説明

車両用方向指示装置

【課題】車両用方向指示装置において運転者が謝意ハザードをいっそう容易に行うことにある。
【解決手段】制御装置7は自動ハザードモードがオン状態であるとき、割り込み完了後の方向指示器6の消灯をトリガとして謝意ハザードを実行する。ここで、運転者は他車両前に割り込む前の比較的負荷が小さい状態において、謝意提示スイッチ12の操作を通じて自動ハザードモードをオン状態とすることができる。すなわち、謝意ハザードの実行を予約する操作(予約操作)をすることが可能となる。そして、前述したように、割り込みが完了した以後に謝意ハザードが実行される。これにより、運転者は操作負荷の大きい割り込み時又は割り込み後に謝意ハザードに関する操作をする必要がないので、より容易に謝意ハザードを実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用方向指示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、運転席のステアリングホイールの近傍に備えられるターンレバーが操作されることにより、車両の前後両側面に設けられたランプを点滅させることで、右左折や車線変更、車線合流の際に、その方向を周囲に示す方向指示器が備えられている。
【0003】
近年、車線変更や合流などの際に、他車両に進路を譲ってもらい同他車両の前に割り込んだ場合に、インストルメントパネルに備えられるハザードスイッチを操作して非常点滅表示灯を複数回点滅させる行為が広く行われている。この非常点滅表示灯の点灯は、後続車に対して感謝の意を表しており、いわゆるありがとうハザード(謝意ハザード)等と呼ばれている。
【0004】
ところで、割り込み等するとき、運転者は車線を走行している前方の車両及び後続車等に注意しつつステアリングの操舵をせねばならず、一時的に作業負荷の大きい状況となる。このような、運転者にとって負荷の大きい状況において、さらに謝意ハザードを行うには、ハザードスイッチを操作して車両の両側における方向指示器を同時に点滅させるとともに、ハザードスイッチを再度操作して両方向指示器を消灯させる必要がある。このように、複数回だけ両方向指示器を点滅させる謝意ハザードを実行することは運転者にとってさらなる負荷となっていた。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に示すように、新たに謝意ハザードスイッチを設け、謝意ハザードスイッチの操作により一定時間だけ方向指示器を点滅させて謝意ハザードを実行する車両用方向指示装置が公知である。これにより、謝意ハザードを実行する際の操作回数を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−33745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載の車両用方向指示装置においては、スイッチ操作の回数は減ったものの、運転者は依然として割り込み等した後の負荷の大きい状況において謝意ハザードスイッチを操作せねばならなかった。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者が謝意ハザードをいっそう容易に行うことができる車両用方向指示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車両の左右両側に設けられ、車両の運転席近傍に設けられるターンレバーの操作を通じて車両の進行方向に関して周囲に注意を促す際に点滅させられる一対の方向指示器と、車両の運転席近傍に設けられ、他車両前への割り込み完了後に他車両に対し感謝の意を示すべく前記両方向指示器を同時に点滅させる謝意ハザード処理を実行するために、割り込み完了前に予約操作され、操作毎に自動ハザードモードのオン、オフ状態が切り替わる謝意提示スイッチと、前記ターンレバーの操作に応じて前記方向指示器を点滅させるとともに、前記謝意提示スイッチの操作により自動ハザードモードがオン状態のときには、前記ターンレバーの操作に応じて点滅させていた左右どちらかs一方の前記方向指示器を消灯させて割り込みが完了した以後に前記謝意ハザード処理を実行する制御装置と、を備えたことをその要旨としている。
【0010】
一般的に他車両前への割り込み時、及び割り込み後においては、運転者は車両の周囲に対して目視等して細心の注意を払いつつ、ステアリングを操舵せねばならず、運転者の作業負荷は高い状況にある。一方、他車両の前に割り込んだときには、同他車両(正確にはその運転者)に対して両方向指示器を点滅させる謝意ハザードを通じて感謝の意を示すことが、運転者同士のコミュニケーションの一環として広く行われている。上記構成によれば、制御装置は自動ハザードモードがオン状態であるとき、割り込み完了後の方向指示器の消灯をトリガとして感謝の意を示すべく両方向指示器を点滅させる謝意ハザード処理を実行する。ここで、運転者は他車両前に割り込む前の比較的負荷が小さい状態において、謝意提示スイッチの操作を通じて自動ハザードモードをオン状態とすることができる。すなわち、謝意ハザードの実行を予約する操作(予約操作)をすることが可能となる。そして、前述したように、割り込みが完了した以後に謝意ハザード処理が実行される。これにより、運転者は負荷の大きい割り込み時又は割り込み後に謝意ハザードに関する操作をする必要がないので、より容易に謝意ハザードを実行することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用方向指示装置において、前記制御装置は謝意ハザード処理の実行を完了した後には、自動ハザードモードをオフ状態とすることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、謝意ハザードを実行した後には自動ハザードモードがオフ状態とされる。これにより、謝意ハザードを実行した後に謝意提示スイッチの操作を通じて自動ハザードモードをオフ状態とする手間がなく、利便性が高い。また、作業負荷の大きい割り込み完了後における運転者の操作を減らすことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用方向指示装置において、車両の車線変更の完了を検出する車線変更検出手段、を備え、前記制御装置は、前記車線変更検出手段を通じて車線変更が完了したと判断される場合に、自動ハザードモードがオン状態のとき、車線変更に際して点滅させていた前記方向指示器を消灯させた以後に前記謝意ハザード処理を実行することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、運転者は車線変更の前にターンレバーを操作して、車線変更する側の方向指示器を点滅させた後に、車線変更を行う。そして、制御装置は車線変更検出手段の検出結果に基づき車線変更が完了したと判断したとき、車線変更に際して点滅させていた方向指示器を消灯させる。この車線変更の完了後に自動ハザードモードがオン状態であれば、方向指示器を消灯させた後に謝意ハザード処理を実行する。すなわち、他車両が走行している前の車線に割り込む場合には、自動で車線変更後における方向指示器が消灯された後に、自動ハザードモードがオン状態であれば自動で謝意ハザード処理が実行される。これにより、車線変更後という運転者の負荷が高い状態での操作をいっそう減らした上で、謝意ハザード処理を実行することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用方向指示装置において、前記制御装置は前記ターンレバーが操作された直後に自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを確認することをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、制御装置は前記ターンレバーが操作された直後に自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを確認する。そのため、割り込み完了時若しくは車線変更完了時に方向指示器が消灯したときには、即座に謝意ハザードが実行される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両用方向指示装置において運転者が謝意ハザードをいっそう容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態における車両の構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における方向指示器を備えた車両の概略図。
【図3】第1の実施形態における車両の車線変更に伴う割り込みを示す上面図。
【図4】第1の実施形態における車両の左折に伴う割り込みを示す上面図。
【図5】第1の実施形態における謝意ハザード提示制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図6】第2の実施形態における謝意ハザード提示制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明の方向指示装置を具体化した第1の実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0020】
図1に示されるように、車両1には方向指示装置2が設けられている。方向指示装置2は、車両の外部から視認できる位置に設けられる右側ターンシグナル4及び左側ターンシグナル5とで構成される方向指示器6と、運転者が方向指示の入力操作を行うターンレバー8と、同ターンレバー8の入力操作に基づいて方向指示器6の作動等の制御をする制御装置7とから構成されている。
【0021】
図2に示されるように、右側ターンシグナル4は、車両の右側に備えられた右側フロントターンシグナル4aと、右側サイドターンシグナル4bと、右側リアターンシグナル4cとの総称である。同様に、左側ターンシグナル5は、車両の左側に備えられた左側フロントターンシグナル5aと、左側サイドターンシグナル5bと、左側リアターンシグナル5cとの総称である。図2は、右側ターンシグナル4及び左側ターンシグナル5を点滅させた状態を示している。右側ターンシグナル4及び左側ターンシグナル5は、それぞれ同じタイミングで点滅するようになっている。
【0022】
図2の右円中に拡大して示されるように、運転席のステアリングコラム18の右側には、方向指示の入力操作を行う棒状のターンレバー8が突出して設けられている。同ターンレバー8は、図示しない基端部を中心に上下方向へ回動可能である。ターンレバー8は、初期位置から上下方向へ回動されて所定の回動位置(オン位置)を越えるとターンシグナル4,5を作動させるオン位置で保持される、いわゆるステーショナリータイプのものが採用されている。
【0023】
同ターンレバー8は、下方向へ操作がされてオン位置に保持されると右側ターンシグナル4の点滅を、上方向へ操作がされてオン位置に保持されると左側ターンシグナル5の点滅を要求する旨の入力信号Saを出力する。図1に示すように、当該入力信号Saに応じて制御装置7は点滅信号Sbを右側ターンシグナル4又は左側ターンシグナル5に出力し、右側ターンシグナル4又は左側ターンシグナル5を点滅させる。
【0024】
また、方向指示装置2は、上下方向いずれかのオン位置に保持された状態で、ステアリングホイール19が直進位置(車両が直進する位置)に対して所定角度以上に回転された後に、元の位置である直進位置に戻されたとき、ターンレバー8の位置がオン位置から初期位置に自動的に戻されるオートキャンセル機能を備えている。このオートキャンセル機能は、ターンレバー8に設けられる図示しない解除機構によって実現されている。
【0025】
また、謝意提示スイッチ12は、図2の円中に拡大して示すように、ステアリングホイール19の右側スポーク部19aに設けられている。当該謝意提示スイッチ12は運転に際してステアリングホイール19を把持した運転者の例えば親指で操作可能な位置に設けられている。本実施形態においては、謝意提示スイッチ12はタッチ式のものが採用されている。
【0026】
謝意提示スイッチ12が操作されると操作信号Scが制御装置7へ出力される。ここで、謝意提示スイッチ12が一度操作されて操作信号Scを受けると、制御装置7は自動ハザードモードをオン状態とする。
【0027】
謝意提示スイッチ12は他車両の前方に割り込む以前に操作(予約操作)がされて自動ハザードモードがオン状態となったとき、制御装置7は割り込み後に後述する謝意ハザード提示制御プログラムに従って謝意ハザードを実行する。ここで、謝意ハザードとは自車両1が他車両の前に割り込んだ場合に、方向指示器6を複数回点滅させる行為をいう。謝意ハザードにおいては、右側ターンシグナル4及び左側ターンシグナル5が同時に点滅する。この謝意ハザードにより進路を譲ってもらった他車両(後続車)に感謝の意を示すことができる。なお、謝意提示スイッチ12の操作は謝意ハザードの予約操作であるため、謝意提示スイッチ12が操作された時点で方向指示器6が点滅することはない。なお、謝意提示スイッチ12にランプを設け、自動ハザードモードがオン状態のときに点灯して運転者に自動ハザードモードがオン状態である旨を知らせてもよい。
【0028】
謝意提示スイッチ12は再度操作がされると操作信号Scが再び出力される。制御装置7は再び操作信号Scを受けると自動ハザードモードをオフ状態とする。
ここで、車両1には謝意提示スイッチ12に加えて、同じく方向指示器6(両ターンシグナル4,5)を同時に点滅させる際に操作される図示しないハザードスイッチが運転席近傍に設けられている。ハザードスイッチが操作されると、再度同ハザードスイッチが操作されるまで方向指示器6(両ターンシグナル4,5)は点滅を続ける。当該ハザードスイッチは車両の緊急停止時等に周囲に注意を促すために操作される。
【0029】
謝意ハザードは車線変更完了後、右左折完了後等に実行される。車線変更の場合には、運転者は、図3に示すように、他車両の前への割り込みを伴う車線変更を実行しようと判断した時点で、謝意提示スイッチ12を操作して自動ハザードモードをオン状態とする。自動ハザードモードがオン状態において割り込みが完了すると、図3に示すように、後述する謝意ハザード提示制御プログラムに従って、方向指示器6(両ターンシグナル4,5)が同時に複数回点滅する自動ハザードが実行される。また、謝意提示スイッチ12の操作後に車線変更の意思がなくなった場合、もしくは謝意ハザードの実行が不要となった場合には、運転者は再度謝意提示スイッチ12を操作して、自動ハザードモードをオフ状態とすればよい。なお、自動ハザードモードがオフ状態である場合に、謝意ハザードが自動的に実行されることはない。
【0030】
車線変更時に加えて、図4に示すように、例えば、左折にてメイン道路に進入する場合においても、他車両から進路を譲ってもらうことがある。この場合においても、上記した車線変更の場合と同様に謝意提示スイッチ12の操作を通じて、割り込み完了後に謝意ハザードの実行が可能となる。また、駐車場からメイン道路に進入する場合にも同様の状況が想定される。すなわち、当該状況においても謝意提示スイッチ12の操作を通じて謝意ハザードの実行が可能となる。
【0031】
次に、制御装置7による謝意ハザードの点灯制御の処理手順について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。当該フローチャートは、制御装置7に内蔵される図示しないメモリ等に予め格納された謝意ハザード提示制御プログラムに従って実行される。
【0032】
制御装置7はターンレバー8がオン位置となるまで操作された旨を示す入力信号Saの入力を検知した時点で謝意ハザード提示制御プログラムを実行を開始する(スタート)。制御装置7は当該入力信号Saに基づき右側ターンシグナル4若しくは左側ターンシグナル5を点滅させる(S101)。そして、制御装置7は自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを確認する(S102)。自動ハザードモードがオフ状態である場合(S102でNO)には、制御装置7は謝意ハザード提示制御プログラムを終了する(エンド)。一方、自動ハザードモードがオン状態である場合(S102でYES)には、制御装置7は入力信号Saの入力の有無を判断する(S103)。制御装置7は入力信号Saの入力がないと判断した場合(S103でNO)には、ターンシグナル4,5を消灯させる。
【0033】
このターンシグナル4,5の消灯は運転者が自らターンレバー8の戻し操作を行う場合と、ステアリングホイール19の操作に基づき作動する前記解除機構によりターンレバー8が自動で戻される、オートキャンセル機能が実行される場合とがある。いずれの場合であっても、車線変更完了後及び右左折完了後には必ずターンシグナル4,5は消灯されるところ、制御装置7は入力信号Saの入力が検出されなくなったときにターンシグナル4,5を消灯し(S104)、謝意ハザードを実行する(S105)。
【0034】
また、入力信号Saの入力があるとき(S103でYES)には、制御装置7はターンシグナル4,5を点滅させ続ける。そして、再び自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを認識する(S102)。ここで、自動ハザードモードがオン状態である場合に、入力信号Saの入力が無い旨判断されるとき(S103でNO)には、制御装置7は謝意ハザードを実行する(S105)。このように、自動ハザードモードのオン、オフ状態を再度確認することで、たとえ車線変更若しくは右左折に伴うターンシグナル4,5を点滅させた後であっても、謝意提示スイッチ12の操作を通じて謝意ハザードを実行させることが可能となる。
【0035】
ステップS105において、制御装置7は謝意ハザードとして点滅信号Sbを出力して方向指示器6(両ターンシグナル4,5)を複数回点滅させた後、点滅信号Sbの出力を停止することで方向指示器6を消灯させる。そして、制御装置7は自動ハザードモードをオフ状態として(S106)、謝意ハザード提示制御プログラムを終了する(エンド)。
【0036】
以上のように、運転者は他車両の前方に割り込む以前において、謝意提示スイッチ12を操作する予約操作を通じて自動ハザードモードをオン状態とすることで、割り込みが完了した以後に謝意ハザードが自動的に実行される。ここで、割り込み時には、運転者は割り込み先のスペースの目視、割り込み先の車線を走行する他車両の状況確認、ステアリングホイール19の回動操作等をほぼ同時に行う必要がある。さらには、割り込み完了後には、前方車両との車間距離の確認、場合によってはターンシグナル4,5の戻し操作等を行う必要がある。このように、割り込みの際には、運転者の作業負荷は大きいものの、謝意提示スイッチ12は比較的作業負荷の小さい割り込み前に予約操作が可能である。これにより、運転者はより容易に謝意ハザードを実行することができる。
【0037】
また、謝意ハザードが実行された後には、自動ハザードモードはオフ状態とされる。このため、運転者は謝意ハザードの実行後に自ら謝意提示スイッチ12を操作して自動ハザードモードをオフ状態とする手間がなく、利便性が高い。
【0038】
また、制御装置7は入力信号Saを受けてターンシグナル4,5を点滅させると同時に、謝意ハザード提示制御プログラムを実行し、自動ハザードモードであるか否かを確認する。このため、S104で示すターンシグナル4,5が消灯したときには、即座に謝意ハザードを実行することができる(S105)。
【0039】
さらに、謝意提示スイッチ12はステアリングホイール19の右側スポーク部19aに設けられているため、運転者はステアリングホイール19から手を離すことなく謝意提示スイッチ12を操作できる。従って、自動ハザードモードのオン、オフ状態の切り替え、ひいては、謝意ハザードの実行をより容易にできる。
【0040】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)制御装置7は自動ハザードモードがオン状態であるとき、割り込み完了後の方向指示器6の消灯をトリガとして謝意ハザードを実行する。ここで、運転者は他車両前に割り込む前の比較的負荷が小さい状態において、謝意提示スイッチ12の操作を通じて自動ハザードモードをオン状態とすることができる。すなわち、謝意ハザードの実行を予約する操作(予約操作)をすることが可能となる。そして、前述したように、割り込みが完了した以後に謝意ハザードが実行される。これにより、運転者は操作負荷の大きい割り込み時又は割り込み後に謝意ハザードに関する操作をする必要がないので、より容易に謝意ハザードを実行することができる。
【0041】
(2)謝意ハザードを実行した後には自動ハザードモードがオフ状態とされる。これにより、謝意ハザードを実行した後に謝意提示スイッチ12の操作を通じて自動ハザードモードをオフ状態とする手間がなく、利便性が高い。また、作業負荷の大きい割り込み完了後における運転者の操作を減らすことができる。
【0042】
(3)制御装置7はターンレバー8が操作された直後に自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを確認する(S102)。そのため、割り込み完了時若しくは車線変更完了時に方向指示器6が消灯したときには、即座に謝意ハザードが実行される。
【0043】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる車両用方向指示装置を具体化した第2の実施形態について、図6を参照して説明する。この実施形態の方向指示装置は、車線変更の完了が検出されたことを条件として、謝意ハザードを実行させる点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、この実施形態の方向指示装置は、図1に2点鎖線で示される舵角センサ10を備えている点を除き、第1の実施形態の車両1の構成とほぼ同様の構成を備えている。なお、舵角センサ10は車線変更検出手段に相当する。
【0044】
舵角センサ10はステアリングホイール19と一体回転する図示しないステアリングシャフトに設けられて、当該ステアリングシャフト、ひいてはステアリングホイール19の回転角度を検出する。舵角センサ10は検出結果を制御装置7に出力する。右側ターンシグナル4、若しくは左側ターンシグナル5の点滅時において、制御装置7は舵角センサ10から入力される結果(ステアリングホイール19の操舵角)に基づき車両の進路方向が車線変更に伴うものであるか、それとも右左折に伴うものであるかを判断する。具体的には、制御装置7はステアリングホイール19の操舵角が所定角度未満であるときには車線変更であると判断し、操舵角が所定角度以上であるときには右左折であると判断する。なお、本実施形態におけるターンレバー8には、自身に上下方向に外力が付与される間のみ変位し、同外力が解除されたときには初期位置に自動的に戻るモーメンタリ式が採用されている。すなわち、前記解除機構は備えられていない。モーメンタリ式のターンレバー8においては、同ターンレバー8がオン位置に至って、一旦ターンシグナル4,5が点滅すれば、その後にターンレバー8が初期位置に復帰した場合でも、ターンシグナル4,5の点滅は継続される。なお、制御装置7はターンシグナル4,5の点滅のオン、オフ制御を行う。
【0045】
次に、本実施形態における謝意ハザード提示制御プログラムについて、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
制御装置7はターンレバー8が操作された旨を示す入力信号Saの入力を検知した時点で謝意ハザード提示制御プログラムの実行を開始するとともに、当該入力信号Saに基づき右側ターンシグナル4若しくは左側ターンシグナル5を点滅させる(S101)。そして、制御装置7は自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを確認する(S102)。自動ハザードモードがオフ状態である場合(S102でNO)には、制御装置7は謝意ハザード提示制御プログラムを終了する(エンド)。一方、自動ハザードモードがオン状態である場合(S102でYES)には、舵角センサ10の検出結果に基づき車線変更が完了したか否かを判断する(S120)。なお、車線変更は車線変更に伴い回動されたステアリングホイール19が直進位置に戻されたときに完了したと判断する。車線変更が完了していないときには(S120でNO)、制御装置7は謝意ハザードを実行することなく、謝意ハザード提示制御プログラムを終了する(エンド)。
【0046】
一方、車線変更が完了したときには(S120でYES)、制御装置7は点滅信号Sbの出力を停止して、車線変更に際して点滅するターンシグナル4,5を消灯させた(S104)後に、謝意ハザードを実行する(S105)。そして、制御装置7は自動ハザードモードをオフ状態として(S106)、謝意ハザード提示制御プログラムを終了する(エンド)。なお、車線変更と同様に右左折が完了したときにも謝意ハザードの実行が可能である。この場合には、ステップS120の「車線変更完了?」に代えて「右折又は左折完了?」となる。
【0047】
以上のように、車線変更の完了時に車線変更に際して点滅するターンシグナル4,5を消灯させるとともに謝意ハザードが実行される。すなわち、運転者は車線変更の完了後に何らの操作を行うことなく、自動でターンシグナル4,5の消灯及び謝意ハザードの実行がされる。これにより、運転者の作業負荷が大きい車線変更完了後の操作を減らし、いっそう容易に謝意ハザードを実行できる。
【0048】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(3)の作用効果に加え以下の作用効果を奏することができる。
(4)運転者は車線変更の前にターンレバー8を操作して、車線変更する側の方向指示器6を点滅させた後に、車線変更を行う。そして、制御装置7は舵角センサ10の検出結果に基づき車線変更が完了したと判断したとき、車線変更に際して点滅させていた方向指示器6を消灯させる。この車線変更の完了後に自動ハザードモードがオン状態であれば、方向指示器6を消灯させた後に謝意ハザード処理を実行する。すなわち、他車両の前の車線に割り込むときには、車線変更後における方向指示器6が自動で消灯された後、自動ハザードモードがオン状態であれば自動で謝意ハザードが実行される。これにより、車線変更後という認知的負荷が高い状態での操作をいっそう減らした上で、謝意ハザードを実行することができる。
【0049】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1及び第2の実施形態においては、謝意提示スイッチ12はタッチ式のものが採用されていた。しかし、謝意提示スイッチ12はタッチ式に限らず、プッシュ式等であってもよい。
【0050】
・第1及び第2の実施形態においては、謝意提示スイッチ12は、図2に拡大して示すように、ステアリングホイール19の右側スポーク部19aに設けられている。しかし、謝意提示スイッチ12の位置はこれに限定されず、例えばハザードスイッチとともにコンソールボックスに配置されていてもよい。
【0051】
・第1及び第2の実施形態においては、謝意ハザードが実行された後には、自動ハザードモードはオフ状態とされていた。しかし、謝意ハザードが実行された後にも、自動ハザードモードがオン状態を持続するように、すなわち、図5のS106を実行しなくてもよい。この場合には、例えば、3車線以上ある道路において、連続した割り込みを伴う車線変更を行ったときにも、運転者は謝意提示スイッチ12を割り込み毎に操作する手間がない。
【0052】
・第1及び第2の実施形態においては、謝意ハザードとして方向指示器6を複数回点滅させていた。しかし、方向指示器6の点滅回数は複数回に限らず、後続車に認知させることができれば単数回であってもよい。
【0053】
・第1及び第2の実施形態においては、図5及び図6のフローチャートで示したように、謝意ハザード提示制御プログラムは入力信号Saの入力に基づき開始される。しかし、謝意ハザード提示制御プログラムの開始のタイミングはこれに限らず、第1の実施形態においては例えば、入力信号Saの入力が検出されなくなった時点(S103でNO)で開始してもよい。また、第2の実施形態においては、車線変更が完了した時点(S120)で謝意ハザード提示制御プログラムを開始してもよい。これにより、謝意ハザード提示制御プログラムの処理工程を減らすことができる。この場合には、車線変更の完了後であって、謝意ハザードの実行前に自動ハザードモードのオン、オフの状態を認識する必要がある。
【0054】
・第1の実施形態においては、入力信号Saが入力されているときには(S103でYES)、自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを認識していた(S102)。しかし、入力信号Saが入力されているとき(S103でYES)、自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを認識することなく入力信号Saが入力されているか否かを再び判断してもよい。この場合には、制御装置7は自動ハザードモードを確認する処理を連続して行う必要がないため迅速な処理の実現が可能である。
【0055】
・第2の実施形態においては、舵角センサ10を設けて車線変更及び右左折を判断していた。しかし、車線変更及び右左折を判断可能であれば、舵角センサ10だけに限らず、さらに車速センサ、ブレーキセンサ、加速度センサ等を組み合わせて車線変更検出手段として構成してもよい。この場合には、制御装置7は各センサの検出結果を総合して車線変更及び右左折の判断を行う。本構成によれば、車線変更及び右左折の判断をより確実に行える。
【0056】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用方向指示装置において、前記謝意提示スイッチはステアリングに設けられるステアリングスイッチである車両用方向指示装置。
【0057】
同構成によれば、謝意提示スイッチがステアリングスイッチとしてステアリングに設けられる。これにより、運転者は他車両の前に割り込むにあたって、ステアリングから手を離すことなく、自動ハザードモードをオン状態とする操作を通じて、謝意ハザードの実行が可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1…車両、2…方向指示装置、4,5…ターンシグナル(方向指示器)、6…方向指示器、7…制御装置、8…ターンレバー、10…舵角センサ、12…謝意提示スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右両側に設けられ、車両の運転席近傍に設けられるターンレバーの操作を通じて車両の進行方向に関して周囲に注意を促す際に点滅させられる一対の方向指示器と、
車両の運転席近傍に設けられ、他車両前への割り込み完了後に他車両に対し感謝の意を示すべく前記両方向指示器を同時に点滅させる謝意ハザード処理を実行するために、割り込み完了前に予約操作され、操作毎に自動ハザードモードのオン、オフ状態が切り替わる謝意提示スイッチと、
前記ターンレバーの操作に応じて前記方向指示器を点滅させるとともに、前記謝意提示スイッチの操作により自動ハザードモードがオン状態のときには、前記ターンレバーの操作に応じて点滅させていた左右どちらか一方の前記方向指示器を消灯させて割り込みが完了した以後に前記謝意ハザード処理を実行する制御装置と、を備えた車両用方向指示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用方向指示装置において、
前記制御装置は謝意ハザード処理の実行を完了した後には、自動ハザードモードをオフ状態とする車両用方向指示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用方向指示装置において、
車両の車線変更の完了を検出する車線変更検出手段、を備え、
前記制御装置は、前記車線変更検出手段を通じて車線変更が完了したと判断される場合に、自動ハザードモードがオン状態のとき、車線変更に際して点滅させていた前記方向指示器を消灯させた以後に前記謝意ハザード処理を実行する車両用方向指示装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用方向指示装置において、
前記制御装置は前記ターンレバーが操作された直後に自動ハザードモードがオン、オフの何れの状態であるかを確認する車両用方向指示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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