説明

車両用操作装置

【課題】コストの増加やサイズの大型化を招くことなく、操作者が手袋をはめている場合等でも操作を可能とすること。
【解決手段】車両用操作装置は、複数の操作項目の操作が可能なタッチ操作部と、タッチ操作部に設けられる静電センサと、タッチ操作部に設けられ、タッチ操作部に付与される圧力又は荷重を検出する押下圧力検出手段と、制御装置とを備え、制御装置は、静電センサの出力に基づいて、操作項目の選択操作を検出する選択操作検出手段と、押下圧力検出手段の出力に基づいて、操作項目の決定操作を検出する決定操作検出手段とを備え、制御装置は、選択操作検出手段により選択操作が検出されることなく、決定操作検出手段により決定操作が検出された場合に、選択操作の検出感度を高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電センサを用いる車両用操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、操作者が手袋をしている場合等のような、タッチスイッチ表面に操作者の指が直接接触しない場合に、静電センサを用いるタッチスイッチが動作しないことを考慮して、タッチスイッチの裏側に押圧されると動作するプッシュスイッチを設けた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、タッチパネルに、感度調整のためのみの専用のメカニカルスイッチを設けると共に、このメカニカルスイッチの表面にタッチセンサを設け、メカニカルスイッチの操作時に、タッチセンサの抵抗値等を測定して、手袋装着の有無を判定し、その判定結果に応じてタッチパネルの感度を調整する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−43230号公報
【特許文献2】特開2008−33701号公報(段落0020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載の技術によれば、操作者が手袋をしている場合等のような、タッチ操作が不能な状況下でも、プッシュスイッチが機能するので、操作釦の機能を維持することができる。
【0006】
しかしながら、複数の操作釦の全てに、静電センサとプッシュスイッチの双方を装備することは、コストの増加や操作装置のサイズの大型化を招くため、困難な場合がある。
【0007】
これに対して、特許文献2に記載の技術によれば、操作者が手袋をしていると判定された場合に、静電センサの感度を調整することで、手袋をはめたままの操作を可能とする。
【0008】
しかしながら、操作者が手袋をしているか否かを判定するために、メカニカルスイッチの表面にタッチセンサを設ける構成が必要であり、スイッチ操作に直接関係しないタッチセンサ(又はタッチセンサ付きのメカニカルスイッチの設置)が別途必要である。この場合も同様に、コストの増加や操作装置のサイズの大型化を招く虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、コストの増加やサイズの大型化を招くことなく、操作者が手袋をはめている場合等でも操作を可能とする車両用操作装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、複数の操作項目の操作が可能なタッチ操作部と、
前記タッチ操作部に設けられる静電センサと、
前記タッチ操作部に設けられ、前記タッチ操作部に付与される圧力又は荷重を検出する押下圧力検出手段と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記静電センサの出力に基づいて、操作項目の選択操作を検出する選択操作検出手段と、
前記押下圧力検出手段の出力に基づいて、操作項目の決定操作を検出する決定操作検出手段とを備え、
前記制御装置は、前記選択操作検出手段により前記選択操作が検出されることなく、前記決定操作検出手段により前記決定操作が検出された場合に、前記選択操作の検出感度を高くすることを特徴とする、車両用操作装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストの増加やサイズの大型化を招くことなく、操作者が手袋をはめている場合等でも操作を可能とする車両用操作装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例による車両用操作装置1の要部構成を示すシステム図である。
【図2】タッチパッド10を概略的に示す上面図である。
【図3】タッチパッド10の要部断面を概略的に示す断面図である。
【図4】ディスプレイ20上に表示される操作メニューの一例を示す図である。
【図5】本実施例の制御部16により実行されてよい感度変更処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施例の制御部16により実行されてよい感度変更処理の他の一例を示すフローチャートである。
【図7】メッセージが出力されたディスプレイ20の画面の例を示す図である。
【図8】図5又は図6に示す処理に代えて本実施例のディスプレイ制御部30により実行されてよいメッセージ出力処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0014】
図1は、本発明の一実施例による車両用操作装置1の要部構成を示すシステム図である。図2は、タッチパッド10を概略的に示す上面図である。尚、図2には、タッチパッド10を操作する手が概略的に示されている。図3は、タッチパッド10の要部断面を概略的に示す断面図である。図4は、ディスプレイ20上に表示される操作メニューの一例を示す図である。
【0015】
車両用操作装置1は、タッチパッド10と、ディスプレイ制御部30と、ディスプレイ20とを含む。
【0016】
タッチパッド10は、車室内の適切な場所に設けられる。タッチパッド10は、好ましくは、運転者が操作しやすい位置(運転姿勢を保ちながら手を伸ばして届く位置)に配置される。タッチパッド10は、例えばコンソールボックス又はその周辺に配置されてもよい。タッチパッド10は、座標検出部12と、押下圧力検出部14と、制御部16と、メモリ18とを含む。
【0017】
座標検出部12は、図2に示すように、2次元の略平らなタッチ操作面を備える。座標検出部12は、静電センサを備え、その検出信号が制御部16に送られる。座標検出部12は、例えば、静電パッドにより構成される。静電パッドは、例えば、平面上にX方向、Y方向のそれぞれに絶縁体を挟んで電極(静電センサ)が直線状に延在する構造を有する。これらの電極に、絶縁体のパネルを挟んで人の指が接近すると、電極と指を極板とするコンデンサが形成され、電極の電荷量(及びそれの伴い静電容量)が変化する。この場合、電極の検出信号(電極に溜められる電荷の変化量を表す信号)が制御部16に送られてよい。
【0018】
押下圧力検出部14は、タッチパッド10(典型的には、座標検出部12を構成する静電パッド)に付与される圧力又は荷重を検出する。即ち、押下圧力検出部14は、タッチパッド10上での押下操作(決定操作)を検出する。押下圧力検出部14は、例えば感圧センサにより構成される。押下圧力検出部14は、座標検出部12の操作面に付与される押下方向の荷重が伝達される箇所であれば任意の場所に配置されてもよい。例えば、図3に示す例では、押下圧力検出部14を構成する感圧センサは、座標検出部12の中央部の下方に設置されているが、座標検出部12を支持する部材の下面70等に配置されてもよい。また、押下圧力検出部14を構成する感圧センサは、複数個分散した位置に設けられてもよい。
【0019】
制御部16及びメモリ18は、例えばマイクロコンピューターにより構成される。
【0020】
制御部16は、座標検出部12からの出力(検出信号)に基づいて、操作面内の座標位置を表す座標信号、即ち操作者によりタッチ操作された座標位置(操作指の位置)を表す座標信号を生成する。尚、座標検出部12が静電パッドで構成される場合、上述の如く電極と操作指からなるコンデンサには電荷が蓄えられ、各電極における電荷の変化量が操作指の位置に応じて異なるため、各電極からの検出信号に基づいて、操作指の位置を特定することができる。具体的には、制御部16は、座標検出部12からの出力が所定の基準値を超えた場合に、座標検出部12からの出力の最大位置に基づいて座標信号を生成する。所定の基準値は、例えば電極に溜まる電荷の変化量に関連する値である。例えば、制御部16は、電極に溜まる電荷の変化量(最大の電荷変化量)が基準値を超えた場合に、操作者により選択操作がされていると判断して、座標信号(例えば電荷の変化量が最大となる2次元位置を表す座標信号)を生成し、電極に溜まる電荷の変化量が基準値を超えない場合に、操作者により選択操作がされていないと判断して、座標信号を生成しない。尚、基準値は、メモリ18に記憶されてもよい。生成した座標信号は、ディスプレイ制御部30に送信される。
【0021】
制御部16は、後述する所定の場合に、座標検出部12における静電センサの感度(選択操作の検出感度)を変更する。静電センサの感度は、例えば、座標信号の生成のための閾値(上述の所定の基準値)を変更することで変更されてよい。
【0022】
制御部16は、押下圧力検出部14からの出力(圧力又は荷重を表す検出信号)に基づいて、決定信号を生成する。例えば、押下圧力検出部14からの出力が所定値を越えた場合に、操作者による決定操作を検出して、決定信号を生成する。生成した決定信号は、ディスプレイ制御部30に送信される。尚、押下圧力検出部14を構成する感圧センサが複数個設けられる場合、制御部16は、いずれかの感圧センサからの出力が所定値を越えた場合に、決定信号を生成してもよい。この場合、感圧センサは、タッチパッド10(典型的には、座標検出部12を構成する静電パッド)上での押下位置を検出する目的で複数設けられるのではなく、タッチパッド10上での押下操作があったか否かだけを検出する目的で設けられてよい。従って、決定信号は、決定操作を検出したことだけを表す信号であり、押下操作の位置のような他の情報を含まない信号であってよい。
【0023】
制御部16は、ディスプレイ制御部30との間で通信し、各種情報(座標信号や決定信号、メッセージ出力要求等)をディスプレイ制御部30に送信する。尚、制御部16の機能の一部又は全部は、座標検出部12により実現されてもよい。
【0024】
ディスプレイ20は、液晶ディスプレイやHUD(ヘッドアップディスプレイ)のような任意の表示装置であってよい。ディスプレイ20は、車室内の適切な位置(例えば、インストルメントパネル)に配置される。ディスプレイ20は、タッチパネルディスプレイであってもよいし、タッチ操作ができないタイプのディスプレイであってもよい。ディスプレイ20には、タッチパッド10で操作可能な操作内容を表す操作メニュー(図4参照)が表示される。尚、操作メニューの背景には又は操作メニューが表示されないときには、ディスプレイ20には、地図表示、TV、周辺監視カメラの映像等が表示されてもよい。
【0025】
操作メニューは、図4に示すように画面全体に表示されてもよいし、画面の一部に表示されてもよい。操作メニューは、タッチパッド10で操作可能な1つ以上の操作項目を含み、典型的には、図4に示すように、タッチパッド10で操作可能な2つ以上の操作項目を含む。操作メニューは、他の情報表示部(例えば、TV、オーディオ、外気温、燃費などの走行情報、エンターテイメント情報等を表示する部位)を含んでもよい。
【0026】
操作項目は、仮想的な操作ボタンに対応し、任意の種類(機能)に関するものであってよい。即ち、タッチパッド10で操作可能な内容は、任意であってよい。例えば、操作項目は、ナビゲーション装置の各種設定を行うための画面(メニュー画面)や地図画面(例えば現在地表示画面)をディスプレイ20上に表示させる(呼び出す)ための操作項目を含んでよい。また、操作項目は、空調装置の各種設定を行うための操作項目や、その画面をディスプレイ20上に表示させるための操作項目を含んでよい。また、操作項目は、オーディオやTVの各種設定(音量調整等)を行うための操作項目や、その画面をディスプレイ20上に表示させるための操作項目を含んでよい。また、操作項目は、任意のアプリケーションを起動するための操作項目(アイコン、ランチャ)であってもよい。図4に示す例では、操作メニューは、タッチパッド10でエアコンの各種設定を行うためのものである。
【0027】
操作項目は、後述のディスプレイ制御部30による制御下で、タッチパッド10からの座標信号に基づいて、通常の表示から選択表示へと変更されたり、選択表示から通常の表示へと変更されたりする。図4に示す例では、ディスプレイ20上には、タッチパッド10上の操作で移動させることができるポインタ80が示される。ポインタ80は、例えばブロア風量の“LO”を選択している状態であり、従って、操作項目“LO”が選択表示とされている。尚、ポインタ80の移動態様は、タッチパッド10からの座標信号(例えば指移動時の座標信号の変化を含む)に基づくものであれば、任意であってよい。例えば、ポインタ80の位置は、座標信号の座標と一対一で対応してもよいし、或いは、通常のノートPC等のように、ポインタ80の移動先の位置が、座標信号の変化態様(指の移動態様)により定まる態様であってもよい。即ちディスプレイ20の画面の座標系がタッチパッド10の操作面の座標系と絶対的に対応する絶対的な同期態様であってもよいし、或いは、ディスプレイ20の画面の座標系がタッチパッド10の操作面の座標系と相対的に対応する相対的な同期態様であってもよい。また、ポインタ80は必ずしも必要でなく、単に、選択表示とされる操作項目が、タッチパッド10からの座標信号に基づいて、変化するものであってもよい。また、この際、座標信号の座標に近い操作項目に対して、引き込み力が作用するような態様で、選択表示とされる操作項目が決定されてもよい。
【0028】
このようなタッチパッド10によれば、操作者は、ディスプレイ20を見ながら、座標検出部12の操作面に操作指(例えば人差し指)で触れながら操作面内で操作指を動かすことで選択操作を行い、所望の操作項目を選択することができる。そして、所望の操作項目が選択表示となったときに、その場所で操作指により座標検出部12を押下することで、決定操作を行うことができる。即ち、所望の選択がなされた接触位置で座標検出部12を押下することで、決定操作を行うことができる。
【0029】
ディスプレイ制御部30は、例えばマイクロコンピューターにより構成され、ECUとして具現化されてもよい。尚、ディスプレイ制御部30とタッチパッド10との接続態様は、任意であり、有線、無線またはその組み合わせであってもよいし、直接的な接続や間接的な接続であってもよい。また、ディスプレイ制御部30の機能の一部又は全部は、タッチパッド10の制御部16やディスプレイ20内の制御部(図示せず)により実現されてもよいし、逆にタッチパッド10の制御部16の機能の一部又は全部がディスプレイ制御部30により実現されてもよい。
【0030】
ディスプレイ制御部30には、車速を表す車速情報や、車両の電源の状態(IG,ACC)に関する電源情報が入力される。車速情報は、車輪速センサに基づく情報であってもよいし、他のセンサ(例えばGPS受信機やトランスミッションのアウトプットシャフトの回転数を検出するセンサ等)に基づく情報であってよい。
【0031】
ディスプレイ制御部30には、任意的な構成として、メカニカルスイッチ40が接続される。メカニカルスイッチ40は、図1に示すように、選択スイッチ41と、決定スイッチ42とを含む。図示の例では、選択スイッチ41は、上下左右を指示する各スイッチを含む。尚、メカニカルスイッチ40は、選択スイッチ41と、決定スイッチ42とを含むものであれば、配列や設置場所等は任意である。メカニカルスイッチ40は、例えばステアリングホイールに設けられるステアリングスイッチであってもよい。
【0032】
ディスプレイ制御部30は、主なる機能として、ディスプレイ20とタッチパッド10とを同期させて、タッチパッド10での操作を補助する。具体的には、ディスプレイ制御部30は、ディスプレイ20において操作メニュー(図4参照)を表示すると共に、タッチパッド10からの信号(座標信号や決定信号)に基づいて、各種操作項目の選択・決定処理を行う。即ち、ディスプレイ制御部30は、上述の如く、タッチパッド10からの座標信号に基づいて、操作メニューのいずれか1つの操作項目を選択表示とする(即ち“選択操作”に応答する)。尚、初期状態では、任意の1つの操作項目がデフォルトで選択表示とされてもよいし、いずれの操作項目も非選択表示とされてもよい。尚、選択表示は、その操作項目が選択されていることを操作者が分かるような表示であれば任意であり、例えば、選択表示とすべき操作項目の表示の輝度や色などを他の操作項目と異ならすことで実現されてもよいし、操作項目の外枠が強調表示されてもよい。また、ディスプレイ制御部30は、タッチパッド10からの決定信号に基づいて、その際に選択表示とされている操作項目の操作内容を実現する(即ち“決定操作”に応答する)。尚、この操作内容は、操作項目に依存するが、操作メニューの変更等のような画面の遷移や、アプリケーションの起動、操作対象装置(例えば空調装置)への制御信号の送信等を伴うものであってよい。また、決定操作検出時に、“決定操作”が検出されたことをユーザに伝達するために、決定された操作項目の表示を適切に変化させてもよい。
【0033】
また、メカニカルスイッチ40を備える構成では、ディスプレイ制御部30は、ディスプレイ20とメカニカルスイッチ40とを同期させて、メカニカルスイッチ40の操作を補助する。具体的には、ディスプレイ制御部30は、ディスプレイ20において操作メニュー(図4参照)を表示すると共に、メカニカルスイッチ40からの信号(選択スイッチ41及び決定スイッチ42の各操作信号)に基づいて、各種操作項目の選択・決定処理を行う。即ち、ディスプレイ制御部30は、選択スイッチ41の操作信号に基づいて、操作メニューのいずれか1つの操作項目を選択表示とする(即ち“選択操作”に応答する)。また、ディスプレイ制御部30は、決定スイッチ42の操作信号に基づいて、その際に選択表示とされている操作項目の操作内容を実現する(即ち“決定操作”に応答する)。このようにして、メカニカルスイッチ40を備える構成では、操作者は、タッチパッド10とメカニカルスイッチ40のいずれかを選択的に用いて、同様の操作を行うことができる。尚、メカニカルスイッチ40は、車室内に複数個設けられてもよい。
【0034】
図5は、本実施例の制御部16により実行されてよい感度変更処理の一例を示すフローチャートである。
【0035】
ステップ500では、イグニッションスイッチ(IG)がオフ状態からオン状態に変化したか否かが判定される。イグニッションスイッチがオン状態に変化した場合には、ステップ502に進む。即ち、図5の処理ルーチンは、イグニッションスイッチがオンになったときにステップ502から実行される。
【0036】
ステップ502では、座標検出部12から基準値以上の出力があったか否かが判定される。即ち、座標検出部12からの出力(電荷の変化量を表す検出信号)のレベルが基準値以上であるか否かが判定される。ここで、基準値は、上述の如く、座標信号が生成されるのに必要な最小の電荷の変化量に対応する。従って、本ステップ502では、換言すると、座標信号が生成されるか否か(選択操作が行われたか否か)が判定される。本ステップ502では、基準値は、デフォルトの基準値が使用される。デフォルトの基準値は、素手(手袋なし)で座標検出部12をタッチしたときに発生する検出信号のレベルよりも小さい値とされる。他方、デフォルトの基準値は、手袋をはめて座標検出部12をタッチしたときに発生する検出信号のレベルよりも大きい値とされる。このため、操作者が手袋をはめて座標検出部12をタッチしたときは、座標検出部12から基準値以上の出力が生成されず、その結果、座標信号が生成されない。これは、基準値を低く設定すると、手袋をはめたままの選択操作が可能となる反面、ノイズの影響を受けやすくなり、不安定な選択操作が起きうるためである(例えばTV塔の下など強電界地域に車両が位置するときなどに、意図しない選択操作が実現されたり、人差し指で操作しているときに、操作を意識していない中指等にも反応して、意図しない選択操作が実現されたりする場合がある)。
【0037】
本ステップ502において座標検出部12から基準値以上の出力があった場合には、ステップ504に進み、それ以外の場合、即ち座標信号が生成されない場合(選択操作が検出されない場合)には、ステップ506に進む。
【0038】
ステップ504では、座標検出部12における静電センサの感度(選択操作の検出感度)をデフォルト状態に維持する。即ち、基準値をデフォルトの基準値に維持する。これは、操作者は手袋をはめて選択操作を行っていない(即ち素手で選択操作を行っている)と判断することができるためである。
【0039】
ステップ506では、押下圧力検出部14から所定値以上の出力があったか否かが判定される。即ち、決定信号が生成されるか否か(決定操作が行われたか否か)が判定される。所定値は、通常的な押下操作を適切に検出できるような値に設定される。本ステップ506において押下圧力検出部14から所定値以上の出力があった場合には、ステップ508に進み、それ以外の場合、ステップ502に戻る(選択操作又は決定操作待ち状態となる)。
【0040】
ステップ508では、座標検出部12における静電センサの感度(選択操作の検出感度)が高められる。即ち、基準値が、デフォルトの基準値から低い値に変更される。この際、基準値は、デフォルトの基準値から所定値だけ低い値に変更されてもよい。或いは、基準値は、今回の座標検出部12からの出力(検出信号のレベル)に基づいて設定されてもよい。この場合、基準値は、今回の座標検出部12からの出力よりも僅かに低い値(但し、所定の下限値以上の値)に設定されてもよい。この際、基準値の設定の基準となる今回の座標検出部12からの出力は、所定時間内の出力の平均値であってもよい。
【0041】
ここで、操作者が手袋をはめていないときは、何らかの異常がない限り、基本的に、選択操作が検出されることなく決定操作が検出されることはない。これは、決定操作はタッチパッド10の押下操作であり、必然的にタッチパッド10への接触を伴うためである。これに対して、操作者が手袋をはめているときは、選択操作が検出されることなく決定操作が検出されることがある。これは、操作者が手袋をはめているときは、素手の場合に比べてタッチ操作時に電荷量が大きく変化しないためである。
【0042】
この点、図5に示す処理によれば、選択操作が検出されていない状態で決定操作が検出された場合に(ステップ506の肯定判定)、座標検出部12における静電センサの感度(選択操作の検出感度)が高められる。従って、操作者が手袋をはめているときでも、選択操作が可能となる。これにより、手袋をはめて運転する運転者が操作者である場合でも、かかる運転者による選択操作を可能とし、利便性を高めることができる。
【0043】
また、本実施例では、実質的には、選択操作の検出状況と決定操作の検出状況との関係に基づいて、操作者が手袋をはめているか否かを判定しているので、スイッチ操作とは無関係な特別なセンサを設けることなく、かかる判定を実現することができる。即ち、本実施例によれば、タッチパッド10とディスプレイ20とを同期させて、選択操作と決定操作との組み合わせにより多種多様な操作項目の操作を可能としつつ、これらの操作を実現するために必要なハードウェアのみ(又はこれらの操作時に生成される信号のみ)を用いて、操作者が手袋をはめているか否かを判定することができる。これにより、コストの増加やサイズの大型化を招くことなく、操作者が手袋をはめている場合でも選択操作を可能とすることができる。
【0044】
尚、図5に示す処理は、イグニッションスイッチがオンになったタイミングで起動され、初回の操作に基づいて静電センサの感度設定を行っているが、図5に示す処理は、任意のタイミングで起動されてもよい。例えば、定期的に起動されてもよいし、停車状態が形成される毎に起動されてもよい。また、イグニッションスイッチがオン状態であるときに、常に(所定の短い周期毎に)選択操作の検出状況と決定操作の検出状況を監視し、選択操作の検出感度を適宜変更してもよい。
【0045】
また、図5に示す処理は、タッチパッド10側の制御部16により実行されているが、図5に示す処理の一部又は全部は、ディスプレイ制御部30により実行されてもよい。例えば、ディスプレイ制御部30は、タッチパッド10から送信される座標信号の受信状況と決定信号の受信状況との関係に基づいて、操作者が手袋をはめているか否かを判定することができる。操作者が手袋をはめていると判定した場合に、ディスプレイ制御部30は、座標検出部12における静電センサの感度を高めるように、タッチパッド10側の制御部16に指令を送信すればよい。
【0046】
図6は、本実施例の制御部16により実行されてよい感度変更処理の他の一例を示すフローチャートである。図6に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオン状態であるときに、所定周期毎に実行されてもよい。図7は、ステップ610の処理の説明図であり、メッセージが出力されたディスプレイ20の画面の例を示す図である。
【0047】
図6のステップ602,604,606,608の処理は、それぞれ、図5のステップ502,504,506,508の処理と同一であってよいので、説明を省略する。
【0048】
ステップ606において、押下圧力検出部14から所定値以上の出力があった場合には、ステップ607に進み、それ以外の場合、今回周期の処理はそのまま終了する。
【0049】
ステップ607では、車速情報に基づいて、車両が停車中であるか否かが判定される。例えば車速が略ゼロである場合に、車両が停車中であると判定してもよい。この判定には、車速情報以外の情報(例えばブレーキペダルの操作の有無等)が考慮されてもよい。車両が停車中である場合には、ステップ610に進み、車両が停車中でない場合(即ち車両が走行中である場合)には、ステップ608に進む。
【0050】
ステップ610では、操作者に手袋を外すように促すメッセージをディスプレイ20に出力するためのメッセージ出力要求が生成され、メッセージ出力要求がディスプレイ制御部30に送信される。ディスプレイ制御部30は、このメッセージ出力要求を受けて、ディスプレイ20に、操作者に手袋を外すように促すメッセージを出力する(図7(A)参照)。図7(A)に示す例では、ディスプレイ20に、操作者に手袋を外すように促すメッセージが重畳表示される。或いは、図7(B)に示すように、操作者に手袋を外すか又はステアリングスイッチ(メカニカルスイッチ40の一例)で操作するように促すメッセージを出力させてもよい。いずれの場合も、操作者は、手袋をはめていることが原因で、選択操作ができないことを理解することができ、適宜、メッセージに従った行為を行って所望の操作を実現することができる。尚、メッセージの出力態様は任意であり、このような表示メッセージに代えて又は加えて、音声メッセージが出力されてもよい。
【0051】
このように、図6に示す処理によれば、選択操作が検出されていない状態で決定操作が検出された場合(ステップ606の肯定判定)であっても、車両停止中には、座標検出部12における静電センサの感度(選択操作の検出感度)が高められず、これに代えて、操作者に手袋を外すように促すメッセージが出力される。これは、車両停止中であれば、手袋を外す行為が安全の妨げにならないためである。また、操作者に手袋を外すか又はステアリングスイッチで操作するように促すメッセージが出力される場合は、操作者は、いずれかの対応を選択して、所望の操作を実現することができる。尚、ステアリングスイッチのようなメカニカルスイッチ40は、手袋をはめたままの操作が可能である。他方、選択操作が検出されていない状態で決定操作が検出された場合(ステップ606の肯定判定)であって、車両走行中である場合には、座標検出部12における静電センサの感度(選択操作の検出感度)が高められる。これは、車両走行中は、手袋を外す行為が安全の妨げになりうるためである。また、車両走行中は、静電センサの感度を高めても、例えばTV塔の下など強電界地域を通過すれば、不安定な選択操作が継続してしまうことがないためである。
【0052】
尚、図6に示す処理において、選択操作が検出されていない状態で決定操作が検出された場合(ステップ606の肯定判定)であって、車両走行中である場合には、ステアリングスイッチで操作するように促すメッセージが出力されてもよい。
【0053】
また、図5に示す処理と同様に、図6に示す処理は、タッチパッド10側の制御部16により実行されているが、図6に示す処理の一部又は全部は、ディスプレイ制御部30により実行されてもよい。
【0054】
ところで、上述の図5及び図6に示す処理は、所定の場合に静電センサの感度を高める感度変更処理に関するものである。しかしながら、以下の図8を参照して説明するように、静電センサの感度を高めることに代えて、図6に示す処理で説明したようなメッセージを出力することを行う構成であってもよい。
【0055】
図8は、図5又は図6に示す処理に代えて本実施例のディスプレイ制御部30により実行されてよいメッセージ出力処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
ステップ800では、タッチパッド10側から座標信号が受信されているか否かが判定される。尚、タッチパッド10から座標信号が受信されている状態は、タッチパッド10において選択操作が検出されている状態を意味する。タッチパッド10から座標信号が受信されている場合には、そのまま終了し、タッチパッド10から座標信号が受信されていない場合には、ステップ802に進む。
【0057】
ステップ802では、タッチパッド10側から決定信号が受信されたか否かが判定される。決定信号は、上述の如く、決定操作が検出された場合に生成されてディスプレイ制御部30に送信される。タッチパッド10側から決定信号が受信された場合には、ステップ804に進み、それ以外の場合、今回周期の処理はそのまま終了する。
【0058】
ステップ804では、操作者に手袋を外すように促すメッセージがディスプレイ20に出力される(図7(A)参照)。メッセージの表示態様は、上述の図6のステップ610と同様であってよい。同様に、操作者に手袋を外すか又はステアリングスイッチで操作するように促すメッセージが出力されてもよい(図7(B)参照)。
【0059】
このように、図8に示す処理によれば、座標信号が受信されていない状態で決定信号が受信された場合(ステップ802の肯定判定)に、操作者に手袋を外すように促すメッセージが出力される。或いは、操作者に手袋を外すか又はステアリングスイッチで操作するように促すメッセージが出力される。いずれの場合も、操作者は、手袋をはめていることが原因で、選択操作ができないことを理解することができ、適宜、メッセージに従った行為を行って所望の操作を実現することができる。
【0060】
尚、上述した実施例(図5、図6、図8の処理を含む)において、選択操作が検出されない状態で決定操作(押下操作)が検出された場合(即ち座標信号が受信されていない状態で決定信号が受信された場合)、ディスプレイ制御部30は、決定操作自体には、応答しなくてもよいし、或いは、その時点で何らかの操作項目が選択表示となっている場合は、当該選択項目の機能を実現してもよい。特に、その時点でいずれの操作項目も選択表示となっていない場合には、決定操作自体には応答しなくてもよい(即ち、上述の感度変更等を行うという意味では応答することになるが、操作項目の機能を実現しないという意味で応答しない)。
【0061】
また、上述から明らかであるが、“選択操作”とは、典型的には、複数の操作項目のうちの所望の1つの操作項目を選択するための操作を意味する。従って、所望の1つの操作項目を選択できたときの1時点の操作だけでなく、その過程の操作(選択中の状態)、例えばポインタ80を所望の1つの操作項目に向けて動かしている途中の操作を含む。即ち、座標信号を生成する操作が選択操作である。また、“決定操作”とは、選択された操作項目を決定するための操作を意味するが、操作項目が選択されずに押下操作された場合の当該押下操作についても、決定操作に含まれる。即ち、決定信号を生成する操作が決定操作である。
【0062】
尚、上述した実施例においては、特許請求の範囲における「制御装置」は、制御部16により、又は制御部16及びディスプレイ制御部30により実現されている。尚、上述の如く、制御部16及びディスプレイ制御部30の機能の分担は任意であり、一方の機能の一部又は全部が他方により実現されてもよい。一方の機能の全部が他方により実現される場合、当然ながら両者間の通信は不要となる。また、制御部16及びディスプレイ制御部30の機能は、3つ以上の制御部により協動して実現されてもよい。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0064】
例えば、上述した実施例では、選択操作の検出状況と決定操作の検出状況との関係に基づいて、操作者が手袋をはめているか否かを判定しているが、これに加えて、車室内カメラの撮像画像を画像処理することで、操作者が手袋をはめているか否かを判定してもよい。この場合、双方の判定結果が肯定判定である場合に、操作者が手袋をはめていると最終判定することとしてもよい。
【0065】
また、押下圧力検出部14は、感圧センサに代えて、荷重センサや、タクトスイッチ(プッシュスイッチを含む)やメンブレンスイッチのようなスイッチにより実現されてもよい。尚、メンブレンスイッチは、上部接点シートと下部接点シートの間に、穴が開いた絶縁物(スペーサー)を挟み貼り合わせ、上部接点を押下して導通させるスイッチをいう。また、外部からの力(圧力)によってダイヤフラムが変形して発生するピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化を検出する原理のセンサや、外部からの力(圧力)によって可動極が変形して発生する静電容量の変化を検出する原理のセンサが使用されてもよい。例えばタクトスイッチが使用される場合、タクトスイッチのオン信号がそのまま決定信号となる。即ち、タクトスイッチのオン/オフ状態に基づいて、決定操作が行われたか否かが判定される。
【符号の説明】
【0066】
1 車両用操作装置
10 タッチパッド
12 座標検出部
14 押下圧力検出部
16 制御部
18 メモリ
20 ディスプレイ
30 ディスプレイ制御部
40 メカニカルスイッチ
41 選択スイッチ
42 決定スイッチ
80 ポインタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の操作項目の操作が可能なタッチ操作部と、
前記タッチ操作部に設けられる静電センサと、
前記タッチ操作部に設けられ、前記タッチ操作部に付与される圧力又は荷重を検出する押下圧力検出手段と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記静電センサの出力に基づいて、操作項目の選択操作を検出する選択操作検出手段と、
前記押下圧力検出手段の出力に基づいて、操作項目の決定操作を検出する決定操作検出手段とを備え、
前記制御装置は、前記選択操作検出手段により前記選択操作が検出されることなく、前記決定操作検出手段により前記決定操作が検出された場合に、前記選択操作の検出感度を高くすることを特徴とする、車両用操作装置。
【請求項2】
前記タッチ操作部で操作可能な複数の操作項目を表示するディスプレイを備え、
前記制御装置は、前記選択操作検出手段により前記選択操作が検出された場合に、前記ディスプレイにおいて、選択された操作項目を選択表示とする、請求項1に記載の車両用操作装置。
【請求項3】
前記制御装置は、任意の操作項目が選択表示とされている状況下で、前記決定操作検出手段により前記決定操作が検出された場合に、前記選択表示とされている操作項目に対応する機能を実現する、請求項1に記載の車両用操作装置。
【請求項4】
前記制御装置は、車両走行中である場合に、前記選択操作検出手段により前記選択操作が検出されることなく、前記決定操作検出手段により前記決定操作が検出された場合に、前記選択操作の検出感度を高くする一方、車両停止中である場合に、前記選択操作検出手段により前記選択操作が検出されることなく、前記決定操作検出手段により前記決定操作が検出された場合に、操作者に対し手袋を外すように促す案内又はメカニカルスイッチを操作するように促す案内を出力する、請求項1に記載の車両用操作装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記選択操作検出手段により前記選択操作が検出されることなく、前記決定操作検出手段により前記決定操作が検出された場合に、前記選択操作の検出感度を高くすることに代えて、操作者に対し手袋を外すように促す案内又はメカニカルスイッチを操作するように促す案内を出力する、請求項1に記載の車両用操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84052(P2013−84052A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222056(P2011−222056)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】