説明

車両用灯具の冷却装置

【課題】灯室内の温度上昇を長期間に亘って抑制できる信頼性の高い車両用灯具の冷却装置の提供を課題とする。
【解決手段】光源32が収容される灯室40を構成するランプハウジング22と、ランプハウジング22の外部で、かつ外気と隔離された状態で流れる流体Wの流路44中に、その流体Wの流れによって回転するように設けられた羽根車52と、ランプハウジング22の内部で、羽根車52の回転によって回転するファン60と、を備えた車両用灯具20の冷却装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯室内の温度上昇を抑制する車両用灯具の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
灯室を構成する筐体を貫通して回転可能に支持された回転軸の筐体内側に内部ファンが設けられるとともに筐体外側に外部ファンが設けられ、走行風によって外部ファンが回転することによって内部ファンを回転させ、灯室内に設けられたヒートシンクの放熱効果を向上させるようにして、光源による灯室内の温度上昇を抑制するようにした車両用灯具の冷却装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−35335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている車両用灯具の冷却装置では、走行風に混在する異物によって、その走行風の外部ファンに対する流路が閉塞されたり、回転軸が汚損されることが懸念されるため、長期間の使用に耐え得る構造とは、必ずしも言えるものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、灯室内の温度上昇を長期間に亘って抑制できる信頼性の高い車両用灯具の冷却装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両用灯具の冷却装置は、光源が収容される灯室を構成するランプハウジングと、前記ランプハウジングの外部で、かつ外気と隔離された状態で流れる流体の流路中に、その流体の流れによって回転するように設けられた羽根車と、前記ランプハウジングの内部で、前記羽根車の回転によって回転するファンと、を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、外気と隔離された状態で流れる流体によって(羽根車を介して)ファンの回転駆動力を得るので、例えば走行風によってファンの回転駆動力を得る構成に比べて、ファンに動作不良が生じることがない。つまり、走行風によってファンの回転駆動力を得る場合、走行風に混在する異物によって、羽根車に動作不良が生じ、それによってファンに動作不良が生じる懸念があるが、本発明に係る構成では、そのような懸念が生じない。したがって、信頼性が高く、灯室内の温度上昇を長期間に亘って効果的に抑制することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の車両用灯具の冷却装置は、請求項1に記載の車両用灯具の冷却装置において、前記羽根車と前記ファンが、前記ランプハウジングに形成された孔部を貫通して回転可能に支持された回転軸の両端部にそれぞれ取り付けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、羽根車とファンの構成を簡略化できるので、部品点数や製造コストの増加を防止することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の車両用灯具の冷却装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用灯具の冷却装置において、前記流体の流路が、冷却水の流路、空調機冷媒の流路、潤滑油の流路の何れかであることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、異物が混入する可能性が最も低い循環流路中を流れる冷却水、空調機冷媒、潤滑油によって(羽根車を介して)ファンの回転駆動力を得るので、そのファンに動作不良が生じることがない。
【0012】
また、請求項4に記載の車両用灯具の冷却装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用灯具の冷却装置において、前記流体の流路が、洗浄液の流路であることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、車両に装備されている既存のポンプによって流れる洗浄液によって(羽根車を介して)ファンの回転駆動力を得るので、別途ポンプを設ける必要がない。したがって、部品点数や製造コストの増加を防止することができる。また、洗浄液は凍り難いので、寒冷地でも使用することが可能となる。
【0014】
また、請求項5に記載の車両用灯具の冷却装置は、請求項4に記載の車両用灯具の冷却装置において、前記洗浄液が前記ランプハウジングのカバーレンズをクリーニングするクリーニング機構に使用されることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、洗浄液がランプハウジングのカバーレンズに噴射されるので、そのカバーレンズにおいて、洗浄液の気化熱による冷却効果が期待できる。
【0016】
また、請求項6に記載の車両用灯具の冷却装置は、請求項5に記載の車両用灯具の冷却装置において、前記洗浄液が前記カバーレンズに対して間欠的に噴射されるように構成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、洗浄液が間欠的にカバーレンズに対して噴射される構成であると、そのカバーレンズにおいて、洗浄液の気化を妨げることがない。したがって、より一層の冷却効果が期待できる。
【0018】
また、請求項7に記載の車両用灯具の冷却装置は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用灯具の冷却装置において、前記灯室内の温度が、外気温センサーの検知情報、日射センサーの検知情報、車速センサーの検知情報、前記光源を点消灯させるライトスイッチのON・OFF情報のうちの少なくとも1つの情報から推定され、該温度が設定値以上であると判断されたときには、前記流路中に流体を流す構成とされていることを特徴としている。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、灯室内に、灯室内の温度を検知する温度センサーを設ける必要がなくなる。したがって、部品点数や製造コストの増加を防止することができるとともに軽量化が図れる。また、灯室内の温度が設定値以上であると判断されたときには、自動的に流体が流れ、ファンが回転するので、灯室内の温度上昇を効率よく抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、灯室内の温度上昇を長期間に亘って抑制できる信頼性の高い車両用灯具の冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両を示す概略斜視図
【図2】車両用灯具(ヘッドランプ)の冷却装置を示す概略側断面図
【図3】流体の流路中に設けられた羽根車(インペラ)の構成を示す概略平断面図
【図4】流路中に流体を流してファンを回転させる条件を示す説明図
【図5】灯室内の温度変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。図1は車両10を示す概略斜視図であり、図2は車両用灯具(ヘッドランプ20)の冷却装置を示す概略側断面図、図3は流体の流路中に設けられた羽根車(インペラ52)の構成を示す概略平断面図である。なお、各図において適宜示す矢印UPは車体上方向を示し、矢印FRは車体前方向を示す。
【0023】
図1で示すように、車両10の車体前方側端部には、フロントバンパカバー12が車幅方向に配置されており、車両10の車体前方側両側部には、フロントフェンダパネル14が車体前後方向に配置されている。そして、フロントバンパカバー12の車体上方側で、かつ各フロントフェンダパネル14の車体前方側には、車両10の前方に光を照射する車両用灯具の一例としてのヘッドランプ20が左右一対で配置されている。
【0024】
また、ヘッドランプ20の車体上方側で、かつ車幅方向内側には、閉止状態におけるエンジンフード16の車体前方側端部(車幅方向の両外側周縁部)が近接配置されるようになっており、エンジンフード16は、車体上下方向に開閉可能とされ、閉止状態では、エンジンルーム18の上方を覆う構成となっている。
【0025】
また、ヘッドランプ20は、図2で示すように、光源32(例えばLED(発光ダイオード)やバルブ)を内部に収容するランプハウジング22を備えている。このランプハウジング22は、例えばブラケット(図示省略)を介して、車体骨格部材であるラジエータサポートアッパ(図示省略)に固定されており、そのランプハウジング22の内部が灯室40とされている。
【0026】
そして、ランプハウジング22の車体前方側壁面は透明なカバーレンズ22Aとされ、フロントバンパカバー12とフロントフェンダパネル14と閉止状態のエンジンフード16とで囲まれる空間から露出し、光源32から発せられ、後述するリフレクタ34により反射され、後述するレンズ36によってビーム光とされた光を透過するようになっている。つまり、これにより、車体前方側の所定の領域が照明されるようになっている。
【0027】
ランプハウジング22の内部(灯室40内)には、光源32からの拡散光を反射して所定方向(車体前方側)へ向ける凹鏡面状のリフレクタ34が設けられている。反射板として機能するリフレクタ34の車体正面視略中央位置には、光源32が取り付けられており、リフレクタ34の開口部34A側(車体前方側)端部には、その開口部34Aを覆うように、略半球状のレンズ36が平面部36Aをリフレクタ34側に向けて取り付けられている。
【0028】
また、光源32には、複数のフィン39で構成されたヒートシンク(放熱部材)38が、車体前方側へ突出した取付部37を介して取り付けられている。このヒートシンク38により、光源32(灯室40内)の温度上昇が抑制される構成である。なお、これら光源32、リフレクタ34、レンズ36、ヒートシンク38でランプユニット30が構成されている。
【0029】
また、この車両10は、クリーニング機構としてのヘッドランプクリーナー装置(以下「クリーナー」という)50を備えており、ランプハウジング22のカバーレンズ22Aの表面が、洗浄液(ウォッシャー液:例えば水)Wによってクリーニングできるように構成されている。すなわち、カバーレンズ22Aの車体下方側で、かつフロントバンパカバー12の車体上面部には、噴射ノズル42が配設されており、その噴射ノズル42から流体としての洗浄液Wが噴射されて、カバーレンズ22Aの表面に吹き付けられるようになっている。
【0030】
この噴射ノズル42には、ランプハウジング22の外部に設けられたフレキシブルチューブ44の一端部が接続されており、フレキシブルチューブ44の他端部は、ポンプ46を介して洗浄液タンク48に接続されている。なお、このフレキシブルチューブ44が、外気と隔離された状態で流れる流体(洗浄液W)の流路を構成するものである。また、ポンプ46及び洗浄液タンク48は、車両10に装備されている既存のものである。
【0031】
また、図2、図3で示すように、フレキシブルチューブ44の所定位置には、平面視略半円弧状の拡大部44Aが形成され、その拡大部44Aの内部には、インペラ(羽根車)52が設けられている。インペラ52は、回転軸56の外周面に複数枚(例えば6枚)の板状の羽根54が等間隔に(放射状に)取り付けられて構成されており、流体である洗浄液Wの矢印A方向への流れ(水圧)によって、例えば時計方向に回転するように構成されている。
【0032】
そして、その回転軸56は、フレキシブルチューブ44の拡大部44Aにおける上面44Bを漏液防止状態とされて突き抜けて、ランプハウジング22内へ延設されている。すなわち、この回転軸56は、ランプハウジング22の車体下方側壁面22Cに形成された孔部23を貫通して、そのランプハウジング22に回転可能に支持されており、ランプハウジング22の外部へ突出し、フレキシブルチューブ44の拡大部44Aの内部へ挿入されている下端部に、インペラ52が設けられている。
【0033】
そして、ランプハウジング22の内部へ突出している回転軸56の上端部に、ファン60が設けられている。すなわち、このファン60は、回転軸56の上端部における外周面に複数枚(例えば4枚)のプロペラ状の羽根58が等間隔に(放射状に)取り付けられて構成されており、インペラ52の回転によって回転するように構成されている。
【0034】
つまり、インペラ52とファン60は、同一の回転軸56によって回転可能に支持され、一体に回転するようになっている。そして、ファン60の回転により、後述する下側の通気孔26から採り入れられた外気が、ランプハウジング22内を車体上方側へ送風され、主にヒートシンク38を空冷して、光源32(灯室40内)の温度上昇を抑制するようになっている。
【0035】
なお、カバーレンズ22Aの洗浄は、通常では乗員の操作によって行われる。つまり、乗員がカバーレンズ22Aを洗浄する操作をした際に、ファン60が回転し、ヒートシンク38等を空冷するようになっているが、本実施形態に係る冷却装置では、灯室40内の温度が高温であると推定されたときに、自動的に噴射ノズル42から洗浄液Wを噴射させてカバーレンズ22Aを洗浄するとともにファン60を回転させ、ヒートシンク38等を空冷するようになっている。
【0036】
すなわち、制御手段としてのコンピューター70(図1参照)によって、灯室40内の温度が設定値以上であると推定されたとき(設定値以上になると推定されたときも含む)には、そのコンピューター70によってポンプ46が駆動され、洗浄液Wがフレキシブルチューブ44内を矢印A方向へ流れて、その水圧により、インペラ52を介してファン60を回転させるようになっている。
【0037】
ここで、灯室40内の温度は、図1、図4で示すように、車両10に標準的に装備されている既存の外気温センサー62の検知情報、日射センサー64の検知情報、車速(速度)センサー66の検知情報、光源32を点消灯させるライトスイッチ68のON(点灯)・OFF(消灯)情報から推定されるようになっている。
【0038】
つまり、図4で示すように、外気温センサー62が所定温度以上(高温)を検知し、日射センサー64が日射有り(昼)を検知し、車速センサー66が所定車速未満(停止〜低速)を検知し、かつライトスイッチ68がON(点灯)状態のときに、灯室40内の温度が設定値以上である(設定値以上になる)と、コンピューター70によって判断されるようになっている。
【0039】
したがって、灯室40内に温度センサーを設ける必要がなく、部品点数の低減(軽量化)及び製造コストの低減が図れる構成である。なお、灯室40内の温度が設定値以上である(設定値以上になる)と推定されている間は、所定の時間間隔で洗浄液Wを噴射させることが望ましい。すなわち、洗浄液Wを噴射させるクリーナー50の作動時間は、図4で示すように、コンピューター70に内蔵されているタイマー72によって制御することが望ましい。
【0040】
また、灯室40内の温度は、外気温センサー62の検知情報、日射センサー64の検知情報、車速センサー66の検知情報、ライトスイッチ68のON(点灯)・OFF(消灯)情報のうちの少なくとも1つの情報、好ましくは灯室40内の温度に最も影響を与える外気温センサー62の検知情報と、それ以外の少なくとも1つの情報から推定されるような構成にしてもよい。
【0041】
また、ランプハウジング22の車体後方側壁面22Bには、車体後方側へ突出する筒部24が上下に2つずつ車幅方向に所定間隔を隔てて形成されており、各筒部24の車体後方側端部にはゴム製のキャップ28が被装されている。そして、各筒部24の外周面の一部、例えば下面には、灯室40内に連通する通気孔26が穿設されている。
【0042】
したがって、灯室40内の温度が設定値以上であると推定され、ファン60が回転した際には、灯室40内の空気が撹拌され、下側の筒部24に形成された通気孔26から外気が採り入れられるとともに、上側の筒部24に形成された通気孔26から灯室40内の高温とされた空気が排出されるようになっている。これにより、灯室40内の空気が循環され、灯室40内の温度上昇がより効果的に抑制されるようになっている。
【0043】
以上のような構成のヘッドランプ(車両用灯具)20において、次にその作用について説明する。図4で示すように、外気温センサー62が所定温度以上(高温)を検知し、日射センサー64が日射有り(昼)を検知し、ライトスイッチ68がON(点灯)状態で、車速センサー66が所定車速未満(停止〜低速)を検知したときには、コンピューター70により、灯室40内の温度が設定値以上である(設定値以上になる)と判断される。
【0044】
このように、車両10に標準的に装備されている既存の外気温センサー62の検知情報、日射センサー64の検知情報、車速センサー66の検知情報、ライトスイッチ68のON・OFF情報に基づいて、灯室40内の温度が設定値以上である(設定値以上になる)と推定・判断されるため、灯室40内に、灯室40内の温度を検知する温度センサーを設ける必要がなくなる。したがって、部品点数や製造コストの増加を防止することができる。
【0045】
さて、コンピューター70により、灯室40内の温度が設定値以上である(設定値以上になる)と判断されると、そのコンピューター70により、ポンプ46が駆動される。すると、洗浄液タンク48内の洗浄液Wがフレキシブルチューブ44内を矢印A方向(図3参照)へ流れ、噴射ノズル42から洗浄液Wがカバーレンズ22Aの表面へ向かって噴射される。
【0046】
これにより、カバーレンズ22Aが自動的に洗浄される(クリーニングされる)が、このとき、その洗浄液Wがカバーレンズ22Aに吹き付けられることにより、そのカバーレンズ22Aにおいて、洗浄液Wの気化熱による冷却効果が得られる(洗浄液Wの気化熱により効果的に冷却される)。そして、その洗浄液Wの流れ(水圧)により、インペラ52が回転する。
【0047】
すると、そのインペラ52の回転軸56と同軸とされているファン60が回転し、灯室40内の空気が撹拌される。これにより、下側の筒部24に形成された通気孔26から外気が積極的に採り入れられ、ヒートシンク38側へ、その外気が送風される。したがって、主にヒートシンク38が効果的に空冷され、光源32(灯室40内)の温度上昇が効率よく抑制される。
【0048】
また、ファン60によって灯室40内の空気が撹拌されることで、上側の筒部24に形成された通気孔26から灯室40内の高温とされた空気が積極的に排出される。つまり、灯室40内の空気が積極的に循環され、外気と交換される。これにより、灯室40内において、局所的に高温となる部位が解消され、灯室40内の温度上昇が効果的に抑制される。
【0049】
なお、灯室40内の温度が設定値以上である(設定値以上になる)と推定されている間は、所定の時間(例えば5分や10分)間隔毎に洗浄液Wが噴射されるように、ポンプ46の駆動時間(カバーレンズ22Aをクリーニングするクリーナー50の作動時間)がタイマー72によって制御されている。
【0050】
したがって、灯室40内の温度上昇をより効果的に抑制することができる。しかも、その洗浄液Wは、カバーレンズ22Aに間欠的に吹き付けられることになるため、カバーレンズ22Aにおける洗浄液Wの気化を妨げることがない。よって、そのカバーレンズ22Aにおいて、洗浄液Wの気化を促進することができ、より一層の冷却効果が得られる(期待できる)。
【0051】
ここで、このクリーナー50の作動による灯室40内の温度変化を図5のグラフで示す。この図5で示すように、クリーナー50を作動させると、一時的にでも灯室40内の温度を低下させることができるため、所定の時間間隔毎にクリーナー50を作動させることにより、灯室40内の温度が設定値以上になるのを防止することができる。
【0052】
したがって、光源32にLEDを用いた場合には、LEDの上限温度(=設定値)未満を維持することができるため、特に有効となる。また、このように、クリーナー50を作動させることで、灯室40内の温度上昇を抑制できるようになっていると、ヒートシンク38を小型化することができる。したがって、ランプユニット30の小型化を図ることができるメリットもある。
【0053】
また、本実施形態に係る冷却装置は、外気と隔離された状態で流れる(フレキシブルチューブ44内を流れる)洗浄液Wによって、インペラ52を介してファン60の回転駆動力を得るので、例えば走行風によってファン60の回転駆動力を得る構成に比べて、ファン60に動作不良が生じないというメリットがある。
【0054】
つまり、走行風によってファン60の回転駆動力を得る場合、走行風に混在する異物によって、インペラ52に動作不良が生じ、それによってファン60に動作不良が生じる懸念があるが、本実施形態に係る構成では、そのような懸念が生じない。したがって、車両用灯具(ヘッドランプ20)の冷却装置として信頼性が高く、灯室40内(光源32)の温度上昇を長期間に亘って効果的に抑制することができる。
【0055】
なお、流体の流路としては、洗浄液Wの流路(フレキシブルチューブ44)に限定されるものではなく、例えばエンジン冷却用の冷却水が流れる流路、空調機の冷媒が流れる流路、潤滑油が流れる流路(図示省略)等を使用してもよい。冷却水の流路、空調機冷媒の流路、潤滑油の流路は、それぞれ循環する流路であるため、異物が混入する可能性が最も低い。したがって、インペラ52、即ちファン60に、より一層動作不良が生じないようにできる。
【0056】
但し、流体の流路が、洗浄液Wの流路(フレキシブルチューブ44)であると、車両10に装備されている既存のポンプ46を使用することができるので、別途ポンプを設ける必要がない。したがって、部品点数や製造コストの増加をより一層防止することができるメリットがある。また、洗浄液Wは凍り難いので、寒冷地でも使用することが可能となるメリットもある。
【0057】
以上、本実施形態に係る車両用灯具の冷却装置をヘッドランプ20に適用した場合について説明したが、本実施形態に係る車両用灯具の冷却装置は、図示の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、インペラ52とファン60は、図示しないギア群を介して共に回転する構成としたり、図示しない磁気継手(磁力)によって共に回転する構成としてもよい。
【0058】
磁気継手によってインペラ52からファン60に非接触状態で回転駆動力が伝達される構成にすると、ランプハウジング22に孔部23を形成しなくて済むメリットがある。しかし、インペラ52とファン60は、ランプハウジング22に形成された孔部23を貫通して回転可能に支持された回転軸56の両端部(下端部及び上端部)にそれぞれ取り付けられる構成とした方が、インペラ52とファン60の構成を簡略化でき、部品点数や製造コストの増加を防止できるので好ましい。
【符号の説明】
【0059】
10 車両
20 ヘッドランプ(車両用灯具)
22 ランプハウジング
22A カバーレンズ
23 孔部
26 通気孔
30 ランプユニット
32 光源
34 リフレクタ
36 レンズ
38 ヒートシンク
40 灯室
42 噴射ノズル
44 フレキシブルチューブ(流路)
46 ポンプ
48 洗浄液タンク
50 クリーナー(ヘッドランプクリーナー装置/クリーニング機構)
52 インペラ(羽根車)
56 回転軸
60 ファン
62 外気温センサー
64 日射センサー
66 車速センサー
68 ライトスイッチ
70 コンピューター
72 タイマー
W 洗浄液(流体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が収容される灯室を構成するランプハウジングと、
前記ランプハウジングの外部で、かつ外気と隔離された状態で流れる流体の流路中に、その流体の流れによって回転するように設けられた羽根車と、
前記ランプハウジングの内部で、前記羽根車の回転によって回転するファンと、
を備えたことを特徴とする車両用灯具の冷却装置。
【請求項2】
前記羽根車と前記ファンは、前記ランプハウジングに形成された孔部を貫通して回転可能に支持された回転軸の両端部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具の冷却装置。
【請求項3】
前記流体の流路が、冷却水の流路、空調機冷媒の流路、潤滑油の流路の何れかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用灯具の冷却装置。
【請求項4】
前記流体の流路が、洗浄液の流路であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用灯具の冷却装置。
【請求項5】
前記洗浄液が前記ランプハウジングのカバーレンズをクリーニングするクリーニング機構に使用されることを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具の冷却装置。
【請求項6】
前記洗浄液が前記カバーレンズに対して間欠的に噴射されるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具の冷却装置。
【請求項7】
前記灯室内の温度が、外気温センサーの検知情報、日射センサーの検知情報、車速センサーの検知情報、前記光源を点消灯させるライトスイッチのON・OFF情報のうちの少なくとも1つの情報から推定され、該温度が設定値以上であると判断されたときには、前記流路中に流体を流す構成とされていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用灯具の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−170905(P2010−170905A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13374(P2009−13374)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】