場合は、第1の制御手段25が、「臭気が強い」と判定する。よって、この場合は、ステップS16で、内気循環モードに切り替えられ、ステップS0でリターンされる。パターン化された出力信号G1〜GNが、いずれも閾値21より小さければ、ステップS17で登録された類似パターンがあるか否かが判定される。
【0067】
類似パターンがあり、YESであれば、ステップS16に進み、内気循環モードを実行される。次に、ステップS17で、類似パターンが無ければ、ステップS18に進む。このステップS18では、外気導入モードでの自動運転中に、内気循環モードを選択する手動操作が操作スイッチ18で操作されたかどうかが判定される。
【0068】
上記手動操作が操作スイッチ18で有った場合は、ステップS19に進む。そして、このときのパターン化された出力信号が、参照データとなる参照パターン31として、参照パターン格納メモリ30に記憶されてデータが更新される。そして、ステップS20において、内気循環モードに切り替えられる。
【0069】
上記手動操作が、操作スイッチ18で操作されていない場合は、ステップS21で外気導入モードが維持され、ステップS0に戻る。この手動操作に応じてパターンが記憶されて更新されるステップS19及び内気循環モードに切り替えるステップS20が、前述のステップS11とS12と共に、第2の制御手段28を構成する。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、目標吹出温度TAO(以下、単にTAOと称する)に関係なく、ガスセンサだけの情報で、内気循環モードと外気導入モードを切り替えたが、先ず、TAOに基づき内気循環モードと外気導入モードとが仮決定されても良い。また、内気循環モードと外気導入モードの間に半内気循環モードを設けても良い。
【0070】
以下、これについて、第1実施形態と異なる部分を説明する。この場合は、TAOが低温側から高温側へと変化するにつれて、内気循環モード、半内気循環モード、外気導入モードのように仮設定される。ここで、TAOによって内気循環モードが仮決定されている状況においては、このまま内気循環モードが選択される。
【0071】
一方、TAOによって外気導入モードまたは半内気循環モードが選択されている状況においては、図6のステップS1の制御が開始される。
【0072】
そして、ステップS2において、ダンパ13が外気導入モードまたは半内気循環モードとなる位置に駆動される。その後、図6のステップ3から図7又は図8の各ステップまで、第1実施例と同様の処理が行われる。但し、ステップS13及びステップS21では、外気導入モード又は半内気循環モードが維持される。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、特に第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態は、カーナビゲーション装置のようにGPS信号等で車両走行位置情報を検出できる車両位置特定装置が搭載された車両に用いられる。以下、図3等を援用して説明する。
【0073】
この車両位置特定装置40の地図データには、後述する入力信号で特定地域の領域の情報が、データとしてRAM等のメモリに登録可能となっている。前述の図7のステップS11又は図8のステップS19にて、パターンが記憶されるとき、図3の一点鎖線で示したように、車両位置特定装置40に第2の制御手段28が入力信号を車両位置特定装置40に入力する。この結果、車両位置特定装置40の地図データには、特定地域の領域の情報が、データとしてメモリに登録される。
従って、このデータを用いれば、車両位置特定装置の図示しないディスプレイに特定地域の領域の情報を表示させることができる。これにより、行き先までのルートが決定されるときに、乗員が、特定地域の領域を迂回することが可能になる。
【0074】
また、車両位置特定装置40の地図データの特定地域の領域の情報が利用されて、車両が、特定地域の領域内に進入した場合は、外気導入モードが、強制的に内気循環モードに切り替えられることも可能になる。
(他の実施形態)
なお、ガスセンサからの複数の信号がパターン化されることなく、数値データの解析のみで類似判断が下されてもよい。
【0075】
なお、ガスセンサは、複数の異なるセンサエレメントの集合からなり、個々のセンサエレメントが、主として個々の種類のガスを検出し、該ガスの濃度に応じた個々の出力信号が発生されることが望ましい。また、センサエレメントの数は、パターン形成のために3つ以上が望ましいが、2つでも構成できる。
【0076】
また、内気循環モードを持つものについて述べたが、例えば、バスにおいて、外気を取り込むか取り込まないかが選択される装置に用いられることもできる。この場合は、外気導入口の開と閉をダンパが切り替える。そして、外気取り込み信号で、外気導入口が開かれる。また、外気導入口を開いているときに、外気取り込み解除信号が出されたときに、外気導入口が閉じられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態による、車両用換気装置となる車両用空調装置を搭載した自動車の模式図である。
【図2】一実施形態に用いたガスセンサの模式配線図である。
【図3】一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【図4】一実施形態によってガス濃度を判定した結果、各ガスの濃度が各閾値内の濃度である状態を模式的に示す摸式図である。
【図5】一実施形態において、ガスセンサの複数の出力信号をパターン認識して、参照パターンに類似しているかどうかの判定を行う状態を模式的に示す摸式図である。
【図6】一実施形態によって、演算手段内で実行される制御手段のうち、参照パターンの有無を判別する部分のフローチャートである。
【図7】図6の続きであり、参照パターンが無い場合のフローチャートである。
【図8】図6の続きであり、参照パターンが有る場合のフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
2 ガスセンサ
2a、2b、2c、2d、2e センサエレメント
8 演算手段
11 外気切替装置となる内外気切替装置
18 操作手段を成す操作スイッチ
20 閾値格納メモリ
25 第1の制御手段
28 第2の制御手段
30 参照パターン格納メモリ
31 ベクトル先端部分を橋絡して形成したパターン
35 第3の制御手段
40 車両位置特定装置となるカーナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の空気を車室内に取り込む外気導入モードと、外気の導入を遮断する外気遮断モードとを切り替える外気切替装置(11)を持った車両用換気装置であって、
前記車両外部の複数種類のガスを検出し、前記複数種類のガスに応じた複数の出力信号を発生するガスセンサ(2)、
前記ガスセンサ(2)からの前記複数の出力信号が入力されて信号を発生し前記外気切替装置(11)を制御する演算手段(8)、および
前記車両乗員によって前記車室内で操作され手動で前記外気切替装置(11)を切り替える操作信号を発生する操作手段(18)を備え、
前記演算手段(8)は、第1の制御手段(25)と第2の制御手段(28)と第3の制御手段(35)とを備え、
前記第1の制御手段(25)は、設定された閾値を用いて前記複数種類の出力信号から前記車両外部の空気の良否を判定し、良と判定されたときに前記外気切替装置(11)を前記外気導入モードに切り替えるための外気取込み信号を発生し、
前記第2の制御手段(28)は、前記外気取込み信号が発生されているときに、前記操作手段(18)によって前記外気切替装置(11)が前記外気遮断モードに手動切替操作されると前記外気遮断モードに切り替えるための優先信号を発生するとともに、このときの前記複数種類の出力信号を参照データとして記憶させ、
前記第3の制御手段(35)は、前記参照データが記憶されているときに、前記第1の制御手段(25)が前記車両外部の空気を良と判定しており、かつ、前記複数種類の出力信号が前記参照データを基に類似と判定されると、前記外気遮断モードに前記外気切替装置(11)を切り替えるための外気取り込み解除信号を発生することを特徴とする車両用換気装置。
【請求項2】
前記ガスセンサ(2)は車両外部の複数種類のガスを検出し、各ガスの濃度に応じた複数の出力信号を発生し、
前記演算手段(8)は、前記ガスセンサ(2)からの前記複数の出力信号が入力され、前記複数の出力信号をパターン化するパターン化手段を有して、パターン化された出力信号を発生し、
前記第1の制御手段(25)は、前記ガスセンサ(2)の前記複数の出力信号に対応した閾値によって、前記各ガスの濃度が各閾値以内の濃度であるときには前記外気切替装置(11)を前記外気導入モードに切り替えるための外気取込み信号を発生し、
前記第2の制御手段(28)は、前記外気取込み信号が発生されたときに、前記操作手段(18)によって前記外気切替装置(11)が前記外気遮断モードに手動切替操作されたときには前記外気遮断モードに切り替えるための優先信号を発生するとともに、このときの前記パターン化された出力信号を前記参照データとなる参照パターンとして記憶させ、
前記第3の制御手段(35)は、前記参照パターンが記憶されているときに、前記各ガスの濃度が前記各閾値以内の濃度であり、かつ、前記パターン化された出力信号が前記参照パターンに類似しているときには、前記外気切替装置(11)を前記外気遮断モードに切り替えるための外気取り込み解除信号を発生することを特徴とする請求項1に記載の車両用換気装置。
【請求項3】
前記車両用換気装置は前記車両外部の空気を取り込んで前記車室内を空調する車両用空調装置から成り、
前記外気切替装置(11)は、空調する空気を前記車両外部から取り込む外気導入モード側である外気導入口側、または、空調する空気を車室内側から取り込む前記外気遮断モード側である内気導入口側に切り替える内外気切替装置(11)であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用換気装置。
【請求項4】
前記ガスセンサ(2)は複数の異なるセンサエレメント(2a、2b、2c、2d、2e)の集合からなり、個々のセンサエレメント(2a、2b、2c、2d、2e)が各々異なる特性で前記ガスを検出し、該ガスの濃度に応じた個々の出力信号を発生することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用換気装置。
【請求項5】
前記複数の出力信号は、各々ベクトルで表され、該ベクトル先端部分が橋絡されてパターン化されることを特徴とする請求項2に記載の車両用換気装置。
【請求項6】
前記パターン化された出力信号が前記参照パターンに類似しているか否かは、前記参照パターンを基に設定された上下限領域内に前記パターン化した出力信号が入るか否かで決定されることを特徴とする請求項2または請求項5に記載の車両用換気装置。
【請求項7】
前記車両内に車両位置特定装置(40)が設けられ、
前記第2の制御手段(28)が、前記複数種類の出力信号を参照データとして記憶させるときに、前記車両位置特定装置(40)内において、車両が走行している特定地域の領域の情報を記憶させることを特徴とする請求項1に記載の車両用換気装置。
【請求項8】
前記車両内に車両位置特定装置(40)が設けられ、
前記第2の制御手段(28)が、前記パターン化された出力信号を前記参照パターンとして記憶させるときに、前記車両位置特定装置(40)内において、車両が走行している特定地域の領域の情報を記憶させることを特徴とする請求項2に記載の車両用換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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